説明

排ガス浄化用触媒

【課題】 従来困難であったディーゼル排NOを効率的に浄化処理することができる新規のメソポーラス触媒及びこの触媒を塗布したモノリス触媒を提供する。
【解決手段】 平均径2〜50nmの細孔と100〜1400m2/gの比表面積とを有する難溶性のメソポーラス材料に、主触媒としての平均粒径1〜20nmの白金粒子及び/又はイリジウム粒子からなるナノ粒子を0.01〜20質量%坦持する。この触媒(メソポーラス触媒)は、従来困難であったリーンバーン雰囲気(通常、5%以上の酸素濃度雰囲気)にあるNOxを150〜300℃で効率的に浄化処理できる。メソポーラス触媒を成型体に塗布したモノリス触媒を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高比表面積のメソポーラス触媒及びこの触媒をモノリス成形体のガス流路内壁に塗布したモノリス触媒に関するものであり、モノリス触媒を用いることによってリーンバーン自動車排ガスに含まれるNOを高効率で浄化処理できる。
【背景技術】
【0002】
自動車排ガス浄化用触媒の主流となっている三元触媒は、触媒支持体としてコージェライトのモノリス成形体を用い、該成型体のガス流路内壁に触媒である数100nm〜数μmの大きさの白金-パラジウム-ロジウム粒子を含んだ数μm〜数十μmの大きさの活性アルミナ粒子を塗布した構造となっている。活性アルミナ粒子は数10nm〜 数100nmの微粒子の凝集体であり、微粒子間の間隙に触媒粒子が吸着している。間隙型の細孔は空間的な広がりが少なく(平面的)、合成ゼオライトや本発明で用いるメソポーラス材料に存在するネットワーク状に広がった貫通型の細孔構造(細孔チャンネルという)とは基本的に異なる。すなわち、従来の触媒粒子は3次元的な細孔に触媒粒子が捕捉されている状態ではない。合成ゼオライトのような分子ふるいに担持した触媒が、一般的に、細孔担持型触媒と呼ばれているので、これと区別するために、従来の三元触媒型の触媒を、以下では、吸着型担持触媒と記す。三元触媒はガソリン車の排ガス処理には非常に有効であるが、軽油燃料で走行するディーゼル車の排ガス処理にはほとんど効果がない。特に、過渡走行時に排出される150〜300℃の排NOを浄化するための触媒開発は触媒化学の分野においても未解決である。そして、現在でも、ディーゼル車排ガス処理のための実用的な触媒は知られていない。この主な理由は、上記三元触媒がディーゼル排ガスにおける比較的高濃度の酸素雰囲気下で著しい活性低下を起こすことからきている。ガソリン車排ガスの酸素濃度は1%以下であるが、軽油の空燃比はガソリンの空燃比の数倍以上であるのでディーゼル排ガスに含まれる酸素濃度は通常5%以上である。ガソリン車の場合は、空気と燃料の理論的重量混合比を示す理論空燃比近傍で燃焼させることで共存酸素を1%以下に制御しているので、この燃焼はリッチバーンとよばれているが、ディーゼル燃料の燃焼は吸気量が理論値よりも大過剰であり、燃料供給量が相対的に少ないのでリーンバーンとよばれている。この燃焼の条件で酸素濃度が5%になると三元触媒の活性がほとんど失活するからである。
【0003】
一般に、工業的な触媒は多孔性材料に担持した状態で使用されることが多い。多孔性材料の細孔は、IUPACによると、細孔直径が2nm以下のミクロ細孔、2〜50nmのメソ細孔、及び50nm以上のマクロ細孔に分類されている。ミクロからメソの範囲にわたる広い分布をもつような単一の多孔性材料は活性炭以外には知られていない。近年、数nmの位置に細孔ピークをもち、比表面積が400〜1100m2/gという非常に大きな値を有するシリカ、アルミナ、及びシリカアルミナ系メソポーラス分子ふるいがが開発された。これらは、例えば、特許文献1、2、及び3等に開示されている。
【0004】
触媒反応は表面反応であるので触媒の比表面積が大きいほど触媒活性が高い。また、触媒を担持するための担体は比表面積が大きいほど触媒活性を発現しやすい。このような観点から自動車用三元触媒をみると、支持体としてのモノリス成形体の比表面積が約0.2m2/g、吸着剤としてのアルミナ粒子の比表面積が110〜340m2/gである。触媒の比表面積は粒径から20〜40m2/g程度であると推定される。したがって、高比表面積を有するメソポーラス材料に担持したnm-サイズの触媒(以下では、nm-サイズの触媒をナノ触媒、メソポーラス材料の細孔にナノ触媒を坦持してなる細孔坦持型触媒をメソポーラス触媒という。ナノ触媒の表面積は三元触媒の102〜104倍である。)をモノリス成形体に塗布することによってディーゼル排ガスに対する触媒活性の向上を図ることが考えられるが、従来、このような発想に基づいたリーンバーン排ガス浄化のための効果的なメソポーラス触媒は知られていない。
【0005】
【特許文献1】特開平5−254827号公報
【特許文献2】特表平5−503499号公表
【特許文献3】特表平6−509374号公表
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記の事情に鑑み、従来達成できなかったリーンバーン排ガスに含まれるNOx浄化処理を低温領域でも極めて効率よく行う新規な触媒を提供することである。具体的には、従来困難であったディーゼル排NOを効率的に浄化するために、リーンバーンの比較的高濃度酸素雰囲気下でも排NOに対して活性を示す新規のメソポーラス触媒及びこの触媒を塗布したモノリス触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の細孔分布と高比表面積を有するメソポーラス材料に特定の貴金属を担持した触媒がリーンバーン排NO処理に対して非常に有効であることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成させるに至ったもので、本発明は、実質的に直径2〜50nmの細孔と100〜1400m2/gの比表面積とを有する難溶性のメソポーラス材料に主触媒としての平均粒径1〜20nmの白金粒子及び/又はイリジウム粒子からなるナノ粒子を0.01〜20質量%坦持した触媒であることを特徴とするリーンバーン排NO浄化用メソポーラス触媒、及び該メソポーラス触媒をモノリス成形体のガス流路内壁に塗布したモノリス触媒を提供するものである。
すなわち、本発明は、下記1.から7.の発明に係わる。
【0008】
1. 実質的に直径2〜50nmの細孔と100〜1400m2/gの比表面積とを有する難溶性のメソポーラス材料に主触媒としての平均粒径1〜20nmの白金粒子及び/又はイリジウム粒子からなるナノ粒子を0.01〜20質量%坦持した触媒であることを特徴とするリーンバーン排NO浄化用メソポーラス触媒。
2. 難溶性のメソポーラス材料が実質的に2〜20nmの細孔と100〜1200m2/gの比表面積を有するシリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ-アルミナ、及びこれらの複合材料であり、主触媒としての白金粒子及び/又はイリジウム粒子からなるナノ粒子の平均粒径が1〜10nm、ナノ粒子の担持量が0.1〜10質量%であることを特徴とする前記1.記載のリーンバーン排NO浄化用メソポーラス触媒。
3. 難溶性のメソポーラス材料が、周期律表における3A族元素、3B族元素、4A族元素、5A族元素、6A族元素の中から選ばれた少なくとも一種類の元素を1〜20モル%含有したメソポーラス材料であることを特徴とする前記1.及び2.記載のリーンバーン排NO浄化用メソポーラス触媒。
4. 前記1.から3.のメソポーラス触媒をモノリス成形体のガス流路内壁に塗布したことを特徴とするリーンバーン排NO浄化用モノリス触媒。
5. モノリス触媒におけるメソポーラス触媒の塗布量がモノリス触媒の3〜30質量%、メソポーラス触媒における白金及び/又はイリジウムの坦持量が0.1〜10質量%、及びモノリス触媒当たりに換算した白金及び/又はイリジウムの坦持量が0.03〜3質量%であることを特徴とする前記4.記載のリーンバーン排NO浄化用モノリス触媒。
6. 前記4.及び5.のリーンバーン排NO浄化用モノリス触媒を用いた、リッチバーンとリーンバーンを交互に行なう小型ディーゼル用の排NOx浄化用触媒。
7. 前記4.及び5.のリーンバーン排NO浄化用モノリス触媒を用いた、尿素供給システムを搭載する大型ディーゼル用の排NOx浄化用触媒。
【発明の効果】
【0009】
本発明のメソポーラス触媒は、従来達成できなかったリーンバーン排NO浄化処理を低温領域でも極めて効率よく行うことができる。例えば、三元触媒では酸素濃度14%の雰囲気下における一酸化窒素はほとんど浄化できないが、本発明のメソポーラスボロシリケートに担持した白金触媒は、酸素濃度14%の雰囲気に共存する一酸化窒素の80%以上を150〜300℃において浄化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の特徴の一つは、メソポーラス材料をNO浄化用触媒の担体として用いることである。その理由は、メソポーラス材料は貫通型の細孔をもつので触媒の捕捉が強いこと、細孔チャンネルを通じたガス拡散の効果が期待できること、細孔分布を制御することで触媒活性種の好ましい粒径範囲を維持できること、触媒を細孔内に坦持することで触媒粒子の再凝集を抑制し触媒の均一高分散を図れること、などの優れた効果があるからである。以下で述べるように、NOに対して高活性を示す触媒粒子の粒径はナノサイズであるので、担体であるメソポーラス材料の細孔径は触媒粒子と同程度でなければならない。通常、メソポーラス材料の細孔内に坦持される触媒の粒径は、細孔径とほぼ同程度であるので、メソポーラス材料の細孔径を制御することによって、好ましい粒径を有するナノ触媒を均一に分散坦持することができる。
【0011】
したがって、メソポーラス材料の細孔径と細孔分布が重要な設計要素であり、比表面積はそれに次ぐ設計要素である。ナノ触媒を担持するためのメソポーラス材料の細孔直径は、実質的に2〜50nmの範囲にあり、好ましくは2〜20nmの範囲にある。ここでいう実質的とは、2〜50nmの範囲の細孔が占める細孔容積が全細孔容積の60%以上であることをいう。細孔径が2nm未満であってもナノ触媒の坦持は可能であるが不純物等による汚染の影響が大きいのであまり好ましくない。50nmを越えると分散担持されたナノ触媒が水熱高温条件などによるシンタリングによって巨大粒子に成長しやすくなるので好ましくない。比表面積は特別な事情がない限り高ければ高いほどよい。本発明に用いることのできるメソポーラス材料の比表面積は100〜1400m2/gであり、好ましくは100〜1200m2/g、さらに好ましくは、400〜1200m2/gである。比表面積が100m2/g未満では、触媒の担持量が少なくなるので担持触媒の触媒性能はあまり大きくはない。比表面積が1400m2/gを超えると材料強度上の問題があるので好ましくない。
【0012】
本発明で用いるメソポーラス材料としては、排ガス中に含まれる高温の水蒸気に対する耐久性の観点から、難溶性のメソポーラス材料を用いる。材料の難溶性は、サンプルを150℃の熱水中に1時間置いた時に抽出される物質の重量が0.01%以下であれば実用上問題はない。難溶性のメソポーラス材料として、例えば、メソポーラスのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、イットリア、セリア、ニオビア、シリカ-アルミナ、及びこれらの複合材料があり、このなかで、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカ-アルミナ及びこれらの複合物は機械物性が比較的高いので好ましい。メソポーラス材料に3A族元素、3B族元素、4A族元素、5A族元素、6A族元素の中から選ばれた少なくとも一種類の元素を複合したメソポーラス材料は、意外にも、触媒に低温活性を付与することがわかったので、特に好ましい。3A族元素では、スカンジウム、イットリウム、セリウムが好ましく、3B族元素ではホウ素が好ましく、4A族元素ではチタン、ジルコニウムが好ましく、5A族ではニオブ、タンタルが好ましく、6A族ではクロム、モリブデン、タングステンが好ましい。これらの元素を複合したメソポーラス材料によって、メソポーラス触媒による触媒反応の開始温度が50〜100℃ほど低下するという予想外の低温活性機構はいまだ未解明であるが、触媒近傍でのNO濃縮効果が関係しているものと考えられる。これらの元素の導入量はメソポーラス材料を構成する主金属に対して1〜20モル%が好ましい。
【0013】
本発明で用いる主触媒は、白金及び/又はイリジウムの貴金属ナノ粒子を含有した触媒である。従来、白金を含有する自動車排ガス処理用触媒としては三元触媒が知られているが、この触媒はディーゼル排NO浄化処理にはほとんど効果がないことが知られている。その理由は、白金以外の構成元素であるパラジウム及びロジウムが低濃度の酸素によって表面酸化を受けるためである。三元触媒は白金-パラジウム-ロジウムで構成されているので表面酸化を受けるとたちまち失活し易い。本発明で白金及び/又はイリジウムを用いる理由は、これらの貴金属が排NOの主成分である一酸化窒素を共存酸素によって二酸化窒素に酸化する触媒能力が高く、高温の酸素雰囲気中でも化学的に安定であるからである。又、貴金属類の中では白金は比較的低温活性であり、イリジウムは比較的高温活性であるので、これらの混合触媒によって広い温度範囲での触媒反応が期待できる。触媒反応によって生成する二酸化窒素は、炭素数1から6の低級オレフィン及び低級パラフィン(燃料に少量含まれる)又はアンモニア態尿素(トラックなどに搭載できる)などの還元性物質によって容易に窒素と水に分解される。
【0014】
触媒粒子の表面積は粒径の二乗に反比例するので、触媒粒子が小さいほど触媒活性が高くなる。例えば、1nmの触媒粒子の表面積は0.1μmのそれと比べると104倍大きい。また、ナノサイズに微粒化された触媒粒子は、活性を示すエッジ、コーナー、ステップなどの高次数の結晶面を多量にもつので、触媒活性が著しく向上するだけでなく、バルクでは触媒活性を示さないような不活性金属でも予期しなかった触媒活性を発現する場合があることが知られている。したがって、触媒能力の観点からは触媒粒子は細かいほど好ましいのであるが、反面、微粒化による表面酸化、副反応などの好ましくない性質もでてくるので、微粒子の粒子径には最適範囲が存在する。本発明における目的のNO分解浄化処理に対して効果的な活性を示す触媒粒子の平均粒径は1〜20nmの範囲にあり、特に1〜10nmの範囲が高活性を示すことがわかった。
【0015】
本発明の触媒はメソポーラス材料の細孔に坦持された坦持型触媒である。主触媒としての白金及び/又はイリジウムの坦持量は0.01〜20質量%であり、好ましくは0.1〜10質量%であるが、量的な問題がなければ、通常は、数%の担持量で用いる。混合触媒における白金とイリジウムのモル比は任意である。通常、等モルであれば、低温から高温にわたって高活性が達成できる。低温活性を優先する場合には白金の比率を大きくし、高温活性を優先する場合にはイリジウムの比率を大きくするのがよい。メソポーラス材料の触媒坦持量は20質量%以上でも可能であるが、坦持量が過剰になると反応にほとんど寄与しない細孔深部の触媒が増えるのでよくない。また、0.01質量%未満では活性が十分ではない。
【0016】
本発明の主触媒である白金及び/又はイリジウム触媒に異なる機能をもつ助触媒的成分を添加することによってシナジー効果による触媒性能の向上をはかることもできる。このような成分として、例えば、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、バリウム、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、ランタン、セリウム、バリウム、及びこれらの化合物をあげることができる。これらの中で、不動態化膜になるクロム、鉄、コバルト、ニッケル、還元剤の吸着力が比較的高い銅、NOx吸蔵性がある酸化バリウム、中程度の酸化力をもつ酸化セリウムと三二酸化マンガン、SOx被毒防止に有効な銅-亜鉛、鉄-クロム、酸化モリブデン、などは好ましい。この成分の添加量は、通常、主触媒と同質量程度から100倍程度であるが、必要に応じて100倍以上であってもよい。
【0017】
本発明のメソポーラス材料の合成法は特に限定するものでなく、従来の方法を用いて所用の材料を製造することができる。例えば、界面活性剤をメソ細孔のテンプレートとして用いる従来の方法(例えば、特許文献1、2、及び3)に準じて製造することができる。この方法では、メソポーラス材料の前駆物質には、通常、金属アルコキシドを用いる。界面活性剤は、従来のメソポア分子ふるいの作成に用いられているミセル形成の界面活性剤、例えば、長鎖の4級アンモニウム塩、長鎖のアルキルアミンN−オキシド、長鎖のスルホン酸塩、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等のいずれであってもよい。溶媒として、通常、水、アルコール類、ジオールの1種以上が用いられるが、水系溶媒が好ましい。反応系に金属への配位能を有する化合物を少量添加すると反応系の安定性を著しく高めることができる。このような安定剤としては、アセチルアセトン、テトラメチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸、ピリジン、ピコリンなどの金属配位能を有する化合物が好ましい。前駆物質、界面活性剤、溶媒及び安定剤からなる反応系の組成は、前駆物質のモル比が0.01〜0.60、好ましくは0.02〜0.50、前駆物質/界面活性剤のモル比が1〜30、好ましくは1〜10、溶媒/界面活性剤のモル比が1〜1000、好ましくは5〜500、安定化剤/主剤のモル比が0.01〜1.0、好ましくは0.2〜0.6である。
【0018】
反応温度は、20〜180℃、好ましくは20〜100℃の範囲である。反応時間は5〜100時間、好ましくは10〜50時間の範囲である。反応生成物は通常、濾過により分離し、十分に水洗後、乾燥し、次いで、含有している界面活性剤をアルコールなどの有機溶媒により抽出後、500〜1000℃の高温で熱分解することによって完全除去し、メソポーラス材料を得ることができる。
3A族元素、3B族元素、4A族元素、5A族元素、6A族元素を複合したメソポーラス材料は、メソポーラス材料の前駆物質にこれらの元素のアルコキシド、アセチルアセトナート、等を適当量加えて、上記メソポーラス材料の製造法と同様の方法によって製造することができる。
【0019】
本発明のメソポーラス触媒は、例えば、イオン交換法又は含浸法によって製造することができる。これらの二つの方法は、担体への触媒の沈着化について、イオン交換法が担体表面のイオン交換能を利用し、含浸法が担体のもつ毛管作用を利用しているという違いはあるが、基本的なプロセスはほとんど同じである。すなわち、メソポーラス材料を触媒原料の水溶液に浸した後、濾過、乾燥し、必要に応じて水洗を行い、還元剤で還元処理することによって製造することができる。白金の触媒原料としては、例えば、H2PtCl4、(NH4)2PtCl4、H2PtCl6、(NH4)2PtCl6、Pt(NH3)4(NO3)2、Pt(NH3)4(OH)2、PtCl4、白金のアセチルアセトナート、等を用いることができる。イリジウムの触媒原料としては、例えば、H2IrCl4、(NH4)2IrCl4、H2IrCl6、(NH4)2IrCl6、IrCl4、イリジウムのアセチルアセトナート、等を用いることができる。
【0020】
必要に応じて主触媒に添加する助触媒的成分の原料としては、例えば、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩などの水溶性塩類を用いることができる。白金とイリジウムの共坦持触媒は、それぞれの触媒原料を混合して同様にして製造することができる。また、白金及び/又はイリジウムに助触媒的成分を添加した触媒についても、その原料を主触媒原料に混合して同様にして製造することができる。還元剤としては、水素、ヒドラジン水溶液、ホルマリン、等を用いることができる。還元は、それぞれの還元剤について知られている通常の条件で行なえばよい。例えば、水素還元は、ヘリウムなどの不活性ガスで希釈した水素ガス気流下にサンプルを置き、通常、300〜500℃で数時間処理することによって行なうことができる。還元後、必要に応じて、不活性ガス気流下500〜1000℃で数時間熱処理してもよい。
【0021】
本発明のモノリス成形体とは、成形体の断面が網目状で、軸方向に平行に互いに薄い壁によって仕切られたガス流路を設けている成形体のことである。成形体の外形は、特に限定するものではないが、通常は、円柱形である。本発明のモノリス触媒とは、メソポーラス触媒をモノリス成形体のガス流路内壁に塗布した触媒を意味している。メソポーラス触媒の塗布量は、3〜30質量%が好ましい。30%を超える塗布は、担体内部に存在する触媒へのガス拡散が遅いので好ましくない。また、3%以下では触媒性能が十分ではない。モノリス成形体への触媒の塗布量相当の付着量は、成形体の0.03〜3質量%が好ましい。
【0022】
本発明のモノリス触媒は、自動車用三元触媒を付着したモノリス成形体の製造方法に準じて製造することができる。例えば、メソポーラス触媒とバインダーとしてのコロイダルシリカを、通常、1:(0.01〜0.2)の質量割合で混合した混合物をつくり、これを水分散することによって通常10〜50質量%のスラリーを調整した後、該スラリーにモノリス成形体を浸漬してモノリス成形体のガス流路の内壁にスラリーを付着させ、乾燥後、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性雰囲気下500〜1000℃で数時間熱処理することによって製造することがきる。コロイダルシリカ以外のバインダーとしては、メチルセルロース、アクリル樹脂、ポリエチレングリコールなどを適宜用いることもできる。他の方法としては、モノリス成形体にメソポーラス材料を塗布したのち、触媒原料をメソポーラス材料に含浸し、還元処理、熱処理を行う方法によっても製造することができる。成形体に塗布したメソポーラス触媒層の厚みは、通常、1μm〜100μmであるのが好ましく、10μm〜50μmの範囲が特に好ましい。100μmを超えると反応ガスの拡散が遅くなるのでよくない。1μm未満では、触媒性能の劣化が早いのでよくない。
【0023】
本発明のモノリス触媒は、自動車、特にディーゼル自動車に搭載することによって、自動車が排出するリーンバーン排NOを150〜700℃の広い温度範囲において極めて効果的に浄化することができる。排NOの処理には還元剤が必要であるが、乗用車などの小型車の場合には、燃料である軽油に少量含まれている炭素数1から6の低級オレフィン及び低級パラフィンが還元剤となるので、燃料を直接又は改質器を通して触媒上に供給すればよい。リッチバーンの時には酸素濃度が低くリーンバーンの時には酸素濃度が高いので、リッチバーンとリーンバーンを交互に行うことができる小型ディーゼルの排ガス浄化処理のために本発明のモノリス触媒を用いると、150〜700℃の広い温度範囲において効率よく排NOxを浄化処理できる。また、トラックなどの大型車の場合には、通常、尿素水を熱分解して還元剤としてのアンモニアを発生させ触媒上に供給するシステムを利用できるので、尿素供給システムを搭載する大型ディーゼル用の排NOx浄化用触媒としても用いることができる。
【実施例】
【0024】
以下に実施例などを挙げて本発明を具体的に説明する。
実施例中の粉末X線回折パターンは理学電機社製RINT2000型X線回折装置によって測定した。触媒の平均粒径は、透過型電子顕微鏡を用いた直接観察によって決定し、粉末X線回折パターンのメインピークの半値幅をシェラー式に代入して算出した値と一致することを確認した。比表面積及び細孔分布は、脱吸着の気体として窒素を用い、カルロエルバ社製ソープトマチック1800型装置によって測定した。比表面積はBET法によって求めた。細孔分布は1〜200nmの範囲を測定し、BJH法で求められる微分分布で示した。合成したメソポーラス材料の多くは指数関数的に左肩上がりの分布における特定の細孔直径の位置にピークを示した。このピークを、便宜上、細孔ピークと呼ぶ。材料の結晶性と残留界面活性剤を調べるための熱分析は、島津製作所製DTA-50型熱分析装置によって、昇温速度20℃min-1で測定した。自動車排NOxのモデルガスとして、ヘリウム希釈一酸化窒素、酸素、及び還元性ガス(エチレン又はアンモニア)を用いた。処理後のガスに含まれるNOxの含有量は、以下の亜鉛還元ナフチルエチレンジアミン法(JISK 0104)に準じて定量分析し、一酸化窒素の処理率を求めた。[操作方法]テドラーバッグに反応ガスを採取する。反応ガスの入ったテドラーバッグにガスタイトシリンジを差込み反応ガスを20ml採取する。三方コックを付けた容量100mlのナスフラスコ内を減圧にし、ガスタイトシリンジの反応ガスを全量導入する。該ナスフラスコに0.1規定アンモニア水20mlを加え1時間放置する。10%塩酸水溶液にスルファニルアミド1gを溶解した溶液を1ml加え、30秒程度攪拌後、3分放置する。これに、蒸留水100mlにN-(1-ナフチル)エチレンジアミン二塩酸塩0.1gを溶解した溶液を1ml加え、30秒程度攪拌後、20分静置する。この液を石英セル(セル長10mm)に入れ、540nmの吸光度を測定する。一酸化窒素の反応率は、下記式(1)によって求めた。
【0025】
【数1】

【0026】
「比較例1」比較サンプルの合成
0.215gのPtCl4・5H2O、0.106gのPdCl2・2H2O、及び0.162gのRh(NO3)3・2H2Oを20mlの蒸留水に溶解した水溶液を蒸発皿に入れ、これに10gのγ-アルミナ(粒径2〜3μmの微粒子)を加え、スチームバスで蒸発乾固した後、真空乾燥機に入れ100℃で3時間真空乾燥を行った。この試料を石英管に入れヘリウム希釈水素ガス(10%v/v)気流下500℃で3時間還元し、貴金属の含有量が約2重量%の触媒を合成した。これを、三元触媒を模した貴金属触媒として比較実験に用いた。
【0027】
「実施例1」白金/メソポーラスシリカ触媒の合成
1リットルのビーカーに、蒸留水300g、エタノール240g、及びドデシルアミン30gを入れ、溶解させた。攪拌下でテトラエトキシシラン125gを加えて室温で22時間攪拌した。生成物を濾過、水洗し、110℃で5時間温風乾燥した後、空気中で550℃5時間焼成して含有するドデシルアミンを分解除去し、結晶性のメソポーラスシリカ材料を得た。細孔分布及び比表面積測定の結果、約3.2nmの位置に細孔ピークがあり、比表面積が933 m2/g、細孔容積が1.35 cm3/g、2〜50 nmの細孔が占める容積は1.34cm3/gであった。蒸留水20gにH2PtCl6・6H2Oを0.267g溶解した水溶液を蒸発皿に入れ、これに上記のメソポーラスシリカ材料5gを加え、スチームバスで蒸発乾固した後、真空乾燥機に入れ100℃3時間真空乾燥を行った。この試料を石英管に入れ、ヘリウム希釈水素ガス(10v/v%)気流下500℃で3時間還元し、白金の含有量が約2質量%のメソポーラス触媒を合成した。メソポーラス触媒に坦持された白金粒子の平均粒径は約3.0nmであった。
【0028】
「実施例2」イリジウム/メソポーラスシリカ触媒の合成
蒸留水20gにH2IrCl4を0.175g溶解した水溶液を蒸発皿に入れ、これに実施例1のメソポーラスシリカ材料5gを加え、スチームバスで蒸発乾固した後、真空乾燥機に入れ100℃3時間真空乾燥を行った。この試料を石英管に入れ、ヘリウム希釈水素ガス(10v/v%)気流下500℃で3時間還元し、イリジウムの含有量が約2質量%のメソポーラス触媒を合成した。メソポーラス触媒に坦持されたイリジウム粒子の平均粒径は約3.0nmであった。
【0029】
「実施例3」白金/メソポーラスアルミナ触媒の合成
1リットルのビーカーに、蒸留水300g、エタノール240g、及びドデシルアミン30gを入れ、溶解させた。攪拌下でトリイソプロポキシアルミニウム120gを加えて室温で22時間攪拌した。生成物を濾過、水洗し、110℃で5時間温風乾燥した後、空気中で550℃-5時間焼成して含有するドデシルアミンを分解除去し、結晶性のメソポーラスアルミナ材料を得た。細孔分布及び比表面積測定の結果、約3.2nmの位置に細孔ピークがあり、比表面積が870 m2/g、細孔容積が1.32 cm3/g、2〜50 nmの細孔が占める容積は1.28cm3/gであった。この材料5gを用いて、実施例1と同様の方法で、白金の含有量が約2質量%のメソポーラス触媒を合成した。
【0030】
「実施例4」白金/メソポーラスジルコニア触媒の合成
1リットルのビーカーに蒸留水210g、エタノール114g及び1−ヘキサデシルトリメチルアミンブロマイド32.7gを入れ、攪拌しながら、これに、70%ジルコニウムテトラプロポキシド140.1g、エタノール150g及びアセチルアセトン12gの混合溶液をゆっくり滴下した。室温で2時間攪拌後、80℃で48時間静置した。これをステンレスのオートクレーブに移し、160℃で24時間攪拌して反応混合物を得た。反応混合物を濾過、水洗、80℃で乾燥を行った後、0.1規定塩酸酸性のエタノール溶液によってテンプレートを抽出除去した。次いで、110℃で1時間温風乾燥を行った後、空気中550℃で5時間焼成して含有するテンプレートを完全除去した。細孔分布及び比表面積測定の結果、約3.5nmの位置に細孔ピークがあり、比表面積が155m2/g、細孔容積が0.48 cm3/g、2〜50 nmの細孔が占める容積は0.42 cm3/gであった。この材料5gを用いて、実施例1と同様の方法で、白金の含有量が約2質量%のメソポーラス触媒を合成した。
【0031】
「実施例5」白金/メソポーラスチタニア触媒の合成
1リットルのビーカーに蒸留水210g、エタノール114g、及び1−ヘキサデシルトリメチルアミンブロマイド32.7gを入れ溶解させた。攪拌下でテトライソプロポキシチタン140g、エタノール150g、及びアセチルアセトン12gの混合溶液をゆっくり滴下した。室温で2時間攪拌後、80℃で48時間静置した。これをステンレスのオートクレーブに移し、160℃で24時間攪拌して反応混合物を得た。反応混合物を濾過、水洗後、0.1規定塩酸酸性のエタノール溶液によってテンプレートを抽出除去した。100℃で5時間温風乾燥した後、空気中550℃で5時間焼成して含有するテンプレートを完全除去し、メソポーラスチタニア材料を得た。窒素吸脱着法による比表面積、及び細孔分布を測定した結果、約5.2nmの位置に細孔ピークがあり、比表面積が350m2/g、細孔容積が0.56cm3/g、2〜50nmの細孔が占める容積は0.50cm3/gであった。この材料5gを用いて、実施例1と同様の方法で、白金の含有量が約2質量%のメソポーラス触媒を合成した。
【0032】
「実施例6」白金/メソポーラスシリカアルミナ触媒の合成
1リットルのビーカーに蒸留水300g、エタノール240g、及びドデシルアミン30gを入れ溶解させた。攪拌下でテトラエトキシシラン125gとアルミニウムイソプロポキシド24gを加えて室温で22時間攪拌した後、生成物を濾過、水洗し、100℃で5時間温風乾燥した後、空気中550℃で5時間焼成して含有するドデシルアミンを分解除去し、メソポーラスシリカアルミナ材料を得た。Si/Alモル比は約5であった。細孔分布及び比表面積測定の結果、約2.1nmの位置に細孔ピークがあり、比表面積が1065 m2/g、細孔容積が0.73 cm3/g、2〜50 nmの細孔が占める容積は0.51cm3/gであった。合成したメソポーラスシリカアルミナ5gを用いて、実施例1と同様の方法で、白金の含有量が約2質量%のメソポーラス触媒を合成した。
【0033】
「実施例7」白金-銅/メソポーラスシリカアルミナ触媒の合成
蒸留水10gにH2PtCl6・6H2Oを0.023g、及び酢酸第二銅を2.85g溶解した水溶液を蒸発皿に入れ、これに実施例4のメソポーラスシリカアルミナ材料10gを加え、スチームバスで蒸発乾固した後、真空乾燥機に入れ100℃3時間真空乾燥を行った。この試料を石英管に入れ、ヘリウム希釈水素ガス(10v/v%)気流下500℃で3時間還元し、白金の含有量が約0.1重量%、及び銅の含有量が約10質量%のメソポーラス触媒を合成した。
【0034】
「実施例8」白金/メソポーラスボロシリケート触媒の合成
1リットルのビーカーに、蒸留水300g、エタノール240g、及びドデシルアミン30gを入れ、溶解させた。攪拌下でテトラエトキシシラン112gとトリメトキシボラン5.4gを加えて室温で22時間攪拌した後、生成物を濾過、水洗し、100℃で5時間温風乾燥した後、空気中550℃で5時間焼成して含有するドデシルアミンを分解除去し、メソポーラスボロシリケート材料を得た。Si/Bモル比は約10であった。細孔分布及び比表面積測定の結果、約2.7nmの位置に細孔ピークがあり、比表面積が1132m2/g、細孔容積が0.92 cm3/g、2〜50 nmの細孔が占める容積は0.80 cm3/gであった。この材料5gを用いて、実施例1と同様の方法で、白金の含有量が約2質量%のメソポーラス触媒を合成した。
【0035】
「実施例9」白金-イリジウム/メソポーラスボロシリケート触媒の合成
蒸留水20gにH2PtCl6・6H2Oを0.134g、及びH2IrCl4を0.125g溶解した水溶液を蒸発皿に入れ、これに実施例8のメソポーラスボロシリケート材料5gを加え、スチームバスで蒸発乾固した後、真空乾燥機に入れ100℃3時間真空乾燥を行った。この試料を石英管に入れ、ヘリウム希釈水素ガス(10v/v%)気流下500℃で3時間還元し、白金及びイリジウムをそれぞれ約1質量%含有したメソポーラス触媒を合成した。
【0036】
「実施例10」白金/メソポーラスチタノシリケート触媒の合成
1リットルのビーカーに、蒸留水300g、エタノール240g、及びドデシルアミン30gを入れ、溶解させた。攪拌下でテトラエトキシシラン124.8gとテトラエトキシチタンのエタノール溶液(テトラエトキシチタン9.1gをエタノール5gに溶解した溶液)を加えて室温で22時間攪拌した後、生成物を濾過、水洗し、100℃で5時間温風乾燥した後、空気中550℃で5時間焼成して含有するドデシルアミンを分解除去し、メソポーラスチタノシリケート材料を得た。Si/Tiモル比は約10であった。細孔分布及び比表面積測定の結果、約2.6nmの位置に細孔ピークがあり、比表面積が710m2/g、細孔容積が0.60cm3/g、2〜50nmの細孔が占める容積は0.56cm3/gであった。この材料5gを用いて、実施例1と同様の方法で、白金の含有量が約2質量%のメソポーラス触媒を合成した。
【0037】
「実施例11」白金/メソポーラスタングストシリケート触媒の合成
1リットルのビーカーに、蒸留水300g、エタノール240g、及びドデシルアミン30gを入れ、溶解させた。攪拌下でテトラエトキシシラン99.6gとタングステン酸アンモニウムの水溶液(タングステン酸アンモニウム五水和物17.87gを蒸留水40gに溶解した溶液)を加えて室温で22時間攪拌した後、生成物を濾過、水洗し、100℃で5時間温風乾燥した後、空気中550℃で5時間焼成して含有するドデシルアミンを分解除去し、メソポーラスタングストシリケート材料を得た。Si/Wモル比は約10であった。細孔分布及び比表面積測定の結果、約3.0nmの位置に細孔ピークがあり、比表面積が830m2/g、細孔容積が0.65cm3/g、2〜50 nmの細孔が占める容積は0.60 cm3/gであった。この材料5gを用いて、実施例1と同様の方法で、白金の含有量が約2質量%のメソポーラス触媒を合成した。
【0038】
「実施例12」白金/メソポーラスニオブシリケート触媒の合成
1リットルのビーカーに、蒸留水150g、エタノール120g、及びドデシルアミン30gを入れ、溶解させた。攪拌下でテトラエトキシシラン62gとペンタエトキシニオブのエタノール溶液(ペンタエトキシニオブ9.5gをエタノール5gに溶解した溶液)を加えて室温で22時間攪拌した後、生成物を濾過、水洗し、100℃で5時間温風乾燥した後、空気中550℃で5時間焼成して含有するドデシルアミンを分解除去し、メソポーラスニオブシリケート材料を得た。Si/Nbモル比は約10であった。細孔分布及び比表面積測定の結果、約2.5nmの位置に細孔ピークがあり、比表面積が757m2/g、細孔容積が0.63cm3/g、2〜50 nmの細孔が占める容積は0.60cm3/gであった。この材料5gを用いて、実施例1と同様の方法で、白金の含有量が約2質量%のメソポーラス触媒を合成した。
【0039】
「実施例13」白金/メソポーラスセリウムシリケート触媒の合成
1リットルのビーカーに、蒸留水300g、エタノール240g、及びドデシルアミン30gを入れ、溶解させた。攪拌下でテトラエトキシシラン124gとテトラエトキシセリウムのエタノール溶液(テトラエトキシセリウム19.05gをエタノール20gに溶解した溶液)を加えて室温で22時間攪拌した後、生成物を濾過、水洗し、100℃で5時間温風乾燥した後、空気中550℃で5時間焼成して含有するドデシルアミンを分解除去し、メソポーラスセリウムシリケート材料を得た。Si/Ceモル比は約10であった。細孔分布及び比表面積測定の結果、約3.2nmの位置に細孔ピークがあり、比表面積が850m2/g、細孔容積が0.68cm3/g、2〜50 nmの細孔が占める容積は0.65cm3/gであった。この材料5gを用いて、実施例1と同様の方法で、白金の含有量が約2質量%のメソポーラス触媒を合成した。
【0040】
「実施例14」モノリス触媒の合成
実施例1の触媒1gとコロイダルシリカ0.1gを蒸留水10 mlに加え、攪拌して、スラリーを調整した。これに、市販のコージェライトモノリス成形体(400cells/in2、直径118 mm×長さ50 mm、重量243g)から切り出したミニ成形体(21 cells、直径8 mm×長さ9mm、重量0.15g)を5個浸漬し、試料をとりだし風乾した後、窒素気流下で500℃-3時間熱処理した。メソポーラス触媒の付着量は、ミニ成形体の約10重量%であり、ミニ成形体当たりの白金の坦持量は約0.2質量%であった。
【0041】
「実施例15」還元剤としてエチレンを用いたNO処理
比較例及び実施例の触媒サンプルを石英製の連続流通式反応管に0.3 g充填し、ヘリウムで濃度調整した一酸化窒素を流通処理した。被処理ガスの成分モル濃度を、一酸化窒素0.1%、酸素14%、水蒸気10%、及びエチレン0.3%とした。反応管へ導入した混合ガスの流量を毎分100ml、処理温度を100〜350℃とした。50℃ごとに排ガスをサンプリングし、一酸化窒素の浄化処理率を求めた。結果を表1に示した。
表1から、本発明のメソポーラス触媒は、エチレンなどの炭化水素を還元剤に用いて高濃度酸素共存下でのNOを低温領域でも効率よく浄化できることがわかる。特に、メソポーラスボロシリケートに坦持の白金及び白金-イリジウム触媒は、かってない150〜300℃での効率的なNO浄化を可能にした。したがって、小型ディーゼル車の排NO処理に適していることがわかる。
【0042】
「実施例16」
実施例8及び実施例14の触媒をそれぞれ0.3g用いて一酸化窒素を処理した。被処理ガスの成分モル濃度比を、一酸化窒素0.1%、酸素1%、エチレン1%とした。該調整ガスの流量を毎分100ml、処理温度を100〜600℃とした。処理後の排ガスに含まれるNOを定量分析し一酸化窒素の浄化処理率を求めた。結果を表2に示した。
表2から、本発明のメソポーラス触媒は、炭化水素を還元剤に用いてリッチバーンの条件にあるNOを中温領域から高温領域にわたって効率よく浄化できることがわかる。したがって、例えば、リーンバーンとリッチバーンを交互に行えば、実施例5の触媒は、広い温度範囲でNOxを除去できるので、リーンバーンとリッチバーンを交互に行うことのできる小型ディーゼル車の排NO処理に適していることがわかる。
【0043】
「実施例17」還元剤としてアンモニアを用いたNO処理
実施例3、実施例4、及び実施例7の触媒をそれぞれ0.3g用いて一酸化窒素を処理した。被処理ガスの成分モル濃度比を、一酸化窒素0.1%、酸素14%、水蒸気10%、アンモニア0.3%とした。該調整ガスの流量を毎分100ml、処理温度を100〜600℃とした。処理後の排ガスに含まれるNOを定量分析し一酸化窒素の浄化処理率を求めた。結果を表3に示した。
表3から、本発明のメソポーラス触媒は、アンモニアを還元剤として用いても高濃度酸素共存下でのNOを効率よく浄化できることがわかる。したがって、アンモニア源としての尿素供給システムを搭載している大型ディーゼル車の排NO浄化処理に適していることがわかる。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のメソポーラス触媒及びモノリス触媒は、ディーゼル排NO浄化用触媒として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に直径2〜50nmの細孔と100〜1400m2/gの比表面積とを有する難溶性のメソポーラス材料に主触媒としての平均粒径1〜20nmの白金粒子及び/又はイリジウム粒子からなるナノ粒子を0.01〜20質量%坦持した触媒であることを特徴とするリーンバーン排NO浄化用メソポーラス触媒。
【請求項2】
難溶性のメソポーラス材料が実質的に2〜20nmの細孔と100〜1200m2/gの比表面積を有するシリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ-アルミナ、及びこれらの複合材料であり、主触媒としての白金粒子及び/又はイリジウム粒子からなるナノ粒子の平均粒径が1〜10nm、ナノ粒子の担持量が0.1〜10質量%であることを特徴とする請求項1項記載のリーンバーン排NO浄化用メソポーラス触媒。
【請求項3】
難溶性のメソポーラス材料が、周期律表における3A族元素、3B族元素、4A族元素、5A族元素、6A族元素の中から選ばれた少なくとも一種類の元素を1〜20モル%含有したメソポーラス材料であることを特徴とする請求項1項及び2項記載のリーンバーン排NO浄化用メソポーラス触媒。
【請求項4】
請求項1から3のメソポーラス触媒をモノリス成形体のガス流路内壁に塗布したことを特徴とするリーンバーン排NO浄化用モノリス触媒。
【請求項5】
モノリス触媒におけるメソポーラス触媒の塗布量がモノリス触媒の3〜30質量%、メソポーラス触媒における白金及び/又はイリジウムの坦持量が0.1〜10質量%、及びモノリス触媒当たりに換算した白金及び/又はイリジウムの坦持量が0.03〜3質量%であることを特徴とする請求項4項記載のリーンバーン排NO浄化用モノリス触媒。
【請求項6】
請求項4及び5のリーンバーン排NO浄化用モノリス触媒を用いた、リッチバーンとリーンバーンを交互に行なう小型ディーゼル用の排NOx浄化用触媒。
【請求項7】
請求項4及び5のリーンバーン排NO浄化用モノリス触媒を用いた、尿素供給システムを搭載する大型ディーゼル用の排NOx浄化用触媒。

【公開番号】特開2006−81957(P2006−81957A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266365(P2004−266365)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【出願人】(000173924)財団法人野口研究所 (108)
【Fターム(参考)】