説明

抗神経病薬誘導性体重増加を予防するための方法

【課題】グルココルチコイドレセプターアンタゴニストを長期のAPレジメンを受けている患者に投与する方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、一般に、精神医学の分野に関する。特に、本発明は、コルチソルのそのレセプターへの結合を阻害し得る薬剤が、抗精神病薬誘導性体重増加を防止するための方法において使用され得るという発見に関する。強力な特異的グルココルチコイドレセプターアンタゴニストであるミフェプリストンは、これらの方法において使用され得る。本発明はまた、グルココルチコイドレセプターアンタゴニスト、ならびに適応症、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストの投薬量および投与スケジュールを教示する説明資料を包含する、ヒトにおけるAP誘導性体重増加を防止するためのキットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2001年7月23日に出願されたUSSN60/307,693(この全体は本明細書中で参考として援用される)の優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、グルココルチコイドレセプターの生物学的作用を阻害し得る薬剤が、抗精神病薬の投薬により引き起こされる体重増加を予防するための方法において使用できるという発見に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
抗神経病薬(AP)の投薬は、様々な精神病障害を処置するための最も重要な治療手段の1つである。これらの投薬を最大に有利にするために、その有害な副作用、特に長期の投与に関連する副作用は、最小限にされなければならない。しかし、広範な臨床研究に基づく多数の報告により、長期のAP投与を受けている患者の40〜80%がかなりの体重増加を被り、最終的には、理想体重を20%以上越えることが示された(例えば、非特許文献1;非特許文献2を参照のこと)。このような望ましくない体重増加は、精神病障害の処置の有効性を有意に損ない得る。まず第1に、体重が健康的な範囲を有意に超えている人は、肥満に関連する多くの重大な健康問題(例えば、心臓血管障害、発作、高血圧、II型糖尿病および特定の型の癌)の著しく増大した危険性に曝される。第2に、望ましくない体重増加は、AP投与スケジュールの患者の非コンプライアンスの最も一般的な原因の1つであり、これは必ず精神病障害の処置の失敗をもたらす。
【0004】
異なるAP投薬により引き起こされる体重増加の程度は、変化する。より新しいかまたは異型のAP薬(例えば、クロザピンおよびオランザピン)は、体重増加を引き起こすより大きな能力を示した(非特許文献3)。研究は、インスリン、レプチンおよび特定の生殖ホルモンがこのプロセスにおいて重要な役割を果たすことを示唆したが、AP誘導性の体重増加の正確な機構は、十分には理解されないままである。なぜなら、これは複数の因子およびその中の複雑な相互作用に関すると考えられているからである。
【0005】
インスリンは、なかでも、増加した血中グルコース濃度に応答して、膵臓β細胞により合成および分泌される。細胞表面レセプターに作用すると、インスリンは、細胞のグルコース取込みを刺激し、そして脂肪組織に対する直接的な影響により、および低血糖を介して食欲に影響を与えることによって、体重増加を引き起こし得る(非特許文献4)。レプチンは、体重の調節において重要な別のホルモンである。ob遺伝子によってコードされるレプチンは、脂肪組織により主に産生され、その循環レベルは、体脂肪率およびインスリンの基底レベルとポジティブに相関する。レプチンおよびインスリンは、共に、脂質および炭水化物の代謝と体脂肪貯蔵の長期のホメオスタシスとを統合する(非特許文献5)。
【0006】
グルココルチコイドホルモンは、視床下部−下垂体−副腎軸の制御下で、副腎皮質において合成される。多くの物理的ストレスおよび生理学的ストレスに対する応答性における重要な要素であるこのグルココルチコイドホルモンは、塩および水の代謝、血圧、免疫機能ならびに代謝の制御において中心的である。コルチソルは、ヒトにおける主なグルココルチコイドホルモンである。その欠乏(アディソン病または下垂体機能低下症)は、体位性低血圧症、体重減少および低血糖症と関連しているが、その過剰(クッシング症候群)は、高血圧、肥満およびグルコース不耐性と関連している。コルチソルの影響は、少なくとも一部、インスリンの拮抗作用(すなわち、インスリン耐性の状態を引き起こすことによる)に依存する(非特許文献6)。
【0007】
研究者らは、長期のAP投与を受けている患者における、ホルモン異常(これは高レベルのインスリンおよびレプチンに関与する)、および両方の性別における生殖ホルモンの変化したレベルを報告した(例えば、非特許文献5;非特許文献4を参照のこと)。しかし、これらの研究は、AP誘導性の体重増加と特定のホルモン(例えば、インスリンおよびコルチソル)のレベルとの間のいずれの明確かつ一貫した相関も未だ確立していない。しかし、本発明以前には、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、特に、正常な範囲内のコルチソルレベルを有する患者において、AP投薬により引き起こされる体重増加を予防または逆転する有効な薬剤であり得るという証拠はなかった。コルチソルの作用の多くは、I型(ミネラルコルチコイド)レセプターに結合することによって媒介され、このI型レセプターは、生理学的コルチソルレベルで、II型(グルココルチコイド)レセプターと比較して優先的に占められる。コルチソルレベルが増加するにつれて、グルココルチコイドレセプターがより多く占められ、そして活性化される。しかし、コルチソルは代謝において必須の役割を果たすので、コルチソル媒介性活性の阻害は、致命的である。従って、特異的にII型グルココルチコイドレセプターの機能を妨げるが、I型ミネラルコルチコイドレセプターの機能は拮抗しないアンタゴニストが、本発明における特定の用途を有する。RU486よび類似のアンタゴニストは、このカテゴリーのレセプターアンタゴニストの例である。
【0008】
本発明者らは、グルココルチコイドレセプターアンタゴニスト(例えば、RU486)が、正常なコルチソルレベル、増加したコルチソルレベルまたは減少したコルチソルレベルを有する患者におけるAP誘導性体重増加を予防または逆転するために有効な薬剤であることを決定した。従って、本発明は、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストを長期のAPレジメンを受けている患者に投与する方法を提供することによって、AP投薬により引き起こされる望ましくない体重増加に効果的な予防策の必要性を満たす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Umbrichtら、J.Clin.Psychiatry 55(補遺.B):157−160,1994
【非特許文献2】Baptista,Acta Psychiatr.Scand.100:3−16,1999
【非特許文献3】Allisonら、Am.J.Psychiatry 156:1686−1696,1999
【非特許文献4】Melkersson & Hulting,Psychopharmacology 154:205−212,2001
【非特許文献5】Baptistaら、Pharmacopsychiatry 33:81−88、2000
【非特許文献6】Andrews & Walker,Clin.Sci.96:513−523,1999
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、患者におけるAP投薬により引き起こされる体重増加を阻害または逆転する方法を提供する。この方法は、治療的有効量のグルココルチコイドレセプターアンタゴニストをこの患者に投与する工程を包含するが、ただし、この患者は、他の場合には、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストの処置を必要とせず、そしてこの患者は、精神病性大うつ病に罹患していない。
【0011】
本発明の一実施形態において、AP誘導性体重増加を阻害または逆転する方法は、異型抗精神病薬で処置されている患者に対して実施される。
【0012】
本発明の別の実施形態において、AP誘導性の体重増加を阻害または逆転する方法は、クロザピン、オランザピン、リスペリドン(risperidone)、クエチアピン(quetiapine)およびセルチンドール(sertindole)からなる群から選択される抗精神病薬で処置されている患者に対して行われる。
【0013】
本発明の別の実施形態においてグルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、10週間の抗精神病薬を用いる処置の間にわたって、少なくとも2kgの体重を増加した患者に、投与される。
【0014】
本発明の別の実施形態において、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、健康的な体重範囲より少なくとも20%上の患者に投与される。
【0015】
本発明の別の実施形態において、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、ステロイド骨格の11β位に、少なくとも1つのフェニル含有部分を有するステロイド骨格を含む。このステロイド骨格の11β位におけるフェニル含有部分は、ジメチルアミノフェニル部分であり得る。代替の実施形態において、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、ミフェプリストンを含むか、またはこのグルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、RU009およびRU044からなる群から選択される。
【0016】
他の実施形態において、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、約0.5〜約20mg/kg体重/日;約1〜約10mg/kg体重/日;または約1〜約4mg/kg体重/日の一日量で、投与される。この投与は、一日一回であり得る。代替の実施形態においてグルココルチコイドレセプターアンタゴニストの投与様式は、経口であるか、または経皮適用によって、噴霧化した懸濁液によって、もしくはエアロゾルスプレーによってである。
【0017】
本発明はまた、ヒトにおけるAP誘導性体重増加を阻害または逆転するためのキットを提供し、このキットは、グルココルチコイドレセプターアンタゴニスト;ならびにこのグルココルチコイドレセプターアンタゴニストの効能、投薬量および投薬スケジュールを教示する指示書を備える。代替の実施形態において、この指示書は、このグルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、約0.5〜約20mg/kg体重/日、約1〜約10mg/kg体重/日、または約1〜約4mg/kg体重/日の一日量で投与され得ることを示す。この指示書は、コルチソルが、AP投与下の患者における体重増加に寄与すること、およびこのグルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、このような体重増加を防止または逆転するために使用され得ることを示し得る。一実施形態において、このキット中のグルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、ミフェプリストンである。このミフェプリストンは、錠剤形態であり得る。
【0018】
本発明の本質および利点のさらなる理解は、明細書の残りの部分および特許請求の範囲を参照することによってなされる。
【0019】
本明細書中で引用される全ての刊行物、特許および特許出願は、全ての目的のために、本明細書中で明確に参考として援用される。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
抗精神病薬の投薬により処置されている患者の体重増加を阻害または逆転させる方法であって、該方法は、該抗精神病薬投薬により処置されている患者に、体重増加を阻害または逆転させるに有効量のグルココルチコイドレセプターアンタゴニストを投与する工程を包含し、ただし該患者は、別の状況では、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストでの処置が必要でなく、該患者は精神病性大鬱病に罹患してもいない、方法。
(項目2)
前記患者は、異型抗精神病薬投薬により処置されている、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記患者は、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、およびセルチンドールからなる群より選択される抗精神病薬投薬により処置されている、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記患者は、10週間の期間を超える抗精神病薬投薬による処置で体重が少なくとも2kg増加している、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記患者は、健康的な体重範囲より少なくとも20%上回っている、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、ステロイド骨格を含み、該ステロイド骨格の11−β位に少なくとも1つのフェニル含有部分を有する、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記ステロイド骨格の11−β位のフェニル含有部分は、ジメチルアミノフェニル部分である、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、ミフェプリストンを含む、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、RU009およびRU004からなる群より選択される、項目7に記載の方法。
(項目10)
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、1日に体重1kgあたり、約0.5〜約20mgの日量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、1日に体重1kgあたり、約1〜約10mgの日量で投与される、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、1日に体重1kgあたり、約1〜約4mgの日量で投与される、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記投与は1日に1回である、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記投与の様式は経口である、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記投与の様式は、経皮適用、霧状懸濁液、またはエアロゾルスプレーによる、項目1に記載の方法。
(項目16)
抗精神病薬投薬により処置されている患者の体重増加を阻害または逆転させるためのキットであって、該キットは、以下:
特異的グルココルチコイドレセプターアンタゴニスト;ならびに
適応症、該抗精神病薬投薬により処置されている患者へのグルココルチコイドレセプターアンタゴニストの投薬量および投与スケジュールを教示する説明資料、
を含む、キット。
(項目17)
項目16に記載のキットであって、抗精神病薬投薬をさらに含む、キット。
(項目18)
前記説明資料は、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、1日に体重1kgあたり、約0.5〜約20mgの日量で投与され得ることを示す、項目16に記載のキット。
(項目19)
前記説明資料は、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、1日に体重1kgあたり、約1〜約10mgの日量で投与され得ることを示す、項目16に記載のキット。
(項目20)
前記説明資料は、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、1日に体重1kgあたり、約1〜約4mgの日量で投与され得ることを示す、項目16に記載のキット。
(項目21)
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、ミフェプリストンである、項目16に記載のキット。
(項目22)
前記ミフェプリストンは錠剤形態である、項目16に記載のキット。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(定義)
用語「阻害」とは、AP投薬により引き起こされる患者における体重増加の予防または軽減における成功の任意の徴候をいう。このAP誘導性体重増加の予防または軽減は、客観的パラメータ(例えば、物理的試験の結果)に基づいて測定され得る。例えば、本発明の方法は、体重増加を、10週間のAP薬を用いる処置の期間の間、1kg以下の超過に制限することによって、患者のAP誘導性の体重増加を首尾良く阻害する。
【0021】
用語「逆転」とは、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストの投与の前にすでに確立されたAP誘導性の体重増加の減少の誘導における成功の任意の徴候をいう。すでに増加した体重の減少は、主観的パラメーター(例えば、物理的試験の結果)に基づいて測定され得る。例えば、本発明の方法は、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストの投与の前ではなく、AP投薬の開始の後に増加した体重を50%以上減少させることによって、患者のAP誘導性体重増加を首尾良く逆転する。
【0022】
用語「抗精神病薬」は、最も広い意味で精神病障害を緩和し得る薬剤を言い、受容可能な安全かつ実用的に機能する。症状の緩和は、客観的基準および主観的基準の両方によって測定され得る。抗精神病薬は、任意の1種の薬剤もしくはその誘導体、または1種を超える薬剤もしくはその誘導体の組み合わせ(3環式のフェノチアジン、チオキサンテン、およびジベンゼピン、ならびにブチロフェノンおよび同族体、他の複素環式、ならびに実験用ベンズアミド由来)であり得る。その作用は、未だ同定されていないが、D1またはD2ドパミン作動性レセプター、5−HTセロトニン作動性レセプター、α−アドレナリン作動性レセプター、または任意の他のドパミン作用作動性レセプターとの相互作用に依存し得る。例えば、クロルプロチキセン、クロザピン、ハロペリドール、ロクサピン、メソリダジン/チオリダジン、モリンドン、オランザピン(olanzapine)、パーフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジン、クエチアピン(quetiapine)、リスペリドン(resperidone)、セルチンドール(sertindole)、チオチキセン、トリフルオペラジン、ジプラシドン(ziprasidone)、ならびにズクロペンチゾールは、抗精神病薬である。
【0023】
用語「精神病性大うつ病」はまた、「精神病性うつ病」(Schtzberg,Am.J.Psychiary 149:733〜745,1992)、「精神病(妄想性)うつ病」(前出)、「妄想性うつ病」(Glassmann,Arch.Gen.Psychiatry 38:424〜427、1981)、および「精神病性を有する大うつ病」をいい(American Psychiatric Association,Diagnostic and Statistical manual of Mental Disorders(DSM)、第3版を参照のこと)、うつ病性および精神病性特徴の両方を含む明確な精神病性障害をいう。うつ病および精神病の両方(すなわち、精神病性うつ病)を示す個体を、本明細書中で「精神病性うつ病」と呼ぶ。例えば、Schatzberg(前出)1992に記載されているように、明確な症候群として当該分野で長期にわたって認識されている。この特殊性の例が、精神病性うつ病および非精神病性うつ病を罹患している患者間での、グルココルチコイド活性、ドパミン−−ヒドロキシラーゼ活性、ドパミンおよびセロトニン代謝産物のレベル、睡眠測定、ならびに心室:脳の比の有意な差を見出した研究である。精神病性うつ病は、うつ病の他の形態(例えば、非精神病性大うつ病)を有する個体と比較して、処置に対して非常に異なって応答する。精神病性うつ病は、三環系(抗うつ病)薬物治療に対して顕著に非応答性である(Glassmannら,Am.J.Psychiatry 1332:716〜719,1975)。精神病性うつ病は、電気痙攣療法(ETC)に対して応答し得るが、これらの応答時間は、比較的短く、そしてECTは、高いレベルの関連合併症の発現頻度を有する。「精神病性大うつ病」の臨床的な症状発現および診断的なパラメータが、DSM(第4版、1995)に詳細に記載されている。
【0024】
用語「異型」は、従来の抗精神病薬に付随する錐体外路性の副作用を有さない、新しいクラスの抗精神病薬の特性をいう。例えば、クロザピンおよびオランザピンは、異型抗精神病薬である。
【0025】
用語「健康的な重量範囲」は、過体重および肥満の同定、評価および処置に関して、第1回目の連邦政府ガイドラインによって規定された、19と25との間のボディマス指数(BMI)をいい、これは、国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所と連携して、国立心臓、肺、血液研究所によって開発された(Clinical Guidelines on the Identification,Evaluation,and Treatment of Overweight and Obesity in Adults:Evidence Report,1998)。
【0026】
用語「コルチソル」は、ヒドロコルチゾンとも呼ばれる一連の組成物、およびその任意の合成アナログまたは天然アナログをいう。
【0027】
用語「グルココルチコイドレセプター」(「GR」)は、コルチソルレセプターとも呼ばれる細胞間レセプターのファミリーをいい、これは、コルチソルおよび/またはコルチソルアナログに対して特異的に結合する。この用語は、GRのアイソフォーム、組換えGRおよび変異型GRを含む。
【0028】
用語「ミフェプリストン」は、RU486、もしくはRU38.486、または17−β−ヒドロキシ−11−β−(4−ジメチル−アミノフェニル)−17−α−(1−プロピニル)−エストラ−4,9−ジエン−3−オン)、または11−β−(4−ジメチルアミノフェニル)−17−β−ヒドロキシ−17−α−(1−プロピニル)−エストラ−4,9−ジエン−3−オン)、またはそれらのアナログともいう一連の組成物をいい、これらは、代表的に高い親和性でGRに結合し、そして任意のコルチソルまたはコルチソルアナログのGRレセプターへの結合によって開始/媒介される生物学的効果を阻害する。RU−486に関する化学名は、変化する;例えば、RU486はまた、11B−[p−(ジメチルアミノ)フェニル]−17B−ヒドロキシ−17−(1−プロピニル)−エストラ−4,9−ジエン−3−オン;11B−(4−ジメチル−アミノフェニル)−17B−ヒドロキシ−17A−(プロプ−1−イニル)−エストラ−4,9−ジエン−3−オン;17B−ヒドロキシ−11B−(4−ジメチルアミノフェニル−1)−17A−(プロピニル−1)−エストラ−4,9−ジエン−3−オン;17B−ヒドロキシ−11B−(4−ジメチルアミノフェニル−1)−17A−(プロピニル−1)−E;(11B,17B)−11−[4−(ジメチルアミノ)−フェニル]−17−ヒドロキシ−17−(1−プロピニル)エストラ−4,9−ジエン−3−オン;および11B−[4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル]−17A−(プロプ−1−イニル)−D−4,9−エストラジエン−17B−オール−3−オンと呼ばれている。
【0029】
用語「特異的なグルココルチコイドレセプターアンタゴニスト」は、グルココルチコイドレセプター(GR)アゴニスト(例えば、コルチソルまたはコルチソルアナログ(合成物または天然物))のGRへの結合を、部分的または完全に阻害(アンタゴナイズ)する、任意の組成物または化合物をいう。「特異的なグルココルチコイドレセプターアンタゴニスト」はまた、GRのアゴニストへの結合と関連する、任意の生物学的応答を阻害する任意の組成物または化合物をいう。特異的とは、本発明者は、少なくとも100倍、そして頻繁に1000倍の親和性で、ミネラルコルチコイドレセプター(MR)以外のGRと優先的に結合する薬物を意図する。
【0030】
「他にグルココルチコイドレセプターアンタゴニストで処置する必要のない」患者は、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストを用いて効果的に処置可能であることが当該分野で公知の状態を患っていない患者である。グルココルチコイドレセプターアンタゴニストで効果的に処置可能な当該分野で公知の状態としては、クッシング疾患、薬物離脱症状、精神病、痴呆、ストレス障害、および精神病性大うつ病が挙げられる。
【0031】
(発明の詳細な説明)
本発明は、グルココルチコイド誘導生物学的応答を阻害し得る薬剤が、予防するのに効果的であるという驚くべき発見に関する。長期のAP投与を開始する患者、または既に長期のAP投与下にあり、かつ結果として実質的に体重が増加した患者において、本発明の方法は、好ましくは、AP誘導体重増加を阻害または無効にし得る。一つの実施形態において、本発明の方法は、GRアンタゴニストとして作用し、AP医薬によって生じる体重の増加を予防または無効にする薬剤を使用する。本発明の方法は、正常なレベル、増加したレベル、または減少したレベルのコルチソルまたは他のグルココルチコイド(天然物または合成物)のいずれかで、患者におけるAP誘導重量増加を予防するのに効果的である。
【0032】
コルチソルは、細胞内グルココルチコイドレセプター(GR)に結合することによって作用する。ヒトにおいて、グルココルチコイドレセプターは、2種の形態で存在する:777アミノ酸のリガンド結合GRα;および最終部の15個のアミノ酸のみが異なるGRβ異性体。2種のGRは、それらの特異的なリガンドに対して高い親和性を有し、そして同一のシグナル形質転換経路を通じて機能すると考えられる。
【0033】
コルチソルの生物学的影響(高コルチソル症(hypercortisolemia)によって生じる症状または機能障害)は、レセプターアンタゴニストを使用して、GRレベルで調整および制御され得る。数種の異なるクラスの薬剤が、GRアンタゴニストとして作用し得る(すなわち、GRアゴニスト結合の生理学的効果を阻害し得る)(天然のアゴニストは、コルチソルである)。これらのアンタゴニストは、GRに結合することによって、効率的に、GRに結合および/またはGRを活性化するためのアゴニストの能力をブロックする組成物を含む。一連の公知のGRアンタゴニスト(ミフェプリストンおよび関連する化合物)は、ヒトにおいて、効率的かつ強力な抗グルココルチコイド薬剤である(Bertagna,J.Clin.Endocrinol.Metab.59:25,1984)。ミフェプリストンは、高い親和性、解離定数K<10−9MでGRに結合する(Cadepond,Annu.Rev.Med.48:129,1997)。従って、本発明の一つの実施形態において、ミフェプリストンおよび関連する化合物は、AP医薬によって誘導される体重増加を防止するために使用される。
【0034】
AP誘導体重増加は、規則的な物理的な実験によって容易に検出され得る。従って、本発明の方法によって、体重変化をモニタリングし、そして体重管理の成功(すなわち、AP誘導体重増加が阻害されるか、または無効にされる成功および範囲)を評価する種々の手段が、使用され得、そして数種の例示的な手段が、本明細書中に記載されている。これらの手段としては、単純な体重測定、および以下に記載されるような体脂肪率を決定する洗練された方法が挙げられ得る。
【0035】
本発明の方法は、アゴニスト結合GRの生物学的効果を阻害する任意の手段の使用を含むが、せん妄を処置するために使用され得る例示的な化合物および組成物もまた、記載されている。本発明の方法を実施する際に使用するための、GRアゴニスト相互作用によって生じる生物学的応答をブロックし得る化合物および組成物をさらに同定するために使用され得る慣用的な手順がまた、記載されている。本発明は、これらの化合物および組成物の医薬としての投与を提供し、GRアンタゴニスト薬物レジメンおよび本発明の方法を実施するための処方物を決定するための慣用的な手段が、以下に記載されている。
【0036】
(1.AP誘導体重増加の決定)
長期のAP処置の結果としての体重増加は、主に、投与の前後における患者の体重の比較に基づいて決定される。増加した体重はまた、増加した体脂肪率に反映され得る。AP処置の結果として体重が増加したとみなすには、患者は、10週間のAPレジメンに置かれた後、少なくとも2kgを越える体重増加となるべきである。本発明のいくつかの実施形態において、患者の体重増加は、AP処置の10週間にわたって、例えば、少なくとも3、4、5、10、15、または20kg、より増加する。体重増加はまた、AP投与の間の体重増加の割合によって測定され得る(例えば、AP処置の10週間にわたる、少なくとも5%、10%、15%、または20%の体重増加)。体脂肪率の増加もまた使用して、体重増加を測定し得る(例えば、AP処置の10週間にわたる、少なくとも2%、5%、10%、または15%の体脂肪率の増加)。
【0037】
AP誘導体重増加は、当該分野で公知の数種の客観的な標準装置のうちのいずれか1種を用いて、決定および評価され得、この装置としては、体脂肪率を測定するスケールおよび装置が挙げられる。スケールの単純な装置は、全てのプロの医者によって慣用的に使用される。体脂肪率を測定するためのより洗練された装置は、スキンホールド(skin−fold)方法論および体密度または電気抵抗の測定に基づいて操作される。
【0038】
(2.一般的な実験室手順)
本発明の方法を実施する場合、多くの一般的な実験室試験(血液コルチソル、薬物代謝などのようなパラメータのモニタリングを含む)が、AP投与下における患者の経過を補助するために使用され得る。これらの手順は、有用であり得る。なぜならば、全ての患者は、独自に薬物を代謝および薬物と反応するからである。さらに、このようなモニタリングは、重要であり得る。なぜならば、各GRアンタゴニストは、異なる薬物速度論を有するからである。異なる患者およびAP医薬は、異なる投薬レジメンおよび処方物を必要とし得る。投薬レジメンおよび処方物を決定するためのこのような手順および手段は、科学文献および特許文献に十分に記載されている。数種の例示的な例が、以下に記載されている。
【0039】
(a.血液コルチソルレベルの決定)
種々のレベルの血液コルチソルは、AP誘導体重増加と関連しているが、本発明はまた、見掛け上、正常なレベルの血液コルチソルを有する患者において実施され得る。従って、血液コルチソルをモニタリングすること、およびベースラインコルチソルレベルを決定することは、有用な実験室試験であり、AP医薬によって誘導された体重増加を予防するのを助ける。個体が、正常コルチソル症、低コルチソル欠損症または高コルチソル症であるか否かを決定するために使用され得る、広範な種々の実験室試験が存在する。長期のAP処置を受けるか、または既に受けている患者は、代表的に、正常なレベルのコルチソルを有し、この正常なレベルのコルチソルは、しばしば、午前中に25μg/dl未満であり、そしてしばしば午後に約15μg/dl以下であるが、この値は、しばしば、正常範囲の上端に入り、これは、午後に5〜15μg/dlになると一般に考えられる。
【0040】
ラジオイムノアッセイのようなイムノアッセイは、それらが正確であり、行うのが容易であり、そして比較的安価であるので、通常使用される。循環するコルチソルのレベルが副腎皮質機能の指標であるので、種々の刺激試験および抑制試験(例えば、ACTH Stimulation、ACTH Reserve、またはデキサメタゾン抑制(例えば、Greenwald,Am.J.Phychiatry 143:442−446、1986を参照のこと))はまた、本発明の方法において補助的に使用される、診断情報、予後情報または他の情報を提供し得る。
【0041】
キット形態で利用可能な1つのこのようなアッセイは、「Double Antibody Cortisol Kit」(Diagnostic Products Corporation,Los Angeles,CA),(Acta Psychiatr.Scand.70:239−247,1984)として入手可能なラジオイムノアッセイである。この試験は、競合的ラジオイムノアッセイであり、ここで、125I標識化コルチソルは、抗体部位に対して臨床サンプルからのコルチソルと競合する。この試験において、抗体の特異性および任意の有意なタンパク質効果の欠如に起因して、血清および血漿サンプルは、予備抽出も予備希釈も必要としない。このアッセイは、以下の実施例2にさらに詳細に記載される。
【0042】
(b.血液/尿ミフェプリストンレベルの決定)
患者の代謝、クリアランス速度、毒性レベルなどが、元にある原発性疾患状態または続発性疾患状態、薬物履歴、年齢、一般的な医療状態などにおける変動によって異なるので、GRアンタゴニストの血液および尿のレベルを測定することが必要であり得る。このようなモニタリングのための手段は、科学文献および特許文献に十分に記載される。本発明の1つの実施形態において、ミフェプリストンがAP誘導性体重増加を妨げるために投与されるので、血液および尿のミフェプリストンレベルを決定するための例示的な例が以下の実施例に記載される。
【0043】
(c.他の研究室手順)
AP誘導性体重増加の機構が複雑であり得るので、多くのさらなる実験試験が、診断、処置効力、予後、毒性などを補助するために、本発明の方法において補助的に使用され得る。例えば、診断および処置の評価は、グルココルチコイド感受性変数(空腹時血糖、経口グルコース投与後の血糖、血漿濃度甲状腺刺激ホルモン(TSH)、コルチコステロイド結合グロブリン、黄体形成ホルモン(LH)、テストステロン−エストラジオール結合グロブリン、レプチン(leptin)、インスリン、ならびに/あるいは総テストステロンおよび遊離テストステロンを含むがこれらに限定されない)をモニターおよび測定することによって増強され得る。
【0044】
GRアンタゴニスト代謝物産生、血漿濃度およびクリアランス速度(アンタゴニストおよび代謝物の尿濃度を含む)をモニターおよび測定する実験室試験はまた、本発明の方法を実施する際に有用であり得る。例えば、ミフェプリストンは、疎水性である、2つのN−モノメチル化代謝産物およびN−ジメチル化代謝産物を有する。これらの代謝産物の血漿および尿の濃度(RU486に加えて)は、例えば、Kawai Pharmacol.and Experimental Therapeutics 241:401−406,1987に記載されるような、薄層クロマトグラフィーを使用して決定され得る。
【0045】
(3.AP誘導性体重増加を阻害または逆転するためのグルココルチコイドレセプターアンタゴニスト)
本発明は、コルチソルまたはコルチソルアナログのGRへの結合と関連する生物学的応答を遮断し得る任意の組成物または化合物を利用する、AP投薬により誘導される体重増加を阻害または逆転させる方法を提供する。本発明の方法において使用されるGR活性のアンタゴニストは、科学文献および特許文献に十分に記載される。少しの例示的な例は、以下に記載される。
【0046】
(a.GRアンタゴニストとしてのステロイド性抗グルココルチコイド)
ステロイド性グルココルチコイドアンタゴニストは、本発明の種々の実施形態において、AP誘導性体重増加を阻害または逆転させるために投与される。ステロイド性抗グルココルチコイドは、グルココルチコイドアゴニストの基本構造の修飾(すなわち、ステロイド骨格の修飾形態)によって得られ得る。コルチソルの構造は、種々の方法で修飾され得る。グルココルチコイドアンタゴニストを作製するための、2つの最も一般的に公知なクラスのコルチソルステロイド骨格の構造の修飾は、11−βヒドロキシ基の修飾および17−β側鎖の修飾を含む(例えば、Lefebvre,J.Steroid Biochem.33:557−563,1989を参照のこと)。
【0047】
ステロイド性GRアンタゴニストの例としては、米国特許第5,929,058号に記載されるアンドロゲン型ステロイド化合物、ならびに米国特許第4,296,206号;同第4,386,085号;同第4,447,424号;同第4,477,445号;同第4,519,946号;同第4,540,686号;同第4,547,493号;同第4,634,695号;同第4,634,696号;同第4,753,932号;同第4,774,236号;同第4,808,710号;同第4,814,327号;同第4,829,060号;同第4,861,763号;同第4,912,097号;同第4,921,638号;同第4,943,566号;同第4,954,490号;同第4,978,657号;同第5,006,518号;同第5,043,332号;同第5,064,822号;同第5,073,548号;同第5,089,488号;同第5,089,635号;同第5,093,507号;同第5,095,010号;同第5,095,129号;同第5,132,299号;同第5,166,146号;同第5,166,199号;同第5,173,405号;同第5,276,023号;同第5,380,839号;同第5,348,729号;同第5,426,102号;同第5,439,913号;同第5,616,458号、および同第5,696,127号に開示される化合物が挙げられる。このようなステロイド性GRアンタゴニストとしては、コルテキソロン、デキサメタゾン−オキセタノン、19−ノルデオキシコルチコステロン、19−ノルプロゲステロン、コルチソル−21−メシレート;デキサメタゾン−21−メシレート、11β−(4−ジメチルアミノエトキシフェニル)−17α−プロピニル−17β−ヒドロキシ−4,9−エストラジエン−3−オン(RU009)、および17β−ヒドロキシ−17−α−19−(4−メチルフェニル)アンドロスタ−4,9(11)−ジエン−3−オン(RU044)が挙げられる。
【0048】
(i)11−βヒドロキシ基のの除去または置換)
11−βヒドロキシ基の除去または置換を含む、修飾ステロイド性骨格を有するグルココルチコイドアゴニストは、本発明の1つの実施形態において投与される。このクラスとしては、天然の抗グルココルチコイド(コルテキソロン、プロゲステロンおよびテストステロンの誘導体を含む)、ならびに合成化合物(例えば、ミフェプリストン(Lefebvreら、上記)が挙げられる。本発明の好ましい実施形態としては、全ての11−β−アリールステロイド骨格誘導体が挙げられる。なぜなら、これらの化合物は、プロゲステロンレセプター(PR)結合活性を欠いているからである(Agarwal,FEBS 217:221−226,1987)。別の好ましい実施形態は、11−βフェニル−アミノジメチルステロイド骨格誘導体(すなわち、ミフェプリストン)を含み、これは、有効な抗グルココルチコイドかつ抗プロゲステロンの薬剤である。これらの組成物は、可逆結合ステロイドレセプターアンタゴニストとして作用する。例えば、11−βフェニル−アミノジメチルステロイドに結合する場合、ステロイドレセプターは、その天然リガンド(例えば、GRの場合のコルチソル)に結合できない形態で維持される(Cadepond,1997、上記)。
【0049】
合成11−βフェニル−アミノジメチルステロイドとしては、ミフェプリストン(RU486としても公知)、または17−β−ヒドロキシ(hydrox)−11−β−(4−ジメチル−アミノフェニル)17−α−(1−プロピニル)エストラ−4,9−ジエン−3−オン)が挙げられる。ミフェプリストンは、プロゲステロンレセプターおよびグルココルチコイド(GR)レセプターの両方の強力なアンタゴニストであることが示されている。GRアンタゴニスト効果を有することが示された別の11−βフェニル−アミノジメチルステロイドとしては、RU009(RU39.009)、11−β−(4−ジメチル−アミノエトキシフェニル)−17−α−(プロピニル−17−β−ヒドロキシ−4,9−エストラジエン−3−オン)(Bocquel,J.Steroid Biochem.Molec.Biol.45:205−215,1993を参照のこと)。RU486に関連する別のGRアンタゴニストは、RU044(RU43.044)17−β−ヒドロキシ−17−α−19−(4−メチル−フェニル)−アンドロスタ−4,9−(11)−ジエン−3−オン)(Bocquel,1993、上記)である。Teutsch,Steroids 38:651−665,1981;米国特許第4,386,085号および同第4,912,097号もまた参照のこと。
【0050】
1つの実施形態としては、不可逆な抗グルココルチコイドである基礎的なグルココルチコイドステロイド構造を含む組成物が挙げられる。このような化合物としては、コルチソルのα−ケト−メタンスルホネート誘導体(コルチソル−21−メシレート(4−プレグネン−11−β,17−α,21−トリオール−3,20−ジオン−21−メタン−スルホネートおよびデキサメタゾン−21−メシレート(16−メチル−9−α−フルオロ−1,4−プレグナジエン−11β,17−α,21−トリオール−3,20−ジオン−21−メタン−スルホンホネート)を含む)が挙げられる。Simons,J.Steroid Biochem.24:25−32,1986;Mercier,J.Steroid Biochem.25:11−20,1986;米国特許第4,296,206号を参照のこと。
【0051】
(ii)17−β側鎖基の修飾)
17−β側鎖の種々の構造的修飾によって得られ得るステロイド性抗グルココルチコイドもまた、本発明の方法において使用される。このクラスとしては、デキサメタゾン−オキセタノン、デキサメタゾンの種々の17,21−アセトニド誘導体および17−β−カルボキサミド誘導体のような合成抗グルココルチコイドが挙げられる(Lefebvre、1989、上記;Rousseau,Nature 279:158−160,1979)。
【0052】
(iii)他のステロイド骨格修飾)
本発明の種々の実施形態において使用されるGRアンタゴニストとしては、GR−アゴニスト相互作用から生じる生物学的応答をもたらす任意のステロイド骨格修飾が挙げられる。ステロイド骨格アンタゴニストは、C−19メチル基を失った副腎ステロイド(例えば、19−ノルデオキシコルチコステロンおよび19−ノルプロゲステロン(Wynne,Endocrinology 107:1278−1280,1980))のようなコルチソルの任意の天然または合成改変物であり得る。
【0053】
一般的に、11−β側鎖置換、および特に、その置換基のサイズは、ステロイドの抗グルココルチコイド活性の程度を決定する際に重要な役割を果たし得る。ステロイド骨格のA環の置換もまた、重要であり得る。17−ヒドロキシプロペニル側鎖は、一般的に、17−プロピオニル側鎖を含有する化合物と比較して、抗グルココルチコイド活性を減少する。
【0054】
当該分野で公知であり、本発明の実施に適切なさらなるグルココルチコイドレセプターアンタゴニストとしては、以下が挙げられる:21−ヒドロキシ−6,19−オキシドプロゲステロン(Vicent,Mol.Pharm.52:749−753,1997を参照のこと)、(6β,llβ,17β)−11−(4−ジメチル−アミノフェニル)−6メチル−4’,5’−ジヒドロ[エストラ−4,9−ジエン−17,2’(3H’)−フラン]−3−オン(「Org 31710」,Mizutani,J Steroid
Biochem Mol Biol 42(7):695−704,1992を参照のこと),Org31806,Org34517,RU43044,(17−β−ヒドロキシ−11−β−/4−/[メチル]−[1−メチルエチル]アミノフェニル/−17α−[プロプ−1−イニル]エストラ−4−9−ジエン−3−オン(「RU40555」,Kim,J Steroid Biochem Mol Biol.67(3):213−22,1998を参照のこと)、RU28362、およびZK98299。
【0055】
(b.アンタゴニストとしての、非ステロイド性抗グルココルチコイド)
非ステロイド性グルココルチコイドアンタゴニストもまた、AP誘導性体重増加を阻害または逆転させるために、本発明の方法において使用される。これらとしては、合成模倣物およびタンパク質のアナログ(部分的ペプチド性、偽ペプチド性(pseudopeptidic)および非ペプチド性の分子実体を含む)が挙げられる。例えば、本発明において有用なオリゴマーペプチド模倣物としては、(α−β−不飽和)ペプチドスルホンアミド、N−置換グリシン誘導体、オリゴカルバメート、オリゴ尿素ペプチド模倣物、ヒドラジノペプチド、オリゴスルホンなどがが挙げられる(例えば、Amour,Int.J.Pept.Protein Res.43:297−304,1994;de Bont,Bioorganic & Medicinal Chem.4:667−672,1996を参照のこと)。合成分子の大きなライブラリーの作製および同時スクリーニングは、コンビナトリアルケミストリー(例えば、van Breemen,Anal Chem 69:2159−2164,1997;およびLam,Anticancer Drug Des 12:145−167,1997を参照のこと)において周知の技術を使用して実行され得る。GRに対して特異的なペプチド模倣物の設計は、コンビナトリアルケミストリー(コンビナトリアルライブラリー)スクリーニングアプローチとともに、コンピュータープログラムを使用して設計され得る(Murray,J.of Computer−Aided Molec.Design 9:381−395,1995;Bohm,J.of Computer−Aided Molec.Design 10:265−272,1996)。このような「合理的な薬物設計」は、シクロ異性体、レトロ−インベルソ(retro−inverso)異性体、レトロ異性体などを含むペプチドアイソメトリクス(isometrics)および配座異性体の開発を助け得る(Chorev,TibTech 13:438−445,1995において考察される)。
【0056】
非ステロイド性GRアンタゴニストの例としては、以下が挙げられる:ケトコナゾール、クロトリマゾール、N−(トリフェニルメチル)イミダゾール;N−([2−フルオロ−9−フェニル]フルオロフェニル)イミダゾール;N−([2−ピリジル]ジフェニルメチル)イミダゾール;N−(2−[4,4’4”−トリクロロトリチル]オキシエチル)モルホリン;1−(2−[4,4’,4”−トリクロロトリチル]オキシエチル)−4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンジマレエート;N−([4,4’,4”]−トリクロロトリチル)イミダゾール;9−(3−メルカプト−1,2,4−トリアゾリル)−9−フェニル−2,7−ジフルオロフルオレノン;1−(2−クロロトリチル)−3,5−ジメチルピラゾール;4−(モルホリノメチル)−A−(2−ピリジル)ベンズヒドロール;5−(5−メトキシ−2−(N−メチルカルバモイル)−フェニル)ジベンゾスベロール;N−(2−クロロトリチル)−L−プロリノールアセテート;1−(2−クロロトリチル)−2−メチルイミダゾール;1−(2−クロロトリチル)−1,2,4−トリアゾール;1,S−ビス(4,4’,4”−トリクロロトリチル)−1,2,4−トリアゾール−3−チオール;およびN−((2,6−ジクロロ−3−メチルフェニル)ジフェニル)メチルイミダゾール(米国特許第6,051,573号を参照のこと);米国特許第5,696,127号に開示されるGRアンタゴニスト化合物;Bradleyら,J.Med.Chem.45,2417−2424(2002)に開示されるグルココルチコイドレセプターアンタゴニスト(例えば、4a(S)−ベンジル−2(R)−クロロエチニル−1,2,3,4,4a,9,10,10a(R)−オクタヒドロ−フェナントレン−2,7−ジオール(CP394531)および4a(S)−ベンジル−2(R)−プロプ−1−イニル−1,2,3,4,4a,9,10,10a(R)−オクタヒドロ−フェナントレン−2,7−ジオール(CP409069));Hoybergら,Int’l J.of Neuro−psychopharmacology,5:Supp.1,S148(2002)に開示される化合物ORG34517;PCT国際出願番号WO96/19458に開示される化合物(ステロイドレセプターに対して高い親和性、高い選択性のアンタゴニストである非ステロイド性化合物(例えば、6−置換−1,2−ジヒドロ−N−保護キノリン)を記載する);およびいくつかのκオピオイドリガンド(例えば、κオピオイド化合物である、ジノルフィン−1,13−ジアミド、U50,488(トランス−(1R,2R)−3,4−ジクロロ−N−メチル−N−[2−(1−ピロリジニル)シクロヘキシル]ベンゼンアセトアミド)、ブレマゾシン(bremazocine)およびエチルケトシクラゾシン);ならびに非特異的オピオイドレセプターリガンド、ナロキソン(Evansら,Endocrin.,141:2294−2300(2000)に開示される)。
【0057】
(c.特異的なグルココルチロイドレセプターアンタゴニストの同定)
本発明の方法においてAP誘導性体重増加を阻害または逆転するために、任意の特異的GRアンタゴニストが使用され得るので、上記の化合物および組成物に加え、さらなる有用なGRアンタゴニストが当業者によって決定され得る。種々の慣用的な周知の方法が使用され得、そして、科学技術文献および特許文献において記載されている。これらとしては、さらなるGRアンタゴニストの同定のためのインビトロアッセイおよびインビボアッセイが挙げられる。いくつかの例示的な実施例が以下に示される。
【0058】
本発明のGRアンタゴニストを同定するために使用され得る1つのアッセイによって、Granner,Meth.Enzymol.15:633,1970の方法に従って、チロシンアミノトランスフェラーゼ活性に対する推定GRアンタゴニストの効果を測定され得る。この分析は、ラット肝臓癌細胞(RHC)の培養物中における肝臓酵素であるチロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)の活性の測定に基づいている。TATは、チロシンの代謝における第1のステップを触媒し、そして、肝細胞および肝臓癌細胞の両方でグルココルチロイド(コルチソル)によって誘導される。この活性は細胞抽出物中で容易に測定される。TATはチロシンのアミノ基を2−オキソグルタル酸に変換する。P−ヒドロキシフェニルピルベートがまた形成される。これは、アルカリ溶液中でより安定なp−ヒドロキシベンゾアルデヒドに変換され得、そして、331nmの吸光度によって定量され得る。この推定GRアンタゴニストは、インビボまたはエキソビボで肝臓全体または肝臓癌細胞もしくは細胞抽出物にコルチソルと同時投与される。コントロールと比較したとき(すなわち、コルチソル単独またはGRアゴニスト単独が添加されるとき)に、その化合物の投与によって誘導されるTAT活性の量が減少される場合、この化合物がGRアンタゴニストとして同定される(Shirwany,Biochem.Biophys.Acta 886:162〜168,1986)。
【0059】
このTATアッセイに加えて、本発明の方法において利用される組成物を同定するために使用され得るさらなる例示的な多くのアッセイは、インビボのグルココルチロイド活性に基づくアッセイである。例えば、グルココルチロイドによって刺激される細胞中のDNAへのHチミジンの取り込みを阻害するための推定GRアンタゴニストの活性を評価するアッセイが使用され得る。あるいは、この推定GRアンタゴニストは、肝臓癌細胞組織培養GRに対する結合についてH−デキサメタゾンと競合し得る(例えば、Choiら,Steroid 57:313〜318,1992を参照のこと)。別の例として、H−デキサメタゾン−GR複合体の核結合をブロックする推定GRアゴニストの能力が使用され得る(Alexandrovaら,J.Steroid Biochem.Mol.Biol.41:723〜725,1992)。推定GRアンタゴニストをさらに同定するために、レセプター結合速度論によるグルココルチロイドアゴニストとグルココルチロイドアンタゴニストとを選別し得る速度論的アッセイがまた、(Jones,Biochem J.204:721〜729,1982に記載されるように)使用され得る。
【0060】
別の例示的実施例において、Daune,Molec.Pharm.13:948〜955,1997および米国特許第4,386,085号によって記載されるアッセイは、グルココルチロイド活性を同定するために使用され得る。手短には、副腎摘出を受けたラットの胸腺細胞が、種々の濃度における試験化合物(推定GRアンタゴニスト)と共にデキサメタゾンを含む栄養培地中でインキュベートされる。H−ウリジンがこの細胞培養物に添加され、これはさらにインキュベートされて、そしてポリヌクレオチドへの放射性標識の取り込みの程度が測定される。グルココルチロイドアゴニストは、取り込まれるH−ウリジンの量を減少させる。したがって、GRアゴニストはこの効果を妨害する。
【0061】
本発明の方法において使用され得るさらなる化合物およびこのような化合物を同定または生成する方法については、米国特許第4,296,206号(上記を参照のこと);同4,386,085号(上記を参照のこと);同4,447,424号;同4,477,445号;同4,519,946号;同4,540,686号;同4,547,493号;同4,634,695号;同4,634,696号;同4,753,932号;同4,774,236号;同4,808,710号;同4,814,327号;同4,829,060号;同4,861,763号;同4,912,097号;同4,921,638号;同4,943,566号;同4,954,490号;同4,978,657号;同5,006,518号;同5,043,332号;同5,064,822号;同5,073,548号;同5,089,488号;同5,089,635号;同5,093,507号;同5,095,010号;同5,095,129号;同5,132,299号;同5,166,146号;同5,166,199号;同5,173,405号;同5,276,023号;同5,380,839号;同5,348,729号;同5,426,102号;同5,439,913号;および同5,616,458号ならびにWO96/19458(これは、ステロイドレセプターに対する、高親和性、高選択性のモジュレータ(アンタゴニスト)である非ステロイド化合物(例えば、6置換−1,2−ジヒドロN−1保護キノリン)を記載している)。
【0062】
このMRに関連して、GRに対するアンタゴニストの特異性は、当業者にとって公知である種々のアッセイを使用して測定され得る。例えば、特異的アンタゴニストが、このMRと比較して、GRに結合するアンタゴニストの能力を測定することによって同定され得る(例えば、米国特許第5,606,021号;同5,696,127号;同5,215,916号;同5,071,773号を参照のこと)。このような分析は、直接結合アッセイまたは既知のアンタゴニストの存在下において、精製したGRまたはMRに対する競合的結合を評価することのいずれかによって実施され得る。例示的なアッセイにおいて、高レベルでグルココルチロイドレセプターまたはミネラルコルチロイドレセプターを安定して発現する細胞(米国特許第5,606,021号)は精製レセプターの供給源として使用される。次いで、このレセプターに対するアンタゴニストの親和性が直接的に測定される。MRと比較したときに、このGRについて少なくとも100倍(しばしば、1000倍)の高親和性を提示するこれらのアンタゴニストが、本発明の方法における使用について選択され得る。
【0063】
GR特異的アンタゴニストはまた、GR媒介性活性を阻害するがMR媒介性活性を阻害しない能力を有する化合物として定義され得る。このようなGR特異的アンタゴニストを同定する1つの方法は、トランスフェクトアッセイを使用するレポーター構築物の活性化を妨げるアンタゴニストの能力を評価することである(例えば、Bocquelら、J.Steroid Biochem Molec.Biol.45:205〜215,1993;米国特許第5,606,021号、同5,929,058号を参照のこと)。例示的なトランスフェクションアッセイにおいて、レセプターをコードする発現プラスミドおよびレセプター特異的な調節エレメントに連結しているレポーター遺伝子を含むレポータープラスミドが、適切なレセプターネガティブ宿主細胞に同時トラスフェクトされる。次いで、このトランスフェクトされた宿主細胞が、このレポータープラスミドのホルモン応答性のプロモーターエレメントまたはエンハンサーエレメントを活性化し得るホルモン(例えば、コルチソルまたはそれらのアナログ)の存在下またはそれらの非存在下において培養される。次に、このトランスフェクトされてかつ培養された宿主細胞は、このレポーター遺伝子配列の産物の誘導(すなわち、存在)についてモニターされる。最後に、(発現プラスミド上のレセプターDNA配列によってコードされて、そしてトランスフェトされかつ培養された宿主細胞中で産生される)ホルモンレセプターの発現および/またはステロイド結合能は、アンタゴニストの存在または非存在のもとでこのレポーター遺伝子の活性を決定することによって測定される。化合物のアンタゴニスト活性はGRレセプターおよびMRレセプターの既知のアンタゴニストと比較して決定され得る(例えば、米国特許第5,696,127号を参照のこと)。次いで、効力は、参照アンタゴニスト化合物に対する各化合物について観察されたパーセント最大応答として報告される。GR特異的アンタゴニストは、MRと比較して、GRについて少なくとも100倍(しばしば、1000倍以上)の活性を提示すると考えられる。
【0064】
(4.グルココルチロイドレセプターアンタゴニストを使用するAP誘導性体重増加の阻害または逆行)
抗グルココルチロイド(例えば、ミフェプリストン)は、AP誘導性体重増加を阻害または逆行するための本発明の方法において使用される薬剤として処方される。GRに対するコルチソルまたはコルチソルアナログの結合に関連する生物学的応答をブロックし得る任意の組成物または化合物は、本発明における薬剤として使用され得る。本発明の方法を実施するためにGRアンタゴニスト薬物レジメン(regime)および処方を決定する慣用的な手段は、特許文献および科学技術文献において十分に記載されており、そしていくつかの例示的な実施例が以下に記載にされる。
【0065】
(a.薬学的組成物としてのグルココルチロイドレセプターアンタゴニスト)
本発明の方法において使用されるGRアンタゴニストは、当該分野で公知である任意の手段(例えば、非経口投与、局所的(topical)投与、経口投与、または局所的(local)投与(例えば、エアロゾルまたは経皮))によって投与され得る。本発明の方法は、予防処置および/または治療処置を提供する。薬学的処方物としてのGRアンタゴニストは、各患者の、状態または疾患および精神状態、一般的な医学的条件に、得られる好ましい投与方法などに依存して、種々の単位用量形態で投与され得る。処方および投与についての技術の詳細は、科学技術文献および特許文献(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Maack Punlishing Co,Easton PA(「Remington’s」)の最新版)において十分に記載されている。本発明の方法の実施について適切な、治療有効量のグルココルチロイドブロッカーは、約0.5ミリグラム/キログラム(mg/kg)〜25mg/kgの範囲に及び得る。当業者は、その技術および本開示を有すると、過度の実験を必要とすることなしに、本発明の実施のために、治療有効量の特異的グルココルチロイドブロッカー化合物を決定し得る。
【0066】
一般的に、グルココルチロイドブロッカー化合物は、治療学的薬物を投与するための当該分野で公知である任意の方法により、薬学的組成物として投与され得る。組成物は、錠剤、丸薬、カプセル、半固体、粉末、徐放性処方物、溶液、懸濁物、エリキシル剤、エアロゾル、または任意の他の適切な組成物の形態をとり得、そして、少なくとも1つの薬学的に受容可能な賦形剤と併用して少なくとも1つの本発明の化合物を含有し得る。適切な賦形剤は、当業者にとって周知であり、そして、これらおよびこの組成物を処方する方法は、Alfonso AR:Remington’s Pharmaceutical Sciences,第17版,Mack Publishing Campany,Easton PA,1985のような標準的な参考文献において見出され得る。適切な液体キャリア(特に、注射可能な溶液)としては、水、生理食塩水溶液、デキストロース水溶液、およびグリコールが挙げられる。
【0067】
本発明の水性懸濁物は、水性懸濁物の製造に適切な混合してGRアンタゴニストを含む。このような賦形剤としては、懸濁剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアカシアゴム)ならびに分散剤および湿潤剤(例えば、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)、脂肪酸(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン)とのアルキレンオキシドの縮合生成物、長鎖の脂肪族アルコール(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール(oxycetanol))とのエチレンオキシドの縮合生成物、脂肪酸およびヘキシトール(例えば、ポリオキシエチレンオキシドモノオレート)から誘導される部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物または、脂肪酸もしくはヘキシトール無水物(例えば、ポリオキシチレンソルビタンモノオレエート)由来の部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物が挙げられる。このような水性懸濁物はまた、1以上の保存剤(例えば、エチルp−ヒドロキシベンゾエートまたはn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエート)、1以上の着色剤、1以上の香料および1以上の甘味料(例えば、スクロース、アスパルテームまたはサッカリン)を含み得る。処方物は、容量オスモル濃度について調整され得る。
【0068】
油性懸濁物は、植物油(例えば、落花生油、オリーブ油、ゴマ油またはココナッツ油)中、または鉱油(例えば、液体パラフィン)中、あるいはこれらの混合物中においてGRアゴニストを懸濁することによって処方され得る。この油性懸濁物は、濃化剤(蜜蝋、固形パラフィン、またはセチルアルコール)を含有し得る。甘味料が嗜好性経口処方物を提供するために添加され得る(例えば、グリセロール、ソルビトール、またはスクロース)。これらの処方物は、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)の添加によって保存され得る。注入可能な油性ビヒクルの例として、Minto,J.Pharmacol.Exp.Ther.281:93〜102,1997を参照のこと。本発明の薬学的処方物はまた、o/wエマルジョンの形態にであり得る。この油相は、上記のように、植物油または鉱油あるいはこれらの混合物であり得る。適切な乳化剤としては、天然に存在するゴム(例えば、アカシアゴムおよびトラガカントゴム)、天然に存在するホスファチド(例えば、ダイズレシチン)、または脂肪酸無水ヘキシトール(例えば、ソルビタンモノオレート)から誘導されるエステルまたは部分的エステルならびにエチレンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシソルビタンモノオレエート)とこれらの部分エステルとの縮合生成物が挙げられる。このエマルジョンはまた、シロップおよびエリキシル剤の処方物中のように、甘味料および香料を含有し得る。このような処方物はまた、保護剤、保存料または着色料を含有し得る。
【0069】
グルココルチロイドブロッカー薬学的処方物が、薬剤の製造のための当該分野で公知の任意の方法に従って調製され得る。このような薬物は、甘味料、香料、着色料、および保存料を含有し得る。任意のグルココルチロイドブロッカー処方物は、製造にとって適切な非毒性の薬学的に受容可能な賦形剤とともに混合され得る。
【0070】
代表的には、本発明の実施における用途に適したグルココルチロイドブロッカー化合物が経口にて投与され得る。この組成物中の本発明の化合物の量は、組成物の型、単位用量のサイズ、賦形剤の種類、および当業者にとって周知の他の因子に広く依存して変化し得る。一般に、この最終組成物は、0.000001重量%〜10重量%(好ましくは0.00001重量%〜1重量%)のグルココルチロイドブロッカー化合物を含み、残りは賦形剤である。例えば、このGRアンタゴニストであるミフェプリストンが、約0.5mg/kgと約25mg/kgとの間の範囲、より好ましくは0.75mg/kgと15mg/kgとの間の範囲、最も好ましくは約10mg/kgの用量で錠剤の形態で経口的に与えられる。
【0071】
経口投与のための薬学的処方物が、経口投与に適切な投与量で、当該分野で周知の薬学的に受容可能なキャリアを使用して、処方され得る。そのようなキャリアによって、患者による摂取に適切な錠剤、ピル、散剤、糖剤、カプセル剤、液体、ロゼンジ、ゲル、シロップ剤、スラリー、懸濁物などとして、単位投与形態でこの薬学的処方物が処方されるこが、可能になる。グルココルチコイドブロッカー化合物と固体賦形剤との組み合わせを介して、生じた混合物を必要に応じて粉砕し、望ましい場合はさらなる適切な化合物を添加した後に顆粒混合物を処理して錠剤または糖剤コアを得ることによって、経口用途のための薬学的調製物が得られ得る。適切な固体賦形剤は、糖質充填剤またはタンパク質充填剤である。この適切な固体賦形剤としては、糖(ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む);トウモロコシ由来のデンプン、コムギ由来のデンプン、コメ由来のデンプン、ジャガイモ由来のデンプン、または他の植物由来のデンプン;セルロース(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロースまたはカルボキシメチルセルロースナトリウム);およびゴム(アラビアゴムおよびトラガカントを含む);ならびにタンパク質(例えば、ゼラチンおよびコラーゲン)が挙げられるが、これらに限定されない。望ましい場合は、崩壊剤または可溶化剤(例えば、架橋したポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウム))が、添加され得る。
【0072】
本発明のGRアンタゴニストはまた、薬物の直腸投与のために坐剤の形態で投与され得る。これらの処方物は、その薬物を適切な非刺激性賦形剤と混合することによって調製され得、この適切な非刺激性賦形剤は、通常の温度では固体であるが直腸温度では液体であり、従って直腸で融解してその薬物を放出する。そのような材料は、ココアバターおよびポリエチレングリコールである。
【0073】
本発明のGRアンタゴニストはまた、鼻内経路、眼内経路、膣内経路、および直腸内経路(坐剤、吸入、散剤、およびエアロゾル処方物(例えば、ステロイド吸入剤(Rohatagi,J.Clin.Pharmacol.35:1187〜1193,1995;Tjwa,Ann.Allergy Asthma Immunol.75:107〜111,1995を参照のこと))を含む)により、投与され得る。
【0074】
本発明のGRアンタゴニストは、局所経路により経皮送達され得、塗布器スティック、溶液、懸濁物、乳濁物、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、ゼリー、塗布剤、散剤、およびエアロゾルとして処方され得る。
【0075】
本発明のGRアンタゴニストはまた、身体における徐放のためのミクロスフェアとして、送達され得る。例えば、ミクロスフェアは、皮下で徐放する薬物(例えば、ミフェプリストン)含有ミクロスフェアの経皮注入を介して(Rao,J.Biomater Sci.Polym.Ed.7:623〜645,1995を参照のこと)か、生分解性で注射可能なゲル処方物として(例えば、Gao Pharm.Res.12:857〜863,1995を参照のこと)か、または経口投与のためのミクロスフェアとして(例えば、Eyles,J.Pharm.Pharmacol.49:669〜674,1997を参照のこと)、投与され得る。経皮経路および皮内経路の両方により、数週間または数ヶ月間の一定送達が提供される。
【0076】
本発明のGRアンタゴニスト薬学的処方物は、塩として提供され得、そして多くの酸(塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などが挙げられるが、これらに限定されない)を用いて形成され得る。塩は、水性溶媒または他のプロトン性溶媒中でより可溶性であり、対応する遊離塩形態である。他の場合において、好ましい調製物は、pH範囲4.5〜5.5にて、1mM〜50mMヒスチジン、0.1%〜2%スクロース、2%〜7%マンニトール中にある凍結乾燥散剤であり得、この調製物が、使用前に緩衝液と組み合わされる。
【0077】
別の実施形態において、本発明のGRアンタゴニスト処方物は、非経口投与(例えば、静脈内(IV)投与)のために有用である。投与用処方物は、一般的には、薬学的に受容可能なキャリア中に溶解したGRアンタゴニスト(例えば、ミフェプリストン)の溶液を含む。使用され得る受容可能なビヒクルおよび溶媒のうちにあるのは、水およびリンゲル溶液、等張性塩化ナトリウム、である。さらに、滅菌した不揮発性油が、溶媒または懸濁媒体として慣習的に使用され得る。この目的のために、合成モノグリセリドまたは合成字グリセリドを含む、任意の非刺激性不揮発油が、使用され得る。さらに、脂肪酸(例えば、オレイン酸)が、同様に、注射可能物質の調製物質中で使用され得る。これらの溶液は、滅菌してあり、一般的には望ましくない問題を有さない。これらの処方物は、従来の周知の滅菌技術により滅菌され得る。これらの処方物は、生理学的条件に近づけるために必要な、薬学的に受容可能な補助物質(例えば、pH調整剤および緩衝剤、張度調整剤(例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなど))を含み得る。これらの処方物中のGRアンタゴニストの濃度は、広範に変動し得る。そしてこれらの処方物中のGRアンタゴニストの濃度は、選択される特定の投与様式および患者の必要性に従って、液体の体積、粘度、体重などに主に基づいて選択される。IV投与のために、この処方物は、滅菌した注射可能な調製物(例えば、滅菌した注射可能な水性懸濁物または滅菌した油性懸濁物)であり得る。この懸濁物は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して、公知の技術に従って処方され得る。滅菌した注射可能な調製物はまた、非経口的に受容可能な非毒性の希釈剤または溶媒中にある、滅菌した注射可能な溶液または懸濁物(例えば、1,3−ブタンジオールの溶液)であり得る。
【0078】
別の実施形態において、本発明のGRアンタゴニスト処方物は、細胞膜と融合するリポソームの使用によって送達され得るか、またはエンドサイトーシスされる(すなわち、細胞の表面膜タンパク質レセプターに結合してエンドサイトーシスを生じる、そのリポソームに結合したリガンドもしくはそのオリゴヌクレオチドに直接結合したリガンドを使用することによって、エンドサイトーシスされる)。リポソームを使用することによって、特に、そのリポソーム表面が標的細胞に特異的なリガンドを保有する場合または特定の器官に対して優先的にそのリポソーム表面が指向される場合は、そのGRアンタゴニストをインビボで標的細胞中に送達することに焦点を合わせ得る(例えば、Al−Muhammed,J.Microencapsul.13:293〜306,1996;Chonn,Curr.Opin.Biotechnol.6:698〜708,1995;Ostro,Am.J.Hosp.Pharm.46:1576〜1587,1989を参照のこと)。
【0079】
(b.グルココルチコイドレセプターアンタゴニストについての投薬レジメンの決定)
本発明の方法は、AP誘導性体重増加(weight gain)を阻害するかまたは逆転(reverse)させる。これを達成するために十分なGRアンタゴニストの量が、「治療有効用量」として規定される。この用途のために有効な投与スケジュールおよび量(すなわち、「投薬レジメン」)は、種々の要因(患者が使用しているAP薬(medication)の型、既に生じているAP誘導性体重増加量、患者の身体状態、年齢などを含む)に依存する。患者についての投薬レジメンを計算する際に、投与様式もまた、考慮される。
【0080】
この投薬レジメンはまた、当該分野で周知の薬物速度論パラメーター(すなわち、GRアンタゴニストの吸収速度、バイオアベイラビリティ、代謝、クリアランスなど(例えば、Hidalgo−Aragones,J.Steroid Biochem.Mol.Biol.58:611〜617,1996;Groning,Phamazie 51:337〜341,1996;Fotherby,Contraception 54:59〜69,1996;Johnson,J.Pharm.Sci.84:1144〜1146,1995;Rohatagi,Pharmazie 50:610〜613,1995;Brophy,Eur.J.Clin.Pharmacol.24:103〜108,1983;最新版のRemington’s(前出)を参照のこと)を考慮する。例えば、ある研究において、日用量の0.5%未満のミフェプリストンが、尿において排出された;この薬物は、循環中のアルブミンに広範に結合した(Kawai(前出)、1989を参照のこと)。当該技術の水準によって、臨床家が個々の患者、GRアンタゴニストおよび処置される疾患もしくは処置される状態の各々についての投薬レジメンを決定することが、可能となる。例示的な例として、ミフェプリストンについて下記に提供される指針が、本発明の方法を実施する場合に投与される任意のGRアンタゴニストの投薬レジメン(すなわち、投与スケジュールおよび投与レベル)を決定するための指針として、使用され得る。
【0081】
GRアンタゴニスト処方物の単回投与または複数回投与が、患者により必要とされかつ許容される、投与量および頻度に依存して投与され得る。その処方物は、AP薬により誘導される体重増加を有効に阻害または逆転するために十分な量の活性薬剤(active agent)(すなわち、ミフェプリストン)を提供する。例えば、ミフェプリストンの経口投与のために好ましい代表的な薬学的処方物は、約5mg/体重1kg/患者/日〜15mg/体重1kg/患者/日であり、より好ましくは約8mg/体重1kg/患者/日〜約12mg/体重1kg/患者/日であり、最も好ましくは10mg/体重1kg/患者/日であるが、約0.5mg/体重1kg/日〜約25mg/体重1kg/日が、本発明の実施において使用され得る。特に、経口投与、血流中への投与、体腔中への投与、または器官の管腔中への投与とは対照的に、解剖学的に隔離された部位(例えば、脊髄脳液(CDF)空間)にその薬物が投与される場合には、より低投与量が使用され得る。非経口投与可能なGRアンタゴニスト処方物を調製するための実際の方法は、当業者にとって公知であるかまたは明らかであり、Remington’s(前出)のような刊行物においてより詳細に記載されている。Nieman,「Receptor Mediated Antisteroid Action」,Agarwalら編,De Gruyter,New York,1987もまた参照のこと。
【0082】
本発明のGRアンタゴニストを含む薬剤(pharmaceutical)が、受容可能なキャリア中に処方された後、その薬剤は、適切な容器中に配置され得、そして指示された状態の処置について標識され得る。GRアンタゴニストの投与について、そのような標識は、例えば、投与の量、頻度および方法に関する指示を包含する。1つの実施形態において、本発明は、ヒトにおいてAP誘導性体重増加を阻害または逆転するためのキットを提供し、そのキットは、GRアンタゴニストと、そのGRアンタゴニストの投与の指標、投与量およびスケジュールを教示する、指示物質とを含む。
【実施例】
【0083】
以下の実施例は、本願発明を例示するために提供されるが、本願発明を限定するためには提供されない。
【0084】
(実施例1:ミフェプリストンを用いる、AP誘導性体重増加の阻害または逆転)
以下の実施例は、本発明の方法を実施する方法を示す。
【0085】
(患者の選択)
長期AP投与を開始すべき個体または長期AP投与下にあり結果として十分な量の体重を獲得している個体。その患者は、代表的には、その年齢について正常なコルチソルレベルを有する。
【0086】
(ミフェプリストンの投薬レジメンおよび投与)
グルココルチコイドレセプター(GR)アンタゴニストであるミフェプリストンを、本研究において使用する。ミフェプリストンを、1日に投与量200mgで投与する。個体に、1日に200mgのミフェプリストンを6ヶ月間投与し、下記のように評価する。必要があれば投与量を調整し、処置全体を通して定期的にさらなる評価を実施する。
【0087】
ミフェプリストン錠剤が、商業的供給源(例えば、Shanghai HuaLian Pharmaceuticals Co.,Ltd,Shanghai,China)から入手可能である。
【0088】
(体重増加の予防の評価)
AP誘導性体重増加を阻害または逆転する際のミフェプリストンの有効性を示しそして評価するために、その患者の体重を、身体測定により測定し、2週間ごとに記録する。
【0089】
(実施例2:コルチソルレベルの測定)
実施例1の患者のコルチソルレベルを測定するために、午後のコルチソル試験測定値を得、ベースラインコルチソル基準として使用する。コルチソルレベルを、0日目、上記薬剤の投与後2週間目(14日目)、および各来訪時に6ヶ月間まで測定し、その後は周期的に測定する。
【0090】
「Double Antibody Cortisol Kit」(Diagnostic Products Corporation,Los Angeles,CA)を使用して、血中コルチソルレベルを測定する。この試験は、抗体部位についての臨床サンプル由来のコルチソルと125I標識コルチソルが競合する、競合ラジオイムノアッセイである。この試験を、製造業者の指示に本質的に従い、製造業者により供給される試薬を使用して、実施する。簡単に述べると、静脈穿刺により血液を収集し、その細胞から血清を分離する。そのサンプルを、2℃〜8℃にて7日間まで貯蔵するか、または−20℃にて2ヶ月間まで貯蔵する。上記アッセイのまえに、おだやかに旋回させるかまたは逆転させることによって、サンプルを室温(15℃〜28℃)にさせる。チューブ1本当たり25μlの血清にて16本のチューブを、2連で調製する。調製した較正チューブから、コルチソル濃度を計算する。正味の数値は、平均CPM−平均非特異的CPMに等しい。未知物についてのコルチソル濃度を、この較正曲線から内挿することによって推定する(Dudleyら、Clin.Chem.31:1264〜1271,1985)。
【0091】
本明細書中に記載される実施例および実施形態は、例示目的のみのためのものであること、そしてそれらの実施例および実施形態を考慮した種々の改変または変化が当業者に示唆され、かつ本出願の趣旨および範囲ならびに特許請求の範囲の範囲内に包含されるべきことが、理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗精神病薬の投薬により処置されている患者の体重増加を阻害または逆転させる方法

【公開番号】特開2009−102413(P2009−102413A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23156(P2009−23156)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【分割の表示】特願2003−515245(P2003−515245)の分割
【原出願日】平成14年7月22日(2002.7.22)
【出願人】(503345477)コーセプト セラピューティクス, インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】