説明

抗アルキル化物質の探索方法、抗アルキル化剤

【課題】 アルキル化の中でもOメチルグアニンを引き起こすアルキル化を抑制・修復する抗アルキル化物質を探索する方法及び該探索方法によって探索された抗アルキル化剤を得ることを目的とする。
【解決手段】 本発明の抗アルキル化物質の探索方法は、Oメチルグアニンを認識するアルキル化修復遺伝子を有する融合遺伝子の発現量を測定し、アルキル化剤添加により引き起こされた宿主細胞のDNAのアルキル化に被検物質を添加し、アルキル化量を抑制する抗アルキル化物質を探索することができる。
【選択図面】 図1

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗アルキル化物質の探索方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本人の最も多い死亡原因として悪性新生物(以下、がんという)が挙げられる。がんの原因は未だ完全に解明されていないが、そのがん化の一因としてDNAの損傷が挙げられる。DNAの損傷とは、環境からの要因によりDNAに生じた物理的又は化学的変化のことをさし、中でも化学的変化の1つであるDNAのアルキル化が最近注目を集めている。
【0003】
DNAのアルキル化とは、通常、DNA上の塩基がアルキル化されることをいうが、特にグアニン塩基の6位の酸素原子がアルキル化されたOメチルグアニンががん化に関与するといわれている。
【0004】
例えば、大腸菌DNA上にOメチルグアニンが生じると、ada遺伝子の転写が起き、Adaタンパク質が産生される。このAdaタンパク質は、DNAのOメチルグアニンを修復するタンパク質であり、細胞内に生じたDNA上のOメチルグアニン量と相関関係を有する。
【0005】
メチルグアニンの生成量を測定することにより、DNAのがん化に関わるアルキル化を確認することが可能となる。ここで測定方法としては、Adaタンパク質とβ−ガラクトシダーゼの融合タンパク質をコードした形質転換体を用いて測定する方法がある(非特許文献1)。
【0006】
この測定方法によれば、HPLC、GCMS又はLCMS等の高価な機器及び技術による大掛かりな測定方法を用いることなく、DNAのアルキル化の中でも特にOメチルグアニンに特化した測定をすることが可能である。
【0007】
このようにして、DNAのアルキル化メカニズムに関しては近年様々な方法で研究されてきている。
【0008】
そして、上記アルキル化のメカニズムが解明されていくにつれて、このアルキル化を抑制する物質、すなわち「抗アルキル化物質」の存在に関する研究も始まりつつある。
【0009】
しかしながら、例えば前述の測定方法では、Oメチルグアニン量を測定し、Oメチルグアニンに係るアルキル化物質を探索することが可能であるが、抗アルキル化物質を探索することは不可能であり、逆にがん化を抑制する抗アルキル化物質の探索する方法については未だ確立されていない。
【0010】
また、抗アルキル化物質を探索するために、様々な被検物質を1度に大量かつ安定に、精度良く測定する必要があるが、前述した測定方法では、Oメチルグアニンの量を測定することができても、大量のサンプルを1度に安定かつ精度良く測定することは困難である。
【非特許文献】 (Y. Nakabeppu Mutation Research 146(1985) 155−167)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、アルキル化の中でもOメチルグアニンを引き起こすアルキル化を抑制・修復する抗アルキル化物質を探索する方法及び該探索方法によって探索された抗アルキル化剤を得ることを目的とする。
【発明を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
【0013】
(1)宿主細胞にアルキル化剤を添加する工程と、前記宿主細胞に被検物質を添加する工程とを具備することを特徴とする抗アルキル化物質の探索方法、
(2)前記宿主細胞が、アルキル化修復遺伝子と指標となる遺伝子との融合遺伝子を有することを特徴とする(1)に記載の抗アルキル化物質の探索方法、
(3)前記宿主細胞が大腸菌由来であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の抗アルキル化物質の探索方法、(4)前記アルキル化修復遺伝子が、大腸菌ada遺伝子であることを特徴とする(1)乃至(3)に記載の抗アルキル化物質の探索方法、(5)前記指標となる遺伝子が、大腸菌lacZであることを特徴とする(1)乃至(4)に記載の抗アルキル化物質の探索方法、(6)前記アルキル化剤を添加する工程で、前記宿主細胞のDNAがアルキル化されることを特徴とする(1)乃至(5)に記載の抗アルキル化物質の探索方法、(7)前記アルキル化剤を添加する工程で、前記DNA上のグアニン塩基の6位の酸素原子がアルキル化されることを特徴とする(1)乃至(6)に記載の抗アルキル化物質の探索方法、(8)前記アルキル化剤が、MNNG(1−メチル−3−ニトロ−1−ニトロソグアニジン;1−Methyl−3−nitro−1−nitrosoguanidine)、MNU(N−ニトロソ−N−メチルウレア;N−Nitroso−N−methylurea)、DEN(N−ニトロソジエチルアミン)又はENU(N−ニトロソ−N−エチルウレア)であることを特徴とする(1)乃至(7)に記載の抗アルキル化物質の探索方法、(9)前記アルキル化剤を添加する前に前記被検物質を添加する場合において、前記DNAのアルキル化が抑制されることを特徴とする(1)乃至(8)に記載の抗アルキル化物質の探索方法、(10)前記アルキル化剤を添加する後に前記被検物質を添加する場合において、前記DNAのアルキル化が抑制されることを特徴とする(1)乃至(8)に記載の抗アルキル化物質の探索方法、(11)自然発生的にアルキル化されている宿主細胞に被検物質を添加する工程を具備し、前記宿主細胞は、アルキル化修復遺伝子と指標となる遺伝子との融合遺伝子を有することを特徴とする抗アルキル化物質の探索方法、(12)前記宿主細胞は、大腸菌由来であることを特徴とする(11)に記載の抗アルキル化物質の探索方法、(13)前記アルキル化修復遺伝子が、大腸菌ada遺伝子であることを特徴とする(11)又は(12)に記載の抗アルキル化物質の探索方法、(14)前記指標となる遺伝子が、大腸菌lacZであることを特徴とする(11)乃至(13)に記載の抗アルキル化物質の探索方法、(15)前記DNA上のグアニン塩基の6位の酸素原子が自然発生的にアルキル化されることを特徴とする(11)乃至(14)に記載の抗アルキル化物質の探索方法、(16)宿主細胞にアルキル化剤を添加する工程と、前記宿主細胞に被検物質を添加する工程とを具備する抗アルキル化物質の探索方法、又は、自然発生的にアルキル化されている宿主細胞に被検物質を添加する工程を具備する抗アルキル化物質の探索方法であって、前記宿主細胞は、大腸菌由来であり、アルキル化修復遺伝子と指標となる遺伝子との融合遺伝子を有する抗アルキル化物質の探索方法によって、探索されたことを特徴とする抗アルキル化剤、(17)カプトプリン、キトサン、クロロフィリン、L−シトルリン、クルクミン、フィセチン、L−グルタチオン、フェネチルイソチオシアネート、ケルセチン、アスコルビン酸、ルチン、シスチアミン、エピカテキン、β−カロチン、キトサン及び/又はフォロログルシノールを含有することを特徴とする抗アルキル化剤。
【0014】
従来は、がん化の一因となるDNAのアルキル化を引き起こすいくつかのアルキル化剤によりada遺伝子の発現が上昇することがわかっていた。しかしながら、抗アルキル化物質を探索する試みがなされていなかった。
【0015】
そこで、本発明者らはアルキル化物質を探索するだけではなく、例えば、アルキル化物質が体内に取り込まれた際にそのDNAのアルキル化反応を抑制する、又は、体内に自然発生的に起こりうるアルキル化を抑制・修復する等の被検物質として抗アルキル化物質を探索する方法を確立するに至った。更に、効率良く、信頼度の高い結果を得るために、大量のサンプルを一度に測定できるハイスループットな系を確立するに至った。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
【0018】
宿主細胞にアルキル化剤を添加する場合における抗アルキル化物質の探索方法について説明する。
【0019】
本発明の抗アルキル化物質の探索方法(以下、「本発明の探索方法」という)は、宿主細胞にアルキル化剤を添加する工程と、宿主細胞に被検物質を添加する工程とを具備することを特徴とする。
【0020】
すなわち、本発明の探索方法では、宿主細胞にアルキル化剤を添加し宿主細胞のDNAをアルキル化させると同時に、この宿主細胞に被検物質を添加することにより、DNA上のアルキル化された塩基の量(以下、アルキル化量とする)を抑制する物質、つまり抗アルキル化物質を探索する。
【0021】
宿主細胞とは目的の遺伝子等を取り込ませ増殖する細胞のことをいい、ここでは、例えば大腸菌を使用する。他の宿主細胞としては、枯草菌、酵母、線虫、ハエ・マウス・ヒトの細胞株等を使用してもよい。
【0022】
ここでDNAのアルキル化とは、DNA上のグアニン塩基の6位の酸素原子がアルキル化される、つまり、Oメチルグアニンが形成されることをいう。
【0023】
また、本発明で用いる宿主細胞、例えば大腸菌には、目的の遺伝子としてアルキル化修復遺伝子と、指標となる遺伝子とからなる融合遺伝子を組み込むことを特徴とする。
【0024】
この場合のアルキル化修復遺伝子とは、DNAのアルキル化を認識し、これを修復するタンパク質をコードする遺伝子であり、DNAのアルキル化量に伴って発現する遺伝子である。
【0025】
大腸菌のDNAのアルキル化量が多い時には該アルキル化修復遺伝子は多く発現し、逆に宿主細胞のDNAのアルキル化量が少ない時には該アルキル化修復遺伝子は少なく発現する。
【0026】
そこで、大腸菌のDNAのアルキル化量を測定するには、該アルキル化修復遺伝子の発現量を測定すればよい。
【0027】
しかしながら、アルキル化修復遺伝子単独での発現量を測定することが困難であるために指標となる遺伝子と融合させた融合タンパク質を作製し、指標となる遺伝子量を測定することにより、アルキル化修復遺伝子の発現量を測定することができる。すなわち測定されたアルキル化修復遺伝子の発現量が、DNAのアルキル化量となる。
【0028】
ここで、アルキル化修復遺伝子とは、ada遺伝子(OメチルグアニンDNA−メチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子)であることが好ましい。
ada遺伝子は、Oメチルグアニンを認識しこれを修復する遺伝子で、DNAのアルキル化量に比例して発現が上昇するため、本発明に係るDNAのアルキル化された塩基の生成量を測定する際に好適である。なお、Oメチルグアニンを認識し、これに比例して発現が上昇するタンパク質をコードする遺伝子であれば、ada遺伝子以外の遺伝子を用いてもよい。
【0029】
また、指標となる遺伝子とは、好ましくはレポーター遺伝子のことをいう。更に好ましくはレポーター遺伝子の中でもlacZ(β−ガラクトシダーゼをコードする遺伝子)がよい。
【0030】
レポーター遺伝子とは、組換えDNA技術により作製された組換え遺伝子がどの時点でどの程度発現されたかを容易に確認することができる遺伝子のことである。また、lacZとは、発現量を測定する目的遺伝子と融合して指標となる遺伝子、すなわちレポーター遺伝子として、融合後もその酵素活性を保つことやその酵素反応等がよく知られており、いくつかの基質の分解により発色することが示されているため、好適である。なお、レポーター遺伝子であれば、lacZ以外の遺伝子、例えばルシフェラーゼ等でもよい。
【0031】
ここで、アルキル化剤の例としては例えばMNNG(1−メチル−3−ニトロ−1−ニトロソグアニジン)が挙げられる。MNNGは、アルキル化剤中でもOメチルグアニンを多く生成することから、ada遺伝子の発現が強く誘導されるため、抗アルキル化剤を添加する際にDNAのアルキル化が抑制されるか否かの判別を行うことが容易である。つまり、MNNGによるアルキル化は、アルキル化されたDNA上の塩基の中でのOメチルグアニンの生成される割合が多いためである。
なお、他のアルキル化剤として、Oメチルグアニンの生成される割合が多いMNU(N−ニトロソ−N−メチルウレア)、DEN(N−ニトロソジエチルアミン)、ENU(N−ニトロソ−N−エチルウレア)等でもよい。
【0032】
また、抗アルキル化物質を宿主細胞に添加する時期は、アルキル化物質の添加前でも添加後でもよい。このように抗アルキル化物質を宿主細胞にアルキル化剤を添加する前やアルキル化物質を添加した後に経過時間毎にDNAのアルキル化量を測定することにより、例えば、アルキル化物質の添加前に抗アルキル化物質を添加しアルキル化を抑制することであれば、抗アルキル化物質がDNAのアルキル化を抑制していることを推測できる。これにより、将来該探索方法で探索された抗アルキル化物質を例えば食品、薬剤等に応用させる場合に、摂取時期を最適化することができる。
【0033】
以上の構成から、本発明の抗アルキル化物質の探索方法は、宿主細胞におけるアルキル化修復遺伝子を有する融合遺伝子の量を測定し、更に被検物質を添加することにより、アルキル化剤添加により引き起こされた宿主細胞のDNAのアルキル化量を抑制する抗アルキル化物質を探索することができる。
【0034】
(第2の実施形態)
【0035】
次に、自然発生的に起こる宿主細胞のDNAのアルキル化を抑制する抗アルキル化物質の探索方法について説明する。
【0036】
本発明の探索方法は、宿主細胞に被検物質を添加する工程を具備し、前記宿主細胞は、大腸菌由来であり、アルキル化修復遺伝子と指標となる遺伝子との融合遺伝子を有することを特徴とする。
【0037】
すなわち、本発明の探索方法では、宿主細胞にアルキル化剤を添加しないという点で第1の実施形態と異なり、自然発生的な宿主細胞のDNAのアルキル化を抑制する物質、つまり、抗アルキル化物質を検索する。
【0038】
ここで、自然発生的なアルキル化とは、宿主細胞にアルキル化剤等のアルキル化の一因となる物質を添加しない状態であっても、自然に起こりうるDNAのアルキル化のことをいう。例えば、自然発生的に起こるアルキル化としては、物質代謝の過程等で生じるものが挙げられる。
【0039】
自然発生的なDNAのアルキル化によるアルキル化量を測定するには、経時的にアルキル化量を測定することが好ましい。
【0040】
すなわち、経時的にアルキル化量を測定していれば、確実にアルキル化が生じたことを確認することができるからである。
【0041】
本発明の方法では、この自然発生なアルキル化が起きた宿主細胞に対して、被検物質を添加してアルキル化を抑制する抗アルキル化物質を探索することができる。
【0042】
つまり、このように自然発生的に起こったアルキル化に対して、抗アルキル化物質を経時的に添加することにより、自然発生的に起こったアルキル化に対して、どの時点で効果的に抑制することができるかを確認することができる。そのため、本発明の探索方法により探索された抗アルキル化物質は、がんに対する予防・治療分野に利用することができる。
【0043】
以上の構成から、本発明の抗アルキル化物質の探索方法は、自然発生的なDNAのアルキル化に対する抗アルキル化物質を探索することができる。
【0044】
以上のようにして得られた本発明の抗アルキル化物質を、例えば食品、医薬等として利用することができる。食品として利用する場合、本発明の抗アルキル化物質単体のみならず、既存食品に添加してもよい。また、医薬として利用する場合は通常用いられる担体を用いて製剤化し、注射、経口、経皮等の剤型に調整することができる。例えば、人に用いる場合、抗アルキル化物質を1μg〜100mg/kg程度を1日1回〜数回から適宜選択すればよい。
【0045】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。ただし、本発明がこれに限定されるものでないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0046】
<抗アルキル化活性の検出>
【0047】
以下に、被検物質とアルキル化剤をほぼ同時に若しくは被検物質を添加した後に添加した場合における抗アルキル化活性を測定した。なお、本実施例の被検物質としては、抗変異原性物質を用い、抗アルキル化活性を測定した。
菌株 大腸菌;YN113 W3110 trp lacZ ValR azi TrpE929(am) trpA9761(am)::pMY3
LB培地(500ml):トリプトン(trptone)(DIFCO)5g
イーストエクストラクト(Yeast Extract)( DIFCO)2.5g
NaCl(Wako)5g
Zバッファー(500ml):0.2MNaHPO(Wako)150ml
0.2MNaHPO(Wako)100ml
KCl(Wako)0.375g
MgSO・2HO(Wako)0.123g
β−メルカプトエタノール(β−mercaptoet anol(sigma)0.35ml
【0048】
(1) 前培養1:大試験管を利用し、LB培地2.5ml(最終濃度50μg/ml アンピシリン・ナトリウム塩(Ampicillin Sodium))中、37℃で14時間培養した。
【0049】
(2) 前培養2:200mlの三角フラスコを利用して前培養1をLB培地30ml(最終濃度50μg/ml アンピシリン・ナトリウム塩)で1/100に希釈し、37℃、1時間50分で培養した。
【0050】
(3) (2)にアルキル化剤MNNG最終濃度0.005μg/mlを添加した。
【0051】
(4) 被験物質として、抗変異原性物質として知られるPEITC(フェネチルイソチオシアネート:Phenethyl isothiocyanate(Sigma))の最終濃度が0.5、1、2、5、10、25μg/mlとなるように希釈してサンプルを使った。
【0052】
(5) サンプルの分注。(4)の小試験官に(3)を1ml又は1.5mlずつ分注し、攪拌した。2mlの96穴プレートに1穴250μlづつ各チューブのサンプルを分注し、(各小試験管(濃度)あたり4穴又は5穴分注する)培養した。
【0053】
(6) サンプリング及びサンプル調整。アルキル化剤を添加した後、培養開始1時間目に、プレートの各穴よりサンプルを回収した。
0.5mlの96穴プレートを用意し、あらかじめ150μlのZバッファーを入れた。さらに培養サンプルを30μlずつ加え、トルエンを1滴添加した後に、蓋をしてボルテックスした。同時に、96穴アッセイプレートに100μlのサンプルを回収し、プレートリーダーにより波長600nmの吸光度を測定してサンプルの濁度を計った。
【0054】
(7) アッセイ。全てのサンプリング終了後、軽く遠心し、蓋を開ける。37℃で30分インキュベートし、トルエンを揮発させる。1サンプルあたり、50μlのアッセイバッファー(Zバッファー(Sigma)中のONPGの最終濃度 1μg/ml)を96穴アッセイプレートに分注する。これに30μlのサンプルを加え、28℃で10分間放置する。40μlの1MNaCOを加え反応を止める。プレートリーダーで、波長414nm及び波長550nmの吸光度を測定した。
【0055】
(8) 下記の計算により活性をもとめた。
(抗アルキル化活性)U(ユニット)=1000×(A414−1.75×A550)/(t×0.0075×A600
t;28℃でのインキュベートの時間(分)
414;波長414nmの吸光度
550;波長550nmの吸光度
600;波長600nmの吸光度
【0056】
(9) データ処理。ユニット数の比較の他にコントロールを1とした場合の各サンプルにおける被検物質の影響を検出した。
【0057】
<結果>
濃度依存的にアルキル化剤MNNGによるada遺伝子の発現が抑制されることが示された。アルキル化剤MNNGの添加により、強い発現が誘導される1時間目及び2時間目において、被検物質PEITCの濃度依存的な抗アルキル化活性の検出を行った。図1には、アルキル化剤MNNG及び被検物質PEITCの1時間目の抗アルキル化活性を示した。縦軸は被検物質を添加していないコントロール1とした場合に、被検物質を添加して抑制された割合を示している。横軸は被検物質の濃度である。
【0058】
なお、被検物質として、PEITCの他にCaptopril(カプトプリル(Wako))、Chitosan(キトサン(Sigma))、Chlorophyllin(クロロフィリン(Sigma))、L−citrulline(L−シトルリン(Sigma))、curcumin(クルクミン(Wako))、Fisetin(フィセチン(Sigma))、L−Glutathione(L−グルタチオン)、Quercetin(ケルセチン(Sigma))においても、抗アルキル化活性が確認された。
【実施例2】
【0059】
<抗アルキル化活性の検出>
以下に、被検物質をアルキル化剤添加する前に添加した場合の抗アルキル化活性について測定した。
菌株 大腸菌;YN113 W3110 trp lacZ ValR azi TrpE929(am) trpA9761(am)::pMY3
【0060】
(1) 前培養1 大試験管を利用して、LB培地2.5ml(最終濃度50μg/ml アンピシリン・ナトリウム塩)中、37℃で14時間培養した。
【0061】
(2) 前培養2 (1)をLB培地30ml(最終濃度50μg/ml アンピシリン・ナトリウム塩)で1/100に希釈した。
【0062】
(3) 被験物質として、β−carotene(β−カロチン(Sigma))の最終濃度が1、5、10、25μg/mlとなるように希釈し、大試験管に入れた。
【0063】
(4) (2)を(3)に1.5mlづつ添加し、37℃で1時間50分振とう培養した。
【0064】
(5) (4)の小試験官にアルキル化剤MNNG(最終濃度0.005μg/ml)を添加し攪拌した。
【0065】
(6) 2mlの96穴プレートに1穴250μlづつ各チューブのサンプルを分注した(各小試験管(濃度)あたり4穴分注する)。
【0066】
(7) サンプリングおよびサンプル調整。アルキル化剤MNNGの添加後、1時間目又は2時間目に、プレートの各穴よりサンプルを回収した。0.5mlの96穴プレートを用意し、あらかじめ150μlのZバッファーを入れた。更に、培養サンプルを30μlずつ加え、トルエンを1滴添加した後に、蓋をしてボルテックスした。同時に、96穴アッセイプレートに100μlのサンプルを回収し、プレートリーダーにより波長600nmの吸光度を測定してサンプルの濁度を計った。
【0067】
(8) アッセイ。全てのサンプリングが終了した後、軽く遠心し、蓋を開けた。37℃で30分インキュベートし、トルエンを揮発させた。1サンプルあたり、50μlのアッセイバッファー(Zバッファー中のONPGの最終濃度 1μg/ml)を96穴アッセイプレートに分注した。これに30μlのサンプルを加え、28℃で10から90分間放置した。40μlの1MNaCOを加え反応を止めた。プレートリーダーで、波長414nm及び波長550nmの吸光度を測定した。
【0068】
(9) 下記の計算により活性をもとめた。
(抗アルキル化活性)U(ユニット)=1000×(A414−1.75×A550)/(t×0.0075×A600
t;28℃でのインキュベートの時間(分)
【0069】
(10) データ処理。ユニット数の比較の他、コントロールを1とした場合の被検物質の影響を検出した。
【0070】
<結果>
予め細胞内に被検物質が過剰に存在する条件下で培養するような場合、言い換えると、アルキル化剤を添加する前に被検物質を細胞と培養したような場合に、実施例1で抗アルキル化の活性がはっきりとは確認されなかった物質の中で、ada遺伝子の発現抑制が確認されたものがある。被検物質としては、Captopril(カプトプリル(Wako))、Ascorbic acid(アスコルビン酸(ビタミンC)(Sigma))、Rutin(ルチン(ビタミンP)(Sigma))、β−carotene(β−カロチン(Sigma))において、アルキル化剤MNNGのアルキル化を抑制することが確認された。図2には、被検物質β−カロチンの被検物質添加前にアルキル化剤MNNGを添加したpreと、被検物質添加後にアルキル化剤MNNGを添加したpostとの抗アルキル化活性を示した。縦軸は被検物質を添加していないコントロールを1とした場合に、被検物質を添加して抑制された割合を示している。横軸は被検物質の濃度である。
【実施例3】
【0071】
<自然発生的なアルキル化の抑制物質の探索>
以下に、アルキル化剤を添加しない場合である自然発生的なアルキル化を抑制する抗アルキル化活性について測定した。
【0072】
(1) 前培養1 大試験管を利用して、LB培地2.5ml(最終濃度50μg/ml アンピシリン・ナトリウム塩)中、37℃で14時間培養した。
【0073】
(2) 前培養2 200mlの三角フラスコを利用して、上記をLB培地30ml(最終濃度50μg/ml アンピシリン・ナトリウム塩)で1/100希釈し、37℃で1時間50分培養した。
【0074】
(3) サンプルの分注および本培養。大試験官に(2)を1mlずつ分注し、攪拌した。そのまま37℃で培養を続けた。
【0075】
(4) 被験物質として、抗変異物質として知られるPEITCの最終濃度が1、5、10、25μg/mlとなるように希釈し、本培養3時間後に(2)のそれぞれの大試験官に被検物質を添加した。攪拌後、2mlの96穴プレートに1穴250μlづつ各チューブのサンプルを分注した(5穴に各試験管の同じサンプルを分注した)。
【0076】
(5) サンプリングおよびサンプル調整。本培養後、1、2、4時間目に、大試験官よりサンプルを回収した。また、6、7、8時間目に、それぞれの穴よりサンプルを回収した。あらかじめ0.5mlの96穴プレートの各穴に150μlのZバッファーを入れておき、それぞれ30μlの培養サンプルを加え、トルエンを1滴添加した後に、蓋をしてボルテックスした。同時に96穴アッセイプレートに100μlのサンプルを回収し、プレートリーダーにより波長600nmの吸光度を測定してサンプルの濁度を計った。
【0077】
(6) アッセイ。全てのサンプリング終了後、軽く遠心し、蓋を開ける。37℃で30分インキュベートし、トルエンを揮発させた。1サンプルあたり、50μlのアッセイバッファー(Zバッファー中のONPGの最終濃度 1μg/ml)を96穴アッセイプレートに分注した。これに30μlのサンプルを加え、28℃で45分間放置した。40μlの1MNaCOを加え反応を止めた。プレートリーダーで、波長414nm及び波長550nmの吸光度を測定した。
【0078】
(7) 下記の計算により活性をもとめた。
(抗アルキル化活性)U(ユニット)=1000×(A414−1.75×A550)/(t×0.0075×A600
t;28℃でのインキュベートの時間(分)
【0079】
(8) データ処理。ユニット数の比較の他、コントロールを1とした場合の各サンプルにおける被検物質の影響を検出した。
【0080】
<結果>
アルキル化剤を添加しない場合における自然発生的なアルキル化を抑える物質として、β−カロチン、Chitosan(キトサン(Sigma))、Chlorophyllin(クロロフィリン(Sigma))、PEITCが確認された。なお、図3には、自然に発生するアルキル化に対する被検物質PEITCの各濃度における経時的な抗アルキル化活性について示した。縦軸は被検物質を添加していないコントロールを1とした場合に、被検物質を添加して抑制された割合を示している。横軸は被検物質の濃度である。
【実施例4】
【0081】
<MNNG、MNU、ENU及びDENのアルキル化剤を用いた場合の抗アルキル化活性の検出>
【0082】
以下に、アルキル化剤MNNGの他にアルキル化剤MNU、ENU及びDENを添加した場合についての抗アルキル化活性を測定した。
【0083】
実施例1と同様にアルキル化物質としてMNNG(0.05μg/ml)、MNU(50μg/ml)、ENU(1μg/ml)、DEN(100μg/ml)を用い、被検物質としてPEITC2μg/mlを用いて、抗アルキル化活性を測定した。
【0084】
図4には、各アルキル化剤を用いて被検物質PEITCとの抗アルキル化活性の比較を示した。各アルキル化剤におけるPEITCの無添加時の値を1としたときのPEITC添加時の相対値を示した。
【0085】
<結果>
アルキル化剤MNNGだけではなく、その他のアルキル化剤としてMNU、ENU及びDENでも抗アルキル化活性を測定することが可能であった。
【実施例5】
【0086】
<基質をONPGからX−gal(Wako)に変更し、抗アルキル活性を可視化する検出>
【0087】
菌株 大腸菌;YN113 W3110 trp lacZ ValR azi TrpE929(am) trpA9761 (am)::pMY3
【0088】
(1) 前培養1 大試験管を利用して、LB培地2.5ml(最終濃度50μg/ml アンピシリン・ナトリウム塩)中、37℃で14時間培養した。
【0089】
(2) 前培養2 200ml三角フラスコを利用して、上記をLB培地30ml(最終濃度50μg/ml アンピシリン・ナトリウム塩)で1/100希釈し、37℃で1時間50分培養した。
【0090】
(3) (2)にアルキル化剤MNNG(最終濃度0.005μg/ml)を添加した。
【0091】
(4) 被験物質として、PEITCの濃度が0.5、1、2、5、10μg/mlとなるように希釈してサンプルを作製した。
【0092】
(5) サンプルの分注。(4)の小試験官に(3)を1mlずつ分注し、攪拌した。2mlの96穴プレートに1穴250μlづつ各チューブのサンプルを分注した(各小試験管(濃度)あたり4又は5穴分注した)。
【0093】
(6) サンプリングおよびサンプル調整。アルキル化剤添加後、0.5、1、2、4時間目にプレートの各穴よりサンプルを回収した。0.5mlの96穴プレートを用意し、あらかじめ150μlのZバッファーを入れた。さらに培養サンプルを30μlずつ加え、トルエンを1滴添加した後に、蓋をしてボルテックスした。同時に、96穴アッセイプレートに100μlのサンプルを回収し、プレートリーダーにより波長600nmの吸光度を測定してサンプルの濁度を計った。
【0094】
(7) アッセイ。全てのサンプリング終了後、軽く遠心し、蓋を開けた。37℃で30分インキュベートし、トルエンを揮発させた。1サンプルあたり、50μlのアッセイバッファー(最終濃度40μg/ml X−gal in PBS)を96穴アッセイプレートに分注した。これに50μlのサンプルを加え、室温で90分間放置した。図5の上図は、本実施例の基質をONPGからX−galに変更した場合の本培養開始1時間後の各濃度における抗アルキル化活性について示し、下図は、基質をONPGからX−galに変更した際の被検プレートの写真について示した。
【0095】
<結果>
基質をONPGからX−galに変更した場合にも、同様に抗アルキル化活性の検出が可能であった。ONPGの方が感度がよいが、基質X−galを使用した本実施例は、基質がβガラクトシダーゼにより分解されると青色に呈するため、可視で活性を確認することが容易となる。例えば、プレートリーダーがない場合に、裸眼で抗アルキル化活性を検出することができるため、非常に有用である。
【実施例6】
【0096】
<代謝活性化した被検物質によるアルキル化への影響>
S9Mixサンプル作製(代謝活性化用)/ml
G−6−P(オリエンタル酵母)1.7mg
NADPH(オリエンタル酵母)3.62mg
NADH(オリエンタル酵母)3.05mg
0.2MPObuffer 2.5ml
1MKCl 33μl
1MMgCl 8μl
上記物質に対して、全量が0.9mlとなるように水を添加し、更に100μlのS−9(ラット肝Homogenate)(キッコーマン)を添加したものである。
【0097】
(1) 前培養1 大試験管を利用して、LB培地2.5ml(50μg/ml アンピシリン・ナトリウム塩)中、37℃で14時間培養した。
【0098】
(2) 前培養2 200mlの三角フラスコを利用して、上記をLB培地30ml(50μg/ml アンピシリン・ナトリウム塩)で1/100希釈し、37℃で1時間50分培養した。
【0099】
(3) 代謝活性化サンプルの作製。(2)の細胞にS9Mix(最終濃度10%)加え、さらにアルキル化剤MNNG(最終濃度0.005μg/ml)を添加した(コントロールにS9を添加しないサンプルを作製した)。
【0100】
(4) 被験物質として、cysteamine(シスチアミン(Wako))の濃度が1、2、5、10、25μg/mlとなるように希釈し、サンプルを作製した。
【0101】
(5) サンプルの分注。(4)の小試験官に(3)を1又は1.5mlずつ分注し、攪拌した。2mlの96穴プレートに1穴250μlづつ各チューブのサンプルを分注した(各小試験管(濃度)あたり4穴又は5穴分注した)。
【0102】
(6) サンプリングおよびサンプル調整。アルキル化剤添加後、2時間目に、にプレートの各穴よりサンプルを回収した。0.5mlの96穴プレートを用意し、あらかじめ150μlのZバッファーを入れた。更に、培養サンプルを30μlずつ加え、トルエンを1滴添加した後に、蓋をしてボルテックスした。同時に、96穴アッセイプレートに100μlのサンプルを回収し、プレートリーダーにより波長600nmの吸光度を測定してサンプルの濁度を計った。
【0103】
(7) アッセイ。全てのサンプリング終了後、軽く遠心し、蓋を開けた。37℃で30分インキュベートし、トルエンを揮発させた。1サンプルあたり、50μlのアッセイバッファー(Zバッファー中のONPGの最終濃度 1μg/ml)を96穴アッセイプレートに分注した。これに30μlのサンプルを加え、28℃で10分間放置した。40μlの1MNaCOを加え反応を止めた。プレートリーダーで、波長414nm及び波長550nmの吸光度を測定した。
【0104】
(8) 下記の計算により活性をもとめた。
(抗アルキル化活性)U(ユニット)=1000×(A414−1.75×A550)/(t×0.0075×A600
t;28℃でのインキュベートの時間(分)
【0105】
(9) データ処理。ユニット数の比較のほか、コントロールを1とした場合の各サンプルにおける被検物質の影響を検出した。図6には、代謝活性化酵素S9の効果を調べるために、S9の添加及び無添加の状態で、アルキル化剤MNNG及び被検物質シスチアミンを添加し、シスチアミンの抗アルキル化活性について示した。
【0106】
<結果>
【0107】
Cysteamine(シスチアミン(Wako))、Epicatechin(エピカテキン(Sigma))、Phloroglucinol(フォロログルシノール(Sigma))等が代謝活性S9を添加したことにより、抗アルキル化活性を示した。
【実施例7】
【0108】
<大量のサンプルの検出>
【0109】
以下に、各種被検物質と該被検物質の各濃度を1度に抗アルキル化測定した。
【0110】
(1) 前培養1 大試験管を利用して、LB培地2.5ml(50μg/ml アンピシリン・ナトリウム塩)中、37℃で14時間培養した。
【0111】
(2) 前培養2 200mlの三角フラスコを利用して、上記をLB培地30ml(50μg/ml アンピシリン・ナトリウム塩)で1/100希釈し、37℃で1時間50分培養した。
【0112】
(3) 被験物質の希釈。15種の被検物質を調整した。1穴あたりの被検物質の最終濃度を1、2、5、10、25μg/mlとなるように調整した(この際、横に濃度を振ると測定が容易である)。
【0113】
(4) (2)の細胞に更にアルキル化剤MNNG(最終濃度0.005μg/ml)を添加した。
【0114】
(5) サンプルの分注した。(4)の被検物質を添加したプレートに、(4)を2mlの96穴プレートに1穴250μlづつ分注した(小試験管で被検物質と混合した後に、250μl分注してもよい)。
【0115】
(6) サンプリングおよびサンプル調整。アルキル化剤添加後、2時間目に、プレートの各穴よりサンプルを回収した。0.5mlの96穴プレートを用意し、あらかじめ150μlのZバッファーを入れる。さらに培養サンプルを30μlずつ加え、トルエンを1滴添加した後に、蓋をしてボルテックスした。同時に、96穴アッセイプレートに100μlのサンプルを回収し、プレートリーダーにより波長600nmの吸光度を測定してサンプルの濁度を計った。
【0116】
(7) アッセイ。全てのサンプリング終了後、軽く遠心し、蓋を開けた。37℃で30分インキュベートし、トルエンを揮発させた。1サンプルあたり、50μlのアッセイバッファー(Zバッファー中のONPGの最終濃度 1μg/ml)を96穴アッセイプレートに分注した。これに30μlのサンプルを加え、28℃で10分間放置した。40μlの1MNaCOを加え反応を止めた。プレートリーダーで、波長414nm及び波長550nmの吸光度を測定した。
【0117】
(8) 下記の計算により活性をもとめる
(抗アルキル化活性)U(ユニット)=1000×(A414−1.75×A550)/(t×0.0075×A600
t;28℃でのインキュベートの時間(分)
【0118】
(9) コントロールの被検物質を入れないサンプルの活性を1としたときの、それぞれの活性を計算した。
【0119】
<結果>
【0120】
15種類の被検物質を用い、各種濃度の抗アルキル化活性を測定することができた。このような構成により、本発明の検出方法はハイスループット化を図ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、アルキル化剤MNNG及び被検物質PEITCの1時間目の抗アルキル化活性を示した図である。
【図2】 図2は、被検物質β−カロチンの被検物質添加前にアルキル化剤MNNGを添加したpreと、被検物質添加後にアルキル化剤MNNGを添加したpostとの抗アルキル化活性を示した図である。
【図3】 図3は、自然に発生するアルキル化に対する被検物質PEITCの各濃度における経時的な抗アルキル化活性について示した図である
【図4】 図4は、各アルキル化剤を用いて被検物質PEITCとの抗アルキル化活性の比較を示した図である。
【図5】 図5の上図は、本実施例の基質をONPGからX−galに変更した場合の本培養開始1時間後の各濃度における抗アルキル化活性について示し、下図は、基質をONPGからX−galに変更した際の被検プレートの写真について示した図である。
【図6】 図6は、代謝活性化酵素S9の効果を調べるために、S9の添加及び無添加の状態で、アルキル化剤MNNG及び被検物質シスチアミンを添加し、シスチアミンの抗アルキル化活性について示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿主細胞にアルキル化剤を添加する工程と、
前記宿主細胞に被検物質を添加する工程と
を具備することを特徴とする抗アルキル化物質の探索方法。
【請求項2】
前記宿主細胞が、アルキル化修復遺伝子と指標となる遺伝子との融合遺伝子を有することを特徴とする請求項1に記載の抗アルキル化物質の探索方法。
【請求項3】
前記宿主細胞が大腸菌由来であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の抗アルキル化物質の探索方法。
【請求項4】
前記アルキル化修復遺伝子が、大腸菌ada遺伝子であることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の抗アルキル化物質の探索方法。
【請求項5】
前記指標となる遺伝子が、大腸菌lacZであることを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の抗アルキル化物質の探索方法。
【請求項6】
前記アルキル化剤を添加する工程で、前記宿主細胞のDNAがアルキル化されることを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載の抗アルキル化物質の探索方法。
【請求項7】
前記アルキル化剤を添加する工程で、前記DNA上のグアニン塩基の6位の酸素原子がアルキル化されることを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載の抗アルキル化物質の探索方法。
【請求項8】
前記アルキル化剤が、MNNG(1−メチル−3−ニトロ−1−ニトロソグアニジン;1−Methyl−3−nitro−1−nitrosoguanidine)、MNU(N−ニトロソ−N−メチルウレア;N−Nitroso−N−methylurea)、DEN(N−ニトロソジエチルアミン;N−nitrosodiethylamine)又はENU(N−ニトロソ−N−エチルウレア;N−nitroso−N−ethylurea)であることを特徴とする請求項1乃至請求項7に記載の抗アルキル化物質の探索方法。
【請求項9】
前記アルキル化剤を添加する前に前記被検物質を添加する場合において、
前記DNAのアルキル化が抑制されることを特徴とする請求項1乃至請求項8に記載の抗アルキル化物質の探索方法。
【請求項10】
前記アルキル化剤を添加する後に前記被検物質を添加する場合において、
前記DNAのアルキル化が抑制されることを特徴とする請求項1乃至請求項8に記載の抗アルキル化物質の探索方法。
【請求項11】
自然発生的にアルキル化されている宿主細胞に被検物質を添加する工程を具備し、前記宿主細胞は、アルキル化修復遺伝子と指標となる遺伝子との融合遺伝子を有することを特徴とする抗アルキル化物質の探索方法。
【請求項12】
前記宿主細胞は、大腸菌由来であることを特徴とする請求項11に記載の抗アルキル化物質の探索方法。
【請求項13】
前記アルキル化修復遺伝子が、大腸菌ada遺伝子であることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の抗アルキル化物質の探索方法。
【請求項14】
前記指標となる遺伝子が、大腸菌lacZであることを特徴とする請求項11乃至請求項13に記載の抗アルキル化物質の探索方法。
【請求項15】
前記DNA上のグアニン塩基の6位の酸素原子が自然発生的にアルキル化されることを特徴とする請求項11乃至請求項14に記載の抗アルキル化物質の探索方法。
【請求項16】
宿主細胞にアルキル化剤を添加する工程と、前記宿主細胞に被検物質を添加する工程とを具備する抗アルキル化物質の探索方法、又は、自然発生的にアルキル化されている宿主細胞に被検物質を添加する工程を具備する抗アルキル化物質の探索方法であって、前記宿主細胞は、大腸菌由来であり、アルキル化修復遺伝子と指標となる遺伝子との融合遺伝子を有する抗アルキル化物質の探索方法によって、探索されたことを特徴とする抗アルキル化剤。
【請求項17】
カプトプリン、キトサン、クロロフィリン、L−シトルリン、クルクミン、フィセチン、L−グルタチオン、フェネチルイソチオシアネート、ケルセチン、アスコルビン酸、ルチン、シスチアミン、エピカテキン、β−カロチン、キトサン及び/又はフォロログルシノールを含有することを特徴とする抗アルキル化剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−14716(P2006−14716A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222635(P2004−222635)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(598086844)株式会社メディネット (10)
【Fターム(参考)】