説明

排気ガス後処理システムの再生の終わりに発生する吸気騒音を制限する方法

本発明は、排気ガス後処理システムと、排気ガスを吸気側に向かって再循環させるシステムとを備え、スロットリングをする再生動作モードからスロットリングをしない公称モードに切り替えることができる内燃機関の制御方法において、再生モードでの機関動作の終わりに、吸気騒音のコントラストを制限するために、機関を、部分スロットリングをする中間モードで一時的に動作させることを特徴とする方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス後処理システムと、排気ガスを吸気側に再循環させるシステムとを備え、スロットリング(throttling)をする再生(regeneration)モード動作からスロットリングをしない通常(normal)モードに切り替わる内燃機関、特にディーゼル機関の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排出ガス制御基準を満たすために、内燃機関は、排気ガスに含まれるある種の化合物を捕捉し、転化させる後処理システムを備える。いくつかの後処理システムは内部再生段階を使用し、この段階の間、機関の動作は、後処理システム内の適当な熱的および化学的条件を確立するために切り替えられる。これらの特定の条件は、後処理システム内で捕捉された化合物の転化を促進する。
【0003】
これらの適当な条件は通常、吸気回路を部分的に閉じることにより機関の性能を低下させることによって得られ、吸気回路を部分的に閉じることによって特に排気ガスの温度が上昇する。
【0004】
再生段階が終わった後に目指すのは、燃料の過剰消費および排気ガスに含まれるある種の化合物の過渡的な生成を制限するために、吸気回路をできるだけ速く開くことである。
【0005】
しかしながら、効率上の理由から、これらの再生プログラムは吸気ダクトを高度に閉じ、このことは、この過程の全持続時間の間、吸気回路の騒音を大幅に低減させる。
【0006】
再生が終わると、吸気ダクトを急速に開くことによって、車両の運転者が車両の加速信号を変更しなくとも、騒音は再び突然に大きくなり、このことは搭乗者の聴覚の快適性を妨げ、搭乗者の注意を独占する可能性がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、従来技術のシステムを改良することを目指し、従来技術のシステムの欠点を矯正すること、具体的には、再生段階後に機関が通常動作に戻るときに、特に安定な機関回転数で、感知される騒音のコントラストを制限することを企図する。
【0008】
本発明の1つの目的は、機関の再生モード動作の終わりに、吸気騒音のコントラストを制限するために、部分スロットリング(partial throttling)を実施することによって機関を一時的に中間モードで動作させるステップを含む、上記のタイプの機関制御方法を提供することにある。
【0009】
特定の実施形態によれば、本発明の内燃機関の制御方法は、以下のうちの1つまたは複数の特徴を含む。
【0010】
・少なくとも1つの信号が検出されたときに、機関を、部分スロットリングをする中間モード動作からスロットリングをしない通常モードに切り替える。このことは、信号の検出に伴って生じる機関騒音の変化によって吸気騒音のコントラストを覆い隠す。
【0011】
・加速信号が検出されたときに、機関を、部分スロットリングをする中間モード動作からスロットリングをしない通常モードに切り替える。このことは、加速度の変化による機関騒音の変化によって吸気騒音のコントラストを覆い隠す。
【0012】
・スロットリングをする再生モードから部分スロットリングをする中間モードに切り替わるときに、吸気フラップを開く速度が制御される。このことは中間モードの持続時間を最適化する。
【0013】
・吸気フラップの第1の開段階において、第1の吸気騒音減衰値に対応する第1の部分スロットリング値への急速な変更が実行される。このことは中間モードの持続時間を短縮する。
【0014】
・開口フラップの第2の開段階において、少なくとも1つの吸気騒音増大率信号に従って、フラップを開く速度が制限される。
【0015】
・第3の段階において、車両の加速信号が加えられるまで、部分スロットリング値が維持される。このことは、吸気騒音のコントラストを搭乗者が感知しないことを保証する。
【0016】
・吸気騒音の変化率が概ね一定となるように、吸気フラップを開く速度を対数関数に従って変化させる。
【0017】
・吸気回路が発する全騒音のコントラストを低減させるために、中間モードの間に、前記EGRシステム内のガスの流れの断面積が低減される。このことは、全吸気騒音コントラストの低減を向上させる。
【0018】
・所定の時間の後に、機関を、中間モード動作から通常モードに切り替える。このことは、予め設定されたある期間の後により経済的な通常モードに戻ることが可能であることを保証する。
【0019】
・前記所定の時間は、追加の消費値および/または中間モード中のある種の化合物の生成に関する値に基づいて調整される。
【0020】
本発明の他の特徴および利点は、添付図面を参照して、本発明の非限定的な実施形態の以下の説明を読むと明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明が使用される機関の構造図である。
【図2】吸気フラップを閉じることによって得られる吸気騒音減衰値を示すグラフである。
【図3】第1の実施形態に基づく機関の各種動作モードにおけるいくつかのスロットリングパラメータの時間経過に対する吸気騒音の変化を示す図である。
【図4】第2の実施形態に基づく機関の各種動作モードにおけるいくつかのスロットリングパラメータの時間経過に対する吸気騒音の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の説明では、「スロットリング」が、ダクト、例えば機関の吸気ダクト内へ導入されるガス流の断面積を低減させる処置を指すことが理解される。また、「再生モード」は、スロットリングによって後処理システムの内部再生が実施される機関の動作モードを指す。「通常モード」は、再生もスロットリングも実施されない機関の動作モードを指す。最後に、「中間モード」は、部分スロットリングが実施される機関の動作モードを指す。
【0023】
図1は、本発明が使用される機関1の構造を示す。
【0024】
機関1は、吸気回路2および排気回路3を備える。吸気回路2は吸気ポート4を有し、空気はここから入り、空気フィルタの上流の吸気ダクト5を通して空気フィルタ6に送られる。空気は続いて、圧縮機の上流のダクト7を通して圧縮機8に送られる。圧縮機8は、排気ガスによって始動するターボ過給機9によって駆動される。空気は圧縮機8で圧縮され、中間冷却器の上流のダクト10を通して中間冷却器11に送られる。冷却後、空気は、冷却器12の下流に配置されたダクト12を通して吸気マニホルド13に送られる。マニホルド13に入る空気の流れは次いで、吸気フラップ14によって調整される。
【0025】
機関1に入った空気は、排気ガスを生成する内部燃焼において能動的な役割を演じ、生成された排気ガスは、排気マニホルド15を通して排気回路3内へ排出される。
【0026】
ある種の汚染物質の放出を制限するため、排気ガスの第1の部分を、「EGR回路」と呼ばれる排気ガス再循環(exhaust gas recirculation)回路16によって吸気側に再循環させる。再循環させる排気ガスの量は、「EGRバルブ」と呼ばれる再循環回路弁17によって調整される。
【0027】
排気ガスの第2の部分はターボ過給機9を活動化し、次いで排気ガス後処理システム19を備えた排気管18に入る。
【0028】
機関1の動作は振動励振(vibrational excitaiton)を発生させ、この振動励振は吸気回路2内を伝搬し、吸気「轟音(roar)」と呼ばれる騒音を発生させる。排気ガス後処理システム19の再生時に、吸気フラップ14が回路2の断面を少なくとも部分的に閉じると、上流から来た振動励振の伝搬はフラップ14の下流において減衰される。
【0029】
図2に示されているように、吸気轟音レベルの減衰は吸気におけるスロットリングとともに増大する。より具体的には、このグラフから、吸気騒音の減衰レベルが、吸気フラップ14を閉じる程度による指数曲線に従うことが分かる。したがって、轟音の増大率(rate of increase)が直線的になるように、このフラップ14を、対数関数的な速度設定に従って動かすと特に有利である。
【0030】
このスロットリングはさらに、吸気フラップ14の下流において、例えば吸気回路2および空気フィルタ6の構成要素によって生み出された振動や騒音などのより低強度の騒音を低減させる。
【0031】
本発明の説明の以下の部分では、吸気騒音が、吸気轟音ならびに吸気回路2の構成要素によって生み出される振動および騒音を指し、一般的には、吸気回路2内を伝搬する任意の振動励振を指す。
【0032】
再生の終わりに、フラップ14は吸気回路2を開き、吸気騒音レベルは著しく増大する。通常モードに戻るため、したがって過剰消費およびある種の汚染物質の放出を制限するために、回路2が可能な限り速く開かれるとき、この増大はいっそう不利である。この遷移は明らかに、再生段階の終わりに搭乗者の注意を引き、搭乗者の聴覚の快適性に影響を及ぼす。
【0033】
本発明によれば、再生モードが終わると機関は次いで、スロットリングをしない通常モードに戻る前に一時的に中間動作モードに置かれる。この中間モードは吸気騒音のコントラスト(contrast)を制限する。次に中間モードは、加速信号が変更されたときに通常モードに切り替わる。この信号の変更は、加速信号または減速信号であることができる。
【0034】
手動または自動変速ギアシフト信号が検出されたときにも、中間モードは通常モードに切り替わることができる。
【0035】
例えばラジオの音量、ファン回転数などの音響レベルの変化に対応する他の信号を使用することも可能である。
【0036】
吸気騒音のコントラストの低減に加えて、中間モードは、再生モードに比べて、過剰消費およびある種の汚染物質の放出を制限する。しかしながら、消費およびある種の化合物の生成に関して、この中間モードは通常モードよりも不利である。したがって、狙いは、条件が、搭乗者が高い騒音コントラストによって煩わされないことを保証しているときに、できるだけ早く通常モードに切り替えることである。
【0037】
図3は、第1の実施形態に基づく機関1の各種動作モードにおけるいくつかのスロットリングパラメータの時間経過に対する吸気騒音の変化を示す。読みは、機関1の機関回転数および負荷が安定である条件でとられている。
【0038】
スロットリングをしない通常モードで機関1が動作しているとき、吸気騒音レベルは高く、値Hまで上昇する。再生モードでは、吸気騒音レベルは値Bに上昇するだけである。再生モードの終わりと通常モードへの切替りの間に、スロットリングが部分的である中間モードで機関が動作する段階が挿入される。この中間モードの間に、騒音レベルは徐々に低い値Bから高い値Hに戻る。
【0039】
再生モードの終わりに続く第1の期間には、騒音レベルが急速に変化して、値Bとの騒音の違いを搭乗者が聞き分けることができない値I1に戻る。言い換えると、値I1は、それよりも高い値では、搭乗者が騒音を感知できないように騒音レベルの変化率を制限しなければならないしきい値である。これを実行するため吸気回路2が急速に開かれる。例えば、値I1を値Hよりも10dB低い値とすることができる。こうすることは、機関が高い過剰消費レベルで動作している持続時間を制限し、同時に、搭乗者が再生モードの終わりを耳で感知することができないことを保証する。
【0040】
第2の期間には、フラップ14の適当な動きによって、騒音レベルがこの値I1から徐々に引き上げられる。フラップ14が動く速度は、その速度を超えると搭乗者が吸気騒音レベルの急速な変化を感知し始める最大速度に制限される。
【0041】
この第2の期間は、車両の加速信号が検出されるまで続き、加速信号の検出後、フラップ14の動きを加速させることによって騒音レベルは急速に増大する。したがって、吸気騒音のコントラストは、車両の加速信号が変化したときに搭乗者が感知する騒音の変化によってうまく覆い隠される。
【0042】
図4に示された第2の実施形態によれば、機関1が再生モードと通常モードの間で動作している中間モードが、第1の実施形態と比較して追加のステップを含む。読みは、機関1の機関回転数および負荷が安定である条件でとられている。
【0043】
再生モードの終わりに続く第1の期間には、騒音レベルが急速に変化して値I1に戻る。値I1は、それよりも高い値では、搭乗者が騒音を感知できないように騒音レベルの変化率を制限しなければならないしきい値である。これを実行するため吸気回路2が急速に開かれる。例えば、値I1を値Hよりも10dB低い値とすることができる。こうすることは、機関が高い過剰消費レベルで動作している持続時間を制限し、同時に、搭乗者が再生モードの終わりを耳で感知することができないことを保証する。
【0044】
第2の期間には、フラップ14の適当な動きによって、騒音レベルがこの値I1から、第2のしきい値である値I2まで徐々に引き上げられる。この値I2は例えば、それよりも高いレベルでは、過剰消費および化合物の生成が通常モードに比べて許容される、燃焼の制限された調整に関連する騒音レベルである。
【0045】
第3の期間には、吸気騒音レベルがI2に等しい一定のレベルに維持されるように、吸気フラップ14の動きが妨げられる。
【0046】
この第3の期間は、車両の加速信号の検出まで続き、加速信号の検出後、フラップ14の動きの速度を増大させることによって騒音レベルは急速に増大する。したがって、吸気騒音のコントラストは、車両の加速信号が変化したときに搭乗者が感知する騒音の変化によってうまく覆い隠される。
【0047】
以上のことから、高い騒音レベルHおよび低い騒音レベルBの差が非常に大きく、吸気騒音の変化率が小さく、その結果、非常に長い間、機関が中間モードに留まる場合に、この第2の実施形態に基づくシステムが多くの利点を有することが明らかである。
【0048】
第3の実施形態によれば、中間モードの間に、吸気フラップ14において実施されたスロットリングを受けて、再循環回路16のEGRバルブ17の開弁信号が調整される。
【0049】
再生モードでは、EGRバルブ17の開きが、通常モードでの開きよりも小さい。このEGRバルブ17が開いているとき、排気側からのパルスが吸気回路2に部分的に伝送される。したがって、機関1のある動作段階に関して、EGR回路16は、再生モードが通常モードに切り替わるときの吸気騒音のコントラストにおいて能動的な役割を演じる。
【0050】
吸気フラップ14を部分的にスロットリングする中間モードで機関が動作しているとき、燃焼において能動的な役割を演ずる空気/燃料混合物中の空気の割合は相対的に低い。このとき、EGRバルブ17は、空気/燃料混合物の割合を調整し、ある種の化合物の排出を制限するため、通常モード動作と比較して相対的に小さな開きを有する。
【0051】
この中間モードでは、EGRバルブ17が、再生モードが通常モードに切り替わるときの吸気騒音のコントラストに対するEGR回路の寄与を減らす部分スロットリング位置にある。
【0052】
さらに、本発明によれば、本発明は、EGRガスが排気マニホルドからとられる場合に制限されないことが理解される。例えば、EGRシステムに対するガスを、排気ガス後処理システムの下流側からとることも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガス後処理システム(19)と、排気ガスを吸気側に再循環させるシステム(16)とを備え、スロットリングをする再生モード動作からスロットリングをしない通常モードに切り替わる内燃機関(1)の制御方法であって、前記機関(1)の前記再生モード動作の終わりに、吸気騒音のコントラストを低減させるために部分スロットリングを実施することによって、前記機関(1)を一時的に中間モードで動作させるステップと、少なくとも1つの信号が検出されたときに、前記機関(1)を、部分スロットリングをする中間モード動作からスロットリングをしない通常モードに切り替えるステップとを含み、この信号が加速信号であることを特徴とする制御方法。
【請求項2】
スロットリングをする前記再生モードから部分スロットリングをする前記中間モードに切り替わるときに、吸気フラップ(14)を開く速度を制御することを特徴とする、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
吸気フラップ(14)の第1の開段階において、第1の吸気騒音減衰値に対応する第1の部分スロットリング値への急速な変更が実行されることを特徴とする、請求項2に記載の制御方法。
【請求項4】
開口フラップ(14)の第2の開段階において、少なくとも1つの吸気騒音増大率信号に従って、前記フラップ(14)を開く速度が制限されることを特徴とする、請求項3に記載の制御方法。
【請求項5】
第3の段階において、車両の加速信号が加えられるまで、部分スロットリング値が維持されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項6】
吸気騒音の変化率が概ね一定となるように、吸気フラップ(14)を開く速度を対数関数に従って変化させることを特徴とする、請求項2に記載の制御方法。
【請求項7】
吸気回路(2)が発する全騒音のコントラストを低減させるために、中間モードの間に、EGRシステム(16)内のガスの流れの断面積を低減することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項8】
所定の時間の後に、機関(1)を、中間モード動作から通常モードに切り替えることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−513769(P2010−513769A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540716(P2009−540716)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063232
【国際公開番号】WO2008/071591
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(500392287)
【Fターム(参考)】