説明

排ガス処理システム

【課題】簡単な構成で、かつ設備費用を抑えつつ、脱硫装置の脱硫性能及び水銀の除去特性の低下を抑制すること。
【解決手段】富酸素ガスと循環排ガスとを混合した燃焼用ガスにより燃料を燃焼させるボイラ1と、ボイラ1から排出される排ガスが流れる第1の煙道13に配設された集塵機5と、集塵機5の下流側の煙道を流れる排ガスを導入して脱硫処理する湿式の脱硫装置7と、集塵機5の下流側の煙道を分岐して該煙道から抜き出した排ガスの一部をボイラ1に導く排ガス再循環ダクト17と、脱硫装置7の下流側の煙道を流れる排ガスを圧縮して二酸化炭素を分離するCO分離手段9を備える。CO分離手段9の排ガスを圧縮する過程で分離された水分を、脱硫装置7内で循環して使用される吸収液に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理システムに係り、特に、富酸素ガスと循環排ガスを混合した燃焼用ガスを用いて燃料を燃焼させるボイラを備えたプラントの排ガス処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の原因の一つとされる二酸化炭素(CO)の排出量を低減する技術として、酸素燃焼方式のボイラ(以下、ボイラと略す)を用いた酸素燃焼システムが注目されている。このシステムでは、酸化剤である富酸素、つまり高濃度の酸素ガス(以下、酸素と略す)が石炭等の化石燃料とともにボイラに供給されるので、ボイラから排出される排ガスは水と二酸化炭素が主成分となる。このため、排ガスを直接圧縮することにより、二酸化炭素を容易に排ガスから分離することができる。
【0003】
酸素燃焼システムのボイラから排出された排ガスは、ボイラの下流側の煙道に設置された熱交換器によりガス温度が下げられた後、集塵機に導かれて煤塵成分が除去される。集塵機を通過した排ガスは、脱硫装置に導かれてSOが除去された後、CO分離手段に導かれて圧縮されることにより、液状の二酸化炭素が排ガス中から分離される。
【0004】
一方、ボイラにて燃料を酸素で燃焼させる場合、燃焼温度が非常に高くなることから、集塵機の後流側の煙道を分岐して抜き出した排ガスの一部をボイラに導く循環ラインを設け、この循環ラインを流れる循環排ガスを酸素とともにボイラに供給することで、燃焼温度を下げる方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、酸素燃焼システムで使用される脱硫装置としては、吸収塔内を上昇する排ガスの流れに向けてスプレーノズルから吸収液を噴霧し、排ガス中のSOや水銀を吸収液に吸収させることで、排ガスから分離する湿式の脱硫装置が広く採用されている。この種の脱硫装置では、吸収塔底部に貯留された吸収液をポンプで汲み上げて再びスプレーノズルから噴霧する循環方式が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−270753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような酸素燃焼システムにおいて、脱硫装置に排ガスが導入されると、その排ガスの熱(例えば90℃〜200℃)によって、吸収液の水分が蒸発するため、吸収塔内を流れる排ガスは、熱が奪われて減温される。ところが、吸収塔内には一般に熱を外に逃がす手段がないため、吸収塔に導入される排ガスの水分濃度によって吸収塔内を流れる排ガスの温度が変化する。例えば、通常の空気燃焼運転時では、吸収塔に導入される排ガスの水分濃度が約10%と低いため、吸収塔内を流れる排ガスの温度はおよそ55℃まで減温されるのに対し、酸素燃焼運転時では、吸収塔に導入される排ガスに空気中の窒素が含まれず、水分濃度が30〜35%と高くなるため、吸収塔内を流れる排ガスの温度はおよそ70℃までしか減温されてない。
【0008】
このように、吸収塔内での排ガス温度が高くなると、噴霧された吸収液と排ガスが接触する脱硫領域の温度、及び、吸収液の温度が上昇し、脱硫装置の脱硫性能及び水銀の除去特性が低下することになる。このような現象を回避するためには、脱硫装置を大型化し、或いは、脱硫装置の後流側に水銀除去装置等を別途設ける方法が考えられるが、設備費用が高くなるという問題がある。
【0009】
一方、酸素燃焼システムで使用されるCO分離手段としては、排ガスを加圧した後に熱交換器で除熱することで排ガス中の水分を除去し、さらに水分が分離された排ガスを加圧して除熱することで液状の二酸化炭素を分離する方法が採用されている。このため、熱交換器からは大量の水分、つまりドレン水が発生するが、脱硫装置で処理された排ガスには、少量のSOが残存しているため、ドレン水にも少量のSOが含まれている。このため、排水処理が必要となることから、システムが複雑化し、設備費用が高くなるという問題がある。
【0010】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、簡単な構成で、かつ設備費用を抑えつつ、脱硫装置の脱硫性能及び水銀の除去特性の低下を抑制できる排ガス処理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
図4は、酸素燃焼運転中のボイラから排ガスを脱硫装置に導入したときに、吸収塔内における脱硫領域の温度と排ガス中のSO除去率との関係を示す図である。ここで、脱硫領域とは、噴霧された吸収液と排ガスとが接触する領域を意味する。この図から、脱硫領域の温度が高くなるに従い、SO除去率が低下することが分かる。これは、温度の上昇により、吸収液へのSOの溶解度が低下するためと考えられる。
【0012】
また、図5は、酸素燃焼運転中のボイラから排ガスを脱硫装置に導入したときに、吸収塔内における脱硫領域の温度と排ガス中の水銀除去率との関係を調査した結果を示す。この図から、脱硫領域の温度が高くなるに従い、水銀の除去率が低下することが分かる。これは、吸収塔で一度吸収液に吸収された酸化水銀が吸収液の液滴内で金属水銀に還元され、排ガス中に再放出される割合が増加したためと考えられる。
【0013】
そこで、本発明の排ガス処理システムでは、上記課題を解決するため、富酸素ガスと循環排ガスとを混合した燃焼用ガスにより燃料を燃焼させるボイラと、このボイラから排出される排ガスが流れる煙道に配設された除塵装置と、この除塵装置の下流側の煙道を流れる排ガスを導入して脱硫処理する湿式脱硫装置と、除塵装置の下流側の煙道を分岐してこの煙道から抜き出した排ガスの一部をボイラに導く排ガス循環流路と、脱硫装置の下流側の煙道を流れる排ガスを圧縮して二酸化炭素を分離するCO分離手段とを備えた排ガス処理システムにおいて、CO分離手段の排ガスを圧縮する過程で分離された水分を、湿式脱硫装置内で循環して使用される吸収液に供給することを特徴としている。
【0014】
すなわち、酸素燃焼方式のボイラから発生する排ガス中には、空気燃焼方式のボイラから発生する排ガスよりも多くの水分が含まれているため、CO分離手段ではより多くの水分が回収される。ここで、CO分離手段において回収される水分は、排ガス中の水蒸気が凝縮することで生じるドレン水であり、このドレン水の温度は分離手段に導入された排ガスの温度よりも低く、例えば常温で回収される。したがって、このようなドレン水を湿式脱硫装置内の吸収液に供給することで、吸収液の温度を下げ、脱硫装置内の温度、つまり脱硫領域の温度を低く保つことができる。これにより、脱硫装置を大型化することなく、脱硫性能及び水銀除去率の低下を抑制することができる。また、このようにCO分離手段で回収されたドレン水を脱硫装置内の吸収液に供給することで、ドレン水に残存して溶け込んでいるSOを脱硫装置内で分離することができる。これにより、脱硫性能の低下が抑制され、しかも、ドレン水の排水処理設備が不要となるため、システムの簡単化を図ることができ、設備費用を低減することができる。
【0015】
より具体的には、湿式脱硫装置は、吸収塔内を上昇する排ガスに向けて吸収液を噴霧するスプレーノズルと、このスプレーノズルから噴霧された吸収液を回収して貯留する吸収塔底部と、この吸収塔底部に貯留された吸収液をスプレーノズルに供給する循環ポンプとを備え、CO分離手段で分離された水分が吸収塔底部に供給されるように構成されてなるものとする。
【0016】
また、CO分離手段で分離された水分を吸収塔底部に供給することに代えて、該水分をスプレーノズルの上方に配置された他のスプレーノズルに供給し、他のスプレーノズルから水分が噴霧されるように構成してもよい。
【0017】
すなわち、吸収液からの水銀の再放出は、吸収液中の水銀が液滴として吸収塔内を飛行する過程で発生する。このため、水銀を含まず、分離手段で分離された水分を上方のスプレーノズルから排ガスに向けて噴き込むことにより、吸収液の液滴から水銀が再放出するのを抑制することができ、水銀の除去率の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の排ガス処理システムによれば、酸素燃焼運転時において、排ガス中の水分量が高い場合でも、簡単な構成で、かつ設備費用を抑えつつ、脱硫装置の脱硫性能及び水銀の除去特性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用してなる排ガス処理システムの概略系統図である。
【図2】本発明を適用してなる排ガス処理システムにおける脱硫塔の構成図である。
【図3】本発明を適用してなる排ガス処理システムにおける分離手段の概略系統図である。
【図4】脱硫装置の吸収塔における脱硫領域の温度と排ガス中のSO除去率との関係を示す図である。
【図5】脱硫装置の吸収塔における脱硫領域の温度と排ガス中の水銀除去率との関係を示す図である。
【図6】本発明を適用してなる排ガス処理システムの他の実施形態の概略系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用してなる排ガス処理システムの実施形態について、図1乃至図3を参照して説明する。なお、本実施形態の排ガス処理システムでは、ボイラで燃焼させる化石燃料として微粉炭を用いる例を説明するが、この例に限定されるものではない。
【0021】
本実施形態の排ガス処理システムは、ボイラ1と、熱交換器3と、集塵機5と、脱硫装置7と、CO分離手段9を備えて構成される。ボイラ1には、図示しないバーナが設けられており、このバーナには、微粉炭燃料を供給するための燃料供給経路11が接続されている。ボイラ1の出口には、排ガスが通流する第1の煙道13が接続されており、第1の煙道13の途中には、上流側から、熱交換器3、集塵機5、脱硫装置7、CO分離手段9が順に配設されている。
【0022】
集塵機5と脱硫装置7を接続する第1の煙道13には、分配器15が設けられている。この分配器15には、第1の煙道13を流れる排ガスの一部を抜き出す排ガス再循環ダクト17の一端が接続されている。排ガス再循環ダクト17は、熱交換器3を経由して、バーナと連通する燃料供給経路11に設けられた排ガス混合器19に他端が接続されている。排ガス再循環ダクト17の分配器15と熱交換器3との間には、排ガス再循環ダクト17を流れる循環排ガスの流量を調節するための循環用ファン21が設けられており、例えば、ファン回転数を調節して循環排ガスの循環量を排ガス量全体の7〜8割とすることで、空気燃焼運転時と同等のガス温度に調節することが可能になっている。なお、排ガス再循環ダクト17は脱硫装置7の後流側の第1の煙道13を分岐させて接続するようにしてもよい。
【0023】
燃料供給経路11には、図示しない石炭粉砕ミル等によって所定の粒度に粉砕された微粉炭が搬送用ガスに同伴されて供給されるようになっている。燃料供給経路11の排ガス混合器19の上流側には、酸素の供給経路が接続される酸素混合器23が設けられており、酸素混合器23には、空気から分離された高濃度の酸素が供給されて微粉炭燃料と酸素が混合されるようになっている。排ガス混合器19には、排ガス再循環ダクト17を流れる循環排ガスが供給され、ここで微粉炭燃料と酸素及び循環排ガスが混合されるようになっている。
【0024】
熱交換器3は、ボイラ1から排出された排ガスと排ガス再循環ダクト17を通流する循環排ガスとを熱交換するようになっている。これにより、排ガス再循環ダクト17を通流する循環排ガスは、ボイラ1から排出された排ガスと熱交換して所定温度まで加熱される。
【0025】
脱硫装置7は、図2に示すように、吸収塔25の下方に排ガスの導入口が設けられ、この導入口に第1の煙道13aが接続される一方、吸収塔25の頂部に排ガスの排出口が設けられ、この排出口に第1の煙道13bが接続されている。導入口と排出口の間の高さ領域には、吸収塔25内を上昇する排ガスに対して上から吸収液を噴き付けるスプレーノズル27が複数段で配設されている。導入口よりも低い位置には、スプレーノズル27から噴霧された吸収液を回収して貯留する底部29が形成されている。底部29に貯留された吸収液31は、循環ポンプ33によって汲み上げられて各スプレーノズル27に供給されるようになっている。
【0026】
CO分離手段9は、第1の圧縮機35と、熱交換器37と、第2の圧縮機39が順に配管で接続され、排ガスを圧縮する過程で水分と二酸化炭素が順次分離されるようになっている。熱交換器37は、排ガスが導入される容器41内に冷却水が通流する伝熱管43を配設して構成される。熱交換器37の容器41には、排ガスから分離された水分を容器41内から抜き出す排水供給用ダクト45の一端が接続され、その他端は、脱硫装置7の底部29に接続されている。また、排水供給用ダクト45には、循環ポンプ47が設けられている。
【0027】
次に、このようにして構成される排ガス処理システムの動作を説明する。
【0028】
ボイラ1には、微粉炭と酸素と循環排ガスが供給されて微粉炭が燃焼され、この燃焼熱により、図示しない蒸気発生器から高温高圧の蒸気が発生する。この蒸気は、図示しない蒸気タービン発電設備等に供給されて発電される。
【0029】
一方、ボイラ1から排出された排ガスは、第1の煙道13を通り、熱交換器3に導かれて減温(例えば、約160℃〜200℃)される。熱交換器3を出た排ガスは、集塵機5に導かれて排ガスに含まれる煤塵成分が除去される。
【0030】
集塵機5を出た排ガスは、脱硫装置7の吸収塔25に導入され、吸収塔25内を上昇する際にスプレーノズル27から噴霧された吸収液と接触する。これにより、排ガスに含まれるSOと水銀は、吸収液に吸収された状態で吸収塔25の底部29に貯留される。ここで、吸収液に吸収されたSOは、HSOとなり、さらに吸収液中のCaCOと反応してCaSOとなる。そして、底部29に溜められた吸収液31中に酸化用空気が供給されることで、CaSOが酸化されてCaSOとなり、吸収液31から分離される。一方、吸収液に吸収された水銀は、吸収液中で酸化水銀となり、底部29に溜められた吸収液31から分離される。これにより、CaSOと酸化水銀が分離された底部29の吸収液31は、循環ポンプ33で汲み上げられてスプレーノズル27に供給され、再び吸収塔25内に噴霧される。
【0031】
続いて、脱硫装置7を出た排ガスは、CO分離手段9に導かれる。この分離装置9では、まず、排ガスが第1の圧縮機35で圧縮(例えば、約1.5MPaで加圧)され、その圧縮により発生した熱が、熱交換器37の伝熱管43で除熱される。この除熱により、排ガスが常温程度まで冷却されるとともに排ガスに含まれる水分の殆どが凝縮して液化され、ドレン水となって分離される。水分が分離された排ガスは、さらに第2の圧縮機39で圧縮されることで液化した二酸化炭素が分離される。分離された液状の二酸化炭素は、図示しない二酸化炭素貯蔵器に貯蔵される。なお、CO分離手段9を出た排ガスは、図示しない煙突から大気中へ放出される。
【0032】
ところで、吸収塔25に導入された排ガスは、その熱で吸収液の水分が蒸発するときに熱が奪われるため、所定の温度に減温される。一方、吸収塔25内には熱を外に逃がす手段がないことから、吸収塔25に導入される排ガスの水分濃度によって、吸収塔25内の排ガス温度が変化する。例えば、通常の空気燃焼運転時では、ボイラから排出される排ガスの水分濃度が約10%と低いため、吸収塔25内で、約55℃まで減温される。これに対し、酸素燃焼運転時では、ボイラから排出される排ガスは、窒素を含まず水分濃度が30〜35%と高いため、吸収塔25内で、約70℃までしか減温されない。このように、吸収塔25内の排ガス温度が上昇すると、スプレーノズル27から噴霧された吸収液と排ガスが接触する脱硫領域の温度、及び、吸収液の温度が上昇し、その結果、脱硫装置7の脱硫性能及び水銀の除去特性が低下するおそれがある(図4、5)。
【0033】
これに対し、本実施形態では、CO分離手段9で分離されたドレン水を循環ポンプ47によって熱交換器37から抜き出し、排水供給用ダクト45を介して吸収塔25の底部29に供給するようにしている。ここで、ドレン水はおよそ20℃の状態で回収されるため、この20℃のドレン水を吸収塔25の底部29に貯留される吸収液31に供給することで、吸収塔25内を循環する吸収液の温度を下げることができる。そして、吸収液の温度が下がることで、吸収塔25内を流れる排ガスが減温されるため、脱硫領域の温度を例えば50℃まで下げることが可能となる。よって、本実施形態によれば、酸素燃焼運転時のボイラから発生する排ガスのように、排ガス中の水分濃度が高い場合でも、脱硫装置7の脱硫性能や水銀除去性能を空気燃焼運転時と同等程度に維持することができる。なお、吸収塔25内にドレン水が供給されることで吸収液の濃度が次第に減少するが、この点については、例えば、吸収液の濃度を所定の範囲に保持するように吸収液中に薬剤を定期的に添加することで、濃度を一定に保つことができる。
【0034】
また、本実施形態では、CO分離手段9で分離されたドレン水を吸収塔25に供給することにより、ドレン水に溶け込んでいるSO等を吸収塔25内で分離することができる。これにより、凝縮水の排水処理設備が不要となるため、システムの簡単化を図ることができ、設備費用の低減が可能となる。
【0035】
また、本実施形態では、既設の排ガス処理システムにおいて、CO分離手段9で分離されたドレン水を吸収塔25の底部29に供給する排水供給用ダクト45を増設するだけでよいため、設備の増設費用を少なく抑えることができる。
【0036】
また、本実施形態では、CO分離手段9で分離されたドレン水を吸収塔25の底部29に供給しているが、ドレン水の供給先は、この例に限られるものではなく、例えば、図6に示すように、吸収塔25内のスプレーノズル27の上方に設置されたドレン水専用のスプレーノズル49に供給するようにしてもよい。
【0037】
図6の脱硫装置7は、導入口と排出口の間の高さ領域に、吸収塔25内を上昇する排ガスに対して上から吸収液を噴き付けるスプレーノズル27と、このスプレーノズル27の上方に配置され、排ガスに対して上からドレン水を噴き付けるスプレーノズル49が設けられている。スプレーノズル49にはドレン水のみが供給されるようになっている。スプレーノズル27、49は、それぞれ複数段で設けられていてもよいが、スプレーノズル49は常にスプレーノズル27の上方に配置されているものとする。
【0038】
このように構成しても、吸収塔25内を流れる排ガスは、スプレーノズル49から噴き込まれたドレン水によって減温され、脱硫領域の温度が例えば50℃まで減温されるため、脱硫装置7における脱硫性能を空気燃焼運転時と同等以上とすることができる。また、水銀を含まないドレン水をスプレーノズル49から噴き込んでいるため、スプレーノズル27から噴き込まれた吸収液の液滴が浮遊する領域をドレン水の液滴で包囲することができる。これにより、水銀を含んだ吸収液の液滴から水銀が再放出するのを抑制できるため、水銀の除去率を空気燃焼運転時と同等以上とすることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 ボイラ
3 熱交換器
5 集塵機
7 脱硫装置
9 CO分離手段
13 第1の煙道
17 排ガス再循環ダクト
21 循環用ファン
25 吸収塔
27、49 スプレーノズル
29 底部
31 吸収液
33、47 循環ポンプ
35 第1の圧縮機
37 熱交換器
39 第2の圧縮機
45 排水供給用ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
富酸素ガスと循環排ガスとを混合した燃焼用ガスにより燃料を燃焼させるボイラと、該ボイラから排出される排ガスが流れる煙道に配設された除塵装置と、前記除塵装置の下流側の煙道を流れる排ガスを導入して脱硫処理する湿式脱硫装置と、前記除塵装置の下流側の煙道を分岐して該煙道から抜き出した排ガスの一部を前記ボイラに導く排ガス循環流路と、前記脱硫装置の下流側の煙道を流れる排ガスを圧縮して二酸化炭素を分離するCO分離手段とを備えた排ガス処理システムにおいて、前記CO分離手段の前記排ガスを圧縮する過程で分離された水分を、前記湿式脱硫装置内で循環して使用される吸収液に供給することを特徴とする排ガス処理システム。
【請求項2】
前記湿式脱硫装置は、吸収塔内を上昇する排ガスに向けて吸収液を噴霧するスプレーノズルと、該スプレーノズルから噴霧された前記吸収液を回収して貯留する吸収塔底部と、該吸収塔底部に貯留された前記吸収液を前記スプレーノズルに供給する循環ポンプとを備え、
前記CO分離手段で分離された水分が前記吸収塔底部に供給されるように構成されてなる請求項1に記載の排ガス処理システム。
【請求項3】
前記湿式脱硫装置は、吸収塔内を上昇する排ガスに向けて吸収液を噴霧するスプレーノズルと、該スプレーノズルから噴霧された前記吸収液を回収して貯留する吸収塔底部と、該吸収塔底部に貯留された前記吸収液を前記スプレーノズルに供給する循環ポンプとを備え、
前記CO分離手段で分離された水分が前記スプレーノズルの上方に配置された他のスプレーノズルから噴霧されるように構成されてなる請求項1に記載の排ガス処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−143699(P2012−143699A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3360(P2011−3360)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度〜22年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 戦略的石炭ガス化・燃焼技術開発(STEP CCT)/石炭利用プロセスにおける微量成分の環境への影響低減手法の開発 高度除去技術に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】