説明

接合装置

【課題】ヒータツールがワークに接触することで発生する温度分布の非均性を最小限にし、接合品質の向上を図ることを目的とする。
【解決手段】加熱されるヒータツール7をワーク9に押圧し、ワーク9を接合する接合装置において、ヒータツール7と、このヒータツール7の温度を検出する第1の温度センサ14と、この第1の温度センサ14の検出温度を所定の温度にするようにヒータツール7に導く電流を制御する第1のコントローラ16と、ヒータツール7の温度を検出する第2の温度センサ15と、ヒータツール7にレーザ光を照射するレーザ光照射手段11と、第2の温度センサ15の検出温度を所定の温度にするようにヒータツール7に照射するレーザ光照射時間を制御する第2のコントローラ17とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品、プリント配線板、フレキシブルプリント配線板等の接続端子を相互に接合する装置に関し、接合部にはんだ等のろう材や異方性導電膜を介在させ、押圧力と熱を加えて接合する接合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、垂直な棒状のヒータツールと、このヒータツールの先端部にレーザ光を照射するレーザ照射部とを備え、電子部品を実装基板に実装するに際し、ヒータツールの先端部で電子部品のリードを実装基板のはんだパッドに押圧し、ヒータツールの先端部にレーザ光を照射、加熱して、電子部品のリードと実装基板のはんだパッドとを接合する接合装置が用いられていた。この方法は、特許文献1に開示されているように、電子部品のリードを1本ずつ実装基板のパッドへ接合するシングルポイントボンディング方式の接合装置を用いて行われている。
【0003】
その様子を図5に示して説明する。図5において符号51は電子部品実装装置(接合装置に相当)、52はボンディングツール(ヒータツールに相当)、53はレーザ照射部、54はレーザ発振器、55はレーザ制御部、56は電子部品、57はリード、58は実装基板、59はパッドである。また、図5(a)は電子部品実装装置と接合部の側面図、図5(b)は接合部の拡大斜視図である。特許文献1に開示されたこの技術は、予め上面にはんだが供給されたパッド59に電子部品56のリード57を載置し、このリード57をボンディングツール52の先端でパッド59に押圧する。続いてボンディングツール52の先端部の側面にレーザ光を照射して加熱し、パッド59とリード57とのあいだに介在するはんだを溶融し接合するものである。
【0004】
このようにレーザ光を照射して加熱するボンディングツール52は、電子部品のリード1本を押圧するように先端が細いため、この先端部全体の温度を所定の温度に制御することに工夫がなされている。しかしながら近年の被接合部品(以下ワークと記載する)は高密度実装技術が進展して配線密度が格段に高くなり、例えば液晶パネルと駆動素子等との接続に際しては、その接続端子の間隔はますます狭くすることが要求され、接続端子のピッチは0.2mmあるいはそれより更に微細なものが要求されるようになってきた。このような微細な接続端子を接続する手段の一つとして、異方性導電膜を用いる方法が知られている。
【0005】
この異方性導電膜は比較的低温での実装が可能であるため、許容温度の低い液晶パネルとフレキシブル配線板との接続などに多用されている。このような特性を有する異方性導電膜を用いて電極間の接合(この場合熱圧着)を行うとき、安定した電気的特性や接合強度を得るためには、所定の加圧力、所定の加熱温度が接続面に均一に加えられることが重要である。このため所定の温度に管理されたステージ上に、異方性導電膜を介してワークを重ねて配置し、上から接合部分の長さを持ったヒータツールを圧接する接合装置が用いられている。
【0006】
この場合の接合部分は、接続端子どうしは狭いピッチであるが、端子数が非常に多いので、接合部分全体としては端子の並び方向に長い形状となり、これを圧接するヒータツールは図6、図7で示すように長尺(図中のL寸法が長い)形状のものが用いられる。そしてこの場合ヒータツールの長手方向の温度が均一となる必要があるので、従来から工夫がなされてきた。例えば特許文献2には、加熱電流の流路の断面積に変化を持たせ、前記長手方向の中心部近傍と両端部近傍の温度を均一にするような技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−251361号公報(第3頁、図1)
【特許文献2】特開平8−227918号公報(第5頁、図1−図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ヒータツールがワークに接触していない状態では押圧面全体の温度が均一であったとしても、この押圧面がワークに接触し、ヒータツールの熱がワークに流れたとき、押圧面全体の温度がむらなく均一に維持されることは少なく、ヒータツールの押圧面近傍であって、特に長手方向に温度差が生じてしまう。そこで、本発明はこのような温度差の発生を最小限にし、接合品質の向上を図ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は第1の態様として、電流により加熱されるヒータツールをワークに押圧し、ワークを接合する接合装置において、ワークの上方で昇降する昇降手段と、この昇降手段の下端に固定された絶縁材製の絶縁ブロックと、この絶縁ブロックに互いに間隙をおいて固定された一対の給電ブロックと、この一対の給電ブロック各々に加熱電流経路の両端が固定されたヒータツールと、このヒータツールの温度を検出する第1の温度センサと、この第1の温度センサの検出温度を所定の温度にするように前記ヒータツールに導く電流を制御する第1のコントローラと、前記ヒータツールの温度を検出する第2の温度センサと、前記ヒータツールにレーザ光を照射するレーザ光照射手段と、前記第2の温度センサの検出温度を所定の温度にするように前記ヒータツールに照射するレーザ光照射時間を制御する第2のコントローラとを備えることを特徴とする接合装置を提供する。
【0010】
また本発明は第2の態様として、前記レーザ光照射手段は前記ヒータツールと一体となって移動し、このヒータツールの押圧面近傍の側面にレーザ光を照射し、このヒータツールを加熱することを特徴とする第1の態様として記載の接合装置を提供する。
【0011】
また本発明は第3の態様として、前記レーザ光照射手段が照射する前記ヒータツール上のレーザ光照射領域に対応して、前記第2の温度センサの温度検出領域を設けることを特徴とする第1又は第2の態様として記載の接合装置を提供する。
【0012】
さらに本発明は第4の態様として、前記レーザ光照射手段と一体となって移動する反射鏡を備え、前記レーザ光照射領域を前記ヒータツールに分散させて複数設け、前記反射鏡によるレーザ光の反射により、複数設けたレーザ光照射領域に向けて前記レーザ光照射手段からのレーザ光束を導くことを特徴とする第1乃至第3のいずれかの態様として記載の接合装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
通常ヒータツールは、ワークに接触すると、接触面の部分的な条件の差(吸熱量の差)によって不均一に熱がワーク側に流出し、ヒータツールの押圧面に温度差が発生する。本発明によれば、このような押圧面の温度分布の非均性を減少させることができる。したがって、ヒータツールの押圧面の温度分布が均一になり、接合部全域に均等な加熱が可能となるため、接合品質を向上させ、製品の歩留りも向上する。
【0014】
また、ヒータツールの押圧面の温度分布が不均一である場合は、接合に要する時間は、押圧面の低温の領域の接合状況に依存していたが、本発明は、低温の領域を加熱して高温の領域と同等の温度に上昇させるものであるから、接合に要する時間も短縮され、生産効率が向上する。さらに従来は最適な接合を行うには、ワークの吸熱特性の分布に合わせて、ワークの品種ごとに最適な形状のヒータツールを作成しなければならなかったが、本発明により、一つのヒータツールを用いて多品種のワークへの適用が可能となる。したがって、ヒータツールの作成に要するコストが削減でき、またヒータツールの交換に要する段取り時間も削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態を示す接合装置の側面図
【図2】本発明の実施形態を示す構成図
【図3】本発明の実施形態の要部斜視図
【図4】本発明の他の実施形態を示す要部斜視図
【図5】従来の技術を示す側面図と要部斜視図
【図6】従来の技術を示す斜視図
【図7】従来の技術を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、添付図面を参照して本発明に係る接合装置の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明に係る接合装置の概略側面図である。図1において、符号1は接合装置、2は基台、3は基台2に立設され上部が水平方向に延出した支柱、4は支柱3の先端に上下動可能に設けられた昇降手段、5は昇降手段4の下端に固定された絶縁ブロック、6,6は絶縁ブロック5に互いに間隙をおいて固定された一対の給電ブロック、7は給電ブロック6,6各々に加熱電流経路の両端が固定されたヒータツールである。また、基台2には支柱3の他にステージ8が設けてあり、ステージ8の上面にはワーク9が載置されている。
【0017】
さらに昇降手段4から延出するように、アングル10が設けてあり、このアングル10にはレーザ光照射手段11と反射鏡12が取り付けられている。したがって、昇降手段4が昇降するのに伴い、ヒータツール7、レーザ光照射手段11及び反射鏡12は一体となって移動するものである。ここで、ステージ8に載置されたワーク9は、昇降手段4の動作で下降するヒータツール7の押圧面7Aに押圧され、次いでヒータツール7に加熱電流が流されることにより所定の温度まで温度上昇し、接続端子間の接合がなされる。
【0018】
次に図2に基づいて、接合の動作について更に詳しく説明する。図2は昇降手段4と、この昇降手段4に固定されることにより、一体となって昇降するヒータツール7、レーザ光照射手段11、反射鏡12を、図1の全体図から抜き出して描いたものである。また、図1では図示を省略した、電源13(本実施形態ではパルスヒート電源)、第1の温度センサ14、第2の温度センサ15、第1のコントローラ16、第2のコントローラ17、レーザ発振器18(本実施形態では半導体レーザ発振器)、反射鏡駆動手段20を示している。
【0019】
まず、接合動作開始のトリガーが発生すると、前述したように昇降手段4が下降し、ヒータツール7の押圧面7Aがワーク9を所定の押圧力で押圧する。次に第1のコントローラ16からの指令により電源13が加熱電流の出力を開始する。加熱電流は、一対の給電ケーブル21,21を介して一対の給電ブロック6,6に供給され、この給電ブロック6,6に加熱電流経路の両端が固定されたヒータツール7は自身の抵抗発熱により加熱する。このとき第1のコントローラ16は、第1の温度センサ14の検出温度に基づき、予め設定された温度プロファイルに従ってヒータツール7の温度が変化するように電源13を制御する。
【0020】
ここで、ヒータツール7の押圧面7A全域が、前記温度プロファイルに基づいて均一に温度変化すればよいが、実際はワーク9への熱の流出量が押圧面内で不均一であり、押圧面7Aの温度分布も不均一になる。特に長尺のヒータツールである場合は、その長手方向に温度差が現れる。そこで本実施形態では第2の温度センサ15を、ヒータツール7の押圧面7A近傍の長手方向に複数分散させて設けてある。そしてこれら複数の温度センサ15の検出温度に基づき、第2のコントローラ17は、レーザ発振器18と反射鏡駆動手段20とを制御する。
【0021】
第2のコントローラ17は、レーザ発振器18に対して、レーザ光出力のオンオフ、つまりレーザ光射出時間の制御を行う、レーザ発振器18から出力されたレーザ光は、光ファイバー19に導かれてレーザ光照射手段11から反射鏡12(本実施形態ではガルバノミラー)に照射される。同時に第2のコントローラ17は、反射鏡駆動手段20を制御することで、反射鏡12の姿勢をコントロールする。これにより、レーザ光照射手段11から射出されたレーザ光は、第2のコントローラ17の制御のもとに、ヒータツール7の予め設定された複数の領域のいずれかに照射される。そして、照射されるレーザ光の照射領域の選択と照射時間とは、複数配置された第2の温度センサ15からの検出温度に基づいて決定される。
【0022】
次に図3に基づいてヒータツール7へのレーザ光照射の様子を説明する。図3においてヒータツール7には、第1の温度センサ14が固着されており、検出した温度情報を第1のコントローラ16(不図示)に与え、ヒータツール7への加熱電流を出力する電源13(不図示)を含めたループを形成し、温度のフィードバック制御を行う。また第2の温度センサ15,15・・・は、第2のコントローラ17(不図示)に検出した温度情報を与え、第2のコントローラ17はこの温度情報に基づき、レーザ光照射手段11及び反射鏡12の制御を行う。
【0023】
つまり、ヒータツール7全体の加熱は、電源13が出力する加熱電流による抵抗発熱で行い、ヒータツール7の部分的な温度のばらつきを第2の温度センサ15がモニタリングして、部分的に温度が低下した領域を見出したときに、必要な領域に必要なエネルギー量のレーザ光を照射するものである。ここで、レーザ光が照射されるヒータツール7上の領域は、押圧面7A近傍の側面であり、予め反射鏡12の角度を設定し第2のコントローラ17に記憶させておくものである。また、その照射領域に対応してヒータツール7に第2の温度センサ15を固着しておくものである。本実施形態の場合はレーザ光照射領域に対向する裏側の側面に第2の温度センサ15を固着しているが、レーザ光照射領域と同一面であって、その近傍に第2の温度センサ15を設けてもよい。
【0024】
このように、ヒータツール7上のレーザ光照射領域を予め記憶しておき、第2の温度センサ15からの温度情報に基づき、必要と判断された場合に所定の照射領域にレーザ光を照射できるのは、ヒータツール7とレーザ光照射手段11と反射鏡12とが、常時一体となって移動するように、昇降手段4に連設されているからである。また、本実施形態では、第1及び第2の温度センサとして熱電対を使用し、これをヒータツール7に溶接して設けているが、ヒータツール7が放射する赤外線を感知する赤外線センサ等他の温度検知手段を使用しても本発明の目的は達成できる。
【0025】
図4は、図3で示した内容に対して、異なる形状のヒータツールを用いた場合の構成を描いたものである。図4に示すヒータツール22は、従来技術の説明で図7に示したものと同等のものであり、板状の材料をワイヤカッターで成形したものであるが、本発明を適用するにあたっては、図3に基づいて説明した手順の中で、ヒータツール22上のレーザ光照射領域を改めて設定すれば、他は同様の手順で達成できる。また、ヒータツールの素材はチタン、インバー(Fe−Ni合金)、ステンレス、モリブデン等レーザ光吸収性を有する素材であれば、従来からヒータツールの素材として用いられているものが適用可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 接合装置
2 基台
3 支柱
4 昇降手段
5 絶縁ブロック
6 給電ブロック
7,22 ヒータツール
8 ステージ
9 ワーク
10 アーム
11 レーザ光照射手段
12 反射鏡
13 電源
14 第1の温度センサ
15 第2の温度センサ
16 第1のコントローラ
17 第2のコントローラ
18 レーザ発振器
19 光ファイバ
20 反射鏡駆動手段
21 給電ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流により加熱されるヒータツールをワークに押圧し、ワークを接合する接合装置において、
ワークの上方で昇降する昇降手段と、
この昇降手段の下端に固定された絶縁材製の絶縁ブロックと、
この絶縁ブロックに互いに間隙をおいて固定された一対の給電ブロックと、
この一対の給電ブロック各々に加熱電流経路の両端が固定されたヒータツールと、
このヒータツールの温度を検出する第1の温度センサと、
この第1の温度センサの検出温度を所定の温度にするように前記ヒータツールに導く電流を制御する第1のコントローラと、
前記ヒータツールの温度を検出する第2の温度センサと、
前記ヒータツールにレーザ光を照射するレーザ光照射手段と、
前記第2の温度センサの検出温度を所定の温度にするように前記ヒータツールに照射するレーザ光照射時間を制御する第2のコントローラとを備えることを特徴とする接合装置。
【請求項2】
前記レーザ光照射手段は前記ヒータツールと一体となって移動し、このヒータツールの押圧面近傍の側面にレーザ光を照射し、このヒータツールを加熱することを特徴とする請求項1に記載の接合装置。
【請求項3】
前記レーザ光照射手段が照射する前記ヒータツール上のレーザ光照射領域に対応して、前記第2の温度センサの温度検出領域を設けることを特徴とする請求項1又は2に記載の接合装置。
【請求項4】
前記レーザ光照射手段と一体となって移動する反射鏡を備え、前記レーザ光照射領域を前記ヒータツールに分散させて複数設け、前記反射鏡によるレーザ光の反射により、複数設けたレーザ光照射領域に向けて前記レーザ光照射手段からのレーザ光束を導くことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−165780(P2011−165780A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25010(P2010−25010)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000227836)日本アビオニクス株式会社 (197)
【Fターム(参考)】