説明

投射装置用の偏向装置、画像を投射する投射装置、及び、投射装置用の偏向装置を制御する方法

本発明は、リサジュー図形を観察フィールドへ投射する投射装置用の偏向システムに関する。偏光ユニットは、リサジュー図形を生じさせるために、少なくとも第1及び第2の偏向軸について光線を偏向させるように設計され、また、偏向軸に関する振動を生じさせるための偏向ユニットと、おおむね偏向ユニットの共振周波数に相当する、第1及び第2の作動周波数を有する、偏向ユニットのための作動信号を発生させる制御装置とを備え、前記偏向ユニットは、3.000未満のQ値を有し、前記制御装置は、振動の最大振幅が偏向ユニットの共振範囲内に留まるように、偏向ユニットの振動の測定された位相位置に応じて第1及び/又は第2の制御周波数を制御するように設計された、制御回路を備える。本発明は更に、このような偏向システムを備えた投射装置及び相当する偏向システムを作動させる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投射装置用の偏向装置、画像フィールドに画像を投射する投射装置、及び、偏向装置を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、共振的に又はほぼ共振的に2軸で振動する、つまり正弦曲線的に振動するミラーが使用された、いわゆるリサジュー投射機が知られている。これらの機能原則として、共振スキャナとも呼ばれるこれらのミラーは、非共振的に作用するスキャナより大きな振幅を得られる。走査型レーザー投射に関しては、より大きな振幅は、より高い光学解像度に相当する。このような理由から、リサジュー投射は、両軸における照度が不均一であるとはいえ、コンパクトなレーザー投射機のためには大変興味深いものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許第1419411号
【特許文献2】独国特許第102008008565号
【特許文献3】米国特許第7580007号
【0004】
特許文献1から、2つの偏向又は走査軸の2つの走査又は制御周波数が一桁小さい、すなわちf1/f2が10未満である投射装置が知られている。この点に関して、この目的のために使用される偏向又は走査システムは、各軸の走査周波数を周波数f1又はf2に固定する手段を備える。つまり、閉じた定位置リサジュー図形が、周期的に繰り返す結果になることが確実となる。更に、fr=f1/n=f2/mはリサジュー反復周波数に妥当し、ここでn及びmは整数である。この既知の従来技術は、画像投射を実現するために、固定周波数を提案している。従って、固定された有理数の周波数比f1:f2=n:mが恒久的に存在するように、固定周波数に適した手段が備えられなければならない。
【0005】
特許文献2もまた、その最大公約数がリサジュー図形の繰返し率となる、2つの固定周波数を有するリサジュー投射プロセスを開示している。
【0006】
特許文献3も同様に、リサジュー軌道が整数に従って反復する、水平的振動の固定周波数f1及びf2を用いたリサジュー投射プロセスを提案している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の、偏向ユニット又は、共振で若しくはほぼ共振で作用するMEMSスキャナの軸の2つの走査周波数f1及びf2はリズムが一定である、という事実をベースにしたリサジュー投射プロセス又は投射装置では、問題が生じる。前記問題とは、機械的振動子とも呼ばれる共振機械的振動システムの共振周波数が、例えば調整されたレーザー出力などによる突然の温度変化のような外部からの影響を受けて変動したとても、振動振幅もまた、リズムが一定に保たれなければならないということである。共振周波数における変化に付随する振幅変化が小さいままであるように、低いQ値に相当する幅広い共振曲線が必要条件である。
【0008】
図1において、前記周波数を超える振幅反応及び位相反応が、減衰された共振スキャナ、又は、Q=2,000のQ値を有する減衰された低品質の偏向ユニットを示す1と、対応する位相2とを用いて示されている。この点について、Q値Qは、帯域幅に対する共振周波数の比率と画定され、帯域幅は、減衰が3.01dBに達する点における共振ピークの幅と画定される。従来技術に記載された投射装置は、現在では、駆動エネルギーが増加することによって特定の状況下で十分に早く補正できる、例えば温度変化等の極めて小さな振幅変化及び位相変化が生じることに起因する共振周波数の変動に際して、共振曲線が極めて浅い、これらの高減衰偏向ユニットと組み合わせて使用される。このことは、Q値の低い既知の偏向ユニットは、良好な振幅安定性、良好な位相安定性、そしてまた幅広い周波数同調性を有することを意味する。一方で、これらの既知の偏向ユニットは、明らかな欠点も有する。高減衰は通常、かなり高いエネルギー消費を必要とし、携帯電話のようなモバイル用途には特に不利である。微小技術において利用可能な通常の力で達成できる振幅は、更に限定される。
【0009】
HDTV解像度のような極めて高解像度の画像投射には、極めて高速の偏向ユニット又は32kHzより大きい偏向周波数を有する共振器だけでなく、極めて広い光学偏光角度もまた必要とされる。偏向素子、例えばミラープレートの直径Dと、片面の機械走査振幅又は偏向振幅シータ(θ)、それぞれ機械的半角の積から、いわゆるシータD積が確定したパラメータとしてもたらされる。HDTV解像度に必要なシータD積は、光学走査角度の合計又は偏角が64度より大きい場合、24度×mmより大きく、例えばD=1.5mm、シータ>16度であるはずである。これまで従来技術で知られていた高減衰のMEMS偏向ユニットを使用することでは、これらの設定値は達成できなかった。
【0010】
高度な走査と偏向周波数を可能にし、同時に高いシータD積を備える偏向装置を提供することが、本発明の根本的な目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、高品質な偏向ユニットを備えた偏向装置によって、一部分だけ(以下で説明する)ではあるが達成される。
【発明の効果】
【0012】
図1では、わずかに減衰したスキャナ又はわずかに減衰した偏向ユニットの、振幅応答及び結合した位相応答4が示されると共に、振幅特性3が高い共振増大を有し、位相特性4は急落すなわち急な勾配を有することがわかる。これらの曲線3及び4の基礎となる偏向ユニットは、Q値=76,000を有する。これらの曲線からわかるように、このような偏向ユニットは、固定された制御周波数又は振動周波数によって、たとえ小さな共振周波数シフトによってでも、極めて大きくその振幅を変え、利用可能な駆動エネルギーでは補正できない。すなわち、例えば、極めて小さな温度変化でも、偏向ユニットを共振から引き出すのに十分である。この点において、固定された駆動周波数を用いた駆動信号は、加速効果ではなく、高い制動効果を有する。従来技術による、固定周波数を有するリサジュー投射プロセス又は装置は、その結果、どんな画像サイズも時間的に安定させず、いかなる安定作動もさせないので、極めて高品質な共振器又は偏向ユニットとは併用できない。
【0013】
以下において、ウエハ面にカルダン懸架され、真空封入され、互いに直行する軸を有し、Q=76,000のQ値を有する2軸のマイクロミラースキャナであり、曲線3及び曲線4を示す偏向ユニットを用いた、図1の曲線に対するいくつかの数値的実施例が提供される。比較的高減衰で、曲線1及び2並びにQ=2,000のQ値を示す、低品質のマイクロミラースキャナは、大気圧下で操作されるが、高品質ミラーとほぼ同じ直径を有する。Q値=2,000の高減衰スキャナは、外部から生じる±0.5Hzの周波数シフトによって、13度付近の制御信号と比較して振動位相を変化させる。対応するミラーは、加圧下における操作で、かつQ値=76,000であって、±0.5Hzの周波数シフトが外部から誘発されても、154度の位相シフトをもたらす。振幅に関して、このような外部から誘発される周波数シフトは、ほとんど減衰しない場合には14dBまでの振幅減少を生じる一方、減衰する場合にはたった0.06dBまでの振幅変動しか起こさない。構成要素の実現可能性が実証されなくてはならない自動車分野で規定されている、−40℃から+85℃の温度範囲内では、数ヘルツまでの周波数シフトは、ミラーの設計及び共振周波数に従って容易に誘発でき、更に一層大きな位相及び振幅の変動につながる。
【0014】
上記に指定された実施例を考慮するとき、前記目的が、リサジュー図形を観察フィールドに投射する投射装置のための偏向装置と、ほとんど減衰がなく、従来技術による偏向装置よりも小さなエネルギー消費で、偏向ユニットの共振動作における広い温度範囲で使用できる前記投射装置とを提供する本発明の、追加的根拠となる。更に、リサジュー図形を投射する投射装置の偏向装置を制御する方法と、偏向装置の共振周波数が外部影響によって変化しても、共振する偏向装置を操作できる前記投射装置と、を提供することが、本発明の基礎となる目的である。
【0015】
この目的は、3,000より大きなQ値を有する偏向装置によって満たされ、その制御装置は、急な位相降下及び/又は偏向装置の振動の最大振幅がその共振幅内に保たれるように、つまり、位相及び/又は振幅が概ね一定に保たれるように、偏向ユニットの振動の測定された位相に従って、制御信号の第1及び/又は第2の制御周波数を調節するように作られた、フィードバックループを有する。
【0016】
偏向装置を制御する方法に対応するやり方では、偏向装置は、Q値が3,000より大きくなるように、また、偏向ユニットの振動の位相が少なくとも1つの偏向軸であるように選択され、第1及び/又は第2の制御周波数が、位相及び偏向ユニットの振動の最大振幅が、共振幅内に保たれるように、測定された位相に応じて調節される。
【0017】
振幅が共振幅内で留まることが確実になるように、位相の測定及び位相又は制御周波数の調整によって、大きな偏角総量を有する高品質のスキャナが使用されてもよい。駆動又は制御周波数と、従って同様に共振器振動周波数は、望ましくは、位相及び振幅の両方の偏向軸を用途又は環境の状況の変化にかかわらず一定に保ち、従って、偏向ユニットを共振又は共振に近い状態で安定して操作するために必要とされる、自由度を表す。
【0018】
同様にこのことから、届いたリサジュー軌道は周期的に繰り返さない、すなわち、投射は非定常のリサジュー軌道で行われ、制御周波数又は共振周波数は固定されず、また従って互いに整数関係でなくともよいことになる。制御周波数は、位相及び振幅の安定化のために、調整装置に従って変更可能である。
【0019】
更に有利な進歩及び改善は、従属クレームに明記された特徴によって可能である。
【0020】
容認される変動範囲に対する振幅の規定値は、偏向素子の性質によって、また観測フィールドの解像度によって決定される。変動範囲は、例えば、最小限の解像度の逆数として軸にプリセットされる。ピクセルを用いた定義上では、振幅は望ましくは1つの“ピクセル幅”より小さく変動すべきである。例えば、480×640ピクセルの最小解像度の事象においては、偏向素子の振幅は、1/480(0.00283)及び1/640(0.00146)より小さく変動すべきである。望ましくは、振幅は1%未満で変動すべきであり、更に望ましくは0.5%未満、0.3%未満であればなおよい。
【0021】
特に望ましい実施例において、位相フィードバックループは、概ね制御周波数で与えられたリサジュー軌道の瞬間的な線密度によって決まり、また制御周波数を用いて推定可能な、線密度フィードバックループと接続され、線密度が許容差範囲を離れないような方法で、1つ又は両方の駆動軸の共振周波数に影響を及ぼす。瞬間的線密度の決定のために、制御位相、すなわち振動の開始点又は始まりが考慮されなければならない。
【0022】
通常は静電駆動されるマイクロミラー、偏向ユニットは、それぞれ異なる方法で、すなわち特定の温度変化により、偏向軸の駆動電圧の増加又は減少により、及び/又は、バネ定数又は剛性を活発に変化させることにより、共振周波数に対してはっきりと影響を及ぼし得る。他者間での温度操作は、後述するように、IRレーザー/光線によって実現できる。駆動力の増加がバネのサスペンションの軟化のようにふるまうので、駆動電圧の増加は共振周波数の減少をもたらす。
【0023】
駆動電圧の増加又は減少は、駆動電位に駆動DC電圧を追加的に重ね合わせることによって実現でき、共振周波数の転移の量は、DCベースの振幅の高さに影響され得る。
【0024】
バネ定数又は剛性の特異的変動は、ねじりバネなどのバネに直接作用し、それを水平方向に押圧又は延伸する、追加的アクチュエータの手段によって実現できる。
【0025】
振動の振幅は、線密度の調整と一緒にわずかに変動するので、位相フィードバックループのそばに、振動フィードバックループ又は調整回路が追加的に備えられてもよい。しかし、位相フィードバックループが最も高い優先度を有し、恒常的に素早く反応するよう構成されている一方で、線密度フィードバックループと、振動フィードバックループは後順位であって、妥当な場合はもっとゆっくりと反応する。
【0026】
線密度フィードバックループ又は調整回路は、異なる情報を用いることで、調整又は調節制御を行うことができる。例えば、不都合な繰返し率が保存された表、すなわち制御周波数の比率(f1/p, f2/q)が、保存され得る。しかし、このような表は、広範囲に及ぶ場合があるため、常に実行できるわけではない。
【0027】
更なる不都合な制御状況は、特定する前に考慮されなくてはならない。従って、他の可能性は、例えば、適正な、リサジュー図形の瞬間的な繰返し率と、隣り合う不都合な繰返し率と間の距離がトレースされ、不都合な状況に先立って、それぞれ逆の調整が行われる。PID制御器がその距離を監視してもよい。
【0028】
偏向ユニットは、望ましくは20,000より大きい、望ましくは100,000より大きいQ値を有する。必要とされる、60度より大きな光学走査角は、このような高品質な共振器偏向ユニットの使用により、例えば、静電偏向素子を5〜9ボルトの低駆動電圧で用いることによって、達成できる。
【0029】
偏向ユニットは、望ましくはウエハレベルで真空封入されることが特に有利である。偏向ユニットの振動の減衰は、この方法により、つまり減少した環境圧(P<1ミリバール)での操作により減少する。この点で、Q値は、製造工程におけるガスの充填工程による直接的な真空の低下によって、直接に影響されかねない。このことは、ミラー洞に封入されたゲッター(チタニウムなど)が熱せられ、気体分子を化学的に結合させるため、初めに、最小の圧力が実現されることを意味する。仮に真空が良好すぎる(圧が低すぎる又はQ値が望ましくない程に高い)場合、不活性ガスの充填は、最終的な容器封入及び次のウエハと一緒の加熱前にすでに行われていてもよい。これらの気体分子は、ゲッターにより化学結合することができないので、減衰と、従ってQ値低下の一因であり続ける。直接的な真空の改善又はQ値の増加は、ゲッター容量の高いゲッター(より良いゲッター材料及び広いゲッター表面)を用いることによってのみ達成される。
【0030】
制御装置は、容量性、光学性、ピエゾ抵抗性又は圧電性の位相測定用の測定装置を有することが望ましい。この点で位相は、使用されることが望ましい振動のゼロ交差を用いて、偏向素子の正弦波振動の振幅情報から決定される。
【0031】
望ましい実施例において、位相及び振幅の調整のために第1及び/又は第2の制御周波数に生じる変化が、プリセットされた値より大きい場合、偏向ユニットの照射用の照射源のスイッチを入れる制御装置と共に、温度安定化のための照射源が設けられる。温度の変動はこのように補正される。
【0032】
偏向ユニットに向けられた少なくとも1つの照射源、望ましくは温度に影響を与えるIRレーザーダイオードを有する、線密度フィードバックループを備え、また、制御ユニット又はこのフィードバックループが、リサジュー図形の密度を決定し、位相調整により変化する制御周波数の、プリセットされた関係によって決まる照射源に起因する電源入力を、制御又は調整するように構成されていることが有利である。この点において、関係を決定する周波数シフトは、プリセットされ保存された電源入力と、望ましくは、曲線の、又は表の、又はプログラム化された機能的結合の、又は、最も単純な場合は制御周波数f1及びf2のみを有するが、追加的に一連の変数、例えばf=FIRレーザー出力(f1、f2,瞬間的な投射レーザー出力,瞬間的なIRレーザー出力,MEMS温度,…)を有する、数学的関数の形で結合できる。調整又は制御もまた、PID制御器によって行われてもよい。望ましくない共振周波数を有し、常に小さな線密度しかないリサジュー軌道を伝達するため、周波数関係のトリミング、つまり温度処理の選択肢なしで、多数のミラー片が分離されなければならなかった。
【0033】
温度処理の目的は、位相調整によって確保された振幅安定性と平行して、同時に、リサジュー軌道の線密度が、部分的画像の期間(標準的には1/60秒)に対して適正であることを確実にすることである。換言すると、位相調整はミラーを共振に保ち、振幅を安定させる。しかし、この調整は不都合な線密度が設定される結果をもたらしかねない。例えば、線密度フィードバックループによる熱調節による追加的影響なしでは、他に線密度を変更する可能性がない。
【0034】
偏向ユニットの照射によって偏向ユニットに対して影響を与える温度は、恒常的に使用されなくてもよいが、むしろ、常に存在する位相調整を補完する。つまり、温度の影響が常に動的でなくてもよい一方、位相調整は常に動的でなければならない。従って、温度の影響は直接の妨げとなる特徴を有し得る。一方で、それはまた恒常的な調整として構成され得る。このことは状況による。例えば画像内容の変更に起因する共振周波数における予測可能な変動は、例えばルックアップテーブルによる赤外レーザー照射によって、恒常的に補正できる。ミラーに入力されるエネルギーは、画像メモリの書き出し又は読み出しによって常に事前に計算でき、また、IR光源によって補正するやり方で、結果的に中和できる。中和の情報は、ルックアップテーブルから得られる。衝撃又は振動又は外部から誘発された予測不可能な温度変化のような重なり合った事象は、制御周波数の(及び、従って線密度の)切断による追加的温度調整によって、補正されなければならない。従って、画像内容による予測可能な影響と違って、外乱は、フィードバックループが中和を行えるように、最初に生じなくてはならない。
【0035】
望ましい実施例では、偏向ユニットは少なくとも1つのマイクロミラーを有し、前記ミラーの偏向を示す光学走査角の合計は、30度より大きく、望ましくは40度より大きく、更に望ましくは60度より大きい。この点において、マイクロミラーは、ねじりバネにカルダン懸架を用いた2軸のマイクロミラーであってよいが、縦1列に並べて設けられた1軸のミラーが使用されてもよい。偏向装置に使用されるミラーは、通常は、互いに直交して設けられた2つの軸の周囲で振動する。しかし、90度以外の角度もまた、走査又は偏向軸の間に含まれる。本発明による方法又は本発明による偏向装置は、しかし、必ずしも2軸に制限されない。例えば3以上のねじりバネ懸架及び/又はフレキシブルバネ懸架を備えたスキャナも、従って、複雑かつ高密度に圧縮されたリサジュー軌道を実現するために使用できる。本発明による実施例は、ミラーのカルダン懸架などのMEMSスキャナの特定の構造設計にも、又は、櫛形の電極を有するタイプなど特定のタイプの駆動にも制限されない。投射ビームによって、設けられた投射面が十分な速度及び密度で抽出されることが常に必要条件である。これもまた、ミラーの反射ではなく、偏向又は回折素子によりビーム偏向するMEMSアクチュエータにより達成できた。
【0036】
望ましくは、本発明による、画像フィールドに画像を投射する投射装置用の偏向装置が使用されるが、その応用範囲はこのような投射装置に制限されず、むしろ、内視鏡検査又は顕微鏡検査のような、感覚像検出走査タスクをも含む。画像フィールドに画像を投射する投射装置において、投射する画像及び、画像フィールド上の光線の場所によって光線の強度を調節する調節ユニットが、偏向装置のそばに設けられる。望ましい実施例において、偏向する光線を生じさせる照射源は、多色発光のレーザーダイオードを備える。
【0037】
本発明による投射装置を用いて、画像情報は通常いつでも送信できる、つまり、画像素子は、リサジュー軌道のどのポイントでも送信できる。画像は従って、望ましくは2つの直交する走査軸のどちらでも、双方向で送信されることが望ましい。調節ユニットは、FPGA又はASICなどのデジタルモジュールにプリセットされた、固定された時間周期における関連した画像メモリから、各ミラー位置に沿って、例えばRGB画素強度の形で画像データを読み出す、制御ユニットによって制御されることが望ましい。調節ユニットは、読み出し強度値に対して、調節されたRGBレーザー光源を対応して制御する。例えば、異なる走査速度を考慮し、走査角に対して等間隔の画像素子投射を生じさせるなど、可変の画像素子投射率の実現が等しく可能になるように、本発明による投射装置は、固定された画像素子投射率に制限されない。
【0038】
温度の安定化のために、1以上の照射源が、投射装置を用いて偏向ユニットと協働し照射する、また、投射される画像によって決定された光線の強度に応じて、偏向ユニットに照射する。このやり方で、偏向ユニットにおける光線の強度に起因する温度変動は補正できる。
【0039】
本発明の実施例は、図に示され、以下の記述により詳細にわたって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】従来技術による、低品質な高減衰共振スキャナの振幅応答及び位相応答と、同様に構成された、高品質なMEMSベースの偏向ユニットのスキャナに対する振幅応答及び位相応答である。
【図2】フィードバックループを備えた、本発明による偏向装置の概略図である。
【図3】カルダン懸架と櫛形ドライブとを備えた、2軸のマイクロミラーの平面図である。
【図4】2つの軸における振動数の比率がピクセルパターンの解像度より小さい、非閉鎖性のリサジュー軌道の一部である。
【図5】振動数の比率がピクセルパターンの解像度にほぼ等しい、図4に示した非閉鎖性のリサジュー軌道の一部である。
【図6】本発明による偏向装置を備えた、本発明による投射装置の概略設計図である。
【図7】位相調整ループのブロック図である。
【図8】偏向ユニットの制御装置の詳細な回路図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0041】
前述の通り、17.15kHz〜17.17kHzの共振周波数に対する、高減衰マイクロミラー1,2及び、高品質マイクロミラー3,4の振幅応答と位相応答とが、図1に示されている。温度の変化などの外的影響の作用を表すために、共振シフトが曲線3’及び曲線4’と共に破線で示されている。つまり、周波数はより低い周波数の方向へわずかな値だけシフトしている。一方で、従来技術による制御信号の周波数は、前値のままである。すなわち、制御信号又は駆動信号はミラーに対して制動効果を有し得る、つまり、共振周波数と共に振動しなくなる。そのために、図2に基づく位相調節が本発明によって提案される。
【0042】
図2には、カルダン懸架を備えた2軸のマイクロミラー31を偏向素子31として用いた偏向ユニット30が、概略的に示される。駆動の詳細が示されていない偏向ユニット又はマイクロミラー31は、各軸に対して、制御装置32によってもたらされ、制御信号として周波数f1及びf2を有する制御信号によって駆動される。制御周波数f1,f2は、ミラー31の共振周波数に対応するはずである。ミラー31もまたその変化する共振周波数に応じて調節できるように、制御装置32は、位相フィードバックループ34を有し、前記位相フィードバックループ34は、ミラーが十分に共振状態で操作できるように、位相と、従って制御信号の制御周波数とを調節する。マイクロミラー31の正弦波偏向を測定する測定装置33が、位相を検出するために備えられる。更に、位相制御又は調節の結果として現れ得る、リサジュー軌道の不都合な線密度を修正し、線密度を所定の許容差範囲内に保つ、線密度制御器又はフィードバックループ29が備えられてもよい。このことは、1つ又は両方の共振周波数の特定の離調によって行われる。
【0043】
高い偏向速度又は走査速度のために、瞬間的なミラーの位置は、いずれの場合も、所望するどんな時点でも、十分な正確さ及び解像度で個別に測定することができない。一方で、特に正弦波振動のゼロ交差では、継続的に測定された振幅情報から、位相は極めて正確に決定できる。これは、光学又は容量性,ピエゾ抵抗性又は圧電性のセンサーを用いて検出できる。
【0044】
共振ミラーの位置及び位相は、モニターレーザー光線及び位置感受性の2次元フォトダイオード(PSD)を介した時間分解能で、光学的に検出できる。ミラーで偏向したレーザー光線の入射位置によって、PSDの4つの探査電極で異なる光電流がピックアップされ、電流電圧コンバータによって、また、次の異なる構造、合計構造及び最終的な割合構成(合計によって画定された差)から、時間分解されたXY座標信号に変換される。
【0045】
ピエゾ抵抗測定法では、ねじりバネにおいてねじれ振動中に、偏向の角度に従って機械的に誘起されて生じる圧力は、センサー構造における抵抗変化に影響を与える。これは通常、ホイートストン・ブリッジで評価され、ねじれ角に比例した出力信号を送信する。
【0046】
例えば窒化アルミニウム層又はチタン酸ジルコン酸鉛層などをベースにした圧電センサーによって、ねじりバネのねじれは、電荷シフトの原因となるグリッド変化を生じさせる。その空間的荷電変化は、傾斜角に比例した電圧として測定できる。
【0047】
容量評価プロセスにおいては、傾斜角に応じて時間的に変更可能な、静止及び可動センサー電極指の間の静電容量が評価される。文献から、一連の非常に多くの異なる評価法が知られている。いわゆる搬送周波数プロセスがしばしば使用されている。そのために、ラジオ周波数により変調された電圧が、櫛型構造のセンサーに適用される。静電容量の指状の動きは、信号形状が搬送波信号の振幅変調を示す容量性電流を生じさせる。振幅変調において、情報はミラーの動きを介して収容され、増量(混合)及びフィルタリングによって抽出され得る。
【0048】
図7において、制御装置32に使用できる位相フィードバックループ34が示されている。
【0049】
通常、上述の測定プロセスは、ノイズと干渉に対して多かれ少なかれかなりの弱点があり、投射の位置決定と、画像投射に必要な解像度に応じた画素アドレス指定とのために、直接すぐに利用できない(図6に関連して更に説明する)。乗算器35及びローパス・フィルタ36を有するロックイン増幅器は、例えば、正確な位相差信号を決定するために、位相フィードバックループ34に使用される。更に、フィードバックループ34は、ローパス・フィルタ36に接続され、また乗算器35に接続された、電圧制御発振器(VCO)又は数値制御発振器(NCO)37を有する。従って乗算器35は、測定装置33からの信号、すなわちミラー31からのフィードバック信号及び発振器37からの出力信号を受信する。
【0050】
位相差を0に制限せず、むしろ任意に設定可能な値にするために、発振器の出力と、明瞭さのために省略された乗算器35との間に、フィードバックループに対する基準信号をプリセットする位相器が設けられなければならない。基準発振器信号(ここでは乗算される前のVCO信号)は、位相差に0以外の所望の値もプリセットできるように、位相器を用いて遅らされる。ミラーを共振させておくために、この位相調整器は、制御信号とミラー振動との間に、信号処理におけるすべての遅延を考慮した場合に生じる、例えば90度の位相差が生じるように設定されてもよい。
【0051】
ミラー位相角と制御信号の位相角との差は、制御信号(基準発振器)が、最初に、容量的に得られるフィードバック信号によって乗算され、例えば、次にローパスフィルタリングを受けるので、ロックイン増幅器を用いて十分に正確に決定できる。直流信号は、三角法関係に応じた出力で得られ、位相差(基準発振器に対するミラー位相)に比例する振幅を有する。このロックイン増幅器の出力信号が、図示されない増幅器(利得)を介して発振器37の入力に供給されると、PLLフィードバックループ(位相ロックループ)が得られる。ミラーと制御信号との間の一定の位相差は、このPLLを用いて実現できる。換言すれば、PLLは、ミラーが常に共振している又は規定の共振に近い状態をもたらすことができる。つまり、制御周波数f1,f2は、ミラー31の共振周波数と一致する。
【0052】
このことは、制御信号の周波数f1,f2は常に一定ではなく、むしろ位相の安定及び振幅の安定のために有利に変化できることを意味する。更に、水平及び垂直のビーム偏向の共振周波数は、固定された整数比を有しない。その結果、リサジュー軌道は固定されず、リサジュー軌道の固定された繰返し率は大抵存在しない。画像投射装置では、このことは、映写面の抽出が一定でないために、画像メモリ読み出し過程の予測可能な指令が存在しないことを意味する。
【0053】
常に映写面で影響を受ける同じ散乱中心ではなく、むしろ異なる散乱中心であるために、リサジュー軌道の時間変化は、有利な状況では、レーザー投射で生じる望まないスペックルパターンが目に見えて減少する結果をもたらす。しかしこのことは、スペックルパターンもまた変化し、重ね合わせること及び時間積分によって、目には均等に見えるという結果を有する。このことは、固定された軌道を有するすべてのレーザー投射プロセスに関する利点である。
【0054】
図2に示された位相フィードバックループ34は、両方の軸について概略的にのみ示されているが、位相フィードバックループがそれぞれの振動軸に備えられてもよい。励磁信号と対応する共振回路振動との間の位相差を安定させる位相フィードバックループが、それぞれの振動軸に存在するとしても、可変の振動(発振器)周波数が原因で、2つの軸の振動は決して互いに安定した位相関係を形成しない。
【0055】
図3で使用され得るような、カルダン懸架を有する2軸のマイクロミラー5が、図3に示されている。軸から離れた静電櫛型駆動7と、軸に近接したカム駆動8は、センサー電極として使用され得ることが示されている。ミラー板5は、ねじりバネ6を介して可動フレーム9に吊り下げられており、可動フレーム9は、更に、ねじりバネ10を介して固定チップフレーム11に吊り下げられている。フレーム9は、静電櫛型駆動12によって共振させられてもよく、また、可動フレーム9のための、駆動又はセンサーの軸に近接する櫛型電極は、明瞭さのために省略されている。
【0056】
本発明によるリサジューレーザー投射装置の配置が図6に示されている。この投射装置は、ここでは符号22で指定され、図2に示され、真空封入された2軸のMEMSミラースキャナを用いた、偏向装置を有する。その光又は放射線がコリメータ20によって並列化され、ビーム結合システム21によって同軸光線15に成形される、赤,緑及び青色のレーザー光源18が、放射線源として設けられる。この光線15は、MEMSミラースキャナ22の傾いたガラスカバー23によって、ミラーに向けられる。偏向されたレーザー光線16は、映写面24を2軸照射する。デジタル画像データは、入力25を介したデジタル信号プロセス及び制御ユニット13への配信であり、画像データに対応するその制御パルスは、レーザー光源18の放出が制御されるよう補助すると共に、アナログ制御ユニット17へ転送される。信号プロセス及び制御ユニット13に接続された、偏向ユニット23のミラーの偏向を測定する測定装置33は、33で示されている。前記信号プロセス及び制御ユニットは、アナログ電圧増幅器14も制御する。
それは、信号プロセス及び制御ユニット13の一部と一緒に、周波数f1,f2を有する両方の偏向軸に対して、ここでは1つだけが示されている制御信号ラインを用いた、図2による制御装置を形成する。信号プロセス及び制御ユニット13は、同様に、図7に示す2つのフィードバックループ34を備える。
【0057】
更に、ミラーへ入射するレーザー出力の画像データに起因する変動を一定に保つために使用できる、望ましくは、例えばシリコンの吸収極大波長に適合したレーザーダイオードなどの近赤外線レーザー光源である、第4のレーザー光源19が設けられる。示されている配置では、レーザー光源19は、MEMSミラースキャナ22の、ミラー塗装されていない裏面に対して照射する。2つのスキャナ軸のうち1つ又は両方の軸の周波数は、同時に、極めて低出力のレーザーで、効果的に影響を受けることができる。
【0058】
ミラーの動き及びレーザー光源18の制御に応じた信号プロセス及び制御ユニット13のメモリ内における画像データのアクセスは、その結果、以下のスキームに従って行うことができる。光学的、ピエゾ抵抗的、圧電的又は容量的に得られたフィードバック信号を用いて、正確な位相情報が得られる。図7との関連で前述したように、このフィードバック信号が、通常、特定の干渉部分及び変形を有するために、このフィードバック信号は、望ましくは上述したロックイン増幅器で更に処理され、この更なる処理は、信号プロセス及び制御ユニット13に含まれる。信号は、従って、基準発振器37(VCO、図7を参照のこと)と、フィードバック信号との間の位相差に比例する、ロックイン増幅器の出力で得られる。ミラーの振動形状は、ミラーが正弦関数的に振動する条件下での周波数及び位相に関して、統合的に計画される。両方の軸に対する画像素子の座標は、例えば、このミラー位置信号に関して、固定された時間時計(ピクセルクロック)を基に決定でき、関連したメモリ内容を読み出しできる。すべてのデジタル手段及び構成要素は、信号プロセス及び制御ユニット13の一部である。メモリ内容(強度値)の読み出しの後に、レーザー光源ドライバー17がこれらの内容に基づいて相応に制御され、また、画像素子がレーザー光源18の制御を介して送信されてもよい。
【0059】
画像素子投射は、固定された不変の定位置のいかなる画像素子パターンでもなく、むしろこのパターンと異なり、画像が歪むことなく、理論上は補完された画像素子もまた2つのパターンポイントの間のポイントにセットされ得ることを目的とする投射をもたらす。従って、画像素子がセットされる場合は、ピクセルクロックに依存し、瞬間的な配置には左右されない。この配置は送信される画素の強度だけを決定し、画像メモリを読み出しする。1つの画像メモリセルを読み出して画像素子の投射を補間するだけでなく、むしろ瞬間的位置状況が直接隣り合うすべてのピクセルを読み出して、集中的に補間することが望ましい。ピクセルクロックが画像データを投射できない時間間隔は存在しない。
【0060】
閉じていない、つまり非定位置のリサジュー軌道27の一部が、図4及び図5に示されている。図4に示すように、ミラーの共振周波数に相当する可変のサンプリング周波数又は走査周波数は、ピクセルパターンの解像度より小さい相互関係を形成する。第2の通過では、軌道28は、これら走査周波数の非整数関係のため、また可変の走査周波数のために、以前と同じ軌道である軌道27を通ることはない。各走査法において、わずかに異なる(インターレース方式の)軌道が生じた場合にも、安定した画像投射が可能である。1/60秒に達した行密度が、いずれの場合にも画像行解像度を十分にカバーすることが重要である。
【0061】
図5において、対応する閉じていないリサジュー軌道27が図4と同様に示され、そこでは可変走査周波数の関係は、ピクセルパターン26の解像度と概ね一致する。以前の軌道27と同じ軌道が、第2の通過においてこの上を通ることはない。
【0062】
一方で、図4によれば、走査周波数f1及びf2の選択は、それらの割合が、投射される画像の走査線数より小さくなるように、また、多数の組み合わされた画像をつなげたものだけで、すべての画像をカバーするように行われる。図5によるこの表現では、周波数関係は、画像に含まれる各行が、最初の通過においてあらかじめ"抽出"又は"読み込み"、"記入"又は"投射"になるような行数に、直接構成される。第2の通過において、各行は同様に再度読み込まれて投射されるが、図示するように、軌道はわずかに補正するように、一方で画像を妨害しない範囲で伸びる。
【0063】
上述のように、位相調節は、投射プロセスが、可変的に設計された2つのミラー軸の、制御又は振動周波数f1及びf2を用いた、非定位置リサジュー軌道に基づいているという事実をもたらす。この点において、"可変的"は、偏向ユニットの共振周波数のシフトの可能性によって、例えば、温度変更の結果としてもたらされる間隔の範囲内で、可変であるということである。そのときの電流の周波数f1及びf2に影響された、リサジュー図形の好ましくない線密度が選択されることが、調節を原因として起こり得る。従って、2つの周波数のうち1つの、たった0.01Hz単位の調整が、投射された画像が10本の線を有するか数百本の線を有するかを決定することが、全ての意味において可能である。従って、好都合な及び不都合な周波数間隔、並びに周波数関係を画定できる。仮に2つの周波数f1及びf2が、例えば、24,000Hzと24,057Hzのように互いに極めて近接する場合、好ましい周波数が比較的広く存在する。一方で、仮に2つの周波数f1及びf2が、例えば、500Hzと24,000Hzのように、互いにかけ離れている場合、結果として、好ましい周波数の間隔は狭くなる。いずれの場合でも、このような好都合な及び不都合な領域は、周波数をそこから抽出できるように、所望の解像度及び限定値に応じてあらかじめ画定することができる。
【0064】
既知のように、f/f = p/qが有理数であり、このときp及びqが整数であっていかなる公約数も有さない場合には、リサジュー曲線は正確に周期的である。リサジュー曲線の繰り返し周波数Fは、従って、F=f/p = f/q である。
【0065】
均一照射(高線密度)を得るには、Fを可能な限り小さく保つことが目標である。fを規定値とすると、qは可能な限り大きな整数になるはずである。従って、周波数関係f1/f2の選択に関しては、可能な限り大きな分母を持つ有理数p/qである。可能な限り小さなFは、このFが、所望の画像リフレッシュ・レートfより小さいはずであることを意味する。
【0066】
先行する段落においては、定位置リサジュー軌道が示されてきた。本発明で提案された位相調節のおかげで、固定周波数f及びfと共働することは必要不可欠ではない。それでもやはり、先行する結果は、2軸の共振走査ミラーの周波数f及びfの解釈について適切である。
【0067】
/f = p/qが有理数である場合、qは(概ね)x方向又はy方向におけるリサジュー図形のノード数を指す。ノードqには、交差する2つのq線が必要である。決定され得る画素数は、従って、線とノードのどちらを数えるかによって、q又は2qとなる。
【0068】
周波数と、従ってそれらの割合が、1%=1/100単位で変動する場合、変動間隔毎に小さな分母qを持つ最も不都合な有理数が存在する。qはよくても100であり、通常はもっと悪く、概して10から20の間である。
【0069】
従って、本発明の一部は、不都合な周波数関係を回避することである。温度調節カウンタ制御によって、つまり、周波数f1及び/又はf2が変化するように、例えばNIR(近赤外線)レーザー光源19によって偏向ユニットが照射され得る他の実施例では、不利な周波数関係は、線密度制御器29によって回避することができる。1以上の更なる放射線源も勿論設けることができる。
【0070】
受け入れがたい線密度となり、回避されるべきである制御周波数の関係は、温度制御又は温度調節を直接行えるように、偏向ユニットごとにその製造後に決定されなければならない。このために、これらの周波数関係は制御装置のメモリに保存される。加えて、周波数差又は周波数シフトは、放射線源の出力に応じて、曲線、又はルックアップテーブルの形で保存される。
【0071】
制御装置又は線密度制御器又はフィードバックループは、次に、画像投射又はリサジュー投射と平行して、周波数関係及び/又は瞬間的線密度を監視し、位相調節に起因して不都合な関係が生じた場合は、放射線源のオンオフを切り替える。
【0072】
例えば、仮にNIRレーザー光源19又は対応するレーザー光源が選択されると、基準量として一定の赤外レーザー出力が最初から適用でき、どちらの方向にも、つまりあるときはIRレーザー出力の減少によって、またあるときはIRレーザー出力の増加によって、影響を与えることができる。
【0073】
NIRレーザー光源19は、例えば環境温度の変化による、MEMSミラースキャナ22の共振器周波数における変動、すなわち振動周波数における変動を補正するためにも使用できる。このために、所定の周波数範囲が制御周波数用にプリセットされてもよい。
【0074】
図6において、レーザー光源19はミラーの裏面を照射する。勿論、ミラー共振周波数か、外側の可動フレームの共振周波数のどちらか、又はその両方の支配的な影響力を達成するために、スキャナ22の異なる入射箇所が選択されてもよい。あるときはミラー上に、あるときは外側の可動フレーム上に、2つのレーザースポットを用いることで、また、互いに独立して制御可能な2つのレーザー光源をベースにして、両軸の共振周波数の影響を個別にかつ同時に及ぼすことができる。
【0075】
図8において、図2による偏向装置が、図7の位相フィードバックループ34を用いて、再度、より正確に示される。これらの図面中では、部分的に同一の要素が使用されているが、明確にするために部分的に新しい参照記号が選択されている。40は、上述の真空封入された2Dスキャナ又は偏向ユニットを指す。
測定信号41,42は、アナログ信号をデジタルフィードバック信号に変換する、A/Dコンバータ45,46に接続された、各電流電圧コンバータ43,44に対して、偏向軸毎に容量性フィードバックとして供給される。それぞれがデジタルローパスフィルタ51,52及び発振器(NCO)53,54を有するデジタル乗算器49,50、位相フィードバックループ47,48が、A/Dコンバータ45,46に接続される。位相信号は、偏向ユニット40の駆動に対する制御信号として、D/Aコンバータ55,56及びアナログ電圧増幅器57,58を介して供給される。
【0076】
周波数f1及びf2を有する制御信号に対応する、発振器53,54のそれぞれの出力信号は、周波数関係f1/f2のデジタル監視及びIRレーザー光源60のデジタル制御のために、ユニット59に供給される。リサジュー線の密度にとって不都合な周波数関係は、例えば、このユニット59に保存される。仮にこのような不都合な周波数関係が位相調節に起因して起こった場合は、ユニット59は、ミラー62を照射するように、アナログIRレーザー光源ドライバー61を介してレーザー光源60を制御する。この点において、例えばレーザー光源60の制御の時間を介して決定される必要な入力は、周波数シフトに応じてユニット59に保存されるか、又は関数関係として保存される。従って、不都合な周波数関係に最初から対抗することは可能である。
【0077】
述べられている不可欠な要素は、制御装置を形成するFPGA又はASICとして、制御ユニット63と結合している。
【0078】
上述したように、特に有利な偏向装置の実施例は、2つの直交するスキャン軸の共振周波数が16kHzより上の、2軸のMEMSミラースキャナを用いており、10%未満の設計の実施例とは互いに異なる。このような配置の利点は、自動車分野に対して特に適合することであり、当分野では特に、衝撃非感受性及び振動非感受性と同時に高い解像度を有する投射システムを、例えば、計器のディスプレイ、ダッシュボードのディスプレイ又は乗客のエンターテインメント用に実装することが問題とされる。衝撃非感受性は、2つの極めて高く互いに近接した共振周波数によって得られる。従来技術による、高速から低速の軸の極めて広い周波数関係を有するリサジュースキャナとは異なり、本発明においては、通常、2つの使用状態の間に寄生状態は存在しない。
2つの走査周波数は、小さな線密度の結果として、リサジュー軌道なしで変化することがあるから、2つの比較的高位でほとんど差がない共振周波数のおかげで、広い周波数空間を同時に実装することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察フィールドにリサジュー図形を投射する投射装置のための偏向装置であって、
前記偏向装置は、リサジュー図形を生じる、少なくとも1つの第1偏向軸及び1つの第2偏向軸について光線を偏向するように構成され、偏向軸について振動を生じさせる偏向ユニットと、前記偏向ユニットに対する制御信号を生じさせる制御装置とを備え、
前記制御信号は、概ね偏向ユニットの共振周波数に相当する第1及び第2の制御周波数を有し、
前記偏向ユニットは3,000より大きいQ値を有し、
前記制御装置は、測定された偏向ユニットの振動の位相に応じて、振動の最大振幅が偏向ユニットの共振範囲に留まるように、第1及び/又は第2の制御周波数を調整するように構成された第1フィードバックループを備え、前記制御周波数は実質的に固定された整数比率を持たない、ことを特徴とする偏向装置。
【請求項2】
それぞれの偏向軸の振動の振幅が、最小限の解像度によって1未満単位で変化するように、第1のフィードバックループが、制御周波数を調整するために作られていることを特徴とする、請求項1に記載された偏向装置。
【請求項3】
前記制御装置が、線密度が所定の許容差範囲内にあるような方法で、制御周波数からもたらされた線密度に応じて、第1及び/又は第2の偏向軸の共振周波数に影響を及ぼすように構成された、第2のフィードバックループを備えることを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載された偏向装置。
【請求項4】
第2のフィードバックループが、所定の制御電圧の変動により、バネ定数の離調により、及び/又は偏向装置に影響を与える温度により、第1及び/又は第2の偏向軸の共振周波数に影響を及ぼすように構成されたことを特徴とする、請求項3に記載された偏向装置。
【請求項5】
それぞれの偏向軸の振動の振幅が、1%未満、望ましくは0.5%未満、更に望ましくは0.3%未満単位で変化するように、第1のフィードバックループが、制御周波数を調整するために作られていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載された偏向装置。
【請求項6】
前記偏向ユニットが、20,000より大きな、望ましくは100,000より大きなQ値を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載された偏向装置。
【請求項7】
前記偏向ユニットが、望ましくはウエハ面上に真空封入されたことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載された偏向装置。
【請求項8】
前記制御装置が、容量的、光学的、ピエゾ抵抗的又は圧電的に位相の測定をする測定装置を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載された偏向装置。
【請求項9】
前記偏向ユニットに向けられた少なくとも1つの照射光源が、温度補正のために備えられ、また、位相と振幅の調整のために行われる第1及び/又は第2の制御周波数の変更が、プリセット値より大きい場合に、前記制御装置が前記照射光源を強度変調の方法で制御するようにされていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載された偏向装置。
【請求項10】
前記偏向ユニットに向けられた少なくとも1つの照射光源を備えた、前記第2のフィードバックループが温度影響のために備えられ、また、制御装置が、リサジュー図形の密度を決定し、位相調整によって可変である当面の制御周波数の関係に左右される、照射光源に起因する電力入力を制御するように構成されることを特徴とする、請求項2〜9のいずれかに記載された偏向装置。
【請求項11】
前記制御ユニット又は前記第2のフィードバックループが、周波数シフトと温度影響との関連表が保存されたメモリを有する、又は、電源入力が数学的関数を用いて制御されるように、前記制御ユニット又は前記第2のフィードバックループが、技術プログラミングの方法に適合することを特徴とする、請求項10に記載された偏向装置。
【請求項12】
前記偏向ユニットが少なくとも1つのマイクロミラーを有し、前記ミラーの光学的偏角の合計が30度より大きく、望ましくは40度より大きく、更に望ましくは60度より大きいことを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載された偏向装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載された偏向装置を備え、前記偏向装置は投射光源と調節ユニットとを有し、前記調節ユニットは、投射する画像と、光線が画像フィールドのどこに当たるかに応じて投射光源の光線の強度を調節する、画像フィールドに画像を投射する投射装置。
【請求項14】
偏向される光線を作り出す投射光源が、少なくとも1つの多色発光のレーザーダイオード、望ましくは複数の多色発光の放射レーザーダイオードを有する、請求項13に記載された投射装置。
【請求項15】
前記偏向ユニットと前記制御ユニットとを照射するために強度を調節できる、少なくとも1つの放射光源が、投射光源の瞬間的な放射強度に応じて、放射光源の放射強度を制御するようにされたことを特徴とする、請求項12又は13のいずれかに記載された投射装置。
【請求項16】
観察フィールドにリサジュー図形を投射する投射装置の偏向装置を制御する方法であって、
前記偏向ユニットを有する偏向装置は、リサジュー図形を生じさせるために、少なくとも1つの第1偏向軸及び1つの第2偏向軸について光線を偏向させ、
偏向軸に振動を生じさせるための前記偏向ユニットは、前記偏向ユニットが概ね共振して働くように選択された第1及び第2制御周波数によって制御され、
前記偏向装置の前記偏向ユニットは、3,000より大きいQ値を有するようにされ、
また、前記偏向ユニットの振動の位相は、少なくとも1つの偏向軸について測定され、また、振動の振幅が前記偏向ユニットの共振範囲に保たれるように、第1及び/又は第2の制御周波数の変更によって調整され、
時間的に変化するリサジュー軌道を生じさせるための前記制御周波数が、概ね固定された整数比率を持たないことを特徴とする、
偏向装置を制御する方法。
【請求項17】
前記各偏向軸の振動の振幅が、前記リサジュー図形の画像の最小解像度の逆数値より少ない単位で変動するように、及び/又は、前記各偏向軸の振動の振幅が、1%より少なく、望ましくは0.5%より少なく、更に望ましくは0.3%より少ない単位で変動するように、前記制御周波数が調整されることを特徴とする、請求項16に記載された方法。
【請求項18】
第1偏向軸及び/又は第2偏向軸の共振周波数が、線密度が所定の許容差範囲内になるような方法で、前記制御周波数より得られた線密度に応じて調整されることを特徴とする、請求項16又は17のいずれかに記載された方法。
【請求項19】
前記偏向ユニットが圧力下に保たれることを特徴とする、請求項16〜18のいずれかに記載された方法。
【請求項20】
前記位相が、光学的、容量的、ピエゾ抵抗的又は圧電的に測定されることを特徴とする、請求項16〜19のいずれかに記載された方法。
【請求項21】
前記偏向ユニットが、放射光源による電磁放射で照射され、電源入力は、位相調整に起因して生じる、少なくとも1つの制御周波数の周波数シフトに応じて制御されることを特徴とする、請求項16〜20のいずれかに記載された方法。
【請求項22】
前記電源入力が、望ましくは曲線又は表の形で、又は数学的に、プリセットされた電源入力と関連する関係を決定する周波数シフトと共に、リサジュー図形の密度を決定する、前記制御周波数のプリセットされた関係に応じて制御されることを特徴とする、請求項21に記載された方法。
【請求項23】
前記電源入力は、位相調整によって生じる、第1及び/又は第2の制御周波数における変化がプリセット値を上回る場合に行われることを特徴とする、請求項21又は22のいずれかに記載された方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−513828(P2013−513828A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543522(P2012−543522)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007684
【国際公開番号】WO2011/082789
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(504174917)フラウンホッファー−ゲゼルシャフト・ツァー・フォデラング・デル・アンゲワンテン・フォーシュング・エー.ファウ. (26)
【Fターム(参考)】