説明

押出成形された材料に単軸又は多軸方向の剛性を付与する方法及び同方法により得られる製品

材料の単数又は複数の表面に溝又は断面形状を付与することにより、材料の剛性を改質する方法が記載されている。本方法によって作られる材料、並びに鼻腔拡張器、包装材、建築用材料、及び医療装置の様な、同材料を使って作られる製品も記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形された材料に単軸又は多軸方向の剛性を付与する方法及び同方法により得られる製品に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2006年8月30日出願の米国仮特許出願第60/841,403号の優先権の恩典を主張する。
材料製造業では、長年にわたり、プラスチックポリマーシート材料は押出成形されている。その様な押出成形には、プラスチックシート材が押し出される際にその上に艶消し仕上の様な肌理をインプリントするためのエッチング用鋼ローラーが含まれている。例えば、自動車の内装用として「本革風」に仕上げられるプラスチック材料は、「本革風」の外観をシート状ポリマー材料にインプリントすることによって作られる。
【0003】
より最近では、エッチング又は機械加工されたローラーが、トラック荷台の中敷に使用されているものの様なシート状のプラスチック材料にダイヤモンド形パターンの様なより複雑な図案を付与するのに使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国仮特許出願第60/841,403号
【発明の概要】
【0005】
本発明は、材料の1つ又は複数の表面に付与された単数又は複数の溝又は断面形状によって得られる所望の剛性を有する材料に着目している。これらの溝は、ウェブを横断して均一に連続していてもよいし、非連続であってウェブ全体を通して剛性が交互に入れ替わるか又は変化するようにしていてもよい。本発明は、材料を作るための方法にも着目している。
【0006】
本発明は、本発明の材料を使用した鼻腔を拡張するための鼻腔拡張器にも着目している。材料は、鼻に固定された時、鼻道を持ち上げて拡張するのに十分な剛性を有しているのが望ましい。
【0007】
本発明は、ここに説明している材料から作られる医療装置、包装材、又は建築用材料にも着目している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】従来型のポリマーシート押出成形の略図を示している。
【図2a】本発明の溝付き材料の図である。
【図2b】本発明の溝付き材料の別の図である。
【図2c】本発明の溝付き材料の別の図である。
【図2d】本発明の溝付き材料の別の図である。
【図2e】本発明の溝付き材料の別の図である。
【図3a】本発明の溝付き材料の断面図である。
【図3b】本発明の溝付き材料の別の断面図である。
【図4】本発明の材料を押出成形するのに適した押出成形装置の略図である。
【図5a】本発明の溝付き材料の別の実施形態の図である。
【図5b】本発明の溝付き材料の図5aの実施形態の別の図である。
【図6a】押出成形された材料に溝が付与されてゆく工程図である。
【図6b】押出成形され溝が付与された材料に粘着剤層とリリースライナー層が貼り付けられてゆく工程図である。
【図7a】本発明により作られた鼻腔拡張器の或る実施形態の図である。
【図7b】本発明により作られた鼻腔拡張器の図7aの実施形態の別の図である
【図8】本発明により作られた鼻腔拡張器の別の実施形態の図である。
【図9a】本発明により作られた鼻腔拡張器の別の実施形態の図である。
【図9b】本発明により作られた鼻腔拡張器の別の実施形態の図である。
【図9c】本発明により作られた鼻腔拡張器の別の実施形態の図である。
【図10a】使用者の鼻に着用された本発明の鼻腔拡張器の図である。
【図10b】使用者の鼻に着用された本発明の鼻腔拡張器の図である。
【図10c】使用者の鼻に着用された本発明の鼻腔拡張器の図である。
【図11】本発明の鼻腔拡張器の別の実施形態の図である。
【図12】本発明の鼻腔拡張器の別の実施形態の図である。
【図13】本発明の鼻腔拡張器の別の実施形態の図である。
【図14】梁に掛かる点荷重の計算に用いられる変数を説明している図である。
【図15】梁に掛かる分布荷重の計算に用いられる変数を説明している図である。
【図16】慣性モーメントの計算に用いられる変数を説明している略図である。
【図17】溝に沿って切り離された溝付き材料の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、押出成形されたポリマー材料に機能的構造的変化を与えると、その結果、ポリマーの構造幾何学に物理的な変化が生じ、それによって、シート状の材料に単軸又は多軸方向の方向性の効果がもたらされる、という予期せぬ発見に着目している。
【0010】
従来、ポリマー材料の二軸及び単軸方向の方向性は、ポリマーを押出成形し冷却しながら延伸して、ポリマーを分子レベルでポリマーが延伸される方向(大抵は機械加工方向のみ)に向かせることによって達成されている。この方法は、高価な工具と特化された専門技能をしばしば必要とする。従来の押出成形の概略図を図1に示している。ポリマー材料5は、押出成形ダイアッセンブリ6を通して送り出される。材料5は、ダイアッセンブリ6を出ると、チル又はニップロール7上で冷却され、その後、必要に応じて更に加工される。
【0011】
本発明では、ポリマーを冷却しながら延伸するのではなく、意外にも、ポリマーシート又はウェブが押出成形される時に、それに、溝又は場合によっては不連続な断面形状をエッチングすることによって、ポリマー材料に単軸方向の方向性の効果を実現することが可能である。結果として、物理的手段により、分子的方向性を再構成する効果を生み出すことが可能になった。また、材料を一方向に強化すれば、他方向の強度は低くなるため、押出成形された材料の曲げ特性及び他の特性を相当な範囲まで制御することができる。本発明によれば、チャネルが特定の程度まで弱体化された溝付き材料のウェブを作成して、チャネルに沿ってほんの少し力を加えるだけで、チャネルの外側がむしり取られることなくウェブを割くことができ、実質的に鋭利な又はぎざぎざの縁部のないきれいな割け口となるようになっている。
【0012】
「溝」という用語は、ここでは、任意の長さと幅、及びどの様なものであれ上面図又は断面図の何れかにより判断して溝の外観又は設計を有している、あぜ又はチャネル(連続又は不連続)を含むものとして使用されている。溝の形状、寸法、及び頻度は、所望の剛性を材料に付与できるように選択されるのが望ましい。所望の剛性は、一部には、押出成形される材料の種類、材料の厚さ、材料の曲げ弾性率、及び溝又は得られるウェブ断面の設計又は外観に基づいて選択することができる。
【0013】
「曲げ弾性率」は、ここでは、弾性限界内で曲げた時に試験標本に掛かる応力対同標本の最も外側の繊維の対応する歪の比を指すものとする。
ここでは、「単軸方向の方向性」又は「多軸方向の方向性」は、分子の方向性の再構成を生じさせる条件下で、高温のポリマーフィルム又は他の物品を1つ又は複数の方向に延伸する工程を指すものとする。
【0014】
本発明の溝付き材料の1つの実施形態を、図2aから図2eに示している。図2eに最も分かりやすく示しているように、材料10は、材料10の表面に付与された少なくとも1つの溝12を有している。図3aと図3bは、材料10の図2dのx−x’線に沿った断面図を示している。図3aと図3bに最も分かりやすく示しているように、溝12は、Rとして示されている厚さ又は高さと「X」として示されている幅を有する畝13を備えている。溝12は、更に、1つ又は複数の谷14を備えており、各畝13には、少なくとも一方の側又は両方の側に、谷14によって、図3bで14aと14bによって示されるフランク面が形成されている。谷14は、厚さRと「Y」として示されている約0.5Xの幅を有する底又は基部16を有しているが、これら相対寸法は、所望の剛性の度合いによって変わる。
【0015】
溝の山と谷の幅と高さ又は厚さは、機械加工方向と横断方向の両方向に正確な剛性を提供するように計算される。均一で平坦な材料ウェブでは、方程式は、
剛性=(F×T)(1/12)
であり、ここにFは、出発原料の曲げ弾性率であり、Tは、材料の厚さである。
【0016】
溝は、機械方向又は横断方向の何れかの方向に単軸方向の方向性の効果を発揮することができる。溝が材料に対して機械加工方向に形成された実施形態では、厚さ(T)は、図3に示す材料の溝の山に基部の厚さを加えた合計である。横断方向については、厚さは材料の基部の厚さである。
【0017】
溝は、従来の押出成形技術、又は材料に溝又は断面形状又はチャネルを作成することができる何れか他の方法を用いて材料上に付与すればよく、例えば、溝を材料に一体成形、熱成形、又は真空成形するなどによって付与することができる。適した押出成形工程の例を図4に示している。材料10は、押出成形器20を出て、ニップローラー22と24の中に給送される。本発明の1つの実施形態では、ニップローラー22は、溝の様な第1の肌理を材料に付与する。随意的に、別のニップローラー26を追加することにより、第2の肌理を材料に付与してもよい。ニップローラー26により付与される第2の肌理は、第1の肌理と同じであってもよいし、異なっていてもよい。第2の肌理は、第1の肌理と同じ加工方向に付与されてもよいし、第1の肌理に垂直な方向、の様な異なる方向に付与されてもよい。上で説明した溝状の肌理に加え、材料の1つ又は複数の面に適した他の肌理の例として、艶消し風の肌理、織物風の肌理、本革風の肌理、各肌理の組み合わせなどが挙げられる。
【0018】
本発明の溝付き材料を作るのに使用されるニップローラーは、凹凸があると、溝の寸法を注意深く計算することにより実現される所望の特性を提供できなくなるので、ほぼ完全に円形であるのが望ましい。溝寸法は、所望寸法とのずれができる限り小さくなるようにして材料に付与されるのが望ましい。正弦波の様な繰り返し様式の図案が機械方向に配置される場合は、周方向にロールに巻き付けて配置される時、図案が繋がるように注意しなければならない。
【0019】
溝は、どの様な形状で付与されてもよい。1つの実施形態では、真っ直ぐな溝が材料にエッチングされている。別の実施形態では、正弦波状の溝が材料にエッチングされている。図に示す実施形態の溝は、平行又は正弦波状の何れかのパターンで付与されている。限定するわけではないが、ジグザグ、帆立貝模様、襞、及び各パターンの組み合わせ、の様な他のパターンも本発明では考えている。パターンは、材料に沿って連続していても不連続であってもよいし、規則的であっても不規則であってもよいし、1つ又は複数の場所で交差させて交差部では強度又は剛性が高くなるようにしていてもよい。
【0020】
溝の形状は、単語、絵、盛り上がった透かし模様、又はロゴの様な他の図案でエッチングしてもよい。溝は、横断方向に変化する厚さを有していてもよいし、又は、単一又は一連の溝の間に溝なし部分を設けていてもよい。厚さが変化している溝を有する材料の例を図5aと図5bに示している。
【0021】
溝は、材料に単軸又は多軸方向の方向性の効果をもたらすことの他に、材料の表面積を増やし、限定するわけではないが、粘着剤、染料、薬剤、香料などの様な追加の物質を塗布するための桶部を提供するのにも使用される。
【0022】
本発明の方法に使用するのに適した材料には、どの様な成形可能な材料も含まれる。その様な材料としては、限定するわけではないが、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、高密度ポリエチレン(HDPE)と低密度ポリエチレン(LDPE)と高分子量ポリエチレン(HMWPE)を含めたポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)とグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)を含めたポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、ビニール、リノリウム、、ゴムコンパウンド、アクリル、ナイロンコンパウンド、ポリ乳酸及びポリヒドロキシアルカノエートの様なトウモロコシ由来樹脂又は他の生体分解性樹脂、上記の何れかの組み合わせなどの様な熱可塑性ポリマー材料が挙げられる。
【0023】
上記の成形可能な材料の他に、追加の成分を押出成形前又は押出成形中又は押出成形後に同材料に加えてもよい。その様な成分の例には、限定するわけではないが、香料、薬剤、同毒療法的組成物、芳香療法的組成物、抗菌剤、粘着剤、染料、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0024】
図6aは、押出成形された材料に溝を付与している工程図である。材料が押出成形ダイ31を通過した後、押出成形された材料30は、エッチングされたニップローラー32と艶消し仕上げ用ニップローラー33の間を通る。エッチングされたニップローラー32は、押出成形された材料30に谷を型押しすることによって同材料に溝を付与する。得られた溝付き材料35は、次いで、巻き取りローラー34に巻き取られる。
【0025】
材料に溝が付与された後、溝付き材料の片面に粘着剤層とリリースライナー層を貼り付けてもよい。図6bは、粘着剤層40とリリースライナー層46が、押出成形された溝付き材料35に貼り付けられてゆく工程図である。粘着性材料が押出成形ダイ41を通過して粘着剤層40となる。溝付き材料35とリリースライナー層46は粘着剤層40を挟んで両側に配置されている。溝付き材料35は、材料35の溝付き面を下向きに粘着剤層40に向き合うようにして配置されている。溝付き材料35と粘着剤層40とリリースライナー層46はニップローラー42の間を通って多層構造の製品45になる。この多層構造の製品45では、粘着剤層40による粘着剤が、溝付き材料35の溝と接触し、及び/又は溝の中に埋め込まれている。多層構造の製品45は、巻き取りローラー44に巻き取られてもよい。
【0026】
材料が押出成形され、溝が付与された後、更に加工を施すこともできる。例えば、溝付き材料を所望の形状に切断するか又は打ち抜き、切断された細片を更に加工して最終製品にすることもできる。色素レーザーを使用して、所望の画像又は図案を材料の片面又は両面に付与することもできる。
【0027】
出発原料の既知の曲げ弾性率を用いることによって、得られる剛性を予測(及び、しかるべく調整)して所望の製品に仕上がるようにしてもよい。その様な製品の例には、限定するわけではないが、包装材、医療装置及び消費者健康用品、及び建築用材料が挙げられる。下に説明している本発明の1つの実施形態は鼻腔拡張器に関している。
【0028】
本発明は、製品中の1つ又は複数の材料の剛性が或る特定の曲げ度合い内で制御され及び/又は制御可能であることが望ましい、どの様な種類の製品を作るのにも使用することができる。本方法は、例えば、製造中及び配送中は原形を保つのに十分な強度を必要とするが、但し、末端利用者が必要に応じて容易に分離させることができる、引き割き型の製品を作るのに用いることができる。本発明の別の用途として、溝状の図案をインプリントして、それを箱又は角の様な設計に折る場合の折り始めの区域にすれば容易に折ることができる、ということが挙げられる。他の用途では、1つの方向対別の方向で異なる剛性を付与する能力を利用している。更に、溝は、ウェブを二つ折りにした場合に、溝が互いに入り込むように作ることもできる。ポリマーの処方は、ウェブを二つ折りに重ねるか別のシートに重ね合わせた際、ウェブが貼り付くことができるようする粘着性付与剤を含んでもよい。溝によって表面積を増やすと、溝を互いに入り込ませて加熱した場合の縁部のヒートシール性を向上させることもできる。
鼻腔拡張器
鼻腔拡張器によって、多くの人々はいびき又は鼻づまりが軽減した。米国特許第5,533,499号、第5,706,800号、及び第7,114,495号に示されている様な鼻腔拡張器は、通常は、1つ又は複数の弾性帯を含んでいる。弾性帯には、帯の両端が互いに近づくように曲げられた時、平面状態に復帰しようとする傾向がある。鼻腔拡張器が使用者の鼻に固定された時、弾性帯の平面状態に復帰しようとする傾向は、呼吸中に使用者の鼻道の外側壁組織が引き込まれるのを防ぐ働きをする。鼻腔拡張器は、弾性帯に加えて、鼻腔拡張器の快適性と効能を高めるために追加の可撓性を有する層を含んでいることが多い。
【0029】
Johnsonに発行された米国特許第5,476,091号で論じられているように、弾性帯と使用者の皮膚の間に配置された可撓性を有する材料条片は、拡張器の弾性から生じる剥離力を行き渡らせるが、この弾性によって別に鼻腔拡張器が使用者の各皮膚部分から偶発的に外れてしまう恐れがある。鼻腔拡張器が使用者の皮膚から離れると、使用者が皮膚に痒み感を感じることがある。従って、可撓性を有する材料条片は、剥離力を行き渡らせることにより、さもなければ使用者が感じることになる痒み感を実質的になくすことができる。
【0030】
Johnsonに発行された米国特許第5,611,333号に記載されているように、鼻腔拡張器は、弾性帯の最上部を覆う可撓性を有する最上部材料条片を含んでいてもよい。可撓を有する最上部材料条片は、弾性帯と基部材料の分離防止を支援することを目的として含まれていてもよい。また、最上部材料は、鼻腔拡張器の剛性を増すことを目的として含まれていてもよい。
【0031】
長時間使用しても、また多くは一晩中使用しても、快適でありながら、且つ鼻道を持ち上げて開通するのに必要な力を提供することができ、使用者の鼻からやさしく簡単に取り外せる、改良された鼻腔拡張器が今なお必要とされている。
【0032】
本発明の方法論を用いれば、或る特定の一連の溝を材料に付与することにより、特定の曲げ特性を有する材料を備えた鼻腔拡張器を製造することが可能になる。本方法では、鼻道を効果的に拡張させるのに必要な所望の単軸方向の曲げ剛性を有する鼻腔拡張器を作るのに、プラスチックポリマー又は他の材料に対して押出成形技術を使用している。
【0033】
十分な拡張を提供するために、鼻腔拡張器は、最初に鼻に固定された時に鼻道の組織を持ち上げることができるのが望ましく、期間中も使用者が激しい不快感を持つことなく引き続き鼻の組織の持ち上げを持続することができるのが望ましい。所望の使用期間が終わると、鼻腔拡張器は、使用者に激しい不快感を与えることなく、使用者の鼻から容易に取り外すことができるのが望ましい。
【0034】
本発明による溝付き鼻腔拡張器は、外側鼻軟骨構造、大鼻翼軟骨構造、及び小鼻翼軟骨構造を持ち上げることができるのが望ましく、更に、鼻の前鼻孔開大筋と後鼻孔開大筋を支援するのが望ましい。溝付きの鼻腔拡張器は、使用者の皮膚に向き合う面に粘着剤の様な何らかの様式の係合手段を含んでいる。粘着剤は、皮膚刺激を引き起こすことなしに皮膚に取り外し可能に粘着するのが望ましい。或る好適な実施形態では、粘着性材料は、皮膚表面から放散される水分を吸収するか又は透過させることができる材料である。その様な粘着剤の1つの例に、人工肛門袋の粘着又は傷の手当に広く一般に用いられている親水コロイド粘着剤がある。親水コロイドを溝に埋め込めば、鼻腔拡張器の全体輪郭にとって厚さ又は嵩が大きく膨れ上がることなく、水分を蓄えるための更に大きな貯留部を提供することができる。溝付きの鼻腔拡張器は、拡張器の着用中も拡張器を取り外すときも、使用者に激しい不快感を与えることなく、一定期間の間所定の位置に留置することができる。
【0035】
呼吸中に使用者の鼻道の外壁組織が引き込まれるのを有意に低減するため、本発明の鼻腔拡張器は、或る剛性を備えて作られ鼻に直接粘着させる溝付き材料を使用している。溝付き材料の弾性は、米国特許第5,533,499号、同第5,706,800号、及び同第7,114,495号に記載されている鼻腔拡張器の弾性帯の様な1つ又は複数の弾性帯の必要性を減らすか又はなくすことができる。従って、本発明の溝付き材料を鼻腔拡張器に使用すれば、別体の単数又は複数の弾性帯は不要になる。
【0036】
別体の弾性帯を本発明の溝付き材料と組み合わせて使用すれば、溝付き材料の剛性のおかげで、鼻組織の十分な安定と持ち上げを提供するのに必要な弾性帯の大きさを削減することが可能になる。従って、溝付き材料と共に使用すれば、弾性帯を、これまでの鼻腔拡張器に比べ、一層小型軽量化され目立ちにくいものにすることができる。
【0037】
本発明の別の利点は、本発明が、鼻腔拡張器の或る構成要素全体、即ち、弾性帯、をなくすことにより、製造を簡略化できることである。或いは、弾性帯を本発明の材料と併用すれば、より小型で細い弾性帯が使用できるようになるため、より一段と細かく調整された目立ちにくい鼻腔拡張器になる。
【0038】
図7aと図7bは、本発明により作られた鼻腔拡張器の或る実施形態を示している。図7aは、鼻腔拡張器の斜視図であり、図7bは、鼻腔拡張器の構成要素を示す分解斜視図である。この実施形態では、別体の弾性帯は一切使用していない。鼻腔拡張器50は、溝付き材料51を備えている。溝付き材料51は、中間領域54と、端領域53及び55を含んでいる。溝付き材料51は、中間領域54が使用者の鼻梁を横断することができ、且つ端領域53と55が使用者の鼻道の外壁組織に接触することができる大きさを有している。生体適合性を有する粘着性物質52の層は、溝付き材料51の片面に配置されている。使用中は、この粘着剤によって鼻腔拡張器は使用者の皮膚に固定されている。
【0039】
溝付き材料51には、溝付き材料51を端領域53と55が互いに近づくように曲げた時、平面状態に復帰しようとする傾向がある。鼻腔拡張器50が使用者の鼻に固定された時、溝付き材料51の平面状態に復帰しようとする傾向は、呼吸中に使用者の鼻道の外壁組織が引き込まれるのを防止する働きをする。
【0040】
鼻腔拡張器50は、随意的に、粘着性物質52を介して溝付き材料51に粘着されている単数又は複数のリリースライナー56を含んでいてもよい。単数又は複数のリリースライナーが含まれている場合、それらは、使用前に取り除かれる。
【0041】
本発明により作られた鼻腔拡張器の別の実施形態を図8に示している。この鼻腔拡張器60は、図7の鼻腔拡張器50に似ており、溝付き材料51と生体適合性を有する粘着性物質52を備えている。溝付き材料51は、中間領域54が使用者の鼻梁を横断することができ、且つ端領域53と55が使用者の鼻道の外壁組織に接触することができる大きさを有している。鼻腔拡張器60は、粘着剤52を介して溝付き材料51に粘着されている単数又は複数のリリースライナーを含んでいてもよい。
【0042】
鼻腔拡張器60は、更に、溝付き材料51の何れか片方の面に配置されている弾性帯61を含んでいる。別の実施形態では、複数の弾性帯が、溝付き材料51と共に使用されている。鼻腔拡張器60には、端領域53と55が互いに近づくように曲げられた時、平面状態に復帰しようとする傾向がある。鼻腔拡張器60が使用者の鼻に固定された時、溝付き材料51と弾性帯61の平面状態に復帰しようとする傾向は、呼吸中に使用者の鼻道の外壁組織が引き込まれのを防止する働きをする。
【0043】
上で説明した溝付き又はエッチングされたポリマー材料を使用することによって、本発明の鼻腔拡張器は、溝を材料に付与するのに押出成形技法を用いて非常に効率的に作ることができる。本発明による鼻腔拡張器の別の実施形態を図9aから図9cに示している。
【0044】
溝の寸法並びに材料の特性が、押出成形された鼻腔拡張器の曲げ剛性を決定づける。本発明の方法論を使用することにより、溝の寸法は、長手方向のみならず横断方向にも異方性曲げ特性が最適化されるように選択することができる。
【0045】
溝は、鼻腔拡張器の溝の場所によって異なる剛性又は弾性を提供するため、鼻腔拡張器内では断面又は厚さが可変であってもよい。
例えば、溝は、拡張器の側面図を見た場合、拡張器の中央部に沿って高く拡張器の縁部に沿って低くなっている畝を有していてもよい。代わりに、より背の高い輪郭を有する1つ又は複数の溝がより背の低い1つ又は複数の溝によって隔てられ、それら背の低い溝の次に背の高い別の単数又は複数の溝が続くという構成でもよい。別の実施形態では、溝付き領域は1つ又は複数の溝を有していて、同溝付き領域は、溝を持たない領域か又は異なる輪郭が付与されている領域に隣接していてもよい。このように、材料の相対的な剛性及び可撓性は、弾性、快適性、及び再剥離性の所望の度合いを提供できるように細かく制御することができる。
【0046】
鼻腔拡張器は、鼻又は鼻道に使用するのに適したどの様な形状を有していてもよい。鼻腔拡張器は、中央領域と、中央領域から外側に延びる2つの延長領域を有しているのが望ましい。所望の弾性を鼻腔拡張器に提供することによって、図10aから図10cに示すように延長領域が鼻周りに曲げられている時、拡張器のその潜在的平面形態時に関係づけられる引き剥がし力を拡張器の両端の剪断力に変換することが可能である。図10aの「A」矢印は、鼻道を開通状態に保持する鼻腔拡張器の拡張力を示しており、「B」矢印は、鼻腔拡張器を所定の位置に維持する剪断力の効果を示している。この力の組み合わせが、使用中に鼻道を拡張状態に維持するのに必要な張りと持ち上げを提供する。本発明の鼻腔拡張器は、鼻腔拡張器の両端が互いに向けて間が約1から1.5インチ空くように配置されているときは、約10gから約50gの範囲の拡張力を提供するのが望ましく、約12gから約40gの範囲の拡張力を提供できれば更に望ましい。1つの好適な実施形態では、本発明の鼻腔拡張器は、数分から数時間まで様々に異なり又は望ましくは一晩中ということもある使用期間中、拡張器の両端が間を約1から1.2インチ空けて配置されている時、約14gから約30gの範囲の拡張力を提供する。当業者には理解頂けるように、使用時に鼻腔拡張器によって提供される力の量は、とりわけ、拡張器材料の緩みと粘着剤の劣化によって、拡張器の使用時間の経過につれて低下するので、使い始めと使用期間を通して、鼻道を開通状態に維持するに足る拡張力が確保されていることが重要である。拡張力は、約8時間の期間経過中は、約20%を超えて低下しないのが望ましい。本発明の鼻腔拡張器の更に別の実施形態では、拡張力は最初は高いが、8時間から12時間が経過すると持ち上げ力が急速に衰えていく。時間が経過しても鼻腔拡張器の十分な剛性を維持するには、PETGポリマーが特に好適であることが分かっている。
【0047】
剪断力は、鼻腔拡張器を使用者の鼻に固定するのに使用されている粘着剤の種類の関数であり、従って、鼻腔拡張器によってもたらされる拡張力の量に関係づけられる。剪断力は、使用中に拡張器を所定の位置に維持するのに十分でありながら、鼻腔拡張器を取り外す必要があるときは、使用者の加える力がこの剪断力を容易に打ち負かすことができるようになっているのが望ましい。
【0048】
拡張器は、米国特許第6,029,658号、同第6,318,362号、又は同第7,114,495号に示されているものの様な、又は図面に示されている、多くの形状を有することができる。
【0049】
本発明の鼻腔拡張器は、その長軸に沿って対称的であってもよいし、その長軸に沿って非対称であってもよい。長軸に沿って非対称的であれば、拡張器を正しく位置決めし易くなり、鼻の形状によりきっちりと沿わせることができるので、使用中の鼻腔拡張器の拡張と快適性が高まる。鼻腔拡張器は、その短軸に沿っては対称的であるのが望ましい。短軸に沿って対称的であれば、鼻の両側に実質的に均一な拡張力が提供される。
【0050】
本発明の別の実施形態では、溝付き材料を用いて作られた拡張器は、中央孔又は開口部を有しており、その一例を図11に示している。この中央孔は、どの様な大きさ又は形状であってもよく、切り抜き部分又は図12に示す細長いスリットを備えていてもよい。中央孔は、2つ以上の孔を含んでいてもよい。中央孔は、とりわけ、使用者が、使用者の鼻に対して拡張器の中心を合わせて、最も効果的な拡張にとって適正な配置を確実に実現することができる簡単なやり方を提供する。中央孔又は開口部は、鼻腔拡張器をダイで打ち抜くなど、何れの従来の方法によって形成してもよい。
【0051】
本発明の鼻腔拡張器は、材料の単数又は複数のチャネルに沿って単数又は複数の切込みを含んでいてもよい。その様な切込みを設ければ、鼻腔拡張器を作るのに使用される材料の大きさは、図13に示すように、1つ又は複数の長手方向溝部分を取り去ることによって、横方向には容易に調節ができる。
【0052】
鼻腔拡張器の溝付き材料の剛性は、押出成形工程後に更に調節を加えてもよい。1つの実施形態では、拡張器を更に快適にするため、そしてまた使用者が更に取り外し易いようにするため、1つ又は複数の周辺縁の剛性を弱めている。剛性は、レーザー切断、ウォータージェット切断、超音波切断、電子ビーム切断、機械的研磨などの様な各種技法を使用し、必要に応じて材料部分を取り除くか又は薄くすることによって弱めることができる。
【0053】
本発明の鼻腔拡張器は、上で説明した単数又は複数の追加の成分を含んでいてもよい。追加の成分は、ポリマー材料が押出成形される前又は後にポリマー材料に組み入れられることができる。
【0054】
例えば、メントール配合の鼻腔拡張器なら、本発明に基づき、押出成形の前又は後の何れかの時期に、メントール香料送達系を拡張器に組み入れた溝付き鼻腔拡張器を提供することによって作ることができる。適した香料又は薬剤送出系の代表的な例は、米国特許第5,706,800号、同第6,244,265号、同第6,276,360号、同第6,550,474号、同第6,769,428号、同第7,011,093号、及び同第7,013,889号に記載されており、上記特許のそれぞれをそっくり参考文献としてここに援用する。
【0055】
本発明の鼻腔拡張器は、鼻腔拡張器の下方の使用者の鼻と接触している材料、カバー、全体的又は部分的に粘着剤を欠いた部分、リリースライナー又は裏張りなどの様な、他の鼻腔拡張器に使われている特性又は要素を含むことができる。その様な特性及び要素の例は、米国特許第5,476,091号、同第5,533,499号、同第5,533,503号、同第5,549,103号、同第5,611,333号、同第5,653,224号、及び同第6,318,362号に記載されており、上記特許のそれぞれをそっくり参考文献としてここに援用する。
鼻腔拡張器の曲げ剛性の計算
鼻腔拡張器の曲げ特性を最適化するためには、拡張器に加えられる変化する荷重に基づいて計算を行わねばならない。鼻腔拡張器は、一般的に、各端には下向きの荷重が、中央には上向きの荷重が掛かっている。各端が約45°撓んでいるため、梁解析に通常用いられる方程式は注意して使用せねばならない。
【0056】
荷重はここでは継続的に縦方向に作用しているわけではなく、大部分は横方向のままなので、拡張器のモデル化には一般的な梁の方程式を使用することから始めることにする。すると、この用途で曲げ歪が大きい場合の機構設計上の問題は、材料特性とその結果生じる軸方向の荷重の効果である。この軸方向圧縮によって、荷重を加えられている拡張器では、上層の繊維で引張荷重が多少減り、下層の繊維で圧縮荷重が多少増える。
【0057】
拡張器を、分布荷重ではなく集中荷重を有する梁としてモデル化すると、撓みの幾何学と特定の撓み角で必要とされる全体的な力の強さの両方に誤差が発生することになる。例えば、全体の力を片持ち式梁の端の点荷重として、梁に沿って均一に分布した荷重と比較すると、曲率は、中央の支点からの距離の関数として前者では3乗、後者では4乗になる。前者の端部の撓みは後者より約2.7倍小さくなる。
【0058】
方程式は、拡張器の両端が大きく撓んでいる場合については概して有効ではないが、当業者には、荷重モデル化と実際の荷重及び撓みとの相関関係が理解されることであろう。この荷重モデル化及び関連する荷重試験方法は、本発明の溝付き鼻腔拡張器の所望の可撓性を求めるための手段の役割を果たす。
【0059】
荷重の位置に加え、鼻腔拡張器の様な梁の撓みは、一般に4つのパラメーター、即ち、
・荷重の大きさ
・梁の断面
・材料の弾性
・梁の長さ又は梁に沿った距離
に関係づけられる。
【0060】
従って、梁上の或る点の撓みは、通常、以下の様な方程式、即ち
梁の撓み=(荷重)×(断面の測定値)×(弾性の測定値)×(梁に沿った位置に関係づけられた測定値)
によって特徴づけられる。
【0061】
これは、
y=Px(1/I)×(1/E)×(xの関数)
として表すことができ、ここに、Pは力、Iは梁断面の慣性モーメント(二次モーメント)、Eは弾性係数、xは支点からの距離であり、荷重の幾何学/分布によってxの特定の関数が決まる。
【0062】
拡張器の構成が定義されると、幾何学値Iと材料特性Eを組み合わせれば「EI」(剛性)又は1/(EI)(可撓性)を求めることができる。これで、様々な荷重シナリオを評価することができる。
【0063】
端に横方向の荷重が掛かっている片持ち式梁(撓みは小さい)では、xでの撓みは、
y=(Px)(1/EI)[(1/6)(3L−x)]
であり、ここにLは梁の長さである。
【0064】
最大撓みは、端(x=L)で、
max=(P)(1/EI)[(1/3)L]
である。
【0065】
剛性について説明すると、
剛性=(1/12)(F×T)
又は、EI=(1/12)(F×T)
となる。
【0066】
ここでも、梁の断面の幾何学が変わればEIの値は変わる。上の方程式は、実際にはIの値が、
I=(1/12)×b×h
である単純な矩形の梁断面から導き出されており、
ここにbは矩形断面の横方向底辺であり、hは断面の高さである。
【0067】
簡略化された上記方程式[剛性=(1/12)(F×T)]では、Fは実際には(E×b)であり、Tはhである。
梁に掛かる荷重の計算
以下の方程式は、梁に掛かる点又は集中荷重と梁に掛かる分布荷重の計算を記述している。先に指摘したように、何れのやり方も鼻腔拡張器に掛かる実際の荷重を完全に表すことはできないが、当業者なら、これらのやり方に基づくモデルは、本発明の溝付き鼻腔拡張器の所望の可撓性を決める際に有用であることに気がつかれるはずである。図14は、点荷重の計算に用いられる変数x、y、L、P、及びPを説明している図である。図15は、分布荷重の計算に用いられる変数x、y、L、w、及びwを説明している図である。
点荷重(P)の計算
【0068】
【数1】

【0069】
となる。
分布荷重(w)の計算
【0070】
【数2】

【0071】
となる。
慣性モーメントの計算(二次モーメント、I)
溝付き鼻腔拡張器の断面は、単純な矩形の梁ではない。設計時の変動によってIの値、ひいては梁の剛性が大きく変わることもありうる。
【0072】
或る特定の設計の総Iは、合成断面積の中心を通る「中立軸」に関して計算される。中心の位置は、各設計の断面によって変わる。以下は、製品の「底辺」から中立軸までの距離
【0073】
【数3】

【0074】
の方程式を示している。この距離を用いて、実際のIを決めるための方程式も示している。図16は、慣性モーメントの計算に用いられる変数h、h、b、b、及びbを説明している図である。
【0075】
【数4】

【0076】
これらの方程式を用いれば、何れの個数の溝及びどれ程の厚さ又は断面積を備えた梁であっても、その予測剛性を計算し比較することができる。材料が画定されている場合は、合成/総I値(又はItotal値)を比較するだけで充分であろう。
【実施例1】
【0077】
溝付き鼻腔拡張器の断面積の慣性モーメント(二次モーメント)を求める
上の方程式を使用すると、図9aに示している鼻腔拡張器構成の各値から表1の値が与えられる。
【0078】
【表1】

【0079】
46mmの長さを有する鼻腔拡張器の荷重目標は、約27グラムである。46mmの長さを有する鼻腔拡張器でこれを実現できる比例Itotalは、約0.0171mmである。
【0080】
表2は、幾つかの計算値を示している。1列目は、畝の高さが英米単位系で0.0012インチ、基部又は谷の厚さが0.0035インチのものを表している。2列目は、代わりに、溝の幅を試行的に33%から30%へ狭くしたものを表している。3列目は、畝の高梁0.012インチから0.0105インチへ低くしたものを表している。何れもItotalが0.171mmに近い値にならないため、両方の変更を採用したところ、Itotalが0.0173mmになった。このItotalを有する長さ46mmの鼻腔拡張器に予測される比例荷重は、約27.2グラムである。
【0081】
【表2】

【0082】
所望のI値を与えることができる構成(b値及びh値)は多数ある。これは、他の設計及び加工規準も満たす構成を見い出そうとする場合に対する繰り返し方式による対処法の一例である。
【0083】
図9aに示す本発明の実施形態では、全厚=R+Rであり、ここにRは、溝の基部又は谷の厚さであり、Rは、溝の畝の厚さである。谷の幅は、この実施形態では、畝の幅の約半分になるように画定されている。鼻腔拡張器の剛性は、Rに関係する成分とRに関係する成分の和である。基部又は谷の幅は、単純に、ブラケット部の持ち上げ部分の全幅と定義される。
【0084】
この方法論を使ったところ、適切な鼻腔拡張器は、ポリマー材料の様な、初期曲げ弾性率が350,000のPETGを使って作るのが望ましいと判明した。
ポリマー材料は、図6aに示すように、約400°Fの温度で加圧式ニップローラーにより約25フィート/分の速度で押出成形され、その後、図6bに示すように、約180°Fから215°Fの範囲の温度で加圧ニップローラーを25フィート/分の速度で通過しながら粘着性材料とリリース層が重ね合わされる。層に重ねられた材料は、押出成形器から出た後、所望の寸法及び形状を有する鼻腔拡張器を形成するために更に加工が施されてもよい。
【0085】
粘着性材料は材料の溝が形成されている側の表面に塗布されるのが望ましく、そうすれば、粘着剤を各溝内に塗り込むことができる。1つの実施形態では、粘着剤は、溝を部分的又は実質的に充填するように塗布されている。別の実施形態では、粘着剤は、溝の最上部だけに塗布されている。
【0086】
ここに説明しているように、アクリレートを基材とする粘着剤又は親水コロイド粘着剤など、適しておればどの様な粘着性材料を使用してもよい。粘着性材料の塗布量は、溝の寸法と使用される単数又は複数の粘着性材料の種類によって変わる。例えば、本発明の鼻腔拡張器の1つの実施形態では、各溝は、ゴムを基材とする粘着剤の様な、厚さ約10ミルの粘着剤層が充填されている。
【0087】
図9aから図9cに示している鼻腔拡張器の様な、中央開口部を備えていない鼻腔拡張器では、鼻腔拡張器の長さは約35mmから約60mmの範囲にあり、幅は約10mmから約25mmの範囲にあり、谷の厚さは約3ミルから約10ミルの範囲にあり、畝の厚さは約8ミルから約15ミルの範囲にあるのが望ましい。1つの好適な実施形態では、畝の厚さは約14ミルであり、谷の厚さは約3.5ミルであり、畝と谷の厚さを合計した全厚は約17.5ミルであった。
【0088】
図11に示している鼻腔拡張器の様な、中央開口部と2つの持ち上げ用ブラケット部を備えた鼻腔拡張器では、長さは約40mmから約55mmの範囲にあり、幅は約25mmから30mmの範囲にあり、畝と谷の厚さは上記の範囲と同じであればよい。
【0089】
先に指摘したように、谷幅は、畝幅の約半分であるのが望ましい。1つの好適な実施形態では、畝幅と谷幅は、それぞれ、約0.5mmから約1.0mmの範囲にあるが、これらの値は、一部には、使用される材料と押出成形された材料の所望の剛性とによって変わる。谷幅と畝幅の比も、同じく、使用されている材料と押出成形された材料の所望の剛性とによって変化する。
【0090】
鼻腔拡張器用として溝が付与され重ね合わされた材料はレーザー切断されて、所望の寸法及び形状を有する鼻腔拡張器となる。快適さと使い易さを向上させるために、切断された材料の縁部分に更に処理を施してもよい。両縁部分の剛性は、材料の中央部分に比べ約85%小さくなっているのが望ましい。1つの好適な実施形態では、縁部分は、厚さが14ミルから4ミルまで薄くされている。別の好適な実施形態では、縁部分は、厚さが約2ミルから3ミルまで薄くされている。
【0091】
上で説明したように作られた鼻腔拡張器の寸法、形状、及び剛性は、所望の期間中、鼻道の組織を快適に持ち上げるのに適切であった。
本発明により作られた鼻腔拡張器の別の実施形態では、接着性材料を各溝内に埋め込むのではなく、薄い粘着剤層が溝の1つ又は複数の畝の最上部に貼り付けられている。例えば、1つ又は複数の畝をアクリレート粘着剤の様な粘着剤の厚さ約0.5ミルの薄層で被覆してもよい。
【0092】
鼻腔拡張器のこの実施形態では、使用者の皮膚には単数又は複数の畝の最上部しか接触及び粘着しないため、溝と使用者の皮膚の間には、部分的又は実質的に開通しているチャネルが、長手方向に拡張器の一方の端から他方の端まで或いは拡張器の一方の端から拡張器の長さに沿った別の場所まで走っているはずである。代わりに、複数のチャネルを十字に交差させて使用者の皮膚と接触する鼻腔拡張器の表面に「えくぼ」が形成されるようにしてもよい。粘着剤は、十字に交差しているチャネルによって作り出される最上部の「島部分」又は畝交差部だけに塗布される。
【0093】
単数又は複数のチャネルは、鼻腔拡張器の下方で、水分、空気、皮脂、又は汗の様な気体、流体、又は液体が、チャネル内に進入するか又は集まるのを許容する。従って、単数又は複数のチャネルは、蓄積された体水分がチャネルから蒸発することができるようにするか、又は、使用者の皮膚から分泌された皮脂が皮膚の表面から離れて堆積する貯留部を提供することによって、鼻腔拡張器着用時の使用者の快適性を高めることができる。
【0094】
追加的又は代替的に、単数又は複数のチャネルは、使用者が鼻腔拡張器を取り外すのに顔に水を掛けた時に、水が単数又は複数のチャネルに進入するのを許容することによって、鼻腔拡張器の取り外しを更に容易にする。水が鼻腔拡張器下方のチャネル内の空間に流れ込んだ時、空気は拡張器の下から、単数又は複数のチャネルの位置によって決まる何れかの方向に逃げることができる。単数又は複数のチャネルは、鼻腔拡張器下方で水と接触することになる表面積を増やし、使用者の皮膚に接触している粘着剤の更に多くの部分を不活性化することによって、鼻腔拡張器の取り外しを容易にする手助けをする。
包装用材料
上で説明したように、本発明は、取扱適性が改良された包装用材料を作るのに用いることができる。具体的には、ここで説明している溝付き材料を使用することによって、意外にも、引き割くのにほとんど力が要らず、PVCクラムシェル包装の様なプラスチック包装用材料に広く見られる尖った又は凸凹した切り縁の無い、包装開封領域を作成することができることを発見した。1つの実施形態では、本発明の溝付き材料を使用すれば、包装の開封に必要な力を約98%減らすことが可能である。
【0095】
溝付き材料を包装材として使用すると、必要な樹脂の量を、場合によっては約15%から20%減らすことができ、それによって、包装の費用及び環境への影響を低減することができる。溝付き材料には、意外にも、溝なし形態の同じ材料に比べ、圧縮されても鈍力耐性に低下が見られない。溝付き材料は、溝なし材料と比較した場合、溝の横断方向の引裂に対する耐性は保っているが、溝に沿って切れ目又は切込を設けることによって、溝付き材料は図17に示すように安全且つ容易に引き割くことができるようになる。
【0096】
溝付き材料は、可撓性を高めた領域も提供することができ、箱型又は他の形状に折り曲げるのに適したものになる。
溝付き材料は、溝の断面の外観を矩形の溝ではなく「V字」形状の溝の様な外観に変えれば、「透明なプラスチック」包装用材料に匹敵する、視覚的により魅力のあるものになる。更に、エッチングされたローラーのチャネルを研磨し、溝内の酸エッチング艶消し仕上げを除去して材料の不透明度を下げ、更に透明度を高めることもできる。
【0097】
溝付き材料のチャネル又は谷は、流体又は気体を、包装の中に又は包装の外に移すのに、又はチャネルの一端から他端に移すのに、利用することができる。
溝付き材料は、剛性を高めるために、第2フィルムで覆って、襞付プラスチック「段ボール」材料にすることもできる。端が開口している襞付波形プラスチックは、汚れ又は望ましくない生体物質を閉じ込める可能性があるために、医療又は農業の用途には安易に用いられてこなかった。本発明を使用すれば、繰り返し可能な図案でも不揃いでも何れでもよいが、閉鎖された横ブラケット部を材料ウェブにインプリントすることができる。これら閉鎖されたブラケット部は、材料の襞状端を閉じ合わせることによって機能し、それによって汚れ又は生物学的汚染の可能性を排除することができる。
医療的利用
上で説明した医療用包装用途に加えて、本発明の溝付き材料は、ギプス又は副木の支持材料として使用することもできる。溝付き材料は、四肢に巻き付け、寸法に合わせて折り線を入れて切り取ればよい。材料を寸法に合わせて容易に切り取ることができるようにしたことで、同材料は、治療優先順位選別状況、救急状況、又は戦場状況下での使用に適したものになっている。指又は四肢に巻き付けて折り返した後、又は二つ折りにした後、材料が互いに付着するのを可能にするため、ポリブテンの様な粘着性付与剤を添加してもよい。溝によって作り出された単数又は複数のチャネルは、水分、血液、皮脂、又は汗の様な気体、流体、又は液体が、着用者の皮膚に接触している溝付き材料の下方に進入すること及び出ていくことを許容する。
建築用材料
本発明の溝付き材料は、床張り材の様な建築用材料を作るのに、又は封入を目的としたシート材料として、使用することができる。
【0098】
本発明を用いて作ることができる或る種の床張り材の一例にリノリウム床張り材がある。溝は(上で説明したように)材料内で襞に形成することができ、そうすれば、床張り材に冷暖房を施すための温かい液体又は気体を通し易くすることができる。
【0099】
従来の封入シートは、現場で、適切に位置及び寸法を合わせるには非常に扱い辛い。本発明の溝付き材料では、巻かれている材料を壁又は床の様な表面に沿って所望の大きさに広げ、次いで溝に沿って折り目を入れて材料を引き割くことができるようになっている。
【0100】
溝付き材料は、使い易くするために或る程度の粘着性又は粘つきを提供するため、ポリブテン又は類似の粘着剤を含んでいてもよい
湿損を規制する必要がある状況で使用する場合、防かび又は防胞子処理コンパウンドの様な抗菌剤を材料ウェブに添加してもよい。他の用途としては、指定された「無菌室」を設営又は収容するために溝付き材料を利用する場合が挙げられる。
【0101】
虫の多い区域で、一時的な避難所として或いは永久的な構造物の一部として使用する場合は、材料に防虫剤を添加してもよい。一例として、DEET、ペルメトリン、又はピカリジンが挙げられる。
【0102】
前述の実施例及び実施形態は様々な態様と適用を説明しているが、それらは、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲に記載されている。
【符号の説明】
【0103】
10 材料
12 溝
13 畝
14 谷
14a、14b フランク面
16 溝の基部
、R 厚さ
X、Y 幅
20 押出成形器
22、24、26 ニップローラー
30 材料
31 押出成形ダイ
32 ニップローラー
33 仕上げ用ニップローラー
34 巻き取りローラー
35 溝付き材料
40 粘着剤層
42 ニップローラー42
44 巻き取りローラー
45 製品
46 リリースライナー層
50 鼻腔拡張器
51 溝付き材料
52 粘着性物質
53、55 端領域
54 中間領域
56 リリースライナー
60 鼻腔拡張器
61 弾性帯
A 鼻腔拡張器の拡張力
B 剪断力の効果
P 点荷重
W 分布荷重
x 支点からの距離
y 撓み
L 梁の長さ
I 二次モーメント
、h、b、b、b 慣性モーメントの計算に用いられる変数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の曲げ特性を改質するための方法において、前記材料に所望の断面形状を有する溝を付与する段階を備える、方法。
【請求項2】
前記材料には複数の溝が付与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溝は、前記材料を押出成形することによって前記材料に付与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記材料は、初期曲げ弾性率を有しており、前記材料に前記溝を付与することによって、前記材料の単軸又は多軸方向の剛性が改質される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
請求項1に記載の前記方法により作られた溝付き材料。
【請求項6】
所望の剛性を有する材料において、前記材料の第1面側に第1方向に沿った溝を備えている、材料。
【請求項7】
前記材料の前記第1方向に沿った複数の溝を備えている、請求項6に記載の材料。
【請求項8】
前記材料の第2面側に前記第1方向に沿った溝を更に備えている、請求項6に記載の材料。
【請求項9】
前記材料の第2面側に第2方向に沿った溝を更に備えている、請求項6に記載の材料。
【請求項10】
前記溝は、畝と谷を備えている、請求項6に記載の材料。
【請求項11】
請求項6の前記材料を備えている鼻腔拡張器。
【請求項12】
前記材料の前記第1面側に係合手段を更に備えている、請求項11に記載の鼻腔拡張器。
【請求項13】
前記材料は、鼻道を持ち上げるのに十分な剛性を有している、請求項11に記載の鼻腔拡張器。
【請求項14】
前記溝は、前記材料の前記第1面が患者の皮膚に係合した時、チャネルを形成し、前記チャネルは、物質を、前記鼻腔拡張器によって覆われている皮膚の区域へ運び込み及び前記区域から運び出すことができ、前記物質は、液体、流体、気体、油脂、及びそれらの組み合わせから成るグループから選択される、請求項11に記載の鼻腔拡張器。
【請求項15】
前記材料内に複数の溝を備えており、各溝は畝と谷を備えている、請求項11に記載の鼻腔拡張器。
【請求項16】
前記複数の溝の第1畝は、前記複数の溝の第2畝の厚さと実質的に同じ厚さを有している、請求項15に記載の鼻腔拡張器。
【請求項17】
前記複数の溝の第1畝は、前記複数の溝の第2畝の厚さと異なる厚さを有している、請求項15に記載の鼻腔拡張器。
【請求項18】
前記畝は、約8ミルから約15ミルの範囲の厚さを有し、前記谷は、約3ミルから約10ミルの範囲の厚さを有している、請求項15に記載の鼻腔拡張器。
【請求項19】
請求項6の前記材料を備えている医療用支持装置。
【請求項20】
前記溝は、前記材料の前記第1面が患者の皮膚に係合した時、チャネルを形成し、前記チャネルは、物質を、前記医療用支持装置によって覆われている皮膚の区域へ運び込み及び前記区域から運び出すことができ、前記物質は、液体、流体、気体、油脂、及びそれらの組み合わせから成るグループから選択される、請求項19に記載の医療用支持装置。
【請求項21】
請求項6の前記材料を備えている床張り材製品。
【請求項22】
請求項6の前記材料を備えている建築用シート材製品。
【請求項23】
請求項6の前記材料を備えている包装材製品。
【請求項24】
前記材料は、前記溝の或る長さに沿って前記第1方向に切り離すことができる、請求項23に記載の包装材製品。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2010−502310(P2010−502310A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526921(P2009−526921)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/077313
【国際公開番号】WO2008/028088
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(509058081)
【Fターム(参考)】