説明

排気浄化フィルタの欠陥検出装置

【課題】排気浄化フィルタにおける局所的な欠陥を精度よく検出できる欠陥検出装置を提供する。
【解決手段】排気浄化フィルタとしてのDPF(Diesel Particulate Filter)を、排気の流れに対して並列であってかつ相互に画成した3領域に分割し、この3領域を通過する排気流量をそれぞれに検出する流量センサを設ける。そして、DPFの再生直後であって(S1)、定常でかつ排気流量が閾値を超える運転条件のときに(S2)、前記3領域間での排気流量の偏差を演算し(S3,S4)、偏差の絶対値のうちの最大値ΔMAXと欠陥判定レベルSLとを比較する(S5)。最大値ΔMAXが欠陥判定レベルSL以上であれば、欠陥(溶損)の発生を判定し、警告灯を点灯する(S6)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気通路に設けた排気浄化フィルタの欠陥を検出する欠陥検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の排気中の微粒子を捕集する排気浄化フィルタの欠陥検出装置として、排気浄化フィルタの上流側と下流側との間に生じる圧力差に基づいて排気浄化フィルタの欠陥を検出する装置、排気浄化フィルタへの流入微粒子量と排気浄化フィルタからの流出微粒子量とに基づいて排気浄化フィルタの欠陥を検出する装置、機関運転条件に基づく予測酸素濃度と排気浄化フィルタ下流での実測酸素濃度との差に基づいて排気浄化フィルタの欠陥を検出する装置、排気浄化フィルタの一方に配設した音波発生手段と他方に配設した音波検出手段とを備えて排気浄化フィルタの欠陥を検出する装置、更に、排気浄化フィルタの下流側でのパティキュレート量に基づいて排気浄化フィルタの欠陥を検出する装置などがあった(例えば、特許文献1〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−157200号公報
【特許文献2】特開2009−191694号公報
【特許文献3】特開2006−342768号公報
【特許文献4】特開2008−070235号公報
【特許文献5】特開2007−315275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、排気浄化フィルタの欠陥は、たとえ局所的なものであっても、排気浄化フィルタにおける微粒子の捕集能力を低下させたり、排気浄化フィルタの下流側に配設した触媒を損傷させたりすることがある。
しかし、従来の欠陥検出装置では、排気浄化フィルタにおける溶損などの欠陥が広範囲に発生した場合には、係る欠陥を検出できるが、欠陥が局所的であると、欠陥検出に用いる圧力差などのパラメータへの影響が小さくなるため、局所的な欠陥を精度良く検出することが難しいというという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、排気浄化フィルタにおける局所的な欠陥を精度よく検出できる欠陥検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本発明では、内燃機関の排気通路に設けた排気浄化フィルタを、排気の流れに対して並列であってかつ相互に画成した複数領域に分割し、前記複数領域それぞれの排気流量を個別に検出する排気流量検出手段と、前記排気流量検出手段が検出した前記複数領域それぞれの排気流量を比較して、前記排気浄化フィルタにおける欠陥の有無を判定する欠陥判定手段と、を設けた。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数領域のうちの1つに欠陥(溶損)が発生することで、この欠陥が発生した領域の排気流量が変化すると、係る変化が他の欠陥が発生していない領域での排気流量に対する差として表れることになり、複数領域間で排気流量の比較に基づき、欠陥の有無を判定することができる。ここで、領域毎の欠陥の有無によって排気流量が領域間で相対的に変化することに基づき、欠陥の有無を判定するから、局所的な欠陥を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態において欠陥検出装置を適用するディーゼルエンジンのシステム構成図
【図2】実施形態における排気浄化フィルタとしてのDPFの構造を示す図
【図3】実施形態における排気浄化フィルタとしてのDPFに用いるハウジングを示す斜視図
【図4】実施形態における欠陥検出処理を示すフローチャート
【図5】実施形態における欠陥による排気流量の変化の例を示すタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施形態を詳述する。
図1は、本願に係る排気浄化フィルタの欠陥検出装置を適用する、車両用のディーゼルエンジン(内燃機関)10を示す。
【0010】
ディーゼルエンジン10は、吸気管14及び吸気マニホールド12を介して空気を吸引する。吸気管14には、上流側から順に、空気中の埃などをろ過するエアクリーナ16、吸気過給を行うターボチャージャ18のコンプレッサ18A、コンプレッサ18Aを通過して高温になった吸気を冷却するインタークーラ20を設けてある。
【0011】
一方、ディーゼルエンジン10は、排気マニホールド22及び排気管24を介して排気を放出する。排気管24には、上流側から順に、ターボチャージャ18の排気タービン18B、連続再生式DPF装置26、還元剤前駆体としての尿素水溶液を噴射供給する噴射ノズルを有する還元剤噴射装置28、尿素水溶液から生成されるアンモニア(還元剤)を用いてNOxを選択還元浄化するSCR触媒30、SCR触媒30を通過したアンモニアを酸化させるアンモニア酸化触媒32を設けてある。
【0012】
連続再生式DPF装置26は、NO(一酸化窒素)をNO2(二酸化窒素)へと酸化させるDOC(Diesel Oxidation Catalyst)26Aと、排気中のPM(Particulate Matter)を捕集・除去するDPF(Diesel Particulate Filter)26Bとを備える。
尚、排気浄化フィルタとして、前記DPF26Bの代わりに、フィルタ表面に触媒(活性成分及び添加成分)を担持させたCSF(Catalyzed Soot Filter)を使用できる。
【0013】
また、ディーゼルエンジン10は、排気の一部を吸気側に還流させることで燃焼温度を低下させ、排気中のNOx濃度を低減するEGR(Exhaust Gas Recirculation)装置34を備えている。
EGR装置34は、排気管24を流れる排気の一部を吸気管14に還流させるEGR管34Aと、EGR管34Aを流れる排気を冷却するEGRクーラ34Bと、吸気管14に還流させる排気量(EGR率)を制御するEGR制御弁34Cとを備える。
【0014】
ここで、排気浄化フィルタであるDPF26Bの欠陥(局所的な溶損)を検出するために、図2及び図3に示すように、DPF26Bを、排気の流れに対して並列であって相互に画成した3領域に分割してある。
図3は、DPF26Bを収容するハウジング261を示す。図3に示すように、ハウジング261の内部空間を、排気の流れ方向に対する横断面において3領域に分割する隔壁部材262を、ハウジング261内に設けてあり、隔壁部材262は、前記横断面において各領域が120degの中心角の扇型となるように略均等に分割する。
【0015】
そして、隔壁部材262によって分割した3領域(3つのフィルタ収容空間)のそれぞれに、図2に示すように、横断面が略扇型のフィルタ部材263A,263B,263Cを配置してある。
上記構成において、フィルタ部材263A,263B,263Cの間における排気の流通は、隔壁部材262によって阻止され、3領域(3個のフィルタ部材263A,263B,263C)のうちの1つに上流端から流入した排気は、他の領域(他のフィルタ部材)に流入することなく、流入した領域(フィルタ部材)の下流端から排出される。
【0016】
隔壁部材262は、軸方向の長さが、フィルタ部材263よりも長く設定され、かつ、隔壁部材262が分割する領域の上流側に寄せてフィルタ部材263を設置することで、隔壁部材262が分割する領域の下流側に、フィルタ部材263を備えない相互に独立した3つの流量測定空間を形成するようにしてある。
そして、3つの流量測定空間それぞれに、排気流量に応じた検出信号を出力する流量センサ49A,49B,49C(排気流量検出手段)を配置してある。
【0017】
前記流量センサ49A,49B,49C(排気流量検出手段)は、体積流量計と質量流量計とのいずれであってもよく、公知の種々のセンサを適用できる。
ここで、流量センサ49Aはフィルタ部材263Aを通過した排気の流量QAを計測し、流量センサ49Bはフィルタ部材263Bを通過した排気の流量QBを計測し、流量センサ49Cはフィルタ部材263Cを通過した排気の流量QCを計測する。
【0018】
尚、上記実施形態では、隔壁部材262が分割する3領域毎に、個別にフィルタ部材263を設置したが、例えば、3領域に画成する壁部を一体的に備えたフィルタ部材を、ハウジング261の内部空間に設置する一方、当該フィルタ部材の直後に、ハウジング261の内部空間をフィルタ部材の分割領域に合わせて分割する隔壁部材を配置し、隔壁部材が分割する空間毎に流量センサを配置することができる。
【0019】
コンピュータを内蔵したコントロールユニット42は、流量センサ49A,49B,49Cの出力信号の他、ディーゼルエンジン10の回転速度NEを検出する回転速度センサ44、及び、ディーゼルエンジン10の負荷Qを検出する負荷センサ46の出力信号も入力する。
【0020】
ここで、負荷センサ46は、ディーゼルエンジン10の負荷Qを示す状態量として、吸気流量、吸気圧力、過給圧力、アクセル開度、吸気絞り弁の開度など、ディーゼルエンジン10のトルクと密接に関連する状態量を検出する。
尚、ディーゼルエンジン10の回転速度NE及び負荷Qを示す信号を、CAN(Controller Area Network)などを介して、別のコントロールユニットから受け取るようにしてもよい。
【0021】
コントロールユニット42は、内蔵するROM(Read Only Memory)などの不揮発性メモリに記憶した制御プログラムを実行することで、各種センサからの信号に基づいて、DPF26Bの再生処理を制御すると共に、DPF26Bの欠陥(局所的な溶損)の有無を判定する処理を実施し、DPF26Bに欠陥が発生していると判断したときに、ディーゼルエンジン10を搭載した車両のコンビネーションメータに付設した警告灯48を点灯する欠陥判定信号を出力することで、DPF26Bに欠陥が発生していることを車両の運転者に警告する。
【0022】
即ち、コントロールユニット42が、制御プログラムを実行することで、欠陥判定手段の一例が具現化される。
DPF26Bにおける欠陥の発生を警告する手段としては、警告灯48に代えて又は警告灯48と共に、警告音を発生するブザーなどを用いることができる。
【0023】
コントロールユニット42は、例えば、エンジンの積算運転時間や、エンジン運転条件から推定した微粒子の排出量の積算値や、DPF26Bの上下流間の差圧などから、DPF26Bの再生要求の有無を判断する。
そして、コントロールユニット42は、DPF26Bの再生処理として、ヒータによる加熱や排気通路内への燃料の噴射やエンジンへの燃料噴射タイミングの制御などを行うことで、DPF26Bに流入する排気の温度を上昇させ、DPF26Bが捕集した微粒子PMを、酸化(焼却)除去する。
【0024】
また、コントロールユニット42は、図4のフローチャートに示す制御プログラムに従って、DPF26Bにおける欠陥の発生を判断する。
図4のフローチャートに示す制御プログラムは、単位時間毎に繰り返し実行され、まず、ステップS1では、DPF26Bの再生処理の直後であるか否かを判断する。
【0025】
再生処理の直後とは、再生処理を完了してから、排気流量に影響するほどに微粒子が捕集されるようになるまでの間であり、例えば、再生処理の完了時からのディーゼルエンジン10の運転時間が閾値以下である期間、再生処理の完了時からのDPF26Bにおける微粒子の捕集量の推定値が閾値以下である期間などとする。
再生処理の直後であって、DPF26Bが微粒子を殆ど捕集していない状態では、DPF26Bの3領域に略均等に排気が流れるものと推定でき、3領域間に排気流量の差が発生する場合には、フィルタ欠陥(溶損)を要因としていると判断できる。
【0026】
DPF26Bが微粒子を捕集している状態では、微粒子の捕集量が3領域間でばらつくことで、領域間で排気流量にばらつきが生じ、欠陥(溶損)の発生による排気流量のばらつきと区別することが困難になるため、DPF26Bの再生直後であって、DPF26Bに微粒子が殆ど捕集されていない状態であることを、欠陥判定を実施する条件とする。
【0027】
ステップS1でDPF26Bの再生処理の直後であると判断すると、ステップS2へ進み、排気流量の検出条件を満たしているか否かを判断する。
具体的には、ディーゼルエンジン10が過渡運転状態(加減速状態)でなく、ディーゼルエンジン10からの排気流量が略一定している定常運転状態であり、かつ、ディーゼルエンジン10からの排気流量が閾値よりも大きい運転状態(エンジン回転速度が閾値よりも高い高回転域)である場合に、排気流量の検出条件を満たしていると判断する。
【0028】
ディーゼルエンジン10からの排気流量が略一定している定常運転状態であることを、DPF26Bの3領域における排気流量の検出条件とすることで、排気流量の検出精度を確保できる。ディーゼルエンジン10の加減速状態であって、排気流量が変動している状態では、センサ信号のA/D変換タイミングのずれなどによって、排気流量の検出値に大きなばらつきが発生してしまい、高精度に排気流量を検出することができない。
ディーゼルエンジン10からの排気流量が略一定している定常運転状態の検出は、負荷センサ46が検出するディーゼルエンジン10の負荷Qや、流量センサ49A,49B,49Cが検出する排気流量の単位時間当たりの変化量が閾値未満である場合に、定常運転状態であると判断することができる。
【0029】
また、ディーゼルエンジン10の排気流量が閾値よりも多いことをDPF26Bの3領域における排気流量の検出条件とすれば、局所的な溶損によって発生する3領域間における排気流量の偏差が拡大し、欠陥(溶損)の検出精度が向上し、より小さい欠陥の検出が可能となる。
ディーゼルエンジン10の排気流量が閾値よりも多いか否かの判断は、ディーゼルエンジン10の回転速度NEが閾値よりも高いか否かで判断でき、また、回転速度NEとエンジン負荷Qとを組み合わせて判断でき、更に、流量センサ49A,49B,49Cのうちの少なくとも1つの検出結果を用いて判断してもよい。
欠陥判定を実施する排気流量レベルは、検出したい欠陥(溶損)の程度と、検出精度とを考慮し、実験やシミュレーションなどから予め適合しておく。
【0030】
ステップS2で、排気流量の検出条件を満たしていると判断すると、ステップS3へ進み、流量センサ49A,49B,49Cの出力信号を読み込んで、DPF26Bの3領域、換言すれば、フィルタ部材263A,263B,263Cそれぞれを通過した排気流量QA,QB,QCを検出する。
【0031】
次いで、ステップS4では、DPF26Bの3領域間における排気流量の差を演算する。具体的には、フィルタ部材263Aの通過排気流量QAとフィルタ部材263Bの通過排気流量QBとの偏差の絶対値ΔAB、フィルタ部材263Bの通過排気流量QBとフィルタ部材263Cの通過排気流量QCとの偏差の絶対値ΔBC、フィルタ部材263Aの通過排気流量QAとフィルタ部材263Cの通過排気流量QCとの偏差の絶対値ΔACをそれぞれに演算する。
【0032】
ΔAB=|QA−QB|
ΔBC=|QB−QC|
ΔAC=|QA−QC|
【0033】
ステップS5では、ステップS4で演算した偏差の絶対値ΔAB,ΔBC,ΔACのうちで最も大きい値ΔMAX(ΔMAX=max(ΔAB,ΔBC,ΔAC))と、欠陥判定レベルSLとを比較する。
そして、最大値ΔMAXが欠陥判定レベルSLよりも小さい場合には、換言すれば、3領域それぞれでの排気流量が略同等である場合には、3領域のいずれにも欠陥(溶損)は発生していないものと判断し、そのまま警告灯48を点灯させることなく、一連の処理を終了させる。
【0034】
一方、最大値ΔMAXが欠陥判定レベルSL以上である場合には、ステップS6へ進み、DPF26Bにおける欠陥(溶損)の発生を判定する信号を出力し、この欠陥発生判定信号に基づいて警告灯48を点灯させ、DPF26Bにおける欠陥(溶損)の発生を車両の運転者に警告する。
最大値ΔMAXが欠陥判定レベルSL以上である場合には、DPF26Bの3領域のいずれかに微粒子の捕集能力を低下させるほどの欠陥(溶損)が発生し、この欠陥(溶損)が発生している領域において、排気が通過する開口面積が欠陥によって狭くなっているか、逆に、排気が通過する開口面積が欠陥で拡大していて、欠陥が発生した領域の排気流量が他の領域の排気流量に比べて少なく又は多くなっているものと判断する。
【0035】
図5のタイムチャートは、DPF26Bの3領域のフィルタ部材263A,263B,263Cのうち、フィルタ部材263Aに欠陥(溶損)が発生した場合の各領域における排気流量の変化を示す。
図5のタイムチャートにおいて、時刻t1でフィルタ部材263Aに欠陥(溶損)が発生し、それよりも前の時刻t0〜t1の間は、欠陥(溶損)が発生していない状態での各領域の排気流量を示し、時刻t1以降は、フィルタ部材263Aに欠陥(溶損)が発生している状態での各領域の排気流量を示す。
【0036】
図5に示す例では、フィルタ部材263Aに発生した欠陥(溶損)は、排気が通過する開口面積を狭める欠陥(溶損)であるため、時刻t1を境界としてフィルタ部材263Aを通過する排気流量QAは低下し、このフィルタ部材263Aでの排気流量QAが低下した分を他の2つの領域で補うために、フィルタ部材263B及びフィルタ部材263Cを通過する排気流量QB,QCは時刻t1以後増えている。
【0037】
このように、欠陥(溶損)が発生したフィルタ部材263Aの排気流量QAが減る一方で、他の領域の排気流量QB,QCが増えるから、領域間における排気流量の差が拡大し、図5に示す例の場合、時刻t1の前後で偏差ΔBCは小さい状態を保持するのに対し、偏差ΔAB及び偏差ΔACは、時刻t1以後で偏差ΔBCよりも大きな値を示すことになり、偏差ΔAB又は偏差ΔACが欠陥判定レベルSL以上であれば、欠陥(溶損)の発生を判定することになる。
【0038】
そして、偏差ΔAB,ΔBC,ΔACのうちで最も大きい値ΔMAXが欠陥判定レベルSL以上であって、欠陥(溶損)の発生を判定した場合には、ステップS6へ進み、警告灯48を点灯させることで、DPF26Bに欠陥(溶損)が発生していることを、車両の運転者に警告する。
【0039】
上記のように、DPF26B(排気浄化フィルタ)を、排気の流れに対して並列であってかつ相互に画成した複数領域に分割し、分割した領域間で排気流量を比較するようにすれば、欠陥(溶損)の発生による排気流量の増減変化を、欠陥(溶損)が発生していない領域(欠陥の程度が相対的に低い領域)での排気流量に対する差として検出するので、領域毎の欠陥発生に応答する判定結果を得られ、DPF26Bにおける局所的な欠陥(溶損)の発生を高精度に判定できる。
【0040】
更に、DPF26Bにおける局所的な欠陥(溶損)の発生を判定したときに、警告灯48の点灯することで、運転者に対してDPF26Bの点検整備を促すことができ、欠陥(溶損)の発生しているDPF26Bをそのまま継続して用いることによって、微粒子の排出量が増えたり、DPF26Bの下流側に配したSCR触媒30が損傷したりすることを未然に防止できる。
【0041】
尚、上記実施形態では、DPF26Bを3領域に分割したが、2領域或いは4領域以上に分割し、領域毎に流量センサを配置することができる。但し、DPF26Bの分割数を多くすると、その分だけ流量センサの数が増えてコスト高になり、また、DPF26Bの構造も複雑になる。一方、DPF26Bを2領域に分割した場合には、排気流れの偏りに影響されて欠陥(溶損)による排気流量の差が縮小し、欠陥(溶損)の検出精度が低下する場合があったり、欠陥(溶損)による排気流量の差が生じたとしても、欠陥(溶損)が発生したということを多数決で決めることができなかったりするため、3領域に分割するのが好ましい。
【0042】
また、排気の流れの偏りに影響されて、DPF26Bの各領域間における排気流量に差が生じると、欠陥(溶損)の検出精度が低下するので、DPF26Bの新品状態(欠陥がないと見込まれる状態)での各領域における排気流量に基づき、各領域における排気流量の検出値を補正する補正値を学習し、欠陥(溶損)検出を行う場合に、排気流量の検出値を前記補正値で補正し、補正後の検出値を比較して欠陥(溶損)の有無を判定させることができる。
【0043】
また、上記実施形態では、連続再生式DPF装置26、SCR触媒30、アンモニア酸化触媒32を備えたエンジンにおいて、連続再生式DPF装置26におけるDPF26Bの欠陥(溶損)の有無を判定させたが、排気浄化フィルタ(DPF26B)と組み合わせる他の排気処理装置を、上記実施形態のものに限定するものでないことは明らかであり、本願発明は、排気通路に少なくとも排気浄化フィルタを備えたエンジンに広く適用できる。
【0044】
また、DPF26Bの再生処理直後に欠陥(溶損)の有無を判定させる構成において、欠陥(溶損)のために、捕集微粒子量が少なく再生要求がない状態で強制的に再生処理を実施し、再生処理直後に欠陥(溶損)の有無を判定させることができる。
また、例えばDPF26Bの前後差圧などに基づく欠陥(溶損)検出の結果、欠陥(溶損)の発生を断定できないものの、欠陥(溶損)の発生が疑われる場合に、DPF26Bの各領域の排気流量を比較して、欠陥(溶損)の有無を確定させることができる。
【0045】
また、偏差ΔAB,ΔBC,ΔACのうちで最も大きい値が一定していること、具体的には、最大であると判断した偏差が一定回数以上連続して同じであることを条件に、欠陥の発生を判定したり、DPF26Bの領域毎に排気流量の検出値に平滑化処理を施し、平滑化処理後の検出値に用いて領域間での排気流量の偏差を演算させたりすることができる。
また、DPF26Bにおける欠陥(溶損)の発生が判定された場合に、DPF26Bの再生処理のタイミングを早めたり(処理間隔を短縮したり)、再生処理における排気温度の上昇を抑えるなど、再生処理を変更することができる。
【符号の説明】
【0046】
10 ディーゼルエンジン
24 排気管
26 連続再生式DPF装置
26A DOC
26B DPF(排気浄化フィルタ)
30 SCR触媒
32 アンモニア触媒
42 コントロールユニット(欠陥判定手段)
48 警告灯(警告手段)
49A,49B,49C 流量センサ(排気流量検出手段)
261 ハウジング
262 隔壁部材
263A,263B,263C フィルタ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けた排気浄化フィルタの欠陥検出装置であって、
前記排気浄化フィルタを、排気の流れに対して並列であってかつ相互に画成した複数領域に分割し、
前記複数領域それぞれの排気流量を個別に検出する排気流量検出手段と、
前記排気流量検出手段が検出した前記複数領域それぞれの排気流量を比較して、前記排気浄化フィルタにおける欠陥の有無を判定する欠陥判定手段と、
を設けた排気浄化フィルタの欠陥検出装置。
【請求項2】
前記欠陥判定手段が、前記複数領域間における排気流量の差が閾値よりも大きい場合に、前記排気浄化フィルタにおける欠陥の発生を判定する請求項1記載の排気浄化フィルタの欠陥検出装置。
【請求項3】
前記排気浄化フィルタを3以上の領域に分割し、
前記欠陥判定手段が、前記3以上の領域間における排気流量の差の最大値が、前記閾値よりも大きい場合に、前記排気浄化フィルタにおける欠陥の発生を判定する請求項2記載の排気浄化フィルタの欠陥検出装置。
【請求項4】
前記欠陥判定手段が、前記排気浄化フィルタの再生処理の直後に前記排気流量検出手段が検出した排気流量に基づき、前記排気浄化フィルタにおける欠陥の有無を判定する請求項1〜3のいずれか1つに記載の排気浄化フィルタの欠陥検出装置。
【請求項5】
前記欠陥判定手段が、前記内燃機関の排気流量が略一定の定常運転状態であるときに前記排気流量検出手段が検出した排気流量に基づき、前記排気浄化フィルタにおける欠陥の有無を判定する請求項1〜4のいずれか1つに記載の排気浄化フィルタの欠陥検出装置。
【請求項6】
前記欠陥判定手段が、前記内燃機関の排気流量が閾値を超える運転領域であるときに前記排気流量検出手段が検出した排気流量に基づき、前記排気浄化フィルタにおける欠陥の有無を判定する請求項1〜5のいずれか1つに記載の排気浄化フィルタの欠陥検出装置。
【請求項7】
前記排気浄化フィルタにおける欠陥の発生を警告する警告手段を備え、
前記欠陥判定手段が、前記排気浄化フィルタにおける欠陥の発生を判定したときに、前記警告手段によって欠陥の発生を警告する請求項1〜6のいずれか1つに記載の排気浄化フィルタの欠陥検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−112285(P2012−112285A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260969(P2010−260969)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】