説明

排気ガス浄化装置

【課題】フィルタをさらに効率良く再生できる排気ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】排気ガス浄化装置1は、排気管7と、排気管7に設けられて排気ガス中に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタ4と、フィルタ4に堆積した粒子状物質を除去する再生機構を有する。再生機構は、フィルタ4の上流において排気ガスに未燃燃料を添加する未燃燃料添加器3と、排気ガスの温度を検出する排気ガス温度検出器と、エンジン10に供給される空気流量を検出する空気流量検出器と、空気流量検出器から得た空気流量に基づいて下限温度閾値を決定しかつ排気ガス温度検出器から得た排気ガスの温度が下限温度閾値よりも高い場合に未燃燃料添加器3を制御して未燃燃料を排気ガスに添加する制御ユニット6を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガス浄化装置は、例えば排気管と、排気管に設けられて排気ガス中に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタと、フィルタに堆積した粒子状物質を除去する再生機構を有する。再生機構は、排気ガスに未燃燃料を添加する未燃燃料添加器を有し、フィルタに堆積した粒子状物質を未燃燃料によって燃焼させる。特許文献1に記載の再生機構は、フィルタの上流側に設けられるNOx触媒と、排気ガス温度から触媒の床温を推定する制御ユニットを有する。制御ユニットは、推定した触媒の床温に応じた空気量の上限流量閾値を決定し、上限流量閾値よりもエンジンの吸気量が多い場合に未燃燃料の添加量を少なくするように未燃燃料添加器を制御する。これにより未燃燃料が十分に酸化されずに排出されることを抑制する。
【0003】
特許文献2に記載の再生機構は、フィルタの上流側に設けられるNOx触媒と、エンジン始動時からの総吸気量を算出する制御ユニットを有する。制御ユニットは、他の再生条件が満たされた時に総吸気量が基準値より多い場合に未燃燃料添加器を制御して未燃燃料を添加することで排気ガス浄化装置の再生を行い、少ない場合に未燃燃料を添加しない。これにより総吸気量が多い場合は、粒子状物質が燃焼した時に、排気ガスがフィルタから熱を持ち去る量が多いため、フィルタが高温限度を超えることが避けられる。総吸気量が少ない場合は、排気ガスがフィルタから熱を持ち去る量が少ないので、未燃燃料を添加せずフィルタの再生を行わないことによって高温限度を超えることが避けられる。かくして高温限度を超えることでフィルタの浄化機能が低下することが抑制され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−321614号公報
【特許文献2】特開2005−83252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしフィルタをさらに効率良く再生できる排気ガス浄化装置が従来必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの構成を備える排気ガス浄化装置であることを特徴とする。一つの特徴によると本発明は、排気管と、排気管に設けられて排気ガス中に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタと、フィルタに堆積した粒子状物質を除去する再生機構を有する。再生機構は、フィルタの上流において排気ガスに未燃燃料を添加する未燃燃料添加器と、排気ガスの温度を検出する排気ガス温度検出器と、エンジンに供給される空気流量またはエンジンから排出される空気流量を検出する空気流量検出器と、空気流量検出器から得た空気流量に基づいて下限温度閾値を決定しかつ排気ガス温度検出器から得た排気ガスの温度が下限温度閾値よりも高い場合に未燃燃料添加器を制御して未燃燃料を排気ガスに添加する制御ユニットを有する。
【0007】
本発明者は、誠意研究した結果、排気管の壁温度が所定温度よりも低い場合に、例えば未燃燃料の沸点よりも低い場合に、未燃燃料が排気管の壁に液状として溜まる場合があることに気付いた。また本発明者は、排気管を流れる排気ガス(空気)の流量が多いほど、排気管の壁温度が排気ガス温度検出器の検出する排気ガスの温度に近くなることに着目した。すなわち排気管を流れる排気ガスの流量が多いほど、排気ガスが排気管の壁に触れる量が大きくなり、排気ガスから排気管の壁に熱が移動する量が多くなる。したがって排気管を流れる排気ガスの流量が多いほど、排気管の壁温度は排気ガスの温度に近くなり、排気管の壁温度が高くなる。一方、排気ガスの流量が少ない場合、排気ガスは主に排気管の中心部を通過し、排気ガスが排気管の壁に触れる量が減少するので、排気管の壁温度と排気ガスの温度との差が大きくなる。
【0008】
本発明によると、排気管の壁温度が所定温度以上になる条件を満たした際に未燃燃料を添加する。すなわち排気管の壁温度は、排気ガスの温度のみならず排気ガスの流量すなわち空気流量に応じて変化する。これに対して制御ユニットは、空気流量に応じる温度として下限温度閾値を決定し、下限温度閾値と排気ガス温度に関連する温度を比較して、未燃燃料を添加するか否かを決定する。そのため排気管の壁温度が所定温度以上になった際に未燃燃料を添加し得る。また空気流量に応じて未燃燃料を添加するため、空気流量に係らずに未燃燃料を添加するか否かを判断しない形態に比べて、未燃燃料を添加し得る領域を広くされ得る。そのため粒子状物質を燃焼させる再生時間を長くすることができ、フィルタを効果的に再生し得る。また排気管に未燃燃料が溜まることを避けることができ、燃料消費の無駄が少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】排気ガス浄化装置を搭載したエンジンの構成図である。
【図2】下限温度閾値を示す流量―温度線図である。
【図3】フィルタ再生のフローチャートである。
【図4】フィルタ再生の他のフローチャートである。
【図5】車両走行時におけるフィルタ再生と堆積PM量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一つの実施の形態を図1〜5にしたがって説明する。図1に示すエンジン10は、排気ガス浄化装置1を有するディーゼルエンジンである。エンジン10は、複数(例えば4つ)の気筒11と吸気管8と排気管7を有する。
【0011】
吸気管8は、図1に示すように一つの入口から分岐して各気筒11に連通する。吸気管8は、入口から新気(空気)を取り込み、各気筒11に供給する。吸気管8には流量検出器2が設けられる。流量検出器2は、エアフローメータであって、吸気管8からエンジン10に導入される新気の流量を測定し、空気流量情報を制御ユニット6に検知信号として発信する。流量検出器2の下流に吸気絞り弁16が設けられる。吸気絞り弁16の開度は、絞り弁センサ17によって制御ユニット6に発信され、絞り弁センサ17を介して制御ユニット6からの制御信号によって制御される。吸気管8は、吸気絞り弁16の吸気下流において分岐して各気筒11に接続される。
【0012】
各気筒11は、図1に示すようにシリンダ11aとシリンダ11a内を移動するピストン11bを有する。気筒11に燃料噴射器13が設けられる。燃料噴射器13は、コモンレール15を介して燃料ポンプ14に接続される。燃料ポンプ14は、制御ユニット6によって制御されて、燃料を燃料タンク12から汲み上げ、燃料噴射器13に供給する。燃料噴射器13は、制御ユニット6によって制御されて、気筒11内の燃焼室に燃料を供給する。
【0013】
排気管7は、図1に示すように排気ガス上流管7a、第一収納管7b、第二収納管7c、排気ガス下流管7dを有する。排気ガス上流管7aは、各気筒11から延出しかつ集合し、第一収納管7bに接続される。第一収納管7bは、排気ガス上流管7aよりも径が大きく、排気ガス上流管7aから延出する。第二収納管7cは、第一収納管7bよりも径が大きく、第一収納管7bから延出する。排気ガス下流管7dは、第二収納管7cよりも径が小さく、第二収納管7cから延出する。排気ガス下流管7dの端部には、排気ガスを大気に放出する出口が形成される。
【0014】
図1に示すように排気ガス浄化装置1は、フィルタ4と再生機構を有する。フィルタ(DPF:Diesel Particular Filter)4は、セラミック、ステンレス等から形成される。フィルタ4は、第二収納管7cに収納される。フィルタ4は、排気ガスの通過を許容し、通過する排気ガスから粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕捉する。
【0015】
再生機構は、フィルタ4を連続して再生させる機構であって、図1に示すように酸化触媒9と未燃燃料添加器3を有する。酸化触媒9は、フィルタ4の上流の第一収納管7bに収納される。酸化触媒9は、排気ガスが通過することを許容し、通過する排気ガス中の窒素酸化物(NOx)をより二酸化窒素(NO2)の多い状態にする。酸化触媒9は、所定温度(例えば250―300℃程度)において二酸化窒素を生成する。二酸化窒素は、強い酸化作用を有するため、フィルタ4に堆積した粒子状物質を比較的低い温度(例えば約200℃)にて酸化除去する(燃焼させる)。
【0016】
未燃燃料添加器3は、図1に示すように酸化触媒9の上流の排気ガス上流管7aに設けられる。未燃燃料添加器3は、燃料ポンプ14に接続され、制御ユニット6によって制御される制御弁を有する。未燃燃料添加器3の制御弁が開くことで、燃料ポンプ14から排気管7内の排気ガスに未燃燃料が添加される。未燃燃料は、フィルタ4に堆積した粒子状物質を二酸化窒素の多い雰囲気にて燃焼させる。これによりフィルタ4が連続して再生される。
【0017】
排気管7には、図1に示すように上流側排気ガス温度検出器5aと下流側排気ガス温度検出器5bとA/Fセンサ22が設けられる。上流側排気ガス温度検出器5aは、温度センサであって、第一収納管7bに設けられる。下流側排気ガス温度検出器5bは、温度センサであって、第二収納管7cに設けられる。
【0018】
上流側排気ガス温度検出器5aは、酸化触媒9の上流側の排気ガスのガス温度を検出して、排気ガス温度情報を制御ユニット6に検知信号として発信する。下流側排気ガス温度検出器5bは、フィルタ4の下流側の排気ガスのガス温度を検出して、排気ガス温度情報を制御ユニット6に検知信号として発信する。A/Fセンサ22は、排気ガス下流管7dに設けられる。A/Fセンサ22は、空燃比(空気質量を燃料質量で割ったもの)を検出して、空燃比情報を制御ユニット6に検知信号として発信する。
【0019】
エンジン10には、図1に示すようにEGR(排気ガス再循環)システムが設けられる。EGRシステムは、EGR管18とEGR弁19を有する。EGR管18は、排気管7と吸気管8を連通して、排気管7に排出された排気ガスの一部を吸気管8に戻す。EGR弁19は、制御ユニット6によって制御されて開度が調整され、EGR管18によって循環するガス流量を調整する。制御ユニット6は、流量検出器2やEGR弁19の開度により空気流量を検出する。
【0020】
制御ユニット(ECU)6は、プログラムとデータを記憶するROM、各種処理を行うCPU、CPUの処理結果等を記憶するRAM、外部との情報のやり取りを行う入・出力ポートを有する。入力ポートに回転速度検知器20とアクセルセンサ21と絞り弁センサ17等が接続される。
【0021】
回転速度検知器20は、クランクシャフトの近傍に設けられてクランクシャフトの回転位置を検知する位置センサを有し、クランクシャフトの回転速度を検知する。回転速度検知器20は、クランクシャフトの回転速度情報を制御ユニット6に検知信号として発信する。アクセルセンサ21は、アクセルペダルの近傍に設けられてアクセルペダルが踏み込まれた量を検知する。アクセルセンサ21は、アクセルペダルの移動量に対応したアクセルペダル情報を制御ユニット6に検知信号として発信する。
【0022】
制御ユニット6は、入力ポートに接続された各機器から信号を受信し、受信した信号に基づいて出力ポートに接続された絞り弁センサ17、燃料噴射器13、燃料ポンプ14、未燃燃料添加器3、EGR弁19等を制御する。
【0023】
制御ユニット6のROMには、フィルタ再生を実行する際に使用する下限温度閾値マップが記憶されている。下限温度閾値マップは、制御ユニット6が未燃燃料を排気ガスに添加の有無の判断時に利用する下限温度閾値を取得するために使用される。下限温度閾値は、排気ガスが排気管7の壁に接触した際に未燃燃料が液状になって排気管7に溜まることを避け得る温度である。
【0024】
排気管7の壁温度は、排気ガスの温度と排気ガスの流量に依存する。排気管7の壁温度と排気ガスの温度は、通常、差を有しており、その差は、排気ガス流量(空気流量)によって異なる。すなわち排気ガスの流量が少ない場合、排気ガスが排気管7の壁と接触する量が少なく、熱交換するエネルギ量が少ない。そのため排気管7の壁温度と排気ガスの温度の差が大きく、排気管7の壁温度が低くなる。一方、排気ガスの流量が多い場合は、排気ガスが排気管7の壁と接触する量が多く、熱交換するエネルギ量が多い。そのため排気管7の壁温度と排気ガスの温度の差が小さくなり、排気管7の壁温度が高くなる。
【0025】
排気管7の壁温度を所定以上にするためには、排気ガスの流量(空気流量)が多い場合には、排気ガスの温度が比較的低くても良い。一方、排気ガスの流量が少ない場合には、排気ガスの温度が比較的高くなくなる必要がある。図2に示すように排気管7の壁温度を温度線26以上にするためには、排気ガスの温度を排気ガス閾値温度線24よりも上側の領域(PM再生添加可能領域25)にする必要がある。
【0026】
図2に示すように排気ガス閾値温度線24は、空気流量が多くなるほどPM再生添加が可能となる特性を有する。排気ガス閾値温度線24の上側のPM再生添加可能領域25では、未燃燃料を添加した際に燃料が排気管7に溜まらない、あるいは溜まる量が非常に少ない。一方、排気ガス閾値温度線24の下側領域では、排気ガスに未燃燃料を添加した場合、未燃燃料が排気管7に溜まりやすい。
【0027】
下限温度閾値マップは、図2に対応するマップである。制御ユニット6は、下限温度閾値マップを用いて空気流量から下限温度閾値である排気ガス閾値温度を決定する。制御ユニット6は、排気ガス閾値温度よりも排気ガス温度が高い場合、すなわち図2に示すPM再生添加可能領域25において未燃燃料添加器3を制御して未燃燃料を排気ガスに添加する。排気ガス閾値温度よりも排気ガス温度が低い場合は、未燃燃料添加器3を制御して未燃燃料を排気ガスに添加しない。これにより未燃燃料は、排気管7に溜まらない温度領域でかつ広い領域で排気ガスに添加され得る。これにより排気管7に未燃燃料が溜まることが抑制され、かつ溜まった未燃燃料が大気に噴出することで生じ得る白煙の発生も抑制され得る。
【0028】
フィルタ4を再生するプロセスを図3にしたがって説明する。先ず制御ユニット6がフィルタ4前後の差圧を測定する図示しない差圧センサの出力に基づいて、フィルタの再生が必要と判断した場合に、制御ユニット6はフィルタ4を再生するプロセスをスタートする。
【0029】
制御ユニット6が上流側排気ガス温度検出器5aの発信信号に基づいて排気ガス温度を得る(ステップS1)。制御ユニット6が流量検出器2やEGR弁19からの発信信号に基づいて空気流量を得る(ステップS2)。制御ユニット6が下限温度閾値マップを用いて空気流量から排気ガス温度閾値を得る(ステップS3)。次に制御ユニット6は、排気ガスの温度が排気ガス温度閾値よりも高いか否かを判断する(ステップS4)。
【0030】
制御ユニット6は、ステップS4において排気ガスの温度が排気ガス温度閾値よりも高いと判断した場合、PM再生添加を許可する(ステップS5)。そして、下流側排気ガス温度検出器5bの値が所定の範囲内になるように、未燃燃料添加器3を制御して未燃燃料を排気管7内の排気ガスに一定期間添加し(ステップS6)、ステップ1に戻る。
【0031】
一方、ステップS4において排気ガスの温度が排気ガス温度閾値よりも低いと制御ユニット6が判断した場合、制御ユニット6は、PM再生添加を禁止して、未燃燃料添加器3の制御弁を閉じる。これにより未燃燃料は、排気管7内の排気ガスに添加されない(ステップS7)。そしてステップS1に戻る。
【0032】
そして、再生が終了するまで上記ステップS1〜S7を繰り返す。ステップS6による未燃燃料の添加の結果、差圧センサの出力により制御ユニット6がフィルタ4を再生するプロセスが終了(PM再生終了)したと判断した場合、ステップS8に移行し、このプロセスを終了する。
【0033】
フィルタ4を再生するプロセスは、図3に代えて図4に示すプロセスでも良い。図4のプロセスでは、先ず制御ユニット6がフィルタ4前後の差圧を測定する図示しない差圧センサの出力に基づいて、フィルタの再生が必要と判断した場合に、制御ユニット6はフィルタ4を再生するプロセスをスタートする。
【0034】
制御ユニット6が上流側排気ガス温度検出器5aの発信信号から排気ガス温度を得る(ステップS11)。制御ユニット6が流量検出器2やEGR弁19の発信信号から空気流量を得る(ステップS12)。制御ユニット6は、排気ガス温度と空気流量から排気管7の壁温度を推定する(ステップS13)。壁温度は、例えば排気ガス温度と空気流量から計算式を用いてあるいはマップを用いて決定される。
【0035】
次に、制御ユニット6は、壁温度閾値マップを用いて下限温度閾値として壁温度閾値を得る(ステップS14)。壁温度閾値マップは、予め適合により、例えば回転速度検知器20、アクセルセンサ21、車両の速度等から決定されるマップとして制御ユニット6のROMに記憶されている。制御ユニット6は、壁温度閾値マップを用いて壁温度閾値を得る。次に、制御ユニット6は、推定した排気管7の壁温度が壁温度閾値よりも高いか否か判断する(ステップS15)。
【0036】
制御ユニット6は、ステップS15において推定した排気管7の壁温度が壁温度閾値よりも高いと判断した場合、PM再生添加を許可する(ステップS16)。そして、下流側排気ガス温度検出器5bの値が所定の範囲内になるように、未燃燃料添加器3を制御して未燃燃料を一定期間排気ガスに添加し(ステップS17)、ステップS11に戻る。
【0037】
ステップS15において推定した排気管7の壁温度が壁温度閾値よりも低いと制御ユニット6が判断した場合、制御ユニット6は、PM再生添加を禁止し、未燃燃料添加器3の制御弁を閉じる。これにより未燃燃料は、排気ガスに添加されない(ステップS17)。そしてステップS11に戻る。
【0038】
そして、再生が終了するまで上記ステップS11〜S18を繰り返す。ステップS17による未燃燃料の添加の結果、差圧センサの出力により制御ユニット6がフィルタ4を再生するプロセスが終了(PM再生終了)したと判断した場合ステップS19に移行し、このプロセスを終了する。
【0039】
図5は、本形態によるフィルタ4の再生と、比較形態によるフィルタ4の再生の比較をまとめた結果である。本形態では、図2に示すように空気流量が多いほど下限温度閾値を下げてフィルタ4の再生を行う。比較形態では、下限温度閾値を図2の温度線27に示すように空気流量によらずに、かつ空気流量が少ない場合でも未燃燃料が排気管7に溜まる量が少ないように比較的高い温度で一定にした。
【0040】
図5に、エンジン10で車両を空気流量が多い状態で走行させ、排気ガスの温度が変化した場合の再生状態を表す。本形態は領域31においてフィルタ4の再生処理が行われる。一方、比較形態では領域32においてフィルタ4の再生処理が行われる。フィルタ4に堆積した粒子状物質は、再生処理の時間に比例して減少して本形態では図5の線33に従って減少し、比較形態では線34に従い減少した。したがって本形態は、比較形態に比べてフィルタ4に堆積した粒子状物質の再生を早く終了させ得る。
【0041】
以上のように排気ガス浄化装置1は、図1に示すように排気管7と、排気管7に設けられて排気ガス中に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタ4と、フィルタ4に堆積した粒子状物質を除去する再生機構を有する。再生機構は、フィルタ4の上流において排気ガスに未燃燃料を添加する未燃燃料添加器3と、排気ガスの温度を検出する排気ガス温度検出器(上流側排気ガス温度検出器5a)と、エンジン10に供給される空気流量を検出する流量検出器2と、流量検出器2やEGR弁19の開度から得た空気流量に基づいて下限温度閾値を決定しかつ上流側排気ガス温度検出器5aから得た排気ガスの温度から得た温度が下限温度閾値よりも高い場合に未燃燃料添加器3を制御して未燃燃料を排気ガスに添加する制御ユニット6を有する。
【0042】
排気管7の壁温度が所定温度よりも低い場合に、例えば未燃燃料の沸点よりも低い場合に、未燃燃料が排気管7の壁に液状として溜まる場合があることに気付いた。また本発明者は、排気管7を流れる排気ガス(空気)の流量が多いほど、排気管7の壁温度が排気ガスの温度に近くなることに着目した。すなわち排気管7を流れる排気ガスの流量が多いほど、排気ガスが排気管7の壁に触れる量が大きくなり、排気ガスから排気管7の壁に熱が移動する量が多くなる。したがって排気管7を流れる排気ガスの流量が多いほど、排気管7の壁温度は排気ガスの温度に近くなり、排気管7の壁温度が高くなる。一方、排気ガスの流量が少ない場合、排気ガスは主に排気管7の中心部を通過し、排気ガスが排気管7の壁に触れる量が減少するので、排気管7の壁温度と排気ガスの温度との差が大きくなる。
【0043】
本形態によると、排気管7の壁温度が所定以上になる条件を満たした際に未燃燃料を添加する。すなわち排気管7の壁温度は、排気ガスの温度のみならず排気ガスの流量すなわち空気流量に応じて変化する。これに対して制御ユニット6は、空気流量に応じる温度として下限温度閾値を決定し、下限温度閾値と排気ガス温度に関連する温度を比較して、未燃燃料を添加するか否かを決定する。そのため排気管7の壁温度が所定温度以上になった際に未燃燃料を添加し得る。また空気流量に応じて未燃燃料を添加するため、空気流量に係らずに未燃燃料を添加するか否かを判断しない形態に比べて、未燃燃料を添加し得る領域を広くされ得る。そのため粒子状物質を燃焼させる時間を長くすることができ、フィルタ4を効果的に再生し得る。また排気管7に未燃燃料が溜まることを避けることができ、再生を早く終了させることで燃料消費の無駄が少なくなる。
【0044】
本形態のフィルタ4の再生は、排気管7に未燃燃料が溜まることを避けるために排気管7の壁温度を考慮した再生を行う。しかし排気管7の壁温度を直接検知することなく、排気ガスの温度を利用してフィルタ4の再生を行う。したがって排気管7の壁に装着することが容易でないセンサを用いることなく、排気ガスの温度を利用して簡易に排気管7の壁温度を考慮した再生を行い得る。
【0045】
制御ユニット6は、空気流量が多いほど下限温度閾値を小さくする制御を有する。したがって排気管7の壁温度に対応して未燃燃料が添加され得る。すなわち排気管7の壁温度は、空気流量が多いほど、排気ガスの温度に近くなり高くなる。逆に排気管7の壁温度を所定温度以上にするために必要な排気ガス温度等は、空気流量が多いほど小さくなる。したがって下限温度閾値を用いることで、未燃燃料を広い領域において添加し得る。
【0046】
制御ユニット6は、下限温度閾値として排気ガス温度閾値を決定するマップを記憶しており、上流側排気ガス温度検出器5aから得た排気ガスの温度が排気ガス温度閾値よりも高い場合に未燃燃料を排気ガスに添加する(図3参照)。したがって制御ユニット6は、排気ガスの温度を基準として未燃燃料の添加の可否を決定する。
【0047】
制御ユニット6は、図4を参照するように流量検出器2やEGR弁19から得た空気流量と、上流側排気ガス温度検出器5aから得た排気ガス温度から排気管7の壁温度を推定し、推定した排気管7の壁温度と空気流量から下限温度閾値としての壁温度閾値を決定し、推定した排気管7の壁温度が壁温度閾値よりも高い場合に未燃燃料添加器3を制御して未燃燃料を排気ガスに添加する。したがって制御ユニット6は、排気管7の壁温度を基準として未燃燃料の添加の可否を決定する。
【0048】
流量検出器2は、エンジン10に供給される新気の流量を検出するエアフローメータを利用する。したがって空気流量は、エアフローメータによって直接的に測定される。
【0049】
排気管7は、図1に示すように未燃燃料添加器3の下流において径が異なる部分を有する。例えば排気ガス上流管7aと第一収納管7bと第二収納管7cと排気ガス下流管7dは、相互に異なる径を有する。径が異なる部分では、排気ガスの流れの遅い部分が生じやすく、流れの遅い部分において未燃燃料が液体として溜まる可能性が高い。これに対して本形態では、未燃燃料が液体として溜まらないように排気管7の壁温度を考慮して未燃燃料を添加する。
【0050】
本発明は、上記実施の形態に限定されず、以下の形態等であっても良い。例えば排気ガス浄化装置1は、上記実施の形態のように流量検出器2としてエンジンに供給される空気流量を検出するエアフローメータを有していても良いし、未燃燃料添加器3の上流においてエンジンから排出される空気流量を検出するエアフローメータを有していても良い。
【0051】
排気ガス浄化装置1は、空気流量を検出する流量検出器2やEGR弁19の代わりとしてとして温度センサと過給圧センサとを利用する形態でも良い。温度センサと過給圧センサは、気筒11の上流に設けられ、吸入空気の温度と図示省略の過給機によって加圧された気筒11の上流の圧力とを検出し、検出情報を制御ユニット6に検知信号として発信する。この形態においては、制御ユニット6は、過給圧センサから得た圧力と、回転速度検知器20からの回転速度から得られるエンジン回転数と、気筒11の上流に設けられて気筒11の上流のガス温度を測定する温度センサから得た温度から空気流量を算出する。
【0052】
排気ガス浄化装置1は、空気流量を検出する流量検出器2としてA/Fセンサ22を利用する形態でも良い。制御ユニット6は、A/Fセンサ22から得た空燃比と、燃料噴射器13によって気筒11に噴射した燃料噴射量から空気流量を算出しても良い。
【0053】
排気ガス浄化装置1は、排気管7の排気ガス中に未燃燃料を添加する未燃燃料添加器3を有していても良いし、燃焼行程後の気筒11に未燃燃料をポスト噴射する燃料噴射器13を利用する形態でも良い。
【0054】
排気ガス温度検出器(上流側排気ガス温度検出器5a)は、排気管7の第二収納管7c内においてフィルタ4の上流側に設けられても良いし、排気管7の他の場所に設けられても良い。
【0055】
制御ユニット6は、空気流量が多いほど未燃燃料添加器3を制御して未燃燃料を排気ガスに添加する下限温度閾値を小さくしていたが、エンジンの運転条件などにより、排気ガスによる熱の持ち去りが、未燃燃料の添加によるフィルタ4の昇温よりも大きいことが下流側排気ガス温度検出器5bの検出値より判定された場合は、空気流量に関わらず未燃燃料の添加を中止しても良い。
【0056】
排気ガス浄化装置1の再生機構は、フィルタ4に堆積した粒子状物質を二酸化窒素の多い雰囲気下において燃焼しても良いし、酸素雰囲気において燃焼しても良い。
【符号の説明】
【0057】
1 排気ガス浄化装置
2 流量検出器
3 未燃燃料添加器
4 フィルタ
5a 上流側排気ガス温度検出器(排気ガス温度検出器)
5b 下流側排気ガス温度検出器
6 制御ユニット
7 排気管
8 吸気管
9 酸化触媒
10 エンジン
11 気筒
12 燃料タンク
13 燃料噴射器
14 燃料ポンプ
20 回転速度検知器
21 アクセルセンサ
22 A/Fセンサ
24 排気ガス閾値温度線
25 再生添加可能領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気ガス浄化装置であって、
排気管と、前記排気管に設けられて排気ガス中に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタと、前記フィルタに堆積した前記粒子状物質を除去する再生機構を有し、
前記再生機構は、前記フィルタの上流において前記排気ガスに未燃燃料を添加する未燃燃料添加器と、前記排気ガスの温度を検出する排気ガス温度検出器と、前記エンジンに供給される空気流量または前記エンジンから排出される空気流量を検出する空気流量検出器と、前記空気流量検出器から得た前記空気流量に基づいて下限温度閾値を決定しかつ前記排気ガス温度検出器から得た前記排気ガスの温度が前記下限温度閾値よりも高い場合に前記未燃燃料添加器を制御して前記未燃燃料を前記排気ガスに添加する制御ユニットを有する排気ガス浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排気ガス浄化装置であって、
前記未燃燃料添加器と前記フィルタの間に酸化触媒が配置されている排気ガス浄化装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の排気ガス浄化装置であって、
前記制御ユニットは、前記空気流量が多いほど前記下限温度閾値を小さくする制御を有する排気ガス浄化装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の排気ガス浄化装置であって、
前記制御ユニットは、前記下限温度閾値として排気ガス温度閾値を決定するマップを記憶しており、前記排気ガス温度検出器から得た前記排気ガスの温度が前記排気ガス温度閾値よりも高い場合に前記未燃燃料を前記排気ガスに添加する排気ガス浄化装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の排気ガス浄化装置であって、
前記制御ユニットは、前記空気流量検出器から得た前記空気流量と、前記排気ガス温度検出器から得た前記排気ガス温度から前記排気管の壁温度を推定し、推定した前記排気管の壁温度と前記空気流量以外の条件からなるマップから壁温度閾値を決定し、推定した前記排気管の壁温度が前記壁温度閾値よりも高い場合に前記未燃燃料添加器を制御して前記未燃燃料を前記排気ガスに添加する排気ガス浄化装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の排気ガス浄化装置であって、
前記空気流量検出器は、前記エンジンに供給される新気の流量を検出するエアフローメータ、前記排気ガスに含まれる空気と燃料の比率を検出するA/Fセンサ、前記エンジンの気筒に供給される空気の圧力を検出する過給圧センサのうちの1つを利用する排気ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−44238(P2013−44238A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180380(P2011−180380)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】