説明

振動装置

【課題】 薄い寸法構成の圧電アクチュエータを用いた振動装置を提供する。
【解決手段】 一端部を台座4に固定した板状の圧電アクチュエータ1と圧電アクチュエータ1の他端部にダンパ3を介して接続した錘2を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電バイモルフ型アクチュエータ、又は圧電ユニモルフ型アクチュエータ等の圧電アクチュエータを用いた振動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置にタッチパネル機能を組み込んだもの、または入力装置において操作キーを用いたものが導入されてきている。タッチパネルや操作キーにおいては、操作者が指やペンで押圧することによって情報を入力するものであるが、操作した後に確実に操作したという情報が操作者に確実に伝わらないという問題があった。この為、操作者は確実に操作を行ったことを常に自分自身で把握する必要があった。特に昨今の表示装置、入力装置においては薄型の操作キーが主流であるが、この場合クリック感が浅い、もしくはほとんど無いに等しい、これが操作者に確実に操作したという感覚を不明瞭なものとする傾向があり、同じ操作キーを2度押してしまう等して、誤った操作をしてしまう事が多かった。この対策として電磁型アクチュエータを装置内に有することによって、操作者の指に振動を返すことにより確実に操作を行ったという感触を与える方式は存在する。しかし、電磁型アクチュエータは、マグネットとコイルを有する為に高さ寸法が大きくなり、薄型の操作キーを有する装置においては、搭載する為のスペースを確保するのが困難であるという難点があった。又、振動量を大きくして確実に操作者に振動を返すには、電磁アクチュエータのコイル及びマグネットを大型化する必要が有り、システムの外形寸法を大型化する必要があった。すなわち、電磁型アクチュエータでは、厚み寸法において搭載スペースを確保するのが困難である為、結果としてシステムの薄型化と操作感向上を両立させる事を妨げる要因となっていた。
【0003】
このため特許文献1において、ベース部に2点支持された圧電振動板の両端に振動錘を取り付けた圧電振動子が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−300426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1においては、薄型の矩形状の圧電アクチュエータを用いている。図2に圧電アクチュエータの平面図を示す。圧電アクチュエータは、金属シム5に圧電セラミックス素子6を貼り付けた構造となっている。このような薄型かつ幅狭な圧電バイモルフ型アクチュエータ又は圧電ユニモルフ型アクチュエータであれば、搭載スペースに制約のある表示装置においても搭載可能なスペースを見出せる可能性が高くなる。しかし、人体とくに指先に振動を与え、操作者に操作感を伝達するには100Hz〜200Hzの低周波数振動が必要となる。矩形状の圧電バイモルフ型アクチュエータ、又は圧電ユニモルフ型アクチュエータの共振周波数fは以下の式より算出できる。
【0006】
f=(α/(4・(3)1/2π))・(t/l)・(Y/ρ)1/2なおαは非線形補正係数、tは厚み寸法、lは長さ寸法、Yはセラミック弾性率、ρはセラミック比重を示す。
【0007】
これに添えば厚みが0.5mm〜1.0mm、長さが30mm〜40mmの寸法が必要となる。
【0008】
しかし、圧電セラミックス素子を直接、タッチパネルに貼り付ける場合、機械的強度を確認するため落下試験等をクリアする必要がある。圧電セラミックス素子自体は形状によっては非常に破損しやすい為、タッチパネルを設計する際に、大きさ、形状を考慮する必要が生じる。
【0009】
上述の圧電アクチュエータの大きさ、形状の課題に対しては、特許文献1等で記載される様に圧電アクチュエータ自体は小型化して追加工を行いデバイス化するという方法がある。
【0010】
図3は従来の圧電アクチュエータを用いた振動装置の断面図である。例えば、圧電アクチュエータをバイモルフ型、又はユニモルフ型とし、更に片もち梁構造とし発生振動力を増やす為に錘付加を行った場合、図3に示す様に、発生振動力に貢献する錘2の部位は、圧電バイモルフ素子、又は圧電ユニモルフ素子等の圧電アクチュエータ1の先端に取り付けられた錘2の先端である事が分かる。錘2を取り付けた場合、デバイスとしての寸法、重量が増えてしまう為、これに見合うだけの発生振動力の向上が望まれる。例えば図3においては、発生振動力の向上に貢献しているのは、シミュレーション上の分布によると錘の体積の約1/5程度と推測される。上述の共振周波数の計算においては、錘は2g程度必要な事が判明しているが、これを真鍮で作成した場合、比重から計算すると、長さ寸法:15mm、幅寸法:4.5mm、高さ寸法:3.6mmが必要となる。これだけの体積が増えたにも関わらず、性能向上に寄与するのが1/5程度の場合、民生用途のモバイル端末や入力装置においては搭載するのが困難となり、上述した電磁型アクチュエータと同様の問題を圧電アクチュエータにおいても抱えてしまう事となってしまう。
【0011】
本発明はこのような問題点を解決するために成されたもので、その技術的課題は、厚み寸法の増加を最小限にする為に出来るだけ薄い寸法構成の圧電アクチュエータを用いた振動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、圧電アクチュエータに接続した錘の効果を最大限、発生振動力に還元する為に、圧電アクチュエータにダンパを介して錘を接続し、錘の運動方向を上下方向のみとすることにより、錘の体積を可能な限り振動力増加に寄与させることができることを見出したものである。
【0013】
すなわち、本発明によれば、一端部を台座に固定した板状の圧電アクチュエータと、前記圧電アクチュエータの他端部にダンパを介して接続した錘を有することを特徴とする振動装置が得られる。
【0014】
また、本発明によれば、前記圧電アクチュエータがバイモルフ型圧電アクチュエータ、又はユニモルフ型圧電アクチュエータであることを特徴とする振動装置が得られる。
【0015】
また、本発明によれば、一端部を台座に固定した前記圧電アクチュエータのベンディングによる円弧運動を錘の直線運動へ変換されることを特徴とする振動装置が得られる。
【0016】
また、本発明によれば、前記錘がシャフトにより支持され、前記圧電アクチュエータのベンディングによる円弧運動が、錘の直線運動へと変換されることを特徴とする振動装置が得られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、圧電アクチュエータに接続した錘が垂直方向にのみ上下の直線運動(以下上下運動と記載)を行う為、錘の質量は100%発生振動量に寄与し、デバイスの外形寸法の増加を最小限に抑制することが出来る。又、錘の外形寸法の調整によっては、大きな振動量を発生しながらも薄型の振動装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の振動装置の第一の実施の形態の断面図。
【図2】圧電アクチュエータの平面図。
【図3】従来の圧電アクチュエータを用いた振動装置の断面図。
【図4】本発明の振動装置の第二の実施の形態の断面図。
【図5】本発明の振動装置の第一の実施の形態の要部断面図。
【図6】本発明の振動装置の金属シムにダンパを取り付けた斜視図。
【図7】本発明の実施例1と従来の比較例1の振動特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態による振動装置の構成について図面を参照して説明する。
【0020】
まず本発明の第一の実施の形態の振動装置について説明する。図1に示すように、圧電アクチュエータを用いた振動装置は、それぞれ一端部をケース8上の台座4にエポキシ系接着剤またはゴム系接着剤で固定した2個の圧電バイモルフ型、または圧電ユニモルフ型の圧電アクチュエータ1の他端部にダンパ3を介して1個の真鍮またはリン青銅等の金属からなる錘2を接続した構成となっている。錘2の中央部から左右に等距離の箇所にそれぞれ圧電アクチュエータ1をダンパ3を介して接続している。錘2の左右に圧電アクチュエータ1を配置し、圧電アクチュエータのベンディング動作を、圧電アクチュエータ1と錘2とをダンパ3により接続した事で圧電アクチュエータ先端部の円弧運動を錘の上下運動に変換することを可能としたものである。ここで圧電アクチュエータのベンディング動作を錘の上下運動に変換する為のダンパについて説明する。圧電アクチュエータの先端は円弧を描いて動作する為、図5の要部断面図に示す様に断面がU字状のダンパ3による伸縮により圧電アクチュエータの円弧運動による動的な寸法の違いを吸収する。ダンパ3の形状は断面U字状の他断面が波形等、動的な寸法の違いを吸収できる形状であればよい。これは図6に示す様に圧電バイモルフ型アクチュエータ又は圧電ユニモルフ型アクチュエータを構成する為の金属シムと呼ばれる薄い金属板に直接ダンパを取り付けられる様な構造とすることにより得られる。又錘2へのダンパ3の取り付けも同様で、錘2に対して直接ダンパ3を取り付ける様にする(図5参照)。この構造により圧電アクチュエータのベンディングによる円弧動作はほぼ100%、錘を動かす為の上下運動へと変換される事になる。
【0021】
次に本発明の第二の実施の形態の振動装置について図4を参照して説明する。本発明の第二の実施の形態の振動装置は、一端部をケース8上の台座4に固定した圧電アクチュエータ1の他端部にダンパ3を介して錘2を接続した構成となっている。錘2の中央部にはシャフト7が貫通し、錘2が上下の直線運動をする構成としている。また、錘2のダンパ3との接続部の上下には、シャフト側とは反対側に延伸する突出部が設けられている。これにより質量の調整等が可能となる。圧電バイモルフ型アクチュエータ、又は圧電ユニモルフ型アクチュエータの構成、ダンパ、錘の構成については第一に実施の形態と同様のものを使用することができる。
【実施例1】
【0022】
次に本発明の具体的実施例について図面を参照して説明する。
【0023】
まず圧電アクチュエータについて説明する。NECトーキン製圧電セラミックス材料N10をベースにして、一層58μmのグリーンシートを作成し、銀とパラジュームよりなる内部電極を印刷したあと、熱プレスで8層に積層したあと、裁断して焼成して得られた矩形状の圧電セラミックス素子、長さ11.5mm×幅3.0mm×厚み0.4mmを作製した。これを更に鉄ニッケル42アロイからなる金属シムにエポキシ系接着剤で貼り付け積層型の圧電ユニモルフ型の圧電アクチュエータ(長さ11.5mm×幅3.0mm×厚み0.5mm)を作製した。図4の第二の実施の形態の断面図に示すように、この圧電アクチュエータ1の一端を長さ2.5mm×幅3.0mm×厚み0.5mmの取り付け用台座4にエポキシ系接着剤で貼り付けた。圧電アクチュエータ1の他端には幅4.5mm×厚み0.1mmのU字状のダンパ3を介して真鍮からなる長さ34mm×幅4.5mm×厚み2.3mmの錘2を接続した。錘の中央部にシャフトを貫通させた。シャフトはφ0.5mm×3.5mmとした。本実施例1の圧電アクチュエータを用いた振動装置の外形寸法は長さ35mm×幅4.5mm×厚み4.0mmとなった。図7に振動特性、即ち振動周波数〔Hz〕に対するゲイン[dB]特性を示した。
【0024】
(比較例1)
比較例1に用いた圧電アクチュエータは実施例1で用いたものと同様のものを用いた。図3の従来の圧電アクチュエータを用いた振動装置の断面図に示すように、圧電アクチュエータ1の一端を長さ2.5mm×幅3.0mm×厚み0.5mmの取り付け用台座4にエポキシ系接着剤で貼り付けた。圧電アクチュエータ1の他端には真鍮からなる長さ34mm×幅4.5mm×厚み2.3mmの錘2を接続した。本比較例1の振動装置の外形寸法は長さ35mm×幅4.5mm×厚み4.0mmとなった。図7に振動特性、即ち振動周波数〔Hz〕に対するゲイン[dB]特性を示した。なお入力は1Vrmsとして測定した。
【0025】
本発明による実施例1と、従来の構造の比較例1の振動特性を比較した結果を図7に記載したが、比較例1においては圧電ユニモルフ型アクチュエータの先端に錘を付加しているが、錘が最大振幅を描くのは圧電ユニモルフ型アクチュエータに付けられた先端部分のみであり、圧電ユニモルフ型アクチュエータに近づくに従って錘の振幅は減っていく。この為、錘を付加しても錘の全自重が発生振動力に寄与する率は、コンピュータ解析の結果から推定すると30%程度であり、残りの70%は発生振動力への寄与率が少ない為、デバイスの外形寸法に対して必要以上に寸法を増加させるという事が分かる。これに対して実施例1による構造では、錘が完全に垂直方向にのみ上下運動を行う為、錘の重量は100%発生振動力に寄与し、デバイスの外形寸法の増加を最小限に抑制することが出来る。又、錘の外形寸法の調整によっては、大きな振動量を発生しながらも薄型の振動デバイスを提供することも可能となる。
【0026】
上述した通り、従来の比較例1のコンピュータシミュレーションの結果よりも、本実施例1により本発明による最適化された錘寸法への振動デバイスに対する有効性を確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明による圧電バイモルフ型アクチュエータ、又は圧電ユニモルフ型アクチュエータを使用した振動装置は、表示装置、タッチパネル機能付き表示装置、入力装置としての適用が有効である。
【符号の説明】
【0028】
1 圧電アクチュエータ
2 錘
3 ダンパ
4 台座
5 金属シム
6 圧電セラミックス素子
7 シャフト
8 ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部を台座に固定した板状の圧電アクチュエータと、前記圧電アクチュエータの他端部にダンパを介して接続した錘を有することを特徴とする振動装置。
【請求項2】
前記圧電アクチュエータがバイモルフ型圧電アクチュエータ、又はユニモルフ型圧電アクチュエータであることを特徴とする請求項1に記載の振動装置。
【請求項3】
一端部を台座に固定した前記圧電アクチュエータのベンディングによる円弧運動を錘の直線運動へ変換されることを特徴とする請求項1又は2に記載の振動装置。
【請求項4】
前記錘がシャフトにより支持され、前記圧電アクチュエータのベンディングによる円弧運動が、錘の直線運動へと変換されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の振動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−245437(P2011−245437A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122445(P2010−122445)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】