説明

抗炎症剤、抗酸化剤及び美白剤、並びに皮膚化粧料及び飲食物

【課題】 サイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用を含む抗炎症剤、スーパーオキサイド消去作用、ラジカル消去作用、過酸化水素消去作用の少なくともいずれかを含む抗酸化剤、メラニン産生抑制作用を含む美白剤、並びに、これらを含有する皮膚化粧料及び飲食物の提供。
【解決手段】 スイオウの抽出物を含有する抗炎症剤、スイオウの抽出物を含有する抗酸化剤、又はスイオウの抽出物を含有する美白剤である。スイオウの抽出物を有効成分として含有する皮膚化粧料又は飲食物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイオウの抽出物を含む抗炎症剤、抗酸化剤及び美白剤、並びにこれらを含有する皮膚化粧料及び飲食物に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症性の疾患、例えば、接触性皮膚炎(かぶれ)、乾癬、尋常性天疱瘡、及びその他の肌荒れに伴う各種皮膚疾患等の原因や発症機構は多種多様であるが、その原因の一つとしてサイクリックAMPホスホジエステラーゼによる血小板凝集によるものが知られている。
前記血小板凝集は、血小板中のサイクリックAMPの濃度と関係があり、該サイクリックAMPの分解酵素であるサイクリックAMPホスホジエステラーゼによって、該サイクリックAMPが分解され、その濃度が低下すると、血小板は凝集しやすくなる。このため、サイクリックAMPホスホジエステラーゼの作用を抑制し、サイクリックAMPの低下を防止することにより、血小板凝集を防止できると考えられる。このようなサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用を有する抗炎症剤としては、例えば、有色素米若しくはその糠の抽出物(特許文献1参照)独脚金の抽出物、小良姜の抽出物、サイコの抽出物(特許文献2参照)等が報告されている。
【0003】
また、近年、特に生体成分を酸化させ、各種の組織障害をもたらす要因として、活性酸素が注目されており、その生体への悪影響が問題となっている。
前記活性酸素は、生体細胞内のエネルギー代謝過程で生じるものであり、スーパーオキサイド〔即ち、酸素分子の一電子還元で生じるスーパーオキシドアニオン(・O2−)〕、過酸化水素(H)、ヒドロキシラジカル(・OH)、一重項酸素()等がある。これら活性酸素は食細胞の殺菌機構にとって必須であり、ウイルスや癌細胞の除去に重要な働きを果たしているが、活性酸素の過剰な生成は生体内の膜や組織を構成する生体内分子を攻撃し、コラーゲン等の生体組織を分解、変性又は架橋したり、油脂類を酸化して細胞に障害を与える過酸化脂質を生成したりして、皮膚のシワ形成や皮膚の弾力低下等の老化の原因になると考えられている。このため、活性酸素の生成を阻害及び抑制することにより、シワ形成や弾力低下等の皮膚の老化を予防及び治療できると考えられる。このような活性酸素消去作用を有する抗酸化剤としては、例えば、オスベッキア属に属する植物の抽出物(特許文献3参照)、プルメリア属に属する植物の抽出物(特許文献4参照)、カナリウム属に属する植物の抽出物(特許文献5参照)、ランタナの抽出物(特許文献6参照)等が報告されている。
【0004】
また、中高年齢層における肌の悩みの一つであるシミ、ソバカスや日焼け後の皮膚色素沈着をもたらす原因は、皮膚内に存在する色素細胞(メラノサイト)の活性化によるメラニン産生の著しい亢進であることが知られている。
一般に、前記メラニンは色素細胞の中で生合成される酵素チロシナーゼの働きによって、チロシンからドーパ、ドーパからドーパキノンンに変化し、ついで5’6−ジヒドロキシインドフェノール等の中間体を経て形成される。このため、皮膚の色黒(皮膚色素沈着症)を予防及び治療するには、メラニン産生過程を阻害すること、あるいは既に産生したメラニンを淡色漂白することが考えられる。
このようなメラニン産生を抑制する美白剤として、例えば、トウゴマ根部の抽出物(特許文献7参照)、Saussurea属に属する植物の抽出物(特許文献8参照)等が報告されている。
【0005】
したがって、入手が容易で安価であり、安全性の高い天然物系のものであって、味や匂いの点でも添加対象物の品質に悪影響を及ぼさず、皮膚化粧料及び飲食物に広く使用可能な抗炎症剤、抗酸化剤又は美白剤は未だ提供されておらず、その速やかな提供が強く求められているのが現状である。
【0006】
【特許文献1】特開2001−163796号公報
【特許文献2】特開2003−261457号公報
【特許文献3】特開2003−55242号公報
【特許文献4】特開2002−97151号公報
【特許文献5】特開2002−53478号公報
【特許文献6】特開2002−179583号公報
【特許文献7】特開2001−213757号公報
【特許文献8】特開2002−201122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、第1に、優れたサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用を有し、安全性が高く、原料の入手が容易な天然由来の抗炎症剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、第2に、優れたスーパーオキサイド消去作用、ラジカル消去作用及び過酸化水素消去作用の少なくともいずれかを有し、安全性が高く、原料の入手が容易な天然由来の抗酸化剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、第3に、優れたメラニン産生抑制作用を有し、安全性が高く、原料の入手が容易な天然由来の美白剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、第4に、前記抗炎症剤、前記抗酸化剤及び前記美白剤の少なくともいずれかを配合した皮膚化粧料及び飲食物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明者らが鋭意検討を行った結果、スイオウの抽出物が、優れたサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用、スーパーオキサイド消去作用、ラジカル消去作用、過酸化水素消去作用及びメラニン産生抑制作用の少なくともいずれかを有し、抗炎症剤、抗酸化剤又は美白剤として有効であることを知見した。
【0009】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> スイオウの抽出物を含有することを特徴とする抗炎症剤である。
<2> サイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用を有する前記<1>に記載の抗炎症剤である。
<3> スイオウの抽出物を含有することを特徴とする抗酸化剤である。
<4> スーパーオキサイド消去作用、ラジカル消去作用及び過酸化水素消去作用の少なくともいずれかを有する前記<3>に記載の抗酸化剤である。
<5> スイオウの抽出物を含有することを特徴とする美白剤である。
<6> メラニン産生抑制作用を有する前記<5>に記載の美白剤である。
<7> 前記<1>から<6>のいずれかに記載のスイオウの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする皮膚化粧料である。
<8> 前記<1>から<6>のいずれかに記載のスイオウの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする飲食物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決でき、優れたサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用を有する抗炎症剤が提供される。また、本発明によると、優れたスーパーオキサイド消去作用、ラジカル消去作用及び過酸化水素消去作用の少なくともいずれかの作用を有する抗酸化剤が提供される。また、本発明によると、優れたメラニン産生抑制作用を有する美白剤が提供される。また、本発明の抗炎症剤、抗酸化剤及び美白剤は、使用感と安全性に優れているので皮膚化粧料及び飲食物に配合するのに好適なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(抗炎症剤、抗酸化剤及び美白剤)
本発明の抗炎症剤、抗酸化剤及び美白剤は、スイオウの抽出物を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0012】
前記スイオウ(水翁、Cleistocalyx operculatus)は、フトモモ科クリストカリクス属の樹高約15mの高木植物で、中国の広東、広西自治区等の水辺に野生しており、これらの地域から容易に入手可能である。前記スイオウは、別名としては水雍、水榕等と呼ばれている。前記スイオウは外感による悪寒、発熱、頭痛、食滞不化、打撲、蛇による咬傷等に有効であることが知られている。
しかし、前記スイオウの抽出物が、優れたサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用、スーパーオキサイド消去作用、ラジカル消去作用、過酸化水素消去作用及びメラニン産生抑制作用の少なくともいずれかを有し、抗炎症剤、抗酸化剤又は美白剤として有用であることは全く知られておらず、これらのことは、本発明者らによる新知見である。
【0013】
前記スイオウの抽出物が有するサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用、スーパーオキサイド消去作用、ラジカル消去作用、過酸化水素消去作用及びメラニン産生抑制作用の少なくともいずれかを有する物質の詳細は不明であるが、これら有効成分は植物の抽出に一般に用いられている抽出方法により得ることができる。なお、前記スイオウの抽出物には、抽出液、該抽出液の希釈液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物もしくは精製物のいずれもが含まれる。
【0014】
前記スイオウは、抽出原料として例えば、花(蕾)部、葉部、枝部、種子、樹皮、根部等の構成部位を抽出原料として用いることができる。これらの構成部位の中でも、特に花(蕾)部抽出原料として用いることが好ましい。ここで、花(蕾)とは、一般に、種子植物の有性生殖にかかわる器官の総体をいい、葉の変形である花葉と茎の変形である花軸とから構成され、花葉には、花弁、おしべ等の器官が含まれる。前記抽出原料として使用する花(蕾)には、種子植物の有性生殖にかかわる器官の総体の他、その一部、例えば、花葉、花弁等も含まれる。
前記抽出原料であるスイオウは、天日又は通常使用される乾燥機を用いて予め乾燥しておいてもよい。
【0015】
前記抽出に用いる溶媒としては、極性溶媒を用いることが好ましく、水若しくは親水性有機溶媒又はこれらの混合液を室温又は溶媒の沸点以下の温度で用いることがより好ましい。
前記抽出溶媒として使用し得る水としては、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等の他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。従って、本発明において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0016】
前記抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコール等が挙げられる。
なお、前記抽出溶媒としては、2種以上の極性溶媒の混合液を極性溶媒として使用してもよく、その場合の混合比は特に制限はなく、例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合溶媒を使用する場合には、水と低級脂肪族アルコールとの混合比を9:1〜1:9(質量比)とすることができる。
【0017】
前記抽出原料であるスイオウからサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用、スーパーオキサイド消去作用、ラジカル消去作用、過酸化水素消去作用及びメラニン産生抑制作用の少なくともいずれかを有する物質を抽出するにあたって特殊な抽出方法を採用する必要はなく、室温又は溶媒の沸点以下の温度における還流加熱下で、任意の装置を用いて抽出することができる。
【0018】
具体的には、抽出溶媒を満たした処理槽に、スイオウの花(蕾)部を投入し、必要に応じて時々攪拌しながら、1〜4時間静置して可溶性成分を溶出した後、濾過して固形物を除去し、得られた抽出液から抽出溶媒を留去し、乾燥することにより抽出物が得られる。抽出溶媒量は、抽出原料の通常5〜15倍量(質量比)であることが好ましく、抽出温度は、通常、常温〜95℃である。
得られるスイオウの抽出液は、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出物の乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物を得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。
【0019】
前記抽出処理で得られるスイオウの抽出液はそのままでも抗炎症剤、抗酸化剤又は美白剤として使用することができるが、濃縮液又は乾燥物としたものの方が利用しやすい。抽出液の乾燥物を得るにあたっては、吸湿性を改善するためにデキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容され得るキャリアーを添加してもよい。また、前記スイオウの抽出物は保存や取り扱いを容易にするために、前記キャリアーその他任意の助剤と混合して粉末状、顆粒状、錠剤状等、任意の剤形に製剤化することもできる。
【0020】
なお、前記スイオウの抽出物は、特有の匂いを有しているため、その生理活性の低下を招かない範囲で、脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、皮膚化粧料や飲食物添加する場合には大量に使用するものではないから、未精製のままでの使用することができる。精製は具体的には活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂等によって行うことができる。
【0021】
以上のようにして得られるスイオウの抽出物は、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用、スーパーオキサイド消去作用、ラジカル消去作用、過酸化水素消去作用及びメラニン産生抑制作用の少なくともいずれかを有しており、これらの作用を利用して抗炎症剤、抗酸化剤又は美白剤の有効成分として使用することができる。
ここで、スイオウの抽出物の抗炎症作用はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用に基づいて発揮される。また、抗酸化作用はスーパーオキサイド消去作用、ラジカル消去作用及び過酸化水素消去作用に基づいて発揮される。また、美白作用はメラニン産生抑制作用に基づいて発揮される。
【0022】
本発明の抗炎症剤、抗酸化剤及び美白剤は、極めて高い抗炎症作用、抗酸化作用及び美白作用の少なくともいずれかを有していると共に、皮膚に適用した場合の使用感と安全性に優れているため、皮膚化粧料に配合するのに好適である。
また、本発明のスイオウの抽出物は、消化管で消化されるようなものではないことが確認されているので、任意の飲食品や栄養補助食品に配合するのに好適である。
【0023】
(皮膚化粧料)
本発明の皮膚化粧料は、本発明の前記抗炎症剤、前記抗酸化剤及び前記美白剤の少なくともいずれかを含有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の成分を含有してなる。
【0024】
前記皮膚化粧料の用途としては、特に制限はなく、各種用途から適宜選択することができ、例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、ゼリー、リップクリーム、口紅、入浴剤、トニック、リンス、シャンプー、石鹸、アストリンゼント等が挙げられる。
【0025】
前記皮膚化粧料に対する本発明の前記抗炎症剤、前記抗酸化剤及び前記美白剤の好適配合率は、皮膚化粧料の種類や抽出物の生理活性等によって適宜調整することができるが、未精製の標準的な抽出物からなるものの場合、乾燥物に換算して0.0001質量%〜10質量%が好ましい。
【0026】
前記抗炎症剤、前記抗酸化剤又は前記美白剤を配合する前記皮膚化粧料は、更に必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、その皮膚化粧料の製造に通常使用される各種主剤及び助剤、その他成分を使用することができる。なお、本発明の抗炎症剤、抗酸化剤又は美白剤を配合する皮膚化粧料は、炎症性疾患の予防及び治療、生体内の酸化防止及び美白効果に関し、本発明の抗炎症剤、抗酸化剤及び美白剤のみが主剤となるものに限られるわけではない。
【0027】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、前記抗炎症作用、前記抗酸化作用又は前記美白作用の妨げにならない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択した成分が挙げられ、例えば、収斂剤、殺菌・抗菌剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料等が挙げられる。これらの成分は、前記スイオウの抽出物と共に併用した場合、相乗的に作用して、通常期待される以上の優れた使用効果をもたらすことがある。
【0028】
前記収斂剤としては、例えば、クエン酸又はその塩類、酒石酸又はその塩類、乳酸又はその塩類、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム・カリウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、硫酸亜鉛、ジユエキス、エイジツエキス、ハマメリスエキス、ゲンノショウコエキス、チャカテキン類、オドリコソウエキス、オトギリソウエキス、ダイオウエキス、ヤグルマソウエキス、キズタエキス、キューカンバーエキス、マロニエエキス、サルビアエキス、メリッサエキス等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記殺菌・抗菌剤としては、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、塩化ジステアリルメチルアンモニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン、感光素101号、感光素201号、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、ソルビン酸、ハロカルバン、レゾルシン、パラクロロフェノール、フェノキシエタノール、ビサボロール、ヒノキチオール、メントール、キトサン、キトサン分解物、ジユエキス、クジンエキス、エンメイソウエキス、ビワエキス、ユッカエキス、アロエエキス、ケイヒエキス、ガジュツエキス等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、β−イソプロピルフラノン誘導体、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、オキシベンゾン、オキシベンゾンスルホン酸、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシベンゾフェノン、シノキサート、ジイソプロピルケイヒ酸メチル、メトキシケイヒ酸オクチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチル安息香酸オクチル、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、酸化チタン、β−カロチン、γ−オリザノール、コメヌカエキス、アロエエキス、カバノキエキス、シラカンバエキス、カミツレエキス、ヘンナエキス、チョウチグルミエキス、イチョウ葉エキス、カミツレエキス、セイヨウサンザシエキス、油溶性カンゾウエキス等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記保湿剤としては、例えば、セリン、グリシン、スレオニン、アラニン、コラーゲン、加水分解コラーゲン、ヒドロネクチン、フィブロネクチン、ケラチン、エラスチン、ローヤルゼリー、コンドロイチン硫酸ヘパリン、グリセロリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴリン脂質、スフィンゴ糖脂質、リノール酸又はそのエステル類、エイコサペンタエン酸又はそのエステル類、ペクチン、ビフィズス菌発酵物、乳酸発酵物、酵母抽出物、レイシ菌糸体培養物又はその抽出物、小麦胚芽油、アボガド油、米胚芽油、ホホバ油、ダイズリン脂質、γ−オリザノール、ビロウドアオイエキス、ヨクイニンエキス、ジオウエキス、タイソウエキス、カイソウエキス、キダチアロエエキス、ゴボウエキス、マンネンロウエキス、アルニカエキス、小麦フスマ等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記細胞賦活剤としては、例えば、リボフラビン又はその誘導体、ピリドキシン又はその誘導体、ニコチン酸又はその誘導体、パントテン酸又はその誘導体、α−トコフェロール又はその誘導体、アルニカエキス、ニンジンエキス、ナタネニンジンエキス、ヘチマエキス(サポニン)、シコンエキス、オウバクエキス、ボタンピエキス、シャクヤクエキス、ムクロジエキス、ベニバナエキス、アシタバエキス、ビワ葉エキス、ヒキオコシエキス、ユキノシタエキス、黄杞エキス、サルビアエキス、ニンニクエキス、マンネンロウエキス等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記油脂類としては、例えば、大豆油、アマニ油、ゴマ油、ヌカ油、綿実油、ナタネ油、サフラワー油、トウモロコシ油、オリーブ油、ツバキ油、アーモンド油、ヒマシ油、落花生油、カカオ油、パーム核油、牛脂、ミンク油、ホホバ油、月見草油、馬油等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
前記ロウ類としては、例えば、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、蜜ロウ、サラシ蜜ロウ、鯨ロウ、セラックス、ラノリン類、等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記炭化水素類としては、例えば、流動パラフィン、ワセリン、マイクロスリスタリンワックス、セレシン、スクワラン、ポリエチレン末等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記脂肪酸類としては、例えば、ステアリン酸、リノール酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ヘベニン酸、ラノリン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、イソステアリン酸等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
前記アルコール類としては、例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ラノリンアルコール、水添ラノリンアルコール、オレイルアルコール、ヘキサデシルアルコール、2−オクチルドデカノール、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール又はその重合体、ブドウ糖、白糖、コレステロール、フィトステロール、セトステアリルアルコール等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
前記エステル類としては、例えば、オレイン酸デシル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ジオレイン酸プロピレングリコール、フタル酸ジエチル、モノステアリン酸グリセリン、トリミリスチン酸グリセリン、乳酸セチル等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
前記界面活性剤としては、例えば、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を使用することができるが、これらの中でも皮膚疾患の発生のない、又は軽微な化粧品原料基準に収載された界面活性剤が好ましく、例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン、サポニン、オリゴ配糖体、リン脂質系バイオサーファクタント、アシルペプチド系バイオサーファクタント、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリリン酸ナトリウム、モノオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビット、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド等の界面活性剤が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記香料としては、例えば、メントール、カルボン、オイゲノール、アネトール、ハッカ油、スペアミント油、ペパーミント油、ユーカリ油、アニス油等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
本発明の皮膚化粧料は、皮膚に使用した場合に高い安全性を有し、優れたサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用、スーパーオキサイド消去作用及びラジカル消去作用、過酸化水素消去作用、メラニン産生抑制作用の少なくともいずれかを効果的に達成することができ、炎症性疾患の予防及び治療、生体内の酸化防止及び美白効果を図ることができる。
【0042】
(飲食物)
本発明の飲食物は、本発明の前記抗炎症剤、前記抗酸化剤及び前記美白剤を含有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の成分を含有してなる。
ここで、前記飲食物とは、人の健康に危害を加える恐れが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品等の区分に制限されるものではなく、例えば、経口的に摂取される一般食品、健康食品、保健機能食品、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものを意味する。
【0043】
本発明の前記飲食物はスイオウの抽出物を、その活性を妨げないような任意の飲食物に配合したものであってもよいし、スイオウの抽出物を主成分とする栄養補助食品であってもよい。
【0044】
本発明の前記飲食物を製造する際には、例えば、デキストリン、デンプン等の糖類;ゼラチン、大豆タンパク、トウモロコシタンパク等のタンパク質;アラニン、グルタミン、イソロイシン等のアミノ酸類;セルロース、アラビアゴム等の多糖類;大豆油、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の油脂類等の任意の助剤を添加して任意の剤形に製剤化することができる。
【0045】
前記スイオウの抽出物を配合し得る前記飲食物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、その具体例としては、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調整用粉末を含む);アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷果;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、チューインガム、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子等の菓子類;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産類・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、でんぷん油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニンク、ホイプクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;スープ、シチュー、サラダ、惣菜、漬物等が挙げられる。なお、前記飲食物は上記例示に限定されるものではない。
【0046】
前記飲食物に対する本発明の前記抗炎症剤、前記抗酸化剤又は前記美白剤の添加量は、対象となる飲食物の種類に応じて異なり、一概には規定することができないが、飲食物本来の味を損なわない範囲で添加すればよく、各種対象飲食物に対し、通常0.001〜50質量%が好ましく、0.01〜20質量%がより好ましい。また、顆粒、錠剤又はカプセル形態の飲食物の場合には、通常0.01〜100質量%が好ましく、5〜100質量%がより好ましい。
【0047】
本発明の飲食物は、日常的に経口摂取することが可能であり、有効成分であるスイオウの抽出物の働きによって、抗炎症作用、抗酸化作用及び美白作用を効果的に達成することができる。
【0048】
なお、本発明の抗炎症剤、抗酸化剤、美白剤、皮膚化粧料、及び飲食物は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0050】
(製造例1)
―スイオウの水抽出物の製造―
スイオウの花(蕾)部の粗粉砕物100gに抽出溶媒である水1,000mlを加え、還流抽出器を付けて、穏やかに撹拌しながら80℃で2時間加熱抽出し、熱時濾過した。得られた抽出物を40℃で減圧下にて濃縮し、更に減圧乾燥機で乾燥させ、スイオウの水抽出物を得た。抽出物の収率は表1のとおりであった。
【0051】
(製造例2)
―スイオウの50%エタノール抽出物の製造―
スイオウの花(蕾)部の粗粉砕物100gに抽出溶媒である50%エタノール(水とエタノールとの質量比1:1)1,000mlを加え、還流抽出器を付けて、穏やかに撹拌しながら80℃で2時間加熱抽出し、熱時濾過した。得られた抽出物を40℃で減圧下にて濃縮し、更に減圧乾燥機で乾燥させ、スイオウの50%エタノール抽出物を得た。抽出物の収率は表1のとおりであった。
【0052】
(製造例3)
―スイオウの80%エタノール抽出物の製造―
スイオウの花(蕾)部の粗粉砕物100gに抽出溶媒である80%エタノール(水とエタノールとの質量比1:4)1,000mlを加え、還流抽出器を付けて、穏やかに撹拌しながら80℃で2時間加熱抽出し、熱時濾過した。得られた抽出物を40℃で減圧下にて濃縮し、更に減圧乾燥機で乾燥させ、スイオウの80%エタノール抽出物を得た。抽出物の収率は表1のとおりであった。
【0053】
【表1】

【0054】
(実施例1)
−サイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用試験−
製造例1〜3で得られた抽出物について、以下のようにしてサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用を試験した。
5mlの塩化マグネシウムを含有するトリス塩酸緩衝液(pH7.5)0.2mlに胎児血清アルブミン溶液0.1ml及びサイクリックAMPホスホジエステラーゼ溶液0.1mlを加え、更に、製造例1〜3の各試料溶液0.05mlを加え、37℃にて5分間プレインキュベーションした。
次いで、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ溶液0.05mLを加え、37℃で60分間インキュベーションした。沸騰浴中で3分間煮沸して反応を停止させ、4℃、3500rpmで遠心分離し、上清中の反応基質である5’―AMPを高速液体クロマトグラフィーにより定量した。
また、試料溶液を添加せずに同様の酵素反応と反応基質の分析を行い、試料無添加時の反応基質量に対する試料添加時の反応基質量の比率により、試料のサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害率(%)を求めた。
次に、試料溶液の試料濃度を段階的に減少させて上記サイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害率(%)の測定を繰り返し、サイクリックAMPホスホジエステラーゼの活性を50%阻害する試料濃度IC50(μg/ml)を内挿法により求めた。結果を表2に示す。
【0055】
【表2】

表2の結果から、製造例1〜3の各スイオウの抽出物がサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用を有することが確認できた。
【0056】
(実施例2)
―スーパーオキサイド消去作用試験―
製造例1〜3で得られた各抽出物について、下記の試験法によりスーパーオキサイド消去作用を試験した。
3mMキサンチン、0.05M Na2CO3緩衝液(pH10.2)、3mM EDTA、ウシ血清アルブミン溶液、及び0.75mM NBT(nitroblue tetrazolium)を、各々0.1ml試験管にとり、これに製造例1〜3の各試料溶液0.1mlを添加し、25℃で10分間放置した。次いで、酵素溶液としてのキサンチンオキシダーゼ溶液を加えて素早く攪拌し、25℃で20分間静置した。その後、6mM 塩化銅0.1mlを加えて反応を停止させて、波長560nmにおける吸光度を測定した。
同様の操作と吸光度の測定を、酵素溶液を添加せずに行った。更に、試料溶液を添加せずに蒸留水を添加した場合についても同様の測定を行った。得られた結果から、下記数式1によりスーパーオキサイド消去率(%)を求めた。
【0057】
<数式1>
消去率(%)={1−(A−B)/(C−D)}×100
但し、前記数式1中、Aは、酵素溶液添加、試料溶液添加時の吸光度を表し、Bは酵素溶液無添加、試料溶液添加時の吸光度を表し、Cは酵素溶液添加、試料溶液無添加時の吸光度を表し、Dは酵素溶液無添加、試料溶液無添加時の吸光度を表す。
【0058】
次に、試料濃度を段階的に減少させて上記スーパーオキサイド消去率の測定を行い、スーパーオキサイド消去率が50%になる試料濃度(μg/ml)を内挿法により求めた。結果を表3に示す。
【0059】
【表3】

表3の結果から、製造例1〜3の各スイオウの抽出物がスーパーオキサイド消去作用を有することが確認できた。
【0060】
(実施例3)
―ラジカル消去作用試験―
製造例1〜3で得られた各抽出物について、下記の試験法によりDPPHに対するラジカル消去作用を試験した。
1.5×10−4M DPPH(diphenyl−p−picrylhydrazyl)エタノール溶液3mlに、製造例1〜3の各試料溶液3mlを加え、直ちに容器を密栓して振り混ぜ、30分間静置した後、波長520nmの吸光度を測定した。
同様の操作と吸光度測定を、コントロールとして、試料溶液の代わりに試料溶液を溶解した溶媒を用いて行った。更に、ブランクとして、試料溶液を加えた後、直ちに吸光度の測定を行い、得られた結果から、下記数式2によりラジカル消去率(%)を算出した。
【0061】
<数式2>
消去率(%)={1−(B−C)/A}×100
但し、前記数式2中、Aはコントロールの吸光度を表し、Bは試料溶液添加時の吸光度
を表し、Cはブランクの吸光度を表す。
【0062】
次に、試料濃度を段階的に減少させて上記ラジカル消去率の測定を行い、ラジカルの消去率が50%になる試料濃度(μg/ml)を内挿法により求めた。結果を表4に示す。
【0063】
【表4】

表4の結果から、製造例1〜3の各スイオウの抽出物がラジカル消去作用を有することが確認できた。
【0064】
(実施例4)
―過酸化水素消去作用試験―
製造例1〜3で得られた各抽出物について、下記の試験法により過酸化水素消去作用を試験した。
過酸化水素の標準溶液(濃度1.5mM)10μlに、製造例1〜3の各試料溶液10μlを加え、37℃で20分間インキュベーションした後、発色試薬〔DA−64(和光純薬社製)を10mM、トライトンX-100を0.5質量%含む0.1M PIPES緩衝液(pH7.0)にペルオキシダーゼ溶液(100unit/ml,和光純薬社製)1mlを加え、全量を100mlに調整したもの〕2.98mlを添加し、37℃で5分間インキュベーションした後、波長727nmにおける吸光度を測定した。
同様の操作と吸光度測定を、過酸化水素の標準溶液を添加せずに行った。更に、試料溶液を添加せずに蒸留水を添加した場合についても同様の測定を行い、得られた結果から、下記数式3により過酸化水素の消去率(%)を求めた。
【0065】
<数式3>
消去率(%)={1−(A−B)/(C−D)}×100
但し、前記数式3において、Aは過酸化水素標準溶液添加,試料溶液添加時の吸光度を表し、Bは過酸化水素標準溶液無添加,試料溶液添加時の吸光度を表し、Cは過酸化水素標準溶液添加,試料溶液無添加時の吸光度を表し、Dは過酸化水素標準溶液無添加,試料溶液無添加時の吸光度を表す。
【0066】
次に、試料濃度を段階的に減少させて上記過酸化水素消去率の測定を行い、過酸化水素消去率が50%になる試料濃度(μg/ml)を内挿法により求めた。結果を表5に示す。
【0067】
【表5】

表5の結果から、製造例1〜3の各スイオウの抽出物が過酸化水素消去作用を有することが確認できた。
【0068】
(実施例5)
−メラニン産生抑制作用試験−
製造例1〜3で得られた各抽出物について、下記の試験法によりメラニン産生抑制作用を試験した。
まず、25cmの培養フラスコに入れた10質量%FBS含有ダルベッコMEMB培地(以下培地と略記する)にB−16メラノーマ細胞1×10個を播種し、37℃、5質量%CO−95質量%空気下で4日間培養した。次いでトリプシン処理し、1,000rpmで3分間遠心分離して細胞を回収した。回収した細胞4×10個を、培地5mlを入れた直径60mmのシャーレに播種し、24時間培養した。次に、培養したメラノーマ細胞を、製造例1〜3の各試料を12.5μg/mlになるように溶解した0.5mmol/lテオフィリン添加培地5mlで3日間培養した。培養後、トリプシン処理し、更に遠心分離して細胞を集め、培地4mlを加えて細胞浮遊液を得た。得られた細胞浮遊液中の細胞数を測定した後、細胞浮遊液を遠心分離し、沈殿として得られた細胞に10質量%DMSO含有2mol/lの水酸化ナトリウム溶液2mlを添加して超音波破砕器により細胞を破壊した。これをろ紙でろ過し、得られたろ液の波長475nmにおける吸光度を分光光度計を用いて測定した。
同様の操作と吸光度測定を、試料溶液を添加せずに行い、下記数式4によりメラニン産生抑制率(%)を算出した。結果を表6に示す。
【0069】
<数式4>
メラニン産生抑制率(%)=(A−B)/A×(C/D)×100
ただし、前記数式4中、Aは、被験試料無添加での475nmにおける吸光度を表し、Bは、被験試料添加での475nmにおける吸光度を表し、Cは、被験試料添加での細胞数を表し、Dは、被験試料無添加での細胞数を表す。
【0070】
【表6】

表6の結果から、製造例1〜3の各スイオウの抽出物がメラニン産生抑制作用を有することが確認できた。
【0071】
(配合実施例1)―乳液―
下記組成の乳液を常法により製造した。
スイオウ水抽出物(製造例1) 0.10g
ホホバオイル 4.00g
1,3−ブチレングリコール 3.00g
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.50g
オリーブオイル 2.00g
スクワラン 2.00g
セタノール 2.00g
モノステアリン酸グリセリル 2.00g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 2.00g
パラオキシ安息香酸メチル 0.15g
黄杞エキス 0.10g
グリチルリチン酸ジカリウム 0.10g
イチョウ葉エキス 0.10g
コンキオリン 0.10g
オウバクエキス 0.10g
カツミレエキス 0.10g
香料 0.05g
精製水 残部
合計 100.00g
【0072】
(配合実施例2)―化粧水―
下記組成の化粧水を常法により製造した。
スイオウ水抽出物(製造例1) 0.10g
グリセリン 3.00g
1,3−ブチレングリコール 3.00g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 2.00g
パラオキシ安息香酸メチル 0.15g
クエン酸 0.10g
クエン酸ソーダ 0.10g
油溶性甘草エキス 0.10g
海藻エキス 0.10g
クジンエキス 0.10g
キシロビオースミクスチャー 0.05g
香料 0.05g
精製水 残部
合計 100.00g
【0073】
(配合実施例3)―クリーム―
下記組成のクリームを常法により製造した。
スイオウ50%エタノール抽出物(製造例2) 0.10g
スクワラン 10.00g
1,3−ブチレングリコール 6.00g
流動パラフィン 5.00g
サラシミツロウ 4.00g
セタノール 3.00g
モノステアリン酸グリセリル 3.00g
ラノリン 2.00g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 1.50g
パラオキシ安息香酸メチル 1.50g
ステアリン酸 1.00g
酵母抽出液 0.10g
シソ抽出液 0.10g
シナノキ抽出液 0.10g
ジユ抽出液 0.10g
香料 0.10g
精製水 残部
合計 100.00g
【0074】
(配合実施例4)―パック―
下記組成のパックを常法により製造した。
スイオウ80%エタノール抽出物(製造例3) 0.20g
ポリビニルアルコール 15.00g
エタノール 10.00g
プロピレングリコール 7.00g
ポリエチレングリコール 3.00g
セージ抽出液 0.10g
トウキ抽出液 0.10g
ニンジン抽出液 0.10g
パラオキシ安息香酸エチル 0.05g
香料 0.05g
精製水 残部
合計 100.00g
【0075】
(配合実施例5)―錠剤状栄養補助食品―
下記組成の錠剤状栄養補助食品を常法により製造した。
スイオウ50%エタノール抽出物(製造例2) 30g
粉糖(ショ糖) 178g
ソルビット 10g
グリセリン脂肪酸エステル 12g
【0076】
(配合実施例6)―顆粒状栄養補助食品―
下記組成の顆粒状栄養補助食品を常法により製造した。
スイオウ水抽出物(製造例1) 20g
ビートオリゴ糖 1000g
ビタミンC 167g
ステビア抽出物 10g
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の抗炎症剤、抗酸化剤及び美白剤の少なくともいずれかを含有する皮膚化粧料及び飲食物は、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用、スーパーオキサイド消去作用、ラジカル消去作用、過酸化水素消去作用及びメラニン産生抑制作用の少なくともいずれかを有し、安全性にも優れているので、例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、ゼリー及び入浴剤等として、あるいは、飲料、冷果、麺類、菓子類、水産類・畜産加工食品、油脂及び油脂加工食品、調味料及び栄養補助食品等として幅広く用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイオウの抽出物を含有することを特徴とする抗炎症剤。
【請求項2】
サイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用を有する請求項1に記載の抗炎症剤。
【請求項3】
スイオウの抽出物を含有することを特徴とする抗酸化剤。
【請求項4】
スーパーオキサイド消去作用、ラジカル消去作用及び過酸化水素消去作用の少なくともいずれかを有する請求項3に記載の抗酸化剤。
【請求項5】
スイオウの抽出物を含有することを特徴とする美白剤。
【請求項6】
メラニン産生抑制作用を有する請求項5に記載の美白剤。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のスイオウの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする皮膚化粧料。
【請求項8】
請求項1から6のいずれかに記載のスイオウの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする飲食物。

【公開番号】特開2007−8902(P2007−8902A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−194971(P2005−194971)
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【出願人】(591082421)丸善製薬株式会社 (239)
【Fターム(参考)】