説明

接合装置及び接合方法

【課題】 対象物の洗浄処理に係る構成を簡素化し、金属接合を容易に実現する。
【解決手段】 接合装置101は、電子部品1を保持する吸着ノズル11、回路基板2を上記電子部品と対向させて保持する基板ステージ9、及び位置決めが施された状態の上記電子部品と上記回路基板との間の照射位置に配置可能なエキシマ紫外線ランプ21を備える。このような上記接合装置において、上記電子部品の金バンプ及び上記回路基板の基板電極に対する紫外線の照射が上記エキシマ紫外線ランプにより同時に行われて両金属部の洗浄処理を行った後、両金属部を互いに接触させた状態で超音波振動を付与して、両金属部の金属接合を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物同士を接合する接合装置及び接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物同士を接合する装置では様々な接合方法が利用されており、金属部を有する対象物同士を比較的低温にて接合する方法の1つとして、金属部にプラズマを照射し、吸着物質の除去、表面の活性化等の洗浄を施した上で金属部同士を接合する方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、プリント基板等の回路基板に電子部品を実装する装置において、回路基板の電極にプラズマを照射して洗浄した上で電子部品の電極と接合する技術が提案されており、特許文献2では、2つのICチップのアルミ電極上に形成された金スタッドバンプにプラズマによる洗浄処理を施し、バンプ表面の汚れを除去した後に互いのバンプ同士を加熱状態にて加圧して接合する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−60602号公報
【特許文献2】特開2002−368039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来におけるプラズマを用いて電子部品と回路基板との接合を行う装置では、減圧状態とされた処理空間において高周波電圧を印加することにより発生させたプラズマを、電子部品または回路基板に照射して電極の洗浄処理が行われる。このため、電極の洗浄処理に係る構成として、プラズマ処理用の処理空間を形成するチャンバやプラズマを発生させる機構等、高価かつ複雑な構成が必須となり、装置の構成を簡素化することが困難となるという問題がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、対象物同士の接合において、当該対象物の洗浄処理を行う構成を簡素化し、金属接合を容易に実現することができる接合装置及び接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0007】
本発明の第1態様によれば、第1の対象物の第1金属部と第2の対象物の第2金属部とを接合する接合装置において、
上記第1の対象物を保持する第1保持部と、
上記第1の対象物の上記第1金属部に上記第2金属部が対向するように上記第2の対象物を保持する第2保持部と、
上記第1保持部により保持された上記第1の対象物の上記第1金属部と、上記第2保持部により保持された上記第2の対象物の上記第2金属部とに紫外線を照射して、当該第1金属部及び第2金属部のそれぞれの表面より接合阻害物質の除去を行う紫外線照射部と、
上記第1保持部と上記第2保持部とを相対的に近づけて、上記紫外線照射装置により上記接合阻害物質の除去が行われた上記第1金属部と上記第2金属部とを互いに接触させながら、当該第1金属部又は当該第2金属部に超音波振動又は熱を付与して金属接合を行う金属接合部とを備えることを特徴とする接合装置を提供する。
【0008】
本発明の第2態様によれば、上記紫外線照射部は、紫外線発生源として、160〜180nmの範囲の波長の紫外線を照射するエキシマ紫外線ランプを備える第1態様に記載の接合装置を提供する。
【0009】
本発明の第3態様によれば、上記紫外線照射部は、上記第1保持部と上記第2保持部との間における紫外線照射位置と、当該第1保持部と当該第2保持部との間より退避された退避位置との間で、上記エキシマ紫外線ランプを移動させるランプ移動装置を備え、
当該ランプ移動装置により上記エキシマ紫外線ランプが上記退避位置に位置された状態にて、上記金属接合部による金属接合が行われる第2態様に記載の接合装置を提供する。
【0010】
本発明の第4態様によれば、上記紫外線照射部による上記第1金属部及び上記第2金属部に対する紫外線の照射が大気雰囲気中において行われる第1態様から第3態様のいずれか1つに記載の接合装置を提供する。
【0011】
本発明の第5態様によれば、上記紫外線照射部による上記第1金属部及び上記第2金属部に対する紫外線の照射が酸素濃度10%以下の低酸素雰囲気中において行われる第1態様から第3態様のいずれか1つに記載の接合装置を提供する。
【0012】
本発明の第6態様によれば、上記第1保持部、上記第2保持部、上記紫外線照射部、及び上記金属接合部がその内部に配置され、当該内部空間を密閉可能なチャンバと、
当該チャンバ内空間を減圧する減圧装置とを備え、
上記紫外線照射部による上記第1金属部及び上記第2金属部に対する紫外線の照射が減圧環境において行われる第1態様から第3態様のいずれか1つに記載の接合装置を提供する。
【0013】
本発明の第7態様によれば、上記紫外線照射部は、上記紫外線の照射により、上記第1金属部及び上記第2金属部を加熱する機能を有している第1態様から第6態様のいずれか1つに記載の接合装置を提供する。
【0014】
本発明の第8態様によれば、上記第1の対象物及び上記第2の対象物は、上記金属接合によりその内部に電子部品が収容される空間を形成する容器部材である第1態様から第7態様のいずれか1つに記載の接合装置を提供する。
【0015】
本発明の第9態様によれば、上記第1の対象物が、上記第1金属部として電極部を有する電子部品であって、
上記第2の対象物が、上記第2金属部として基板電極を有する回路基板である第1態様から第8態様のいずれか1つに記載の接合装置を提供する。
【0016】
本発明の第10態様によれば、第1の対象物の第1金属部と第2の対象物の第2金属部とを接合する接合方法において、
上記第1の対象物を保持するとともに、当該第1の対象物の上記第1金属部に上記第2金属部が対向するように上記第2の対象物を保持して、
上記第1金属部と上記第2金属部とに紫外線を照射して、当該第1金属部及び第2金属部のそれぞれの表面より接合阻害物質の除去を行い、
その後、上記第1の対象物と上記第2の対象物とを近づけて、上記第1金属部と上記第2金属部とを互いに接触させながら、当該第1金属部又は当該第2金属部に超音波振動又は熱を付与して金属接合を行うことを特徴とする接合方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、対象物の洗浄処理に係る構成を簡素化し、金属接合を容易に実現することができる。さらに、金属接合を行う前に、上記それぞれの対象物における金属部の表面に対して紫外線を照射し、接合阻害物質の除去を行うことで清浄面を露呈させた状態とさせ、その後両金属部を接触させて金属接合を行っているため、その接合強度を向上させることができる。また、洗浄処理に用いられる紫外線として、160nm〜180nmの範囲の波長の紫外線を用いることにより、上記接合阻害物質の除去を効果的に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
(第1実施形態)
本発明の第1の実施形態にかかる接合装置の一例である接合装置101の模式構成図を図1に示す。接合装置101は、第1の対象物の一例である電子部品1を、第2の対象物一例である回路基板2における所定の位置に接合して、回路基板2への電子部品1の実装を行う装置である。
【0020】
図1に示すように、接合装置101は、複数の電子部品1が供給可能に配置された部品トレイ3を複数収容する部品マガジン4と、部品マガジン4から選択的に取り出された部品トレイ3を装置架台5上に配置された部品供給ステージ6上に配置させるように搬送するトレイ搬送装置7とが備えられている。また、接合装置101は、それぞれの電子部品1が接合されて実装される回路基板2を複数収容する基板マガジン8と、回路基板2を解除可能に保持する第2保持部の一例である基板ステージ9と、基板マガジン8に収容されている回路基板2を基板ステージ9上に載置可能に搬送する基板搬送装置10とを備えている。
【0021】
さらに、図1に示すように、接合装置101には、電子部品1を解除可能に吸着保持する第1保持部の一例である吸着ノズル11を備え、回路基板2に対する電子部品1の接合動作を行う接合ヘッド12と、この接合ヘッド12を回路基板2の大略表面沿いの方向である図示Y軸方向に進退移動させるヘッド移動装置13と、上記大略表面沿いの方向であってY軸方向と直交する方向であるX軸方向に基板ステージ9を進退移動させる基板移動装置14とが備えられている。なお、ヘッド移動装置13や基板移動装置14は、ボールネジ軸機構等を用いて構成することができ、例えば、ヘッド移動装置13は、接合ヘッド12に固定された図示しないナット部と螺合され、接合ヘッド12のY軸方向の移動を案内するヘッド移動ガイド13aと、このヘッド移動ガイド13aをその軸心回りに回転駆動させることで上記ナット部の移動を駆動するモータ13bとを備えている。なお、吸着ノズル11は、中心部に真空吸引用の吸引路を有しており、先端に形成された吸引口から吸引を行うことにより、電子部品1の吸着保持を行うことが可能となるとともに、当該吸引を停止することにより吸着保持の解除を行うことが可能となっている。
【0022】
また、接合ヘッド12は、図示Z軸方向に沿って吸着ノズル11を昇降させる昇降装置15と、ホーン16を介して吸着ノズル11に超音波振動を付与する発振部である超音波振動子17を備えている。
【0023】
さらに、図1に示すように、接合装置101には、基板ステージ9により保持された回路基板2における電子部品1が接合される位置(接合位置)を認識する認識カメラ18が備えられている。この認識カメラ18は、図示しない移動装置により回路基板2の上方へ移動され、上記接合位置の画像を撮像することにより当該接合位置を認識することが可能となっている。また、上記画像の撮像を行わない場合には、上記移動装置により回路基板2の上方から退避された位置に移動される。
【0024】
ここで、接合装置101において取り扱われる電子部品1及び回路基板2の構成について図2及び図3の模式断面図を用いて説明する。図2に示すように、電子部品1の図示下面には、複数の電極パターン1aが形成されており、それぞれの電極パターン1aには金属部の一例である電極部として金(Au)バンプ1bが形成されている。なお、この金バンプ1bは、ボールバンプやメッキバンプとして形成することができる。また、本第1実施形態においては、金バンプ1bが形成されているような場合について説明するが、その形成材料は金のみに限定されるものではなく、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)等の金属が用いられるような場合であってもよい。また、図3に示すように、回路基板2におけるそれぞれの電子部品1が接合される側の表面には、それぞれの電子部品1の電極パターン1aの配置と合致するように、金属部の一例である複数の基板電極2aが、例えば金(Au)により形成されている。なお、回路基板2の基板電極2aの形成材料は、金により形成される場合のみならず、電子部品1と同様に様々な金属材料により形成することができる。また、このような電子部品1としては、比較的熱に弱いという特性を有する電子部品、例えば、LEDチップ、半導体ベアチップ部品、SAW(Surface Acoustic Wave:表面弾性波)フィルタ等の電子部品が用いられ、例えば、長さ2mm×幅2mm程度の大きさを有する比較的小型の電子部品が用いられる。
【0025】
また、図1に示すように、接合装置101には、電子部品1の金バンプ1bと、回路基板2の基板電極2aに対して、紫外線を照射することで、それぞれの金バンプ1bと基板電極2aの表面に形成されている接合阻害物質の除去を行う紫外線照射装置20が備えられている。紫外線照射装置20は、上記紫外線として、160〜180nmの範囲の波長を有する紫外線、例えば172nmの波長を有する紫外線を照射する紫外線発生源としてエキシマ紫外線ランプ21と、回路基板2の上方に位置であって、回路基板2の上記接合位置と当該接合位置との位置合わせが行われた吸着ノズル11により保持された電子部品1との間の位置であり、かつ、回路基板2及び電子部品1に対する紫外線の照射位置P1と、回路基板2の上方より退避された位置である退避位置P2との間で、このエキシマ紫外線ランプ21を図示Y軸方向に沿って進退移動させるランプ移動装置22とを備えている。なお、このランプ移動装置22は、例えば、ボールネジ軸部22a、ナット部22b、及びモータ22cにより構成されるボールネジ軸機構を用いて構成することができる。
【0026】
また、エキシマ紫外線ランプ21は、例えば、X軸方向に延在するように配置された直径約20mmの円柱形状を有しており、その円柱状の周面全体より放射状に上記波長を有する紫外線を出射する機能を有している。
【0027】
また、図1に示すように、接合装置101には、それぞれの構成部の動作制御を、互いの動作を関連付けながら統括的に行う制御装置19が備えられている。制御装置19は、例えば、吸着ノズル11により吸着保持される電子部品1のデータや、回路基板2におけるそれぞれの接合位置のデータ、さらに、電子部品1や回路基板2に対する紫外線の照射時間やその後の接合処理の時間などのデータが予め入力されており、これらのデータに基づいて、接合処理に対する統括的な制御を行うことが可能となっている。
【0028】
次に、このような構成を有する接合装置101を用いて、回路基板2における所定の接合位置に電子部品1の接合を行う接合処理の具体的な手順について、図4に示すフローチャート及び図5〜図9に示す接合装置101の模式説明図を用いて以下に説明する。なお、以下に説明するそれぞれの動作は、接合装置101が備える制御装置19により互いの動作が関連付けられながら統括的に制御されて行われる。
【0029】
まず、図4のフローチャートのステップS1において、接合装置101にて、部品マガジン4から所定の部品トレイ3が取り出され、トレイ搬送装置7により搬送されて部品供給ステージ6の上方に配置される。それとともに、基板マガジン8から回路基板2が取り出され、基板搬送装置10により搬送されて基板ステージ9の上方に配置され、基板ステージ9により回路基板2の保持が行われる。その後、ヘッド移動装置13により接合ヘッド12がY軸方向沿いに移動されて、部品供給ステージ6上に配置された部品トレイ3における1つの電子部品1と吸着ノズル11との位置合わせが行われる。当該位置合わせの後、昇降装置15により吸着ノズル11が下降されて当該1つの電子部品1の吸着保持が行われ、その後、上昇されることで、部品トレイ3より電子部品1が取り出される。この状態が図1に示す状態である。なお、部品トレイ3においては、それぞれの電子部品1は金バンプ1bが形成されている側の表面を図示下向きとして収容配置されており(すなわち、フェースダウンセットされている)、金バンプ1bが形成されていない側の表面(図示上面)を吸着ノズル11により吸着保持されることとなる。
【0030】
次に、ステップS2において、吸着ノズル11により吸着保持された状態の電子部品1と、基板ステージ9に保持された状態の回路基板2における接合位置との位置合わせが行われる。具体的には、図5に示すように、図示しない移動装置により認識カメラ18を回路基板2の接合位置の上方に移動させ、当該接合位置の画像を撮像取得する。その後、当該画像の認識処理を行い、回路基板2における上記接合位置の位置認識を行う。さらにその後、当該認識結果に基づいて、ヘッド移動装置13により接合ヘッド12を図示Y軸方向に移動させるとともに、基板移動装置14により基板ステージ9を図示X軸方向に移動させて、吸着ノズル11により吸着保持された状態の電子部品1と回路基板2の接合位置との位置合わせを行う。
【0031】
当該位置合わせの完了後、認識カメラ18を図示しない移動装置により回路基板2の上方より退避させるとともに、紫外線照射装置20において、ランプ移動装置22によりエキシマ紫外線ランプ21を退避位置P2から紫外線の照射位置P1へと移動させる。当該移動により図6に示すように、エキシマ紫外線ランプ21が、上記位置合わせが行われた状態の電子部品1と回路基板2の接合位置との間に位置されることとなる。その後、ステップS3において、エキシマ紫外線ランプ21より上記所定の波長の紫外線が出射され、電子部品1のそれぞれの金バンプ1bの表面及び回路基板2における上記接合位置のそれぞれの基板電極2bの表面に対する当該紫外線の照射が大気雰囲気中において同時的に行われる。
【0032】
このような紫外線の照射が行われると、紫外線のエネルギにより、電子部品1のそれぞれの金バンプ1bの表面及び回路基板2のそれぞれの基板電極2aの表面(以下金属部表面と総称する場合もある)に付着している有機物等の不要物質が除去され、さらに、両金属部表面の励起や表面極近傍における吸着物質の除去、すなわち接合阻害物質の除去等の改質が行われ、両金属部にいわゆる紫外線洗浄処理が行われる。両金属部表面の吸着物質は、例えば、表面から7〜10nm程度の厚さで吸着している炭素(C)等の接合阻害物質(金属接合を阻害する物質である)であり、紫外線のエネルギにより原子同士の結合が切断され、あるいは、紫外線のエネルギにより生成された酸素ラジカルにより一酸化炭素や二酸化炭素等に酸化されてガス化されることにより除去される。
【0033】
また、電子部品1の金バンプ1b及び回路基板2の基板電極2aは、エキシマ紫外線ランプ21から放出される熱線の照射により加熱される。これにより、専用のヒータを設けることなく金バンプ1b及び基板電極2aをある程度加熱することができ、後述する両者の接合をより好適に行うことができる。なお、紫外線洗浄処理時におけるエキシマ紫外線ランプ21と両金属部表面との間の距離は、紫外線の減衰を抑制して洗浄処理の質を向上させるという観点からは、1mm以下とすることが好ましい。例えば、当該距離が50mm程度であるような場合にあっては、金属部表面に照射される紫外線エネルギは略完全に減衰されることになってしまう。
【0034】
その後、エキシマ紫外線ランプ21より電子部品1の金バンプ1b及び回路基板2の基板電極2aに対して所定の時間だけ紫外線の照射が行われると、この紫外線洗浄処理が完了する。具体的には、図7に示すように、紫外線照射位置P1に位置されていた状態のエキシマ紫外線ランプ21が、ランプ移動装置22により図示Y軸方向に移動されて、退避位置P2へと移動される(ステップS4)。これにより、エキシマ紫外線ランプ21が、回路基板2の上方より退避されたこととなる。
【0035】
続いて、図8に示すように、接合ヘッド12において、昇降装置15により吸着ノズル11が下降され、吸着ノズル11に保持された電子部品1のそれぞれの金バンプ1bと、回路基板2の上記接合位置におけるそれぞれの基板電極2aとが互いに接触され、さらに金バンプ1bが基板電極2aに対して押圧される。次に、超音波振動子17によりホーン16及び吸着ノズル11を介して、吸着ノズル11により吸着保持された状態の電子部品1に対して超音波振動が付与される。これにより、それぞれの金バンプ1bと基板電極2aとが、大気雰囲気中にて金属接合される(ステップS5)。
【0036】
この接合装置101では、それぞれの金バンプ1b及び基板電極2aの表面に対して、上記金属接合が行われる直前に紫外線洗浄処理が施されていることから、両金属部表面において接合阻害物質が除去されて露呈された清浄面同士が接合されることとなる。従って、当該両金属部間において、金属原子同士の原子間力による強い結合が生じ、電子部品1が回路基板2に強固に接合されることとなる。
【0037】
電子部品1の回路基板2への接合が完了すると、図9に示すように、吸着ノズル11による電子部品1の吸着保持が解除され、昇降装置15により吸着ノズル11が上昇されて、回路基板2に接合された電子部品1より吸着ノズル11が離間される。なお、回路基板2において、さらに別の電子部品1が接合されるような場合にあっては、上述のステップS1からS5までのそれぞれの動作が順次行われることにより、当該電子部品1が回路基板2における別の接合位置に接合されることとなる。その後、回路基板2への電子部品1の接合が完了すると、基板ステージ9による回路基板2の保持が解除されて、図示しない搬送装置等により電子部品1が接合された状態の回路基板2が、基板ステージ9上より搬出される。なお、本第1実施形態においては、超音波振動子17、ホーン16、及び昇降装置15により、上記両金属部の金属接合を行う金属接合部が構成されている。
【0038】
ここで、エキシマ紫外線ランプ21よりの紫外線の照射による紫外線洗浄処理について、さらに詳細に説明する。当該説明にあたって、金バンプ1bや基板電極2a等の金属部表面(Au表面)の状態の原子レベルでの拡大模式図として、紫外線洗浄処理前の状態を図10に示し、当該紫外線洗浄処理後の状態を図11に示す。なお、図10及び図11においては、Au原子(原子半径=0.144nm)をAuと示し、水素原子(原子半径=0.037nm)をHと示し、炭素原子(原子半径=0.077nm)をCと示し、酸素原子(原子半径=0.061nm)をOと示している。
【0039】
図10に示すように、Au表面には原子間力により、自然な状態にて接合阻害物質のコンタミネーションが存在している。具体的には、Au表面近傍においては、水素原子、炭素原子、及び酸素原子等の様々な原子が接合阻害物質として吸着されたり剥離されたりしており、原子間力(分子間力)が及ぶ範囲であるAu表面より7〜10nmの範囲においては、吸着及び剥離が平衡状態となることにより、上記それぞれの原子(あるいは分子)が結合されて接合阻害物質として吸着された状態となっている。このような状態にAu表面に対して、紫外線洗浄処理として紫外線を照射、例えば、波長172nm、エネルギ721kJ/molの紫外線を照射することにより、原子間の結合を分解させて、Au表面より除去することができる。このように接合阻害物質が除去された状態が図11に示す状態である。図11に示すように、紫外線洗浄処理が行われることにより、Au表面においては、7〜10nmの範囲において存在していたほとんどの水素原子、炭素原子、及び酸素原子が除去されており、当該Au表面より部分的にAu原子が露呈、あるいはより露呈に近い状態とされ、清浄面が露呈された状態となっている。このようにAu表面より接合阻害物質が除去されて清浄面が露呈された状態においては、よりAu原子同士の金属接合を強固に行い易い状態となっている。従って、当該清浄面同士を接触させることにより、より強固な金属接合を実現することが可能となる。
【0040】
また、ここで紫外線洗浄処理の効果を示すデータとして、紫外線洗浄処理時間(紫外線照射時間、横軸)と、金属接合における接合強度(縦左軸)と、金属部表面に付着している炭素(C)量(縦右軸)との関係を示すグラフを図12に示す。図12に示すように、10秒程度の紫外線洗浄処理によって、金属接合における接合強度が大幅に向上するとともに、金属部表面に付着している炭素濃度を大幅に低減させることができることが判る。
【0041】
また、このような紫外線洗浄処理を実施後、そのまま洗浄された金属部表面を放置しておくと、時間の経過とともに接合阻害物質の再吸着が進行し、例えば、5〜10分程度経過すれば、金属部表面の状態は洗浄前の状態へと戻ってしまうこととなる。従って、紫外線洗浄処理の実施後、3分程度以内に金属接合を実施することが好ましく、2分以内に実施することがより好ましい。このような観点より、本第1実施形態の接合装置101においては、吸着ノズル11に吸着保持された電子部品1と回路基板2における接合位置との位置合わせの実施後、当該位置合わせが行われた状態においてエキシマ紫外線ランプ21による紫外線洗浄処理を行い、当該処理の実施後直ぐに金属接合を実施できるような工程を採用している。
【0042】
なお、上述の本第1実施形態の接合装置101における接合方法の説明においては、接合ヘッド12に昇降装置15が備えられ、昇降装置15により吸着ノズル11が上昇又は下降されることにより、基板ステージ9に対して吸着ノズル11が相対的に近接又は離間されるような構成について説明したが、本第1実施形態はこのような構成についてのみ限定されるものではない。このような場合に代えて、例えば、基板ステージ9を上昇又は下降させるような構成が採用されるような場合であってもよい。
【0043】
また、接合ヘッド12において超音波振動子17が備えられるような構成について説明したが、このような構成についてのみ限定されるものではなく、例えば、基板ステージ9に超音波振動子が備えられ、基板ステージ9を介して超音波振動が回路基板2の基板電極2aに付与されるような構成を採用することもできる。
【0044】
また、紫外線照射装置20において、エキシマ紫外線ランプ21を照射位置P1と退避位置P2との間で進退移動させるランプ移動装置22が備えられているような構成について説明したが、このような構成に代えて、接合ヘッド12及び基板ステージ9が図示Y軸方向に一体的に移動することで、エキシマ紫外線ランプ21を基板ステージ9の上方より退避させるような構成を採用することもできる。
【0045】
以上に説明したように、接合装置101では、エキシマ紫外線ランプ21により、電子部品1の金バンプ1bと回路基板2の基板電極2aとに対して同時に紫外線を照射して洗浄処理を行うことにより、電子部品1と回路基板2の洗浄処理を行う構成を簡素化し、両金属部の金属接合を容易かつ高い接合強度でもって行うことができる。また、両金属部に対する紫外線洗浄処理が大気雰囲気中にて行われるため、従来の洗浄処理を行う構成と比して洗浄処理を行うためのチャンバ等の構成を省略して、接合装置101の構造をより簡素化することができる。
【0046】
また、接合装置101では、紫外線発生源としてエキシマ紫外線ランプ21が用いられていることにより、当該ランプ21より非常に短い波長の紫外線(すなわち、エネルギが高い紫外線)を照射することができ、吸着物(接合阻害物質)の除去効率を低下させるオゾン(O)の発生を抑制することができるとともに、酸素ラジカルを効率的に生成することができるため、両金属部表面に対する紫外線洗浄処理を効率的に行うことができる。さらに、このエキシマ紫外線ランプ21により両金属部を加熱することができるため、当該加熱により金属接合を促進するという効果を得ることができる。
【0047】
さらに、接合装置101においては、電子部品1がプラズマ洗浄処理等の高エネルギの照射に不向きな種類(すなわち、紫外線洗浄処理に比べて強いエネルギの照射により損傷する恐れがある種類)であっても、電子部品1を損傷させることなく洗浄処理を行うことができる。
【0048】
(変形例)
なお、本第1実施形態の接合装置101においては、紫外線洗浄処理を施した後、回路基板2における接合位置に電子部品1が金属接合により接合されるような場合について説明したが、このような接合の対象物は、電子部品1や回路基板2に限定されるものではない。このような場合に代えて、第1の対象物の一例として第1容器部材、第2の対象物として第2容器部材が用いられるような場合を、本第1実施形態の変形例として以下に説明する。なお、本変形例にかかる接合方法は、上述した接合装置101において行うことができるため、接合装置の構成の説明については省略するものとする。
【0049】
まず、接合装置101において、第1容器部材31と第2容器部材32に対して、エキシマ紫外線ランプ21より出射された紫外線が照射されている状態を示す模式説明図を図13に示す。なお、図13では図示の都合上、接合ヘッド12及び基板移動装置14を他の構造と比べて大幅に縮小して示している。また、第1容器部材31及び第2容器部材32(以下、「両容器部材」と総称する場合もある。)、並びに、両容器部材とエキシマ紫外線ランプ21との間隔を、エキシマ紫外線ランプ21に比べて大きく描いている。
【0050】
図13に示すように、吸着ノズル11に吸着保持される第1容器部材31は、(−Z)軸側に開口31bを有する略直方体状の部材であり、開口31bの周囲の(−Z)軸側を向く面上には金(Au)で形成された第1金属部31aが設けられる。また、基板ステージ9に保持される第2容器部材32は、第1容器部材31と接合されて開口31bを閉塞する平板状の部材である。第2容器部材32の(+Z)軸側の主面上には、第1容器部材31の第1金属部31aと対応する位置(すなわち、第2容器部材32の周縁部近傍)に金で形成された第2金属部32aが設けられ、また、中央部近傍に電子部品33が実装されている。なお、第1金属部31a及び第2金属部32aは、必ずしも金には限定されず、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)等の金属により形成されてもよい。また、両容器部材31、32の水平方向における形状は、長さ及び幅が2mm程度の矩形形状である。エキシマ紫外線ランプ21の(+X)軸側および(−X)軸側には、エキシマ紫外線ランプ21を図13中のY軸方向に移動するランプ移動装置22が備えられている。
【0051】
このような接合装置101において、第1容器部材31と第2容器部材32とが接合される際には、まず、エキシマ紫外線ランプ21が吸着ノズル11と基板ステージ9との間から予め退避した状態、すなわち退避位置P2に位置された状態において、部品トレイ3から第1容器部材31が取り出されて吸着ノズル11により吸着保持される。第1容器部材31の保持動作に続いて、または、保持動作と並行して、図示省略の部品トレイから第2容器部材32が取り出されて基板ステージ9により保持される。その後、ヘッド移動装置13と基板移動装置14とにより両者の相対的な位置合わせが行われ、第2金属部32aと第1金属部31aとの位置合わせが行われる。なお、図13においては、第1容器部材31の確実な吸着保持を実現するため、吸着ノズル11は、棒状部分であるシャフト部11aと、このシャフト部11aに接続され、その下面に吸着用の開口が形成された板状部材である保持部11bとにより構成されている。
【0052】
第1容器部材31及び第2容器部材32の位置合わせが完了すると、ランプ移動装置22によりエキシマ紫外線ランプ21がY軸方向に移動され、第1容器部材31と第2容器部材32との間の位置である照射位置P1に位置される。続いて、エキシマ紫外線ランプ21から波長約172nmの紫外線が出射され、エキシマ紫外線ランプ21に近接して配置された第1容器部材31(特に、第1金属部31a)、および、第2容器部材32(特に、第2金属部32a)に対する紫外線の照射が大気雰囲気中において同時に行われる。
【0053】
この紫外線の照射により、第1金属部31a及び第2金属部32aの表面に吸着されている接合阻害物質の除去が行われ、清浄面が露呈された状態とされる(紫外線洗浄処理)。
【0054】
第1金属部31a及び第2金属部32aに対する紫外線洗浄処理が完了すると、ランプ移動装置22によりエキシマ紫外線ランプ21がY軸方向に移動して第1容器部材31と第2容器部材32との間から退避位置P2へと移動される。続いて、吸着ノズル11が昇降装置15により下降して基板ステージ9に近づき、吸着ノズル11に吸着保持された第1容器部材31の第1金属部31aと基板ステージ9に保持された第2容器部材32の第2金属部32aとが互いに接触し、さらに、第1容器部材31が第2容器部材32に対して押圧される。次に、超音波振動子17によりホーン16及び吸着ノズル11を介して第1容器部材31及び第1金属部31aに超音波振動が付与されることにより、第1金属部31a及び第2金属部32aが大気雰囲気中にて金属接合される。
【0055】
接合装置101では、第1金属部31a及び第2金属部32aに紫外線洗浄処理が施されていることから、両金属部間において金属原子同士の原子間力による強い結合が生じ、第1容器部材31が第2容器部材32に強固に取り付けられ、内部に電子部品33が収納される空間を有する電子部品パッケージが形成される。
【0056】
第1容器部材31及び第2容器部材32の接合が完了すると、吸着ノズル11による第1容器部材31の吸着保持が解除され、吸着ノズル11が第1容器部材31から離れて上昇し、電子部品パッケージは図示省略の搬送装置により基板ステージ9上から搬出される。
【0057】
このように、接合される対象物が電子部品や回路基板以外の対象物、例えば上述のように電子部品パッケージを形成するための容器部材であるような場合であっても、紫外線洗浄処理後の金属接合の効果を得ることができる。特に、第2容器部材32に実装されている電子部品33が、プラズマ洗浄処理等の高エネルギの照射に不向きな種類であっても、第2金属部32aに対する洗浄処理を行うことができる。
【0058】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態にかかる接合装置の一例である接合装置201の部分的な構成を示す模式構成図を図14に示す。この接合装置201は、上記第1実施形態と同様に回路基板2に対する電子部品1の装着および電気的接合(すなわち、実装)を行う装置である。図14に示すように、接合装置201では、図1の接合装置101が備える超音波振動子17及びホーン16に代えて、吸着ノズル11を加熱するヒータ45がシャフト41に設けられる。その他の構成は図1の接合装置101と同様であり、以下の説明において同符号を付す。なお、図14では、図1と同様に、接合ヘッド12及び基板ステージ9を他の構造と比べて大幅に縮小して描いており、電子部品1及び回路基板2とエキシマ紫外線ランプ21との間隔を、エキシマ紫外線ランプ21に比べて大きく描いている。
【0059】
接合装置201による電子部品1の回路基板2に対する実装動作は、上記第1実施形態の接合装置101による接合動作(図4参照)とほぼ同様である。以下、図4に示す接合手順のフローチャートを用いて、接合装置201の接合動作(実装動作)を説明する。
【0060】
接合装置201では、まず、エキシマ紫外線ランプ21が照射位置P1から退避位置P2に退避した状態で、吸着ノズル11により電子部品1が吸着保持され、基板ステージ9により回路基板2が保持される(図4:ステップS1)。
【0061】
吸着ノズル11では、金属部である金バンプ1bを有する電子部品1が、金バンプ1bを下側に向けて吸着保持されており、基板ステージ9では、回路基板2が基板電極2aを上側に向けて保持されている。
【0062】
また、接合ヘッド12においては、吸着ノズル11に保持される電子部品1が、予め加熱されているヒータ45により継続的に加熱される。また、ヘッド移動装置13及び基板移動装置14により、電子部品1の金バンプと回路基板2の基板電極2aとの位置合わせが行われる(図4のステップS2)。続いて、ランプ移動装置22によりエキシマ紫外線ランプ21が電子部品1と回路基板2との間に移動し、エキシマ紫外線ランプ21から紫外線が出射されて金バンプ1b及び基板電極2aに対する紫外線の照射が大気雰囲気中において行われ、両電極部に対する紫外線洗浄処理が行われる(ステップS3)。なお、エキシマ紫外線ランプ21から放出される熱線により、回路基板2もある程度加熱される。
【0063】
両電極部に対する紫外線洗浄処理が完了すると、エキシマ紫外線ランプ21が電子部品1と回路基板2との間から退避し(ステップS4)、吸着ノズル11が下降して基板ステージ9に近づき、ヒータ45により予め熱が付与されている電子部品1の金バンプ1bを回路基板2上の基板電極2aに接触させた状態で電子部品1が回路基板2に対して押圧される。これにより、電子部品1及び回路基板2の両電極部が大気雰囲気中にて金属接合され、電子部品1の回路基板2に対する実装(金属接合)が完了する(ステップS5)。
【0064】
なお、接合装置201では、吸着ノズル11により回路基板2が保持され、基板ステージ9により電子部品1が保持されてもよく、また、回路基板2の基板電極2aがヒータ45により予め加熱されていてもよい。
【0065】
以上に説明したように、接合装置201では、エキシマ紫外線ランプ21により電子部品1の金バンプ1b及び回路基板2の基板電極2aに同時に紫外線を照射して洗浄処理を施すことにより、電子部品1及び回路基板2の洗浄処理に係る構成を簡素化し、両電極部の金属接合を容易に実現することができる。また、両金属部に対する紫外線洗浄処理が大気雰囲気中にて行われるため、接合装置201の構造をより簡素化することができる。
【0066】
また、接合装置201では、回路基板2の加熱用のヒータを設けることなく、エキシマ紫外線ランプ21により回路基板2の基板電極2aをある程度加熱することができる。その結果、金バンプ1bと基板電極2aとのより適切な接合が実現される。なお、電子部品1の金バンプ1bの加熱が、エキシマ紫外線ランプ21からの熱線の照射のみにより行われてもよく、この場合、ヒータ45を省略して接合装置201の構成をさらに簡素化することができる。
【0067】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態にかかる接合装置の一例である接合装置301の構成を示す模式構成図を図15に示し、図15の接合装置301の構成を(−X)軸側から(+X)軸方向を向いて見た更なる模式図を図16に示す。
【0068】
接合装置301は、上記第1実施形態の接合装置101と同様に、第1容器部材31と第2容器部材32とを接合して、内部に電子部品33を収容する電子部品パッケージを形成する装置である。図15及び図16に示すように、接合装置301では、吸着ノズル11及び基板ステージ9に保持される第1容器部材31及び第2容器部材32に対して不活性ガスの一例として窒素(N2)ガスを供給するガス供給装置53が、エキシマ紫外線ランプ21の(+Y)軸側に備えられている。ガス供給装置53の(−Y)軸側には、Z軸方向の幅がエキシマ紫外線ランプ21の直径よりも大きい供給口53aが形成されている。その他の構成は図1の接合装置101と同様であり、以下の説明において同符号を付す。
【0069】
また、接合装置301による第1容器部材31及び第2容器部材32の接合動作は、上記第1実施形態の接合装置101とほぼ同様であり、エキシマ紫外線ランプ21により第1容器部材31及び第2容器部材32に紫外線が照射される際に、ガス供給装置53の供給口53aから両容器部材の周囲に窒素ガスが供給され、両容器部材の周囲の酸素濃度を低下させる点のみが異なる。
【0070】
また、接合装置301では、ガス供給装置53から供給される窒素ガスにより、エキシマ紫外線ランプ21の上方および下方に位置する第1容器部材31及び第2容器部材32の周囲が酸素濃度10%以下(より好ましくは1%以下、さらに好ましくは100ppm以下)の低酸素雰囲気とされた状態で、エキシマ紫外線ランプ21による第1金属部31a及び第2金属部32aへの紫外線の照射、すなわち、紫外線洗浄処理が同時に行われる。このため、両容器部材の周囲においてオゾンの発生が抑制されて酸素ラジカルが効率的に生成され、簡素な構造で紫外線の照射による両金属部に対する洗浄処理の質をより向上することができる。その結果、第1容器部材31及び第2容器部材32を金属接合により強固かつ高い質にて容易に接合することができる。また、上記第1実施形態の接合装置101と同様に、両容器部材の洗浄処理に係る構成を簡素化することができる。なお、このような酸素濃度を確実に保持した状態にて紫外線の照射を行うために、接合装置301においては、酸素濃度検出センサ54が備えられており、当該酸素濃度センサ54により所定の酸素濃度が確保された状態にて、上記紫外線洗浄処理が行われる。
【0071】
また、接合装置301では、第1容器部材31及び第2容器部材32の接合時にも、両容器部材の周囲に窒素ガスが供給されて低酸素雰囲気とされる。その結果、紫外線洗浄処理後の第1金属部31a及び第2金属部32aに対する接合阻害物質の再吸着を抑制して、両容器部材をより確実に接合することができる。なお、ガス供給装置53により供給されるガスは窒素ガスには限定されず、アルゴン等の他の不活性ガスが用いられてもよい。
【0072】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態にかかる接合装置401の構成を示す模式構成図を図17〜図19に示す。接合装置401は、上記第1実施形態の接合装置101と同様に、電子部品1を回路基板2に接合する装置である。なお、以下においては説明しないが、上記第1実施形態の変形例と同様に、接合装置401においては、第1容器部材31と第2容器部材32とを接合して電子部品パッケージを形成するような接合動作も行うことができる。
【0073】
図17に示すように、接合装置401では、吸着ノズル11、基板ステージ9、エキシマ紫外線ランプ21等の各構成を内部に収容するチャンバ60が設けられ、チャンバ60には部品トレイ3及び回路基板2をチャンバ60に搬出入する開口61、62が形成されている。また、開口61、62は、ゲート63、64により開閉可能とされており、それぞれのゲート63、64を閉止することにより、チャンバ60内の空間を密閉することができる。さらに、チャンバ60にはチャンバ60内の空間を減圧するための減圧装置の一例である真空ポンプ65が接続されており、チャンバ60内空間を減圧環境とすることが可能となっている。その他の構成は図1の接合装置101と同様であり、以下の説明において同符号を付す。
【0074】
なお、接合装置401による電子部品1の回路基板2への接合動作は、両金属部に対する紫外線洗浄処理がチャンバ60の内部の減圧環境下において行われる点を除いては、上記第1実施形態に係る接合装置101の接合動作とほぼ同様である。
【0075】
接合装置401により電子部品1の回路基板2への接合が行われる際には、まず、トレイ搬送装置7により部品トレイ3が開口61を通してチャンバ60の内部に搬入されるとともに、基板搬送装置10により回路基板2が開口62を通してチャンバ60の内部に搬入される。当該搬入が行われると、それぞれのゲート63、64が閉止されてチャンバ60内の空間が密閉されるとともに、真空ポンプ65による真空排気が開始され、チャンバ60内の減圧が開始される。この状態が図17に示す状態である。
【0076】
次に、吸着ノズル11により部品トレイ3から電子部品1が吸着取り出しされ、回路基板2が基板ステージ9により保持される。その後、図示しないヘッド移動装置13及び基板移動装置14により電子部品1と回路基板2の接合位置の位置合わせが行われる。それとともにチャンバ60内の空間が、所定の減圧環境に保たれる。
【0077】
その後、減圧環境とされたチャンバ60の内部では、上記第1実施形態と同様に、エキシマ紫外線ランプ21が吸着ノズル11と基板ステージ9との間に移動され、減圧環境下において電子部品1の金バンプ1bと回路基板2の基板電極2aに紫外線が照射されて両金属部の紫外線洗浄処理が行われる。この状態が図18に示す状態である。
【0078】
紫外線洗浄処理が完了すると、エキシマ紫外線ランプ21が退避位置P2へ移動され、その後、吸着ノズル11が下降されて電子部品1の金バンプ1bが回路基板2の基板電極2aに対して押圧される。さらに、両金属部に超音波振動が付与されることにより、減圧環境下にて金属接合されて、電子部品1が回路基板2に接合される。この状態が図19に示す状態である。
【0079】
この金属接合が完了すると、吸着ノズル11が基板ステージ9から離れて上昇するとともにチャンバ60の処理空間にエアが供給されて大気圧へと戻され、開口61、62が開放されて、電子部品1が接合された回路基板2が図示省略の搬送装置により搬出される。
【0080】
以上に説明したように、接合装置401では、チャンバ60内部の減圧環境下において、エキシマ紫外線ランプ21により両金属部表面に対する紫外線洗浄処理が同時に行われるため、両金属部の周囲においてオゾンの生成を防止することができるとともに、エキシマ紫外線ランプ21からの紫外線の大気中への吸収による減衰(大気中において8mm伝播する間に約90%が吸収される。)を防止することができる。その結果、紫外線の照射による両金属部に対する洗浄処理の質をより向上することができる。また、プラズマ処理用のチャンバやプラズマ発生機構等の高価かつ複雑な構成を設ける必要もないため、両金属部の洗浄処理を行う構成を簡素化し、両金属部を金属接合により強固かつ高い質にて容易に接合することができる。さらには、両金属部の接合が減圧環境下において行われることにより、紫外線洗浄処理後においてそれぞれの金属部表面に対する接合阻害物質の再吸着を防止することができる。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記それぞれの実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0082】
例えば、エキシマ紫外線ランプ21による対象物の金属部(第1金属部31a及び第2金属部32a、並びに、金バンプ1b及び基板電極2a等)の加熱が必要ない場合には、エキシマ紫外線ランプ21を冷却する冷却装置が設けられてもよい。また、対象物の金属部に対する紫外線の照射は、洗浄処理の効率向上という観点からは、短波長の紫外線を照射するエキシマ紫外線ランプ21により行われることが好ましいが、他の紫外線ランプや紫外線照射デバイス等の紫外線発生源により行われてもよい。
【0083】
また、上記第3及び第4実施形態に係る接合装置301、401では、上記第2実施形態と同様に、それぞれの金属部がヒータにより加熱されて金属接合が促進されてもよい。
【0084】
上述のように、本発明に係る接合装置は、高エネルギの照射に不向きな種類の電子部品を収容する電子部品パッケージの形成や、LEDチップ等の実装に特に適しているが、それ以外の様々な種類の電子部品、例えば、半導体のベアチップ部品やSAW(Surface Acoustic Wave:表面弾性波)フィルタ等を収容する電子部品パッケージの形成や、これら電子部品の実装にも利用されてよい。
【0085】
また、接合装置は、第1容器部材31及び第2容器部材32の接合や電子部品1の回路基板2に対する実装以外にも様々な対象物同士の金属接合に利用されてよい。なお、対象物に対する紫外線洗浄処理は、処理の質に対する要求レベルが比較的高くない場合には、装置の簡素化の観点から大気雰囲気中において行われることが好ましく、また、高品質な紫外線洗浄処理が要求される場合には、低酸素雰囲気中や減圧環境下において行われることが好ましい。
【0086】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、様々な対象物同士を金属接合する接合装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる接合装置の構成を示す模式構成図である。
【図2】図1の接合装置において取り扱われる電子部品の構造を示す模式断面図である。
【図3】図1の接合装置において取り扱われる回路基板の構造を示す模式断面図である。
【図4】上記第1実施形態の接合方法の手順を示すフローチャートである。
【図5】図1の接合装置において、電子部品と回路基板の位置決めが行われている状態を示す模式説明図である。
【図6】図1の接合装置において、電子部品と回路基板のそれぞれの金属部に対する紫外線洗浄処理が行われている状態を示す模式説明図である。
【図7】図1の接合装置において、エキシマ紫外線ランプが退避位置に位置された状態を示す模式説明図である。
【図8】図1の接合装置において、電子部品が回路基板に接合されている状態を示す模式説明図である。
【図9】図1の接合装置において、電子部品の回路基板への接合動作が完了した状態を示す模式説明図である。
【図10】紫外線洗浄処理を実施する前の金属部の表面状態を示す原子レベルの模式拡大図である。
【図11】図10の金属部の表面に対して紫外線洗浄処理が施された状態を示し原子レベルの模式拡大図である。
【図12】紫外線洗浄処理における処理時間と接合強度及び炭素量との関係を示すグラフ形式の図である。
【図13】上記第1実施形態の変形例にかかる接合装置の部分的な構成を示す模式構成図であって、それぞれの容器部材に対して紫外線洗浄処理が行われている状態を示す図である。
【図14】本発明の第2実施形態にかかる接合装置の部分的な構成を示す模式構成図である。
【図15】本発明の第3実施形態にかかる接合装置の構成を示す模式構成図である。
【図16】図15の接合装置の部分拡大模式説明図である。
【図17】本発明の第4実施形態にかかる接合装置の構成を示す模式構成図であり、チャンバ内に電子部品と回路基板が搬入された状態を示す図である。
【図18】上記第4実施形態の接合装置において、減圧雰囲気内にて紫外線洗浄処理が行われている状態を示す模式構成図である。
【図19】上記第4実施形態の接合装置において、減圧雰囲気内にて電子部品が回路基板に接合されている状態を示す模式構成図である。
【符号の説明】
【0089】
1 電子部品
1a 電極パッド
1b 金バンプ
2 回路基板
2a 基板電極
3 部品トレイ
4 部品マガジン
5 装置架台
6 部品供給ステージ
7 トレイ搬送装置
8 基板マガジン
9 基板ステージ
10 基板搬送装置
11 吸着ノズル
12 接合ヘッド
13 ヘッド移動装置
14 基板移動装置
15 昇降装置
16 ホーン
17 超音波振動子
18 認識カメラ
19 制御装置
20 紫外線照射装置
21 エキシマ紫外線ランプ
22 ランプ移動装置
31 第1容器部材
31a 第1金属部
32 第2容器部材
32a 第2金属部
33 電子部品
101 接合装置
P1 照射位置
P2 退避位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の対象物の第1金属部と第2の対象物の第2金属部とを接合する接合装置において、
上記第1の対象物を保持する第1保持部と、
上記第1の対象物の上記第1金属部に上記第2金属部が対向するように上記第2の対象物を保持する第2保持部と、
上記第1保持部により保持された上記第1の対象物の上記第1金属部と、上記第2保持部により保持された上記第2の対象物の上記第2金属部とに紫外線を照射して、当該第1金属部及び第2金属部のそれぞれの表面より接合阻害物質の除去を行う紫外線照射部と、
上記第1保持部と上記第2保持部とを相対的に近づけて、上記紫外線照射装置により上記接合阻害物質の除去が行われた上記第1金属部と上記第2金属部とを互いに接触させながら、当該第1金属部又は当該第2金属部に超音波振動又は熱を付与して金属接合を行う金属接合部とを備えることを特徴とする接合装置。
【請求項2】
上記紫外線照射部は、紫外線発生源として、160〜180nmの範囲の波長の紫外線を照射するエキシマ紫外線ランプを備える請求項1に記載の接合装置。
【請求項3】
上記紫外線照射部は、上記第1保持部と上記第2保持部との間における紫外線照射位置と、当該第1保持部と当該第2保持部との間より退避された退避位置との間で、上記エキシマ紫外線ランプを移動させるランプ移動装置を備え、
当該ランプ移動装置により上記エキシマ紫外線ランプが上記退避位置に位置された状態にて、上記金属接合部による金属接合が行われる請求項2に記載の接合装置。
【請求項4】
上記紫外線照射部による上記第1金属部及び上記第2金属部に対する紫外線の照射が大気雰囲気中において行われる請求項1から3のいずれか1つに記載の接合装置。
【請求項5】
上記紫外線照射部による上記第1金属部及び上記第2金属部に対する紫外線の照射が酸素濃度10%以下の低酸素雰囲気中において行われる請求項1から3のいずれか1つに記載の接合装置。
【請求項6】
上記第1保持部、上記第2保持部、上記紫外線照射部、及び上記金属接合部がその内部に配置され、当該内部空間を密閉可能なチャンバと、
当該チャンバ内空間を減圧する減圧装置とを備え、
上記紫外線照射部による上記第1金属部及び上記第2金属部に対する紫外線の照射が減圧環境において行われる請求項1から3のいずれか1つに記載の接合装置。
【請求項7】
上記紫外線照射部は、上記紫外線の照射により、上記第1金属部及び上記第2金属部を加熱する機能を有している請求項1から6のいずれか1つに記載の接合装置。
【請求項8】
上記第1の対象物及び上記第2の対象物は、上記金属接合によりその内部に電子部品が収容される空間を形成する容器部材である請求項1から7のいずれか1つに記載の接合装置。
【請求項9】
上記第1の対象物が、上記第1金属部として電極部を有する電子部品であって、
上記第2の対象物が、上記第2金属部として基板電極を有する回路基板である請求項1から8のいずれか1つに記載の接合装置。
【請求項10】
第1の対象物の第1金属部と第2の対象物の第2金属部とを接合する接合方法において、
上記第1の対象物を保持するとともに、当該第1の対象物の上記第1金属部に上記第2金属部が対向するように上記第2の対象物を保持して、
上記第1金属部と上記第2金属部とに紫外線を照射して、当該第1金属部及び第2金属部のそれぞれの表面より接合阻害物質の除去を行い、
その後、上記第1の対象物と上記第2の対象物とを近づけて、上記第1金属部と上記第2金属部とを互いに接触させながら、当該第1金属部又は当該第2金属部に超音波振動又は熱を付与して金属接合を行うことを特徴とする接合方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2006−7321(P2006−7321A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154213(P2005−154213)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】