説明

掘削作業車のキャノピ

【課題】掘削作業車のキャノピにおいて、ルーフを着脱式にした場合の該着脱部における部材間の着脱作業の容易化を図る。
【解決手段】キャノピ8は着脱式のルーフ60と、該着脱式のルーフ60を支持する三本以上の支柱により構成し、前記ルーフ60と、作業機側に配置される支柱62・63との接続位置は、着座時におけるオペレータの肩の位置よりも高い位置とし、乗降側の支柱64はルーフ60から着脱可能とすると共に、かつ、掘削作業車本体からも着脱可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブーム、アーム、バケットなどからなる作業機、および本体より立設された柱にルーフを取り付けた形状のキャノピを備える掘削作業車の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ブーム、アームおよびバケットなどからなる作業機、および本体より立設された柱にルーフを取り付けた形状のキャノピを備える掘削作業車の技術は公知となっている。
【特許文献1】実開昭52−064421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような掘削作業車のキャノピを設計する際には、以下の点が重要である。 キャノピが振動しやすい構造だと、例えば走行中の振動が大きかったり、ルーフに溜まった雨水が飛散したり、あるいは振動音が大きいなど、オペレータが不快に感ずる。このような振動を防止するためには、キャノピのルーフを支持する柱の強度や材質、配置、本数などの他、柱に取り付けられる壁板や屋根板材とフレームとの接合部の処理、さらに、ルーフを着脱式にした場合、該着脱部における部材間の接触・固定方法についても考慮する必要がある。
【0004】
また、ルーフを着脱式にした場合、着脱作業が容易であること、外したルーフの収納性、ルーフを外した状態における安全性等も考慮する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
請求項1においては、旋回台(4)の上方に、ボンネット(6)および座席(7)を配設し、該座席(7)の上方にキャノピ(8)を設け、更に、ブーム(13)とアーム(12)とバケット(11)より成る作業機を配設した掘削作業車のキャノピ(8)において、該キャノピ(8)は着脱式のルーフ(60)と、該着脱式のルーフ(60)を支持する三本以上の支柱により構成し、前記ルーフ(60)と、作業機側に配置される支柱(62・63)との接続位置は、着座時におけるオペレータの肩の位置よりも高い位置とし、乗降側の支柱(64)はルーフ(60)から着脱可能とすると共に、かつ、掘削作業車本体からも着脱可能に構成したものである。
【0006】
請求項2においては、請求項1記載の掘削作業車のキャノピにおいて、乗降側支柱(64)と嵌合部材とが嵌合したときに、該支柱(64)と嵌合部材との間に隙間を設けたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏する。
請求項1に示す如く、旋回台(4)の上方に、ボンネット(6)および座席(7)を配設し、該座席(7)の上方にキャノピ(8)を設け、更に、ブーム(13)とアーム(12)とバケット(11)より成る作業機を配設した掘削作業車のキャノピ(8)において、該キャノピ(8)は着脱式のルーフ(60)と、該着脱式のルーフ(60)を支持する三本以上の支柱により構成し、前記ルーフ(60)と、作業機側に配置される支柱(62・63)との接続位置は、着座時におけるオペレータの肩の位置よりも高い位置とし、乗降側の支柱(64)はルーフ(60)から着脱可能とすると共に、かつ、掘削作業車本体からも着脱可能に構成したので、オペレータの乗降作業が容易となるとともに、該支柱およびルーフの保管時に嵩張ることがない。また、ルーフを取り外して使用している際に、オペレータが乗降側の支柱に衣服を引っかけることがない。
【0008】
また、ブーム、アーム、バケットを備える作業機を含む掘削作業車において、三本以上の支柱と、着脱式のルーフとを備えるので、支柱が二本の場合に比べてルーフの振動が抑えられ、作業時の快適性およびキャノピの剛性が向上する。
また、ルーフが着脱式であるため、メンテナンス性が向上するとともに、低い位置に障害物があってルーフと干渉する恐れがある場所では、該ルーフを外して作業することも可能である。
【0009】
請求項2の如く、乗降側支柱(64)と嵌合部材とが嵌合したときに、該支柱(64)と嵌合部材との間に隙間を設けたので、平行でない複数の支柱にインロー部を容易に嵌装することが可能であり、嵌合部材を乗降側支柱に嵌装するのが容易であり、ルーフ着脱時の作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施の一形態である超小旋回作業車の左側面図、図2は本発明の実施の一形態である超小旋回作業車の正面図、図3は本発明の実施の一形態である超小旋回作業車の平面図、図4は作業機の左側面図。図5はキャノピを左前方から見た斜視図、図6はキャノピを右後方から見た斜視図、図7はキャノピの正面図、図8はキャノピの左側面図、図9はキャノピの後面図、図10はキャノピの右側面図、図11はキャノピの平面図。図12は従来のキャノピにおけるルーフ板材固定方法を示す模式図、図13は本発明の実施の一形態であるキャノピにおけるルーフ板材固定方法を示す模式図、図14は左後部支柱の縦断面図。図15は左後部支柱の連結部の構成を示す模式図、図16はルーフの左側面図、図17はルーフと支柱部との接続部位の平面断面図、図18はルーフと支柱部との接続部位の縦断面図、図19は従来のルーフと支柱部との接続部位の構成を示す模式図である。
【0011】
まず、図1から図3を用いて、本発明における掘削作業車の実施の一形態である超小旋回作業車1の全体構成について説明する。なお、本発明は作業機およびキャノピを備える掘削作業車に適用可能であって、本実施例である超小旋回作業車に限定されるものではない。
【0012】
超小旋回作業車1は、クローラ式走行装置2の上部略中央に旋回台軸受3を配置し、該旋回台軸受3により旋回台4を左右旋回可能に軸受支持している。また、クローラ式走行装置2の前後一端部(図1に示す実施例においては後端部)には、排土板5が上下回動可能に配設される。
【0013】
旋回台4の上方には、図示せぬエンジンや燃料タンクなどを被覆するボンネット6および座席7が配設され、該座席7の上方にはキャノピ(8)が設けられる。該キャノピ8の構成については後で詳述する。
【0014】
そして、旋回台4の前端部にはブームブラケット9が設けられ、作業機10の下端部が回動可能に枢支される。作業機10については後述する。座席7の周囲には作業機10やクローラ式走行装置2などを操作するためのレバーやフットペダルなどが配設される。
【0015】
次に、図4を用いて作業機10の構成について説明する。
作業機10は、バケット11、アーム12、ブーム13、およびこれらを作動させるための油圧シリンダ群や油圧配管系統などで構成される。なお、ブーム13は詳細には、第一ブーム17、第二ブーム18および第三ブーム19が回動支点により枢支された構成となっている。
【0016】
作業用アタッチメントであるバケット11は、回動支点11aにおいてアーム12の先端部に前後回動可能に枢支される。そして、アーム12の根元部より上方に突設されたアームブラケット14に設けられたボトム側支持点16aと、バケット11のリンク機構15に設けられたロッド側支持点16bとの間にバケットシリンダ16が介装される。該バケットシリンダ16が伸縮することによりバケット11の回動が行われる。
【0017】
アーム12の根元部は、回動支点12aにおいて第三ブーム19の先端部に上下回動可能に枢支される。そして、前記アームブラケット14に設けられたロッド側支持点20bと、第三ブーム19に設けられたボトム側支持点20aとの間にアームシリンダ20が介装される。該アームシリンダ20が伸縮することによりアーム12の回動が行われる。
【0018】
第三ブーム19の根元部は、回動支点19aにおいて第二ブーム18の先端部に左右回動可能に枢支される。また、第二ブーム18の根元部は、回動支点18aにおいて第一ブーム17の先端部に左右回動可能に枢支される。第三ブーム19左側面には、後述する平行リンク22の上端部22aを回動可能に枢支するためのリンクブラケット37が固設される。そして、前記第二ブーム18の左側面において先端部寄りにブラケット52が固設され、該ブラケット52に設けられたロッド側支持点21bと、第一ブーム17の左側面において先端部寄りに設けられたボトム側支持点21aとの間にオフセットシリンダ21が介装される。該オフセットシリンダ21が伸縮することにより第二ブーム18の回動が行われる。第一ブーム17と第三ブーム19との間には平行リンク22が左右回動可能に介装され、該平行リンク22の上端部22aは前記リンクブラケット37に枢支されるとともに、下端部22bは第一ブーム17の左側面先端部付近に枢支される。このように構成することにより、第二ブーム18を左右に回動させると、平行リンク22も連動して左右に回動し、第三ブーム19より先端側(より具体的には、第三ブーム19、アーム12、バケット11)は、その上面が左右に傾斜することなく、左右に揺動(オフセット移動)する。
【0019】
第一ブーム17の根元部は、回動支点17aにおいて前記ブームブラケット9に上下回動可能に枢支される。そして、第一ブーム17の前面において先端部寄りに設けられたロッド側支持点23bと、ブームブラケット9に設けられたボトム側支持点23aとの間にブームシリンダ23が介装される。該ブームシリンダ23が伸縮することにより第一ブーム17の回動が行われる。このとき、ブームシリンダ23は第一ブーム17の前面側に配置されており、側溝堀り作業時にはブームシリンダ23のロッドが障害物に干渉しないように、保護カバー24が該ロッドより前方側に設けられている。
【0020】
上述の作業機10に設けられた油圧シリンダ群には、それぞれ図示せぬ制御バルブより延設された油圧配管が連結される(具体的には、バケットシリンダ16には配管25・26、アームシリンダ20には配管27・28、オフセットシリンダ21には配管29・30、ブームシリンダ23には配管31・32が連結される)。
【0021】
次に、本発明の要部であるキャノピの構成について、図5から図19を用いて説明する。
図2および図3に示すように、キャノピ8は旋回台4上(座席7)の進行方向右側から座席7上方を覆うように配置され、該キャノピ8の右前方にブームブラケット9を配置して、該ブームブラケット9に作業機10が上下回動可能に枢支される。従って、作業機10は、キャノピ8の右側面に沿って上下回動するように構成されている。更に、第三ブーム19より先端側は左右に平行移動可能であるため、ブームを後方へ回動した収納位置においては、キャノピ8と第二ブーム18やシリンダ等が干渉するので、キャノピ8左上部には斜面と凹部が形成されている。
【0022】
以後の説明では、作業機10と対向するキャノピ8の右側面側を「作業機側」、旋回台4の左端に面するキャノピ8の左側面側を「乗降側」と呼ぶことにする。なお、本実施例の超小旋回作業車1においてはキャノピ8が旋回台4の略中央から左側に配置されているが、キャノピを旋回台の右側に配置しても同様の効果を奏する。この場合、作業機側はキャノピの左側面側であり、乗降側はキャノピの右側面側である。したがって、「作業機側」とはキャノピ右側面側には限定されない。
【0023】
本実施例におけるキャノピ8は、着脱式のルーフ60と、三本の支柱である右前部支柱62、右後部支柱63および左後部支柱64を備える支柱部61とで構成される。本実施例において、右前部支柱62および右後部支柱63は座席7に対して右側、すなわち作業機側に配置される。そして、本実施例において、左後部支柱64は座席7に対して左側かつ後方、すなわち乗降側後方に配置され、それぞれ旋回台4上に固定される。
【0024】
このように構成することにより、支柱が二本の場合に比べてルーフの振動が抑えられ、作業時の快適性およびキャノピの剛性が向上する。また、支柱の配置を作業機側に二本、乗降側後方に一本とすることにより、オペレータの乗降が容易である。さらにルーフが着脱式であるため、メンテナンス性が向上するとともに、低い位置に障害物があってルーフと干渉する恐れがある場所では、該ルーフを外して作業することも可能である。
【0025】
ルーフ60は、パイプを曲げて正面視略L字型、側面視門型に成形したルーフフレーム(65)に、正面視略L字型で、樹脂材料や金属材料からなる一体成型のルーフ板材66を取り付けたものである。
【0026】
図12に示すように、従来のルーフ112は、ルーフ板材113をルーフフレーム114へ取り付ける際に、ルーフフレーム114よりステー115を突設し、該ステー115とルーフ板材113とが重なる部分においてルーフ板材113およびステー115に孔を穿設し、該孔を用いてボルト116、ナット117および座金118により締結していた。しかし、この方法では組み立て工数・部品点数とも多くなり、製造コストが増大する。また、ステー115やルーフフレーム114とルーフ板材113とが接触する部位で振動音が発生し易いため、場合によってはゴム板などの弾性材料からなる制振部材を介装する必要があった。
【0027】
一方、本実施例のキャノピ8では、図13に示すように、ルーフ板材66の端部66aはルーフフレーム65の上曲面に沿って載置可能に曲げ加工される。そして、ルーフ板材66の端部66aとルーフフレーム65との接触部位に接着剤67が塗布されることにより固定される。該接着剤は接着とシール(雨水を隙間から透過させない)を兼ねるとともに、硬化後も弾性を有しており制振効果がある。本実施例においては、該接着剤としてポリウレタン系の二成分系接着剤を用いたが、ポリウレタン系の一成分系接着剤でもよく、前述の効果を有する接着材であれば他の接着剤でも良い。
【0028】
このように構成することにより、前記接着剤67はルーフフレーム65とルーフ板材66との固定手段であり、雨水などがルーフ60上面よりオペレータ側に浸透するのを防止するシール材であるとともに、ルーフフレーム65とルーフ板材66との間で発生する振動を吸収する制振部材の機能をも果たす。従って、図12におけるステー115やボルト116、制振部材などを省略することが可能であるとともに、組み立て時の作業性も優れている。また、ルーフ板材66の端部66aはルーフフレーム65に沿うように形成されていることから、断面が円形のフレームなどと接着する際にも接着面積が広く、接着部位の密着が容易で強度が高い。そして、端部66aの曲げ加工はルーフ板材66の成型時に合わせて行われるので、組み立て工数が増加せず、コスト削減に寄与する。さらに、接着部67は、仮にルーフフレーム65に外力が加わって少し撓んだ場合でも、その変形量をある程度までは弾性的に吸収可能である。その結果、従来のルーフ112のようなボルト締結部(ボルト116、ナット117、座金118によりルーフフレーム114にルーフ板材113を固定している部位)に比べて、ルーフ板材113の変形・破損を低減することが可能である。
【0029】
次に、ルーフ60と支柱部61との嵌装部の構成について説明する。
図16に示すように、ルーフ60の構造体を成すルーフフレーム65の両端部は、それぞれ右前部支柱62および右後部支柱63の上端に嵌装するためのインロー部65a・65bが下方に突出して設けられる。インロー部65a・65bは略円柱形状であり、該インロー部65a・65bの上端には鍔形状のストッパー65c・65cが設けられる。一側(後側)のインロー部65b(69も含む)は、円柱状として略下方を向いている。これに対し他側(前側)インロー部65aは、斜め前下がりの傾斜とする右前部支柱62の延長線上に位置し、円柱状部分の前面は鉛直方向に斜めに切断された面としている。つまり、略円柱形状部分のインロー部65a・65bは互いに平行でないが、インロー部65a前面(斜めカット面)とインロー部65bは平行に構成されている。
【0030】
一方、右前部支柱62および右後部支柱63の上端部は開口しており、該開口部62a・63aに前記インロー部65a・65bがそれぞれ嵌装される。座席7に対して右前方に位置する右前部支柱62は、図8に示す如く、超小旋回作業車1の本体上にボルト固定され下端に設けるブラケット部62bから中途部62cにかけては略上方に立設されているが、該中途部62cより上端の開口部62aまではやや後方に屈曲し、傾いた形状を有している。一方、座席7に対して右後方に位置する支柱63は、図8に示す如く、超小旋回作業車1の本体にボルト固定される後部ステー68より斜め後方に立設され、中途部63bにおいて開口部63aを略鉛直上方に向けるように屈曲している。このように右前部支柱62を後方に屈曲した形状としたのは、オペレータの視認性・作業性向上、および障害物との干渉防止のためである。
【0031】
前述したように、右前部支柱62および右後部支柱63は、その開口部62a・63a近傍において互いに平行ではない。従って、インロー部65a・65bの形状が通常の円柱形状のままでは、インロー部65a・65bを開口部62a・63aに容易に嵌挿することができず、ルーフ60の着脱作業が煩雑になってしまう。そこで、図16に示す如く、本実施例ではインロー部65aの内、ルーフ60を略下方に下降させて右前部支柱62および右後部支柱63に嵌装するときに、開口部62aと干渉する部分(図16中の斜線部)を斜めに切除した。
【0032】
このように構成することにより、平行でない柱62・63にインロー部65a・65bを嵌挿するときに、挿入方向と軸心方向が一致するインロー部65bと右後部支柱63はそのまま嵌装することができ、挿入方向と軸心方向が異なるインロー部65aと右前部支柱62の場合には、インロー部65aを右前部支柱62の開口部62a上端から挿入方向下方に占める空間(斜線で示す部分)と同じ形状とすることで、容易にインロー部65a・65bを柱62・63に嵌挿することが可能であり、ルーフ60を着脱する際の作業性が向上する。なお、本実施例においては三本の支柱を有し、着脱式のルーフを備えたキャノピについて説明したが、ルーフ部分が着脱式であって、該支柱が互いに平行でないものを含む場合は、支柱が二本でも、あるいは四本以上でも本発明のインロー部の構造を応用可能であって、支柱の本数は二本以上であれば限定されない。
【0033】
さらに、必要な強度を確保可能な範囲で、ルーフ60の構造体を成すルーフフレーム65の直径を、支柱部61を構成する右前部支柱62・右後部支柱63・左後部支柱64の直径よりも小さくすることにより、ルーフ60を軽量化し、振動を低減可能であるとともに、ルーフ60の着脱作業が容易となる。また、ルーフフレーム65の外径が、パイプである右前部支柱62・右後部支柱63・左後部支柱64の内径と略一致するものを選択することにより、インロー部65a・65bを成形する際の加工工数を減らし、製造コストを削減することが可能である。
【0034】
次に、図14および図15を用いて左後部支柱64の詳細構成の説明を行う。
座席7に対して左後方に位置する左後部支柱64は、その上下両端がそれぞれ開口部64a・64bとなっている。そして、ルーフ60固定時において、上端の開口部64aにルーフフレーム65の中途部に下向きに突設された嵌合部材である突起部69が嵌装される。一方、右後部支柱63側方より突設される支持パイプ70は、その中途部において段階的に屈曲され、その先端が略上方に向けられるとともに、該先端に嵌合部材である嵌合部71が設けられる。該嵌合部71に前記支柱64下端の開口部64bが嵌装される。
【0035】
ルーフフレーム65の中途部に設けられた突起部69は略円柱形状であって、側面に係止孔69aが穿設されている。一方、支持パイプ70先端に設けられた嵌合部71は略円柱形状であって、その側面に全周にわたって係止溝71aが設けられている。ただし、突起部69の外径は、左後部支柱64の内径に比べて小さくしておき、突起部69が、左後部支柱64の上端開口部64aに嵌装されたときに隙間が形成され、多少のガタが生じるように構成する。ルーフ60を支柱部61に固定するときは、まず前述したインロー部65a・65bをそれぞれ右前部支柱62・右後部支柱63に嵌装し、次に左後部支柱64の上端開口部64aに、ルーフ60の突起部69を嵌装するが、上述の如く、突起部69と上端開口部64aとは隙間が形成され、多少のガタを持っている。
【0036】
このように構成することにより、ガタがない(すなわち突起部69の外径と、左後部支柱64の内径の寸法精度が良い)場合に比べて突起部69を左後部支柱64に嵌装するのが容易であり、ルーフ脱着時の作業性が良い。
【0037】
次に、左後部支柱64の上下端の固定手順について説明する。
まず、左後部支柱64の両端を、それぞれ突起部69および嵌合部71に嵌装する。左後部支柱64の両端近傍には、外側面より、パイプである左後部支柱64内面に貫通する孔が設けられ、該孔に一致する位置に、溶接等の方法で雌ネジ部72・73がそれぞれ固設されている。次に、突起部69と対応する側の雌ネジ部72に、予めロックナット74を奥まで螺挿しておいたボルト76を、係止孔69aの奥面とボルト76先端とが当接し、かつ突起部69側面と左後部支柱64内面とが当接するまでねじ込んで締結する。続いて、嵌合部71と対応する側の雌ネジ部73に、予めロックナット75を奥まで螺挿しておいたボルト77を、係止溝71aの底面とボルト77先端とが当接し、かつ嵌合部71側面と左後部支柱64内面とが当接するまでねじ込んで締結する。最後にロックナット74・75をそれぞれ雌ネジ部72・73に当接するまでねじ込んで締結し、ボルト76・77の緩み止めとする。
【0038】
上述の如く左後部支柱64を構成することは、以下のような利点がある。すなわち、単にルーフ60と支柱部61との着脱を可能とするのであれば、左後部支柱64の上端または下端のいずれかが着脱可能であれば足り、もしくは左後部支柱64を上下二分割とし、それぞれルーフ60・支柱部61に固設して、該分割部にて着脱するよう構成してもよい。
【0039】
しかし、左後部支柱64の下端部が固設されている場合、ルーフ60を外すと左後部支柱64が座席7の後部より立設された状態になる。この状態ではオペレータが乗降時に衣服を左後部支柱64の上端に引っかける場合があるため、好ましくない。また、左後部支柱64の上端部が固設されている場合、ルーフ60を外す際には、ルーフ60と左後部支柱64とは一体となっている訳であるが、左後部支柱64は長く下方に伸びている。そのため、外した後ルーフ60を保管する際に安定した姿勢で載置できない上、嵩張るという問題がある。左後部支柱64を上下二分割とし、それぞれルーフ60・支柱部61に固設して、該分割部にて着脱する構成とすると、ルーフ60の保管に関しては左後部支柱64の上端が固設される場合よりも改善される。しかし、左後部支柱64の下半部が座席7の後部より立設された状態となって、オペレータが乗降時に衣服を該支柱に引っかける場合があるため、好ましくない。本発明の如く、左後部支柱64の上下両端部を着脱可能に構成することにより、オペレータの乗降作業が容易となるとともに、ルーフ保管時に嵩張ることがない。
【0040】
次に、ルーフ60と支柱部61との接続部位の構成について図5、図8、図17および図18を用いて説明する。なお、図17はルーフ60と支柱部61とが固定されている状態における接続部位の平面断面図であり、図8におけるA−A断面に相当する。また図18はルーフ60と支柱部61とが固定されている状態における接続部位の縦断面図であり、図8におけるB−B断面に相当する。
ルーフ60と支柱部61とを接続する際には、まずインロー部65a・65bをそれぞれ右前部支柱62および右後部支柱63に嵌装する。そして、ルーフ60と支柱部61にそれぞれ接続部78・79を設け、該接続部同士を固定する。
【0041】
接続部78はルーフ60を構成する部材の一つであり、該接続部78の両端がルーフフレーム65両端のインロー部65a・65b間に前後水平方向に横設して固設された板状部材である。該接続部78には孔が二箇所穿設され、該孔に一致するように雌ネジ部80・80が固設されている。該雌ネジ部80・80にはそれぞれ座金81が嵌装されたボルト82・82が螺挿される。そして、ルーフ板材66の端部66aが、ルーフフレーム65および接続部78に、前述した接着剤などの方法で固定されている。
【0042】
接続部79は、支柱部61を構成する部材の一つであり、その両端が右前部支柱62・右後部支柱63の上端近傍側面に前後水平方向に横設して固設された板状部材である。接続部79の上縁部79aには、ルーフ60と支柱部61とを接続したときにボルト82と一致する位置に、スリット83・83が設けられる。またルーフ60を支柱部61に固定するときに、右前部支柱62および右後部支柱63と接続部78とが干渉する部位には、溝84および溝85が設けられている。そして、右前部支柱62、右後部支柱63、下部板材86および接続部79により、支柱部61の作業機側側面は閉じた矩形の構造物となっている。該矩形構造物に囲まれた部分には樹脂材料などからなる側壁板材87が設けられる。該側壁板材87は透明な部材により構成されることが視認性の観点から見て好ましい。
【0043】
このように構成することは、以下のような利点がある。
第一に、ルーフ60、および支柱部61の作業機側側面はいずれも矩形の構造物を構成しているため、それぞれ単体でも剛性が向上している。そのため、ルーフ60を支柱部61に固定した状態だけでなく、外した状態でも剛性が向上している。また、ルーフ60および支柱部61に各種板材を固定する際にも、板材の端部を全周にわたって接着などの方法で固定可能であり、更なる剛性向上と振動防止とが可能である。
【0044】
第二に、作業機側には、ルーフ60を外した状態でも、作業機10とオペレータが着座する座席7との間に接続部79、側壁板材87および下部板材86からなる隔離壁が形成される。この隔離壁の上端である接続部79の高さは、ちょうど座席7にオペレータが着座したときに、オペレータの肩の高さ付近に来るよう構成されている。従って、ルーフ60の着脱にかかわらず、誤ってオペレータの手や頭部が作業機の可動範囲内に出ることがない。また乗降側の左後部支柱64は下端部から取り外すことが可能であり、ルーフ60を外した場合でも安全性と作業性が両立されるのである。
【0045】
第三に、ルーフ60と支柱部61の両方にそれぞれ接続部78・79を設け、該接続部間をボルト締結してルーフ60と支柱部61とを固定するので、ルーフ60の着脱作業が従来の方法と比較して簡便、かつ着脱作業に係る固定手段(ボルトなど)の部品点数を削減可能である。
【0046】
図19に示すように、従来のキャノピ121は着脱式のルーフ131と、二本の支柱122・130を備える支柱部132からなり、ルーフ131と支柱部132との固定を行う際には、ルーフ131の構造体であるフレーム119の前端部119aに嵌設されたインロー部120を支柱130に嵌装し、フレーム119の後端に設けられた嵌合部119bと、支柱122の上端に設けられた嵌合部122aとを嵌合する。これらの嵌合部は側面視でクランク型に嵌合しており、後方に傾いた支柱130に通常の円柱形状のインロー部120を嵌装する場合において着脱可能に構成されている。該嵌合部同士を固定ボルト126・127で締結する。さらに、支柱130の側面に螺挿された固定ボルト128・129によりインロー部120と支柱130とを締結する。支柱130・122間に横架・固設された補強部材123の中途部には、ステー124が突設されている。そして、該ルーフ板材126に設けられた孔を貫通して、該ステー124に設けられた螺孔に固定ボルト125を螺設する。このとき、固定ボルト125の締結は作業機側から行わなければならず、かつルーフ131を外すときには、少なくとも五本のボルト(具体的には固定ボルト125・126・127・128・129)を外さねばならなかったのである。
【0047】
本構成では、前述した左後部支柱64の着脱も含め、ルーフ60の着脱作業に係るボルトなどの着脱手段は全てキャノピ8内で行うことができ、作業機側に回って固定ボルトを操作する必要もないので、狭い場所でも着脱作業を容易に行うことが可能である。また、接続部78・79を二箇所のボルト82・82で固定するだけでよいので、着脱手段であるボルトなどの部品点数を削減可能であるとともに、ルーフ60の着脱作業を迅速に行うことが可能である。
【0048】
第四に、図19に示す従来のキャノピ121は、ルーフ板材126の下端部がフレームなどの構造体に沿って接着剤などで固定されておらず、固定ボルト125の一箇所で固定されるため、ルーフ板材126が振動音を発生する場合があったのに対して、本発明では接続部78に沿って接着されているため、振動防止および強度に優れている。
【0049】
第五に、本発明ではルーフ60の固定手段であるボルト82が嵌入される接続部79側の孔が、上縁部79まで切り欠かれてスリット83・83を形成しているため、ルーフ60の着脱時にはボルト82を少しゆるめるだけで良く、作業性に優れるとともに、ボルト82を紛失することがない。
【0050】
第六に、前記ルーフと、作業機側に配置される支柱との接続位置が、着座時におけるオペレータの肩の位置よりも高いので、ルーフを外した状態でも作業機側に隔離壁が形成され、ルーフの着脱にかかわらず、誤ってオペレータの手や頭部が作業機の可動範囲内に出ることがない。
【0051】
第七に、前記着脱式のルーフの着脱手段を着座位置から操作するので、作業機側に回って固定ボルトなどの着脱手段を操作する必要がなく、狭い場所でも着脱作業を容易に行うことが可能である。
また、着脱手段であるボルトなどの部品点数を削減可能であるとともに、ルーフの着脱作業を迅速に行うことが可能である。
【0052】
第八に、着脱式のルーフのルーフフレームを成すパイプの径が、該ルーフを支持する支柱を成すパイプの径よりも小さいので、ルーフを軽量化し、振動を低減するとともに、ルーフの着脱作業が容易となる。
【0053】
第九に、ブーム、アーム、バケットを備える作業機を含む掘削作業車において、着脱式のルーフ、および該ルーフを支持する複数の支柱を備え、ルーフに固設された板材と、支柱に固設された板材とが重なり合うとともに、両板材に着脱手段が設けられるので、ルーフ、および支柱の作業機側側面はいずれも矩形の構造物を構成しているため、それぞれ単体でも剛性が向上し、ルーフを支柱に固定した状態だけでなく、外した状態でも剛性が向上している。また、ルーフおよび支柱に各種板材を固定する際にも、板材の端部を全周にわたって接着などの方法で固定可能であり、更なる剛性向上と振動防止とが可能である。さらに、着脱手段であるボルトなどの部品点数を削減可能であるとともに、ルーフの着脱作業を迅速に行うことが可能である。
【0054】
第十に、前記着脱手段として、一方の板材にスリットを設けたので、ルーフ着脱時には着脱手段を構成する部材の一つであるボルトを少しゆるめるだけで良く、作業性に優れるとともに、着脱手段の紛失防止が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の一形態である超小旋回作業車の左側面図。
【図2】本発明の実施の一形態である超小旋回作業車の正面図。
【図3】本発明の実施の一形態である超小旋回作業車の平面図。
【図4】作業機の左側面図。
【図5】キャノピを左前方から見た斜視図。
【図6】キャノピを右後方から見た斜視図。
【図7】キャノピの正面図。
【図8】キャノピの左側面図。
【図9】キャノピの後面図。
【図10】キャノピの右側面図。
【図11】キャノピの平面図。
【図12】従来のキャノピにおけるルーフ板材固定方法を示す模式図。
【図13】本発明の実施の一形態であるキャノピにおけるルーフ板材固定方法を示す模式図。
【図14】左後部支柱の縦断面図。
【図15】左後部支柱の連結部の構成を示す模式図。
【図16】ルーフの左側面図。
【図17】ルーフと支柱部との接続部位の平面断面図。
【図18】ルーフと支柱部との接続部位の縦断面図。
【図19】従来のルーフと支柱部との接続部位の構成を示す模式図。
【符号の説明】
【0056】
1 超小旋回作業車(掘削作業車)
10 作業機
11 バケット
12 アーム
16 バケットシリンダ
17 第一ブーム
18 第二ブーム
19 第三ブーム
60 ルーフ
61 支柱部
62 右前部支柱
63 右後部支柱
64 左後部支柱
65 ルーフフレーム
65a・65b インロー部
66 ルーフ板材
66a 端部
67 接着剤
69 突起部
71 嵌合部
78 接続部
79 接続部
80 雌ネジ部
81 座金
82 ボルト
83 スリット
86 下部板材
87 側壁板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回台の上方に、ボンネットおよび座席を配設し、該座席の上方にキャノピを設け、更に、ブームとアームとバケットより成る作業機を配設した掘削作業車のキャノピにおいて、該キャノピは着脱式のルーフと、該着脱式のルーフを支持する三本以上の支柱により構成し、前記ルーフと、作業機側に配置される支柱との接続位置は、着座時におけるオペレータの肩の位置よりも高い位置とし、乗降側の支柱はルーフから着脱可能とすると共に、かつ、掘削作業車本体からも着脱可能に構成したことを特徴とする掘削作業車のキャノピ。
【請求項2】
請求項1記載の掘削作業車のキャノピにおいて、乗降側支柱と嵌合部材とが嵌合したときに、該支柱と嵌合部材との間に隙間を設けたことを特徴とする掘削作業車のキャノピ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−328945(P2006−328945A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−182607(P2006−182607)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【分割の表示】特願2002−144063(P2002−144063)の分割
【原出願日】平成14年5月20日(2002.5.20)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】