説明

抗酸化及び老化抑制活性を有するハナズオウ抽出物及びそれを含む抗酸化、皮膚老化抑制及びシワ改善用化粧料組成物

本発明は、化学式1乃至化学式20で表される化合物を含む抗酸化活性及び抗老化活性を有するハナズオウ抽出物、ならびに、その抽出物を有効成分として含む、抗酸化用、皮膚老化保護用及びシワ改善用の化粧料組成物に関するものである。本発明の抽出物は、酸化的損傷及び皮膚損傷に対する保護効果、ならびに老化依存性のテロメア短縮に対する抑制効果を有するため、皮膚老化保護用化粧料として有用に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、皮膚老化抑制活性を有する植物抽出物及びそれを有効成分として含む老化抑制用化粧料組成物に関するもので、詳細には酸化的ストレスに対する抑制活性及び皮膚細胞寿命延長効果が優秀なハナズオウ抽出物を含む皮膚老化抑制用化粧料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背景
老化は、時間の経過と共に起きる身体のすべての生理的変化を総称するもので、個体により数多くの要因によりとても多様に起きる生命現象である。老化は、個体毎にその様相と速度が異なり、一個体内においても各組織毎にその様相が異なるため、老化を個体水準で研究するには多くの難しさがある。一方、老化現象を具体的に詳しく見てみると、各構成器官及び組織の機能変化が起きるもので、これは構成単位である細胞の機能変化に起因する。即ち、脳の神経細胞消失により認知機能が低下したり、皮下脂肪細胞の消失により皮膚の弾力が減少したり、毛根メラニン細胞がメラニン色素生成能力を失うことにより髪の毛が白くなる等、個体の老化は結局その個体を構成する細胞の老化に起因する。ゆえに、最近では老化の研究も細胞水準で多く行われている。この数十年間数多くの科学者らが細胞の老化に関して研究してきたが、老化の多様な現象と複合的な特徴のため、いまだ正確なメカニズムを糾明できずにいる。しかし、多数の現象学的研究を通じて老化に関する様々な仮説が提起され、その中で正常的な代謝過程で発生する活性酸素による酸化的ストレス(oxidative stress)が蓄積され老化の原因になるという老化の活性酸素説と染色体末端部分にあるテロメア(telomere)が細胞分裂を繰り返すにしたがって漸次消失して細胞分裂が停止し、結局死滅に至るという老化のテロメア説が関心を集めている。その他にも様々な仮説があるがこのような仮説は、お互いに相反するものではなくお互いに補完的に老化を説明している。老化の活性酸素説というのは、正常的な代謝過程で付随的に生成される活性酸素は、反応性が強くて細胞構成成分の脂質、タンパク質、糖、またはDNA等を非選択的、非可逆的に破壊して細胞や組織の酸化的ストレスを誘発させることにより、癌を始めとする脳卒中及び粥状動脈硬化のような心血関係疾患、リューマチのような慢性炎症疾患、呼吸器疾患または自己免疫疾患等の各種疾病を誘発するだけではなく(Halliwell,B and Gutteridge,J.M.C,Biochem.J.,1984年,第219巻,1−14頁;Freeman,B.A.and Grapo,J.D.,Lab Invest,1982年,第47巻,412−426頁;Ames,B.N.,Science,1983年,第221巻,1256−1264頁;Fridovich,I.,Arch.Biochem.Biophys.,1986年,第247巻,1−11頁;Vishwanath,M.S.,Nutrition in Clinical Practice,1995年,第10巻,19−25頁)、このような酸化的損傷が長い時間蓄積されて老化と死に至るというものである。このような老化の活性酸素説は、1956年にハルマン(Harman)によって始めて提案され(Harman,D.,Free radical theory of aging,Alan R Liss,New York,1986年,3−49頁)、以後、色々な実験結果が前記仮説を裏付けいている。実験条件を変えて食餌を制限したり運動量を減少させる等、基礎代謝率、即ち、酸素消費量を減少させることにより寿命が延長されることが観察された(Medvedev,Z.A.,Biol.Rev.,1990年,第65巻,375−398頁;Loe,J.,Northrop,J.H.,J.Biol.Chem.,1971年,第32巻,103−121頁;Sohal,R.S.,Insect aging,Springer−Verlag,Heidelberg,1986年,23−44頁;Sohal,R.S.,Aging,1982年,第5巻,21−24頁)。
【0003】
一方、生体内には酸化的損傷から防御するための抗酸化物質等とスーパーオキシドジスムターゼ(superoxide dismutase,以下「SOD」と略称する)、カタラーゼ(catalase)またはペルオキシダーゼ(peroxidase)のような抗酸化酵素が存在する。年を取って老いるにつれて活性酸素に対する防御能力が減少するという事実が報告された(Orr,W.C.and Sohal,R.S.,Science,1994年,第263巻,1128−1130頁;Sohal,R.S.等,J.Biol.Chem.,1995年,第270巻,15671−15674頁)。即ち、年老いたネズミの肝から分離されたSODは、若いネズミのSODより活性が低く、特にショウジョウバエに抗酸化酵素のSODとカタラーゼの活性を高めると寿命が30%以上増加し、活性酸素と老化が密接な関連があることが分かる。したがって、活性酸素を消去できる物質や脂質過酸化抑制物質のような抗酸化剤は、活性酸素によって誘発される各種疾患治療剤及び老化予防のための抑制剤として期待を集めている。
【0004】
また、大気汚染、紫外線露出、ストレスまたは疾病等の有害環境から酸化的ストレスに継続的に露出すると、体内にラジカルが増加して真皮の結合組織であるコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸等を破壊して皮膚の一定部位沈下現象(シワ)を作り得る。また、細胞膜の脂質部分を酸化させ細胞の破壊現象を起こして皮膚炎、ニキビまたは皮膚癌等の疾病を誘発し得る。その他にもラジカルは、メラニン形成過程に関与してシミ、そばかす及びシワ生成の原因になったりする。以前からアスコルビン酸、α−トコフェロールまたはSOD等が自由ラジカル消去機能物質として化粧料や医薬品に配合され、シワ及びその他皮膚疾患を防止するために使用されてきたが、これらの価格が高価なだけではなく配合時の化学的安定性が良くないため実質的な効果を期待することが難しい問題点があった。そのような理由から安全でありながら自由ラジカル消去効果が高い物質を開発することが医薬品や食品分野だけだはなく化粧品産業分野にも重要な課題として台頭し多くの研究が進められている。
【0005】
老化現象を理解するためのまた一つの理論として、老化のテロメア仮説がある。ヒトの正常細胞は、生体外(in vitro)で決められた回数だけ細胞分裂をしてそれ以上分裂しない。これを複製老化というが、このような現象がなぜ起きるのかを説明するのがテロメア仮説である(Kim,S.H.,等,Oncogene,2002年,第21巻,503−511頁;Harley,C.B.,等,Nature,1990年,第345巻,458−460頁;Olovnikov,A.M.J.Theoret.Biol.1973年,第41巻,181−190頁;Harley,C.B.,Exp.Gerontol.1992年,第27巻,375−382頁;Allsopp,R.C.,Weissman,I.L.,Oncogene,2002年,第21巻,3270−3273頁)。テロメアは、真核細胞線形染色体の末端部分にTTAGGG塩基配列が反復する特異な構造からなっている。特に、グアニン(G)は、水素結合により非常に安定なG−四分体(quartet)構造を形成することにより染色体を安定化させ染色体を保護するのに重要な役割を果たす(Moyzis,R.K.,等,Proc.Natl.Acad.Sci.1988年,第85巻,6622−6626頁)。しかし、ヒトの体細胞は、細胞分裂をする度にテロメアの長さが段々減少することが明らかにされた(Harley,C.B.,Futcher,A.B.,Greider,C.W.,Nature,1990年,第345巻,458−460頁;Harley,C.B.等,Exp.Gerontol.1992年,第27巻,375−382頁;Allsopp,R.C.,Weissman,I.L.,Oncogene,2002年,第21巻,3270−3273頁)。このような現象は、DNAが複製される時、3’−末端のプライマー部分が複製されない、いわゆる「末端複製問題(End replication problem)」のために起きる(Olovnikov,A.M.J.Theoret.Biol.1973年,第41巻,181−190頁)。ゆえに、細胞は一度分裂する度にプライマー部分だけ短いDNAが複製され、分裂を重ねるにつれて染色体のテロメアの長さが短くなり臨界長さ以下になるとDNAの単一鎖と二重鎖が切れて、結局、サイクリン依存キナーゼ(cyclin dependent kinase)の抑制剤等を誘導させ細胞分裂がG1期に停滞する(Harley,C.B.等,Exp.Gerontol.1992年,第27巻,375−382頁)。最近の研究によると、テロメアの長さは、酸化的ストレスの影響を受けるものと明らかにされた。即ち、酸化的ストレスはテロメア短縮速度を増加させる。これは酸化的損傷が染色体の他の部分に比べてテロメリックDNA部分が不十分に復旧されるためであると考えられている(Saretzki,G.,von Zglinicki,T.,Ann.New York Acad.Sci.2002年,第959巻、24−29頁;von Zglinicki,T.,Ann.New York Acad.Sci.2000年,第908巻,99−110頁;von Zglinicki,T.,TRENDS Biochem.Sci.2002年,第27巻,339−344頁;Lorenz,M.,等,Free Radic.Biol.Med.2001年,第31巻、824−831頁)。
【0006】
このような老化の理論に基づき植物から皮膚老化を抑制させられる物質を探した。植物は、光合成過程で副産物としてスーパーオキサイドラジカル(superoxide radical)を始め色々な活性酸素が生成されるため、このような酸化的ストレスから自らを保護できる防御体系が良く発達しているものと考えられる。ゆえに、植物はそれ自体が抗酸化物質を含有している重要な資源になり得る。それで、350余種の植物を対象にラジカル消去活性及び脂質過酸化抑制活性を調査して、抗酸化活性がある数種の候補植物を選定した。文献考察及び資源確保の容易性等を考慮して、比較的成分及び活性に関する報告がなく資源確保が容易なハナズオウ(Cercis chinensis)を最終候補植物に選定した。
【0007】
ハナズオウ(Cercis chinensis)は、マメ科(Leguminosae)に属する落葉潅木であり中国原産である。高さは、3乃至5mで小さい枝には毛がなく、数個の皮目がある。葉は、互生して単葉で、形は丸い心臓型で、直径は6乃至11cmで毛はなく縁が単調である。葉の表は濃い緑色で、潤気が出て、裏面は薄緑である。托葉は四角形で、早く散る。花は長さが1乃至2cmで、葉のわきが数房付き、花がなく花梗だけがある。萼は鐘模様で、外側の縁に5個の鈍いノコギリ葉がある。花冠は蝶模様で紫紅色で、花びらは5枚で大きさが一定ではない。雄しべは10個で、分離している。基部は萼内に付いている。花糸は細長い。雌しべは1つで、子房は光沢があり、毛はなく、袋がある。花柱上部分は曲がっていて、柱頭は短くて小さく、押されて扁平になった模様である。開花期は、4月頃で葉より先に咲く。実は莢果で扁平な帯模様で、端は少し収縮して短いくちばし模様である。さやは長さ7乃至12cmで8〜9月に熟し、種子は丸く扁平で黒色に近い(李永魯、原色韓国植物図鑑、教学社、ソウル、1996年、362−363頁)。漢方薬では、ハナズオウの樹皮、根皮、木質部、実、花等を各々紫荊皮、紫荊根皮、紫荊木、紫荊果、紫荊花といい、風寒湿痺、通経、生理痛、喉痺、淋疾、血液循環促進等に使用している(Bae, K.H.,The medicinal plants of Korea,Kyo−Hak Publishing,Seoul,Korea,2000)。
【0008】
本発明者らは、ハナズオウから分離した抽出物が合成抗酸化剤とは異り人体に無害で、他の天然抗酸化剤に比べて酸化的ストレスに対する細胞保護活性が優秀であるだけではなく、テロメアの長さの短縮速度を遅くすることにより細胞寿命を延長させられるため老化防止、皮膚弾力保護またはシワ改善のための化粧料組成物として有用に使用できることを確認することにより本発明を完成した。
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
本発明の目的は、水またはアルコール水溶液を抽出溶媒に使用して抽出した抗酸化用、皮膚老化抑制用、皮膚弾力保護用またはシワ防止用ハナズオウ抽出物を提供することである。
【0010】
また、本発明の別の目的は、前記抽出物またはそれから分離した化学式1乃至化学式20で表される化合物からなる群から選択された化合物を有効成分として含む抗酸化用、皮膚弾力保護用またはシワ改善用化粧料組成物を提供することである。
【0011】
また、本発明の別の目的は、前記抽出物を有効成分として含む薬学的組成物を提供することである。
【0012】
また、本発明の目的は、本発明の前記抽出物を製造する方法を提供することである。
【0013】
発明の詳細な説明
前記目的を達成するために、本発明は、水またはアルコール水溶液を抽出溶媒に使用して抽出した抗酸化用、皮膚老化抑制用、皮膚弾力保護用またはシワ防止用ハナズオウ抽出物を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記抽出物またはそれから分離した化学式1乃至化学式20で表される化合物からなる群から選択された化合物を有効成分として含む抗酸化用、皮膚老化抑制用、皮膚弾力保護用またはシワ改善用化粧料組成物を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記抽出物を有効成分として含む薬学的組成物を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記抽出物を製造する方法を提供する。
【0017】
本発明を、以下で詳細に説明する。
【0018】
本発明は、水またはアルコール水溶液を抽出溶媒に使用して抽出した抗酸化用、皮膚老化抑制用、皮膚弾力保護用またはシワ防止用ハナズオウ抽出物を提供する。
【0019】
本発明者らは、老化の活性酸素説に基づき140余種の生薬と全国で採集した210余種の植物を対象に抗酸化活性を検索して、数種の候補植物を選定し、その中で資源確保が容易で抗酸化活性に関する報告がなかったハナズオウの抽出物から抗酸化活性を確認した。本発明に使用したハナズオウは、2001年9月中旬、大徳研究団地及び忠南大学校で採集したものを植物図鑑と比較して確証した。確証標本(HK1122)は、(株)韓国新薬慈光研究所に保管されている。
【0020】
本発明のハナズオウ抽出物を製造するのに使用した溶媒は、アルコール水溶液である。前記アルコール水溶液は、メタノール水溶液、エタノール水溶液、プロパノール水溶液及びブタノール水溶液からなる群から選択することが好ましい。また、前記アルコール水溶液は、エタノール水溶液であることが好ましく、エタノール水溶液は50乃至80%エタノール水溶液であることが好ましく、60%エタノール水溶液であることがさらに好ましい。
【0021】
本発明において、ハナズオウ抽出物は、前記したハナズオウのアルコール粗抽出物、好ましくはエタノール(EtOH)粗抽出物をヘキサン、エチルアセテート(EtOAc)及びブタノール(BuOH)で抽出して各々の分画を収得した後、抗酸化活性を示すエチルアセテート画分及びブタノール画分からクロマトグラフィー過程を経て製造され、エチルアセテート画分及びブタノール画分から下記化学式1乃至化学式20で表される化合物を含む抽出物が収得される(図4及び図5参照)。また、構造分析の結果、本発明で収得した化学式15で表される化合物(シリンゲチン−3−O−(2”−O−ガロイル)−ルチノシド)は、現在まで報告されていない新規な化合物であることを確認した。
<化学式1>

<化学式2>

<化学式3>

<化学式4>

<化学式5>

<化学式6>

<化学式7>

<化学式8>

<化学式9>

<化学式10>

<化学式11>

<化学式12>

<化学式13>

<化学式14>

<化学式15>

<化学式16>

<化学式17>

<化学式18>

<化学式19>

<化学式20>

【0022】
前記化学式1乃至化学式20で表される本発明の化合物の場合、ハナズオウ抽出物総重量に対して化学式6で表される化合物は、0.01乃至1.00重量%、化学式12で表される化合物は、0.01乃至1.00重量%、化学式5で表される化合物は、0.01乃至0.5重量%で含むことが好ましい。
【0023】
前記化学式1乃至化学式20で表される本発明の化合物は、ラジカル消去活性(1,1−Diphenyl−2−Pycryl−Hydrazyl radical scavenging activity)(表3参照)、脂質過酸化抑制活性(Lipid peroxidation inhibitory activity)(表4参照)、ヒドロキシルラジカル消去活性(Hydroxyl radical scavenging activity)とニトリックオキシド消去活性(nitric oxide scavenging activity)(表6参照)及びスーパーオキシドラジカル消去活性(Superoxide radical scavenging activity)(表5参照)等の抗酸化活性を有する。
【0024】
好気性生物体は、酸素を使用してエネルギー代謝を行っているが、生体内酸素が各種物理的、化学的及び生物学的なストレスを受けるとスーパーオキシド陰イオンラジカル(superoxide anion radical)、過酸化水素及びヒドロキシラジカル(hydroxy radical)等の有害な活性酸素種(active oxygen species)に変化して人体に致命的な生理的障害を引き起こす。前記のような活性酸素種は、細胞生体膜の構成成分である不飽和脂肪酸を攻撃して過酸化反応を起こし、それにより生体内に蓄積された過酸化脂質は老化と各種疾病の原因になり得る。本発明では、前記の活性酸素種の消去機能及び脂質過酸化抑制能力を調査することにより、ハナズオウ抽出物の抗酸化活性を測定した。その結果、前記ハナズオウ抽出物は、既存の抗酸化物質として知られているビタミンE及び合成抗酸化剤の BHA(tert−butyl−4−hydroxyanisole)と活性が同等またはより高く現れ、前記結果からハナズオウ抽出物は、抗酸化活性が優秀な抽出物であることを確認できた。
【0025】
また、化学式1乃至化学式20で表される本発明の化合物は、t−ブチル過酸化物(t−BuOOH)で誘導される酸化的損傷に対する細胞保護活性(表7参照)、UV照射に対する細胞保護効果(図6a及び図6b参照)、無毛マウスでのUV照射に対する保護効果(図7参照)、UV照射による脂質過酸化の生成抑制活性(表8参照)、細胞寿命延長効果(図8参照)、テロメアの長さ延長効果(図9及び図10参照)を示す。即ち、本発明のハナズオウ抽出物及びそれから分離した活性成分は、抗酸化活性を示すだけではなく細胞老化抑制効果も優れていることがわかる。
【0026】
また、本発明は、前記ハナズオウ抽出物またはそれから分離した化学式1乃至化学式20で表される化合物から選択された化合物を有効成分として含む、抗酸化用、皮膚老化抑制用、皮膚弾力保護用またはシワ防止用化粧料組成物を提供する。
【0027】
本発明の化粧料組成物に含まれるハナズオウ抽出物から分離した活性成分は、化学式1(イソリキリチゲニン:イソリキリチゲニン)、化学式2(2’,4’−ジヒドロキシ−4−メトキシカルコン)、化学式3(リキリチゲニン)、化学式4(リスベラトロール)、化学式5(ピセアタンノール)、化学式6(没食子酸)、化学式7(没食子酸メチル)、化学式8(没食子酸エチル)、化学式9(ミリセチン)、化学式10(アフゼリン(afzelin))、化学式11(ケルシトリン)、化学式12(ミリシトリン)、化学式13(ミリセチン−3−O−(2”−O−ガロイル)−α−L−ラムノピラノシド)、化学式14(シリンゲチン−3−O−ルチノシド)、化学式15(シリンゲチン−3−O−2”−O−ガロイル)−ルチノシド)、化学式16((+)−カテキン)、化学式17((−)−エピカテキン−3−O−ガレート)、化学式18((−)−エピガロカテキン−3−O−ガレート)、化学式19((−)−リオニレシノール3a−O−β−D−キシロピラノシド)及び化学式20((+)−リオニレシノール3a−O−β−D−グリコピラノシド)で表される化合物からなる群から選択された化合物であることが好ましい。
【0028】
本発明の化粧料組成物において、ハナズオウ抽出物またはそれから分離した活性成分は、過酸化沮害活性及びラジカル除去活性が優秀で高い抗酸化活性を有し、細胞保護効果、細胞寿命延長効果等が優れ、皮膚老化抑制、皮膚弾力保護またはシワ改善のための化粧品試料として使用できる。
【0029】
本発明の化粧料組成物は、柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、エッセンス、パックまたは風呂用パウダーの基礎化粧品試料または皮膚外用剤の形で使用できる。
【0030】
化粧料組成物の製造時に油状成分の含量は油化能力補強及び経済性等を考慮して選択され、油状成分として主に使用されるオイルには、植物性オイル、鉱物性オイル、シリコン油及び合成油の中から選択された一つ以上を使用できる。それ以外に油化能力を補強するためには界面活性剤、高級アルコール等を0.1乃至5重量%添加できる。このような界面活性剤には、非イオン界面活性剤のような通常的な界面活性剤を使用でき、高級アルコールとしては炭素数が12乃至20のアルコールを単独または2種以上を混合して使用できる。
【0031】
また、化粧料組成物の製造時に水状成分は、粘度または硬度を調節するためにカーボマー、キサンタンガム、ベントナイト等の1種以上の増粘剤を0.001乃至5重量%さらに添加できる。
【0032】
また、本発明の化粧料組成物には必要に応じて、高級脂肪酸、ビタミン等の薬効成分と紫外線遮断剤、酸化防止剤、防腐剤、香料、着色剤、pH調節剤等の通常的な化粧品に使用される成分をさらに添加できる。
【0033】
本発明の好ましい態様では、本発明のハナズオウ抽出物を使用して柔軟化粧水、粘組成液、乳液、ローション及びクリームを製造した(表9乃至表11参照)。
【0034】
本発明のハナズオウ抽出物を含む化粧料組成物において、通常的に含有される化粧料組成物に本発明のハナズオウ抽出物が1乃至15重量%、好ましくは2乃至10重量%の量で添加する。
【0035】
また、本発明は、前記ハナズオウ抽出物を有効成分として含む、抗酸化用及び老化抑制用薬学的組成物を提供する。
【0036】
本発明のハナズオウ抽出物を有効成分として含む、抗酸化用及び老化抑制用薬学的組成物は、活性酸素による細胞構成成分の酸化により誘発される疾患の治療または予防に有用に使用できる。このような疾患としては例えば、癌、老化、冠状心臓疾患、高脂肪血症、動脈硬化、多発性硬化症、自己免疫性脳脊髄炎、脳卒中、アルツハイマー病及び腸炎等があり、必ずしもこれに限定されない。
【0037】
ハナズオウ抽出物を有効成分として含む薬学的組成物は、通常的に使用される賦形剤、崩解剤、甘味剤、滑沢剤、香味剤等をさらに含むことができ、通常的な方法により錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、その他液剤に剤形化できる。
【0038】
詳細には、本発明のハナズオウ抽出物を有効成分として含む薬学的組成物は、経口投与用剤形、例えば錠剤、トローチ、ロゲンジ(lozenge)、水溶性または油性懸濁液、調剤粉末または顆粒、エマルジョン、ハードまたはソフトカプセル、シロップまたはエリキシル剤(elixirs)に製剤化される。錠剤及びカプセル等の剤形に製剤するためにはラクトース、スクロース、サッカロース、ソルビトール、マニトール、澱粉、アミロペクチン、セルロースまたはゼラチンのような結合剤、ジカルシウムホスファートのような賦形剤、トウモロコシ澱粉またはサツマイモ澱粉のような崩解剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマール酸ナトリウムまたはポリエチレングリコールワックスのような潤滑油が含有される。カプセル剤形の場合は、前記で言及した物質以外にも脂肪油のような液体担体を含有する。
【0039】
また、本発明のハナズオウ抽出物を有効成分として含む薬学的組成物は、非経口で投与でき、非経口投与は、皮下注射、静脈注射、筋肉内注射または胸部内注射注入方式による。非経口投与用剤形としては、製剤化するためには本発明のハナズオウ抽出物を安定剤または緩衝剤と共に水に混合して溶液または懸濁液に製造してそれをアンプルまたはバイアルの単位投与形に製剤する。
【0040】
本発明の有効成分の投与量は、体内で活性成分の吸収度、不活性化率及び排泄速度、患者の年齢、性別及び状態、治療する疾病の重症程度により適切に選択され、経口投与剤の場合一般的に成人に1日に体重1kg当り本発明のハナズオウ抽出物を2〜200mgの量で1回乃至数回に分けて投与でき、10〜100mgの量で投与することが好ましい。
【0041】
また、本発明は、前記ハナズオウ抽出物の製造方法を提供する。
【0042】
本発明のハナズオウ抽出物の調製方法は、
1)ハナズオウの微粉砕粉末をアルコールで粗抽出する工程;
2)前記工程1のアルコール粗抽出物をヘキサン、エチルアセテート、ブタノールの順に抽出する工程;
3)前記工程2のエチルアセテート画分またはブタノール画分を収得してメタノール:水の濃度勾配カラムクロマトグラフィーを実施する工程;及び
4)前記工程3の抗酸化活性画分を収得してカラムクロマトグラフィー、TLCまたはHPLCを実施して最終抗酸化抽出物を得る工程からなる。
【0043】
工程1において、アルコールはメタノール、エタノール、プロパノールまたはブタノールであることが好ましく、その中でもエタノールが好ましい。前記でエタノールは60%エタノールが最も好ましい。本発明の好ましい実施例では、0%乃至100%の濃度のハナズオウエタノール粗抽出物を使用してDPPHラジカル消去活性を測定した結果、60%エタノール粗抽出物の活性が最も高かった(図2参照)。
【0044】
実施例
本発明の実践的かつ現在好ましい態様を、以下の実施例により詳細に説明する。
【0045】
但し、下記の実施例は本発明を例示するだけのものであり、本発明の内容が下記の実施例の内容によって限定されるものではない。
【0046】
実施例1:ハナズオウからの有効成分抽出
<1−1>第1次抗酸化活性画分分離
ハナズオウから抗酸化活性を示す有効成分を抽出するために図1の模式図に示した順序で実験を進行した。詳細には、陰乾したハナズオウの葉と茎1kgを磨砕器でおろして粉末にし、エタノールで室温で2週間ずつ2回抽出した。ここで、エタノールの濃度を0%から順次的に10%ずつ増やして最終100%エタノールを調製した後、それを使用して抽出した。エタノールの濃度による抽出物の抗酸化活性を確認するためにDPPH(1,1−Diphenyl−2−Pycryl−Hydrazyl)方法を遂行して抗酸化活性を測定した(Taco,T.等,Biosci.Biotech.Biochem.,1994年,第58巻,1780−1783頁;Na,M.K.等,Nat.Prod.Sci.,2002年,第8巻,26−29頁)。DPPHは、比較的安定な自由ラジカルで、ラジカル状態で存在時に517nmで最大吸光度を示し、消去されると吸光性を失うためこのような原理を使用して抗酸化活性を測定する方法である。詳細には、ハナズオウの濃度別エタノール抽出物を取って、DMSO(Sigma)を使用して3.125、6.25、12.25、25及び50μg/mlに希釈した後、96ウェルプレートに前記溶液10μlずつを各々入れ2×10−4M/mlエタノール濃度のDPPH(Sigma,St.Louis,Mo,USA)溶液190μlを入れ室温で30分間放置した後、517nmでOD517を測定した。対照群には、試料の代わりにDMSOを加え試料の吸光度減少程度を調査した。DPPHラジカル消去活性を下記の数式1により計算して、DPPHラジカルを50%消去させる試料の濃度をIC50と定めた。
【0047】
<数式1>
DPPHラジカル消去活性(%)=(Acontrol−Asample)/Acontrol×100
control:試料を添加していない対照群の吸光度
sample:試料を添加した反応群の吸光度
【0048】
その結果、抽出時に使用したエタノールの濃度が増加するにつれDPPHラジカル消去活性は増加した。0%、10%、20%及び90%エタノール抽出物は、ラジカル消去活性が低い反面、程度の差があるが30%、40%、50%、60%、70%、80%及び100%エタノール抽出物の場合、大体的にラジカル消去活性が高かった。特に、60%エタノール抽出物の場合、抽出物の濃度増加によるラジカル消去活性が最も高く、IC50値が26.6で最も低く、エタノール抽出物中で最も高い抗酸化活性を示す抽出物であることが分かった(表1及び図2)。
【0049】
(表1)

【0050】
前記で60%エタノール抽出物のDPPHラジカル消去活性が最も高いことを確認した後、それから溶媒別抽出物を収得した。詳細には、60%エタノール抽出物を蒸溜水で懸濁させた後、ヘキサンで3回抽出して減圧濃縮してヘキサン分画(Fraction,以下「Fr」と略称する)11gを得た。残った懸濁液をエチルアセテートで3回抽出して減圧濃縮してエチルアセテート画分(以下「EtOAc Fr」と略称する)25gを得た。残った懸濁液を再び水泡化させたブタノール(butanol,BuOH)で3回抽出して減圧濃縮してブタノール画分(以下「BuOH Fr」と略称する)19gを得た。そして、残った分画20gは、水分画と見なした(図1)。
【0051】
前記で溶媒抽出したヘキサンFr、EtOAc Fr及びBuOH Frから抗酸化活性がある分画をさがすために、前記と同様な方法で各分画別抽出物を使用してDPPHラジカル消去活性を測定した。ここで、DPPHラジカル消去活性が高いと知られているビタミンEを比較群に使用した。
【0052】
その結果、EtOAc FrとBuOH Frの場合、IC50値が各々24.0と27.0μg/mlと現れ比較群に使用したビタミンE(IC50 24.9μg/ml)と類似な程度の強い活性を示したが、他の分画物は活性が微弱だった(図3)。
【0053】
<1−2>第2次抗酸化活性画分の分離
前記実施例<1−1>の結果にしたがい活性が強いEtOAc Fr及びBuOH Frに対して下記のカラムクロマトグラフィーを実施して、その結果収得された各々の分画に対して再び抗酸化活性実験を行なって高い活性を示す分画だけを選択した。
【0054】
まず、EtOAc Fr(25g)に対してメタノール:水(1:4→1:0)を移動相にYMCカラムクロマトグラフィー(カラムサイズ:5×30cm)を実施して11個の小分画(Fr.1〜Fr.11)を得た。前記11個の小分画中のFr.1(3.6 g)を再びYMCカラムクロマトグラフィー(カラムサイズ:3×30cm)を行なって5個の小分画(Fr.1−1〜Fr.1−5)を得た。その中のFr.1−1(450mg)にHPLC[カラム:μBondapakTM18(3.9×300mm,水)、移動相:ACN:0.1%TCA(16:18)、流速:1ml/分、UV:280nm]を実施して滞留時間(retention time,以下「t」と略称する)が各々11.1分と6.2分の化合物18mg及び21mgの化合物を得て、各々を「CCEA111」及び「CCEA112」と命名した。
【0055】
次に、Fr.1−2(500mg)に対して分取用HPLC[YMC−Pack ODS−Aカラム(20×250mm)、移動相:メタノール:水(3:7)、流速:6ml/分、UV:254nm]を実施してtが16分の化合物77mg及びtが24分の化合物19mgを得て、各々を「CCEA1211」及び「CCEA1212」と命名した。
【0056】
次に、Fr.3(4.8g)に対して分取用HPLC[YMC−Pack ODS−Aカラム(20×250mm)、移動相:ACN:0.1%TCA(25:75)、流速:6ml/分、detector:UV(280nm)]を実施してtが24.5分の化合物19mgを得て、「CCEA33」と命名した。
【0057】
次に、Fr.4(4.0g)は、移動相クロロホルム:メタノール(85:15)でシリカゲルカラムクロマトグラフィー(4×25cm、230−400メッシュ)を実施して、再び6個の小分画(Fr.4−1〜Fr.4−6)に分けた。その中のFr.4−1(320mg)に対して分取用HPLC[移動相:メタノール:水(35:65)、流速:6ml/分、UV:254nm]を実施して、tが25分の化合物30mgを得て、それを「CCEA413」と命名して、Fr.4−4(1g)もまた分取用HPLC[移動相:メタノール:水(1:1)、流速:6ml/分、UV:254nm]を実施して、tが15分の化合物57mgを得て、「CCEA442」と命名した。
【0058】
次に、Fr.6(2.2g)は、移動相クロロホルム:メタノール(10:1)でシリカゲルクロマトグラフィー(3×30cm、230−400メッシュ)を実施して、3個の小分画(Fr.6−1〜Fr.6−3)に分けた。その中のFr.6−2(200mg)に対して分取用HPLC[移動相:メタノール:水(1:1)、流速:6ml/分、UV:254nm]を実施してtが20分の化合物25mgを得て、それを「CCEA622」と命名した。
【0059】
次に、Fr.8(2.1g)に対して移動相溶媒にクロロホルム:メタノール(10:1)を使用したシリカゲルクロマトグラフィーを実施して化合物20mgを得て、それを「CCEA82」と命名した。前記CCEA82を分離して残った分画物をメタノールに溶解して再結晶させて収得した化合物10mgを「CCEA83」と命名した。
【0060】
次に、Fr.9(2.8g)に対して移動相クロロホルム:メタノール(15:1)でシリカゲルクロマトグラフィーを実施して2個の小分画(Fr.9−1〜Fr.9−2)に分けた。その中のFr.9−1(220mg)に対して分取用HPLC[移動相:メタノール:水(4:1)、流速:6ml/分、UV:254nm]を実施して、tが25分の化合物32mgを得てそれを「CCEA913」と命名した(図4)。
【0061】
BuOH Fr(19g)に対しても、メタノール:水(0:1→1:0)を移動相にしてYMCゲルカラムクロマトグラフィー(カラムサイズ:5×30cm)を実施して8個の小分画(Fr.1〜Fr.8)を得た。
【0062】
Fr.2(3.8g)を移動相クロロホルム:メタノール:水(70:30:5)でシリカゲルカラムクロマトグラフィー(3×30cm、230−400メッシュ)を実施して再び5個の小分画(Fr.2−1〜Fr.2−5)に分けた。その中のFr.2−3(420mg)に対して分取用HPLC[移動相:アセトニトリル:水(18:82)、流速:6ml/分、UV:254nm]を実施してFr.2−3−1及び2−3−2を得た。その中のFr.2−3−1に対して再び分取用HPLC[移動相:アセトニトリル:水(10:90)、流速:6ml/分、UV:254nm]を実施して、tが15分の化合物32mgを得てそれを「CCBt231」と命名した。
【0063】
次に、Fr.5(3g)を移動相クロロホルム:メタノール:水(70:30:5)でシリカゲルカラムクロマトグラフィー(3×30cm、230−400メッシュ)を実施して、再び4個の小分画(Fr.5−1〜Fr.5−4)に分けた。その中のFr.5−2(300mg)に対して分取用HPLC[移動相:メタノール:水(35:65)、流速:6ml/分、UV:254nm]を実施して、tが25分の化合物20mg及びtが30分の化合物13mgを得て、それを各々「CCBt521」及び「CCBt522」と命名した。また、Fr.5−3(600mg)に対して30%メタノールを移動相に使用してYMCゲルカラムクロマトグラフィー(カラムサイズ:3×30cm)を実施して、再び4個の小分画(Fr.5−3−1〜Fr.5−3−4)に分離した。その中のFr.5−3−3から沈澱して生じた物質を精製して化合物29mgを得、それを「CCBt533」と命名した。
【0064】
次に、Fr.6(3.2g)を再びYMCカラムクロマトグラフィー(カラムサイズ:3×30cm)を実施して4個の小分画(Fr.6−1〜Fr.6−4)を得た。その中のFr.6−2(370mg)に対して分取用HPLC[移動相:メタノール:水(3:7)、流速:6ml/分、UV:254nm]を実施して、tが26分の化合物9mg及びtが28分の化合物16mgを得て、それを各々「CCBt622」及び「CCBt623」と命名した。また、Fr.6−4(200mg)に対して分取用HPLC(移動相:メタノール:水(4:6)、流速:6ml/分)を実施して、tが18分の化合物5mgを得てそれを「CCBt641」と命名した。
【0065】
次に、Fr.7(1.9g)を移動相クロロホルム:メタノールでシリカゲルクロマトグラフィー(カラムサイズ:3×30cm)を実施して4個の小分画(Fr.7−1〜Fr.7−4)を得た。Fr.7−2(50mg)を再び移動相80%メタノールでセパデクスLH−20カラムクロマトグラフィー(カラムサイズ:3×30cm)を実施して5個の小分画(Fr.7−2−1〜Fr.7−2−5)に分けた。その中のFr.7−2−2をメタノールで再結晶させて化合物9mgを得て、それを「CCBt722」と命名した。また、沈澱で析出したFr.7−2−4を精製して化合物10mgを得て、それを「CCBt724」と命名した(図5)。
【0066】
<1−3>分離した化合物の構造分析
前記実施例<1−2>で分離した21種の分画物の構造を分析した。詳細には、分離した化合物の融点は、電気的温度融点分析機(electrothermal melting point apparatus)(Electrothermal Eng.Ltd.,AZ 9003)を使用して、旋光度は、DIP−370デジタル旋光計(polarimeter)(JASCO)を使用して、IRスペクトルは、IRレポート100分光光度計(JASCO)を使用して、質量分析は、タンデム質量分析計(Jeol,JMS HX−110/110A)を使用し、NMR分析は、NMR分光光度計(Bruker,NMR AMX−600 spectrometer)を使用して、ガスクロマトグラフィーは、STAR 3400CX GC(Varian)を使用して製造社の指針にしたがって分析した。分析した融点、旋光度、IRスペクトル、質量、NMR分析結果を使用して各化合物の構造を決定した。
【0067】
その結果、構造分析した化合物は、下記の表2に示したようにカルコン系、スチルベン系、フェノール系、フラボノール系、フラバノール系及びリグナン系で表される群れで特定づけられた。各々は、化学式1乃至化学式20で表される化合物であることが分かった。また、分析した化合物中に化学式15で表される化合物(シリンゲチン−3−O−(2”−O−ガロイル)−ルチノシド)は、下記のような特性を有しその内容から前記化合物は新規な化合物であることが分かった。
【0068】
<化学式15の特性>
薄い黄色パウダー、
FeCl、Mg−HCl、Zn−HClテスト:陽性
陽性FAB−MS:m/z 823[M+H]
[α]−80(c 0.1,MeOH)
IR νmax cm−1:3400(−OH)、1650(C=O)、1610,1500,1455(aromatic C=C)、1200,1020(glycosidic C−O)
UV λmax nm(log ε):257(3.60),360(3.82)
H−NMR(600MHz,DMSO−d6):7.46(2H,s,H−2,6),6.91(2H,s,ガロイル−2,6),6.48(1H,d,J=1.8Hz,H−8),6.21(1H,d,J=1.8Hz,H−6),5.48(1H,d,J=7.2Hz,glc−1),4.49(1H,s,rham−1),3.84(6H,s,OMe−3,5),3.70(1H,d,J=10.2Hz,glc−6),3.38(1H,d,J=10.2Hz,glc−6),1.00(3H,d,J=5.0Hz,rham−6)
13C−NMR(150MHz,DMSO−d6):156.3(C−2),133.1 (C−3),177.3(C−4),161.1(C−5),98.6(C−6),164.0(C−7),93.9(C−8),156.4(C−9),104.0(C−10),119.7(C−1),106.9(C−2,6),147.4(C−3,5),138.6(C−4),100.8(glc−1),76.4(glc−2),74.9 (glc−3),70.1(glc−4),74.3(glc−5),66.7(glc−6),101.0(rha−1),70.2(rha−2),70.5(rha−3),71.7(rha−4),68.3(rha−5),17.6(rha−6),165.3(C=O),120.4(ガロイル−1),108.7(ガロイル−2,6),145.3(ガロイル−3,5),137.9(ガロイル−4)。
【0069】
(表2)

【0070】
実施例2:DPPHラジカル消去活性(DPPH radical scavenging activity)の測定
本発明者らは、前記実施例1で分離した化学式1乃至化学式20で表される化合物を含む抽出物の抗酸化活性を測定するために前記実施例1と同一な方法でDPPHラジカル消去活性を測定した。ここで、合成抗酸化剤のBHA(タート−ブチル−4−ヒドロキシアニソール)及びα−トコフェロールを陽性対照群に使用した。
【0071】
その結果、フェノール酸及びフラボノイド化合物等が濃度依存的に強いラジカル消去活性を示した。スチルベン化合物も比較的強いラジカル消去活性を示した。特に、没食子酸を始めとするガロイルエステルが強い活性を示した。詳細には化学式6(没食子酸)、化学式7(没食子酸メチル)、化学式8(没食子酸エチル)、化学式17((−)−エピカテキン−3−O−ガレート)、化学式18((−)−エピガロカテキン−3−O−ガレート)及び化学式13(ミリセチン−3−O−(2−O−ガロイル)−a−L−ラムノピラノシド)のIC50値は、各々5.1±0.4、5.3±0.3、7.0±1.1、6.8±0.5、6.7±0.4及び8.6±0.7g/mlで前記化合物間に顕著な活性の差は無かったが、これらの化合物すべてが陽性対照群に使用したα−トコフェロール(IC50 25.4±0.9g/ml)及びBHA(IC50 15.3±0.6g/ml)より顕著に強いラジカル消去活性を示した(表3)。
【0072】
ベンゼン環のortho−位置に電子供与グループ(electron donating group)が置換されているとフェノキシラジカルを容易に安定化させられるため、ラジカル消去活性が増加するものと知られている(Cuvelier,M.E.,Richard,H.,Berset,C.,Biosci.Biotechnol.Biochem.1992年,第56巻,324−325頁;Kikuzaki,H.,等,J.Agric.Food Chem.2002年,第50巻,2161−2168頁)。ガロイルグループの場合3個のヒドロキシルグループが鄰接した位置に置換されていて効果的にフェノキシラジカルを安定化させられるため強力なラジカル消去活性を示すものと思料される。表3に示したようにガロイルエステル以外にも化学式16((+)−カテキン)、化学式9(ミリセチン)、化学式10(アフゼリン)、化学式11(ケルシトリン)、化学式12(ミリシトリン)等のフラボノイド系化合物も強いラジカル消去活性を示した。これは、フラボノイド構造中に生成されたフェノキシラジカルを効果的に安定化させられるフェノリック置換基が存在するためと考えられる。即ち、電子供与能力が大きい置換基を有する化合物であるほどラジカル消去活性が増加する結果を示す。これは、ペッカリネン(Pekkarinen)等の報告と一致した(Pekkarinen,S.S.,等,J.Agric.Food Chem.1999年,第47巻,3036−3043頁)。
【0073】
(表3)

【0074】
実施例3:脂質過酸化抑制活性(Lipid peroxidation inhibitory activity)測定
本発明者らは、前記実施例1で分離した化学式1乃至化学式20で表される化合物の抗酸化活性を測定するために脂質過酸化抑制活性を測定した。脂質の酸化は、脂質過酸化物(lipid hydroperoxides)、コンジュゲートされた脂肪酸(HODEs)、エポキシ脂肪酸、マロンジアルデヒド(MDA)、4−ヒドロキシノネナル(4−hydroxynonenal,4−HNE)等の酸化物を生成させ細胞を構成する生体膜を直接損傷させたり他の細胞構成成分と2次的な反応を起こしたりして、様々な退行性疾患及び老化過程の重要な原因として知られている(Esterbauer,H.等,Free Radic.Biol.Med.,1991年,第11巻、81−128頁;Esterbauer,H.,Cheeseman,K.H.,Methods Enzymol.,1990年,第186巻,407−421頁;Jira,W.,等,Chem.Phys.Lipids,1996年,第84巻,165−173頁;Jira,W.等,Biosci,1998年,第53巻,1061−1071頁)。一般的に、ミトコンドリアやミクロゾーム等の細胞内電子伝達系で生成されたスーパーオキシドラジカルは、体内酵素反応を通じてHに転換され、それが再びカタラーゼやグルタチオンペルオキシダーゼのような酵素により毒性がない物に変換される。しかし、色々な要因により体内活性酸素が多く生成されるとHはフェントン(Fenton)反応(Fe2++H→Fe3++HO・+HO)やメタルカタライズされたハーバーウエイス反応(metal−catalysed Haber−Weiss reaction)(O2−+H→O+HO・+HO)を通じて反応性が大きいヒドロキシルラジカル(HO・)を発生させ脂質過酸化物を生成させ、これが再び体内 金属イオンと反応して脂質ラジカル(L・)や脂質ペルオキシラジカル(LOO・)を誘導して脂質過酸化連鎖反応を起こすものと良く知られている(Halliwell,B.,Gutteridge,J.M.C.,Free radicals in biology and medicine,3rd Edition,Oxford University Press,Oxford,1999年;Halliwell,B.,Gutteridge,J.M.C.,Biochem.J.,1999年,第219巻,1−14頁;Harman,D.,Free radical theory of aging.Alan R Liss,New York,1986年,3−49頁;Stadtman,E.R.,Levine,R.L.,Ann.NY Acad.Sci.,2000年,第899巻,191−208頁)。それで、電子供与能力を有する化合物は、結果的に脂質の過酸化を抑制できるものと受け入れられている。
【0075】
脂質過酸化抑制活性を測定することは、Fe2+/アスコルビン酸反応系により最終生成されたヒドロキシルラジカル(hydroxyl radical)が脂質を酸化させて生成するマロンジアルデヒド(MDA)をチオバルビツール酸(thiobarbituric acid,以下「TBA」と略称する)と反応させ分光学的方法で定量することである。詳細には、化学式1乃至化学式20で表される化合物試料各々10μlと10mgタンパク質/ml濃度のネズミの脳均質化物(Rat brain homogenate)50μl及び50mMリン酸緩衝液(phosphate buffer,pH7.4)740μlを混合した後、0.1mM FeSO・7Hと1mMアスコルビン酸(ascorbic acid)混合液200μlを入れて37℃で30分間反応させた。前記反応液に20%トリクロロ酢酸(trichloroacetic acid,以下「TCA」と略称する)(Sigma)250μlを加えて反応を停止させた後、1%TBA(Sigma)250μlを加えて100℃で10分間反応させた。前記反応液を10,000rpmで10分間遠心分離した後、532nmで吸光度を測定した。各試料の脂質過酸化抑制活性は、下記の数式2により算出した。脂質過酸化反応を50%抑制する濃度をIC50とした。比較群には、α−トコフェロール及びBHAを使用し、対照群には試料及び溶液を何も添加していないものを使用した。
【0076】
<数式2>
脂質過酸化抑制活性(%)=(Acontrol−Asample)/(Acontrol−Ablank)×100
control:試料を添加していない対照群の吸光度
sample:試料を添加した反応群の吸光度
blank:試料、TCA及びTBA溶液を添加していない吸光度
【0077】
その結果、フラボノイド系、スチルベン系及びフェノール酸系化合物が濃度依存的に強い脂質過酸化抑制活性を示した。特に、スチルベン系の化学式5(ピセアタンノール)は、IC50値が0.09±0.01g/mlで強力な脂質過酸化抑制剤として知られているBHA(IC50 0.11±0.02g/ml)と同じ程度の強い活性を示した。また、活性を検索した大部分のフラボノイド系化合物が強い脂質過酸化抑制活性を示した。詳細には、化学式9(ミリセチン)、化学式17((−)−エピカテキン−3−O−ガレート)、化学式18((−)−エピガロカテキン−3−O−ガレート)、化学式11(ケルシトリン)、化学式12(ミリシトリン)及び化学式13(ミリセチン−3−O−(2−O−ガロイル)−a−L−ラムノピラノシド)のIC50値が各々0.95±0.06、2.9±0.06、1.0±0.08、6.21±0.40、5.27±0.32及び4.73±0.41g/mlと現れ、陽性対照群に使用したα−トコフェロールより顕著に強い脂質過酸化抑制活性を示した(表4)。脂質過酸化抑制活性の場合も前記実施例2で実施したDPPHラジカル消去活性結果と同じく、ベンゼン環に電子供与グループが多く置換されているほどフェノキシラジカルを容易に安定化させるので活性が増加すると思料された。特に、フラボノイド系化合物の構造は、効果的にフェノキシラジカルを安定化させるだけではなく金属イオンをキレート化させられるため強力な脂質過酸化抑制活性を示すものと思料される。
【0078】
(表4)

【0079】
実施例4:ヒドロキシルラジカル消去活性(Hydroxyl radical scavenging activity)及びニトリックオキシド(nitric oxide)消去活性測定
ヒドロキシルラジカル(HO・)は、体内金属イオンまたはスーパーオキシドラジカルと反応して生成される。反応性がとても高く直接的に体内タンパク質、脂質及びDNAの酸化的損傷を起こすものと知られている。ニトリックオキシド(Nitric oxide,NO・)もまたスーパーオキシドラジカルと反応して反応性が強いフェノキシニトラート(ONOO)を生成することによりヒドロキシルラジカルと似た作用を示すものと知られている(Yan,L.J.,Sohal,R.S.,Free Radic.Biol.Med.,2000,29:1143−1150)。それで、本発明者らは、前記実施例1で分離した化学式1乃至化学式20で表される化合物の抗酸化活性を測定するためにハリウェルの方法(Halliwell,B.等,Anal Biochem.,1987,165,215−219)にしたがってヒドロキシルラジカル除去活性を測定した。詳細には、化合物をDMSOに溶解した試料10μl、リン酸緩衝液(20mM、pH7.4)、デオキシリボース(deoxyribose)5.6mM、FeCl 0.1mM、H 1mM及びアスコルビン酸0.1mMを混合して1mlになるようにして37℃で60分間反応させた。前記反応液に20%TCA250μl及び1%TBA溶液(50mM NaOHに溶解)250μlを添加して95℃で5分間熱反応させた。前記反応後、532nmで吸光度を測定した。ヒドロキシルラジカル消去活性は、下記の数式3によって計算した。陽性対照群にはBHA及びα−トコフェロールを使用した。
【0080】
<数式3>
ヒドロキシルラジカル消去活性(%)=(Acontrol−Asample)/(Acontrol−Ablank)×100
control:対照群ウェルの吸光度
sample:試料を添加した反応群ウェルの吸光度
blank:試料、TCA及びTBA溶液を添加していないウェルの吸光度
【0081】
ヒドロキシルラジカル消去活性を検索した結果、フラボノイド系、スチルベン系及びフェノール酸系化合物は、対照群と比較して12.7乃至54.0%程度の消去活性を示した。特に、化学式17((−)−エピカテキン−3−O−ガレート)、化学式18((−)−エピガロカテキン−3−O−ガレート)、化学式7(没食子酸メチル)、化学式8(没食子酸エチル)及び化学式13(ミリセチン−3−O−(2−O−ガロイル)−a−L−ラムノピラノシド)等ガロイルグループが置換された化合物が強いヒドロキシルラジカル消去活性を示した(表5)。
【0082】
また、ニトリックオキシド消去活性を検索した結果、化学式18((−)−エピガロカテキン−3−O−ガレート)、化学式17((−)−エピカテキン−3−O−ガレート)、化学式16((+)−カテキン)、化学式9(ミリセチン)等が比較的強い活性を示した(表5)。
【0083】
(表5)

【0084】
実施例5:スーパーオキシドラジカル消去活性(Superoxide radical scavenging activity)測定
スーパーオキシドラジカル(Superoxide radical,O2−)自体は、反応性が比較的弱いが、簡単にHに変換され結局、反応性が強いヒドロキシルラジカルを生成したり、ニトリックオキシド(nitric oxide,NO・)と反応したりして反応性が強いフェロキシニトラート(peroxy nitrite,ONOO)を生成してSH−グループの酸化、タンパク質チロシンの硝酸化(nitration)、脂質過酸化、DNA損傷等を起こす原因になる。それで、前記実施例1で分離した化学式1乃至化学式20で表される化合物の抗酸化活性を確認するために他の有害活性酸素類の前駆物質に作用するスーパーオキシドラジカル(Superoxide radical,O2−)の消去活性を測定した。スーパーオキシドラジカル消去活性は、スーパーオキシドを不均化(dismutation)させることによりスーパーオキシドを消去する酵素のスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の活性を測定して検索できる。本発明では、キサンチン/キサンチン酸化酵素(xanthine/xanthine oxidase)の酵素反応によるスーパーオキシド発生系及びニトロブルーテトラゾリウム(nitro blue tetrazolium,以下「NBT」と略称する)が還元されホルマザン(formazan)が生成される反応(NBT+2O2−→NBTH+2O)に対する試料の抑制程度を測定した。詳細には、96ウェルプレートに4mMキサンチン(xanthine,Sigma)50μl、250mM NBT(Sigma)50μl、50mMリン酸緩衝液(pH7.8、1mM EDTA)50μl及び試料10μlを入れた後、キサンチン酸化酵素(Sigma)40μlを入れて反応させた。前記反応後、時間別に各反応液を集めてELISA測定機で550nmで吸光度を測定した。各試料のスーパーオキシドラジカル消去活性は、下記の数式4に示したように対照群に対するNBTの還元減少程度として算出した。スーパーオキシドラジカルを50%消去させる試料の濃度をIC50とした。陽性対照群には、α−トコフェロール及びカフェー酸(caffeic acid)を使用して抗酸化効果を比較した。
【0085】
<数式4>
スーパーオキシドラジカル消去活性(%)=(Acontrol−Asample)/(Acontrol−Ablank)×100
control:試料を添加していない対照群ウェルの吸光度
sample:試料を添加した反応群ウェルの吸光度
blank:試料、TCAおよびTBAを添加していないウェルの吸光度
【0086】
その結果、フラボノイド系、スチルベン系及びフェノール酸系化合物が濃度依存的に強いスーパーオキシドラジカル消去活性を示した。特に、フラバン−3−オル(flavan−3−ol)の化学式17((−)−エピカテキン−3−O−ガレート)、化学式18((−)−エピガロカテキン−3−O−ガレート)及び化学式15(ミリセチン−3−O−(2−O−ガロイル)−a−L−ラムノピラノシド)のIC50値は、各々11.9±2.1、24.0±3.5及び13.2±2.5g/mlで、強力なスーパーオキシドラジカル消去剤として知られているカフェー酸(caffeic acid)(IC50 11.0±1.8g/ml)と同等の強い活性を示した。また、フラボノイド系及びフェノール酸系化合物が強いスーパーオキシドラジカル消去活性を示した。化学式9(ミリセチン)、化学式16((+)−カテキン)、化学式7(没食子酸メチル)及び化学式8(没食子酸エチル)のIC50値は、各々12.1±1.1、16.5±2.0、16.5±1.4及び15.8±1.6g/ml程度の強い活性を示した。しかし、カルコン系化合物の場合は、比較的活性が弱く現れた。スーパーオキシドラジカル消去活性の場合も、スーパーオキシドと反応して生成されたフェノキシラジカルを容易に安定化させられる構造を有する化合物が良い活性を示した。特に、ガロイルグループが置換された化合物が強い活性を示すことが確認された(表6)。
【0087】
(表6)

【0088】
実施例6:t−ブチル過酸化物で誘導される酸化的損傷に対する細胞保護活性
t−ブチル過酸化物は、細胞に入って自由ラジカル中間体(intermediate)で代謝され脂質過酸化を誘発させ、結局細胞損傷を起こすものと知られている。このような現象は、細胞と組織で起きる酸化的ストレスと類似していて、実質的な意味で酸化的ストレスによる老化抑制を評価できる有用な方法である。新生児表皮細胞のHEK−N/F細胞にt−ブチル過酸化物1.5mMを3時間処理した結果、細胞の生存率が11.2±1.2%程度に顕著に減少した反面、分離された化合物を50.0g/mlの濃度で共に処理した時には、顕著な細胞保護活性を示した。特に、化学式5(ピセアタンノール)を併用処理した時、細胞生存率が84.7±6.9%で最も強い活性を示した。化学式9(ミリセチン)、化学式11(quercetin)等のフラボン3−オル化合物も各々61.0±4.5%と48.1±5.7%の細胞生存率を示した。また、化学式6(没食子酸)、化学式7(没食子酸メチル)、化学式8(没食子酸エチル)等も各々41.5±3.1%、43.0±5.6%、43.1±4.1%程度の細胞保護活性を示した。前記結果を通じて本発明のハナズオウ抽出物から収得した化合物は、細胞の酸化的ストレスを効果的に抑制して過酸化による細胞死滅を抑制することにより、酸化的ストレスによる老化を抑制できることを確認した。
【0089】
(表7)

【0090】
実施例7:UV照射で誘導される酸化的ストレスに対する保護活性
<7−1>UV照射に対する細胞保護効果(in vitro)
UV照射は、細胞内活性酸素を顕著に増加させDNA損傷、DNA−タンパク質連結等を誘発する。HEK−N/F細胞に35mJ/cmのUVBを照射すると、核のDNA 鎖が切れる。これをDNA鎖インターキレーティング(intercalating)蛍光染料のエチジウムホモダイマー(Et2)と結合させた後、蛍光の強さを測定することにより定量した。詳細には、HEK−N/F細胞を無血清KGM培地(Clonetics)に入れ培養した後、24−ウェルプレートに0.5乃至4×10細胞数/2cmになるように接種した。細胞を18時間培養した後、2時間試料を処理した。PBSで洗浄した後、UV検出器(Spectronics UV transilluminator EBF−260,the maximal wavelength,312nm;a half−peak intensity range,297−328nm)を使用して細胞にUVを照射した。UV照射した細胞を1−7時間培養して5Mエチジウムホモダイマー(Et2,Millipore)を投与した。30分後、ミリポレマイクロプレートフルオロメーターサイトフルオア2350(Millipore microplate fluorometer Cytofluor 2350,excitation:485nm,emission:645nm)を使用して蛍光を測定した。
【0091】
その結果、図6a及び図6bに示したように、ハナズオウ抽出物、化学式9(ミリセチン)及び化学式5(ピセアタンノール)を処理した時には、対照群の蛍光より各々54.7%及び66.7%程度低い蛍光を示した。即ち、ハナズオウ抽出物及びそれから分離した活性成分は、UVによる酸化的ストレスを抑制してDNA損傷を顕著に減少させた。
【0092】
<7−2>UV照射に対する皮膚組織保護効果(in vitro)
5−6週齢のメス無毛ネズミ(hairless mouse,SKH−hr−1)を温度24±2℃、相対湿度50±10%、昼夜12時間のサイクルで14日程度適応させた後、実験に使用した。実験の30−60分前に試料を無毛ネズミの5地点に皮下注射した後、ネズミの背にUVBを照射した。次に20×15×5cmケージにグループ当り5匹のネズミを入れて15cmの距離からUVランプ(HP−15M,280−400nm,max.312nm;Atto Co.,日本)で、一平方メーター当り15kJになるようにUVBを照射した。UVを24時間照射した後、背側の皮膚を切取り過酸化測定時まで−70℃で保管した。
【0093】
UVB照射は、皮膚組織に顕著な脂質過酸化を誘発させるため、過酸化された脂質の含量を測定することにより皮膚の損傷程度を測定できる。それで、脂質過酸化を測定した。詳細には、SKH−1無毛ネズミの背表面にUVBを照射して48時間後に背の皮膚組織を切取りチオバルビツール酸(thiobarbituric acid,TBA)法で脂質過酸化を測定した。無毛ネズミの背側皮膚を10倍の50mM K−P緩衝液に入れた後、均質化(homogenation)させた。
【0094】
次に、ハイドロゲンペルオキシド化を観察した。冷凍した背の皮膚切片を1mg/mlグルコースと1mg/mlジアミノベンジジン(diaminobenzidine,DAB)を含有する0.1Mトリス−HCl緩衝液(pH7.5)に入れて37℃で5乃至6時間培養した。蒸溜水で洗浄した後、2%メチルグリーン(methyl green)で60分間染色した。顕微鏡で茶色のDAB−ペルオキシダーゼと青色に染色された核を観察した。
【0095】
UV照射は、皮膚組織に活性酸素種の生成を誘導してDNA損傷、タンパク質の酸化、脂質過酸化等を誘発させ、結局、炎症や癌、皮膚老化のような皮膚の損傷を起こすものと知られている。図7に示したように90mJ/cmでUVBを照射した時には顕著な皮膚損傷が観察された。しかし、ハナズオウ抽出物及び化学式5(ピセアタンノール)を50mg/kgの濃度で前処理した時には、SKH−1無毛ネズミの皮膚損傷が顕著に抑制された。前記実施例の結果から分かるように、ハナズオウ抽出物及びその活性成分である化学式5(ピセアタンノール)は、強力なラジカル消去活性、脂質過酸化抑制活性及び酸化的ストレスに対する皮膚細胞の保護活性を示したので、UVB照射で誘導される皮膚損傷に対する保護効果は、このような抗酸化活性に起因したものと思料された。ジアミノベンジジン(DAB)は、組織のペルオキシダーゼと反応して濃い茶色のDAB−ペルオキシダーゼを生成するので、これを使用してUVB照射により生成されるHを観察した。図7に示したように90mJ/cmでUVBを照射した時には、濃い茶色のDAB−ペルオキシダーゼが多く観察されたが、ハナズオウ抽出物及び化学式5(ピセアタンノール)を50mg/kgの濃度で前処理した時には、SKH−1無毛ネズミの皮膚組織でH生成が顕著に抑制された。
【0096】
脂質過酸化を測定した結果、UVBを照射した群の平均TBARS(thiobarbituric acid reactive substances)含量は、約0.68nmol/mgタンパク質で、UVBを照射していない対照群(0.32±0.05nmol/mgタンパク質)に比べて2倍程度脂質過酸化が起きた(表8)。ハナズオウ抽出物及び化学式5(ピセアタンノール)を処理した群は、濃度依存的に皮膚の脂質過酸化が減少した。特に、化学式5は同じ濃度で陽性対照群に使用したMAP(マグネシウム−L−アスコルビル−2−ホスファート)よりも高い活性を示した。
【0097】
(表8)

【0098】
実施例8:細胞寿命に対する延長効果
HEK−N/F細胞は、皮膚のまた他の主成分である繊維芽細胞をウリジンブロマイド(uridine bromide)で処理した後、ヒト新生児表皮から得て、10%FBSを含むDMEM培地で培養した。HEK−N/F細胞は、1:4の希釈比率で連続的に培養した。試料を処理する前に約3のPDL(population doubling level)になるまで成長させ、以後培養の間各々の試料を3g/mlの濃度で投与した。培地交換は、同一濃度の試料を含む培養液を添加して3日毎に行なった。細胞培養後、本発明のハナズオウ抽出物、化学式5(ピセアタンノール)及び化学式9(ミリセチン)を処理して細胞分裂を観察した。
【0099】
その結果、ハナズオウ抽出物及び活性成分は、皮膚細胞の寿命を延長させるものと現れた。なにも処理していない対照群は、平均寿命が約35日であるのに反してハナズオウ抽出物を3μg/mlずつ処理して培養した時には、平均寿命が42日程度に、対照群に比べて約1.2培程度寿命が延長された。活性成分の化学式9(ミリセチン)と化学式5(ピセアタンノール)を処理して培養した時には、平均寿命が各々56日と76日に、対照群に比べて各々1.6培及び2.1培程度細胞の寿命が延長された(図8)。したがって、本発明のハナズオウ抽出物及びそれから分離した活性成分は、細胞寿命延長効果を有していることが分かった。
【0100】
実施例9:テロメアの長さと細胞寿命に対する延長効果
前記実施例8で本発明のハナズオウ抽出物及びそれから分離した活性成分は、細胞寿命延長効果を有することを確認した。それで、細胞寿命延長効果とテロメアの長さとの関係を調べた。詳細には、ゲノミックDNAは、ヘキサン抽出キット(IsoQuick Nucleic Acid Extraction kit,ORCA Research Inc.)を使用して各々の年齢の細胞から抽出した。Tris−EDTA(10mM Tris−HCl,1mM EDTA,pH8.0)に溶解して4℃で保存した。1.5mlチューブに10×H緩衝液(TaKaRa)2μl、前記で抽出したゲノミックDNA溶液2μlを入れて3次蒸溜水を入れ全体を19μlになるようにした後、制限酵素Hinf I(6U/l,TaKaRa)1μlを添加した。前記混合液を37℃で3乃至4時間反応させた後、電気泳動をさせた。電気泳動時にアガロース(type I,Sigma)ゲルは、ブリッジ部分が1%、ベッド部分が0.8%になるようにゲル濃度を調節してゲル板を製作し(マリソルKS−8405,20×14cm)、1×ボイアー緩衝液(50mM Tris−HCl,20mM 酢酸ナトリウム、2mM EDTA、18mM NaCl、pH8.0)を使用した。マーカーには、1Kb DNAラダーを使用して0.5μgをローディングした。すべてのサンプルは、ローディングバッファー3μlずつを入れて35V/cmで20時間電気泳動を実施した。電気泳動が完了した後、エチジウムブロマイド(2μg/ml)で15分間染色してUVで確認した。続けてゲルを0.25N HClに入れて15分間振盪した後、蒸溜水で2回洗浄した。そのゲルを変性液(0.2N NaOH、0.6M NaCl)に浸けて室温で25分間振盪した後、蒸溜水で3回洗浄した。6×SSCを満したブロッティング(blotting)装置にニトロセルロース膜(nitrocellulose membrane Optitran BA−S85,Schleicher & Schuel)、3mmろ紙、ペーパータオル、ガラス板、重り(2kg)の順序でのせて一晩中ブロッティングさせた。ブロッティングが完了した後に膜フィルターを3×SSCに浸けて軽く水分を除去した後、UVでウェルの位置を確認した。ろ紙に挿して80℃で一晩べーキング(baking)して65℃で変性された鮭精子(denatured salmon sperm)DNA(Wako)で前混成化(prehybridization)させた後、50℃で混成緩衝液(1×Denhan solution,1M NaCl,50mM Tris−HCl,10mM EDTA,0.1% SDS,50g/ml denatured salmon sperm DNA)と5’−末端[32P]−標識された(TTAGGG)で混成化させた。混成化された膜を洗浄液(4×SSC/0.1% SDS)に浸けて55℃で15分振盪した後、乾燥させラップで覆いX−線フイルム(Scientific Imaging Film,Kodak)と共に増感紙を付けたカセットにセットして−80℃で一晩中同位元素現象(autoradiography)を実施した。現像したフイルムと膜の位置を合わせてマジックでウェルの位置を表示した。TRFsの密度ピークをレーザーデンシトメーター(laser densitometer UltroScan XL,Pharmacia)で検出して、その移動度を算出した。
【0101】
その結果、細胞分裂をするにしたがってテロメアの長さが漸進的に減少することを観察できた。図9に示したように、対照群は14.8回分裂した後のテロメアの長さが約8.0kbp程度に減少してそれ以上分裂できなかった。反面、ハナズオウ抽出物や活性成分を処理した群は、対照群に比べてずっと多くの分裂をした後にテロメアの長さが臨界値(本発明では、約8.0kbp)に到達した。細胞分裂は、テロメリックDNAが臨界値(ヒト皮膚表皮細胞は、7.9−8.4kbであると推定)以上に維持される限り継続可能だった。このような観点からテロメアが短縮される速度を遅延させ臨界値に到達する速度を遅らせることにより細胞分裂能力が終了する周期を延長させられるものと現れた。即ち、対照群の最大PDLは、14.1であるのに反してハナズオウ抽出物を投与した時には最大PDLが17.2、化学式9(ミリセチン)は23.1、化学式5(ピセアタンノール)は29.9で、最大PDLが顕著に増加した。
【0102】
また、細胞分裂回数と前記測定したテロメアの長さの関係からテロメア短縮速度を計算した結果、ハナズオウ抽出物、化学式9(ミリセチン)及び化学式5(ピセアタンノール)を投与した群のテロメア短縮速度は、対照群に比べて各々1.2、1.6及び2.1倍ずつ遅れたことを確認した(図10)。したがって、ハナズオウ抽出物及び活性成分の皮膚細胞寿命延長効果は、テロメア短縮速度を遅らせることにより現れた結果であると思われた。
【0103】
製剤例1:ハナズオウ抽出物を含む化粧料組成物の製造
本発明者らは、前記ハナズオウ抽出物を有効成分として含む化粧料組成物(製剤1乃至製剤6)を下記表9乃至表11のように製造した。また、下記製造例に含まれたハナズオウ抽出物以外にも通常的に化粧品を製造するのに使用できる他の抽出物が追加に含まれ得る。その例として、桑白皮、褐藻、当帰、ハトムギ、牧丹皮、馬歯、柿の葉、アメリカマンサク(witch hazel)及びセンテラ(centella)抽出物等がある。
【0104】
まず、本発明のハナズオウ抽出物を含む柔軟化粧水及び粘稠性液を下記表9に記載した組成により通常の方法で製造した。
【0105】
(表9)柔軟化粧水及び粘稠性液の製造

【0106】
次に、本発明のハナズオウ抽出物を含む乳液及びローションを下記表10に記載した組成により通常の方法で製造した。
【0107】
(表10)乳液及びローションの製造

【0108】
次に、本発明のハナズオウ抽出物を含むクリームを下記表11に記載した組成により通常の方法で製造した。
【0109】
(表11)クリームの製造


【0110】
製剤例2:抗酸化及び老化抑制用薬学的組成物の製造
本発明者らは、前記ハナズオウ抽出物を有効成分として含む、抗酸化用及び老化抑制用薬学的組成物を下記のように製造した。
【0111】
<2−1>シロップ剤の製造方法
本発明のハナズオウ抽出物を有効成分として2%(重量/体積)で含むシロップを下記の方法で製造する。
【0112】
ハナズオウ抽出物、サッカリン、糖を温水80gに溶解させた。この溶液を冷却させた後、そこにグリセリン、サッカリン、香味料、エタノール、ソルブ酸及び蒸溜水からなる溶液を製造して混合した。この混合物に水を添加して100mlになるようにした(表12)。
【0113】
(表12)

【0114】
<2−2>錠剤の製造方法
有効成分15mgを含有した錠剤は、下記の方法で製造する。
【0115】
ハナズオウ抽出物250g、ラクトース175.9g、ジャガイモ澱粉180g及びコロイド性硅酸32gと混合した。前記混合物に10%ゼラチン溶液を添加した後、粉砕して14メッシュを通過させた。それを乾燥させてジャガイモ澱粉160g、滑石50g及びステアリン酸マグネシウム5gを添加して得られる混合物を錠剤にした(表13)。
【0116】
(表13)

【0117】
以上で詳しく見たように、本発明のハナズオウ抽出物は、抗酸化活性が高いので、ハナズオウ抽出物を有効成分として含む薬学的組成物は、過酸化と関係した疾患の治療及び予防に使用できる。
【0118】
以下、本発明のハナズオウ抽出物を含む薬学的組成物が適用できる具体的な疾患に対して説明する。
【0119】
但し、下記の適用例は本発明を例示するだけのものであり、本発明の内容が下記の適用例に限定されるものではない。
【0120】
適用例1:癌
癌は無数に多くの原因により起きるものだけれど、最も根本的な原因として活性酸素による細胞の破壊及びその復旧不能により細胞機能の障害を起こし、それが進行して癌に転移すると明らかにされている(Ames,B.N.,Science,1983年,第221巻頁,1256−1264頁)。一方、果物にあるフェノール酸の肝癌に対する効果(Sun J等,J Agric Food Chem,2002年,第4;50(25)巻,7449−7454頁)、トマトにあるリコフェン(lycopene)の乳癌に対する効果(Hadley CW等,Exp Biol Med,2002年,第227(10)巻,869−80頁)、イソベルバスコシド(isoverbascoside)の胃癌に対する効果(Chen RC等,Acta Pharmacol Sin,2002年,第23(11)巻,997−1001頁)等、現在報告されている色々な抗酸化剤が他の癌にも効果がある。したがって、抗酸化剤は様々な種類の癌の治療及び予防に効果的に使用できることが分かり、抗酸化活性が優秀な本発明の抗酸化用薬学的組成物は、癌の治療及び予防に効果的に使用できる。
【0121】
適用例2:老化
正常的な代謝過程で付随的に生成される活性酸素は、細胞構成成分の脂質、タンパク質、糖またはDNA等を非選択、非可逆的に破壊することにより酸化的損傷を与え、それが長い時間蓄積されると老化と死に至る(Harman,D,Free radical theory of aging,1986年,3−49頁)。また、実験条件を変えて食餌を制限したり運動量を減少させる等基礎代謝率、即ち酸素消費量を減少させることにより寿命が延長されることが観察された(Medvedev,Z.A.,Biol Rev.,1990年,第65巻,375−398頁;Loe,J.等,J.Biol.Chem.,1971年,第32巻,103−121頁;Sohal,R.S.,Aging,1982年,第5巻,21−24頁)。即ち、活性酸素を除去することが老化を遅延させられる方法であり、現在活性酸素を除去する抗酸化剤が多く開発されている。したがって、抗酸化活性が優秀な本発明の抗酸化用薬学的組成物は、老化を遅延させられる。
【0122】
適用例3:冠状心臓疾患、高脂肪血症及び動脈硬化
冠状心臓疾患及び高脂肪血症(hypercholesterolemia)患者にコレステロール生合成酵素阻害剤を処理すると低密度脂肪にあるコレステロール含量を減少させるが、活性酸素による過酸化に対してはユビキノンQ10(ubiquinone Q10)の生合成を抑制して低密度脂タンパク質を保護する作用をして前記疾患の治療に効果的ではなく前記患者に抗酸化物質のセラビスタチン(cerivastatin)またはプロブコル(probucol)を投与すると低密度脂タンパク質の含量が急撃に減少した(Lankin VZ等,Bull Exp Biol Med,2002年,第134(1)巻,39−42頁)。また、抗酸化剤のジヒドロピリジンカルシウム拮抗体ラシジピン(lacidipine)を動脈硬化患者に投与した臨床実験で血圧降下と共に血管壁のコレステロール数値を下げて動脈硬化病変の大きさが減少した(Haller H等,Drugs R D,2002年,第3(5)巻,311−23頁)。即ち、抗酸化物質は、冠状心臓疾患、高脂肪血症及び動脈硬化のようなコレステロールと関連した血管系疾患の治療及び予防において、優秀な物質であることが分かり、抗酸化活性が優秀な本発明の抗酸化用薬学的組成物は、冠状心臓疾患、高脂肪血症及び動脈硬化のような血管系疾患の治療または予防に使用できる。
【0123】
適用例4:多発性硬化症及び自己免疫性脳脊髄炎
多発性硬化症(multiple sclerosis)及び自己免疫性脳脊髄炎(autoimmune encephalomyelitis)疾患モデルマウスに抗酸化剤の一種であるALA(alpha lipoic acid)を投与した臨床実験で前記の病症度が弱まる現象を観察した。即ち、酸化的ストレスは、多発性硬化症及び自己免疫性脳脊髄炎において主な原因であり抗酸化剤を使用して前記のような神経関連疾患を治療できる(Marracci GH等,J Neuroimmunol,2002年,第131(1−2)巻,104−14頁)。したがって、抗酸化活性が優秀な本発明の抗酸化用薬学的組成物は、多発性硬化症及び自己免疫性脳脊髄炎のような神経関連疾患の治療または予防に使用できる。
【0124】
適用例5:脳卒中及びアルツハイマー病
酸化的ストレス、即ち、活性酸素は細胞の構成成分を酸化させそれらの機能障害をもたらし、それらの機能障害により神経細胞の機能にも障害を与える。このような神経細胞機能障害による発作(stroke)、ショック(trauma)等を起こすことになる。しかし、このような症状が治療されずに持続的な酸化的ストレスが与えられた場合、深刻な脳疾患、即ち、脳卒中、アルツハイマー病のような疾患が起きることになる。また、活性酸素を除去できる抗酸化剤を使用して脳卒中、アルツハイマー病のような脳疾患を治療できる(Perry G等,Comp Biochem Physiol C Toxicol Phaarmacol,2002年,第133(4)巻,507−13頁;Cecchi C等,Free Radic Biol Med,2002年,第15:33(10)巻,1372−9頁;Smith MA等,Free Radic Biol Med,2002年,第1:33(9)巻,1194−9頁)。したがって、抗酸化活性が優秀な本発明の抗酸化用薬学的組成物は、脳卒中、アルツハイマー病のような脳疾患の治療または予防に使用できる。
【0125】
適用例6:腸炎
腸炎患者の白血球には過量の過酸化副産物が蓄積されていて、蓄積された過酸化副産物による細胞の損傷は、腸の感染において一次的または二次的病理学メカニズムの原因である。即ち、酸化的ストレスは腸の感染を誘導して炎症性腸炎を起こす主な原因である(Kruidenier L等,Aliment Pharmacol Ther,2002年,第16(12)巻,1997−2015頁)。したがって、抗酸化活性が優秀な本発明の抗酸化用薬学的組成物は、炎症性腸炎等の炎症と関連した疾患の治療または予防に使用できる。
【0126】
産業上の利用可能性
前記で詳しく見たように、本発明のハナズオウ抽出物及びそれから分離した化学式1乃至化学式20で表される化合物は、合成抗酸化剤とは異り人体に無害で、他の天然抗酸化剤と比べて抗酸化活性が優秀で、細胞内酸化的ストレスを効果的に抑制するだけではなく、細胞老化と関連したテロメアの長さの短縮を抑制することにより皮膚細胞の寿命を延長させられるので、それを有効成分として含む本発明の化粧料組成物は、皮膚老化抑制、皮膚弾力保護、シワ改善のために有用に使用できる。
【0127】
当業者は、前述の記載により開示された概念および特定の態様が、本発明の同様の目的を実行するためのその他の態様の改変および設計の基盤として容易に利用されうることを、理解するであろう。当業者はまた、そのような同等の態様が、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の目的および範囲から逸脱しないことを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0128】
本発明の好ましい態様の適用は、添付の図面を参照することで最も良く理解される。
【図1】ハナズオウからエタノール粗抽出物を得て、それをヘキサン、エチルアセテート、ブタノール順に抽出する過程を示した模式図である。
【図2】ハナズオウからエタノールを0%から順次的に10%ずつ増やして100%濃度まで抽出したエタノール粗抽出物のDPPHラジカル消去活性を測定したグラフである。
【図3】ヘキサン、エチルアセテート、ブタノール、水分画及びエタノール抽出物のDPPHラジカル消去活性を測定したグラフである。
【図4】エチルアセテート画分から抗酸化活性を示す化合物を分離する過程を示した模式図である。
【図5】ブタノール画分から抗酸化活性を示す化合物を分離する過程を示した模式図である。
【図6】aは、本発明のハナズオウ抽出物及びそれから分離した化合物のUV照射に対する細胞保護効果を示したDNA損傷程度を示した細胞写真である。bは、本発明のハナズオウ抽出物及びそれから分離した化合物のUV照射に対する細胞保護効果を示したDNA損傷程度を示す蛍光の強さを示すグラフである。
【図7】本発明のハナズオウ抽出物及びそれから分離した化合物がUV照射に対して保護効果を示すかどうかを確認した無毛ネズミの皮膚損傷写真である。
【図8】本発明のハナズオウ抽出物及びそれから分離した化合物が細胞寿命を延長させることを示したグラフである。
【図9】本発明のハナズオウ抽出物及びそれから分離した化合物がテロメアの長さの短縮速度を抑制するテロメアの長さのサダンブロット写真である。
【図10】本発明のハナズオウ抽出物及びそれから分離した化合物がテロメアの長さ延長作用をすることを示したテロメア短縮速度のグラフである。
【図11】ハナズオウの花、葉、茎及び実を示した写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出溶媒(extractant)として水またはアルコール水溶液を使用して抽出した、抗酸化活性、皮膚老化抑制活性、皮膚弾力保護活性およびシワ防止活性を有するハナズオウ(Cercis chinensis)抽出物。
【請求項2】
アルコール水溶液が、メタノール水溶液、エタノール水溶液、プロパノール水溶液及びブタノール水溶液からなる群から選択される、請求項1記載の抽出物。
【請求項3】
アルコール水溶液が、50乃至80%エタノール水溶液である、請求項2記載の抽出物。
【請求項4】
アルコール水溶液が、60%エタノール水溶液である、請求項3記載の抽出物。
【請求項5】
前記抽出物が、化学式1(イソリキリチゲニン)、化学式2(2’,4’−ジヒドロキシ−4−メトキシカルコン)、化学式3(リキリチゲニン)、化学式4(リスベラトロール)、化学式5(ピセアタンノール)、化学式6(没食子酸)、化学式7(没食子酸メチル)、化学式8(没食子酸エチル)、化学式9(ミリセチン)、化学式10(アフゼリン(afzelin))、化学式11(ケルシトリン)、化学式12(ミリシトリン)、化学式13(ミリセチン−3−O−(2”−O−ガロイル)−α−L−ラムノピラノシド(rhamnopyranoside)、化学式14(シリンゲチン−3−O−ルチノシド)、化学式15(シリンゲチン−3−O−2”−O−ガロイル)−ルチノシド),化学式16((+)−カテキン),化学式17((−)−エピカテキン−3−O−ガレート)、化学式18((−)−エピガロカテキン−3−O−ガレート)、化学式19((−)−リオニレシノール3a−O−β−D−キシロピラノシド)及び化学式20((+)−リオニレシノール3a−O−β−D−グリコピラノシド)で表される化合物からなる群から選択される1つまたは複数の化合物を含む、請求項1記載の抽出物。
【請求項6】
前記抽出物が、化学式6で表される化合物を0.01〜1.00重量%、化学式12で表される化合物を0.01〜1.00重量%、および化学式5で表される化合物を0.01〜0.5重量%含む、請求項5記載の抽出物。
【請求項7】
請求項1の抽出物を有効成分として含む、抗酸化用、皮膚老化抑制用、皮膚弾力保護用またはシワ防止用化粧料組成物。
【請求項8】
請求項1の抽出物から分離した化学式1乃至化学式20で表される化合物からなる群より選択される1つまたは複数の化合物を有効成分として含む、抗酸化用、皮膚老化抑制用、皮膚弾力保護用またはシワ防止用化粧料組成物。
【請求項9】
柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、エッセンス、パック及び風呂用パウダーのようなスキンケア基礎化粧品からなる群から選択される、請求項7または8に記載の化粧料組成物。
【請求項10】
ハナズオウ抽出物を有効成分として含む、抗酸化用及び老化抑制用薬学的組成物。
【請求項11】
注射剤、錠剤またはシロップ剤の形状で製造される、請求項10に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
1)ハナズオウの微粉砕粉末をアルコールで粗抽出する工程;
2)前記工程1のアルコール粗抽出物をヘキサン、エチルアセテート、およびブタノールの順で抽出する工程;
3)前記工程2で得たエチルアセテート画分またはブタノール画分を用いて、エタノール:水の濃度勾配カラムクロマトグラフィーを実施する工程;及び、
4)前記工程3で得た抗酸化活性画分を用いてカラムクロマトグラフィー、TLCまたはHPLCを実施することにより最終抗酸化抽出物を得る工程を含む、請求項1記載のハナズオウ抽出物の製造方法。
【請求項13】
アルコールが、60%エタノールである、請求項12記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2006−515590(P2006−515590A)
【公表日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−562986(P2004−562986)
【出願日】平成15年12月4日(2003.12.4)
【国際出願番号】PCT/KR2003/002654
【国際公開番号】WO2004/058213
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(505243353)ハンコック ファーム.カンパニー インコーポレーティッド (4)
【出願人】(505243364)ハンセン コスメチック カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】