説明

担体を処理する方法、触媒を調製する方法、該触媒、および該触媒の使用

不純物を少なくとも部分的に除去するために、担体またはこの先駆物質を処理する方法であって、塩を含む処理溶液に、担体またはこの先駆物質を接触させることを含む方法;触媒の調製法;触媒;触媒の存在下で、オレフィンを酸素と反応させることによる、オレフィンオキシドの製造方法;および1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテルまたはアルカノールアミンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体を処理する方法、触媒を調製する方法、およびこの方法によって得られる触媒に関する。本発明は、オレフィンのエポキシ化方法にも関し、この方法は、オレフィンおよび酸素を含むエポキシ化供給物を、触媒に接触させることを含む。本発明は、このようにして生成されたオレフィンオキシドを、1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテルまたはアルカノールアミンの生成に使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィンエポキシ化において、オレフィンおよび酸素源を含有する供給物を、エポキシ化条件下で触媒に接触させる。オレフィンを酸素と反応させて、オレフィンオキシドを生成する。オレフィンオキシド、および一般に、未反応供給物および燃焼生成物を含有する混合生成物が得られる。
【0003】
オレフィンオキシドを、水と反応させて1,2−ジオールを生成し、アルコールと反応させて1,2−ジオールエーテルを生成し、アミンと反応させてアルカノールアミンを生成し得る。従って、先ず、オレフィンエポキシ化、次に生成されたオレフィンオキシドの水、アルコールまたはアミンでの変換を含む多段階法によって、1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテルおよびアルカノールアミンを生成し得る。
【0004】
オレフィンエポキシ化触媒は、銀成分を含み、一般に、1つ以上の付加的元素がこれと共に担体に堆積している。触媒の担体に含有される特定の化学種の存在は、触媒化学種の堆積工程および/または触媒性能に不利になり得る。種々の特許は、触媒の性能を高めるために、担体の前処理に焦点を当てている。
【0005】
例えばUS−6368998−B1は、担体の表面上の、および/または担体を形成するのに使用される1つ以上の材料中の、1つ以上のイオン性化学種の濃度を減少させることが、エポキシ化工程における触媒の性能を向上させることを示している。イオン性化学種の濃度は、化学種を除去するか、化学種を不溶性にするか、または化学種を不動性にすることによって、減少し得る。イオン性種の除去は、脱イオン水、ならびに水酸化テトラエチルアンモニウム、酢酸アンモニウム、炭酸リチウム、酢酸バリウム、酢酸ストロンチウム、クラウンエーテル、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミドおよびこれらの混合物を含有する水性および/または有機溶媒に基づく溶液に、担体を接触させることを含み得る。
【0006】
US−6750173−B2は、ナトリウムを除去し、このナトリウムをリチウムで部分的に置き換えるための担体の前処理が、エポキシ化工程において、このような担体から形成された触媒の安定性を向上させることを示している。
【0007】
触媒性能は、操作の選択性、活性および安定性に基づいて評価し得る。選択性は、所望のオレフィンオキシドを生じる変換オレフィンの割合いである。触媒が老化すると共に、変換されるオレフィンの割合いが時間と共に一般に減少し、オレフィンオキシド生成の一定レベル(例えば運転効率)を維持するために、反応の温度を高くし得る。しかし、これは、所望のオレフィンオキシドへの変換の選択性に不利に作用する。さらに、使用される装置は特定レベルまでの温度にのみ耐え得るので、反応温度が反応器に適さないレベルに達する際に、反応を停止する必要がある。従って、活性および選択性を許容値により長く維持できればできるほど、触媒装填物を反応器により長く保持することができ、より多い生成物が得られる。選択性、ならびに長時間にわたる選択性および活性の維持における、きわめてわずかな向上が、工程効率の点でかなりの利益を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6368998号
【特許文献2】米国特許第6750173号
【発明の概要】
【0009】
本発明の1つの実施形態によれば、下記の工程を含む、担体またはこの先駆物質から不純物を少なくとも部分的に除去するために担体またはこの先駆物質を処理する方法を提供する。
【0010】
担体、またはこの先駆物質を、0.015mol未満の濃度で塩を含む処理溶液に、40℃より高い温度で接触させる工程であって、塩が、ハロゲン化物、有機アニオン、無機カルボキシレート、元素周期律表の第IIIBから第VIIB族、第IIIA族、および第VA族から第VIIA族からの元素のオキシアニオン、シアネート、イソシアネート、シアニド、ならびにこれらの組み合わせから選択されるアニオンを含む工程;および
担体またはこの先駆物質から、処理溶液の少なくとも一部を分離する工程。
【0011】
本発明の他の実施形態によれば、下記の工程を含む、担体またはこの先駆物質から不純物を少なくとも部分的に除去するために担体またはこの先駆物質を処理する方法を提供する。
【0012】
担体、またはこの先駆物質を、多くて0.05molの濃度で塩を含む処理溶液に接触させる工程であって、塩が、カチオンおよびアニオンを含み、カチオンが、アンモニウム、ホスホニウム、有機カチオンおよびこれらの組み合わせから選択され、アニオンが、有機アニオン、無機カルボキシレート、元素周期律表の第IIIA族から第VIIA族からの元素のオキシアニオン、およびこれらの組み合わせから選択される工程;および
担体またはこの先駆物質から、処理溶液の少なくとも一部を分離する工程。
【0013】
本発明は、触媒の調製方法、および該調製方法によって得られる触媒も提供する。
【0014】
本発明は、本発明によって調製された触媒の存在下で、オレフィンを酸素と反応させることを含む、オレフィンのエポキシ化法も提供する。
【0015】
さらに、本発明は、1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテルまたはアルカノールアミンの製造方法も提供し、方法は、本発明によるオレフィンのエポキシ化法によってオレフィンオキシドを得、オレフィンオキシドを1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテルまたはアルカノールアミンに変換することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0016】
担体に存在する不純物は、触媒の性能に不利に作用し得るので、実行可能な限り多くの量の不純物を減少させる努力がなされている。一般に、担体に存在する不純物は、ナトリウム、カリウム、アルミネート、可溶性シリケート、カルシウム、マグネシウム、アルミノシリケート、セシウム、リチウムおよびこれらの組み合わせを含み得る。担体中の不純物除去の効率は、塩を低濃度で含有する溶液に、担体を接触させることによって向上し得ることが見出された。触媒を本発明によって調製した場合、本発明の処理に付さなかった担体を使用して調製した触媒と比較して、触媒の性能において利点が得られる。利点は、例えば向上した選択性、活性、および/または特に活性および選択性における性能低下に対する向上した抵抗性において見出し得る。塩を低濃度で含有する溶液を用いて担体またはこの先駆物質を処理することによって、水、または高濃度で塩を含有する溶液での洗浄に付された担体を使用して調製された触媒より有利な触媒が得られることは意外である。
【0017】
本発明に使用される担体は、天然または人工の無機粒子状物質を含んでもよく、この物質は、耐火性物質、炭化珪素、クレー、ゼオライト、チャコールおよびアルカリ土類金属炭酸塩、例えば炭酸カルシウムまたは炭酸マグネシウムを含み得る。耐火物質、例えばアルミナ、マグネシア、ジルコニアおよびシリカが好ましい。最も好ましい物質はα−アルミナである。一般に、担体は、少なくとも85wt%、より一般的には90wt%、特に95wt%のα−アルミナまたはこの先駆物質、しばしば99.9wt%まで、またはさらには100wt%までのα−アルミナまたはこの先駆物質を含んでよい。α−アルミナは、好適には硼素による、α−アルミナの鉱化、または好ましくは弗化物鉱化によって得られる。α−アルミナの鉱化に関する記述について、参照により本明細書に組み入れられるUS−A−3950507、US−A−4379134およびUS−A−4994589が参照される。
【0018】
本明細書において使用される担体の「先駆物質」という用語は、焼成(calcining)前の、形成(formed)また成形(shaped)生地(greenware)、ならびに生地に形成または成形される出発原料を含むことを意味する。出発原料は、α−アルミナ、α−アルミナ先駆物質、燃焼物質(burnout material)および結合物質(bond material)を含み得る。α−アルミナ先駆物質は、水和アルミナ、例えばベーマイト、擬似ベーマイト、およびギブサイト、ならびに遷移アルミナ、例えばχ、κ、γ、δ、θおよびηアルミナを含む。結合物質は、結晶性シリカ含有組成物の形成を阻害する結晶化阻害剤を含むシリカ含有組成物に基づき得る。結合物質として使用されるシリカ含有組成物は、アルカリ金属珪酸塩結合物質、または好ましくはアルカリ土類金属珪酸塩結合物質を含む。結合物質は、水和アルミナ、および場合によりチタン成分および/またはジルコニウム成分をさらに含んでよい。燃焼物質は、当分野において周知である(例えば以下を参照:F F Y Wang編、「Treatise on Materials Science and Technology」、第9巻(New York,1976)、p.79−81;またはJ S Reed、「Introduction to the Principles of Ceramic Processing」(New York,1988)、P.152ff)。
【0019】
担体は、好ましくは多くて20m/g、特に0.1から20m/g、さらに特に0.5から10m/g、好ましくは1から3m/g、およびより好ましくは1.3から2.6m/gの表面積を有する。本明細書において使用される「表面積」は、Journal of the American Chemical Society 60(1938)pp.309−316に記載されているBET(Brunauer,Emmett and Teller)法によって測定される表面積を意味するものと理解される。
【0020】
ある実施形態において、アルミナ担体は、少なくとも1m/gの表面積、および0.2から10μmの直径を有する細孔が全細孔容積の少なくとも70%を占める細孔寸法分布を有し、このような細孔が全体として、担体の重量に対して少なくとも0.25ml/gの細孔容積を与える。好ましくはこの特定実施形態において、細孔寸法分布は以下のような分布である。0.2μm未満の直径を有する細孔が、全細孔容積の0.1から10%、特に全細孔容積の0.5から7%を占め;0.2から10μmの直径を有する細孔が、全細孔容積の80から99.8%、特に全細孔容積の85から99%を占め;および10μmより大きい直径を有する細孔が、全細孔容積の0.1から20%、特に全細孔容積の0.5から10%を占める。この特定の実施形態において、0.2から10μmの直径を有する細孔が、好ましくは0.3から0.8ml/g、特に0.35から0.7ml/gの細孔容積を与え、担体の全細孔容積が0.3から0.8ml/g、特に0.35から0.7ml/gである。
【0021】
他の実施形態において、アルミナ担体は、少なくとも1m/gの表面積、および以下のような細孔寸法分布を有する。全細孔容積の少なくとも80%が、0.1から10μmの直径を有する細孔に含有されてよく、0.1から10μmの直径を有する細孔に含有された細孔容積の少なくとも80%が、0.3から10μmの直径を有する細孔に含有されてよい。好ましくはこの特定の実施形態において、細孔寸法分布は、以下のような分布である。0.1μm未満の直径を有する細孔が、全細孔容積の多くて5%、特に全細孔容積の多くて1%を占め;0.1から10μmの直径を有する細孔が、全細孔容積の99%未満、特に全細孔容積の98%未満を占め;0.3から10μmの直径を有する細孔が、0.1から10μmの直径を有する細孔に含有された細孔容積の少なくとも85%、特に少なくとも90%を占め;0.3μm未満の直径を有する細孔が、全細孔容積の0.01から10%、特に全細孔容積の0.1から5%を占め;10μmより大きい直径を有する細孔が、全細孔容積の0.1から10%、特に全細孔容積の0.5から8%を占める。この特定の実施形態において、細孔寸法分布は、好ましくは中央細孔直径が0.8から1.9μm、特に0.9から1.8μmであるような分布である。
【0022】
本明細書において使用される細孔寸法分布および細孔容積は、Micromeretics Autopore 9200を使用する3.0x10Paへの水銀注入(mercury intrusion)によって測定されている(130°接触角、0.473N/mの表面張力を有する水銀、および適用した水銀圧縮力についての補正)。
【0023】
本明細書において使用される中位細孔直径は、全細孔容積の半分が、より大きい細孔直径を有する細孔に含有され、全細孔容積の半分が、より小さい細孔直径を有する細孔に含有される場合の、細孔直径である。
【0024】
本明細書において使用される、細孔容積(ml/g)、表面積(m/g)および吸水率(%)は、他に記載がない限り、担体の重量に対して示されている。
【0025】
本発明によれば、担体またはこの先駆物質は、処理工程に付される。処理工程は、担体またはこの先駆物質を、処理溶液に接触させることを含む。担体またはこの先駆物質は、連続的または回分的に、処理溶液に接触させてよい。接触を連続的に行う場合、処理溶液を、再循環させてよく、または全部または一部の処理溶液を、追加の新しい処理溶液と交換してもよい。接触は、攪拌しながら、または攪拌せずに、行ってよい。接触後、処理溶液を、担体またはこの先駆物質から少なくとも部分的に分離し得る。好ましくは少なくとも処理溶液25wt%、より好ましくは少なくとも35wt%、最も好ましくは少なくとも50wt%を、担体から分離する。接触および分離工程は、1回以上繰り返し得る。各接触工程において、処理溶液の組成は、同じ塩組成または異なる塩組成を含んでよい。
【0026】
接触中の圧力は、処理工程に重要でない。圧力は、準大気圧、大気圧および超大気圧を含むどのような圧力であってもよい。好ましくは大気圧で接触を行う。
【0027】
担体またはこの先駆物質を処理溶液に接触させるのに好適な温度は、15℃より高い、好ましくは40℃より高い、より好ましくは75℃より高い、最も好ましくは85℃より高い温度である。担体またはこの先駆物質を処理溶液に接触させる温度は、15℃から120℃であってよい。好ましくは少なくとも1つの接触工程は、75℃から120℃、より好ましくは85℃から110℃、最も好ましくは90℃から110℃の温度で、担体またはこの先駆物質を処理溶液に接触させることを含む。好ましくは処理工程は、75℃から120℃の温度で、担体またはこの先駆物質を処理溶液に接触させ、次に15℃から40℃、好ましくは20℃から35℃、例えば20℃、25℃または30℃の温度で、担体またはこの先駆物質を付加的処理溶液に接触させることを含む。より好ましくは処理工程は、15℃から40℃、好ましくは20℃から35℃、例えば20℃、25℃または30℃の温度で、担体またはこの先駆物質を、さらなる処理溶液に接触させることを含む第三接触工程をさらに含む。処理溶液、付加的処理溶液およびさらなる処理溶液は、同じ塩組成または異なる塩組成を含んでよい。
【0028】
各接触工程に好適な時間は、少なくとも5分間、好ましくは少なくとも10分間である。好ましくは少なくとも1つの接触工程の接触時間は、0.5から48時間、特に1から24時間である。好ましくは少なくとも1つの接触工程が、0.5から48時間の接触時間を有し、続く少なくとも1つの接触工程が、0.15から24時間、好ましくは0.2から6時間の接触時間を有する。
【0029】
各接触工程において、処理溶液/担体またはこの先駆物質の質量比は、少なくとも1、特に少なくとも1.2、さらに特に少なくとも1.25である。処理溶液/担体またはこの先駆物質の質量比は、多くて20、特に多くて10、さらに特に多くて5であってよい。処理溶液/担体またはこの先駆物質の質量比は、1から20、特に1.2から5、さらに特に1.25から2であってよい。
【0030】
担体に存在する可溶性不純物、例えばナトリウム、カリウム、アルミネート、可溶性シリケート、カルシウム、マグネシウム、アルミノシリケート、セシウム、リチウムおよびこれらの組み合わせは、処理工程によって少なくとも部分的に除去される。特に処理工程は、担体に存在する不純物の少なくとも10wt%、好ましくは不純物の少なくとも25wt%、より好ましくは不純物の少なくとも30wt%を除去する。さらに特に処理工程は、担体に存在する可溶性ナトリウム不純物の50wt%より多い量、好ましくは可溶性ナトリウム不純物の60wt%より多い量を除去する。
【0031】
処理溶液は塩および希釈剤を含む。塩は、カチオンおよびアニオンを含む。希釈剤は、水、アルコールまたはこれらの混合物であってよい。アルコールは、好ましくは分子構造中に1個以上の炭素原子、特に2から6個の炭素原子を有する。好ましくは処理溶液は水溶液である。塩は、希釈剤と組み合わせてもよく、またはインサイチューで生成させてもよい。塩のインサイチュー生成の例として、酢酸および炭酸水素アンモニウムを水と組み合わせて、酢酸アンモニウムおよび水を含む処理溶液が得られる。塩のインサイチュー生成の他の例として、硝酸および水酸化アンモニウムを水と組み合わせて、硝酸アンモニウムおよび水を含む処理溶液が得られる。
【0032】
塩は、任意の塩化合物であってよく、複数の塩の組み合わせであってもよい。塩は、多くて0.05mol(処理溶液1L当たりの塩のモル)の濃度で、処理溶液に存在し得る。処理溶液のpHは、25℃で測定した場合に、4から8、好ましくは5から7、より好ましくは5.5から6.5である。
【0033】
第一実施形態において、塩は、任意のカチオン、好ましくは第IA族金属、第IIA族金属およびこれらの組み合わせから選択されるカチオンを含む。好ましくは第IA族金属カチオンは、ナトリウム、リチウム、カリウム、セシウムおよびこれらの組み合わせから選択してよく、より好ましくはリチウムである。好ましくは第IIA族金属カチオンは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびこれらの組み合わせから選択してよく、より好ましくはマグネシウムである。
【0034】
塩のアニオンは、ハロゲン化物、有機アニオン、無機カルボキシレート、元素周期律表の第IIIB族から第VIIB族、第IIIA族、および第VA族から第VIIA族からの元素(「CRC Handbook of Chemistry and Physics」、第69版(CRC Press Inc.1988)における元素周期律表のCASバージョンのように規定)のオキシアニオン、シアネート、イソシアネート、シアニド、ならびにこれらの組み合わせから選択し得る。好ましくはハロゲン化物は、弗化物、塩化物、臭化物およびこれらの組み合わせから選択され、より好ましくは塩化物である。好ましくはオキシアニオンは、元素周期律表の第IIIA族および第VA族から第VIIA族からの元素のオキシアニオンである。第IIIA族および第VA族から第VIIA族からの元素のオキシアニオンは、下記から選択し得る。硼酸塩、メタ硼酸塩、四硼酸塩、テトラフルオロ硼酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩、過臭素酸塩、燐酸塩、メタ燐酸塩、オルト燐酸塩、燐酸水素塩、燐酸二水素塩、フルオロ燐酸塩、亜燐酸塩、亜燐酸水素塩、硫酸塩、二硫酸塩、硫酸水素塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、二亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ亜硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、およびこれらの組み合わせ。好ましくはオキシアニオンは、第VA族からの元素のオキシアニオン、特に燐酸塩、メタ燐酸塩、オルト燐酸塩、燐酸水素塩、燐酸二水素塩、フルオロ燐酸塩、亜燐酸塩、亜燐酸水素塩、硝酸塩、亜硝酸塩、およびこれらの組み合わせである。
【0035】
本明細書において使用される「有機アニオン」という用語は、有機酸の共役塩基を意味する。本明細書において使用される「有機」という用語は、炭素−水素結合を含有する化学種を意味する。有機アニオンは、アルコラート、カルボキシレートおよびこれらの組み合わせから選択し得る。アルコラートは、1から6個の炭素原子、好ましくは1から3個の炭素原子を含有する。カルボキシレートは、1から18個の炭素原子を含有し得る。好ましくはカルボキシレートは、酢酸塩、クエン酸塩、クエン酸水素塩、蟻酸塩、乳酸塩、酒石酸塩およびこれらの組み合わせから選択される。より好ましくはカルボキシレートは、酢酸塩、蟻酸塩、クエン酸塩およびこれらの組み合わせから選択される。
【0036】
無機カルボキシレートは、蓚酸塩、カルバミド酸塩およびこれらの組み合わせから選択し得る。好ましくはアニオンは、1つ以上の硝酸塩、亜硝酸塩または酢酸塩アニオン、最も好ましくは硝酸塩アニオンである。
【0037】
この第一実施形態において、塩は、処理溶液中に、0.015mol(処理溶液1L当たりの塩のモル)未満、好ましくは0.01mol未満、より好ましくは0.007mol未満、最も好ましくは多くて0.005mol、特に多くて0.004molの濃度で存在する。塩は、処理溶液中に、少なくとも0.0001mol、好ましくは少なくとも0.001mol、より好ましくは少なくとも0.0015mol、最も好ましくは少なくとも0.002molの濃度で存在する。塩は、処理溶液中に、0.001から0.006mol、好ましくは0.0015から0.0045mol、より好ましくは0.002から0.004molの範囲の濃度で存在する。
【0038】
第二実施形態において、塩は、カチオン(アンモニウム、ホスホニウム、有機カチオンおよびこれらの組み合わせから選択し得る。)、およびアニオン(有機アニオン、無機カルボキシレート、元素周期律表の第IIIA族から第VIIA族からの元素のオキシアニオン、およびこれらの組み合わせから選択し得る。)を含んでよい。有機カチオンは、アルキルアンモニウム、カルボニウム、アルキルカルボニウム、アルキルホスホニウム、アリールホスホニウム、アリールアルキルホスホニウムおよびこれらの組み合わせから選択し得る。有機カチオンは、一、二、三または四置換されていてもよい。各アルキル基は、分子構造中に1から18個の炭素原子を含有してよく、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、セチル、ラウリルおよびステアリルである。好ましくは各アルキル基は、分子構造中に1から12個の炭素原子を含有する。好ましくは各アリール基はフェニル基である。好ましくはカチオンは、1個以上のアンモニウムまたはアルキルアンモニウムカチオンである。
【0039】
第IIIA族から第VIIA族オキシアニオンは、以下から選択し得る。硼酸塩、メタ硼酸塩、四硼酸塩、テトラフルオロ硼酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩、過臭素酸塩、燐酸塩、メタ燐酸塩、オルト燐酸塩、燐酸水素塩、燐酸二水素塩、フルオロ燐酸塩、亜燐酸塩、亜燐酸水素塩、硫酸塩、二硫酸塩、硫酸水素塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、二亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ亜硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、およびこれらの組み合わせ。好ましくはオキシアニオンは、第VA族からの元素のオキシアニオン、特に燐酸塩、メタ燐酸塩、オルト燐酸塩、燐酸水素塩、燐酸二水素塩、フルオロ燐酸塩、亜燐酸塩、亜燐酸水素塩、硝酸塩、亜硝酸塩およびこれらの組み合わせである。
【0040】
有機アニオンは、アルコラート、カルボキシレートおよびこれらの組み合わせから選択し得る。アルコラートは、1から6個の炭素原子、好ましくは1から3個の炭素原子を含有する。カルボキシレートは、1から18個の炭素原子を含有し得る。好ましくはカルボキシレートは、酢酸塩、クエン酸塩、クエン酸水素塩、蟻酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、およびこれらの組み合わせから選択される。より好ましくはカルボキシレートは、酢酸塩、蟻酸塩、クエン酸塩およびこれらの組み合わせから選択される。
【0041】
無機カルボキシレートは、蓚酸塩、カルバミド酸塩およびこれらの組み合わせから選択し得る。好ましくはアニオンは1つ以上の硝酸塩、亜硝酸塩または酢酸塩アニオン、最も好ましくは硝酸塩アニオンである。
【0042】
この第二実施形態において、塩は、処理溶液中に、多くて0.05mol(処理溶液1L当たりの塩のモル)、好ましくは多くて0.03mol、より好ましくは0.01mol未満、最も好ましくは0.007mol未満、特に0.005mol未満、およびさらに特に多くて0.004molの濃度で存在する。塩は、処理溶液中に、少なくとも0.0001mol、好ましくは少なくとも0.001mol、より好ましくは少なくとも0.0015mol、および最も好ましくは少なくとも0.002molの濃度で存在する。塩は、処理溶液中に、0.001から0.05mol、好ましくは0.001から0.03mol、より好ましくは0.0015から0.009mol、最も好ましくは0.002から0.004molの範囲の濃度で存在する。
【0043】
担体またはこの先駆物質は、処理工程前に、先に定義した処理溶液以外の液体と接触させてよい。液体は、脱イオン水、0.05molより高い塩濃度を有する溶液、アルコール、希酸および希塩基を含み得る。担体またはこの先駆物質は、処理工程の次に水、アルコールまたはこれらの組み合わせと接触させてよい。
【0044】
接触および分離工程の後に、担体またはこの先駆物質を乾燥させてよい。このような乾燥工程は、好適には、高くて500℃、好ましくは高くて300℃、より好ましくは高くて280℃、最も好ましくは高くて260℃、および少なくとも180℃、好ましくは少なくとも210℃、より好ましくは少なくとも220℃の温度で行われる。好適には、乾燥工程は、少なくとも1分間、好ましくは少なくとも2分間、および長くて60分間、好ましくは長くて30分間、より好ましくは長くて10分間にわたって行う。担体またはこの先駆物質は、任意の雰囲気、好ましくは窒素、アルゴン、ヘリウム、より好ましくは空気の存在下で乾燥し得る。担体の先駆物質が前述の処理工程を受けた場合、次に先駆物質を焼成して担体を形成してよい。焼成法は当分野において既知であり、一般に、先駆物質を500℃から1600℃の温度に加熱する。
【0045】
このように処理された担体またはこの先駆物質を使用して調製された触媒は、向上した安定性能、特に向上した活性安定性、および/または選択安定性を有する。
【0046】
一般に、本発明の触媒は、銀を、触媒的活性金属として含む。触媒の重量に対して少なくとも10g/kg、特に少なくとも50g/kgの、触媒の銀含有量を使用することによって、かなりの触媒活性が得られる。触媒の調製は当分野において既知であり、既知の方法を、本発明の触媒の調製に適用できる。触媒を調製する方法は、担体に銀化合物を含浸させ、還元を行って、金属銀粒子を堆積させることを含む。比較的高い銀含有量を有する触媒は、多重含浸、例えば二重または三重含浸によって調製し得る。好適な方法の例について、例えば下記を参照し得る。US−A−5380697、US−A−5739075、US−B−6368998、US−2004/0049061 A1、US−2002/0010094 A1、EP−A−266015、WO−00/15333、WO−00/15334およびWO−00/15335(これらは参照により本明細書に組み入れられる。)。
【0047】
含浸は、pHが12より高い値、例えば13または13.2以上である溶液を用いた含浸を含み得る。これは、塩基、例えば水酸化リチウム、水酸化セシウムまたは水酸化テトラアルキルアンモニウム、例えば水酸化テトラメチルアンモニウムまたは水酸化テトラエチルアンモニウムを、充分な量で、含浸溶液に添加することによって行い得る。含浸溶液の組成に依存して、20から70mmol/kg担体、例えば30、40、50または60mmol/kg担体の量の塩基が、充分に高いpHを得るのに充分であり得る。
【0048】
カチオン銀から金属銀への還元は、触媒を乾燥する工程中に行ってよく、従って、このような還元は分離工程段階を必要とする。これは、下記の実施例に記載するように、含浸溶液が還元剤、例えば蓚酸塩を含む場合に当てはまり得る。
【0049】
触媒は、好ましくは銀、および付加的元素またはこの化合物を含む。適切な付加的元素は、窒素、硫黄、燐、硼素、弗素、第IA族金属、第IIA族金属、レニウム、モリブデン、タングステン、クロム、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、バナジウム、マンガン、タリウム、トリウム、タンタル、ニオビウム、ガリウムおよびゲルマニウムならびにこれらの組み合わせの群から選択し得る。好ましくは第IA族金属は、リチウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選択される。最も好ましくは第IA族金属は、リチウム、カリウムおよび/またはセシウムである。好ましくは第IIA族金属は、カルシウムおよびバリウムから選択される。可能であれば、付加的元素を、オキシアニオンとして、例えばスルフェート、ボレート、ペルレネート、モリブデートまたはニトレートとして、塩または酸の形態で、好適に与え得る。
【0050】
高選択性触媒の調製において、本発明の担体を使用するのが好ましい。高選択性銀系触媒は、銀に加えて、1つ以上のレニウム、モリブデン、タングステン、第IA族金属および硝酸塩−または亜硝酸塩−生成化合物を含んでよく、これらは、それぞれ、全触媒上の元素(レニウム、モリブデン、タングステン、第IA族金属または窒素)として計算して0.01から500mmol/kgの量で存在し得る。硝酸塩−または亜硝酸塩−生成化合物、および硝酸塩−または亜硝酸塩−生成化合物の特定選択肢を、以下に定義する。硝酸塩−または亜硝酸塩−生成化合物は、特に第IA族金属硝酸塩、または第IA金属亜硝酸塩である。レニウム、モリブデン、タングステンまたは硝酸塩−または亜硝酸塩−生成化合物は、オキシアニオンとして、例えばペルレネート、モリブデート、タングステートまたはニトレートとして、塩または酸の形態で好適に与え得る。
【0051】
特に好ましいのは、銀に加えてレニウムを含む高選択性触媒である。このような触媒は、参照により本明細書に組み入れられるEP−A−266015、US−A−4761394およびUS−A−4766105から既知である。一般的に言えば、これらは、銀、レニウムまたはこの化合物、レニウムまたはこの化合物以外の付加的元素(先に定義した通り、特にタングステン、モリブデンおよび/または第IA族金属、特にリチウムおよび/またはセシウム)、および場合により、レニウム補助促進剤を含む。レニウム補助促進剤は、1つ以上の硫黄、燐、硼素およびこれらの化合物から選択し得る。
【0052】
触媒の重量に対する、触媒成分(元素として計算)の好ましい量は、以下の通りである。
【0053】
銀:10から500g/kg;
レニウム:0.01から50mmol/kg(存在する場合);
1つ以上の付加的元素:それぞれ0.1から500mmol/kg(存在する場合);および
レニウム補助促進剤:0.1から30mmol/kg(存在する場合)
銀に関して、この金属は、好ましくは50から500g/kg、より好ましくは100から400g/kg、特に150から350g/kgの量で存在する。レニウムは、好ましくは0.1から10mmol/kg、より好ましくは0.2から8mmol/kgの量で存在する。1つ以上の付加的元素は、それぞれ0.5から100mmol/kg、より好ましくは1から80mmol/kgの量で存在する。
【0054】
本発明のエポキシ化法は多くの方法で行ってよいが、気相法(即ち、供給物を、気相において、一般に充填層中に固体物質として存在する触媒と接触させる方法)として行うのが好ましい。一般に、この方法は連続法で行われる。
【0055】
本発明のエポキシ化法に使用されるオレフィンは、任意のオレフィン、例えば芳香族オレフィン、例えばスチレン、または共役または非共役ジ−オレフィン、例えば1,9−デカジエンまたは1,3−ブタジエンであってよい。オレフィンの混合物を使用し得る。一般に、オレフィンはモノオレフィン、例えば2−ブテンまたはイソンブテンである。好ましくはオレフィンはモノ−α−オレフィン、例えば1−ブテンまたはプロピレンである。最も好ましいオレフィンはエチレンである。
【0056】
供給物におけるオレフィン濃度は、広範囲に選択し得る。一般に、供給物におけるオレフィン濃度は、全供給物に対して、多くて80mol%である。好ましくは同ベースで、0.5から70mol%、特に1から60mol%である。本明細書において使用される場合、供給物は、触媒と接触される組成物である。
【0057】
本発明のエポキシ化法は、空気ベース(air−based)または酸素ベース(oxygen−based)法であってよい(「Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology」、第3版、第9巻、1980、pp.445−447参照)。空気ベース法においては、空気または酸素豊富空気を、酸化剤の源として使用し、酸素ベース法においては、高純度(少なくとも95mol%)酸素を、酸化剤の源として使用する。現在、大部分のエポキシ化プラントは酸素ベースであり、これは本発明の好ましい実施形態である。
【0058】
供給物における酸素濃度は、広範囲に選択し得る。しかし、実際には、酸素は一般に、可燃性領域(flammable regime)を避ける濃度で適用される。一般に、適用される酸素の濃度は、全供給物の1から15mol%、より一般的には2から12mol%である。
【0059】
可燃性領域外を維持するために、供給物における酸素濃度は、オレフィン濃度の増加と共に減少され得る。実際の安全操作範囲は、供給物組成に加えて、反応温度および圧力のような反応条件にも依存する。
【0060】
選択性を増加させ、所望されるオレフィンオキシド生成に対して、オレフィンまたはオレフィンオキシドの二酸化炭素および水への所望されない酸化を抑制するために、反応調節剤が供給物に存在してよい。多くの有機化合物、特に有機ハロゲン化物および有機窒素化合物を、反応調節剤として使用し得る。窒素酸化物、ヒドラジン、ヒドロキシルアミンまたはアンモニアも使用し得る。オレフィンエポキシ化の操作条件下で、窒素含有反応調節剤は、硝酸塩または亜硝酸塩の先駆物質であると考えられる場合が多く、即ち、これらはいわゆる硝酸塩−または亜硝酸塩−生成化合物である(例えば参照により本明細書に組み入れられるEP−A−3642およびUS−A−4822900を参照)。
【0061】
有機ハロゲン化物、特に有機臭化物、さらに特に有機塩化物は、好ましい反応調節剤である。好ましい有機ハロゲン化物は、クロロヒドロカーボンまたはブロモヒドロカーボンである。より好ましくはこれらは、塩化メチル、塩化エチル、二塩化エチレン、二臭化エチレン、塩化ビニルまたはこれらの混合物から選択される。最も好ましい反応調節剤は、塩化エチルおよび二塩化エチレンである。
【0062】
好適な窒素酸化物は、一般式NO(xは1から2)で示され、例えばNO、NおよびNを含む。好適な有機窒素化合物は、ニトロ化合物、ニトロソ化合物、アミン、硝酸塩および亜硝酸塩、例えばニトロメタン、1−ニトロプロパンまたは2−ニトロプロパンである。好ましい実施形態において、硝酸塩−または亜硝酸塩−生成化合物、例えば窒素酸化物および/または有機窒素化合物は、有機ハロゲン化物、特に有機塩化物と共に使用される。
【0063】
反応調節剤は、供給物中に低濃度で、例えば全供給物に対して0.1mol%まで、例えば0.01x10−4から0.01mol%で使用した場合に、一般に有効である。特にオレフィンがエチレンである場合、反応調節剤は、全供給物に対して0.1x10−4から50x10−4mol%、特に0.3x10−4から30x10−4mol%の濃度で供給物に存在する。
【0064】
オレフィン、酸素および反応調節剤に加えて、供給物は、1つ以上の任意成分、例えば二酸化炭素、不活性ガスおよび飽和炭化水素も含有し得る。二酸化炭素は、エポキシ化法における副生成物である。一般に、全供給物に対して、25mol%の過剰、好ましくは10mol%の過剰の二酸化炭素濃度は避ける。全供給物に対して1mol%以下の低い二酸化炭素濃度を使用し得る。二酸化炭素の好適濃度は、全供給物に対して0.2から0.8mol%、例えば0.5mol%であると考えられる。不活性ガス、例えば窒素またはアルゴンは、供給物中に、30から90mol%、一般に40から80mol%の濃度で存在し得る。好適な飽和炭化水素は、メタンおよびエタンである。飽和炭化水素が存在する場合、これらは、全供給物に対して80mol%まで、特に75mol%までの量で存在し得る。多くの場合、これらは、少なくとも30mol%、より多くの場合に、少なくとも40mol%の量で存在する。飽和炭化水素は、酸素可燃限界を増加させるために供給物に添加し得る。
【0065】
エポキシ化法は、広範囲から選択される反応温度を使用して行い得る。好ましくは反応温度は150から325℃、より好ましくは180から300℃である。
【0066】
エポキシ化法は、好ましくは1000から3500kPaの範囲の反応器入口圧力で行われる。「GHSV」または気体空間速度(Gas Hourly Space Velocity)は、1時間当たりの、充填触媒1単位容積を通る、標準温度および圧力(0℃、1気圧、即ち101.3kPa)における気体の単位容積である。好ましくはエポキシ化法が充填触媒層を含む気相法として行われる場合、GHSVは1500から10000Nl/(l.h)の範囲である。好ましくはこの方法は、1時間当たり触媒1mについて生成されるオレフィンオキシド0.5から10kmol、特に1時間当たり触媒1mについて生成されるオレフィンオキシド0.7から8kmol、例えば1時間当たり触媒1mについて生成されるオレフィンオキシド5kmolの運転効率で行われる。本明細書において使用される運転効率とは、1時間当たりの単位容積の触媒について生成されるオレフィンオキシドの量であり、選択性は、変換されたオレフィンのモル量に対する生成されたオレフィンオキシドのモル量である。
【0067】
生成されたオレフィンオキシドは、当分野で既知の方法を使用することによって(例えば水中における反応器出口流れからのオレフィンオキシドの吸収、および場合により、蒸留による水溶液からのオレフィンオキシドの回収によって)、反応混合物から回収し得る。オレフィンオキシドを含有する水溶液の少なくとも一部は、オレフィンオキシドを1,2−ジオールまたは1,2−ジオールエーテルに変換する次の工程に適用し得る。
【0068】
エポキシ化法において生成されたオレフィンオキシドを、1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、またはアルカノールアミンに変換し得る。本発明はより魅力的なオレフィンオキシドの生成法を与えると同時に、本発明によってオレフィンオキシドを生成し、次に得られたオレフィンオキシドを1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテルおよび/またはアルカノールアミンの調製に使用することを含む、より魅力的な方法も同時に与える。
【0069】
1,2−ジオールまたは1,2−ジオールエーテルへの変換は、例えば酸性または塩基性触媒を適切に使用して、オレフィンオキシドを水と反応させることを含み得る。例えば主に1,2−ジオールおよびより少ない1,2−ジオールエーテルを生成するために、オレフィンオキシドと10倍モル過剰の水とを、液相反応において、酸触媒、例えば全反応混合物に基づいて0.5から1wt%の硫酸の存在下で、50から70℃、1バール絶対圧力において、反応させるか、または気相反応において、130から240℃および20から40バール絶対圧力において、好ましくは触媒の存在下で、反応させてよい。水の比率を下げると、反応混合物における1,2−ジオールエーテルの比率が増加する。このようにして生成される1,2−ジオールエーテルは、ジ−エーテル、トリ−エーテル、テトラ−エーテルまたは後続(subsequent)エーテルであり得る。選択的1,2−ジオールエーテルは、水の少なくとも一部をアルコールで置き換えることによって、アルコール、特に第一級アルコール、例えばメタノールまたはエタノールを用いてオレフィンオキシドを変換することによって生成し得る。
【0070】
アルカノールアミンへの変換は、例えばオレフィンオキシドをアンモニアと反応させることを含んでよい。無水アンモニアまたはアンモニア水を使用し得るが、無水アンモニアは、一般に、モノアルカノールアミンの生成に有利になるように使用される。オレフィンオキシドのアルカノールアミンへの変換に適用し得る方法については、例えば参照により本明細書に組み入れられるUS−A−4845296を参照し得る。
【0071】
1,2−ジオールおよび1,2−ジオールエーテルは、多種の工業適用、例えば食品、飲料、タバコ、化粧品、熱可塑性ポリマー、硬化性樹脂系、洗浄剤、熱伝達系などの分野に使用し得る。アルカノールアミンは、例えば天然ガスの処理(「スイートニング」)に使用し得る。
【0072】
特に規定されない限り、本明細書に記載する低分子量有機化合物、例えばオレフィン、1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、アルカノールアミンおよび反応調節剤は、一般に多くて40個の炭素原子、より一般的には多くて20個の炭素原子、特に多くて10個の炭素原子、さらに特に多くて6個の炭素原子を有する。本明細書において規定される炭素原子の数(即ち、炭素数)の範囲は、範囲限界に規定した数値を含む。
【0073】
本発明を一般的に記載したが、例示目的だけに示され、他に規定されない限り限定することを意図するものでない以下の実施例を参照して、さらに深い理解が得られる。
【0074】
例示的実施形態
以下の例示的実施形態において、2種類のα−アルミナ担体が使用された。これらの種類の担体の公称特性が、下記の表Iに要約されている。
【0075】
【表1】

【0076】
実験1
500mlの三角フラスコに、A型担体(前記表I参照)100gを添加した。次にフラスコをオーブンで100℃に加熱した。フラスコをオーブンから出し、90℃の温度で前もって平衡させた脱イオン水140gをフラスコに添加した。担体および水を含有するフラスコを、90℃で水浴に入れて、定温を維持した。20分後、フラスコを水浴から出し、水溶液を濾過によって担体から分離した。パーキンエルマー3300原子吸光装置を用いるフレーム原子発光によって、水溶液のナトリウム含有量を測定した。30分の接触時間を使用して、この手順を繰り返した。担体を添加せずに水およびフラスコを使用して、参照ブランクを試験した。結果を下記の表IIに要約する。
【0077】
実験2
0.00375molの硝酸アンモニウム水溶液を脱イオン水の代わりに使用した以外は、実験1の手順を繰り返した。結果を下記の表IIに要約する。
【0078】
実験3
0.00375molの酢酸アンモニウム水溶液を脱イオン水の代わりに使用した以外は、実験1の手順を繰り返した。結果を下記の表IIに要約する。
【0079】
【表2】

【0080】
実験1から3は、低い塩濃度を有する処理溶液が、脱イオン水と比較して、担体から、不純物、例えばナトリウムを、より効果的に除去することを示している。
【実施例1】
【0081】
約1.4の水/担体の質量比における、A型担体(前記の表I参照)および脱イオン水を、解放容器中で接触させる。脱イオン水のpHは、25℃で測定して5.9であった。水の温度を90℃に上昇させ、90℃で約2時間維持した。接触後、脱イオン水を担体から分離した。次に約1.4の脱イオン水/担体の質量比において、室温の追加脱イオン水を容器に添加することによって、担体を再び処理した。担体を、約15分間にわたって、加熱せずに、脱イオン水と接触させた。次に水を担体から分離し、担体を気流中で250℃で15分間にわたって乾燥させた。
【実施例2】
【0082】
A型担体(前記の表I参照)および処理溶液を、別々の無蓋三角フラスコにおいて、90℃で水浴に入れた。一旦90℃に平衡させたら、処理溶液/担体の質量比1.33にするために、充分な処理溶液を、担体を含有するフラスコに注いだ。約2時間の接触時間中、温度を90℃で維持した。接触後、処理溶液を担体から分離し、次に担体を気流中で250℃で15分間にわたって乾燥させた。この実施例で使用した処理溶液は、0.0625molの硝酸アンニウム水溶液であった。0.0625molの硝酸アンモニウム水溶液のpHは、25℃で測定して5.4であった。
【実施例3】
【0083】
約1.4の処理溶液/担体の質量比における、A型担体(前記の表I参照)および処理溶液を、解放容器中で接触させた。処理溶液の温度を90℃に上昇させ、90℃で約1時間維持した。処理溶液は0.00375molの硝酸アンモニウム水溶液であった。0.00375molの硝酸アンモニウム水溶液のpHは、25℃で測定して5.9であった。
【0084】
接触後、処理溶液を担体から分離した。次に約1.4の溶液/担体の質量比において、室温の追加の0.00375mol硝酸アンモニウム溶液を容器に添加することによって、担体を2回目の処理に付した。溶液を、約15分間にわたって、加熱せずに、担体と接触させた。次に溶液を担体から分離した。約1.4の溶液/担体の質量比において、室温の追加の0.00375mol硝酸アンモニウム溶液を容器に添加することによって、担体を3回目の処理に付した。溶液を、約15分間にわたって、加熱せずに、担体と接触させた。溶液を担体から分離し、次に担体を気流中で250℃において15分間乾燥させた。
【実施例4】
【0085】
保存銀含浸溶液
ここで、以下の実施例に記載する種々の支持材に含浸させるために使用される、保存銀含浸溶液の調製について記載する。
【0086】
5Lのステンレス鋼ビーカーにおいて、試薬用水酸化ナトリウム415gを、脱イオン水2340mlに溶解させた。溶液の温度を約50℃に調節した。4Lのステンレス鋼ビーカーにおいて、硝酸銀1699gを脱イオン水2100mlに溶解させた。溶液の温度を約50℃に調節した。水酸化ナトリウム溶液を硝酸銀溶液に攪拌しながらゆっくり添加し、その間、温度を約50℃に維持した。得られたスラリーを約15分間攪拌した。必要であればNaOH溶液を添加することによって、溶液のpHを10より高く維持した。洗浄手順を使用し、手順は、フィルターワンド(filter wand)の使用による液体の除去、次に除去した液体の等量の脱イオン水での補充を含む。この洗浄手順を、濾液の電気伝導率が90micro−mho/cm未満に減少するまで繰り返した。最後の洗浄サイクルの終了後に、脱イオン水1500mlを添加し、次に蓚酸二水化物(4.997mol)630gを100g単位で添加し、その間、溶液を攪拌し、約40℃(±5℃)で維持した。最後の蓚酸二水化物130gの添加の間に、溶液のpHを監視して、長時間にわたって7.8未満に低下しないようにした。フィルターワンドを用いて水を溶液から除去し、スラリーを30℃未満に冷却した。92%エチレンジアミン(EDA)732gを溶液にゆっくり添加した。この添加の間、温度を30℃未満に維持した。機械的に攪拌するのに充分な液体になるまで、ヘラを用いて混合物を手で攪拌した。最終溶液を、以下の実施例おいて触媒を調製するための保存銀含浸溶液として使用した。
【0087】
最終溶液を、触媒の調製用の保存銀含浸溶液として使用した。
【0088】
以下の手順によって、実施例1の脱イオン水処理担体上に銀触媒を調製した。比重1.547g/mlの銀保存溶液56.2gを、水2cc中の46.07wt%水酸化セシウム0.1116gおよび水酸化リチウム一水化物0.2876gの溶液と混合することによって、銀含有含浸溶液を調製した。追加の水を添加して、溶液の比重を1.495g/mlに調節した。この含浸溶液を使用して、銀触媒を調製した。担体30gを含有する容器を、20mmHgに1分間排気し、最終含浸溶液を真空下に添加し、次に真空を解除し、先駆物質を液体と3時間接触させた。次に含浸された先駆物質を500rpmで2分間にわたって遠心分離して、過剰の液体を除去した。湿った先駆物質ペレットを、振動シェーカーに入れ、16.2Nl/hの速度で流れる空気中で250℃において5.5分間乾燥させた。
【0089】
調製された触媒、触媒A(比較用)は、14.5wt%の銀、60mmol/kgのリチウム、および3.4mmol/kgのセシウム(すべて触媒の重量に対する。)を含有していた。
【実施例5】
【0090】
第二の触媒、触媒B(比較用)を、実施例4と同じ方法で調製し、但し、実施例2の硝酸アンモニウム処理担体を、実施例1の脱イオン水処理担体の代わりに使用した。
【実施例6】
【0091】
第三の触媒、触媒C(本発明による。)を、実施例4と同じ方法で調製し、但し、実施例3の硝酸アンモニウム処理担体を、実施例1の脱イオン水処理担体の代わりに使用した。
【実施例7】
【0092】
触媒A、BおよびCを使用して、エチレンおよび酸素からエチレンオキシドを生成した。これを行うために、触媒の粉砕試料を、別々のステンレス鋼U型試験管に装填した。各試験管を、溶融金属浴(熱媒)に浸し、末端をガスフロー系に連結した。ガス混合物が、「単流」操作において、触媒層を通過した。使用される触媒の重量、および不活性ガス流量を調節して、非粉砕触媒について計算した場合に30,000Nl/(l.h)の気体空間速度を得た。入口ガス圧力は1550kPa(絶対圧力)であった。
【0093】
30.0vol%のエチレン、8.0vol%の酸素、5.0vol%の二酸化炭素、57.0vol%の窒素および5.6容量百万分率(parts per million by volume)(ppmv)の塩化エチレンからなるガス混合物が、始動を含む全テストラン中、「単流」操作において触媒層を通過した。初期反応器温度は180℃であり、これを10℃/時の速度で225℃に昇温し、次にラン時間中、25.0%の一定酸素変換レベルになるように調節した。
【0094】
所望の酸素変換レベルに達した際に、初期選択性および活性についての性能データを得た。触媒A、BおよびCについて、初期選択性に対して、選択性の0.8%減少ならびに選択性の1.6%減少を生じるのに必要とされたエチレンオキシドの累積生成を測定した。さらに、初期活性に対して、温度の9℃上昇ならびに温度の14℃上昇を生じるのに必要とされたエチレンオキシドの累積生成も、触媒A、BおよびCについて測定した。選択性の特定の減少または温度の特定の上昇(即ち、活性の減少)を生じるのに必要とされたエチレンオキシドの累積生成のより高い数値は、安定性の向上を意味する。下記の表IIIは、測定された数値を示す。表IIIにおいて、エチレンオキシドの累積生成はkton(kT)エチレンオキシド/m触媒として示されている。
【0095】
下記の表IIIに示されている性能データは、本発明によって調製された触媒Cが、比較触媒AおよびBと比較した場合に、同じ酸素変換レベルにおいて向上した安定性を示すことを明らかにしている。
【0096】
【表3】

【実施例8】
【0097】
B型担体を、実施例1の手順によって処理し、但し、担体および脱イオン水を別々の三角フラスコにおいて、90℃で水浴に入れ、一旦90℃に平衡させたら、担体を含有するフラスコに、約1.4の水/担体の質量比を得るのに充分な脱イオン水を注いだ。
【実施例9】
【0098】
B型担体を、実施例2の手順に従って、硝酸アンモニウム溶液で処理した。
【実施例10】
【0099】
B型担体を、実施例3の手順に従って、硝酸アンモニウム溶液で処理した。
【実施例11】
【0100】
実施例8に従って調製した担体の試料に、銀含有含浸溶液を含浸させた。比重1.547g/mlの銀保存溶液107.3gと、2gの1:1(w/w)のエチレンジアミン/水の中の過レニウム酸アンモニウム0.1170g、2gの1:1のアンモニア/水に溶解したメタタングステン酸アンモニウム0.0544g、および水に溶解した水酸化リチウム一水化物0.3662gを含有する溶液とを混合することによって、銀含有含浸溶液を調製した。溶液の比重を1.462g/mlに調節するために、追加の水を添加した。得られた溶液70gを、0.4451gの46.07wt%水酸化セシウム溶液と混合した。この銀含有含浸溶液を使用して、銀触媒を調製した。実施例8に従って調製した担体30gを含有する容器を、20mmHgに1分間排気し、最終含浸溶液を真空下に添加し、次に真空を解除し、先駆物質を液体に3分間接触させた。次に含浸先駆物質を500rpmで2分間遠心分離して、過剰の液体を除去した。湿った先駆物質ペレットを、振動シェーカーに入れ、16.2Nl/hの速度で流れる空気中で250℃において5.5分間乾燥させた。触媒D(比較用)について得られた触媒組成は、14.5wt%のAg、7.1mmol Cs/kg触媒、2.0mmol Re/kg触媒、1.0mmol W/kg触媒および40mmol Li/kg触媒であった。
【実施例12】
【0101】
第二の触媒、触媒E(比較用)を、実施例11と同様の方法で調製した。実施例9に従って調製した担体の試料に、銀含有含浸溶液を含浸させた。比重1.547g/mlの銀保存溶液74.4gと、2gの1:1(w/w)のエチレンジアミン/水の中の過レニウム酸アンモニウム0.0811g、2gの1:1のアンモニア/水に溶解したメタタングステン酸アンモニウム0.0377g、および水に溶解した水酸化リチウム一水化物0.2539gを含有する溶液とを混合することによって、銀含有含浸溶液を調製した。溶液の比重を1.481g/mlに調節するために、追加の水を添加した。得られた溶液80gを、0.3080gの46.07wt%水酸化セシウム溶液と混合した。この銀含有含浸溶液を使用して、銀触媒を調製した。最終触媒Eの組成は、14.8wt%のAg、7.1mmol Cs/kg触媒、2.0mmol Re/kg触媒、1.0mmol W/kg触媒および40mmol Li/kg触媒であった。
【実施例13】
【0102】
第三の触媒、触媒F(本発明による。)を、実施例11と同様の方法で調製した。実施例10に従って調製した担体の試料に、銀含有含浸溶液を含浸させた。比重1.547g/mlの銀保存溶液107.3gと、2gの1:1(w/w)のエチレンジアミン/水の中の過レニウム酸アンモニウム0.1170g、2gの1:1のアンモニア/水に溶解したメタタングステン酸アンモニウム0.0544g、および水に溶解した水酸化リチウム一水化物0.3662gを含有する溶液とを混合することによって、銀含有含浸溶液を調製した。溶液の比重を1.462g/mlに調節するために、追加の水を添加した。得られた溶液70gを、0.4451gの46.07wt%水酸化セシウム溶液と混合した。この銀含有含浸溶液を使用して、銀触媒を調製した。最終触媒Fの組成は、14.5wt%のAg、7.1mmol Cs/kg触媒、2.0mmol Re/kg触媒、1.0mmol W/kg触媒および40mmol Li/kg触媒であった。
【実施例14】
【0103】
触媒D、EおよびFを、エチレンおよび酸素からのエチレンオキシドの生成において試験した。これを行うために、ある量の粉砕触媒D、EおよびFを、それぞれ、別々のステンレス鋼U型試験管に装填した。各試験管を、溶融金属浴(熱媒)に浸し、末端をガスフロー系に連結した。ガス混合物が、「単流」操作において、触媒層を通過した。使用される触媒の重量、および不活性ガス流量を調節して、非粉砕触媒について計算した場合に27,200Nmlガス/ml触媒/時の気体空間速度を得た。入口ガス圧力は1550kPa(絶対圧力)であった。
【0104】
ガス混合物は、30%vのエチレン、8%vの酸素、5%vの二酸化炭素、2.4から5ppmvの塩化エチル、および残りの窒素を含有していた。
【0105】
初期反応器温度は200℃であり、これを約24時間にわたって230℃に昇温した。次に出口ガス流において1.5%vのエチレンオキシド含有量が得られるように、温度を調節した。温度をゆっくり上昇させて、老化の結果としての触媒性能の低下を補い、即ち、これによって出口ガス流における一定のエチレンオキシド含有量を維持した。
【0106】
出口ガス流における所望のエチレンオキシド含有量に到達した際に、初期選択性および活性に関する性能データを得た。触媒D、EおよびFについて、初期選択性に対して、選択性の2.5%減少を生じるのに必要とされたエチレンオキシドの累積生成を測定した。さらに、初期活性に対して、温度の30℃上昇を生じるのに必要とされたエチレンオキシドの累積生成を、触媒D、EおよびFに関して測定した。選択性の特定の減少または温度の特定の上昇(即ち、活性の減少)を生じるのに必要とされたエチレンオキシドの累積生成のより高い数値は、向上した安定性を意味する。下記の表IVは、測定された数値を示す。エチレンオキシドの累積生成は、表IVにおいて、kton(kT)エチレンオキシド/m触媒として示されている。
【0107】
下記の表IVに示されている性能データは、本発明によって調製された触媒Fが、比較触媒DおよびDと比較した場合に、同じエチレンオキシド生成において向上した安定性を示すことを明らかにしている。
【0108】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体またはこの先駆物質から不純物を少なくとも部分的に除去するために、担体またはこの先駆物質を処理する方法であって、
担体、またはこの先駆物質を、0.015mol未満の濃度で塩を含む処理溶液に、40℃より高い温度で接触させる工程であって、塩が、ハロゲン化物、有機アニオン、無機カルボキシレート、元素周期律表の第IIIBから第VIIB族、第IIIA族、および第VA族から第VIIA族からの元素のオキシアニオン、シアネート、イソシアネート、シアニドならびにこれらの組み合わせから選択されるアニオンを含む工程;および
担体またはこの先駆物質から、処理溶液の少なくとも一部を分離する工程
を含む方法。
【請求項2】
オキシアニオンが、元素周期律表の第IIIA族および第VA族から第VIIA族からの元素のオキシアニオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機アニオンが、アルコラート、カルボキシレートおよびこれらの組み合わせから選択され、無機カルボキシレートが、蓚酸塩、カルバミド酸塩およびこれらの組み合わせから選択され、ならびにハロゲン化物が、弗化物、塩化物、臭化物およびこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ハロゲン化物が塩化物である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
塩が、1つ以上の硝酸塩、亜硝酸塩または酢酸塩アニオン、特に硝酸塩アニオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
塩が、第IA族金属、第IIA族金属およびこれらの組み合わせから選択されるカチオンを含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
第IA族金属が、ナトリウム、リチウム、カリウム、セシウムおよびこれらの組み合わせから選択され、特に第IA族金属がリチウムである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第IIA族金属が、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびこれらの組み合わせから選択され、特に第IIA族金属がマグネシウムである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
塩の濃度が0.007mol未満、特に多くて0.004molである、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
担体またはこの先駆物質から不純物を少なくとも部分的に除去するために、担体またはこの先駆物質を処理する方法であって、
担体、またはこの先駆物質を、多くて0.05molの濃度で塩を含む処理溶液に接触させる工程であって、塩が、カチオンおよびアニオンを含み、ならびにカチオンが、アンモニウム、ホスホニウム、有機カチオンおよびこれらの組み合わせから選択され、ならびにアニオンが、有機アニオン、無機カルボキシレート、元素周期律表の第IIIA族から第VIIA族からの元素のオキシアニオン、およびこれらの組み合わせから選択される工程;および
担体またはこの先駆物質から、処理溶液の少なくとも一部を分離する工程
を含む方法。
【請求項11】
オキシアニオンが、硼酸塩、メタ硼酸塩、四硼酸塩、テトラフルオロ硼酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩、過臭素酸塩、燐酸塩、メタ燐酸塩、オルト燐酸塩、燐酸水素塩、燐酸二水素塩、フルオロ燐酸塩、亜燐酸塩、亜燐酸水素塩、硫酸塩、二硫酸塩、硫酸水素塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、二亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ亜硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩およびこれらの組み合わせから選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
有機アニオンが、アルコラート、カルボキシレートおよびこれらの組み合わせから選択され、ならびに無機カルボキシレートが、蓚酸塩、カルバミド酸塩およびこれらの組み合わせから選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
塩が、1つ以上の硝酸塩、亜硝酸塩または酢酸塩アニオン、特に硝酸塩アニオンを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
有機カチオンが、アルキルアンモニウム、カルボニウム、アルキルカルボニウム、アルキルホスホニウム、アリールホスホニウム、アリールアルキルホスホニウムおよびこれらの組み合わせから選択される、請求項10から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
カチオンが、アルキルアンモニウムカチオンである、請求項10から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
カチオンが、アンモニウムである、請求項10から13のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
塩の濃度が、多くて0.03mol、特に0.001から0.03molの範囲、さらに特に0.0015から0.009molの範囲にある、請求項10から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
方法が、担体またはこの先駆物質を、処理溶液に、少なくとも5分間にわたって、75℃から120℃、特に90℃から110℃の温度で接触させ、ならびに続いて担体またはこの先駆物質を、高くて500℃、特に180から280℃の温度で乾燥させることをさらに含む、請求項10から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
方法が、
担体またはこの先駆物質を、付加的処理溶液に接触させる工程;
担体またはこの先駆物質から、付加的処理溶液の少なくとも一部を分離する工程;および
任意選択で、担体またはこの先駆物質を、さらなる処理溶液に接触させる工程
をさらに含む、請求項10から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
触媒の調製方法であって、
担体またはこの先駆物質を、請求項1から19のいずれかに従って処理する工程;および
処理された担体、または処理された先駆物質から調製された担体に、銀を堆積させる工程
を含む方法。
【請求項21】
銀を、触媒の重量に対して10から500g/kgの量で担体に堆積させる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
方法が、窒素、硫黄、燐、硼素、弗素、第IA族金属、第IIA族金属、レニウム、モリブデン、タングステン、クロム、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、バナジウム、マンガン、タリウム、トリウム、タンタル、ニオビウム、ガリウムおよびゲルマニウムならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の付加的元素を堆積させることをさらに含む、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
方法が、レニウム、モリブデン、タングステン、第IA族金属および硝酸塩−または亜硝酸塩−形成化合物の1つ以上を堆積させることをさらに含む、請求項20から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
オレフィンオキシドの製造方法であって、
請求項20から23のいずれかに記載の方法によって触媒を調製する工程;および
触媒の存在下で、オレフィンを酸素と反応させる工程
を含む方法。
【請求項25】
1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテルまたはアルカノールアミンの製造方法であって、
請求項24に記載の方法によってオレフィンオキシドを得る工程;および
オレフィンオキシドを、1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテルまたはアルカノールアミンに変換する工程
を含む方法。

【公表番号】特表2010−510051(P2010−510051A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537366(P2009−537366)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/084818
【国際公開番号】WO2008/064076
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】