説明

排気ターボ過給機のハウジング構造

【課題】EGRガス、及びブローバイガスと空気通路を流れる主流(空気)との干渉、及び圧力損失の低減と、コンプレッサインペラ上流の流速分布の歪を抑制することでコンプレッサインペラの高効率化と、EGRガスの適正量の導入を確保すること。
【解決手段】排気ターボ過給機のコンプレッサハウジング11内に形成されコンプレッサインペラ3の上流の空気通路15に開口された第1還流口42と、コンプレッサインペラ3外周部位に形成された第2還流口43とを連通する再循環通路41を有するケーシングトリートメント4と、再循環通路41に連通してEGRガス及び、ブローバイガスを再循環通路41に流入させる戻り口14を有する混入管6とを備えたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ターボ過給機を備えるディーゼルエンジンに用いられる排気ガス再循環を行う排気ターボ過給機のハウジング構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等のエンジンにおける窒素酸化物(NOx)の排出規制が厳しくなっている。
ディーゼルエンジン(以後「エンジン」と称す)では排気ガスのNOx低減を図るため、排気ガスの一部をエンジンに還流させる排気ガス再循環(以後「EGR」と称す)が行われているが、エンジンの給気圧力が高い時でもEGRが行えるように、EGRガスを圧力の低いターボチャージャのコンプレッサインペラの上流側に還流させている。
また、エンジンのピストンとシリンダの間からすり抜ける未燃焼ガス(以後「ブローバイガス」と称す)がクランク室にたまるため、クランク室の圧力が上がるのを防止するため、ブローバイガスをEGRガスと同様にコンプレッサインペラの上流側に還流させている。
【0003】
図8は従来技術にかかるEGRガスをコンプレッサインペラの上流側の空気通路に導入する一例を示す特開2010−77833号公報(特許文献1)である。
図8において、メイン吸気通路011から分離したサブ吸気通路021は気液分離器06の第2円筒部06acに対して、第2円筒部06acの内周部に沿うようにして接続されている。
そのため、サブ吸気通路021から気液分離器06に流入するEGRガスは、気液分離器06の第2円筒部06ac及び、第1円筒部06abの内周面に沿って流れ、この内面に沿った旋回力を有するようになる。
この旋回力を有するEGRガスの流れは、メイン吸気通路011から吸入される空気(外気)と合流して、空気に旋回力を与え、EGRガス及び空気の混合ガスは第2円筒部06ac及び第1円筒部06abの内周面に沿った旋回流を発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−77833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術においては、混合ガスがコンプレッサホイール02cの上流側の空気通路に導入されるため、偏流した混合ガスがコンプレッサホイール02cに吸込まれることになり、混合ガスの流通抵抗が大きくなりコンプレッサ性能低下をまねく要因となる。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、EGRガス及び、ブローバイガスを、コンプレッサインペラ外周部位のケーシングトリートメントに形成された再循環通路を介して、コンプレッサインペラの上流側の空気通路へ導入することで、EGRガス及び、ブローバイガス流入時の空気通路を流れる主流(空気)との干渉を低減し、圧力損失の低減とコンプレッサインペラ上流の流速分布の歪を抑制することでコンプレッサインペラの高効率化と、EGRガス及び、ブローバイガスの主流(空気)との適正な混合を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はかかる課題を解決するため、排気ターボ過給機のコンプレッサインペラを内嵌するハウジング構造において、前記ハウジング内に形成され前記コンプレッサインペラ上流の空気通路に開口された第1還流口と前記コンプレッサインペラ外周部位の前記空気通路に形成された第2還流口とを連通し、前記コンプレッサインペラ外周部位に周方向へ環状に形成された再循環通路を有するケーシングトリートメントと、
前記再循環通路に開口してEGRガス及び、ブローバイガスの少なくともいずれか一方を前記再循環通路に流入させる戻り口を有する混入管とを備えたことを特徴とする。
【0008】
このような構成により、再循環通路をチャンバーとして利用することで、EGRガス及び、ブローバイガスの空気通路を流れる空気主流との干渉を抑制して流速分布の均一化をはかり、コンプレッサの高効率化が図れる。
更に、再循環通路をチャンバーとして利用することで、EGRガス及び、ブローバイガスの周方向流出分布の均一化を図ることができると共に、混入量を増加することが容易にできる。
空気主流の小流量時(エンジン低・中出力時)は、再循環通路内に排気ガス及びブローバイガスが一旦溜まることにより、空気通路の空気主流との干渉による圧力損失低減ができる。
一方、空気主流の大流量時(エンジン出力が大の時)は第2還流口から圧力の低いコンプレッサインペラの内部にEGRガス及び、ブローバイガスの導入が可能となり、効果的な排ガス浄化対策が可能となる。
【0009】
また、本発明において好ましくは、前記第1還流口の前記空気通路に面した開口は、前記コンプレッサインペラの前端縁に向けて傾斜させるとよい。
【0010】
このような構成により、空気通路を流れる空気主流との干渉を低減し、圧力損失の低減とコンプレッサインペラ上流の流速分布の歪を抑制することでコンプレッサの高効率が可能となる。
【0011】
また、本発明において好ましくは、前記ケーシングトリートメントの前記再循環通路に連通路を介して連通するチャンバーを配設し、該チャンバーに前記再循環通路に流入させる前記戻り口を配設させるとよい。
【0012】
このような構成により、ケーシングトリートメントとチャンバーとを連結させることにより、EGRガス及び、ブローバイガスの周方向における流出分布の均一化を図ることができると共に、混入量を増加することができる。
また、排気ガス及び、ブローバイガスに含まれるオイル、煤などの不純物をチャンバー内で分離し、溜めることが可能となり、コンプレッサインペラの汚損を防止できる。
【0013】
また、本発明において好ましくは、前記第1還流口と前記戻り口又は前記連通路が前記空気通路に対し略一直線状に配設され、EGRガス及び、ブローバイガスが再循環通路内で澱まないようにして、前記空気通路へ滑らかに導入されるようにするとよい。
【0014】
このような構成により、第1還流口と戻り口又は連結通路が空気通路に対し略一直線状に配設することにより、利用頻度の高い空気主流の小流量時(エンジン出力が小・中の時)において、チャンバー内及び、再循環通路内に置ける排気ガス及びブローバイガスの流れに乱れが生じ難いので、主流空気との混合も滑らかに合流させて圧力損失を低減させる。
【0015】
また、本発明において好ましくは、前記ケーシングトリートメントの前記再循環通路に連通した前記連通路を有するチャンバーと、該チャンバーと連通すると共に、前記第1還流口の前記空気通路上流側に、前記第1還流口と略並列に配設された開口を有し、該開口を前記コンプレッサインペラの前端縁に向けて傾斜させた第3還流口とを備えるとよい。
【0016】
このような構成により、空気主流の大流量時(エンジン出力が大の時)には、EGRガス及び、ブローバイガスが第1及び、第3還流口にから空気主流に導入されると共に、コンプレッサインペラの圧力が低い内部に第2還流口からも導入することが可能となり適正なEGRガス量を導入することが可能となり、効果的な排気ガス対策ができる。
【発明の効果】
【0017】
再循環通路をチャンバーとして利用することで、EGRガス及び、ブローバイガスの空気通路を流れる空気主流との干渉を抑制して流速分布の均一化をはかり、コンプレッサの高効率化を図れる。
更に、再循環通路をチャンバーとして利用することで、EGRガス及び、ブローバイガスの周方向流出分布の均一化を図ることができると共に、導入量を増加することができ効果的なNOx対策が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る排気ターボ過給機におけるコンプレッサインペラの回転軸心上半分の要部拡大断面図を示す。
【図2】(A)は本発明の第1実施形態における主流の小流量時の再循環通路内における気流の流れを示し,(B)は主流の大流量時の再循環通路内における気流の流れを示す。
【図3】本発明の第2実施形態に係る図1対応図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る図1対応図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る図1対応図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係る図1対応図である。
【図7】本発明の第6実施形態に係る図1対応図である。
【図8】従来技術における排気ガス再循環システムの構成要部図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。
但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0020】
(第1実施形態)
図1に基づいて、本発明の第1実施形態に係る排気ターボ過給機におけるコンプレッサインペラの回転軸心上半分の要部断面図である。
図1において、1はコンプレッサで次のように構成されている。2はタービンロータで、一端側に吸気を圧縮するコンプレッサインペラ3が固定され、他端側に排気ガスによって回転駆動されるタービンホイール(図示省略)が固定されている。コンプレッサインペラ3とタービンホイールとは同軸で連結され、タービンロータ2の軸線L1を中心にして回転する。11はコンプレッサハウジング、15はコンプレッサハウジング11内のコンプレッサインペラ3の空気入口側に形成された空気通路である。
また、16はコンプレッサハウジング11内のコンプレッサインペラ3の出口に形成されたディフューザ部である。
【0021】
4はコンプレッサハウジング11内のコンプレッサインペラ3の外周部位に形成された環状の再循環通路41が形成されたケーシングトリートメントである。43は再循環通路41とコンプレッサインペラ3外周部位の空気通路とを接続する第2還流口、42は再循環通路41とコンプレッサインペラ3の入口の空気通路15とを接続する第1還流口である。
第1還流口42及び、第2還流口43は、環状の再循環通路41から円周方向に沿って好ましくは等間隔に複数個またはスリット状に設けられている。
【0022】
5は環状の再循環通路形成部材で、コンプレッサハウジング11のコンプレッサ1入口の空気通路15外周部位前端面に締結手段によって着脱自在に取付けられている。
再循環通路形成部材5の内周面5bとコンプレッサハウジング11の内周面41aとにより再循環通路41の第1還流口42を形成している。
第1還流口42は、再循環通路形成部材5とコンプレッサハウジング11の内周面41aにて排気混合ガスの通路が形成される。
そして、第1還流口42の開口は再循環通路形成部材5の内周面5bとコンプレッサハウジング11の内周面41aが共にコンプレッサインペラ3の前端縁に向くように傾斜している。
【0023】
再循環通路形成部材5は、コンプレッサ1入口の空気通路15に臨む面を直状に傾斜した外周案内面5aに形成されている。
尚、本実施形態では、外周案内面5aを直状に傾斜した形状としたが、円滑な曲面形状にすると、空気通路15の気流はより滑らかに流れる。
このように、再循環通路形成部材5のコンプレッサインペラ3の入口の空気通路15に臨む面を吸気が滑らかに流れるように形成することにより、コンプレッサインペラ3の入口の空気通路15の外周部位における流路抵抗の小さいコンプレッサインペラ3の入口の空気通路15を形成でき、当該部における圧力損失を低減できる。
【0024】
また、再循環通路41の外周部で、空気通路15方向部位にはEGRガス及び、又はブローバイガス(以後、EGRガス及び、又はブローバイガスを「排気混合ガス」と称す)が混入管6によって導入される戻り口14が形成されている。
混入管6によって導入された排気混合ガスは環状の再循環通路41内を空気通路15の外周に沿って流れ、再循環通路41内全域にいきわたるようになっている。
尚、戻り口14は環状の再循環通路41の円周方向に沿って好ましくは等間隔に複数個設けられている。
【0025】
かかる第1実施形態において、図示しないタービンによって回転駆動されるタービンロータ2を介してコンプレッサインペラ3が回転すると、コンプレッサインペラ3はコンプレッサ1入口の空気通路15を通して空気を吸入して加圧して、加圧空気はディフューザ部16及び、渦巻き部17を経てエンジンへと送出される。
図2(A)は本発明の第1実施形態における主流の小流量時の再循環通路41内における気流の流れを示す。
空気通路15を流れる吸気の主流が小さい時すなわち小流量時(エンジン中または、小出力時)は、空気通路15の圧力よりも、コンプレッサインペラ3内の圧力が高いため、再循環通路41の排気混合ガスは第1還流口42から空気通路15の主流に吸出されていく。
従って、再循環通路41は圧力が下がるので、戻り口14から排気混合ガスが導入されると共に、第2還流口からコンプレッサインペラ3内の空気が導入され、
排気混合ガスは、第1還流口から還流空気とともに空気通路15に低圧損で流入する。
【0026】
また、図2(B)は本発明の第1実施形態における主流の大流量時の再循環通路41内における気流の流れを示す。
空気通路15を流れる吸気の主流が大きい時すなわち大流量時(エンジン高出力時)は、空気通路15を流れる空気の速度が速く、コンプレッサインペラ3内の圧力が低いため、再循環通路41の排気混合ガスは第1還流口42から空気通路15の主流に吸出されると共に、第2還流口43からもコンプレッサインペラ3内に導入される。
その結果、空気通路15を流れる吸気の主流が大きい時は、主流に排気混合ガスが第1還流口42及び、第2還流口43からも混入されるので、排気混合ガスの主流への混合割合多くなり、NOx低減のための排気混合ガスが不足しないようになっている。
【0027】
第1実施形態によると、再循環通路41をチャンバーとして利用し、且つ第1還流口42の開口はコンプレッサインペラ3の前端縁に向くように傾斜しているので、排気混合ガスの空気通路15を流れる空気主流との干渉を抑制して流速分布の均一化をはかり、コンプレッサの高効率化を図れる。
更に、再循環通路41をチャンバーとして利用することで、排気混合ガスの周方向流出分布の均一化を図ることができると共に、混入量を増加することができる。
空気主流の小流量時は再循環通路のチャンバー作用により、空気通路15の空気主流との干渉による圧力損失低減ができる。
一方、空気主流の大流量時は第2還流口43から圧力の低いコンプレッサインペラ3の内部に排気混合ガスの導入が可能となり、効果的な排ガス浄化対策が可能となる。
【0028】
(第2実施形態)
本実施形態において、第1実施形態と同じものは同符号を付して、説明を省略する。
図3に基づいて本発明の第2実施形態にかかるコンプレッサインペラの回転軸心上半分の要部拡大断面図を示す。
【0029】
7はコンプレッサハウジング74内のコンプレッサインペラ3の外周部位に形成された環状の再循環通路71が形成されたケーシングトリートメントである。43は再循環通路71とコンプレッサインペラ3外周部位の空気通路とを接続する第2還流口、42は再循環通路71とコンプレッサインペラ3の入口の空気通路15とを接続する第1還流口である。
第1還流口42及び、第2還流口43は、環状の再循環通路71から円周方向に沿って好ましくは等間隔に複数個またはスリット状に設けられている。
また、環状の再循環通路71の外周側で、空気通路15を形成する外周壁から外方に壁75によって隔てられた環状のチャンバー72が形成されている。
再循環通路71とチャンバー72とを連結する連結通路73は、再循環通路71の外周部で、空気通路15方向の上流端部に形成され、且つ、連結通路73は、再循環通路71の第1還流路とタービンロータ2の軸線L1に対してラジアル方向で略同一直線上に位置している方が望ましい。
連結通路73は、環状のチャンバー72に沿って円周方向に好ましくは等間隔に複数個設けられている。
さらに、環状のチャンバー72には、混入管6が配設され、排気混合ガスは戻り口14からチャンバー72内に導入される。
後の構造は第1実施形態と同じなので、説明を省略する。
【0030】
第2実施形態によると、再循環通路71とチャンバー72とを連結通路73によって連結させることにより、チャンバー72による排気混合ガスの再循環通路71内における均一化がさらに進み、排気混合ガスの主流(空気)への混入を周方向で均一化できる。
また、環状のチャンバー72内に導入される排気混合ガスは、下流側部mにおいて、排気混合ガスに含まれていたオイル、煤などの不純物を取除き、堆積させことができるので、コンプレッサ1の汚損による性能低下を抑制できる。
尚、堆積した不純物は環状のチャンバーを伝わり、重力方向下側に流れる。最終的には定期メンテナンス時等において除去する。
【0031】
(第3実施形態)
本実施形態において、第1実施形態と同じものは同符号を付して、説明を省略する。
図4に基づいて本発明の第3実施形態にかかるコンプレッサインペラの回転軸心上半分の要部拡大断面図を示す。
【0032】
8はコンプレッサハウジング84内のコンプレッサインペラ3の外周部位に、空気通路15を形成する外壁の内側に形成された環状の再循環通路81及び、チャンバー82が形成されたケーシングトリートメントである。コンプレッサインペラ3の外周側に再循環通路81、該再循環通路81の外側に重合して環状のチャンバー82が形成されている。
再循環通路81及び、チャンバー82とを連結する連結通路83は、再循環通路形成部材5と、再循環通路81とチャンバー82とを隔てる隔壁85の前端縁86とにより形成され、該再循環通路形成部材5の先端部の内周面5bとコンプレッサハウジング74の内面84aとにより再循環通路81の第1還流口42を形成している。
また、連結通路83は再循環通路81及びチャンバー82の環状に沿って、好ましくは等間隔に複数個またはスリット状に設けられている。
【0033】
チャンバー82の外周部で、空気通路15方向中間部位には排気混合ガスが混入管6によって導入される戻り口14が形成されている。
混入管6から排気混合ガスを導入するように配置されている。
混入管6によって導入された排気混合ガスは環状のチャンバー82内を空気通路15の外周に沿って流れ、チャンバー82内全域にいきわたるようになっている。
後の構造は第1実施形態と同じなので、説明を省略する。
【0034】
第3実施形態によると、チャンバー82が空気通路15を形成する外壁の内側に形成されているので、排気ターボ過給機がコンパクトになり、エンジンへの搭載性が向上する。
また、混入管6から排気混合ガスを導入して、再循環通路81とチャンバー82とを隔てる隔壁85に排気混合ガスを隔隔壁85に直接あてるようにして、再循環通路81とチャンバー82とを隔てる隔壁85によって形成され、チャンバー82内の下流側部nに堆積させ、排気混合ガスに含まれていたオイル、煤などの不純物を取除くことができ、コンプレッサ1の汚損による性能低下を抑制できる。
【0035】
(第4実施形態)
本実施形態において、第1実施形態と同じものは同符号を付して、説明を省略する。
図5に基づいて本発明の第4実施形態にかかるコンプレッサインペラの回転軸心上半分の要部拡大断面図を示す。
【0036】
排気混合ガスを再循環通路41に導入させる混入管6と、戻り口14と、第1還流口42とがタービンロータ2の軸線L1に対し略直角で且つ、略同一直線上に配設されている。
上記以外は、第1実施形態と同じなので、説明は省略する。
【0037】
第4実施形態によると、利用頻度が高いと考えられる小流量時(エンジン中又は小出力時)において、排気混合ガスの流れを滑らかにして、空気通路15内の主流(空気)との合流を滑らかにして、圧力損失を低減し、排気ターボ過給機の性能を維持できる。
【0038】
(第5実施形態)
本実施形態において、第1及び第2実施形態と同じものは同符号を付して、説明を省略する。
図6に基づいて本発明の第5実施形態にかかるコンプレッサインペラの回転軸心上半分の要部拡大断面図を示す。
【0039】
7はケーシングトリートメント、43は再循環通路41の入口側とコンプレッサインペラ3外周部位の空気通路15とを接続する第2還流口、42は再循環通路41の出口側とコンプレッサインペラ3の入口側の空気通路15とを接続する第1還流口である。
また、環状の再循環通路71の外周側で、空気通路15を形成する外周壁から外方へ断面形状が矩形状に突出した状態で環状のチャンバー72が形成されている。
再循環通路71とチャンバー72とを連結する連結通路73は、再循環通路71の外周部で、空気通路15方向の上流端部に形成されている。連結通路73と第1還流口42は、タービンロータ2の軸線L1に対してラジアル方向で略同一直線上に位置している方が望ましい。
さらに、環状のチャンバー72には、空気通路15と流れと同一方向の中間部に排気混合ガスをチャンバー72内に導入させる混入管6が配設されている。
連結通路73は環状の再循環通路71に沿って好ましくは等間隔に複数個またはスリット状に設けられている。
後の構造は第1実施形態と同じなので、説明を省略する。
【0040】
第5実施形態によると、再循環通路71とチャンバー72とを連結通路73によって連結させることにより、チャンバー72による排気混合ガスの再循環通路71内における均一化がさらに進み、排気混合ガスの主流(空気)への混入を周方向で均一化できる。
また、環状のチャンバー72内に導入される排気混合ガスは、チャンバー72内の下流側部mにおいて、排気混合ガスに含まれていたオイル、煤などの不純物を取除き、堆積させことができるので、コンプレッサ1の汚損による性能低下を抑制できる。
さらに、利用頻度が高いと考えられる小流量時(エンジン中又は小出力時)において、排気混合ガスのチャンバー72及び再循環通路71内の流れを滑らかにして、空気通路15内の主流(空気)との合流を滑らかにして、圧力損失を低減し、排気ターボ過給機の性能を維持できる。
【0041】
(第6実施形態)
本実施形態において、第1実施形態と同じものは同符号を付して、説明を省略する。
図7に基づいて本発明の第6実施形態にかかるコンプレッサインペラの回転軸心上半分の要部拡大断面図を示す。
【0042】
図7において、10はコンプレッサハウジング、15はコンプレッサハウジング11内のコンプレッサインペラ3の空気入口側に形成された空気通路である。
4は環状の再循環通路41が形成されたケーシングトリートメントである。43は第2還流口、42は第1還流口である。
第1還流口42及び、第2還流口43は、環状の再循環通路41から円周方向に沿って好ましくは等間隔に複数個又はスリット状に設けられている。5は環状の再循環通路形成部材である。
【0043】
再循環通路形成部材5の空気通路の上流側に、該再循環通路形成部材5と間隔hを有して、空気通路15内に排気混合ガスを導入する第3還流口を形成する環状のガイド部材9が締結手段によって取付けられている。
また、再循環通路形成部材5の空気通路15に臨む面に形成された外周案内面5aと、ガイド部材9の外周案内面5aと対向した内周面9bによって、戻り口14からの排気混合ガスが空気通路15の主流(空気)に導入される排気混合ガス導入口91が形成されている。
排気混合ガス導入口91は、ガイド部材9の先端側の内周面9bに環状に通路(排気混合ガス導入口91)が形成されている。
排気混合ガス導入口91は環状のガイド部材9の周方向に好ましくは等間隔で複数又はスリット状に配設される。
【0044】
再循環通路41及び、ガイド部材9の外周部に空気通路15を形成する外周壁から外方へ環状のチャンバー103が形成されている。環状のチャンバー103は排気混合ガス導入口91に連通する第1連結路101及び再循環通路41に連結する第2連結路を有している。
そして、環状のチャンバー103の外周面で、空気通路の流通方向中間部には戻り口14と、該戻り口14に連結した混入管6が連結されている。
【0045】
本実施形態によれば、環状のチャンバー103に導入された排気混合ガスは空気通路外周に沿ってチャンバー103全体にいきわたり、空気通路15の排気混合ガス導入口91全周から均等に排気混合ガスを空気通路15内に導入できるようにした。
従って、ケーシングトリートメント4のコンプレッサインペラ3の上流側にある第1還流口42及び、排気混合ガス導入口91夫々からの排気混合ガスが主流(空気)に滑らかに混入される。
また、小流量時(エンジン低出力時)の場合、混入管6からチャンバー103内に導入された排気混合ガスは、第1連結路101から排気混合ガス導入口91へ、一方、第2連結路を介して再循環通路41に導入され、さらに、再循環通路41の第1還流口42から空気通路15内へ、導入される。
大流量時(エンジン高出力時)は、空気通路15を流れる空気の速度が速く、コンプレッサインペラ3内の圧力が低くなるため、再循環通路41の第2還流口43からも排気混合ガスはコンプレッサインペラ3内に導入される。
従って、大流量時においても、EGRガスが不足することなく、確実にNOx対策が行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
排気ターボ過給機を採用した内燃機関の排気ガスに含まれるNOx低減を図るため、排気ガスを内燃機関に還流させるため排気ターボ過給機のコンプレサ上流側に還流させて、NOxの排気ガス浄化対策を行う排気ターボ過給機に用いられるとよい。
【符号の説明】
【0047】
1 コンプレッサ
2 タービンロータ
3 コンプレッサインペラ
4,7,8 ケーシングトリートメント
5 再循環通路形成部材
6 混入管
9 ガイド部材
14 戻り口
15 空気通路
41 再循環通路
42 第1還流口
43 第2還流口
91 排気混合ガス導入口
L1 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ターボ過給機のコンプレッサインペラを内嵌するハウジング構造において、
前記ハウジング内に形成され前記コンプレッサインペラ上流の空気通路に開口された第1還流口と前記コンプレッサインペラ外周部位の前記空気通路に形成された第2還流口とを連通し、前記コンプレッサインペラ外周部位に周方向へ環状に形成された再循環通路を有するケーシングトリートメントと、
前記再循環通路に開口してEGRガス及び、ブローバイガスの少なくともいずれか一方を前記再循環通路に流入させる戻り口を有する混入管とを備えたことを特徴とする排気ターボ過給機のハウジング構造。
【請求項2】
前記第1還流口の前記空気通路に面した開口は、前記コンプレッサインペラの前端縁に向けて傾斜していることを特徴とする請求項1記載の排気ターボ過給機のハウジング構造。
【請求項3】
前記ケーシングトリートメントの前記再循環通路に連通路を介して連通するチャンバーを配設し、該チャンバーに前記再循環通路に流入させる前記戻り口を配設させたことを特徴とする請求項1記載の排気ターボ過給機のハウジング構造。
【請求項4】
前記第1還流口と前記戻り口又は前記連通路が前記空気通路に対し略一直線状に配設され、EGRガス及び、ブローバイガスが前記空気通路へ滑らかに導入されるようにしたことを特徴とする請求項3記載の排気ターボ過給機のハウジング構造。
【請求項5】
前記ケーシングトリートメントの前記再循環通路に連通した連通路を有するチャンバーと、該チャンバーと連通すると共に、前記第1還流口の前記空気通路上流側に、前記第1還流口と略並列に配設された開口を有し、該開口を前記コンプレッサインペラの前端縁に向けて傾斜された第3還流口とを備えたことを特徴とする請求項1記載の排気ターボ過給機のハウジング構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−140876(P2012−140876A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292865(P2010−292865)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】