説明

抗真菌剤として使用するための第2級8−ヒドロキシキノリン−7−カルボキサミド誘導体

本発明は、一般式(I)の第2級8−ヒドロキシキノリン−7−カルボキサミド誘導体、および医薬として許容されるその塩を提供する。これらの化合物は、抗真菌剤として有用である。詳細には、これらの化合物を、紅色白癬菌、毛瘡白癬菌、黒色麹菌クロカビおよびスコプラリオプシス−ブレビカウリス(Scopulariopsis Brevicaulis)に対して試験した。これらの化合物は、鵞口瘡カンジダおよびカンジダ−グラブラタなどのカンジダ種に対して活性を有する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗真菌剤として使用するための第2級8−ヒドロキシキノリン−7−カルボキサミド誘導体および医薬として許容されるその塩を提供する。詳細には、これらの化合物を、紅色白癬菌(Trichophyton Rubrum)、毛瘡白癬菌(Trichophyton Mentagrophytes)、黒色麹菌クロカビ(Aspergillus Niger)およびスコプラリオプシス−ブレビカウリス(Scopulariopsis Brevicaulis)に対して試験した。これらの化合物は、鵞口瘡カンジダ(Candida Albicans)およびカンジダ−グラブラタ(Candida Glabrata)などのカンジダ種に対して活性を有する。
【背景技術】
【0002】
病原性真菌は、2つの範疇である、正常な対象に疾患を誘発することができる真菌と、それより侵襲性が低い、重篤な宿主にだけ疾患を生じることができる真菌に分けることができる。過去20年間に、侵襲性の日和見真菌感染症の発生率ならびに関連する罹患率および死亡率は、相当に増加した。これは主に、重体患者、例えば、血管内カテーテルおよび尿カテーテルを着け、完全静脈栄養および血液透析を受け、または換気システムに接続されてICU(集中治療室)にいるような者などの生存を増加させてきた、現代医学の大きな進歩に起因する。
【0003】
カンジダ種は一般に、ICUの患者のうちに院内血流感染症を引き起こす。英国のカンジダ血症の入院中の発生率は、100,000病床日数あたり約3例であり、すべての症例の40%から52%がICUで発生している(非特許文献1)。この種の真菌症は、かなりの罹患率および死亡率を伴うことが多い。寄与死亡率は約38%であるが、それは5%から71%の間で変動する可能性がある。ここ数年間で、ICUに入院する患者において侵襲性肺アスペルギルス症の発生率が上昇した。該疾患の発生率は、0.3%から5.8%の範囲であり、全死亡率は80%を超える(非特許文献2)。重篤患者は、ICUに滞在する間に免疫調節障害を発症する危険性があり、それにより、重篤患者は真菌感染症に弱くなる。慢性閉塞性肺疾患、ステロイドの長期使用、進行した肝疾患、長期の腎代償療法、溺水、および真性糖尿病などの危険因子が記載されている。
【0004】
また、免疫不全患者の数も、臓器および骨髄移植、自己免疫症候群、後天性免疫不全症候群(AIDS)ならびに腫瘍学の分野で特に激増した。
【0005】
骨髄移植集団のうちの約40%が、侵襲性真菌感染症を発症する(非特許文献3)。カンジダ種およびアスペルギルス種は、造血器腫瘍患者および骨髄移植患者では、院内の表在性および侵襲性真菌症の原因となる最も一般的な病原菌である。こうした患者では、全身性カンジダ症に関連する死亡率は極めて高い(50〜90%)。
【0006】
臓器移植に関しては、感染合併症は、肺移植患者において頻度が増大する。罹患性の増加は主に、免疫抑制療法に加えて、絶え間なく外部環境に曝されることに起因する。免疫抑制治療の強度に対応して、侵襲性真菌感染症は、手術後の最初の数日間に起こることがあり、その頻度は最初の2カ月間に最も多く6カ月後に減少するが、移植後数年経っても起こる可能性がある(非特許文献4)。
【0007】
侵襲性真菌感染症は、例えば腎臓および肝臓移植など、他の種類の臓器移植にも頻発し、5から50%の発生率が報告される(非特許文献5)。
【0008】
真菌症は、AIDSの患者における死因の主因の一つであり、こうした感染症の発生率および重症度は、疾患の進行および結果として起こるT細胞介在性免疫の障害のともに増加する。様々な真菌症の発生率は、居住地に存在する地域特有の日和見真菌に密接に関係している。一般的に言えば、AIDS患者に影響を及ぼす最も頻度が高い真菌症は、ヒストプラスマ症、ブラストミセス症、コクシジオイデス症およびパラコクシジオイデス症である(非特許文献6)。
【0009】
粘膜のカンジダ感染症も、非常によく見られる。通常の患者では、すべてのこうした真菌症は一般に自己限定性であるが、免疫抑制患者では高侵襲性となり、進行性の広範な播種をもたらす。
【0010】
さらに、現行の治療法に耐性がある微生物によって引き起こされる真菌症の増加が、ここ数年で明らかになった。この現象は、鵞口瘡カンジダによって引き起こされる真菌感染症とフルコナゾールおよび他のアゾールに関して、特に明らかである(非特許文献7)。
【0011】
現在利用できる抗真菌薬は、その限られた活性スペクトルおよびその使用に関連する重い副作用によって、十分に満足できるものではない。ポリエン系薬剤、例えばアムホテリシンBは、アスペルギルス属、接合菌類(Zygomycete)および他のカビ類に対していかなる方法でも活性を有し、侵襲性真菌症の治療に許可される投与量は、その毒性により一日あたり3〜5mg/kgである。侵襲性アスペルギルス症を患う、高度に免疫不全な患者において、リポソームカプセル化したアムホテリシンBを3mg/kgで毎日投与すると、50%の患者から良好な応答が得られ、また72%の12週生存率が得られた(非特許文献8)。この薬剤は、14〜16%の患者に腎毒性および低カリウム血症を誘発した。アムホテリシンBを10mg/kgで毎日投与すると、追加的な利益を何ら与えることなく、腎毒性の発生率が増加した(31%)。
【0012】
1970年代後半に導入されたアゾールは、エルゴステロール合成の遮断薬である。この系統に属する薬剤の使用は、その狭い活性スペクトルにより限定される。例えば、ボリコナゾールは、アムホテリシンBよりも侵襲性アスペルギルス症の治療に活性があるが、接合菌類に対して活性がない(非特許文献9)。アゾールの採用は、幾つかの副作用の誘発によっても限定される。アゾールは、哺乳動物のp450酵素と相互作用して他の薬剤の代謝に干渉し、加えて、ケトコナゾールなどの幾つかのアゾールは、心臓のカリウムチャネルKv1.5を遮断する可能性があり、QT延長および「トルサード・ド・ポワント」を引き起こす(非特許文献10)。
【0013】
テルビナフィンなどのアリルアミンは、スクアレンエポキシダーゼに結合し、阻害して、エルゴステロール合成を遮断する。これらの薬剤は、皮膚糸状菌(Dermatophyte)に対して極めて強力であるが、カンジダ種に対するその活性は極めて乏しい。場合によっては、アリルアミンでの治療後に重篤な皮膚の有害反応が起こる。最近の多国間症例対照試験(multinational case−control study)(euroSCAR)(非特許文献11)によると、テルビナフィン全身治療は、急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP)の発症に強く関連することが明らかになった。この疾患は、通常白血球増加および発熱を伴う、多くの無菌性の非濾胞性膿疱の急速な発生によって特徴付けられる。AGEPは一般に、特定の薬剤を用いる患者の治療によるものであり、変化したT細胞活性に関係すると見られる。テルビナフィン治療は、皮膚筋炎、すなわち、紅斑、筋力低下、および間質性肺線維症によって特徴付けられる重篤な自己免疫性の結合組織病を誘発する恐れもある(非特許文献12)。加えて、様々な抗真菌薬物と同様に、テルビナフィンは重篤な肝損傷を引き起こす恐れがある(非特許文献13)。
【0014】
グリセオフルビンは、皮膚糸状菌感染症を治療するために1960年に導入されたベンゾフラン(benzofuran)である。該化合物は、微小管生成に干渉することにより、その静菌活性を誘導する。グリセオフルビンは爪真菌症の治療では限定された活性を示し、治療の中止をもたらす可能性がある重篤な副作用、例えば、悪心、下痢、頭痛、錯乱および疲労などを引き起こすことが多い(非特許文献14)。
【0015】
2種類のN−ヒドロキシピリドン、すなわちシクロピロックスオラミンおよびオクトピロックスは、多価カチオンをキレート化することによって主に作用して、金属依存性の酵素を阻害すると見られる。これらは、様々な真菌感染症に対して採用されるが、その使用は局所治療に限定される。
【0016】
エキノキャンディン(カスポファンギン、ミカファンギン、アニデュラファンギン)は、半合成のリポペプチドであり、最も新しく導入された抗真菌薬である。これらは、細胞壁の維持に必須な酵素であるβ−(1−3)−Dグルカンの合成を非競合的に阻害することによって作用し、侵襲性カンジダ症およびアスペルギルス症の静脈内治療に主に使用される。これらは、酵母菌に対して殺真菌性であるが、糸状菌に対しては静真菌性であるに過ぎない。加えて、これらは、ブラストミセス属(Blastomyces)およびヒストプラスマ属(Histoplasma)などの二形性真菌に対して全く活性がない。エキノキャンディンは許容性が良好であるが、動物生殖試験により胎児への有害作用が示された。こうした理由から、FDAはエキノキャンディンを胎児危険度分類Cとしてリスト表示している(非特許文献15、非特許文献16)。
【0017】
特許文献1は、8−ヒドロキシ−7−置換キノリンを抗ウイルス剤として開示している。
【0018】
特許文献2は、HIVインテグラーゼ阻害活性を有する包括的な化合物類を開示している。実際には、該参考文献に開示される特定の化合物の大部分が、ナフチリジニル(naphthyridinyl)残基を有する。
【0019】
特許文献3は、HIVインテグラーゼ阻害活性を有する窒素含有ヘテロアリール化合物を開示している。N−ベンジル−8−ヒドロキシキノリン−7−カルボキサミドである。
【0020】
特許文献4は、CLK−1阻害剤としての活性を有するキノリン誘導体を開示している。
【0021】
特許文献5は、ある種の第2級アミドを含む極めて広範な式により定義される抗真菌剤を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】国際公開第98/11073号パンフレット(米国特許第6310211号明細書)
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0055071号明細書
【特許文献3】欧州特許1375486号明細書
【特許文献4】国際公開第2008/14602号パンフレット
【特許文献5】欧州特許出願公開第1669348号明細書
【特許文献6】独国特許第540842号明細書
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Schelenz S., J. Antimicrob. Chemother. 2008; 61, Suppl 1, 31-34
【非特許文献2】Trof R. J. et al, intensive Care Med., 2007; 33, 1694-1703
【非特許文献3】Khan S. A., Wingard J. R., Natl. Cancer Inst. Monogr. 2001; 29, 31-36
【非特許文献4】Hamacher J. et al, Eur. Respir. J., 1999; 13, 180-186
【非特許文献5】Dictar M. O. et al, Med Mycol., 2000; 38 Suppl. 1, 251-258
【非特許文献6】Sarosi G. A., Davies S. F., West J. Med., 1996; 164, 335-340
【非特許文献7】Bastert J. et al, Int. J. Antimicrob. Agents, 2001; 17, 81-91
【非特許文献8】Cornely O. A. et al, Clin. Infect. Dis., 2007; 44, 1289-1297
【非特許文献9】Johnson L. B., Kauffman C. A., Clin. Infect. Dis., 2003, 36, 630-637
【非特許文献10】Dumaine R., Roy M. L., Brown A. M., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1998; 286, 727-735
【非特許文献11】Sidoroff A. et al, Br. J. Dermatol., 2007; 15, 989-996
【非特許文献12】Magro C. M. et al, J. Cutan. Pathol., 2008; 35, 74-81
【非特許文献13】Perveze Z. et al, Liver Transpl., 2007; 13, 162-164
【非特許文献14】Korting H. C. et al, Antimicrob. Agents Chemother., 1993; 37, 2064-2068
【非特許文献15】http://www.fda.gov/medwatch/SAFETY/2004/mar_PI/Cancidas_PI.pdf;
【非特許文献16】http://www.fda.gov/medwatch/safety/2007/Aug_PI/Mycamine_PI.pdf
【非特許文献17】Bioorg. Med. Chem., 14, 2006, 5742-5755
【非特許文献18】Synthesis, 12, 1997, 1425-1428
【非特許文献19】Jerry March, Advanced Organic Chemistry, 4th edition, John Wiley & Sons, 1992, pp. 417-425
【非特許文献20】Green T.W. and Wuts P.G.M. (1991) Protecting Groups in Organic Synthesis, John Wiley et Sons
【非特許文献21】National Committee for Clinical Laboratory Standards. Reference Method for Broth Dilution Antifungal Susceptibility Testing of Yeasts; Approved standard-Second Edition M27-A2. 2002; Vol. 22, No. 15
【非特許文献22】National Committee for Clinical Laboratory Standards. Reference Method for Broth Dilution Antifungal Susceptibility Testing of Filamentous Fungi; Approved standard M38-A. 2002; Vol. 22, No. 16
【発明の概要】
【0024】
有効な抗真菌薬への臨床的必要性がここ数年で激増していることは上記先行技術文献から明らかである。残念なことに、実際に利用できる薬剤は、その狭い作用スペクトル、薬物動態特性および重篤な副作用により、満足できるものではない。
【0025】
本発明は、強力な抗真菌活性を備えた、一般式(I)の化合物、または医薬として許容されるその塩および誘導体を特に提供する
【0026】
【化1】

【0027】
(式中、R0は、
−H、
−F、
−Cl、
−Br、
−NO2
−CF3
−CO211
−(C=O)−R1415
−C1〜C6アルキル、
−CN、
−(CH2m−NR1415
−(SO2)−NR1415
−(N−C=O)−NR1415
−W−R10
k)任意選択で1個、2個もしくは3個のR4により置換されている−(CH2m−アリール、または
l)任意選択で1個もしくは2個のR5により置換されている−(CH2m−複素環であり、
式中、R1は、
−H、
−C1〜C3アルキル、
−OH、または
−CF3であり、
式中、R2は、
−H、または
任意選択で1個のR6により置換されている−CH2−フェニルであり、
式中、R3は、
−H、
−C1〜C3アルキル、
−OH、
−CF3
−CH=CH−フラニル、
任意選択で1個のR4により置換されている−CH=CH−フェニル、
−CH=CH−ピリジニル、
任意選択で1個のR4により置換されている−(CH2m−フェニル、
−NHV、
−CH2NHV、または
−CH2Zであり、
式中、R4は、
−F、
−Cl、
−Br、
−I、
−NO2
−CF3
−CN、
−CH2OH、
−C1〜C6アルキル、
−W−R10
任意選択で1個もしくは2個のR5により置換されている−(CH2m−アリール、
任意選択で1個もしくは2個のR5により置換されている−(CH2m−複素環、
任意選択で1個のR8により置換されている−(CH2m−C3〜C8シクロアルキル、
−SO2−NH−複素環、
−(CH2m−NR1415
−(SO2)−NR1415
−(C=O)−NR1415、または
−(N−C=O)−NR1415であり、
式中、R5は、
−H、
−F、
−Cl、
−Br、
−CF3
−W−R10
−C1〜C6アルキル、
任意選択で1個もしくは2個のR6により置換されている−(CH2m−アリール、
任意選択で1個もしくは2個のR7により置換されている−(CH2m−複素環、または
−(CH2m−C3〜C8シクロアルキルであり、
式中、R6は、
−F、
−Cl、または
−Brであり、
式中、R7は、
−H、
−F、
−Cl、
−Br、
−OH、または
−O−C1〜C3アルキルであり、
式中、R8は、
−C1〜C4アルキル、
−W−H、
−CH2−W−H、
任意選択で1個もしくは2個のR6により置換されている−(CH2m−アリール、
任意選択で1個もしくは2個のR7により置換されている−(CH2m−複素環、
式中、R9は、
−C1〜C7アルキル、
−C3〜C8シクロアルキル、
−C(O)R11
−C(O)NHR11
−C(OH)R11
−CH2OH、
−CO211、または
任意選択で1個もしくは2個のR4により置換されているアリールであり、
式中、R10は、
−H、
−C1〜C6アルキル、
任意選択で1個もしくは2個のR4により置換されている−(CH2m−アリール、
任意選択で1個もしくは2個のR5により置換されている−(CH2m−複素環、
−(CH2m−C3〜C8シクロアルキル、
−CH(R12)R13であり、
式中、R11は、
−H、
−C1〜C7アルキル、
−(CH2m1、または
−(CH2m−C3〜C8シクロアルキルであり、
式中、R12は、
−H、
−(CH2mCO2−C1〜C6アルキル、
任意選択で1個もしくは2個のR7により置換されている−(CH2m−フェニル、
任意選択で1個もしくは2個のR5により置換されている−(CH2m−複素環、
任意選択で1個のR6により置換されている−C1〜C6アルキル、
−C1〜C4アルキルNH−COOCH2−ベンジル、または
−C1〜C4アルキル−S−CH3であり、
式中、R13は、
−NH−CO2C(CH33
−CN、
−COOH、または
−CO211であり、
式中、R14およびR15は、互いに独立に、
−H、
−C1〜C6アルキル、
任意選択で1個、2個もしくは3個のR4により置換されている−(CH2m−アリール、
任意選択で1個のR8により置換されている−(CH2m−複素環、
任意選択で1個もしくは2個のR5により置換されている−(CH2m−複素環、
−(CH2m−W−R10
−(CH2m−CN
から選択され、
2およびR3に結合された窒素原子と一緒になって、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択されるヘテロ原子を1から3個含有する、任意選択で置換された5〜8員の単環複素環を形成している、または
2およびR3に結合された窒素原子と一緒になって、任意選択で置換された5〜8員の単環複素環を形成しており、該単環複素環が、1つもしくは2つの任意選択で置換された飽和もしくは不飽和の環、または、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択されるヘテロ原子を1から3個含有する、任意選択で置換された他の複素環と縮合している
から選択され、
式中、Aは、
−(CH2m−X1
任意選択で1個のR6により置換されている−(CH2m−C3〜C8シクロアルキル、
−(CH2m−W−X2
−(CH2m−W−CH2−X1、または
−(CH2m−CHR9−(CH2m−X1であり、
式中、X1は、
任意選択で1個、2個もしくは3個のR4により置換されているアリール、
任意選択で1個もしくは2個のR5により置換されている複素環、
−C1〜C8アルキル、
−CH(OH)−フェニル、
−S−フェニル、
任意選択で1個、2個もしくは3個のR4により置換されている−NHSO2−フェニル、
−CN、
−OH、
任意選択で1個もしくは2個のR8により置換されている−C3〜C8シクロアルキル、
−4−シアノ−2,3,4,5−テトラフルオロ−フェニルであり、
式中、X2は、
任意選択で1個、2個もしくは3個のR4により置換されているアリール、
任意選択で1個もしくは2個のR5により置換されている複素環、
−C1〜C6アルキル、
−CH(OH)−フェニル、または
任意選択で1個もしくは2個のR8により置換されている−C3〜C8シクロアルキルであり、
式中、Wは、
−NH、
−O−、または
−S−であり、
式中、Vは、
−R11
−C(O)R11
−SO211、または
−C(O)NHR11であり、
式中、Zは、
−C1〜C7アルキル、
−C3〜C8シクロアルキル、
−C(O)R11
−C(O)NHR11、または
−CO211であり、
式中、アリールは、
フェニル、
ナフチル、
ビフェニル、
テトラヒドロ−ナフチル、または
フルオレニルであり、
式中、複素環は、窒素、酸素、および硫黄からなる群から選択されるヘテロ原子を1から3個含有する、5員、6員、もしくは7員の、飽和もしくは不飽和環であり、上記の複素環式環のうちのいずれかがベンゼン環もしくは他の複素環(heterocycle)に縮合している任意の二環基を含み、
式中、シクロアルキルは、飽和もしくは不飽和炭化水素環であり、上記の環がベンゼン環、複素環、もしくは他の炭化水素環に結合している任意の二環基を含み、
式中、mは0から6までの整数である。
【0028】
さらに好ましくは、式(I)において、
0、R1、R2,およびR3は、Hであり、
Aは、−(CH2m−X1であり、
mは、0から1までの整数であり、
1は、
任意選択で1個もしくは2個のR4によって置換されているアリール、
任意選択で1個もしくは2個のR5によって置換されている複素環、または
任意選択で1個もしくは2個のR8によって置換されている−C3〜C8シクロアルキルであり、
式中、R5およびR8は、上で定義した通りであり、
4は、
−Cl、
−Br、
−CF3
−W−R10、または
−(CH2m−NR1415であり、
Wは、酸素であり、
10は、
−H、または
−C1〜C6アルキルであり
14およびR15は、−C1〜C6アルキルである、または
4およびR5に結合された窒素原子と一緒になって、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択されるヘテロ原子を1から3個含有する、任意選択で置換された5〜8員の単環複素環を形成しており、
アリールは、好ましくはフェニルであり、
および/または、複素環は、好ましくは、2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン、ピリジン、チオフェン、トリアゾール、チアゾール、イソキサゾール、ベンゾチアゾール、ピラジン、イミダゾール、もしくはフランである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】「シクロピロックス」の抗真菌活性効果について、Fe3+の存在により完全に阻害され、カンジダ−グラブラタは正常に増殖することができ、反対に、「アムホテリシン」には抗真菌活性効果がないことを示す図である。
【図2】「実施例3、4、11、および12の化合物」の抗真菌活性効果について、すべて、シクロピロックスと同様に、Fe3+の存在によって完全に阻害されることを示す図である。
【図3】「E8」および「NiK−29298」の抗真菌活性効果に関する試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
「医薬として許容される塩または誘導体」は、親化合物の生物学的な効果および特性を有し、生物学的にまたはそれ以外に望ましくないことがない、これらの塩または誘導体を指す。かかる塩には、無機または有機酸を有するものが含まれ、例として、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩が挙げられる。かかる誘導体には、エステル、エーテルおよびN−オキシドが含まれる。
【0031】
本発明の化合物およびその医薬として許容される塩または誘導体は、不斉中心を有することができ、明確に記載される場合を除き、立体異性体の混合物として、または個々のジアステレオマーもしくはエナンチオマーとして、本発明に含まれるすべての異性体型で存在することができる。
【0032】
「医薬として許容される」という語句は、本発明の化合物を含有する製剤に関して使用される場合、生理学的に許容可能で、哺乳動物などの動物(例えばヒト)に投与したときに、典型的には不都合な反応を生じない、分子的実体およびかかる製剤の他の成分を指す。好ましくは、本明細書で使用される場合、用語「医薬として許容される」は、FDAまたはEMEAなどの監督機関によって認可されている、または、哺乳類、最も好ましくはヒトにおける使用に関して、米国もしくはヨーロッパ薬局方または他の一般的に承認されている薬局方のリストに記載されていることを意味する。
【0033】
本発明の好ましい化合物には、それだけには限らないが、以下からなる群から選択される化合物が含まれる:
8−ヒドロキシ−N−(チオフェン−2−イルメチル)キノリン−7−カルボキサミド
8−ヒドロキシ−N−(シクロヘキシルメチル)キノリン−7−カルボキサミド
8−ヒドロキシ−N−ベンジル−キノリン−7−カルボキサミド
8−ヒドロキシ−N−(4−クロロベンジル)キノリン−7−カルボキサミド
8−ヒドロキシ−N−(4−メトキシフェニル)キノリン−7−カルボキサミド
8−ヒドロキシ−N−(4−(トリフルオロメチル)ベンジル)キノリン−7−カルボキサミド
8−ヒドロキシ−N−フェニル−キノリン−7−カルボキサミド
8−ヒドロキシ−N−(2−ヒドロキシベンジル)キノリン−7−カルボキサミド
8−ヒドロキシ−N−(フラン−2−イルメチル)キノリン−7−カルボキサミド
8−ヒドロキシ−N−(ピリジン−3−イルメチル)キノリン−7−カルボキサミド
8−ヒドロキシ−N−(4−メトキシベンジル)キノリン−7−カルボキサミド
8−ヒドロキシ−N−(4−ブロモベンジル)キノリン−7−カルボキサミド
8−ヒドロキシ−N−(1,1−ジオキシドテトラヒドロチエン−3−イル)キノリン−7−カルボキサミド
8−ヒドロキシ−N−(4−(ジメチルアミノ)ベンジル)キノリン−7−カルボキサミド
8−ヒドロキシ−N−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)キノリン−7−カルボキサミド
8−ヒドロキシ−N−(4−モルホリノフェニル)キノリン−7−カルボキサミド
8−ヒドロキシ−N−(4−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)フェニル)キノリン−7−カルボキサミド
8−ヒドロキシ−N−(チアゾール−2−イル)キノリン−7−カルボキサミド
8−ヒドロキシ−N−(2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン−6−イル)キノリン−7−カルボキサミド
8−ヒドロキシ−N−(4−モルホリノベンジル)キノリン−7−カルボキサミド
8−ヒドロキシ−N−((5−メチルイソオキサゾール−3−イル)メチル)キノリン−7−カルボキサミド
8−ヒドロキシ−N−((4−メチルチアゾール−2−イル)メチル)キノリン−7−カルボキサミド
8−ヒドロキシ−N−(イソオキサゾール−3−イル)キノリン−7−カルボキサミド
8−ヒドロキシ−N−(ベンゾ[d]チアゾール−2−イルメチル)キノリン−7−カルボキサミド
8−ヒドロキシ−N−{(5−メチルピラジン−2−イル)メチル)キノリン−7−カルボキサミド
8−ヒドロキシ−N−((1−メチル−1H−イミダゾール−2−イル)メチル)キノリン−7−カルボキサミド
8−ヒドロキシ−N−((4−フェニルチアゾール−2−イル)メチル)キノリン−7−カルボキサミド
8−ヒドロキシ−N−(ピリジン−4−イルメチル)キノリン−7−カルボキサミド
8−ヒドロキシ−N−(ピリジン−2−イルメチル)キノリン−7−カルボキサミド。
【0034】
本発明の化合物は、以下の概略チャート1に表されるように、適切な8−ヒドロキシキノリン−7−カルボン酸1−1(または酸ハロゲン化物もしくはエステルなどの酸誘導体)を、適したアミン1−2とカップリングさせることによって調製することができる。
【0035】
【化2】

【0036】
あるいは、アミンとのカップリングを行う前に、カルボン酸のヒドロキシル基を保護し(非特許文献17もしくは非特許文献18または特許文献6)、最終ステップで脱保護することができる。
【0037】
カルボン酸にアミンをカップリングさせてカルボキサミドを形成する方法は、当技術分野で周知である。適切な方法は、例えば非特許文献19に記載されている。
【0038】
芳香族ヒドロキシル基を保護および脱保護する方法は、当技術分野で周知である。保護基は、有機合成の標準方法に従って操作される(非特許文献20)。
【0039】
記述した合成手順は、本質において代表的であるに過ぎず、代替の合成手順が有機化学における当業者に既知であることは、当業者には明白であろう。
【0040】
以下の実施例は、本発明およびその実施を説明する役目を果たすのみである。該実施例は、本発明の範囲または精神を限定するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0041】
1.化学合成
特に示さない限り、すべての出発試薬は、市販品として入手できることが判明し、事前に精製を何もせずに使用した。本発明の化合物は、従来の合成手順を使用して容易に調製することができる。こうした反応において、それ自体が当業者には既知である変異体を使用することもできるが、変異体についてこれ以上詳細には述べない。さらに、本発明の化合物を調製する他の方法は、以降の反応スキームおよび実施例に照らせば、当業者には容易に明らかであろう。特に示さない限り、すべての変数は上で定義した通りである。
【0042】
「類似した」手順の使用が言及される場合、当業者には理解されるであろうが、かかる手順は、例えば、反応温度、試薬/溶剤の量、反応時間、後処理条件またはクロマトグラフィの精製条件などの、軽微な変更を含む可能性がある。
【0043】
本明細書、特に表および実施例に使用される略語を、表1にまとめる。
【0044】
【表1】

【0045】
特に示さない限り、すべての温度は℃(摂氏温度)またはK(ケルビン)で表す。
【0046】
プロトン核磁気共鳴(1H−NMR)スペクトルは、Brucker 300MHzで記録した。化学シフトは、百万分率(ppm、δ単位)で表す。分裂パターンは、見かけ上の多重度を記述し、s(一重線)、d(二重線)、t(三重線)、q(四重線)、quint(五重線)、sxt(六重線)、m(多重線)、br.s(幅広の一重線)と表す。
【0047】
LC−MSは、以下の条件下で記録した。
【0048】
方法A〜C 質量分析計シングル四重極ZQ(Waters)を接続した、Sample Managerを有するUPLCおよび2996PDA検出器(Waters)。ZQインターフェース:ESIポジティブモード。102から900amuまでのフルスキャン。キャピラリー3.2V、コーン25V、抽出器3V、RF0.3V、ソース温度115℃、脱溶媒温度350℃、ガス流量800L/時、コーン100L/時。
・方法A:カラム Aquity UPLC−BEH C18(50×2.1mm、1.7μm)。流速0.6mL/分、カラム40℃、注入量2μL。移動相:A相=水/CH3CN 95/5+0.1%TFA、B相=水/CH3CN=5/95+0.1%TFA。勾配:0〜0.25分(A:95%、B:5%)、3.30分(A:0%、B:100%)、3.30〜4.00(A:0%、B:100%)、4.10分(A:95%、B:5%)、4.10〜5.00分(A:95%、B:5%)。
・方法B:カラム Atlantis dC18(100×2.1mm、3.0μm)。流速0.3mL/分、カラム40℃、注入量2μL。移動相:A相=水/CH3CN 95/5+0.1%TFA、B相=水/CH3CN=5/95+0.1%TFA。勾配:0〜0.20分(A:95%、B:5%)、5.00分(A:0%、B:100%)、5.00〜6.00(A:0%、B:100%)、6.10分(A:95%、B:5%)、6.10〜7.00分(A:95%、B:5%)。
【0049】
実施例1:
【0050】
【化3】

【0051】
8−ヒドロキシ−N−(チオフェン−2−イルメチル)キノリン−7−カルボキサミド
THF(8mL)中の、8−ヒドロキシキノリン−7−カルボン酸(100mg、0.53mmol)とジ(1H−イミダゾール−1−イル)メタノン(86mg、0.53mmol)との混合物を、窒素下で一晩45℃に加熱した。反応混合物を室温まで放冷し、チオフェン−2−イルメタンアミン(30mg、0.26mmol)を添加した。得られた混合物を、室温で24時間撹拌した。さらなるチオフェン−2−イルメタンアミン(15mg、0.13mmol)を添加し、反応混合物を、室温で60時間撹拌した。この反応混合物を、H2Oで反応停止させ、乾固するまでTHFを蒸発させた。炭酸水素ナトリウムの飽和溶液を水相に添加し、DCMで2回抽出した。分離した有機層をNa2SO4上で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物を、SPE−SIカートリッジ(2g、DCMからDCM:MeOH 99:1)により精製し、標記化合物(40mg、0.14mmol)を黄色の固体として得た。
【0052】
LC−MS m/z(ESI+):285.1(MH+)、Rt=1.41分(方法A)。
【0053】
1H-NMR(DMSO-d6)δ:9.43(br.s,1H);8.91(dd,1H);8.35(dd,1H);8.00(d,1H);7.65(dd,1H);7.31-7.48(m,2H);7.09(dd,1H);6.99(dd,1H);4.40-4.92(m,2H)
【0054】
上述の手順に従い、本発明のさらなる化合物を調製した(表2)。
【0055】
【表2−1】

【0056】
【表2−2】

【0057】
【表2−3】

【0058】
【表2−4】

【0059】
【表2−5】

【0060】
【表2−6】

【0061】
2.活性試験:方法および結果
抗真菌活性を試験するために使用される微生物
紅色白癬菌(ATCC28188、PBI International)、毛瘡白癬菌(ATCC9533、PBI International)、黒色麹菌クロカビ(ATCC16404、PBI International)、スコプラリオプシス−ブレビカウリス(ATCC36840、DSMZ)、鵞口瘡カンジダ(ATCC90028、PBI International)、カンジダ−グラブラタ(ATCC 90030、DSMZ)。
【0062】
調製および保存
菌株を凍結乾燥アンプルまたは凍結乾燥ペレットから調製した。懸濁液の単離をジャガイモ培地(PDA)上で行い、菌株の純度を試験した。次いで、微生物懸濁液をPDAプレート上に画線し、菌株の大量増殖を行った。
【0063】
インキュベーションは、30℃で48〜72時間(カンジダ属酵母)、および7〜10日間(糸状菌)であった。
【0064】
酵母のコロニーおよび糸状菌の分生子を、3〜5mLのRPMI1640+50%グリセロールで収穫し、一定分量を−80℃で凍結した。
【0065】
抗真菌薬感受性試験
化合物の最小発育阻止濃度(MIC)を、臨床研究所規格委員会(NCCLS)に従って開発された方法を使用する、微量液体希釈試験(broth micro−dilution susceptibility test)を通して決定した(非特許文献21)(非特許文献22)。
【0066】
0.165M 3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)と10M NaOHとでpH7に緩衝化し、18gグルコース/リットルを補った、L−グルタミンを有するRPMI1640培地で、アッセイを行った。試験を、96穴の滅菌プレート(接種サイズ 1×105CFU/mL)で実施した。化合物の原液を、100%DMSO中12.8mg/mLで調製した。RPMI1640を使用して2倍希釈系列をプレート中に調製した。最終濃度は、1%DMSOで0.125から128μg/mLの範囲であった。
【0067】
MICは、視認できるいかなる増殖も妨げる抗真菌剤の最低濃度として定義され、酵母では48時間のインキュベーション後(35℃)、糸状菌では5日間のインキュベーション後(35℃)に決定した。
【0068】
結果
一実験2回から得られた値の相乗平均として計算された、最も好ましい化合物のMIC値を表3に示す。
【0069】
【表3】

【0070】
さらに、特許文献5にE8として体系化される化合物と共に、特許文献5に開示されるものの中にも本発明にも含まれないが、本出願に記載の化合物類と特許文献5に記載の化合物を関連付けるものとして使用することができる、新規化合物(NiK−29298として体系化される)を合成した(表4)。
【0071】
【表4】

【0072】
本出願に記載の誘導体の効力を評価するために使用した同一の微生物で試験した、これらの化合物のMIC値を表5に報告する。
【0073】
【表5】

【0074】
見てわかるように、表3に一覧表示されたすべての化合物は、酵母菌、皮膚糸状菌およびカビ類を含めた、試験した6菌株すべてに活性を有する。本発明の化合物のこうした広域スペクトルにより、主に皮膚糸状菌によって引き起こされる、皮膚、頭皮および爪感染症;主に酵母菌によって引き起こされる、膣、口腔、および腸内感染症;主にカビ類によって引き起こされる耳、肺、眼、および他の全身感染症を含めた、ヒトまたは動物におけるすべての種類の真菌感染症に対する、予測される有効性が説明される。
【0075】
反対に、特許文献1に記載のものと同じキノリン骨格によって特徴付けられる、特許文献5に開示される化合物E8、および化合物NiK−29298は、酵母菌のみに活性を有し、皮膚糸状菌およびカビ類を含む他の菌株に対しては、認め得る活性を何ら示さなかった。
【0076】
作用機序
最も強力で広域スペクトルの抗真菌剤のうちの1つであるシクロピロックスは、Fe3+をキレート化することによって、すなわち、真菌細胞から鉄イオンを取り去ることによって真菌細胞を殺すこと、また、そのin vitroでの作用が、培地に適量のFe3+イオンを添加することによってのみ阻害されることが、当技術分野で知られている。シクロピロックスは、その独特の作用機序の故に、真菌株に耐性を誘導しない唯一の真菌剤であることも当技術分野で知られている。
【0077】
作用機序の評価方法
化合物の作用機序が鉄イオンのキレート化であるのかを検証するために、カンジダ−グラブラタ(ATCC90030)菌株を用いて、過剰な鉄イオン(100μM FeCl3)を試験培地に添加することによってMIC決定を行った。金属イオンFe3+の存在下または非存在下で、薬剤に曝した細胞の生存度を、540nmでの光学濃度測定によって判定した。
【0078】
100μM(100マイクロモル)Fe3+の存在下または非存在下におけるカンジダ−グラブラタに対する、実施例3、4、11 12に記載の化合物、E8、およびNiK−29298の効力を判定した。
【0079】
その結果を、以降の図1、2、および3に報告する。
【0080】
すべての図において、線および点は、様々な濃度の抗真菌剤(横軸)を添加することによる、真菌増殖の阻害率(%)(縦軸)を表す。青色の線および点は、鉄を補給せずに行った実験であり、一方、赤色の線および点は、100μM Fe3+の存在下で行った実験の結果を表す。当技術分野から知られるように、シクロピロックスの効果は、Fe3+の存在により完全に阻害され、カンジダ−グラブラタは正常に増殖することができる(図1)。反対に、Fe3+は、シクロピロックスとは異なる作用機序を有することが当技術分野で知られている抗真菌剤、アムホテリシンには効果がない。
【0081】
本発明の化合物はすべて、シクロピロックスと同様の挙動を有する、すなわち、これらの抗真菌活性は、Fe3+の存在によって完全に阻害される(図2)。
【0082】
反対に、特許文献5に記載されるキノリン骨格を有する、特許文献5により開示される化合物E8、および化合物NiK−29298は、シクロピロックスおよび本発明の化合物とは異なり、培地中のFe3+イオンの存在によって阻害されることはなかった。
【0083】
結論として、特許文献5に開示される化合物は、酵母菌に限定される狭い作用スペクトルを有するが、皮膚糸状菌またはカビ類に対しては抗真菌活性を示さない。さらに、その作用機序は、鉄キレート化とは無関係である。
【0084】
反対に、本発明の化合物は、酵母菌、皮膚糸状菌およびカビ類に及ぶ広範な作用スペクトルを有する強力な抗真菌活性を有するという点で、特許文献5に開示されるものより優れている。こうした性質により、皮膚、頭皮、爪感染症、さらに、膣、口腔および腸内感染症、ついには、耳、肺、眼および他の全身感染症を含めた、様々な真菌感染症において、本発明の化合物の有効性が予測可能となる。さらに、本発明の化合物は、その作用機序が、真菌細胞において耐性の発生を回避することが当技術分野で知られている機序である、鉄キレート化であるという点で、特許文献5に開示されるものより優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗真菌剤として使用するための、一般式(I)の化合物、または医薬として許容されるその塩もしくは誘導体であって、
【化1】

式中、Rは、
−H、
−F、
−Cl、
−Br、
−NO
−CF
−CO11
−(C=O)−NR1415
−C〜Cアルキル、
−CN、
−(CH−NR1415
−(SO)−NR1415
−(N-C=O)-NR14R15、
−W−R10
任意選択で1個、2個もしくは3個のRにより置換されている−(CH−アリール、または
任意選択で1個もしくは2個のRにより置換されている−(CH−複素環であり、
式中、Rは、
−H、
−C〜Cアルキル、
−OH、または
−CFであり、
式中、Rは、
−H、または、
任意選択で1個のRにより置換されている−CH−フェニルであり、
式中、Rは、
−H、
−C〜Cアルキル、
−OH、
−CF
−CH=CH−フラニル、
任意選択で1個のRにより置換されている−CH=CH−フェニル、
−CH=CH−ピリジニル、
任意選択で1個のRにより置換されている−(CH−フェニル、
−NHV、
−CHNHV、または
−CHZであり、
式中、Rは、
−F、
−Cl、
−Br、
−I、
−NO
−CF
−CN、
−CHOH、
−C〜Cアルキル、
−W−R10、
任意選択で1個もしくは2個のRにより置換されている−(CH−アリール、
任意選択で1個もしくは2個のRにより置換されている−(CH−複素環、
任意選択で1個のRにより置換されている−(CH−C〜Cシクロアルキル、
−SO−NH複素環、
−(CH−NR1415
−(SO)−NR1415
−(C=O)−NR1415、または
−(N−C=O)−NR1415であり、
式中、Rは、
−H、
−F、
−Cl、
−Br、
−CF
−W−R10
−C〜Cアルキル、
任意選択で1個もしくは2個のRにより置換されている−(CH−アリール、
任意選択で1個もしくは2個のRにより置換されている−(CH−複素環、または、
−(CH−C〜Cシクロアルキルであり、
式中、Rは、
−F、
−Cl、または、
−Brであり、
式中、Rは、
−H、
−F、
−Cl、
−Br、
−OH、または、
−O−C〜Cアルキルであり、
式中、Rは、
−C〜Cアルキル、
−W−H、
−CH−W−H、
任意選択で1個もしくは2個のRにより置換されている−(CH−アリール、
任意選択で1個もしくは2個のRにより置換されている−(CH−複素環であり、
式中、Rは、
−C〜Cアルキル、
−C〜Cシクロアルキル、
−C(O)R11
−C(O)NHR11
−C(OH)R11
−CHOH、
−CO11、または、
任意選択で1個もしくは2個のRにより置換されているアリールであり、
式中、R10は、
−H、
−C〜Cアルキル、
任意選択で1個もしくは2個のRにより置換されている−(CH−アリール、
任意選択で1個もしくは2個のRにより置換されている−(CH−複素環、
−(CH−C〜Cシクロアルキル、
−CH(R12)R13であり、
式中、R11は、
−H、
−C〜Cアルキル、
−(CH、または
−(CH−C〜Cシクロアルキルであり、
式中、R12は、
−H、
−(CHCO−C〜Cアルキル、
任意選択で1個もしくは2個のRにより置換されている−(CH−フェニル、
任意選択で1個もしくは2個のRにより置換されている−(CH−複素環、
任意選択で1個のRにより置換されている−C〜Cアルキル、
−C〜CアルキルNH−COOCH−ベンジル、または、
−C〜Cアルキル−S−CHであり、
式中、R13は、
−NH−COC(CH
−CN、
−COOH、または、
−CO11であり、
式中、R14およびR15は、互いに独立に、
−H、
−C〜Cアルキル、
任意選択で1個、2個もしくは3個のRにより置換されている−(CH−アリール、
任意選択で1個のRにより置換されている−(CH−シクロアルキル、
任意選択で1個もしくは2個のRにより置換されている−(CH−複素環、
−(CH−W−R10
−(CH−CN、
およびRに結合された窒素原子と一緒になって、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択されるヘテロ原子を1から3個含有する、任意選択で置換された5〜8員の単環複素環を形成している、または、
およびRに結合された窒素原子と一緒になって、任意選択で置換された5〜8員の単環複素環を形成しており、それが、1つもしくは2つの任意選択で置換された飽和もしくは不飽和の環、または、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択されるヘテロ原子を1から3個含有する、任意選択で置換された他の複素環と縮合している、
から選択され、
式中、Aは、
−(CH−X
任意選択で1個のRにより置換されている−(CH−C〜Cシクロアルキル、
−(CH−W−X
−(CH−W−CH−X、または、
−(CH−CHR−(CH−Xであり、
式中、Xは、
任意選択で1個、2個もしくは3個のRにより置換されているアリール、
任意選択で1個もしくは2個のRにより置換されている複素環、
−C〜Cアルキル、
−CH(OH)−フェニル、
−S−フェニル、
任意選択で1個、2個もしくは3個のRにより置換されている−NHSO−フェニル、
−CN、
−OH、
任意選択で1個もしくは2個のRにより置換されている−C〜Cシクロアルキル、−4−シアノ−2,3,4,5−テトラフルオロ−フェニルであり、
式中、Xは、
任意選択で1個、2個もしくは3個のRにより置換されているアリール、
任意選択で1個もしくは2個のRにより置換されている複素環、
−C〜Cアルキル、
−CH(OH)−フェニル、
任意選択で1個もしくは2個のRにより置換されている−C〜Cシクロアルキルであり、
式中、Wは、
−NH、
−O−、または、
−S−であり、
式中、Vは、
−R11
−C(O)R11
−SO11、または、
−C(O)NHR11であり、
式中、Zは、
−C〜Cアルキル、
−C〜Cシクロアルキル、
−C(O)R11
−C(O)NHR11、または、
−CO11であり、
式中、アリールは、
フェニル、
ナフチル、
ビフェニル、
テトラヒドロ−ナフチル、または、
フルオレニルであり、
式中、複素環は、窒素、酸素、および硫黄からなる群から選択されるヘテロ原子を1から3個含有する、5員、6員、もしくは7員の、飽和もしくは不飽和環であり、上記の複素環式環のうちのいずれかがベンゼン環もしくは他の複素環に縮合している任意の二環基を含み、
式中、シクロアルキルは、飽和もしくは不飽和炭化水素環であり、上記の環がベンゼン環、複素環、もしくは他の炭化水素環に結合している任意の二環基を含み、
式中、mは0から6までの整数であることを特徴とする、
化合物、または医薬として許容されるその塩もしくは誘導体。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、Aは−(CH−Xであることを特徴とする化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物であって、mは0から1までの整数であることを特徴とする化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物であって、
は、
任意選択で1個もしくは2個のRにより置換されている−アリール、
任意選択で1個もしくは2個のRにより置換されている−複素環、または、
任意選択で1個もしくは2個のRにより置換されている−C〜Cシクロアルキル
であることを特徴とする化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物であって、
は、
−Cl、
−Br、
−CF
−W−R10、または、
−(CH−NR1415
であることを特徴とする化合物。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物であって、Wは、酸素であることを特徴とする化合物。
【請求項7】
請求項1に記載の化合物であって、
10は、
−H、
−C〜Cアルキル、
であることを特徴とする化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の化合物であって、
14およびR15は、互いに独立に、
−C〜Cアルキルである、または
14およびR15に結合された窒素原子と一緒になって、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択されるヘテロ原子を1から3個含有する、任意選択で置換された、5〜8員の単環複素環を形成している、
ことを特徴とする化合物。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物であって、アリールはフェニルであることを特徴とする化合物。
【請求項10】
請求項1に記載の化合物であって、
Aは、−(CH−Xであり、
は、
任意選択で1個、2個もしくは3個のRにより置換されている−アリール、
任意選択で1個もしくは2個のRにより置換されている−複素環、または、
任意選択で1個もしくは2個のRにより置換されている−C〜Cシクロアルキルであり、
は、
−Cl、
−Br、
−CF
−W−R10、または、
−(CH−NR1415であり、
は、−C〜Cアルキルであり、
10は、
−H、または、
−C〜Cアルキルであり、
14およびR15は、−C〜Cアルキルであり、
Wは、酸素であり、
mは、0から1までの整数である、
ことを特徴とする化合物。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物であって、複素環は、2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン、ピリジン、チオフェン、トリアゾール、チアゾール、イソキサゾール、ベンゾチアゾール、ピラジン、イミダゾール、もしくはフランであることを特徴とする化合物。
【請求項12】
請求項1に記載の化合物であって、
8−ヒドロキシ−N−(チオフェン−2−イルメチル)キノリン−7−カルボキサミド、
8−ヒドロキシ−N−(シクロヘキシルメチル)キノリン−7−カルボキサミド、
8−ヒドロキシ−N−ベンジル−キノリン−7−カルボキサミド、
8−ヒドロキシ−N−(4−クロロベンジル)キノリン−7−カルボキサミド、
8−ヒドロキシ−N−(4−メトキシフェニル)キノリン−7−カルボキサミド、
8−ヒドロキシ−N−(4−(トリフルオロメチル)ベンジル)キノリン−7−カルボキサミド、
8−ヒドロキシ−N−フェニル−キノリン−7−カルボキサミド、
8−ヒドロキシ−N−(2−ヒドロキシベンジル)キノリン−7−カルボキサミド、
8−ヒドロキシ−N−(フラン−2−イルメチル)キノリン−7−カルボキサミド、
8−ヒドロキシ−N−(ピリジン−3−イルメチル)キノリン−7−カルボキサミド、
8−ヒドロキシ−N−(4−メトキシベンジル)キノリン−7−カルボキサミド、
8−ヒドロキシ−N−(4−ブロモベンジル)キノリン−7−カルボキサミド、
8−ヒドロキシ−N−(1,1−ジオキシドテトラヒドロチエン−3−イル)キノリン−7−カルボキサミド、
8−ヒドロキシ−N−(4−(ジメチルアミノ)ベンジル)キノリン−7−カルボキサミド、
8−ヒドロキシ−N−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)キノリン−7−カルボキサミド、
8−ヒドロキシ−N−(4−モルホリノフェニル)キノリン−7−カルボキサミド、
8−ヒドロキシ−N−(4−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)フェニル)キノリン−7−カルボキサミド、
8−ヒドロキシ−N−(チアゾール−2−イル)キノリン−7−カルボキサミド、
8−ヒドロキシ−N−(2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン−6−イル)キノリン−7−カルボキサミド、
8−ヒドロキシ−N−(4−モルホリノベンジル)キノリン−7−カルボキサミド、
8−ヒドロキシ−N−((5−メチルイソオキサゾール−3−イル)メチル)キノリン−7−カルボキサミド、
8−ヒドロキシ−N−((4−メチルチアゾール−2−イル)メチル)キノリン−7−カルボキサミド、
8−ヒドロキシ−N−(イソオキサゾール−3−イル)キノリン−7−カルボキサミド、
8−ヒドロキシ−N−(ベンゾ[d]チアゾール−2−イルメチル)キノリン−7−カルボキサミド、
8-ヒドロキシ-N―((5-メチルぴら仁-2-いる)メチル)紀のリン-7-かるボキサミド、
8−ヒドロキシ−N−((1−メチル−1H−イミダゾール−2−イル)メチル)キノリン−7−カルボキサミド、
8−ヒドロキシ−N−((4−フェニルチアゾール−2−イル)メチル)キノリン−7−カルボキサミド、
8−ヒドロキシ−N−(ピリジン−4−イルメチル)キノリン−7−カルボキサミド、
8−ヒドロキシ−N−(ピリジン−2−イルメチル)キノリン−7−カルボキサミド、
からなる群から選択されることを特徴とする化合物。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物であって、真菌感染症の治療および/または予防に使用するためであることを特徴とする化合物。
【請求項14】
請求項13に記載の化合物であって、前記真菌感染症は、紅色白癬菌、毛瘡白癬菌、黒色麹菌クロカビ、スコプラリオプシス−ブレビカウリス、または、鵞口瘡カンジダもしくはカンジダ−グラブラタなどのカンジダ属に由来することを特徴とする化合物。
【請求項15】
請求項13に記載の化合物であって、前記真菌感染症は、皮膚糸状菌および/またはカビ類に由来する、好ましくは、紅色白癬菌、毛瘡白癬菌、黒色麹菌クロカビ、および/または、スコプラリオプシス−ブレビカウリスに由来することを特徴とする化合物。
【請求項16】
請求項13に記載の化合物であって、前記真菌感染症は、酵母菌に由来しない、好ましくはカンジダ属に由来しないことを特徴とする化合物。
【請求項17】
請求項14から16のいずれか一項に記載の化合物であって、前記治療および/または予防の受容者は、哺乳動物であることを特徴とする化合物。
【請求項18】
請求項17に記載の化合物であって、前記治療および/または予防の受容者はヒトであることを特徴とする化合物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2013−515756(P2013−515756A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546433(P2012−546433)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070791
【国際公開番号】WO2011/080265
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(503459992)ポリケム・エスエイ (16)
【Fターム(参考)】