説明

折返し板バネを使用するリニア軸受

リニア軸受は、パーソナルケア家庭用電化製品用途において有用であり、その各端部に端部素子(20,22)を有する細長い中央部材(14)を含み、中央部材は、その自由端部にワークピース(18)を備えるアーム(16)を有する。2組の直交する板バネ(24,38)が中央組立体の両端部の近傍に位置付けられ、各組における各板バネの一端部は、関連する端部材に接続され、各組における各板バネの他端部は、家庭用電化製品のハウジング(37)のような固定的な位置決め部材(26,40)に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、リニア軸受に関し、より具体的には、リニアバネ軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
リニア軸受は、多様な小型家庭電化製品において使用されるリニア駆動モータを含む様々な用途において使用されている。一般的な種類のリニア軸受は、玉軸受及びブッシュである。これらの種類の軸受の各々はそれら独自の利点を有し、特定の用途において有用であるが、それらは多くの用途において有意な不利点も有し、それらの不利点は少量の遊びを含み、特に往復運動を伴うより高い周波数で、騒々しい動作を引き起こす。そのような軸受は、典型的には、有意な量の摩擦も有し、一部の用途では、潤滑剤の使用によって摩擦を軽減し得るが、共振システムを含む他の用途では、効率の有意な損失を招く。
【0003】
従来的なリニア軸受の不利点の一部を克服するために、バネ軸受も一般的に使用される。バネ軸受は、一般的には、遊びを殆ど有さず、摩擦がない。しかしながら、バネ軸受はバネのサイズに依存する運動範囲及び相当なバネ定数を有する。バネ軸受は多くの用途において使用される共振システムでは特に有用ではない。何故ならば、例えばシステムに対する荷重によって引き起こされるバネ定数の変化が、望ましくないシステムの共振応答の変化を引き起こすからである。しかしながら、バネ定数変化を補償する如何なる構成もシステム全体の複雑性及び費用を必要的に増大する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
故に、所望の運動範囲を具備し且つバネ定数が僅か或いはバネ定数がない、有意な遊び又は摩擦を伴わないリニア軸受を有することが望ましい。そのようなリニア軸受は、歯ブラシ又は髭剃り器のような往復動リニア駆動用途において特に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、中央部材組立体と、1組の板バネとを含み、中央部材組立体は、そこに取り付けられるワークピース組立体を有し、各板バネの一端部は、中央部材組立体に接続され、各板バネの他端部は、固定的な位置決め部材に接続され、板バネは、その両端部の間に約180°の屈曲があるように構成され、(a)バネ部材、(b)中央部材組立体の他端部に接続される他の組の板バネ、又は、(c)中央部材組立体の他端部を支持し、且つ、固定的な位置決め部材に或いは他の固定的な位置決め部材に接続されるブッシュを含み、動作中、1組の板バネ及びバネ部材又は他の組の板バネは、中央部材組立体及びワークピース組立体と共に、往復的なリニア運動において前後に移動するリニア軸受が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1A】本発明のリニア軸受の1つの実施態様を示す縦断面図である。
【図1B】本発明のリニア軸受の1つの実施態様を示す横断面図である。
【図2】図1A及び1Bのリニア軸受の一部を概略的に示す斜視図である。
【図3】図1のリニア軸受を使用する歯ブラシ用途を示す正面図である。
【図4】図3の構造の一部を示す正面図である。
【図5】リニア軸受の単一のバネ部分を示す概略図である。
【図6A】代替的な実施態様を示す縦断面図である。
【図6B】代替的な実施態様を示す横断面図である。
【図7A】他の代替的な実施態様を示す縦断面図である。
【図7B】他の代替的な実施態様を示す横断面図である。
【図8A】更なる実施態様を示す縦断面図である。
【図8B】更なる実施態様を示す横断面図である。
【図9A】他の実施態様を示す縦断面図である。
【図9B】他の実施態様を示す横断面図である。
【図10A】リニア軸受のバネ部材部分の形状を示す概略図である。
【図10B】リニア軸受のバネ部材部分の形状を示す概略図である。
【図10C】リニア軸受のバネ部材部分の形状を示す概略図である。
【図10D】リニア軸受のバネ部材部分の形状を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1A及び1Bは、ここに開示される概ね10で参照されるリニア軸受の1つの実施態様を示している。図3及び4は、動力歯ブラシ用途におけるリニア軸受10を示している。しかしながら、リニア軸受は、例えば、髭剃り器、動力フロス、及び、体毛トリマのような、様々な他のパーソナルケア家庭用電化製品における用途を有することが理解されるべきである。図5は、リニア軸受の単一のバネ部分の動作を示している。リニア軸受10は、中央取付け組立体14を含み、中央取付け組立体14は、2つの対向する実質的に同一な端部材20及び22を含む。中央取付け組立体14の一方の端部材20から延びているのは、ワークピースアーム16であり、その端部には、人間の歯を磨くのに適するように設計され且つ構成されるブラシヘッド(図3)が取り付けられる。
【0008】
図1、2A、2B、及び、3−4において、中央取付け組立体14は、約50mmの長さであり、鋼又は類似の強力材料から成る。各端部材(例えば20)と関連する固定的な接地点部材26との間に接続されているのは、板バネ部材(ローラ板バネとも呼ぶ)24−24であり、接地点部材26は、家庭電化製品のハウジングに取り付けられる。接地点部材26−26は、ハウジングの一体的部分又はハウジング自体であってもよい。図示される実施態様では、各端部材のために、直交位置に、即ち、90°離間して、4つのそのような板バネ部材がある。図示される実施態様において、板バネ部材は、曲げやすいバネ鋼のような、直線的な条片バネ材料から成る。鋼又はプラスチック以外の材料を含む他の極めて弾性的な材料も使用し得る。
【0009】
直交するバネ配置は、リニア軸受のために必要な全方向における所要のバネ剛性を有する。図示される実施態様において、歯ブラシ用途のためのバネ部材の厚さは、0.01〜0.3mmであり、好適な厚さは、0.05mmである。バネの幅は、1〜5mmであり、好適な幅は、3mmであるのに対し、長さは、5〜30mmであり、好適な長さは、10mmである。
【0010】
各板バネ部材は、図示される配置から離れた緩和位置では直線的であるが、その動作位置では180°に曲げられ、図5を含む図面に示される形状をもたらす。バネが解放されるならば、バネがその元の平坦な形状に戻るよう、バネ部材の変形は弾性的である。動作中、図1中に矢印によって示されるような中央取付け組立体14の軸方向動作、故に、端部材の動作は、バネ屈曲の領域30をもたらし、バネ領域32におけるバネ変形、即ち、折返し(rolling)を伴う。バネは、バネ領域34において緩和する。
【0011】
図示される実施態様において、類似の組の4つの直交するバネ部材38−38が、対向する端部材22及び対向する接地点部材40−40に取り付けられ、接地点部材は、ハウジングに取り付けられ、或いは、ハウジングの一部を形成し得る。図示される実施態様において、2組の接地部材26−26及び40−40はハウジングに接続され、それによって、実質的に共に接続される。上記に示され且つ図面中に示されたように、2つの端部材20及び22も、中央部材41によって共に接続される。ワークピースアーム16は、中央部材41の延長部であり得る。部材41、20、22、及び、16は、一体的な一体成形の組立体であってもよい。
【0012】
中央取付け組立体14の両端に1組の4つの板バネを備えるこの両端バネ構成において、システムの往復運動のために必要とされる論理的な正味エネルギは、ゼロであり、ゼロのバネ定数をもたらす。多くの商業的用途において、特に歯ブラシを含む共振用途において、これは利点を有する。何故ならば、通常の歯磨き中に起こるブラシヘッドに対する異なる荷重は、リニア軸受システムのバネ定数に影響を及ぼさず、故に、システムの共振動作に影響を及ぼさないからである。図示されるシステムは、有意な横方向剛性も有すると同時に、比較的大きな範囲の軸方向運動を許容し、それは歯ブラシ用途に望ましく、過剰に大きなバネの必要がない。更に、バネはそれらの中央領域で変形し、それらの端部取付け部品で変形しないので、端部取付け部品でバネ破壊が起こる可能性(バネシステムでは典型的である)は比較的低い。ここに開示されるバネシステムは、異なる用途のために、極めて小さいサイズから相当に大きいサイズまで、様々なサイズに作製され得ることも理解されるべきである。
【0013】
歯ブラシ用途のための図2及び3に示される磁気構成を含む様々な構成によってリニア軸受を駆動することができ、歯ブラシ用途は、図3では、ハウジング37と、ドライブトレーン組立体39と、電池40と、電子ドライバ/制御装置43とを含む。ドライブトレーン組立体39は、ハウジング37内に設けられる対向する電磁石42,44を含み、それらは中央取付け組立体14上に配置される永久磁石45と相互作用する。電磁石がAC信号源(電子ドライバ/制御装置)43によって駆動されるとき、結果として得られる永久磁石45との相互作用は、矢印によって示されるような中央取付け組立体14の前後(リニア)作用、並びに、上記のように配置される前方及び後方のリニア軸受47及び48をもたらす。中央取付け組立体14の後端部をハウジングに接続するのは、共振バネ49である。共振バネ49及び中央取付け組立体14の慣性力の比率は、家庭用電化製品の共振周波数を定める。この構成の1つの追加的な利点は、この構成が共振モードにおける可聴周波数で、例えば、高周波数で250〜270Hzの範囲内で動作し得ることである。
【0014】
個々のバネ部材は、図10A−10Dに示されるような様々な輪郭構造を有し得る。図10A中のバネ50は、図1−5中に示されるバネのようである、即ち、直線的な側部を有するバネである。図10Bは、バネ51の代替的な形状を示しており、バネ51は、その両端部よりその中央で幅が僅かに大きく、やはり直線的な側部を備える。そのようなバネは芯出しバネのように動作し、如何なる追加的な遊びをも伴わずに、長い移動を許容する。図10Cは、その両端部に比べその中央部に減少された幅を有し、直線的な側部は、バネの中央部から両端部に延在している。このバネ形状は、ワークピースのために偏心運動を引き起こし、一方の側の又は他方の側のワークピース移動に焦点を合わせる。図10Dは他の構成を示しており、バネ58は直線的な側部を有し、バネの幅は一端部から他端部に増大している。バネは湾曲する側部も有し得る。形状を変更することによって且つ/或いは板バネの厚さを変更することによって、様々なバネ応答曲線が可能である。各具体的な組におけるバネは、全て同じ形状である必要はないが、好ましくは、それらは特に対向するバネである。
【0015】
図6A、6Bは、取付け組立体63の一端部62に取り付けられた単一の組の4つの板バネ61を備える実施態様を示しており、取付け組立体63の他端部にある従来的な単一の平坦な板バネ64が、その対応する端部材68と接地点部材70との間に接続され、接地点部材70は、ハウジング72に接続されている。他の構成では、板バネ61の組及び従来的な板バネ64の位置を図6A及び6Bに示されるものから逆転することもできる。
【0016】
図7A及び7Bは、取付け組立体の一端部82に取り付けられた単一の組の4つの板バネ80と、その他端部86にあるブッシュ84とを備える他の実施態様を示している。ブッシュ84は、ハウジング88に取り付けられた接地部材88内に取り付けられている。
【0017】
図8A、8B、及び、9A、9Bは、他の実施態様を示している。図8A及び8Bでは、4つの代わりに3つのバネ90−90が使用され、120°の均等に離間した位置に位置付けられている。この構成は、4つのバネの実施態様と実質的に類似する効果をもたらす。図9A、9Bは、2つのバネの構成を示しており、バネ94−94は、互いに90°に位置付けられている。2つのバネは対向していないので、これは幾分異なる作用を有するが、それは依然として他の実施態様の利点の多くを有する。
【0018】
上記の代替的なバネ構成の全ては、(取付け部材の両端部で)二重の組において、或いは、従来的な軸受部材(平坦な板バネ又はブッシュ)を他端部に備える取付け部材の一端部で単一の組において実施され得る。
【0019】
従って、様々な商業的用途において有用なリニア軸受が開示された。リニア軸受は殆ど遊びを有さず、動作中に摩擦が実質的にない。更に、複数の折返し板バネを使用する軸受は、実質的にゼロのバネ定数を有する。そのような軸受は便利であり、且つ、様々なパーソナルケア家庭用電化製品用途において、特に動力歯ブラシにおいて有用である。
【0020】
本発明の好適実施態様が例証の目的のために開示されたが、後続の請求項によって定められる本発明の精神から逸脱せずに、様々な変更、修正、及び、置換を実施態様に組み込み得ることが理解されるべきである。
【図1A−1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部材組立体と、
1組の板バネとを含み、
前記中央部材組立体は、そこに取り付けられるワークピース組立体を有し、
各板バネの一端部は、前記中央部材組立体に接続され、各板バネの他端部は、固定的な位置決め部材に接続され、前記板バネは、その両端部の間に約180°の屈曲があるように構成され、
バネ部材、前記中央部材組立体の他端部に接続される他の組の板バネ、又は、前記中央部材組立体の前記他端部を支持し、且つ、前記固定的な位置決め部材に或いは他の固定的な位置決め部材に接続されるブッシュを含み、動作中、前記1組の板バネ及び前記バネ部材又は他の組の板バネは、前記中央部材組立体及び前記ワークピース組立体と共に、往復的なリニア運動において前後に移動する、
リニア軸受。
【請求項2】
各組の板バネは、4つの直交する板バネを含む、請求項1に記載のリニア軸受。
【請求項3】
少なくとも1組の板バネは、3つの均等に離間する板バネを含む、請求項1に記載のリニア軸受。
【請求項4】
少なくとも1組の板バネは、互いに90°に位置付けられる2つの板バネを含む、請求項1に記載のリニア軸受。
【請求項5】
前記板バネは、0.01〜0.3mmの範囲内の厚さ、5〜30mmの範囲内の長さ、及び、1〜5mmの範囲内の幅を有する、請求項1に記載のリニア軸受。
【請求項6】
少なくとも一部の板バネは、直線的な側方縁部を有し、端部から端部まで同じ幅を有する、請求項1に記載のリニア軸受。
【請求項7】
少なくとも一部の板バネは、端部から端部まで幅が増大する直線的な側方縁部を有する、請求項1に記載のリニア軸受。
【請求項8】
少なくとも一部の板バネは、そのそれぞれの両端部でよりもその中間地点でより広い、請求項1に記載のリニア軸受。
【請求項9】
少なくとも一部の板バネは、そのそれぞれの両端部でよりもその中間地点でより狭い、請求項1に記載のリニア軸受。
【請求項10】
ハウジングと、
中央部材組立体と、
1組の板バネとを含み、
前記中央部材組立体は、そこに取り付けられるワークピース組立体を有し、
各板バネの一端部は、前記中央部材組立体に接続され、各板バネの他端部は、固定的な位置決め部材又は前記ハウジングに接続され、前記板バネは、その両端部の間に約180°の屈曲があるように構成され、
バネ部材、前記中央部材組立体の他端部に接続される他の組の板バネ、又は、前記中央部材組立体の前記他端部を支持し、且つ、前記固定的な位置決め部材に或いは他の固定的な位置決め部材又は前記ハウジングに接続されるブッシュを含み、動作中、前記中央部材組立体は、駆動組立体によって前後に移動され、前記1組の板バネ及び前記バネ組立体又は前記他の組の板バネを往復的なリニア運動において移動する、
パーソナルケア家庭用電化製品。
【請求項11】
当該パーソナルケア家庭用電化製品は、動力歯ブラシである、請求項10に記載のパーソナルケア家庭用電化製品。
【請求項12】
各組の板バネは、4つの直交する板バネを含む、請求項10に記載のパーソナルケア家庭用電化製品。
【請求項13】
少なくとも1組の板バネは、3つの均等に離間する板バネを含む、請求項10に記載のパーソナルケア家庭用電化製品。
【請求項14】
少なくとも1組の板バネは、互いに90°に位置付けられる2つの板バネを含む、請求項10に記載のパーソナルケア家庭用電化製品。
【請求項15】
前記板バネは、0.01〜0.3mmの範囲内の厚さ、5〜30mmの範囲内の長さ、及び、1〜5mmの範囲内の幅を有する、請求項10に記載のパーソナルケア家庭用電化製品。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A−6B】
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【図7A−7B】
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【図8A−8B】
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【図9A−9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【公表番号】特表2011−525960(P2011−525960A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514159(P2011−514159)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【国際出願番号】PCT/IB2009/052425
【国際公開番号】WO2009/156886
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】