説明

抗酸化剤

【課題】食品等における品質の劣化や生体内における種々の疾患の発症に起因する酸化反応を抑制し、植物由来の安全で且つ優れた抗酸化物質を提供すること。
【解決手段】ウイッチヘーゼルバーク、ガンビール、ムクゲおよび石乳香から選ばれる1種または2種以上を、水または親水性溶媒で抽出して得られる溶媒抽出物を有効成分とする抗酸化剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の植物に由来する抗酸化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品、医薬品、化粧品等で、製造時、流通時、保存時等の各段階において生じる香味や風味等の品質劣化は、酸化反応が主体となって引き起こされることが知られている。また、近年、酸化反応は、生体内において引き起こされる様々な疾患、例えば、動脈硬化、脳梗塞、脳卒中、心筋梗塞、てんかん、白内障等の原因となることも明らかとされている。具体的には、これらの疾患は生体の細胞と組織が、正常の酸素代謝や外来からの障害で生じるフリーラジカルや活性酸素種にさらされることにより、脂質が酸化されて過酸化脂質に変化したり、タンパク質が変性することにより引き起こされると考えられている。
【0003】
これまで、このような酸化反応を抑制する方法としては、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロール、アスコルビン酸等の抗酸化剤が使用されてきた。ところが、上記した抗酸化剤は、発ガン性物質であったり、十分な効果を得るためには過剰に使用することが必要であるなど、身体へ摂取する食品等への利用や生体内での酸化反応を抑制する手段としては必ずしも好ましいものとはいえなかった。
【0004】
このため、体に悪影響を及ぼすことがなく、安全で、且つ優れた酸化反応の抑制効果を有する抗酸化剤の開発が望まれてきた。そして、近年では、抗酸化剤として植物から抽出された抽出物が注目されるようになり、数多く報告されるようになってきている。このような植物に由来する抗酸化剤として代表的なものとしては、緑茶抽出物を挙げることができる。また、この他の植物由来の抗酸化剤としては、ブルーベリー、ストロベリー、ブラックベリーおよびラズベリーからなる群から選択される1種若しくはそれ以上の植物の親水性溶剤抽出物(特許文献1)、カリン、マンゴー、ミロバラン、ザクロ、五倍子から溶媒抽出された各抽出物(特許文献2)、仙草を水若しくは親水性有機溶媒で抽出した抽出物(特許文献3)、桑の実および桑の葉を水若しくは親水性有機溶媒で抽出した抽出物(特許文献4)、マンゴスチンの果皮から抽出された抽出物(特許文献5)、キハダ果実を水、メタノール等の溶媒で抽出した抽出物(特許文献6)、バナバの葉を熱水、有機溶媒または有機溶媒と熱水との混合物で抽出して得られた抽出物(特許文献7)等が報告されている。
【0005】
【特許文献1】特開平2−84486号公報
【特許文献2】特開2002−244号公報
【特許文献3】特開平8−3551号公報
【特許文献4】特開平8−143466号公報
【特許文献5】特開平8−225783号公報
【特許文献6】特開平10−17485号公報
【特許文献7】特開平10−130644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、食品等における品質の劣化や生体内における種々の疾患の発症に起因する酸化反応を抑制し、植物由来の安全で且つ優れた新しい抗酸化物質を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、ウイッチヘーゼルバーク、ガンビール、ムクゲまたは石乳香の溶媒抽出物が優れた抗酸化活性を有することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明はウイッチヘーゼルバーク、ガンビール、ムクゲおよび石乳香から選ばれる1種または2種以上を、水または親水性溶媒で抽出して得られる溶媒抽出物を有効成分とする抗酸化剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
ウイッチヘーゼルバーク、ガンビール、ムクゲおよび石乳香から得た溶媒抽出物は優れた抗酸化活性を示し、また、これらは植物由来であるため安全性が高いものである。
【0010】
従って、上記の抗酸化剤は、飲食品や化粧料の品質劣化防止剤としてや、動脈硬化などの疾患の予防・治療などの目的に広く利用できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の抗酸化剤は、ウイッチヘーゼルバーク、ガンビール、ムクゲおよび石乳香から選ばれる1種または2種以上を水または親水性溶媒で抽出した溶媒抽出物を有効成分とするものである。
【0012】
上記のうち、ウイッチヘーゼルバークは、ウイッチヘーゼル(Hamamelis virginiana)の樹皮(バーク)であり、本発明の抗酸化剤は、この部分を使用することにより得られる。このウイッチヘーゼルはアメリカ東部とカナダが原産の、リンゴの木に似た落葉性の低木で、日本名はアメリカマンサクと呼ばれるマンサク科の植物である。このウイッチヘーゼルは、その葉にハマメリスタンニンと呼ばれる独自の成分を含有することが知られており、このものは、皮膚の蛋白質、特に汗腺の蛋白質を凝固させることによって発汗を抑制する収斂剤として使用されているほか、鎮静、鎮痛、防臭、止血作用を有することが知られている。
【0013】
また、ガンビール(Uncaria gambir Roxburgh)は、インドに広く分布するアカネ科の低木である。ガンビールの葉および若枝の乾燥水製エキスは「アセンヤク」といい、渋味のある生薬の一種として、わが国では、仁丹などの口中剤の主原料として用いられる。ガンビールを本発明の抗酸化剤の原料とする場合には、葉、茎、芽、花、木質部、木皮部(樹皮)などの地上部および根、根茎などの地下部、種子、果実、樹脂などのすべての部位を使用することができるが、特に葉または若枝を使用することが好ましい。
【0014】
更に、ムクゲ(Hibiscus syriacus)は、別名ハチスと呼ばれるアオイ科の高さ2〜3mの落葉低木であり、中国・インド原産である。このムクゲはよく分枝し、樹皮は繊維が強く、折れにくい。葉は互生し、ほぼ卵形で長さ4〜10cm、浅く3裂し、少数の粗い鋸歯がある。葉の裏面には短毛と星状の毛が産生する。ムクゲの花を乾燥させたものを「木槿花」、樹皮を乾燥させたものを「木槿皮」、果実を「朝天使」と呼び、胃腸炎、腸出血、下痢、嘔吐などの特効薬として使用されている。ムクゲを本発明の抗酸化剤の原料とする場合には、葉、茎、芽、花、木質部、木皮部(樹皮)などの地上部および根、根茎などの地下部、種子、果実、樹脂などのすべての部位を使用することができるが、特に樹皮である木槿皮を使用することが好ましい。
【0015】
また更に、石乳香は、半発酵茶である烏龍茶の1種である。この石乳香は、半発酵茶である烏龍茶の中でも、福建省北部に位置する武夷山の麓で栽培された茶樹を総称する武夷岩茶の1種である。この武夷岩茶は、福建省南部の安渓等を中心として作られている鉄観音に比べ、比較的発酵の進んだ烏龍茶である。
【0016】
上記したウイッチヘーゼルバーク、ガンビール、ムクゲおよび石乳香を原料とし、その溶媒抽出物を得るためには、全ての部位からの溶媒抽出物を使用することができる。溶媒抽出物は、そのまま、あるいはそれらの粉砕物(生もしくは乾燥)、圧搾抽出することにより得られる搾汁、粗抽出物、粗抽出物の精製物などの全てを含む。これらは単独で用いてもよくまたは2種以上混合して用いてもよい。
【0017】
溶媒抽出物を得るための水または親水性溶媒としては、水、熱水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコール;酢酸エチル等のエステル;エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等のグリコール類;ジエチルエーテル、石油エーテル等のエーテル類;アセトン、酢酸等の極性溶媒;ベンゼン、ヘキサン、キシレン等の炭化水素などを挙げることができ、なかでも水またはアルコール類が好ましい。これら溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。これらの溶媒のうち、水であれば植物の10〜50倍量、好ましくは15〜25倍量を用いればよい。また、親水性溶媒としてエタノールであれば10〜50倍量、好ましくは35〜45倍量を用いればよい。
【0018】
溶媒抽出物を得るための抽出方法としては、特に制限無く一般的な抽出方法を利用することができるが、例えば、溶媒に乾燥物または乾燥粉砕物を浸漬する方法、加温下(常温から溶媒の沸点の範囲)攪拌する方法等を挙げることができる。具体的な抽出方法の例としては、水を用いた抽出であれば80〜100℃で30分程度、好ましくは100℃で30分抽出する方法等が、また、エタノールを用いた抽出であれば冷暗所で1週間抽出する方法等が挙げられる。得られた抽出物は、必要に応じて濾過または遠心分離によって固形物を除いた後、そのまま用いるかまたは溶媒を濃縮若しくは乾燥して用いることも、また、溶媒抽出物を減圧乾燥、真空凍結乾燥等の手段によって乾燥した乾燥物として用いることもできる。
【0019】
前記の方法で得られた溶媒抽出物は、公知の天然有機化合物の分離や精製に用いる方法で更に精製してもよい。このような方法としては、例えば、活性炭、シリカゲル、ポリマー系担体等を用いた吸脱着、カラムクロマトグラフィー、液−液抽出、分別沈殿などの方法を挙げることができる。
【0020】
斯くして得られる溶媒抽出物は、1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジルラジカル消去活性および/または低比重リポタンパク質の酸化抑制能を有するので抗酸化剤として利用できる。そして、上記溶媒抽出物を有効成分とする本発明の抗酸化剤は低比重リポタンパク質の酸化抑制能を有するので、低比重リポタンパク質の酸化変性により血管内皮細胞が損傷することで発症する動脈硬化症の発症予防作用が期待できる。また、抗酸化作用を有するフラボノイド類が血清コレステロール値を低下させることから、抗酸化作用、特に低比重リポタンパク質抗酸化能を有する本発明の抗酸化剤は、脂質代謝改善作用も期待できる。よって、本発明の抗酸化剤は動脈硬化症の発症予防・改善剤、脂質代謝改善剤として使用することができる。
【0021】
本発明の抗酸化剤の投与方法は、経口投与または非経口投与のいずれも使用できる。投与に際しては、有効成分を経口投与、直腸内投与、注射などの投与方法に適した固体または液体の医薬用無毒性担体と混合して、慣用の医薬品製剤の形態で投与することができる。
【0022】
このような製剤としては、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤などの固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤などの液剤、凍結乾燥製剤などが挙げられる。これらの製剤は製剤上の常套手段により調製することができる。上記の医薬用無毒性担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、ゼラチン、アルブミン、水、生理食塩水などが挙げられる。また、必要に応じて、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤などの慣用の添加剤を適宜添加することもできる。
【0023】
また、本発明の抗酸化剤は、上記のような製剤とするだけでなく、飲食品や外用剤等に配合して使用することもできる。飲食品に抗酸化剤を配合する場合には、そのまま、または種々の栄養成分と共に含有せしめればよい。この飲食品は香味や風味等の品質の劣化を抑制する目的、或いは動脈硬化等の生体内疾患の予防等に有用な保健用食品または食品素材として利用できる。具体的に本発明の抗酸化剤を飲食品に配合する場合は、飲食品として使用可能な添加剤と共に、慣用の手段を用いて食用に適した形態、すなわち、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペースト等に成形してもよく、また種々の食品、例えば、ハム、ソーセージ等の食肉加工品、カマボコ、ちくわ等の水産加工食品、パン、菓子、バター、粉乳、発酵乳製品に添加して使用したり、水、果汁、牛乳、清涼飲料等の飲料に添加して使用してもよい。
【0024】
更に、本発明の抗酸化剤は化粧品等の外用剤に配合することができる。化粧品に抗酸化剤を配合する場合には、慣用されている化粧品の形態、例えば、乳液、化粧液、ファンデーション、フェイスクリーム、ハンドクリーム、ローション、エッセンス、シャンプー、リンス等とすることができる。このような化粧品は、常法に従って製造することができ、その製造工程の任意の段階で抗酸化剤を配合すればよい。また必要に応じて、化粧品に通常用いられる成分、例えば、界面活性剤、油分、アルコール類、保湿剤、増粘剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、香料、色素、ビタミン類、アミノ酸類、水等を配合することができる。
【0025】
これら医薬品、飲食品および外用剤における抗酸化剤の使用量はその態様によって得られる効果が異なるため、適宜添加量を設定することが望ましいが、溶媒抽出物の乾燥重量換算で、0.001質量%〜50質量%、好ましくは0.01質量%〜30質量%程度であればよい。
【実施例】
【0026】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例になんら制約されるものではない。
【0027】
実 施 例 1
熱水抽出物の調製:
ウイッチヘーゼルバーク、ガンビール(葉、若枝)、ムクゲ(樹皮)および石乳香(葉)の各乾燥物の10gに200mlの水を加え、100℃で30分間熱水抽出をした。抽出残渣はガーゼでろ過して取り除き、抽出物は凍結乾燥して粉末とした。以下の実験にはこの凍結乾燥粉末を蒸留水に溶解したものを試料として用いた。また、緑茶(葉)、烏龍茶(葉)、紅茶(アッサム種:葉)の熱水抽出物を対照とした。
【0028】
実 施 例 2
エタノール抽出物の調製:
実施例1と同様の各乾燥物の2.5gに100mlのエタノールを加え、冷暗所に7日間放置した。その後抽出物をワットマン濾紙(No.4)で濾過し、濾液はエバポレーターでエタノールを除き重量を測定して、抽出物が10mg/mlとなるようにエタノールで再溶解した。以下の実験にはこの溶液をエタノールで希釈したものを試料として用いた。また、緑茶(葉)、烏龍茶(葉)、紅茶(アッサム種:葉)のエタノール抽出物を対照とした。
【0029】
実 施 例 3
DPPHラジカル消去反応(1):
実施例1で調製した熱水抽出物のラジカル消去活性を、DPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)を用いて退色の度合いを分光光時計で測定することにより求めた。
【0030】
具体的には、マイクロプレートに0.2M酢酸バッファー(pH5.5)50μl、熱水抽出物100μl(50%エタノールとなるように調製)および250μMのDPPH(エタノール溶液)100μlを添加し、室温で30分間反応させ、MPR3550マイクロプレートリーダー(BIORAD製)でO.D510nmの吸光値を測定した。
【0031】
なお、試料自体の着色による吸光値への影響を除くため、上記反応系からDPPHのみを除いて同様に吸光値を測定し、試料ブランクとした。対照には試料の代わりに50%エタノール溶液を使用し、試料と同様に吸光値を測定した。
【0032】
試料の添加によるDPPHの吸光値の減少率を以下の式で計算し、DPPHラジカル消去活性とした。
【0033】
(数1)
DPPHラジカル消去活性(%)={(C−CB)−(S−SB)}/(C−CB)×100
S:試料の吸光値 SB:試料ブランク
C:対照の吸光値 CB:対照ブランク
【0034】
更に、各試料濃度のラジカル消去活性から、IC50値(ラジカルを50%消去するのに必要な試料終濃度)を計算により求めた。表1に各試料のラジカル消去活性をIC50値で示した。
【0035】
【表1】

【0036】
表1に示したとおり、本発明の熱水抽出物は、優れた抗酸化活性を示すことが知られている緑茶抽出物よりも優れた効果を有することが認められた。特にウイッチヘーゼルバークとガンビールは、優れた抗酸化活性を示すことが認められた。
【0037】
実 施 例 4
DPPHラジカル消去反応(2):
実施例2で調製したエタノール抽出物のうち、ウイッチヘーゼルバークとムクゲのラジカル消去活性(IC50値)を実施例3と同様に求めた。その結果を表2に示した。ウイッチヘーゼルバークとムクゲのエタノール抽出物は優れた抗酸化活性を示した。
【0038】
【表2】

【0039】
実 施 例 5
低比重リポタンパク質(LDL)の酸化抑制能:
(1)LDLの分画
高脂肪飼料(5%ラード、0.5%コレステロール添加MF粉末飼料)で、2週間飼育したゴールデンシリアンハムスター(♂10W)の腹部大動脈よりEDTA法で採血し、遠心分離して血漿を得、非連続密度勾配超遠心法を用いてLDLを分画した。このLDLをpH7.4のリン酸生理食塩水(PBS)を用いて4℃で24時間透析した後、PBSで適宜希釈して以下の試験に用いた。なお、LDL中のタンパク質はBCA プロテイン・アッセイ・リージェント・キット( BCA protein assey reagent kit )(PIERCE製)でウシ血清アルブミン(BSA)をスタンダードとして定量した。
【0040】
(2)銅イオンによるLDLの酸化
LDL(プロテイン終濃度250μg/ml)60μl、250mMのリン酸緩衝液(pH7.4)20μl、実施例1で調製した熱水抽出物(終濃度0.078−2.5μg/ml)10μlに5μMのCuSO10μlを添加し、37℃で2時間反応させた。2.5mMのEDTAを20μl添加して酸化反応を停止し、生成したチオバルビツール酸反応物質(TBARS)を以下のように測定した。なお、熱水抽出物の代わりに水を添加し37℃で2時間反応させたものを酸化LDL(酸化対照)とし、すぐに反応停止液を添加したものを未酸化LDL(未酸化対照)とした。
【0041】
(3)TBARSの測定
スクリューキャップ付き試験管に、上記酸化LDLを100μl、0.05NのHCLを1ml、TBA試薬(0.446% チオバルビツール酸、0.005% ブチルヒドロキシルトルエン)0.5mlをいれ、100℃のブロックヒーターで50分間反応させた。反応終了後水道水で冷却し、メタノール:n−ブタノール混液(15:85 v/v)を2ml添加して10分間振盪抽出をした。抽出物を遠心分離(30℃、3,000rpm、5分)してブタノール層を採取し、分光光度計でO.D535nmの吸光値を測定した。
【0042】
酸化LDL(酸化対照)の吸光値から未酸化LDL(未酸化対照)の吸光値を差し引いたものを対照のTBARS生成量とし、試料の添加によりTBARSの生成を抑制した割合を次式により計算して、LDLの酸化抑制率とした。
【0043】
(数2)
LDL酸化抑制率(%)=(C−S)/(C−CB)×100
S:試料添加酸化LDLの吸光値
C:酸化LDL(酸化対照)の吸光値
CB:未酸化LDL(未酸化対照)の吸光値
【0044】
DPPHラジカル消去活性と同様にLDLの酸化を50%抑制するIC50値を求め、表3に示した。
【0045】
【表3】

【0046】
上記の結果から明らかなように、本発明の熱水抽出物は、緑茶抽出物に比べ優れたLDL酸化抑制効果が認められた。また、ウイッチヘーゼルバークと石乳香は特にその効果が優れていた。
【0047】
実 施 例 6
錠剤の製造:
下記の処方で、常法により各成分を混合し、造粒・乾燥・整粒した後に、打錠して錠剤を製造した。得られた錠剤は外観・風味ともに良好で、保存安定性も良好であった。
【0048】
(処方) (mg)
ウイッチヘーゼルバーク熱水抽出物 40
微結晶セルロール 100
乳糖 80
ステアリン酸マグネシウム 0.5
メチルセルロース 12
【0049】
実 施 例 7
清涼飲料の製造:
下記の処方で、常法により各成分を配合し、均質化して清涼飲料を得た。得られた清涼飲料は褐色ビンに充填後、アルミキャップにて封印し、加熱処理を施した。得られた清涼飲料は外観・風味ともに良好で、保存安定性も良好であった。
【0050】
(処方) (mg)
ガンビール熱水抽出物 0.8
香料 0.8
水 100
還元澱粉糖化物 24
果糖 18
【0051】
実 施 例 8
茶飲料の製造:
石乳香茶葉70gを90℃のイオン交換水1kgに添加し、5分間攪拌抽出を行った。得られた抽出物を濾過後、30℃以下に冷却し、3,000rpmで10分間処理して清澄液を得た。これを水で8倍希釈後、アスコルビン酸ナトリウム0.03%を添加し、重曹を加えてpHを約6.5に調整し、茶様飲料とした。得られた茶様飲料は外観・風味ともに良好で、保存安定性も良好であった。
【0052】
実 施 例 9
発酵乳の製造:
15%脱脂乳に3%グルコースを添加し、120℃で3秒間殺菌した後、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)YIT9029株の種菌を1%接種し、37℃でpH3.6まで培養してヨーグルトベース210gを得た。一方、砂糖97g、クエン酸鉄0.2gおよび石乳香熱水抽出物0.05gを水に溶解し、更に水を加え全量を790gとし、この溶液を110℃で3秒間殺菌し、シロップを得た。上記のようにして得られたヨーグルトベースとシロップを混合し、香料を1g添加した後、15MPaで均質化して容器に充填して発酵乳製品を得た。得られた発酵乳製品は外観・風味ともに良好で、保存安定性も良好であった。
【0053】
実 施 例 10
化粧水の製造:
下記成分の化粧水を常法により製造した。得られた化粧水の保存安定性は良好であった。
【0054】
(成分) (質量%)
ムクゲエタノール抽出物 1.0
エタノール 5.0
1,3−ブチレングリコール 2.0
ヒアルロン酸 0.2
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.05
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
香料 0.1
精製水 残部
【0055】
実 施 例 11
乳液の製造:
下記成分の乳液を常法により製造した。得られた乳液の保存安定性は良好であった。
【0056】
(成分) (質量%)
ガンビール熱水抽出物 3.0
ステアリン酸 2.0
流動パラフィン 5.0
スクワラン 2.0
ソルビタンモノステアレート 1.5
ポリオキシエチレン(20) 2.0
ソルビタンモノステアレート
パラオキシ安息香酸ブチル 0.05
グリセリン 2.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
香料 0.15
精製水 残部
【0057】
実 施 例 12
クリームの製造:
下記組成のクリームを常法により製造した。得られたクリームの保存安定性は良好であった。
【0058】
(成分) (質量%)
ウイッチヘーゼルバークエタノール抽出物 0.5
流動パラフィン 23.0
ワセリン 7.0
セタノール 1.0
ステアリン酸 2.0
ミツロウ 2.0
ソルビタンモノステアレート 3.5
ポリオキシエチレン(20) 2.5
ソルビタンモノステアレート
パラオキシ安息香酸ブチル 0.05
ヒアルロン酸 0.1
1,3−ブチレングリコール 1.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
乳酸菌培養液 5.0
香料 0.15
精製水 残部
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の抗酸化剤は、優れた抗酸化作用を有すると共に植物由来であるため安全性が高いものであり、飲食品や化粧料の品質劣化防止剤としても利用できる他、動脈硬化などの疾患の予防・治療などにも利用できる。

以 上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイッチヘーゼルバーク、ガンビール、ムクゲおよび石乳香よりなる群から選ばれる1種または2種以上を、水または親水性溶媒で抽出して得られる溶媒抽出物を有効成分とする抗酸化剤。
【請求項2】
1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジルラジカル消去活性を有するものである請求項第1項記載の抗酸化剤。
【請求項3】
低比重リポタンパク質の酸化抑制能を有するものである請求項第1項記載の抗酸化剤。


【公開番号】特開2006−104396(P2006−104396A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295556(P2004−295556)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000006884)株式会社ヤクルト本社 (132)
【Fターム(参考)】