説明

押出デリバリーシステム

溶融物エマルションの押出物を含む、油状の有効成分のための固体デリバリーシステムであって、該エマルションの連続相がマトリックス材料を含み、かつその分散相が油状の有効成分及び粘度改質成分、例えばエチルセルロースの有効量を含有する、固体デリバリーシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に酸化及び/又は熱崩壊に対して感受性のある成分のための、押出物の形でのデリバリーシステムに関する。本発明は、かかるデリバリーシステムの製造のための方法にも関する。
【0002】
背景技術及び先行技術
デリバリーシステム又はカプセル封入システムは、種々の産業において、有効成分を保護するために使用される。例えば、食品産業において、該デリバリーシステムは、しばしば、(i)食品の中に取り込まれる前の貯蔵中に、(ii)フレーバー成分と他の食品成分との混合中に、(iii)食品加工、例えば煮込及び焼き中に、(iv)輸送及び貯蔵中に、並びに(v)最終消費者による食品の製造中に、特に揮発成分の損失に対して、フレーバーを保護するために使用される。
【0003】
同様に、栄養産業において、しばしば、該デリバリーシステムを使用して、酸素感受性のある有効材料、例えば多価不飽和脂肪酸が豊富な魚油を、該材料の周りに酸素障壁を提供することによって保護する。
【0004】
かかる分野におけるデリバリーシステムの重要性によって、デリバリーシステムの種々の異なるタイプが存在することは、驚くべき事ではない。当業者に公知の種々のシステムの中で、典型的に、押出法は、押出し、そして押出された塊を急冷して、有効成分を保護するガラスを形成する前に、溶融状態まで加熱され、かつ有効成分、例えば酸素感受性油と合される、炭水化物マトリックス材料の使用に依存する。
【0005】
この分野における従来技術の開示の重要な一例は、油と抗酸化剤とを混合し、別に水とスクロースとDE20未満の加水分解させた穀粒固形分(cereal solid)とを混合し、2つの混合物を共に乳化し、得られた混合物を溶剤中で棒の形で押出し、過剰な溶剤を除去し、そして最後に凝結防止剤を添加することによって形成された精油組成物を記載している、特許US 3,704,137号にある。
【0006】
他の例は、US 4,610,890号及びUS 4,707,367号において記載されており、その際その組成物は、糖、デンプン水解物及び乳化剤を含有する水溶液を形成することによって製造される。精油を、密閉容器中で制御された圧力下で該水溶液と混合して、均一な溶融物を形成させ、そして比較的低温の溶剤中に押出し、乾燥し、そして凝結防止剤と合する。
【0007】
より最近、WO−A−2006/067647号において、水と炭水化物材料との濃縮シロップ中で油を乳化し、そのエマルションを金型を通して押出し、その押出物を冷却し、そして固体の押出された材料を溶媒液体で清浄して、カプセル化されていない過剰な油の除去を確実にすることによって、多価不飽和脂肪酸が豊富な油をカプセル化することが提案されている。これは、酸化に対して油を保護するための有効なシステムを提供する。
【0008】
前記の特許、及びそれらに挙げられている全ての他の先行技術は、種々のマトリックスに有効な固定に関する特許文献の相当量の説明に過ぎず、実質的に、ガラス状のポリマー材料、特に炭水化物マトリックスにおける有効材料の押出しによるカプセル化を開示している。
【0009】
従って、それらは、透明であり、押出物の形でデリバリーシステムを入手できるための多くの産業にわたって進行中の要求である。従って、本発明の目的は、この要求に対処することである。
【0010】
しかしながら、前記の文献において記載されている多くのマトリックスを形成する押出法において、その混合物は、しばしば、高温で、特に乳化及び押出工程中に、非常に長い滞留時間をうける。これは、カプセル化されるべき材料が、酸素に対して感受性がある、又は非熱耐性である場合に望ましくない。それというのも、かかる有効材料が、さらに高い温度で増加された露出により、さらに感受性があるようにされるからである。押出中にそれ自体明示しうる他の問題は、マトリックス(カプセル化)成分と有効材料との望ましくない反応が増加されることである。これは、追加の中間の冷却工程を導入することによって部分的に対処されうるが、しかしこれは、増加された下降時間、製造費用及び全体の複雑さを導く。
【0011】
他の問題は、マトリックス中の油状の有効成分の不十分な充填量、剪断し、従って加工中の温度を上昇することによって低減されたサイズのみでありうる液滴サイズ、及び一度形成された液滴サイズを維持することができないことを含む。
【0012】
従って、1つ以上のそれらの問題点に対処することが所望される。
【0013】
発明の詳細な説明
従って、本発明によって、本発明は、溶融物エマルションの押出を含む油状の有効成分のための固体デリバリーシステムを提供し、その際該エマルションの連続相は、マトリックス材料を含み、かつその分散相は、油状の有効材料、及び粘度改質成分の有効量を有する。
【0014】
本発明のデリバリーシステムは、マトリックス中の油状の有効材料の液滴の均一な分布を提供し、従って、貯蔵及び使用中の活性を安定化する。該有効材料は、実際に、均一に分散させる方法でマトリックス全体にわたって保持され、その結果、該有効材料の放出は、平衡で、かつ段階的である。
【0015】
本発明のデリバリーシステムは、特定の装置を要求せず、かつ典型的に公知の"湿式押出"又は"乾燥配合"("フラッシュフロー(flash−flow)"とも言われる)技術に従って使用されるあらゆる最新の押出機を使用して製造されることができ、その際、後者の技術は、もともと主に固体の塊の溶融物の、押出機中への供給を要求し、かつその形成物は、好適な溶剤中でマトリックスの前の溶液から得られた主に液体の塊の溶融物の押出を要求する。
【0016】
本発明のより多くの目的及び側面は、以下の詳細な説明から明らかになる。
【0017】
押出法によって、本明細書では、典型的に、マトリックス成分、油状の有効材料、並びに場合により、可塑剤及び乳化剤が、溶融物エマルションの形で、金型を通過させ、そして油状の有効材料を含有する固体生成物を形成するために冷却される方法を意味する。"溶融物"及び"溶融物エマルション"という用語は、本記載内容において区別なく使用され、かつ連続相として液体マトリックスと分散相としてそれらの中に分散させた疎水性粒子との双方を意味する。
【0018】
本明細書で使用されるように、"粒子"という用語は、固体物質及び液体の液滴の双方を意味する。
【0019】
溶融物は、当業者に公知のあらゆる方法で形成されうる。これは、均一な溶融物の形成を可能にする温度まで、例えば単軸又は二軸スクリュー押出機中で、マトリックス成分を加熱することを含む。代わりの例は、溶剤中、有利には水中でのマトリックス成分の溶解、続いて蒸発によるこの溶剤のいくらか又は全ての除去である。
【0020】
本発明のデリバリーシステムにおけるマトリックスとして、容易に加工されて乾燥した押出固体を形成することができるあらゆる糖又は糖誘導体を使用することができる。好適な材料の特定の例は、スクロース、グルコース、ラクトース、レブロース、フルクトース、マルトース、リボース、デキストロース、イソマルト、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール、ペンタトール、アラビノース、ペントース、キシロース、ガラクトース、水素化されたデンプン水解物、マルトデキストリン、Stabilite(登録商標)(SPI Polyols社製,USA)、オリゴフルクタン、トレハロース、寒天、カラゲナン、イヌリン、他のゴム、ポリデキストロース、並びにそれらの誘導体及び混合物からなる群から選択されるものを含む。
【0021】
本発明の好ましい一実施態様によって、前記のマトリックスは、マルトデキストリン、又はマルトデキストリンと、スクロース、グルコース、ラクトース、レブロース、マルトース、フルクトース、イソマルト、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール、トレハロース及び水素化されたデンプン水解物からなる群から選択された少なくとも1つの材料との混合物を含有する。該マルトデキストリンは、有利には、20以下のデキストロース当量(≦20DE)及び、より有利には5〜18のDEを有する。
【0022】
前記のマトリックス組成物は、本明細書で、例示として示したものであり、かつこれらは、本発明を制限するものとして解釈されるべきではない。多糖が特定の例として前記で挙げられるが、押出すことができ、かつ押出固体の製造においてマトリックス材料として現在使用されるあらゆる材料が、本発明の目的のために適切であることが明らかである。
【0023】
"有効成分"とも言われる油状の材料は、単一の疎水性化合物又は組成物、例えばフレーバー、香水、医薬品、機能性食品又は他の成分を示し、カプセル化することが望ましい。
【0024】
従来の押出システムにおいて、乳化及び/又は押出中の高温での長い滞留時間は、有効材料の望ましくない反応を導くことができ、特にその材料は、酸素であり、かつ又は熱感受性がある。分解反応は、例えば、エステルのエステル交換反応、カルボン酸のエステルの形成、アルデヒドの酸への酸化、ケトン及びアルデヒドからのアセタール形成、シス二重結合の異性化、トリグリセリドを含有する多価不飽和脂肪酸の重合化及び過酸化、硫黄含有化合物に対する酸化及び転位、マトリックス成分の酸触媒化加水分解、並びに熱で誘発された遊離基反応を含む。
【0025】
それにもかかわらず、本発明において使用されるデリバリーシステムは、保護酸素及び/又は熱感受性有効材料において特に有効であることが見出されている。従って、有効成分が、1つ以上の酸素又は熱感受性成分を含有することが、特に好ましい。
【0026】
有利には、本発明は、有利には、揮発性又は不安定なフレーバー、芳香、もしくは機能性食品成分又は組成物、特に有機溶剤に可溶であるが、しかし水には非常に溶けにくい疎水性液体のカプセル化のために使用される。より詳述すれば、本発明によってカプセル化されたフレーバー、芳香、もしくは機能性食品成分又は組成物は、有利には、30[MPa]1/2未満のHildebrand溶解パラメータによって特徴付けられる。最も油状の液体の水の不相容性は、実際に、一般的に25[MPa]1/2未満であるHildebrandの溶解パラメータδによって表されることができ、水に関する同様のパラメータは、48[MPa]1/2であり、かつアルカンに関しては15〜16[MPa]1/2である。このパラメータは、分子の凝集エネルギー密度に関する有用な極性尺度を提供する。生じる自発的な混合に関して、混合されるべき分子のδにおける差は、最小値が保たれるべきである。Solubility Parameters (ed. A.F.M. Barton, CRC Press, Bocca Raton, 1991)の手引きは、多くの化学物質に関するδ値の一覧、及び複雑な化学構造に関するδ値を計算することができる、推奨された群の寄与方法を示す。
【0027】
本明細書において使用される"フレーバーもしくは香水化合物又は組成物"という用語は、従って、天然及び合成の起源の種々のフレーバー及び香水材料を定義すると考えられる。これらは、単独の化合物及び混合物を含む。天然抽出物は、押出物中でカプセル化されてもよく、該抽出物は、とりわけ、例えば柑橘類の抽出物、例えばレモン油、オレンジ油、ライム油、グレープフルーツ油もしくはマンダリン油、又は香辛料の精油を含む。カプセル化に関するこの分類において特に好ましい有効材料は、不安定な及び活性のある成分を含有するフレーバー組成物、例えばベリー及び乳製品のフレーバーである。
【0028】
かかるフレーバー及び香水の構成成分さらに特定の例は、最新の文献において、例えばS. Arctander, Montclair NJ.(USA)によるPerfume and Flavour Chemicals, 1969; M.B. JacobsによるFenaroli's Handbook of Flavour Ingredients, CRC Press or Synthetic Food Adjuncts, van Nostrand Co., Inc.において見出されてよい。それらは、付香、フレーバー付与及び/又は着香した消費製品の、すなわち匂い又は味を消費製品に付与する当業者によく知られている。
【0029】
本発明のデリバリーシステムにおいてカプセル化されうる酸素感受性有効材料の重要な分類は、"多価不飽和脂肪酸が豊富な油"であり、本明細書で"PUFA’sが豊富な油"とも言われる。それらは、制限されることなく、あらゆる種々の起源、例えば魚又は藻類の油を含む。種々の方法、例えば分子蒸留を通してこれらの油が富化されることも可能であり、この方法を介して、選択された脂肪酸の濃度が増加されてよい。特に好ましいカプセル化のための組成物は、多価不飽和脂肪酸及びそれらのエステルを含有する機能性食品組成物である。
【0030】
本発明のデリバリーシステムにおける使用のためのPUFA’sが豊富な特定の油は、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、アラキドン酸(ARA)、及び少なくとも2つのそれらの混合物を含む。
【0031】
かかる油は、場合により、抗酸化剤が補われてよい。例えば、酸化防止剤が補われた油は、添加されたアスコルビン酸(ビタミンC)及び/又はトコフェロール(ビタミンE)を含有してよい。トコフェロールは、α−、γ−、又はδ−トコフェロール、又はそれらの2つ以上を有する混合物であってよく、かつこれは市販されている。トコフェロールは、油中で溶解性であり、かつ、酸化防止剤を含有する補われた油の0.05〜2%、有利には0.1〜0.9%の範囲の量で容易に添加されてよい。
【0032】
油状の有効材料は、有利には、押出されたデリバリーシステムの合計量に対して、約5質量%〜約40質量%の範囲の濃度で押出物中で存在する。
【0033】
本発明の記載内容において、粘度改質剤は、油相の有効な粘度を、その処理の温度で著しく増加することができるあらゆる材料である。特に、好適な粘度改質剤は、粘性化されていない油よりも、少なくとも10倍より大きく、より有利には少なくとも100倍より大きく油の粘度を増加するものである。好適な粘度改質剤の例は、エチルセルロース(例えば、Dow Chemicals社製のEthocel)、疎水性シリカ、シリコーン油、高粘度トリグリセリド、脂肪酸のスクロースエステル、脂肪酸のポリグリセロールエステル、有機親和性粘土、油可溶性ポリマー、高粘度鉱油(パラフィン及びナフテンの液体炭化水素)、オレアム処理した及び水素化した鉱油、石油ゼリー、微結晶ワックス及びパラフィンワックスを含む。
【0034】
好ましい粘度改質剤は、エチルセルロースであり、それというのも、油状の活性とマトリックスとの間の表面張力を下げ、それによって、さらにエマルションを形成するために要求されるエネルギーを低くする、表面活性の特性を有する追加の利点を提供することが見出されているからである。
【0035】
有利には、エチルセルロースの分子量は、有利には50000〜2000000、より有利には75000〜1500000、最も有利には100000〜1250000の範囲内である。
【0036】
有利には、改質されたセルロースエーテルの粘度は、50mPa.s〜1000mPa.s、より有利には75mPa.s〜750mPa.s、最も有利には100mPa.s〜500mPa.sであり、80%トルエン20%エタノールを基礎とする5%溶液として、25℃でUbbelohde粘度計で測定される。
【0037】
分散された油相において存在する粘度改質剤の量は、粘度改質剤及び油状の有効材料載せ異質に依存し、かつ従って、当業者によって適切な粘度を達成するために調整されうる。それにもかかわらず、粘度改質剤がエチルセルロースである場合、油状の有効材料とエチルセルロースとの質量比が、200:1〜1:4、より有利には50:1〜1:2、さらにより有利には40:1〜1:1、最も有利は30:1〜2:1、例えば20:1〜5:1である場合に、優れた結果を達することができることが見出されている。
【0038】
粘度改質剤の溶解性又は分散性を増加する1つ以上の追加の成分を含むことが所望されてよい。
【0039】
場合により、及び有利には、乳化剤が、混合物に添加されてよい。これは、油相及び溶融相との間の表面張力を低減し、それによって液滴形成に関するエネルギーを低くすることが見出されている。さらに、それは、一度形成された液滴を安定化しうる。好適な乳化剤の例は、レシチン、改質レシチン、例えばリゾリン脂質、DATEM、脂肪酸のモノ−ジグリセリド、脂肪酸のスクロースエステル、OSAデンプン、ナトリウムオクテニルスクシネート、化工デンプン、アラビアガム、脂肪酸のクエン酸エステル、及び参考文献例えばG.L. Hasenhuettl及びR. W. Hartel.によって編集されたFood Emulsifiers And Their Applications, 1997において挙げられているような他の好適な乳化剤を含む。
【0040】
レシチン及び改質レシチンは、特に、本発明における使用のための好ましい乳化剤である。好適な例は、制限されることなく、大豆レシチン(例えば、Yelkin SS、Archer Daniel Midlands社製)、及びリゾリン酸(例えばVerolec HE60、Lasenor社製)を含む。
【0041】
他の任意の成分は、マトリックス中で存在しうる。例えば、水は、炭水化物の特性を改質するために存在してよい。例えば、DE(デキストロース当量)18を有する炭水化物ガラスに関して、混合物中で5〜15%の水が、最終産物中に存在してよい。
【0042】
同様に、補助剤、例えば食品グレードの着色剤は、着色されたデリバリーシステムを提供するために、一般的に公知の方法で、本発明の押出し可能な混合物にも添加されうる。
【0043】
有利には、押出物の形でのデリバリーシステムは、実質的に均一なグラニュロメトリーの粒子を含む。有利には、平均直径を基礎とするその顆粒の平均粒子サイズは、200〜4000ミクロンである。その押出物は、種々の方法によって顆粒中で形成されることができ、以下に記載されている物が最も好ましい。
【0044】
カプセル化された材料がフレーバー油を含有する場合に、有利には、非常に種々の食用の製品、すなわち食品、飲料、医薬品等の官能的特性を付与又は改質するために使用されうる。一般的な方法において、それらは、対応する、押出されていないフレーバー材料の典型的な官能的効果を高める。
【0045】
有効材料が、多価不飽和脂肪酸が豊富な油、又は油を含有する機能性食品組成物である場合に、該有効成分は、健康利益が所望される場合に、あらゆる食物において提供されうる。かかる製品において、本発明のデリバリーシステムの他の利点は、取り込まれる食物のフレーバーと相容性でなくてよい、多価不飽和脂肪酸が豊富な油のフレーバーを隠すことができることである。
【0046】
デリバリーシステムがかかる消費製品中で取り込まれうる濃度は、広範囲の値で変動し、消費製品の性質に及び使用される本発明の特定のデリバリーシステムに依存する。
【0047】
例として厳密に取られるべき典型的な濃度は、フレーバー付与組成物又はそれらが含まれる仕上げられた消費製品の質量の少ないp.p.m.(百万分率)から5%まで又はさらに10%までの広い値の範囲で含まれる。
【0048】
マトリックス成分、油状の有効材料及び粘度改質剤の溶融物エマルションから形成される押出されたデリバリーシステムは、粘度改質剤が乳化工程の前に分散させた油相中へ混合される、当業者に公知の最新の押出方法から改質される方法によって製造される。
【0049】
従って、本発明は、
a)油状の有効材料と粘度改質剤とを混合して、その油状の有効材料と比較して高められた粘度を有する実質的に均一な液体を提供する工程、
b)工程(a)からの液体と、押出可能なマトリックス材料とを混合する工程、
c)その混合物を乳化して、連続相がマトリックス材料を含有し、かつ分散相が粘度改質剤及び油状の有効成分からなるエマルションを製造する工程、
d)乳化された塊を、金型を介して押出す工程、
e)場合により押出された材料の粒子を形成する工程、並びに
f)場合により、その押出物を乾燥する工程、
を含む、押出物の形で、好適な有効成分のデリバリーシステムを製造する方法にも関する。
【0050】
場合により、及び有利には、乳化剤は、工程(a)及び/又は工程(b)で添加されてよい。
【0051】
本発明の方法の好ましい一実施態様によって、工程a)は、必要であれば、加熱しながら、前記の成分の高剪断混合によって実施される。場合により、補助溶剤又は界面活性剤、例えばレシチンが、存在しうる。これは、実質的に均一な分散液又は溶液を形成するために要求されるエネルギーを低減する。
【0052】
工程c)は、有利には、インラインの乳化法を使用して実施される。分散相における粘度改質剤の存在によって、乳化を達成するために要求されるエネルギー及び/又は時間が、公知の方法における従来の要求よりも著しく低いことが見出されている。これは、結果として、乳化中に上昇する温度を低減し、かつ/又は高温に対して感受性のある有効材料の非常に短い時間の露出を可能にする。
【0053】
これは、種々の公知の方法と比較して、中間の冷却工程が典型的に溶融エマルションを冷却するために他の公知の方法を要求する場合に、溶融物エマルションが、高温で非常に長い時間、例えば1時間まで押出しの間に、保持されることが必要である場合に、前記で強調された問題を導く。
【0054】
本発明によって処理された有効材料の低減された露出は、いくつかの追加の利点を、例えば、フレーバーの場合においては、元来の(未加工の)フレーバー油に近いフレーバーの特性を、機能性食品、例えば多価不飽和脂肪酸が豊富である油の場合においては、それらの中で不安定な成分の分解のより少ない危険も提供する。
【0055】
分散相が、連続相の粘度に近い粘度を有することが望ましい。このことは、これが、乳化中に要求されるエネルギー入力をさらに低減することが見出されているからである。従って、分散相と連続相との間の粘度比は、有利には1:1000〜1:1、より有利には1:500〜1:1、最も有利には1:100〜1:1である(最も有利には、できるだけ1:1に近い)。優れた結果は、やはり、1:100〜1:10の比の範囲内で達せられる。
【0056】
工程d)は、実験を通して当業者によって導き出されうる条件下で実施される。例えば、90〜130℃の温度、100bar(107Pa)までの圧力、及び約0.250〜10mmの予め決定された直径を有する金型開口部が、使用されうる。もちろん、種々の温度、圧力及び金型の直径が可能でもあり、かつ事務的な試行錯誤を通して、当業者によって容易に確かめられうる。
【0057】
同様に、使用される装置の型及び設計は、本明細書で詳細な記載を必要とせず、その際、この分野における専門家は、押出固体の所望の特定の形状及びサイズのための最新の装置、それらの技術特性、及び適切な装置の選択をよく知っている。
【0058】
工程d)における増加された温度の要求が、前記で与えられている理由のために所望されない場合に、本発明の利点は、この工程における滞留時間が十分に短く、典型的に従来の押出法に関する有効成分における著しい分解又は蒸発問題が大いに回避されうることである。
【0059】
工程e)に従って、前記の押出物は、あらゆる好適な方法によって粒子中で形成されうる。例えば、該押出物は、該押出物がプラスチック状態である場合に細断されることができ(溶融物顆粒又は湿潤顆粒技術)、又は該押出物は、液体溶剤中で冷却されて押出物固体を形成することができ、その際、粉砕、微粉砕等がなされる前に、その形状及びサイズが、押出パラメータの関数として調整されうる。
【0060】
所望される場合に、金型の開口部が、それ自体、カッターナイフ又はあらゆる他の切断装置を装備しうる。代わりに、その切断装置は、別々に下流で金型の開口部から提供されうる。
【0061】
工程f)によって、押出によって得られた粒状固体は、例えば、凝結防止剤、例えば酸化ケイ素の使用によって乾燥されうる。
【0062】
従って、押出工程が実施される条件下での温度及び圧力は、従って、特定の努力なしに、当業者によって、並びにエマルションにおいて存在する成分の性質の、及び得るために所望される生成物の質、すなわちそのグラニュロメトリー及び形状の機能として、調整されうる。対照的に、押出する前のエマルションを形成するための条件は、公知ではなく、かつ本明細書で挙げられる制限によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施例7における試料1を示す図。
【図2】実施例7における試料2を示す図。
【図3】実施例7における試料3を示す図。
【0064】
実施例
本発明は、次の実施例によってさらに詳細に記載されている。
【0065】
実施例1
押出されたデリバリーシステムの製造
【表1】

【0066】
粘性化した魚油を、高剪断混合下で、エチルセルロース及びレシチンと加熱することによって製造した。個々に、マルトデキストリン及びスクロースを、水中で溶解し、そして126℃まで加熱して、含水率を約7%まで低減した。粘性化させた魚油混合物を、マルトデキストリン/スクロース混合物に添加し、そして混合して、マルトデキストリン/スクロース混合物の連続溶融物相内で油液滴の均一な分散液を形成した。その混合物を、圧力2bar下で、0.5mmの穴を有する金型板を通して押出した。その押出物を乾燥して、そして1%二酸化ケイ素を、易流動化剤として添加した。この最終生成物は、魚油10質量%、湿分3.9%を有し、かつガラス転移温度35.7℃を有した。
【0067】
実施例2
実施例1を繰り返したが、魚油の代わりに、オレンジ油(Firmenich社製、Switzerland, ref. 381106 08403TA)を使用した。この最終生成物は、オレンジ油10質量%、湿分3.9%を有し、かつガラス転移温度35.7℃を有した。
【0068】
実施例3
実施例1を繰り返したが、魚油200gの代わりに400gを使用した。この最終生成物は、魚油20質量%、湿分3.9%を有し、かつガラス転移温度35.7℃を有した。
【0069】
実施例4
実施例1を繰り返したが、スクロースの代わりに、イソマルトを使用した。この最終生成物は、魚油10質量%、湿分4.2%を有し、かつガラス転移温度33.4℃を有した。
【0070】
実施例5
実施例1を繰り返したが、Ethocel300の代わりに、Ethocel100を使用した。この最終生成物は、魚油10質量%、湿分3.9%を有し、かつガラス転移温度35.7℃を有した。
【0071】
実施例6
二軸スクリュー押出機を使用した押出されたデリバリーシステムの製造
【表2】

【0072】
粘性化したオレンジ油を、高剪断混合下で、エチルセルロースと加熱して製造した。炭水化物溶融物を、二軸スクリュー押出機を使用して形成し、そしてオレンジ油を、歯車ポンプによって、溶融塊中に注入し、そしてそれを混合して、油液滴の均一な分散液を連続溶融物層内で形成した。その混合物を、圧力2bar下で、2mmの穴を有する金型板を通して押出した。この最終生成物は、オレンジ油10質量%、湿分3.9%を有し、かつガラス転移温度60℃を有した。
【0073】
実施例7
エマルション補助としてのエチルセルロースの評価
次の組成物を有するエマルションを製造した:
【表3】

【0074】
最初の工程において、スクロースとマルトデキストリンとを、水中で、加熱及び撹拌下で分散し、そして溶解した。そして得られた溶液を、溶融物温度128℃に達するまで加熱して、湿分含有率を低減した。そしてその混合物を、冷却させた。
【0075】
第二工程において、油、レシチン(存在する場合に)、及びエチルセルロース(存在する場合に)を含有する油配合物を、スクロース/マルトデキストリン溶液に添加し、そして剪断下でエマルションが形成されるまで分散した。
【0076】
その溶融物エマルションを、冷却させて、そして光学電子顕微鏡及び顕微鏡写真によって考察した。試料1〜3を、それぞれ図1〜3で示す。
【0077】
顕微鏡写真からの典型的な領域を、Image−Pro Plus Express(Media Cybernetics, Inc.)のソフトウェアを使用して解析した。試料領域内に存在するそれぞれの油液滴の直径を測定した。最も小さい液滴は、試料1のエマルションで見出され、平均油液滴直径3.5μmを有した。試料2のエマルションは、平均液滴直径5.4μmを有した。試料3のエマルションは、平均液滴直径7.1μmを有した。従って、エチルセルロース(試料2)の使用は、エチルセルロースの不在下(試料3)で得られるよりも小さい液滴サイズが、及びレシチンの存在下(試料1)で、さらに小さい液滴サイズが得られ、所望の低減された液滴サイズをエネルギー(及び熱)入力を増加せずに得られる証明を提供した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融物エマルションの押出物を含む、油状の有効成分のための固体デリバリーシステムであって、該エマルションの連続相がマトリックス材料を含み、かつその分散相が油状の有効成分及び粘度改質成分の有効量を含有する、デリバリーシステム。
【請求項2】
前記の分散相が、粘度改質剤の不在下で、同一の分散相の粘度よりも少なくとも10倍高い粘度を有する、請求項1に記載のデリバリーシステム。
【請求項3】
前記の分散相と連続相との粘度の比が、1:100〜1:1である、請求項1又は2に記載のデリバリーシステム。
【請求項4】
前記の分散相が、油状の有効材料として、多価不飽和脂肪酸が豊富な油を含有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載のデリバリーシステム。
【請求項5】
前記の粘度改質成分が、場合により改質されたセルロースエーテル又はシリコーン油から選択される、請求項1から4までのいずれか1項に記載のデリバリーシステム。
【請求項6】
前記の粘度改質成分が、エチルセルロースである、請求項5に記載のデリバリーシステム。
【請求項7】
前記の油状の有効材料とエチルセルロースとの質量比が、200:1〜1:4である、請求項6に記載のデリバリーシステム。
【請求項8】
乳化剤が、溶融物エマルション中に存在する、請求項1から7までのいずれか1項に記載のデリバリーシステム。
【請求項9】
前記の乳化剤がレシチンである、請求項1から8までのいずれか1項に記載のデリバリーシステム。
【請求項10】
前記のマトリックスが、スクロース、グルコース、ラクトース、レブロース、フルクトース、マルトース、リボース、デキストロース、イソマルト、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール、ペンタトール、アラビノース、ペントース、キシロース、ガラクトース、水素化されたデンプン水解物、マルトデキストリン、トレハロース、オリゴフルクタン、Stabilite(登録商標)寒天、カラゲナン、ゴム、ポリデキストロース、並びにそれらの誘導体及び混合物からなる群から選択される、請求項1から9までのいずれか1項に記載のデリバリーシステム。
【請求項11】
前記のマトリックスが、マルトデキストリン、又はマルトデキストリンと、スクロース、グルコース、ラクトース、レブロース、マルトース、フルクトース、イソマルト、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール及び水素化コーンロップからなる群から選択された少なくとも1つの材料との混合物から形成される、請求項10に記載のデリバリーシステム。
【請求項12】
前記のマトリックスが、有利にはDE20未満を有するマルトデキストリンを含有する、請求項11に記載のデリバリーシステム。
【請求項13】
前記の油状の有効材料が、デリバリーシステムの全質量に対して、約5質量%〜約40質量%の範囲の濃度で押出物中に存在する、請求項1から12までのいずれか1項に記載のデリバリーシステム。
【請求項14】
前記の油状の有効材料が、柑橘類及び他の果実油、ミント油、ナッツ油、並びにそれらの混合物からなる群から選択されるフレーバー油である、請求項1から13までのいずれか1項に記載のデリバリーシステム。
【請求項15】
以下、
a)油状の有効材料と粘度改質剤とを混合して、その油状の有効材料と比較して高められた粘度を有する実質的に均一な液体を提供する工程、
b)工程(a)からの液体と、押出可能なマトリックス材料とを混合する工程、
c)その混合物を乳化して、連続相がマトリックス材料を含有し、かつ分散相が粘度改質剤及び油状の有効成分からなるエマルションを製造する工程、
d)乳化された塊を、金型を介して押出す工程、
e)場合により押出された材料の粒子を形成する工程、並びに
f)場合により、その押出物を乾燥する工程、
を含む、好適な押出された有効成分のデリバリーシステムを製造する方法。
【請求項16】
請求項1から14までのいずれか1項に記載のデリバリーシステムを含有する、食物、飲料、食用組成物、医薬品組成物、機能性食品組成物、チューイングガム又は練り歯磨き。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−530240(P2010−530240A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512817(P2010−512817)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【国際出願番号】PCT/IB2008/052335
【国際公開番号】WO2008/155696
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1,route des Jeunes, CH−1211 Geneve 8, Switzerland
【Fターム(参考)】