説明

排気ガス浄化システム及び排気ガス浄化方法

【課題】NOx浄化触媒装置、酸化触媒装置、触媒付きフィルタ装置等の触媒作用を利用する排気ガス浄化装置を備えた排気ガス浄化システムにおいて、触媒の浄化性能の温度依存性と高温処理が必要とされる脱硫処理を考慮して、触媒の浄化性能を速やかに且つ効率よく利用できる排気ガス浄化システムと排気ガス浄化方法を提供する。
【解決手段】排気ガスG中の有害成分を浄化する触媒を担持した排気ガス浄化装置10を備えた排気ガス浄化システム1において、前記排気ガス浄化装置10の触媒を担持した部分を筒状の仕切り壁13により外周部11と中央筒部12の二つに分けて、内燃機関の排気通路2と前記外周部11との間に設けた第1バルブ16の開弁により排気ガスGを前記外周部11に流し、前記排気通路2と前記中央筒部12との間に設けた第2バルブ18の開弁により排気ガスGを前記中央筒部12に流すように構成すると共に、前記筒状の仕切り壁13を遮熱構造に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス浄化装置の触媒を担持した部分を外周部と中央筒部の二つに分けて、外周部と中央筒部の間に遮熱構造の筒状の仕切り壁を形成した排気ガス浄化装置を備えた排気ガス浄化システム及び排気ガス浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気ガスを浄化するための装置の一つに、排気ガス中のNOx(窒素酸化物)の浄化のためのNOx浄化触媒装置がある。このNOx浄化触媒装置の一つに、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を貴金属と共に担持して、酸素過剰な排気ガス中のNO(一酸化窒素)を酸化して硝酸塩として触媒上に吸着させて、NOxを浄化するNOx吸蔵還元型触媒を担持した装置がある。このNOx吸蔵還元型触媒は、排気ガスが酸素過剰なリーン空燃比状態では、NOxを吸蔵し、酸素濃度が低いか、空燃比が1より小さいリッチ空燃比状態では、吸蔵したNOxを放出すると共に、この放出されたNOxを還元雰囲気中で還元して、NOxを低減する。
【0003】
また、排気ガス浄化装置の別の装置として、NOxを吸蔵することはできないが、貴金属を主に担持して、その酸化作用により、CO(一酸化炭素)やHC(炭化水素)を酸化除去する酸化触媒装置がある。更に、排気ガス中のPM(微粒子状物質)を捕集して、フィルタに担持した酸化触媒やPM酸化触媒により酸化除去する触媒付きフィルタ装置がある。
【0004】
これらの触媒装置と触媒付きフィルタ装置を使用して、内燃機関から排出される排気ガス中のNOx、CO、HC、PM等の有害成分を浄化して、これらの有害成分の大気中への放出量を排出基準以下にまで下げている。
【0005】
しかしながら、これらの触媒を使用した排気ガスの後処理システムでは、触媒が活性化して、浄化反応が可能となる温度まで触媒を昇温させる必要がある。触媒の種類にもよるが、概略、200℃〜250℃の温度に到達すると、その浄化反応を開始する。しかし、この活性化温度に到達するまでは排気ガス中の有害成分を触媒反応で除去することはできず、大気中へ有害成分がそのまま排出されてしまうという問題がある。言い換えれば、触媒を使った後処理システムでは、触媒が浄化反応を始める温度への到達時間が短ければ、その分だけ大気中へ放出される有害成分の量を減らすことができる。
【0006】
これに関連して、触媒の上流に流路制御機構を設けて、排気ガスの温度が低い時には触媒の中心部に排気ガスの流れを集中して、触媒温度の活性化温度への到達を早くし、排気ガスの温度が高い時には触媒の周辺部に集中して排気ガスを流し、排気ガスが高温となっても、触媒でのサルフェートの生成、及び堆積を防止するディーゼルエンジンの触媒コンバータが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
このディーゼルエンジンの触媒コンバータでは、触媒コンバータのハウジングの外表面に複数の冷却ファンを設けると効果的であるとし、サルフェートの生成を抑えるために、排気ガスが高温状態になった時に、排気ガスを、触媒の中央部には流さずに、温度が低い触媒の周辺部に集中して通過させている。
【0008】
しかしながら、外周部の温度を低温に保つことは、サルフェートの生成を抑えることには有効であると思われるが、NOx浄化の面では触媒の活性化温度以上に触媒全体の温度を上げる必要があるので、外周部の低温化はNOx浄化の面からは好ましくない。また、触媒内に生成したサルフェートを除去するために、外周部の温度を上げて脱硫させる場合に、触媒の外周部の温度上昇が難しく、脱硫再生が難しいという問題がある。
【0009】
また、酸化触媒を担持させた高温排気ガス処理部を中央に、加熱手段を取り付けた低温排気ガス処理部を周辺に設けて、排気ガス温度が酸化触媒活性化温度以下である場合には、加熱手段を作動させて排気ガスを酸化触媒活性化温度以上に加熱して低温排気ガス処理部に流して、始動時や排気ガス温度が低下した場合における排気ガス浄化効率を向上させ、また、排気ガス温度が酸化触媒活性化温度以上である場合には、加熱手段の作動を停止し、排気ガスを高温排気ガス処理部に流して、酸化触媒による有害成分の浄化を行う自動車用排気ガス処理装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
この自動車用排気ガス処理装置では、排気ガス温度が高い場合には高温排気ガス処理部と低温排気ガス処理部に排気ガスを流して浄化し、また、エンジンの始動時や排気ガスが高温から低温になった場合には、経路を切り換えて、加熱手段経由で周辺部の低温排気ガス処理部に流入させる。これにより排気ガスを加熱手段で触媒活性化温度以上に加熱し、この加熱された排気ガスを低温排気ガス処理部に流入させて浄化している。
【0011】
しかしながら、一般的には、放熱の関係から、触媒の中央部が高い温度に成り易く、周辺部は低い温度に成り易いので、低温排気ガス処理部を周辺側に設けているこの自動車用排気ガス処理装置の構成は熱効率が悪いという問題がある。
【0012】
これに対して、本発明者は、触媒を加熱する昇温時間を短くする手段として、触媒を担持した部分の熱容量を変化させて、エンジン始動直後など排気温度が低い場合には、触媒を担持した部分の中央部分のコアのみに排気ガスを流して、加熱される触媒を担持した部分の熱容量を小さくして昇温時間を短くすることを考えた。
【特許文献1】特開平10−299465号公報
【特許文献2】特開2002−295233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、NOx浄化触媒装置、酸化触媒装置、触媒付きフィルタ装置等の触媒作用を利用する排気ガス浄化装置を備えた排気ガス浄化システムにおいて、触媒の浄化性能の温度依存性と高温処理が必要とされる脱硫処理を考慮して、触媒の浄化性能を速やかに且つ効率よく利用できる排気ガス浄化システムと排気ガス浄化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するための本発明の排気ガス浄化システムは、排気ガス中の有害成分を浄化する触媒を担持した排気ガス浄化装置を備えた排気ガス浄化システムにおいて、前記排気ガス浄化装置の触媒を担持した部分を筒状の仕切り壁により外周部と中央筒部の二つに分けて、内燃機関の排気通路と前記外周部との間に第1バルブを、前記排気通路と前記中央筒部との間に第2バルブを設け、前記第1バルブを開くことにより排気ガスを前記外周部に流し、前記第2バルブを開くことにより排気ガスを前記中央筒部に流すように構成すると共に、前記筒状の仕切り壁を遮熱構造に形成して構成する。
【0015】
この構成によれば、触媒を担持した部分を遮熱構造の筒状の仕切り壁により2つに分けて、各部分における熱容量を減少したので、暖機運転の場合等、触媒の温度を速やかに活性化温度以上に昇温する必要がある場合には、熱容量が触媒の全体に比べて減少した一方の触媒側(例えば、中央筒部側)のみに排気ガスを流すことにより、速やかに触媒の温度を上昇して、触媒を活性化できる。
【0016】
このときに、外周部と中央筒部との間の筒状の仕切り壁を遮熱構造に形成して、熱の移動を抑制して外周部への熱伝達で失われる熱量を減少するように構成しているので、排気ガスの熱を中央筒部の昇温に効率よく利用でき、中央筒部の触媒を迅速に昇温できる。
【0017】
また、排気ガスの温度が高くなって排気ガスの容積流量が大きくなった場合には、他方の触媒(例えば、外周部側)にも排気ガスを流すことにより、排気ガスは通過する部分の容積を増やして、排気ガス浄化装置の排気ガスに対する空間速度を下げて、触媒との接触時間を長くして触媒反応を促進することができるので、排ガスの流量と共に増加した有害成分に対しても十分な浄化ができる。
【0018】
なお、この有害成分を浄化する触媒を担持した排気ガス浄化装置としては、NOx吸蔵還元型触媒、NOx直接還元型触媒、選択還元型NOx触媒(SCR触媒)、酸化触媒、三元触媒、触媒付きフィルタ等がある。
【0019】
上記の排気ガス浄化システムにおいて、前記中央筒部の触媒の温度を指標する第1指標温度が予め設定した第1判定温度以下では、前記第1バルブを閉じると共に前記第2バルブを開いて排気ガスを前記中央筒部のみに流し、前記第1指標温度が前記第1判定温度を越えたときには、前記第2バルブを開いたまま前記第1バルブを開いて排気ガスを前記中央筒部と前記外周部の両方に流すように構成される。
【0020】
この「第1指標温度」は、中央筒部の触媒の温度そのもの又はその温度を指標する温度のことを言う。これは、触媒の温度を直接計測するのは難しい場合が多いので、代わりにこの触媒の温度に密接な関係を持った温度、例えば、中央筒部に流入する排気ガスの温度や中央筒部から流出する排気ガスの温度を用いることもある。そのため、この代わりに用いる温度も含む表現として「第1指標温度」と表現している。
【0021】
また、第1判定温度は触媒の活性化温度以上の温度であり、触媒の種類にもよるが、200℃〜300℃の範囲内の温度であり、例えば250℃に設定される。第1指標温度がこの第1判定温度になるまで、外周部には排気ガスが流れない。
【0022】
この構成によれば、エンジン始動直後の暖機運転や低負荷運転のときには、第1指標温度が低く、排気ガスの容積流量も小さいので保温性が良い中央筒部に排気ガスを流して、中央筒部の触媒を迅速に昇温して、活性化までの時間を短縮することができる。また、第1指標温度が高く排気ガスの容積流量が大きいときには、中央筒部と外周部の両方に排気ガスを流して、排気ガスが通過する部分の容積を増やして、排気ガスに対する空間速度を下げて、排気ガスが触媒に接触する時間を長くして触媒反応を促進することができる。
【0023】
上記の排気ガス浄化システムにおいて、前記触媒としてNOx吸蔵還元型触媒を用いると共に、前記中央筒部には、NOx吸蔵材としてカリウムを担持させ、前記外周部には、NOx吸蔵材としてバリウムを担持させて構成する。
【0024】
この構成によれば、高温用(450℃〜550℃)のカリウムを高温の排気ガスの通過が多く、NOx浄化処理中に全体としての平均温度が高い中央筒部に設け、低温用(250℃〜450℃)のバリウムを、低温の排気ガスの通過が多く、NOx浄化処理中に全体としての平均温度が低い外周部に設けているので、異なった触媒成分を温度特性に合わせて配置することにより、より効率よくNOx吸蔵性能を発揮させることができる。
【0025】
上記の排気ガス浄化システムにおいて、脱硫処理を行っている場合に、前記中央筒部の触媒の温度を指標する第1指標温度が予め設定した第2判定温度以下では、前記第1バルブを閉じると共に前記第2バルブを開いて排気ガスを前記中央筒部のみに流し、前記第1指標温度が前記第2判定温度を超えてから、前記第1指標温度が前記第2判定温度を超えた時間の総和である第1脱硫処理時間が予め設定された第1判定時間を経過するまでは、前記第1バルブと前記第2バルブの開閉状態をそのまま継続し、前記第1脱硫処理時間が前記第1判定時間を経過したときに、前記第1バルブを開いて前記第2バルブを閉じて排気ガスを前記外周部のみに流し、更に、前記外周部の触媒の温度を指標する第2指標温度が予め設定した第3判定温度を超えると、前記第2指標温度が前記第3判定温度を超えた時間の総和である第2脱硫処理時間が予め設定した第2判定時間を経過するまでは、前記第1バルブと前記第2バルブの開閉状態をそのまま継続し、前記第2脱硫処理時間が前記第2判定時間を経過すると、脱硫処理を終了するように構成する。
【0026】
この「第1指標温度」は、中央筒部の触媒の温度そのもの又はその温度を指標する温度のことを言い、この「第2指標温度」は、外周部の触媒の温度そのもの又はその温度を指標する温度のことを言う。これは、触媒の温度を直接計測するのは難しい場合が多いので、代わりにこの触媒の温度に密接な関係を持った温度、例えば、中央筒部又は外周部に流入する排気ガスの温度や中央筒部又は外周部から流出する排気ガスの温度を用いることもある。そのため、この代わりに用いる温度も含む表現として「第1指標温度」「第2指標温度」と表現している。
【0027】
また、第2判定温度及び第3判定温度は、中央筒部又は外周部の触媒の脱硫処理が可能となる温度以上の温度であり、触媒の種類にもよるが、650℃〜750℃の範囲内の温度であり、例えば700℃と650℃に設定される。なお、通常は熱劣化という理由から、第3判定温度は第2判定温度よりも低く設定される。
【0028】
また、第1判定時間は、中央筒部の触媒の脱硫処理が完了するまでの時間であり、第2判定時間は、外周部の触媒の脱硫処理が完了するまでの時間である。これらの時間は、予め行った実験の結果等に基づいて設定される。なお、通常は低温用のNOx吸蔵還元型触媒で使用するバリウムの方が高温用のNOx吸蔵還元型触媒で使用するカリウムよりも脱離し易いという理由から第2判定時間は第1判定時間よりも短く設定される。
【0029】
この構成によれば、触媒を高温にする必要がある脱硫処理において、第1指標温度が第2判定温度を超えてから第1判定時間を超えるまでは、筒状の仕切り壁の遮熱構造により保温性がよく昇温が早い中央筒部に排気ガスを流して、この中央筒部の脱硫処理を完了するまで行う。また、中央筒部の脱硫処理が完了したら、中央筒部に比べて触媒の昇温が遅れ易い外周部に排気ガスを流して外周部の脱硫処理を集中的に行う。そのため、触媒全体の脱硫を効率よく行うことができる。
【0030】
例えば、NOx吸蔵還元型触媒では、NOx浄化性能は硫黄の吸着により悪化する。この硫黄の吸着は約600℃以下の温度で生じるが、その一方で、脱硫には約650℃以上の高温を必要とする。従って、硫黄の吸着は高温には達し難い触媒の外周部にまで及ぶことになるが、脱硫では、触媒温度を更に高い温度にする必要がある。しかし、外周部は容易に高温に達しないため、硫黄が残留し易いという問題がある。
【0031】
この問題に対して、本発明では、筒状の遮熱構造(仕切り壁)を触媒を担持する部分の径方向の内側と外側の間に設けて、中央筒部と外周部を形成し、脱硫処理の後半で外周部だけの脱硫処理を行って、排気ガスが通過し難く温度も上がり難い外周部を、執拗に脱硫処理することで、触媒の全体に亘って十分な脱硫を行うことができるようになる。
【0032】
その結果、触媒の浄化性能の維持に必要な還元処理、言い換えれば、触媒の浄化能力を回復する再生処理のための時間や回数を減少できるので、この再生処理で必要な燃料消費量を低減できる。従って、車両に搭載する触媒の容量を減少して、搭載性を確保すると共にコストを低減することができる。また、脱硫処理において、冷え易い触媒の外周部のみを高温に加熱することで中央筒部が過剰な高温に晒されて触媒が劣化することを抑制することができる。
【0033】
また、更に、外周部の周囲に保温構造を設けると、脱硫処理時において外周部の触媒をより効率よく昇温することができるようになる。
【0034】
また、脱硫処理を外周部と中央筒部とに分けて行うようにして、外周部と中央筒部の脱硫処理の回数を変化させるように構成でき、この場合は、比較的硫黄の吸着し難い外周部の処理回数を減らすことと、中央筒部分の加熱処理時間を減らすことで、脱硫処理に使用される燃料消費量を低減することも可能となる。
【0035】
そして、上記の目的を達成するための本発明の排気ガス浄化方法は、排気ガス中の有害成分を浄化する触媒を担持した排気ガス浄化装置を備えた排気ガス浄化システムの排気ガス浄化方法において、前記排気ガス浄化装置の触媒を担持した部分を筒状の仕切り壁により外周部と中央筒部の二つに分けて前記筒状の仕切り壁を遮熱構造に形成して前記外周部と前記中央筒部との間を遮熱し、前記中央筒部の触媒の温度を指標する第1指標温度が予め設定した第1判定温度以下では、内燃機関の排気通路と前記外周部との間に設けた第1バルブを閉じると共に、前記排気通路と前記中央筒部との間に設けた第2バルブを開いて排気ガスを前記中央筒部のみに流し、前記第1指標温度が前記第1判定温度を越えたときには、前記第2バルブを開いたまま前記第1バルブを開いて排気ガスを前記中央筒部と前記外周部の両方に流すことを特徴とする方法である。この第1指標温度と第1判定温度は上記の第1指標温度と第1判定温度と同様である。
【0036】
この方法によれば、エンジン始動直後の暖機運転や低負荷運転のときには、第1指標温度が低く、排気ガスの容積流量も小さいので保温性が良い中央筒部に排気ガスを流して、中央筒部の触媒を迅速に昇温して、活性化までの時間を短縮することができる。また、第1指標温度が高く排気ガスの容積流量が大きいときには、中央筒部と外周部の両方に排気ガスを流して、排気ガスが通過する部分の容積を増やして、排気ガスに対する空間速度を下げて、排気ガスが触媒に接触する時間を長くして触媒反応を促進することができる。
【0037】
上記の排気ガス浄化方法において、脱硫処理を行っている場合に、前記中央筒部の触媒の温度を指標する第1指標温度が予め設定した第2判定温度以下では、前記第1バルブを閉じると共に前記第2バルブを開いて排気ガスを前記中央筒部のみに流し、前記第1指標温度が前記第2判定温度を超えてから、前記第1指標温度が前記第2判定温度を超えた時間の総和である第1脱硫処理時間が予め設定された第1判定時間を経過するまでは、前記第1バルブと前記第2バルブの開閉状態をそのまま継続し、前記第1脱硫処理時間が前記第1判定時間を経過したときに、前記第1バルブを開いて前記第2バルブを閉じて排気ガスを前記外周部のみに流し、更に、前記外周部の触媒の温度を指標する第2指標温度が予め設定した第3判定温度を超えると、前記第2指標温度が前記第3判定温度を超えた時間の総和である第2脱硫処理時間が予め設定した第2判定時間を経過するまでは、前記第1バルブと前記第2バルブの開閉状態をそのまま継続し、前記第2脱硫処理時間が前記第2判定時間を経過すると、脱硫処理を終了するように構成する。
【0038】
この方法によれば、脱硫処理を完全に行うことができるようになるので、触媒の浄化能力を回復する再生処理のための時間や回数を減少できる。そのため、この再生処理で必要な燃料消費量を低減できる。従って、車両に搭載する触媒の容量を減少して、搭載性を確保すると共にコストを低減することができる。また、脱硫処理において、冷え易い触媒の外周部のみを高温に加熱することで中央筒部が過剰な高温に晒されて触媒が劣化することを抑制できる。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る排気ガス浄化システム及び排気ガス浄化方法によれば、NOx浄化触媒装置、酸化触媒装置、触媒付きフィルタ装置等の触媒を用いた排気ガス浄化装置において、触媒の浄化性能の温度依存性を考慮して、触媒の浄化性能を速やかに且つ効率よく利用できる。
【0040】
つまり、触媒担持した部分を遮熱構造の筒状の仕切り壁により2つに分けて、分割された部分の熱容量を減少したので、暖機運転の場合等に、触媒の温度を速やかに上げる必要がある場合には、熱容量の小さい部分に排気ガスを流すことにより、速やかに触媒の温度を上昇して活性化できる。
【0041】
このときに、中央筒部と外周部との間に筒状の仕切り壁を遮熱構造に形成して、熱の移動を抑制して中央筒部と外周部の間での熱移動で失われる熱量を減少しているので、排気ガスの熱を触媒担持部分の昇温に効率よく利用できる。従って、その分、触媒を迅速に昇温でき、活性化した触媒で効率よく排気ガス中の有害成分を浄化できる。
【0042】
また、排気ガスの温度が上がり排気ガスの流量の容積が大きくなった場合には、全部の触媒に排気ガスを流すことにより、触媒の容積を増やして、触媒の排気ガスに対する空間速度を下げることができ、これにより、排気ガスが触媒と接触する時間を長くして触媒反応を促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明に係る実施の形態の排気ガス浄化システム及び排気ガス浄化方法について、図面を参照しながら説明する。
【0044】
図1に、本発明の実施の形態の排気ガス浄化システム1の構成を示す。この排気ガス浄化システム1は、エンジン(内燃機関)の排気通路2に、排気ガスG中の有害成分を浄化する触媒を担持したNOx浄化触媒装置、酸化触媒装置、触媒付きフィルタ装置のいずれか又は幾つかの組み合わせで形成される排気ガス浄化装置10を配置して構成される。
【0045】
この排気ガス浄化装置10が、酸化触媒を担持した酸化触媒装置の場合には、排気ガス中のHC(炭化水素)を酸化して排気ガス温度を上昇させたり、排気ガス中のNO(一酸化窒素)を酸化してNO2 (二酸化窒素)にしてNOx(窒素酸化物)を浄化し易くしたりするために、多孔質のセラミックのハニカム構造等の担持体に、白金等の酸化触媒を担持させて形成される。
【0046】
また、排気ガス浄化装置10がNOx吸蔵還元型触媒を担持したNOx浄化触媒装置の場合には、排気ガス中のNOxを浄化するために、モノリス触媒で形成される。このモノリス触媒のコージェライトハニカム等の担持体に酸化アルミニウム、酸化チタン等の触媒コート層を設ける。この触媒コート層に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の触媒金属と、バリウム(Ba)等のNOx吸蔵材(NOx吸蔵物質)とからなるNOx吸蔵還元触媒を担持させて構成される。
【0047】
このNOx吸蔵還元型触媒は、酸素濃度が高い排気ガスの状態、即ち、空燃比リーン状態の時に、排気ガス中のNOxをNOx吸蔵材が吸蔵することにより、排気ガス中のNOxを浄化し、酸素濃度が低いか空燃比が1より小さい空燃比リッチ状態か、あるいは、空燃比が1の空燃比ストイキ状態の時に、吸蔵したNOxを放出すると共に、この放出されたNOxを触媒金属の触媒作用により還元することにより、大気中へのNOxの流出を防止する。
【0048】
このNOx吸蔵還元型触媒は、空燃比リーン状態が継続すると、NOx吸蔵材が硝酸塩に変化してしまうため、NOx吸蔵能力が飽和する前に、排気ガスを空燃比リッチ状態にする再生制御を行って、吸蔵したNOxを放出及び還元して、NOx吸蔵能力を回復している。
【0049】
また、排気ガス浄化装置10が、触媒付きフィルタ装置の場合には、排気ガス中のPM(微粒子状物質)を浄化するために、多孔質のセラミックのハニカムのチャンネル(排気ガスの通路)の入口と出口を交互に目封じしたモノリスハニカム型ウォールフロータイプのフィルタ等で形成される。このフィルタの部分に、比較的高温ではPMやHCの酸化を促進するように、また、比較的低温ではHCを吸着できるように、白金や酸化セリウム等の触媒が担持される。排気ガス中のPMは、この触媒付きフィルタ装置の多孔質セラミックの壁で捕集される。
【0050】
この触媒付きフィルタ装置では、PMの捕集量が増加して圧力損失が増加するのを防止するために、PMの捕集量が所定の捕集量を超えた場合や触媒付きフィルタ装置の前後差圧が所定の差圧量を超えた場合に、排気ガス温度を上昇して、触媒付きフィルタ装置をPMの燃料温度以上に昇温する排気昇温制御を行う。この排気昇温制御では、未燃燃料供給制御を含む空燃比リッチ制御が行われる。
【0051】
本発明では、この排気ガス処理装置10の触媒を担持した部分を、図1及び図3に示すように、外周部11と中央筒部12の二つに分けて、その間隙に筒状のリングである仕切り壁13を遮熱構造に形成して配置する。更に、その外周部11の周囲に保温のための遮熱性を有する保温構造14を設けて構成する。この保温構造14は触媒の格納容器としての役割も果たすように構成される。
【0052】
この中央筒部12を円筒形状に形成し、外周部11をその周囲に設けて、排気ガス浄化装置10を円筒形状に形成した場合には、この中央筒部12の外径RAと、外周部の外径RBの比を、昇温時間を基にして、触媒の使用条件を考慮して設定する。言い換えれば、中央筒部の断面積と外周部の断面積の比を昇温時間を基にして触媒の使用条件を考慮して設定する。
【0053】
例えば、触媒を担持した部分の断面積を同じにして、中央筒部12の容積と外周部11の容積を等しいものとして形成し、触媒の加熱に必要な熱量を変えずに、触媒を担持した部分の熱容量を半減するようにして、中央筒部12にのみに排気ガスGを流すように構成すると、この場合には、エンジンの始動直後から触媒の温度Tc2を所定の温度(例えば、200℃)まで昇温させるのに必要な時間は約半分となり、触媒が活性化するまでの排気ガス中の有害成分の排出量を減らすことが可能となる。また、排気温度が高く排気ガスGの容積流量が増えた場合には外周部11の触媒にも排気ガスGを流す。これにより、増加した有害成分量に対して、排気ガスが通過する触媒を担持した部分の容積を増やして空間速度を下げて、排気ガスの有害成分が触媒に接触する時間を長くする。従って、排気ガスの有害成分に対する十分な浄化が可能となる。
【0054】
筒状の仕切り壁13は、図4に示すように、波板13aを間に挟んだ二枚の板13b、13cで形成された二重壁構造を折り曲げてリング状に形成し、長さ方向の両端部を排気ガスが流入及び流出ができないように閉塞して構成する。このリング状の波板13aによって、二枚の板13b、13cとの接触面積を減少して熱伝導による熱の移動を減少すると共に、波板13aと二重壁13b、13cとの間に形成した空間部13dに空気を充填し、この熱伝導率の低い空気により遮熱性を増加する。
【0055】
外周部11を囲う保温構造14は、空気を多量に含む発泡材等で形成し、保温性と遮熱性(断熱性)を高めると共に、触媒の担持体を格納する容器としての役割も果たすように構成される。この保温構造14を設けることにより、触媒の活性化時や脱硫処理時において、触媒をより効率よく昇温することができるようになる。
【0056】
更に、エンジンの排気通路2と外周部11との間の第1通路15に第1バルブ16を、排気通路2と中央筒部12との間の第2通路17に第2バルブ18を設ける。この第1バルブ16を開くことにより排気ガスGを外周部11に流し、第2バルブ18を開くことにより排気ガスGを中央筒部12に流すように構成する。
【0057】
また、中央筒部12の触媒の温度Tc1を測定するために、温度センサである熱電対19を中央筒部12の下流側の外周部位に配置すると共に、外周部11の触媒の温度Tc2を測定するために、熱電対20を外周部11の下流側の外周部位に配置する。更に、排気ガス浄化装置10に流入する排気ガスGの温度Tgを測定するために、熱電対21を排気ガス浄化装置10の上流側の排気通路2に配置する。
【0058】
これらの熱電対19、20、21の計測値Tc1、Tc2、Tgは、エンジンの運転を制御するエンジン制御装置(ECU)3に入力され、これらの計測値Tc1、Tc2、Tgに基づいて、第1バルブ16と第2バルブ18の開閉操作が行われる。
【0059】
この構成によれば、触媒を担持した部分11、12を遮熱構造の筒状の仕切り壁13により二つに分けて、各部分11、12の熱容量を減少したので、暖機運転の場合等、触媒の温度を速やかに活性化温度以上に上げる必要がある場合には、触媒を担持した部分の熱容量が全体に比べて減少した中央筒部12側のみに排気ガスGを流すことにより、速やかに触媒の温度を上昇して触媒を活性化できる。
【0060】
このときに、外周部11と中央筒部12との間に設けた筒状の仕切り壁13を遮熱構造に形成して、熱の移動を抑制して中央筒部12から外周部11へ移動する熱量を減少しているので、排気ガスGの熱を中央筒部12の昇温に効率よく利用でき、その分中央筒部12の触媒の温度を迅速に昇温できる。また、保温構造14も中央筒部12の昇温に間接的に寄与する。
【0061】
また、排気ガスGの温度Tgが上がり排気ガスGの容積流量が大きくなった場合には、中央筒部12に排気ガスGを流しつつ、外周部11側にも排気ガスGを流すことにより、排気ガスが通過する触媒を担持した部分の容積を増やして、排気ガスGに対する空間速度を下げて、排気ガスGが触媒に接する時間を長くして触媒反応を促進することができる。この場合においては、保温構造14により、外周部11の触媒の温度の上昇が促進される。
【0062】
また、この排気ガス浄化システム1において、排気ガス浄化装置10がNOx浄化触媒装置であって、触媒としてNOx吸蔵還元型触媒を使用する場合には、中央筒部12には、NOx吸蔵材としてカリウムを担持させ、外周部11には、NOx吸蔵材としてバリウムを担持させて構成することが好ましい。
【0063】
この構成によれば、高温用(450℃〜550℃)のカリウムを高温の排気ガスの通過が多く、NOx浄化処理中に全体としての平均温度が高い中央筒部12に設け、低温用(250℃〜450℃)のバリウムを、低温の排気ガスの通過が多く、NOx浄化処理中に全体としての平均温度が低い外周部11に設けているので、異なった触媒成分でより効率よくNOx吸蔵性能を発揮することができるようになる。
【0064】
次に、上記の構成の排気ガス浄化システム1における排気ガス浄化方法について説明する。通常の運転状態では、第1バルブ16と第2バルブ18の両方を開いて、排気ガスGを外周部11と中央筒部12の両方に流して、排気ガスG中の有害成分を触媒作用により浄化する。また、暖機運転や低負荷運転等の排気ガスGが低温であり、触媒を迅速に活性化させる必要がある場合と、触媒を硫黄被毒から回復させる脱硫処理で、触媒を高温にする必要がある場合は、第1バルブ16と第2バルブ18はそれぞれの場合に応じて次のように制御される。
【0065】
最初に、暖機運転や低負荷運転の場合について、図5の制御フローを参照しながら説明する。エンジンが始動されて、図5の制御フローが上級の制御フローから呼ばれてスタートすると、ステップS11で、排気ガスGの温度(第1指標温度)Tgと予め設定した第1判定温度T1が入力される。ステップS12で、排気ガスGの温度Tgが第1判定温度T1以下であるか否かが判定される。この図5の制御フローでは、中央筒部11の触媒の温度を指標する第1指標温度として、中央筒部11に流入する排気ガスGの温度Tgを用いている。なお、熱電対19で計測される温度Tc1を用いることもできる。
【0066】
このステップS12の判定で、排気ガスGの温度Tgが第1判定温度T1以下であれば(YES)、ステップS13に行き、第1バルブ16を閉じて第2バルブ18を開く。これにより排気ガスGを中央筒部12のみに流す。この制御をした後、予め設定した時間(排気ガスの温度Tgのチェックのインターバルブ関係する時間)を経過した後に、ステップS11に戻る。
【0067】
ステップS12の判定で、排気ガスGの温度Tgが第1判定温度T1を超えたときには(NO、ステップS14に行き、第1バルブ16を開いて第2バルブ18を開く、即ち、第2バルブ18を開いたまま、第1バルブ16を開く。これにより、排気ガスGを中央筒部12と外周部11の両方に流す。この制御をした後、予め設定した時間(排気ガスの温度Tgのチェックのインターバルブ関係する時間)を経過した後に、ステップS11に戻る。
【0068】
このステップS11〜ステップS13又はステップS11〜ステップS14を繰り返し実行し、エンジンが停止された場合には、割り込みが発生し、ステップS15の終了処理を行って、上級の制御フローに戻り、上級の制御フローの終了と共に、図5の制御フローも終了する。
【0069】
この構成によれば、エンジン始動直後の暖機運転や低負荷運転のときには、排気ガスGの温度Tgが低く、排気ガスGの容積流量も小さいので保温性が良い中央筒部12に排気ガスGを流して、中央筒部12の触媒を迅速に昇温することができる。また、排気ガスGの温度Tgが高く排気ガスGの容積流量が大きいときには、中央筒部12と外周部11の両方に排気ガスGを流して、排気ガスGが通過する部分の容積を増やして、排気ガスGに対する空間速度を下げて、排気ガスGが触媒に接触する時間を長くして触媒反応を促進することができる。
【0070】
この第1判定温度T1は触媒の活性化温度以上の温度であり、例えば、NOx浄化率が80%以上という温度である。この第1判定温度T1は触媒の種類にもよるが、200℃〜300℃の範囲内の温度であり、例えば250℃に設定される。
【0071】
なお、エンジンの始動時や低負荷運転の場合には、この図5の制御フローが有効になるが、低負荷運転から高負荷運転に移って排気ガスの温度Tgが上昇したときは、ステップS14の第1バルブ16と第2バルブ18を共に開いた状態になるので、必ずしも、図5の制御フローを停止する必要はない。
【0072】
次に、触媒の温度を高い温度にする必要がある脱硫処理の場合について、図6及び図7の制御フローを参照しながら説明する。図6の制御フローと図7の制御フローとは、図6の下端のAと図7の上端のAとにより接続している一つの制御フローである。
【0073】
この排気ガス浄化システム1において、脱硫処理を行う場合には、上級の制御フローによって、図5の制御フローから、図6及び図7の制御フローに切替られる。ここでは、第1指標温度として、熱電対19の計測温度Tc1を用い、第2指標温度として熱電対20の計測温度Tc2を用いているが、第1指標温度かつ第2指標温度として熱排気ガスGの温度Tgを用いるようにしてもよい。
【0074】
図6及び図7の制御フローは、脱硫処理を行う場合の制御であり、スタートすると、図6のステップS21で、中央筒部12の触媒の温度を指標する第1指標温度Tc1と予め設定した第2判定温度T2と予め設定された第1判定時間t1を入力する。次にステップS22で、第1指標温度Tc1が第2判定温度T2以下であるか否かを判定する。
【0075】
ステップS22の判定で、第1指標温度Tc1が第2判定温度T2以下である場合(YES)には、ステップS23に行き、第1バルブ16を閉じると共に第2バルブ18を開く。これにより、排気ガスGを中央筒部12のみに流す。この制御をした後、予め設定した時間(第1指標温度Tc1のチェックのインターバルブ関係する時間)の間経過した後に、ステップS21に戻る。
【0076】
ステップS22の判定で、第1指標温度Tc1が第2判定温度T2を超えた場合には(NO)、ステップS24で、第1指標温度Tc1が第2判定温度T2を超えた時間の総和である第1脱硫処理時間td1をカウントする。次のステップS25で、この第1脱硫処理時間td1が予め設定された第1判定時間t1を経過したか否かを判定する。このステップS25の判定で、この第1脱硫処理時間td1が第1判定時間t1を経過していない場合には(NO)、そのままの状態で、予め設定した時間(第1脱硫処理時間td1のチェックのインターバルブ関係する時間)を経過した後に、ステップS21に戻る。
【0077】
ステップS25の判定で、第1脱硫処理時間td1が第1判定時間t1を経過した場合には(YES)、A経由で、図7のステップS26に行き、第1バルブ16を開いて第2バルブ18を閉じて排気ガスGを外周部11のみに流す。
【0078】
次のステップS27で、外周部11の触媒の温度を指標する第2指標温度Tc2と予め設定した第3判定温度T3と予め設定した第2判定時間t2を入力する。次のステップS28で、第2指標温度Tc2が第3判定温度T3以下か否かを判定する。ステップS28の判定で、第2指標温度Tc2が第3判定温度T3以下で、第3判定温度T3を超えていない場合には(YES)、予め設定した時間(第2指標温度Tc2のチェックのインターバルブ関係する時間)を経過した後に、ステップS27に戻る。
【0079】
ステップS28の判定で、第2指標温度Tc2が第3判定温度T3を超えた場合には(NO)、次のステップS29で、第2指標温度Tc2が第3判定温度T3を超えた時間の総和である第2脱硫処理時間td2をカウントする。次のステップS30で、この第2脱硫処理時間td2が予め設定された第2判定時間t2を経過したか否かを判定する。このステップS30の判定で、この第2脱硫処理時間td2が第2判定時間t2を経過していない場合には(NO)、そのままの状態で、予め設定した時間(第2脱硫処理時間td2のチェックのインターバルブ関係する時間)を経過した後に、ステップS27に戻る。
【0080】
ステップS30の判定で、この第2脱硫処理時間td2が第2判定時間t2を経過した場合には(YES)、ステップS31に行き、第1脱硫処理時間td1と第2脱硫処理時間td2のリセット等の脱硫処理の終了の処理を行ってから、上級の制御スローにリターンする。
【0081】
なお、通常は、第3判定温度は第2判定温度よりも低く、第2判定時間は第1判定時間よりも短く設定される。これは、低温用のNOx吸蔵還元型触媒で使用するバリウムの方が高温用のNOx吸蔵還元型触媒で使用するカリウムよりも脱離し易いからである。そして、触媒の種類や排気ガス浄化装置10にもよるが、例えば、第2判定温度T2は700℃〜750℃程度に、第3判定温度T3は650℃〜700℃程度に設定され、第1判定時間t1は480s〜600s程度に、第2判定時間t2は180s〜300s程度に設定される。
【0082】
この脱硫処理の場合の排気ガス浄化方法によれば、触媒を高温にする必要がある脱硫処理において、第1指標温度Tc1が第2判定温度T2を超えてから第1判定時間t2を超えるまでは、筒状の仕切り壁13の遮熱構造により保温性がよく昇温が早い中央筒部12に排気ガスGを全量流して、この中央筒部11の脱硫処理を完了するまで行い、その後、保温構造により保温性がよいが中央筒部12に比べて触媒の昇温が遅れ易い外周部11に排気ガスGを全量流して外周部11の脱硫処理を集中的に行うことができる。
【0083】
そのため、中央筒部12の脱硫処理に際しては、中央筒部12からの熱移動を仕切り壁13で抑制しているので、中央筒部12の加熱処理時間を減らすことができ、また、外周部11の脱硫処理に際しては、仕切り壁13と保温構造14とで外周部11からの熱移動を抑制しているので、外周部11の加熱処理時間も減らすことができる。そのため、各部分の昇温を迅速に行うことができ、触媒全体の脱硫処理を効率よく行うことができ、脱硫処理のために必要となる時間と燃料消費量を減少できる。
【0084】
その上、脱硫処理の前半で、中央筒部12だけを脱硫処理し、脱硫処理の後半で外周部11だけを脱硫処理して、排気ガスが通過し難く温度も上がり難い触媒の外周部を、執拗に脱硫処理することで、触媒の全体に亘って十分な脱硫を行うことができる。そのため、浄化能力を良好な状態に維持できる。
【0085】
その結果、触媒の浄化性能の維持に必要な還元処理、言い換えれば、触媒の浄化能力を回復する再生処理のための時間や回数を減少できるので、この再生処理で必要な燃料消費量を低減できる。従って、車両に搭載する触媒の容量を減少して、搭載性を確保すると共にコストを低減することができる。また、脱硫処理において、冷え易い触媒の外周部のみを高温に加熱することで中央筒部が過剰な高温に晒されて触媒が劣化することを抑制することができる。
【0086】
なお、上記の図6及び図7の制御フローでは、脱硫処理の回数は、中央筒部12と外周部11とで同じ回数となるが、更に、硫黄処理を外周部11と中央筒部12とに分けて行うように構成すれば、比較的硫黄の吸着し難い外周部11の処理回数を減らすことができるので、より燃料消費量を低減することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の実施の形態の排気ガス浄化システムの構成を示す図である。
【図2】排気ガス浄化装置の排気ガスの入口の構成を示す図である。
【図3】排気ガス浄化装置の横断面を示す図である。
【図4】排気ガス浄化装置の筒状の仕切り壁の構成を示す図3のHで示す楕円部分の拡大図である。
【図5】本発明に係る排気ガス浄化方法の暖機運転及び低負荷運転の場合の制御フローの一例を示す図である。
【図6】本発明に係る排気ガス浄化方法の脱硫処理に場合の制御フローの一例の前半を示す図である。
【図7】図6の制御フローの後半を示す図である。
【符号の説明】
【0088】
1 排気ガス浄化システム
2 エンジンの排気通路
3 エンジン制御装置(ECU)
10 排気ガス浄化装置
11 外周部
12 中央筒部
13 仕切り壁
13a 波板
13b、13c 板(二重壁)
13d 空間部
14 保温構造
15 第1通路
16 第1バルブ
17 第2通路
18 第2バルブ
19、20、21 熱電対
G 排気ガス
T1 第1判定温度
T2 第2判定温度
T3 第3判定温度
Tc1 第1指標温度
Tc2 第2指標温度
Tg 排気ガスの温度
t1 第1判定時間
t2 第2判定時間
td1 第1脱硫処理時間
td2 第2脱硫処理時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガス中の有害成分を浄化する触媒を担持した排気ガス浄化装置を備えた排気ガス浄化システムにおいて、
前記排気ガス浄化装置の触媒を担持した部分を筒状の仕切り壁により外周部と中央筒部の二つに分けて、内燃機関の排気通路と前記外周部との間に第1バルブを、前記排気通路と前記中央筒部との間に第2バルブを設け、前記第1バルブを開くことにより排気ガスを前記外周部に流し、前記第2バルブを開くことにより排気ガスを前記中央筒部に流すように構成すると共に、
前記筒状の仕切り壁を遮熱構造に形成したことを特徴とする排気ガス浄化システム。
【請求項2】
前記中央筒部の触媒の温度を指標する第1指標温度が予め設定した第1判定温度以下では、前記第1バルブを閉じると共に前記第2バルブを開いて排気ガスを前記中央筒部のみに流し、前記第1指標温度が前記第1判定温度を越えたときには、前記第2バルブを開いたまま前記第1バルブを開いて排気ガスを前記中央筒部と前記外周部の両方に流すことを特徴とする請求項1記載の排気ガス浄化システム。
【請求項3】
前記触媒としてNOx吸蔵還元型触媒を用いると共に、前記中央筒部には、NOx吸蔵材としてカリウムを担持させ、前記外周部には、NOx吸蔵材としてバリウムを担持させたことを特徴とする請求項1又は2記載の排気ガス浄化システム。
【請求項4】
脱硫処理を行っている場合に、前記中央筒部の触媒の温度を指標する第1指標温度が予め設定した第2判定温度以下では、前記第1バルブを閉じると共に前記第2バルブを開いて排気ガスを前記中央筒部のみに流し、前記第1指標温度が前記第2判定温度を超えてから、前記第1指標温度が前記第2判定温度を超えた時間の総和である第1脱硫処理時間が予め設定された第1判定時間を経過するまでは、前記第1バルブと前記第2バルブの開閉状態をそのまま継続し、前記第1脱硫処理時間が前記第1判定時間を経過したときに、前記第1バルブを開いて前記第2バルブを閉じて排気ガスを前記外周部のみに流し、更に、前記外周部の触媒の温度を指標する第2指標温度が予め設定した第3判定温度を超えると、前記第2指標温度が前記第3判定温度を超えた時間の総和である第2脱硫処理時間が予め設定した第2判定時間を経過するまでは、前記第1バルブと前記第2バルブの開閉状態をそのまま継続し、前記第2脱硫処理時間が前記第2判定時間を経過すると、脱硫処理を終了することを特徴とする請求項1、2又は3記載の排気ガス浄化システム。
【請求項5】
排気ガス中の有害成分を浄化する触媒を担持した排気ガス浄化装置を備えた排気ガス浄化システムの排気ガス浄化方法において、
前記排気ガス浄化装置の触媒を担持した部分を筒状の仕切り壁により外周部と中央筒部の二つに分けて前記筒状の仕切り壁を遮熱構造に形成して前記外周部と前記中央筒部との間を遮熱し、
前記中央筒部の触媒の温度を指標する第1指標温度が予め設定した第1判定温度以下では、内燃機関の排気通路と前記外周部との間に設けた第1バルブを閉じると共に、前記排気通路と前記中央筒部との間に設けた第2バルブを開いて排気ガスを前記中央筒部のみに流し、前記第1指標温度が前記第1判定温度を越えたときには、前記第2バルブを開いたまま前記第1バルブを開いて排気ガスを前記中央筒部と前記外周部の両方に流すことを特徴とする排気ガス浄化方法。
【請求項6】
脱硫処理を行っている場合に、前記中央筒部の触媒の温度を指標する第1指標温度が予め設定した第2判定温度以下では、前記第1バルブを閉じると共に前記第2バルブを開いて排気ガスを前記中央筒部のみに流し、前記第1指標温度が前記第2判定温度を超えてから、前記第1指標温度が前記第2判定温度を超えた時間の総和である第1脱硫処理時間が予め設定された第1判定時間を経過するまでは、前記第1バルブと前記第2バルブの開閉状態をそのまま継続し、前記第1脱硫処理時間が前記第1判定時間を経過したときに、前記第1バルブを開いて前記第2バルブを閉じて排気ガスを前記外周部のみに流し、更に、前記外周部の触媒の温度を指標する第2指標温度が予め設定した第3判定温度を超えると、前記第2指標温度が前記第3判定温度を超えた時間の総和である第2脱硫処理時間が予め設定した第2判定時間を経過するまでは、前記第1バルブと前記第2バルブの開閉状態をそのまま継続し、前記第2脱硫処理時間が前記第2判定時間を経過すると、脱硫処理を終了することを特徴とする請求項5記載の排気ガス浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−48111(P2010−48111A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211122(P2008−211122)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】