説明

排水処理方法および排水処理装置

【課題】有機フッ素化合物を効果的に微生物分解できる排水処理方法および排水処理装置を提供する。
【解決手段】バブル発生槽3において、生物処理水と急速濾過器2で濾過した有機フッ素化合物含有排水とを混合した被処理水にマイクロナノバブル発生装置10によりマイクロナノバブルを導入して微生物を活性化させ、微生物を活性化した被処理水を活性炭が充填された活性炭吸着塔4に供給して活性炭に有機物を吸着させるとともに、活性炭に吸着された有機物をマイクロナノバブルで活性化した微生物により分解する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理方法および排水処理装置に関し、特に、有機フッ素化合物含有排水の処理方法および処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理の対象となる被処理水が含有する化合物の一例である有機フッ素化合物は、化学的に安定な物質である。特に、この有機フッ素化合物は、耐熱性および耐薬品性の観点から優れた性質を有することから、界面活性剤等の用途に用いられている。
【0003】
しかしながら、この有機フッ素化合物は、化学的に安定な物質であるが故に微生物分解がしにくい。例えば、この有機フッ系化合物としてのパーフルオロオクタスルホン酸(PFOS)やパーフルオロオクタン酸(PFOA)は、生態系での分解が進まないことから生態系への影響が懸念されている。
【0004】
すなわち、上記パーフルオロオクタスルホン酸(PFOS)やパーフルオロオクタン酸(PFOA)は、化学的に安定なため、完全に熱分解させるためには、約1000℃以上の高温が必要と言われている。また、PFOSやPFOAは、従来の微生物や光触媒等による処理では分解が極めて困難であった。
【0005】
ところで、従来技術として、ナノバブルの利用方法および装置が、特許文献1(特開2004−121962号公報)に記載されている。
【0006】
この従来技術では、ナノバブルが有する浮力の減少、表面積の増加、表面活性の増大、局所高圧場の生成、静電分極の実現による界面活性作用と殺菌作用などの特性を活用したものである。この従来技術では、より具体的には、それらが相互に関連することによって、汚れ成分の吸着機能、物体表面の高速洗浄機能、殺菌機能によって各種物体を高機能、低環境負荷で洗浄することができ、汚濁水の浄化を行うことができることを開示している。
【0007】
また、今一つの従来技術として、ナノ気泡の生成方法が、特許文献2(特開2003−334548号公報)に記載されている。
【0008】
この従来技術は、液体中において、(1)液体の一部を分解ガス化する工程、(2)液体中で超音波を印加する工程または、(3)液体の一部を分解ガス化する工程および超音波を印加する工程から構成されていることを開示している。
【0009】
また、別の従来技術としては、オゾンマイクロバブルを利用する廃液の処理装置が、特許文献3(特開2004−321959号公報)に記載されている。
【0010】
この従来技術では、マイクロバブル発生装置にオゾン発生装置より生成されたオゾンガスと処理槽の下部から抜き出された廃液を加圧ポンプを介して供給している。また、この従来技術では、生成されたオゾンマイクロバブルをガス吹き出しパイプの開口部より処理槽内の廃液中に通気することを開示している。
【0011】
しかし、上述の従来技術では、有機フッ素化合物を効果的に微生物分解することはできない。
【特許文献1】特開2004−121962号公報
【特許文献2】特開2003−334548号公報
【特許文献3】特開2004−321959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、有機フッ素化合物を効果的に微生物分解できる排水処理方法および排水処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明による排水処理方法は、被処理水にマイクロナノバブルを導入して前記被処理水中の微生物を活性化させてから前記被処理水を活性炭に接触させ、前記被処理水中の有機物を前記活性炭に吸着させるとともに、前記活性炭に吸着された有機物を、活性化した前記微生物により分解する方法とする。
【0014】
この方法によれば、被処理水中の難分解性の有機物を活性炭に吸着して除去し、吸着した難分解性の有機物をマイクロナノバブルによって活性化した微生物が活性炭上で分解する。このため、活性炭を自己再生することができ、活性炭の再生作業が不要である。
【0015】
また、本発明の排水処理方法において、前記被処理水は、生物処理水に、急速濾過した有機フッ素化合物含有排水を混合したものであってもよい。
【0016】
この方法によれば、処理水中の浮遊物を除去して活性炭の目詰まりを防止するとともに、有機フッ素化合物や微生物の濃度を適切な範囲に維持して、有機フッ素化合物を完全に分解することができる。
【0017】
また、本発明による排水処理装置は、貯留する被処理水にマイクロナノバブルを導入するマイクロナノバブル発生装置を備えるバブル発生槽と、活性炭が充填され、前記バブル発生槽から前記マイクロナノバブルを含む被処理水が供給される活性炭吸着塔とを有するものとする。
【0018】
この構成によれば、被処理水中の難分解性の有機物を活性炭吸着塔の活性炭に吸着させ、マイクロナノバブルによって活性化した被処理水中の微生物によって、活性炭に吸着された難分解性の有機物を分解することができる。これによって、被処理水中の有機フッ素化合物を完全に除去することができ。さらに、活性炭に吸着した難分解性の有機物を分解することによって活性炭を自己再生することができ、活性炭の再生作業が不要である。
【0019】
また、本発明の排水処理装置において、有機フッ素化合物含有排水を急速濾過する急速濾過器をさらに有し、前記バブル発生槽には、前記急速濾過器で濾過した前記有機フッ素化合物含有排水と、生物処理水とを導入して混合したものを前記被処理水としてもよい。
【0020】
この構成によれば、処理水中の浮遊物を除去して活性炭の目詰まりを防止するとともに、有機フッ素化合物や微生物の濃度を適切な範囲に維持して、有機フッ素化合物を完全に分解することができる。
【0021】
また、本発明の排水処理装置において、前記活性炭吸着塔は、さらに微生物が滞留可能な吸着塔内充填物が充填されていてもよく、前記吸着塔内充填物は、ポリ塩化ビニリデンからなってもよく、ひも状またはリング状に形成するとよい。
【0022】
この構成によれば、吸着塔内充填物に微生物を多量に繁殖させ、吸着塔内充填物から活性炭に微生物を移行させることで、活性炭に吸着した有機フッ素化合物を効果的に分解できる。
【0023】
また、本発明の排水処理装置において、前記バブル発生槽は、リング状のポリ塩化ビニリデンからなるバブル発生槽内充填物をさらに備えてもよい。
【0024】
この構成によれば、バブル発生槽内充填物上に生物処理水中の微生物を繁殖させることで、処理能力が高まる。
【0025】
また、本発明の排水処理装置において、前記活性炭吸着塔から流出する被処理水の一部を、前記バブル発生槽に環流してもよい。
【0026】
この構成によれば、バブル発生槽と活性炭吸着塔との間で被処理水を循環させることで、活性炭に吸着した有機物を分解することによって活性の低下した微生物をバブル発生槽に返送し、マイクロナノバブルで再度活性化して活性炭吸着塔に導入することができる。これにより、活性介した微生物を多く供給して活性炭に吸着した有機フッ素化合物の分解を促進できる。
【0027】
また、本発明の排水処理装置において、前記活性炭吸着塔から流出する被処理水の一部を、前記バブル発生槽の上流側に環流してもよい。
【0028】
この構成によれば、バブル発生槽の上流側に微生物を含む被処理水を導入することで、活性炭吸着塔に導入される前に、被処理水中の有機フッ素化合物の分解を進行させ、活性炭吸着塔内において有機フッ素化合物を分解するのに要する時間を短縮して、処理能力を向上させられる。
【0029】
また、本発明の排水処理装置において、生物処理水を貯留し、前記生物処理水にマイクロナノバブルを導入するマイクロナノバブル発生装置を備える水槽部と、前記水槽部の上方に設けられ、前記被処理水から排出される排ガスが挿通され、前記排ガスに、前記水槽部に貯留する前記生物処理水を循環散布する散水部とからなる排ガス処理塔をさらに有してもよい。
【0030】
この構成によれば、被処理水から排出されるフッ素を含有する排ガスに、生物処理水を散布することで、排ガス中のフッ素および有機物を生物処理水に溶け込ませて回収し、排ガスを浄化できる。さらに、生物処理水にマイクロナノバブルを導入することで、活性化した微生物により、生物処理水に溶け込ませて回収した有機物を分解することができる。
【0031】
また、本発明の排水処理装置において、前記水槽部は、前記生物処理水中に保持され、微生物が滞留可能な水槽内充填物を備えてもよく、前記水槽内充填物は、ひも状またはリング状のポリ塩化ビニリデンであってもよい。
【0032】
この構成によれば、水槽内充填物に微生物が繁殖し、排ガスの浄化能力を高めることができる。
【0033】
また、本発明の排水処理装置において、前記活性炭吸着塔から流出する被処理水を導入して、前記被処理水から前記排ガスを分離する中継槽をさらに有してもよい。
【0034】
この構成によれば、中継槽において、活性炭吸着塔から流出した被処理水から放出される排ガスを吸引して排ガス処理塔で浄化するので、次工程に排ガスを送ることがない。
【0035】
また、本発明の排水処理装置において、前記中継槽は、前記被処理水にマイクロナノバブルを導入するマイクロナノバブル発生装置を備えてもよい。
【0036】
この構成によれば、活性炭吸着塔で有機フッ素化合物を除去しきれなかった場合にも、中継槽において、マイクロナノバブルによって活性化した微生物が、被処理水中に残存する有機フッ素化合物を残さずに分解する。
【0037】
また、本発明の排水処理装置において、前記中継槽は、前記被処理水中に保持され、微生物が滞留可能な中継槽内充填物をさらに備えてもよく、前記中継槽内充填物は、ひも状またはリング状のポリ塩化ビニリデンであってもよい。
【0038】
この構成によれば、中継槽内に微生物を繁殖させて、有機フッ素化合物を分解する能力を向上させられる。
【0039】
また、本発明の排水処理装置において、前記各構成要素を、軽量樹脂で形成し、共通のベース上に固定してもよい。
【0040】
この構成によれば、排水処理装置を分解せずに搬送でき、低コストでの提供が可能になる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、有機フッ素化合物を活性炭で吸着し、活性炭に吸着した有機フッ素化合物をマイクロナノバブルで活性化した微生物で分解するので、被処理水中の有機フッ素化合物を完全に分解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に、本発明の第1実施形態の排水処理装置を示す。この排水処理装置は、ベース1上に、それぞれ軽量樹脂で形成された、急速濾過器2、バブル発生槽3、活性炭吸着塔4、中継槽5および排ガス処理塔6が固定されており、排水処理装置を分解することなくトラックで搬送することが可能である。
【0043】
急速濾過器2は、石炭系の濾過材であるアンスラサイトが充填されている。急速濾過器2は、有機フッ素化合物含有排水を貯留する原水槽7からポンプ8によってバルブ9を介して所定の流量で供給される有機フッ素化合物含有排水の浮遊物を除去し、濾過した有機フッ素化合物含有排水をバブル発生槽3に供給する。
【0044】
バブル発生槽3には、前記有機フッ素化合物含有排水に加え、微生物を含んだ生物処理水が被処理水として導入される。生物処理水は、有機フッ素化合物含有排水と同じ施設等から排出されたものである必要はない。
【0045】
バブル発生槽3は、被処理水にマイクロナノバブルを導入するマイクロナノバブル発生装置10を備える密閉された水槽である。マイクロナノバブル発生装置10は、循環ポンプ11でバブル発生槽3内の被処理水を吸い出してマイクロバブル発生器12に注入し、マイクロバブル発生器12において被処理水の流速によって調節弁13を介して自給した空気を剪断してマイクロナノバブル(微細な気泡)を生成し、マイクロナノバブル発生器12から生成したマイクロナノバブルを被処理水と共にバブル発生槽3内に吐出させるものである。マイクロナノバブル発生装置10は、バブル発生槽3内の被処理水にマイクロナノバブルを導入するだけでなく、被処理水を撹拌する水流を形成して、有機フッ素化合物含有排水と生物処理水とを混合する機能も果たす。
【0046】
ポンプ14は、バブル発生槽3のマイクロナノバブルを含んだ被処理水を、バルブ15を介して活性炭吸着塔4の頂部に導入する。活性炭吸着塔4は、活性炭が充填された活性炭層16を有している。活性炭は、例えばヤシガラ活性炭が適用されるが、石炭系など他の種類の活性炭を使用してもよく、被処理水の水質や処理量によって最適なものを選択するとよい。
【0047】
活性炭吸着塔4の底部から流出する被処理水は、バルブ17を介して中継槽5に導入され、一旦貯留されてから次工程に流出する。また、活性炭吸着塔4から流出する被処理水の一部は、バブル発生槽3に環流される。
【0048】
バブル発生槽3および中継槽5は、ともに密閉した水槽であるが、それぞれ、被処理水から排出される排ガスを吸い出す排気ダクト19,20が設けられており、排気ファン21によって、排ガスが排ガス処理塔6に導入される。
【0049】
排ガス処理塔6は、生物処理水を貯留する水槽部22と、水槽部22の上方に一体に設けられ、下側から排気ファン21によって導入る排ガスに水槽部22の生物処理水を散布する散水部23とからなる。
【0050】
水槽部22は、貯留する水量を一定に保つようにボールタップ24から生物処理水が補給される。また、貯留する生物処理水にマイクロナノバブルを導入するマイクロナノバブル発生装置25を備えている。マイクロナノバブル発生装置25は、前記マイクロナノバブル発生装置10と同様に、循環ポンプ26、マイクロナノバブル発生器27および調節弁28からなる。
【0051】
散水部23は、底板となる多孔板29の上に、プラスチック充填材30が配置され、プラスチック充填材30の隙間を上昇する排ガスに対して、撒水ポンプ31で水槽部22から汲み上げた生物処理水を上方から撒水する撒水ノズル32を備えている。
【0052】
続いて、以上の構成からなる排水処理装置の作用について説明する。
バブル発生槽3において、マイクロナノバブルを導入することで、生物処理水に含まれている微生物が活性化し、被処理水中の有機物を分解する。有機フッ素化合物は、容易に分解できないため、ポンプ14によって活性炭吸着塔4に送られ、活性炭層16に吸着される。
【0053】
有機フッ素化合物を吸着した活性炭層16には、マイクロナノバブルによって活性化した微生物を含む被処理水が次から次へと供給されるため、活性炭に吸着された有機フッ素化合物も徐々に分解されてゆく。吸着した有機フッ素化合物が分解されることによって、活性炭は、再び有機フッ素化合物を吸着できる状態になる。
【0054】
従来、有機物を吸着した活性炭は、吸着能力が低下するので人為的な再生作業が必要であったが、本発明では、高速濾過器2によって浮遊物を除去して、活性炭の目詰まりを防止するとともに、活性化した微生物により活性炭吸着塔4内で活性炭に吸着された有機フッ素化合物を分解するので、活性炭を自己再生でき、再生作業が不要である。
【0055】
活性炭において微生物の活性を維持するためには、バルブ18を介してバブル発生槽3に返送する被処理水の流量を多くして、微生物の循環量を多くすることが効果的である。つまり、活性炭吸着塔4において活性の低下した微生物をバブル発生槽3に返送し、マイクロナノバブルにより再び活性化した微生物を活性炭吸着塔4に供給するとよい。
【0056】
また、有機フッ素化合物が分解されることによってフッ素ガスが発生するが、フッ素ガスは活性炭吸着塔4の底部から被処理水と共にバブル発生槽3および中継槽5に流出し、排気ファン21によって排気ダクト19,20を介して排ガス処理塔6に導入される。散水部23において生物処理水を散布することでフッ素を生物処理水中に溶け込ませて回収する。このように、中継槽5で積極的にフッ素ガスを吸引することで、次工程において外気にフッ素ガスを放出することがない。
【0057】
さらに、生物処理水は排ガス中に含まれる有機物をも溶け込ませて回収する。排ガス処理塔6の水槽部にマイクロナノバブルを導入することで、生物処理水中に残存している有機物を完全に分解し、フッ素ガスや有機物を生物処理水に溶け込ませ易くすることができる。
【0058】
また、次工程において、フッ素が溶存する排水を処理する方法としては、キレート樹脂塔による処理や、カルシウム剤添加による凝集沈殿処理が公知であり、被処理水のフッ素濃度に応じて選択される。
【0059】
さらに、図2に、本発明の第2実施形態の排水処理装置を示す。以降の説明において、上記第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0060】
本実施形態の活性炭吸着塔4には、活性炭層16の上部にリング状に形成したポリ塩化ビニリデンからなる吸着塔内充填物33が充填されている。これにより、吸着塔内充填物33には、微生物が滞留して高濃度に繁殖し、被処理水の流れによって高濃度の微生物が活性炭層16に移動して、活性炭に吸着されている有機フッ素化合物を迅速に分解する。
【0061】
高濃度の微生物を活性炭に供給するために、本実施形態のように、活性炭層16の上部(上流側)に吸着塔内充填物33を充填することが効果的である。
【0062】
図3に、本発明の第3実施形態を示す。本実施形態では、第2実施形態の吸着塔内充填物33に換えて、活性炭吸着塔4にひも状に形成されたポリ塩化ビニリデンからなる吸着塔内充填物34が充填されている。このようなひも状の吸着塔内充填物34も、微生物を高濃度に繁殖させることができ、有機フッ素化合物の分解を促進する。
【0063】
図4に、本発明の第4実施形態を示す。本実施形態では、バブル発生槽3の被処理水内にひも状に形成されたポリ塩化ビニリデンからなるバブル発生槽内充填物35を保持している。これにより、バブル発生槽内充填物35上に微生物が滞留して繁殖することで、バブル発生槽3内の微生物濃度、ひいては活性炭吸着塔4に導入される微生物の濃度を高め、活性炭に吸着された有機フッ素化合物の分解を促進する。
【0064】
図5に、本発明の第5実施形態を示す。本実施形態は、活性炭吸着塔4から流出した被処理水を、さらに、バルブ36,37で分流して、バブル発生槽3のさらに上流の有機フッ素化合物含有排水を貯留する原水槽7aに導入するものである。原水槽7aは、密閉構造をなし、有機フッ素化合物含有排水から発生した排ガスをファン21で吸引するための排気ダクト38が設けられている。
【0065】
本実施形態では、生物処理水由来の微生物を原水槽7aにも導入することで、原水槽7aにおいて有機フッ素化合物含有排水の有機物の一部を分解するものである。これにより、活性炭吸着塔4に導入するまでに、有機フッ素化合物の分解を進行させることができ、活性炭層16に留まる時間を短くし、処理能力を向上させることができる。
【0066】
図6に、本発明の第6実施形態を示す。本実施形態は、中継槽5にマイクロナノバブルを導入するマイクロナノバブル発生装置39を設けたものである。マイクロナノバブル発生装置39は、前記実施形態のマイクロナノバブル発生装置10,25と同様に、循環ポンプ40、マイクロナノバブル発生器41および調節弁42からなる。本実施形態では、有機フッ素化合物が分解されずに活性炭吸着塔4の活性炭層16を通過しても、中継槽5において、マイクロナノバブルによって活性化した微生物によって分解することができ、有機フッ素化合物のより高度な処理が可能である。
【0067】
図7に、本発明の第7実施形態を示す。本実施形態は、上記第6実施形態のマイクロナノバブル発生装置39を設けた中継槽5に、さらに、被処理水中に保持されるひも状に形成されたポリ塩化ビニリデンからなる中継槽内充填物43を設けたものである。これによって、中継槽内充填物43に微生物を滞留させて高濃度に繁殖させることができ、中継槽5における有機フッ素化合物の処理能力が向上する。
【0068】
図8に、本発明の第8実施形態を示す。本実施形態は、排ガス処理塔6の水槽部22内に、生物処理水中に保持されるひも状に形成されたポリ塩化ビニリデンからなる水槽内充填物44を設けたものである。これによって、水槽内充填物44に高濃度の微生物を繁殖させて、生物処理水中に残存する有機物を完全に分解し、散水部23においてフッ素ガスや有機物を溶け込ませ易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1実施形態の排水処理装置の概略図。
【図2】本発明の第2実施形態の排水処理装置の概略図。
【図3】本発明の第3実施形態の排水処理装置の概略図。
【図4】本発明の第4実施形態の排水処理装置の概略図。
【図5】本発明の第5実施形態の排水処理装置の概略図。
【図6】本発明の第6実施形態の排水処理装置の概略図。
【図7】本発明の第7実施形態の排水処理装置の概略図。
【図8】本発明の第8実施形態の排水処理装置の概略図。
【符号の説明】
【0070】
1 ベース
2 急速濾過器
3 バブル発生槽
4 活性炭吸着塔
5 中継槽
6 排ガス処理塔
7,7a 原水槽
10 マイクロナノバブル発生装置
22 水槽部
23 散水部
25 マイクロナノバブル発生装置
33,34 吸着塔内充填物
35 バブル発生槽内充填物
39 マイクロナノバブル発生装置
43 中継槽内充填物
44 水槽内充填物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水にマイクロナノバブルを導入して前記被処理水中の微生物を活性化させてから前記被処理水を活性炭に接触させ、
前記被処理水中の有機物を前記活性炭に吸着させるとともに、前記活性炭に吸着された有機物を、活性化した前記微生物により分解することを特徴とする排水処理方法。
【請求項2】
前記被処理水は、生物処理水に、急速濾過した有機フッ素化合物含有排水を混合したものであることを特徴とする請求項1に記載の排水処理方法。
【請求項3】
貯留する被処理水にマイクロナノバブルを導入するマイクロナノバブル発生装置を備えるバブル発生槽と、
活性炭が充填され、前記バブル発生槽から前記マイクロナノバブルを含む被処理水が供給される活性炭吸着塔とを有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項4】
有機フッ素化合物含有排水を急速濾過する急速濾過器をさらに有し、
前記バブル発生槽には、前記急速濾過器で濾過した前記有機フッ素化合物含有排水と、生物処理水とが導入されることを特徴とする請求項3に記載の排水処理装置。
【請求項5】
前記活性炭吸着塔は、さらに微生物が滞留可能な吸着塔内充填物が充填されていることを特徴とする請求項3または4に記載の排水処理装置。
【請求項6】
前記吸着塔内充填物は、ポリ塩化ビニリデンからなることを特徴とする請求項5に記載の排水処理装置。
【請求項7】
前記吸着塔内充填物は、ひも状またはリング状に形成されていることを特徴とする請求項5または6に記載の排水処理装置。
【請求項8】
前記バブル発生槽は、前記被処理水中に保持されるひも状のポリ塩化ビニリデンからなるバブル発生槽内充填物をさらに備えることを特徴とする請求項3から7のいずれかに記載の排水処理装置。
【請求項9】
前記活性炭吸着塔から流出する被処理水の一部を、前記バブル発生槽に環流することを特徴とする請求項3から8のいずれかに記載の排水処理装置。
【請求項10】
前記活性炭吸着塔から流出する被処理水の一部を、前記バブル発生槽の上流側に環流することを特徴とする請求項3から9のいずれかに記載の排水処理装置。
【請求項11】
生物処理水を貯留し、前記生物処理水にマイクロナノバブルを導入するマイクロナノバブル発生装置を備える水槽部と、
前記水槽部の上方に設けられ、前記被処理水から排出される排ガスが挿通され、前記排ガスに、前記水槽部に貯留する前記生物処理水を循環散布する散水部とからなる排ガス処理塔をさらに有することを特徴とする請求項3から10のいずれかに記載の排水処理装置。
【請求項12】
前記水槽部は、前記生物処理水中に保持され、微生物が滞留可能な水槽内充填物を備えることを特徴とする請求項11に記載の排水処理装置。
【請求項13】
前記水槽内充填物は、ひも状のポリ塩化ビニリデンであることを特徴とする請求項12に記載の排水処理装置。
【請求項14】
前記水槽内充填物は、リング状のポリ塩化ビニリデンであることを特徴とする請求項12に記載の排水処理装置。
【請求項15】
前記活性炭吸着塔から流出する被処理水を導入して、前記被処理水から前記排ガスを分離する中継槽をさらに有することを特徴とする請求項11から14のいずれかに記載の排水処理装置。
【請求項16】
前記中継槽は、前記被処理水にマイクロナノバブルを導入するマイクロナノバブル発生装置を備えることを特徴とする請求項15に記載の排水処理装置。
【請求項17】
前記中継槽は、前記被処理水中に保持され、微生物が滞留可能な中継槽内充填物をさらに備えることを特徴とする請求項16に記載の排水処理装置。
【請求項18】
前記中継槽内充填物は、ひも状のポリ塩化ビニリデンであることを特徴とする請求項17に記載の排水処理装置。
【請求項19】
前記中継槽内充填物は、リング状のポリ塩化ビニリデンであることを特徴とする請求項17に記載の排水処理装置。
【請求項20】
前記各構成要素を、軽量樹脂で形成し、共通のベース上に固定したことを特徴とする請求項3から19のいずれかに記載の排水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−253132(P2007−253132A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84467(P2006−84467)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】