説明

接点材料、接点材料を含む装置及びその製造方法

【課題】 電流の流れを制御するための装置を提供する。
【解決手段】 本装置は、第1の導体(12)と、第1の導体(12)と電気的に接続した状態と第1の導体(12)と電気的に切断された状態とが切り替わるように第1の導体(12)と切り替え可能に接続する第2の導体(14)とを備える。少なくとも一方の導体はさらに電気接点(40)を備えており、電気接点(40)は、複数の細孔(44)を含む固体マトリックス(42)と、複数の細孔(44)の少なくとも一部に設けられた充填材料(46)とを含む。充填材料(46)は約575K未満の融点を有する。電気接点(40)の製造方法(50)を提供する。本方法(50)は、基板を準備するステップと、基板上に複数の細孔(44)を設けるステップと、複数の細孔(44)の少なくとも一部に充填材料を設けるステップとを含む。充填材料(46)は約575K未満の融点を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気接点材料に関する。具体的には、本発明は低圧アクチュエータ用の接点材料に関する。本発明は接点材料の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置の小型化における近年の進歩に伴って、幾何形状が小さく、マイクロ秒のスイッチ動作が可能で消費電力の低いマイクロスイッチに対する大きな需要が存在する。微小電気機械システム(MEMS)スイッチは、消費電力が低く、幾何形状が小さく、スイッチの質量及び運動量が最小限で、標準的なMEMS及び半導体製造技術を用いて製造できるので、かかる用途に理想的に適している。MEMSスイッチの重要な性能基準は、低い接触抵抗、マイクロ秒スイッチ動作、電圧スタンドオフ及び高い信頼性である。MEMSスイッチの小さな質量は、高速スイッチ時間を可能にするが、接触力、ひいては接触抵抗が犠牲になる。低い作動力のため、Ωオーダーの大きな抵抗が生じる。
【特許文献1】米国特許第3622944号明細書
【特許文献2】米国特許第6406984号明細書
【特許文献3】米国特許第6864767号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0075514号明細書
【特許文献5】国際特許出願第2005/066987号パンフレット
【特許文献6】国際特許出願第2005/119721号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、百万回から十億回の動作サイクルの長い寿命が得られるような接点構造の安定性を維持しつつ、接触抵抗が格段に低下した接点材料及び接点構造に対する需要が増しつつある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の各実施形態では、低接触抵抗の電気接点を含む装置を提供することによって、上記その他のニーズを満足する。例えば、本発明の一実施形態は、電流の流れを制御するための装置である。本装置は、第1の導体、及び第1の導体と電気的に接続した状態と第1の導体と電気的に切断された状態とが切り替わるように第1の導体と切り替え可能に接続する第2の導体を備える。少なくとも一方の導体はさらに電気接点を備えていて、電気接点は、複数の細孔を含む固体マトリックスと、複数の細孔の少なくとも一部に設けられた充填材料とを含む。充填材料は約575K未満の融点を有する。
【0005】
本発明の別の実施形態は、電気接点材料である。本電気接点は、複数の細孔を含む固体マトリックスであって金を含む固体マトリックスと、複数の細孔の少なくとも一部に設けられた充填材料とを含む。充填材料は融点約575K未満の金属を含む。
【0006】
本発明の別の態様では、かかる電気接点の汎用製造法を提供する。この方法は、基板を準備するステップと、基板上に複数の細孔を設けるステップと、複数の細孔の少なくとも一部に充填材料を設けるステップとを含む。充填材料は約575K未満の融点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の上記その他の特徴、態様及び利点については、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって、理解を深めることができよう。図面全体を通して同様の部材には同じ参照番号を付した。
【0008】
以下の説明において、同じ参照符号は、図面の幾つかの図を通して同様の部品又は対応部品を示す。また、「上部」、「底部」、「外側」、「内側」などの用語は、便宜的な用途にすぎず、限定的な用語として解釈すべきではない。さらに、本発明のある特徴について、幾つかの要素からなる群の1以上の要素及びそれらの組合せを含む或いは幾つかの要素からなる群の1以上の要素及びそれらの組合せからなるという場合、その特徴が、かかる群のいずれかの要素を個々に又はその群の他の要素のいずれかとの組合せとして含む或いはかかる群のいずれかの要素を個々に又はその群の他の要素のいずれかとの組合せからなることをいう。
【0009】
電子装置の絶え間ない小型化に伴って、接触抵抗が低減し寿命の長い接点材料に対する需要が増している。通例使用される接点材料では、望まれる低い接触抵抗及び信頼性の高い接触特性が得られないことが多い。今回、本発明者は、多孔性マトリックス中に低融点充填材料を含んでなる新規接点材料を開発した。マトリックス及び充填材料を適切に選択することによって、接触抵抗が格段に低く、しかも金属接点同士の融着又は張り付き(スティクション)の問題が最小限となるように、接点材料を設計することができる。
【0010】
本発明の実施形態では、電流の流れを制御するための装置を提供する。本装置は、少なくとも第1の導体と第2の導体とを備える。第1及び第2の導体は、電気的に接続した状態と電気的に切断された状態とが切り替わるように構成され、回路における電流の流れを制御する。これは、第1の導体又は第2の導体のいずれか又は両方をそれらの初期位置からそらして電気的に接触するように作動させることによって達成できる。接触は、2つの導体の間に可動要素を配設してこの可動要素が2つの導体を橋絡して電流又は信号が流れるようにすることによっても達成できる。装置は1以上のスイッチ構造を含んでおり、さらに直列又は並列に配列してその配列が単一のデバイスとみなされるようにしてもよい。以下の実施形態では、後で詳しく説明する通り、第1の導体は、その「作動状態」(初期状態からそれた状態)で、第2の導体と電気的に接続した状態になるように作動される。ただし、第2の導体又は両方の導体が作動する装置も本発明の技術的範囲に属する。本装置を直列モードで使用する場合、オン状態は電磁信号が伝わる状態であり、オフ状態は電磁信号がなく導体間に物理的間隙が存在することを意味する。以下に述べる実施形態では、作動状態はオン状態と関連しているが、本発明は、逆の状況も包含する。少なくとも一方の導体又は両方の導体が、本発明の実施形態に係る接点材料を含む電気接点を備えていてもよい。本装置は、装置構成及び最終用途に応じて、以下に詳細に説明する通り、オン及びオフ状態を成立させるため様々な手段で第1の導体と第2の導体が接触するように構成できる。
【0011】
図1を参照して、カンチレバーアクチュエータを用いて電流の流れを制御するための例示的な装置10を説明する。図1に示すように、装置10は、カンチレバー(可動要素)の形態で設計された第1の導体12を備えており、第1の導体12は固定端部16を有しており、もう一方の端部18は、オン状態とオフ状態とを切り替えるため移動できて第2の導体との接触を確立できる。上述の通り、少なくとも一方の導体12又は14或いは両方の導体は電気接点20を備える。かかる実施形態では、接点材料は、第1の導体の底部及び/又は第2の導体の上部の導体同士が接触する領域を覆っていればよい。電気接点20及び電気接点の製造方法を以下にさらに詳細に説明する。
【0012】
装置10は、静電作動、電磁作動、電熱作動、圧電作動、空圧作動又はこれらの組合せを始めとする当技術分野で公知のあらゆる作動プロセスによって、オン状態とオフ状態とをスイッチし得る。静電作動では、基板と一方の導体とに配置された平行に離隔した電極に電圧が印加される。電極に作用する静電力によって、可動要素が第2の導体に向かって引き下げられて、電気的に接触する。可動要素がその平衡位置から離れると、梁内に応力が蓄積される。応力は、静電力と釣り合う合成力を形成する。印加電圧が取り除かれると、平衡力によって可動要素はその初期位置に戻る。この応力(可動要素内の応力の合計である)は梁をその初期の位置に「復元させる」復元力と呼ばれる。電磁作動では、導体の少なくとも一方は磁性材料を含み、作動電圧で発生した磁界によって作動し得る。電熱作動では、作動電圧で生じる熱による導体材料又は導体上に設けられた他の材料の変形を作動に利用する。圧電作動装置では、カンチレバーに作動電圧を印加すると、圧電材料がその平面で収縮してカンチレバーをそらして、オン状態を確立するソースとの電気的接続を確立する。作動電圧がオフに切り替わると、カンチレバーはその弾力性で初期位置に戻る。作動機構及び装置構成とは関係なく、本明細書に記載した実施形態に係る接点材料を備える電気接点を利用できる。
【0013】
図1の例示的な装置10は、概略図に示す通り、3端子装置である。この装置は、ソース電極22と、ドレーン電極24と、それらの間のゲート電極26とを有し、これらはすべて基板28上に形成される。第1の導体12(可動要素)はゲート電極26の上方に形成され、それらの間に所定の間隙が設けられる。かかる実施形態では、ソース電極22が第2の導体14を形成し、オン位置のときに第1の導体12との電気的接触を確立する。これらの電極は、金属酸化膜半導体電界効果トランジスター(MOSFET)に倣ってソース、ドレーン及びゲートと名付けたが、本装置はMOSFETとは構造が異なる。第1の導体12(可動要素)の一方の端部16は、ソース電極22に固定されてアンカー部を形成する。可動要素18のもう一方の端部は、可動接点を形成するように開放端とされる。ゲート電極26に電圧を印加すると、第1の電極梁12が静電力によって下に曲がり、ソース電極22がドレーン電極24と接触してオン位置を確立する。ゲート電極26が消勢されると、第1の電極梁12はその元の位置に戻り、装置はオフ位置になる。或いは、装置は、作動及び信号経路間の絶縁を高めることができる当技術分野で公知の4端子装置でもよい。4端子装置は作動電圧を導電線から隔離して、所定のスイッチ又はスイッチ型装置の制御性、信頼性及び再現性を高める。ある実施形態では、可動要素12はその縁部で固定してもよく、可動要素を接点に向かって湾曲させることによって接触を達成し得る。他の実施形態では、バルク基板材料で可動要素を機械加工して作動方向が基板表面に垂直となるように可動要素を製造してもよい。かかる構成に必要な変更は当技術分野で周知である。
【0014】
第1の導体及び第2の導体14は、半導体又は金属のような適当な材料で作ればよい。第1の導体12のような可動要素は、通例、装置作動時の屈曲の繰返しに耐えるように,
金、ケイ素、炭化ケイ素などの弾性材料を含む。梁を半導体で作る場合、梁の所定の領域に導体又は絶縁層を設ければよい。例えば、ソース領域22及びドレーン領域24は、接点材料を含む導体層で部分的又は完全に覆われる。ゲート領域は、カンチレバーに作動静電力を作用させるとともにオン位置のときの装置の短絡を避けるために互いに電気的に絶縁される。
【0015】
さらに、導体12,14は、この環境中での電荷の増大を抑制するため二次電子放出係数の比較的低い皮膜材料で覆うことができる。これらの皮膜はアークの低減に役立つ。かかる成分の具体例としては、特に限定されないが、チタン及び窒化チタンが挙げられる。かかる実施形態では、二次電子放出係数の比較的低い皮膜は、接点材料上に施工できる。カンチレバー(12)が圧電作動で作動するように構成された実施形態では、圧電材料の層はカンチレバー(12)上に被覆される。好適な圧電材料の具体例としては、特に限定されないが、ジルコン酸鉛、 チタン酸鉛、ニオブ酸マグネシウム鉛及びチタン酸ジルコニウム鉛(PZT)が挙げられる。かかる実施形態では、材料皮膜は、スクリーン印刷、浸漬法又は電気泳動法のような物理的又は化学的堆積法で堆積させることができる。
【0016】
別の実施形態では、装置はダイアフラムを可動構造として含む。図2は、両側で固定された第1の導体を備える電流制御装置30の概略図を示し、第1の導体は作動部材としての円形ダイアフラム(第2の導体)とオフ位置で離隔している。第1の導体32と円形ダイアフラム34の上部とは接触していない。作動電圧を印加すると、電流がダイアフラム内で半径方向に流れ、ダイアフラムは、図3に示すように、上方に移動して第1の導体32との間で電気的接触を確立する。この実施形態に係る接点材料は、第1の導体36の底部と円形ダイアフラム38の上部に配設でき、そこで2つの導体が接触して低い接触抵抗及び長いサイクル寿命が確保される。装置の動作について、簡単なダイアフラム系装置で説明しているが、本発明の実施形態は、この簡単な設計に限定されるものではなく、当業者には明らかなように、さらに複雑な各種の設計にも応用できる。
【0017】
上記の実施形態では、装置の作動及び動作を制御する外部回路は、当技術分野で公知のあらゆる形式のものでよく、本明細書では図示も説明もしない。電流の流れを制御するための装置は、マイクロプロセッサ、グラフィックプロセッサ、ディジタルプロセッサのようなプロセッサの一部でもよいし、或いは集積ロジック及びセンサを備えたスタンドアロンシステムであってもよく、装置は配電スイッチシステムの一部としての配電構成部品又は無線通信装置の一部としての通信回路を備えていてもよい。装置は、ダイレベル又はウェーハレベルのいずれかのキャッピング法で得られる密封環境中で動作させることができる。上記の実施形態では、装置の製造は、リソグラフィパターン形成プロセス、選択エッチング、電気メッキ、接着法及び堆積法のような当技術分野で公知の方法でなし得る。このような装置製造法は当技術分野で周知であり、それらについては本明細書では図示も説明もしない。接点材料の製造の詳細は、以下の実施形態で詳細に説明する。接点材料は、装置製時に形成してもよいし、或いは装置製造後に装置の所定の領域に配設することもできる。
【0018】
本発明の実施形態に係る接点材料は、通例、高導電性の多孔性マトリックスを低融点材料で充填したものからなる。図4は、本発明の一実施形態に係る接点材料を含む電気接点の概略図を示す。接点材料40は、複数の細孔44を含む固形マトリックス42と、複数の細孔の少なくとも一部に設けられた充填材料46とを含む。一般に、充填材料46は約575K未満の融点を有する。一実施形態では、充填材料46は約475K未満の融点を有し、別の実施形態では、充填材料46は約375K未満の融点を有する。
【0019】
マトリックス材料は、低い抵抗率、高い熱伝導性、装置動作条件下でのマトリックス材料の化学的及び機械的安定性、公称硬度及び弾性率、並び充填材料の融点を超える融点が得られるように選択される。ある実施形態では、マトリックスは金属を含む。好適な金属の具体例としては、特に限定されないが、金、アルミニウム、白金、銅、チタン、モリブデン、銀、タングステン及びこれらの各種組合せが挙げられる。ある実施形態では、接点材料は貴金属を含む。貴金属は、それらの低い抵抗率、高い耐酸化性、好適な機械的及び熱力学的特性の点で魅力的である。例示的な具体例では、金属は金を含む。別の例示的な具体例では、金属は白金を含む。
【0020】
ある実施形態では、マトリックスは2種以上の金属の合金を含む。合金は個々の金属よりも優れた機械的及び電気的特性を与え得る。例えば、金の硬度は、少量のニッケル、パラジウム、銀又は白金と合金化することによって高めることができる。他の添加物の具体例としては、特に限定されないが、レニウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、銅及びコバルトが挙げられる。好適な合金組成は、単相合金及び非混和性領域を識別する相図に基づいて選定できる。さらに、硬度及び抵抗率の値を評価してから、マトリックス用の合金組成を選択する。単相・混和性合金(合金元素が互いに完全に相溶性であるもの)を特定すれば、二相・非混和性合金領域中に形成されるおそれのある脆性・高抵抗率金属間化合物の問題を回避することができる。
【0021】
或いは、マトリックス42は半導体又は絶縁体を含んでいてもよい。好適な半導体又は絶縁体の具体例としては、特に限定されないが、ケイ素、炭化ケイ素、ガリウムヒ素、ケイ素、窒化ケイ素、酸化ケイ素、窒化ガリウム、窒化アルミニウム及びそれらの組合せが挙げられる。ある実施形態では、マトリックスはダイヤモンドライクカーボン(DLC)、グラファイト又は炭素ナノチューブのような炭素質材料及びそれらの組合せを含む。一実施形態では、炭素質材料は、様々な形態のグラファイト及びその他炭素粒子を充填又は含量として配合したポリマーのような炭素の存在によって導電性を有する材料を含む。かかる実施形態では、接触特性を改善するため、マトリックス層上に高導電性金属皮膜を堆積させてもよい。所望の機械的、電気的及び熱力学的特性に基づいて半導体材料を選定する方法は当業者には公知であろう。
【0022】
マトリックス42は、通例、充填材料を充填するための複数の細孔44を含む。細孔は、必要に応じてどのような形状、深さ及び細孔間隔のものでもよい。通例、複数の細孔44は約1nm〜約10μmの範囲内のメジアン細孔径を有する。ある実施形態では、複数の細孔44は約1nm〜約500nmの範囲内のメジアン細孔径を有する。他の実施形態では、複数の細孔44は約1nm〜約100nmの範囲内のメジアン細孔径を有する。ここで規定する細孔径は細孔の集団に特有のメジアン細孔径である。さらに、本発明の実施形態は、多モード分布の細孔径を有するマトリックスを包含するように拡張され、例えば、複数の細孔44が多峰性分布の細孔径を含んでいてもよいし、或いは複数の細孔が2以上の形状集団を含んでいてもよい。
【0023】
通例、充填材料は低融点金属を含む。充填材料46は約575K未満の融点を有する。一実施形態では、充填材料46は約475K未満の融点を有し、別の実施形態では、充填材料46は約375K未満の融点を有する。充填材料の選択に用いられる基準を幾つか挙げると、装置の動作中の充填材料の安定性、マトリックス材料との適合性すなわちマトリックス材料に対する充填材の適切な濡れ性、及び他の装置製造法との充填材堆積法の適合性が挙げられる。好適な金属の具体例としては、特に限定されないが、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、タリウム(Tl)、銅(Cu)、ビスマス(Bi)、ケイ素(Si)、水銀(Hg)、ニッケル(Ni)及びそれらの組合せが挙げられる。例示的な実施形態では、金属はガリウムを含む。ある実施形態では、金属は金属合金を含む。好適な合金としては、特に限定されないが、Ga−Bi、Ga−In、Ga−Sn、Ga−Zn、Bi−In、InBi及びInBiが挙げられる。例示的な実施形態では、金属は約80重量%のガリウムと約20重量%のインジウムからなる合金のようなガリウムとインジウムの共晶合金を含む。一実施形態では、合金はガリウムとインジウムと亜鉛を含む。別の実施形態では、合金はガリウムとインジウムとスズを含む。幾つかの他の魅力的な低融点合金としては、Pb−Sn−Cd−Bi、In−Pb−Sn−Bi及びIn−Cd−Pb−Sn−Biが挙げられる。ある実施形態では、充填材は、常温で液体金属を含む。液体金属は非圧縮性であり、濡れ接点を形成して、全般的な有効接触領域の増大によって接触抵抗を大幅に低下させることができる。
【0024】
ある実施形態では、固体マトリックスと充填材料と間に拡散障壁層を導入してもよい。拡散障壁層は、装置の動作中に高温又はガスに暴露されたときのマトリックスの安定性を改善し、マトリックスと充填材料との不都合な反応を抑制する。拡散障壁層は、通例、数nmの厚さであるが、当業者であれば特定の用途条件に基づいて実際の厚さを決定することができよう。拡散障壁層は、スパッタリング、蒸着、分子蒸着、原子層堆積、スピニングなどを始めとする当技術分野で公知のあらゆる堆積法で堆積させることができる。障壁材料の具体例としては、特に限定されないが、タングステン、チタン、クロム、ニッケル、モリブデン、ニオブ、白金、マンガン及びそれらの様々な組合せが挙げられる。マトリックスの組成、充填材の組成及び装置の動作環境に基づいて拡散障壁材料を選定する方法は、当業者には公知であろう。
【0025】
電気接点の総抵抗率は、充填材料46の抵抗率及びマトリックス42の抵抗率の合計によって決まる。従って、所望の抵抗率値が達成されるように、マトリックスの抵抗率(マトリックス材料の抵抗率、細孔密度及び細孔の寸法によって決まる)、充填材料の抵抗率及び細孔の充填度をすべて個別に制御すればよい。従って、ある実施形態では、細孔の少なくとも1つを充填材料で少なくとも部分的に充填する。他の実施形態では、細孔の少なくとも幾つかを充填材料で充填すればよく、他の実施形態では、細孔の大半又はすべてを充填材料で充填する。ある実施形態では、細孔体積の約50%以上を充填材料46で充填し、他の実施形態では、細孔体積の約75%以上を充填材46で充填する。ある実施形態では、充填材料で細孔を完全に充填し、マトリックス上に薄層を形成してもよい。
【0026】
本発明の別の実施形態は、電気接点材料である。電気接点材料は、通例、複数の細孔を有する多孔性マトリックスと、複数の細孔の少なくとも一部に設けられた低融点充填金属とを含む。マトリックスは金を含む。マトリックスは、上述の実施形態に記載した通り、他の合金添加物を含んでいてもよい。金を含む多孔性マトリックスは、充填材料を収容するのに適した大きな表面積のマトリックスを形成する。多孔性マトリックスは、通例、約1nm〜10μmの範囲内のメジアン細孔径を有する。ある実施形態では、複数の細孔は約1nm〜約500nmの範囲内のメジアン細孔径を有する。他の実施形態では、複数の細孔は約1nm〜約100nmの範囲内のメジアン細孔径を有する。
【0027】
充填材料は、上述の装置の実施形態において列挙した充填材料を含むマトリックス材料と適合性をもつ低融点金属であればよい。本発明の実施形態に係る電気接点は、従来の接点に比べて比較的低い電気抵抗率を有する。一実施形態では、電気接点は約10Ω以下の抵抗を有する。一実施形態では、電気接点は約1Ω以下の抵抗を有する。別の実施形態では、電気接点は約10mΩ以下の抵抗を有する。
【0028】
本発明の実施形態に係る接点材料は低圧作動装置に適している。これらは、特に作動力がマイクロニュートン乃至ミリニュートンの範囲にあるマイクロデバイスで有用である。かかる低作動力装置では、所要の大きな接触面積、ひいては低い接触抵抗を達成するために慣用接点材料の変形に要するほどの力は存在しない。かかる装置では、本実施形態に係る接点材料は低い接触抵抗及び長い寿命をもたらす。通例、本装置を単一デバイス素子としてこれらの低作動力デバイスに適用するときは約1cm未満の最大寸法を有する。一実施形態では、装置は単一のデバイス素子として使用する場合約1mm未満の最大寸法を有する。別の実施形態では、装置は単一のデバイス素子として使用する場合約500μm未満の最大寸法を有する。別の実施形態では、装置は単一のデバイス素子として使用する場合約100μm未満の最大寸法を有する。以上の実施形態は、接点材料を備える単一の微小電気機械システム(MEMS)スイッチのような単一のデバイス素子について述べたが、これらのデバイスを直列及び並列に配列して複雑な電子回路又はMEMS系装置を形成することも想定される。
【0029】
本発明の実施形態に係る接点材料は、実際の接触面積の増大、接触抵抗の減少、接点での発熱の低下、低い接触抵抗に要する力の大きさの低減、装置の機械的寿命の増加、アクチュエータ寸法の縮小及び電力消費量の低減を始めとする数多くの利点をもたらす。これらの接点は、アークによる発熱を抑制し、接点表面の寿命を延ばすこともできる。これらの装置は、公知のスイッチ装置に比べて、それらの低電力要件、分配制御の可能性及びスイッチング性能の向上によって、特に限定されないが、配電システムにおける小型電気スイッチ、接触器、リレー、サーキットブレーカに適している。
【0030】
ある実施形態では、装置はスイッチを備える。一実施形態では、スイッチは微小電気機械システム(MEMS)スイッチを備える。MEMSスイッチは、DC電気スイッチ、高周波(RF)スイッチ、マイクロ波スイッチ又はミリ波スイッチとすることができる。装置は、作動及びスイッチング信号が同一の制御ラインを共用するスイッチでも、或いは作動及びスイッチング信号間を完全に電流絶縁したリレーでもよい。MEMSデバイスは、電界を使用してデバイスを作動させる静電作動装置、磁性プレートを使用してデバイスを作動させる磁気作動装置、或いは温度によって湾曲/変形するバイメタルプレート又は熱複合材を使用して回路を接続又は切断する熱スイッチとすることができる。かかるスイッチの設計及び動作の詳細は当技術分野で周知である。
【0031】
本発明の別の実施形態は、接点材料の製造方法である。図5に、電気接点の製造法50の流れ図を示している。本方法は、ステップ52における基板を準備するステップと、ステップ54における基板上に複数の細孔を設けるステップと、ステップ56における複数の細孔の少なくとも一部に充填材料を設けるステップとを含む。充填材料は約575K未満の融点を有する。充填材料及びマトリックス材料は、接点材料の実施形態で説明した材料を始めとするあらゆる好適な材料でよい。
【0032】
通例、多孔性基板を、充填材料を配合するためのマトリックスとして使用する。多孔性基板の製造には、当技術分野で公知のあらゆる方法を使用できる。好適な細孔形成法の具体例としては、特に限定されないが、イオンビームエッチング、リソグラフィ、自己集合法、マイクロ機械加工、陽極エッチング、レプリケーション、精密鋳造、スタンピング、ソフトリソグラフィ、エレクトロスピニング、レーザ穿孔加工などが挙げられる。基板は、多孔層として堆積させることもできるし、或いは当技術分野で公知のあらゆる細孔形成法によって非多孔性基板を多孔性マトリックスへと転換させてもよい。所望の細孔寸法の高密度で均一な細孔孔を形成するため、イオンビームエッチング、陽極エッチングなどの方法が知られている。所望の細孔構造が得られるようにプロセスパラメータを変更してもよいことは当業者には明らかである。
【0033】
例示的な実施形態では、基板は、マトリックス材料とマトリックス材料内に分散させた二次材料とを含む。マトリックス材料と共に分散させた二次材料の少なくとも一部は、多孔性マトリックス材料を得るために選択的に溶解される。分散二次材料の一部を選択的に除去するため、化学エッチング、電気化学エッチング、加熱処理、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング及びディープ反応性イオンエッチングなどを始めとする当技術分野で公知の処理方法を使用し得る。例えば、金属とラテックス粒子などのポリマー粒子との複合材を層として堆積させ、次いで加熱処理又は化学エッチングによってラテックス粒子を除去して多孔性金属マトリックスを得ることができる。例示的な実施形態では、マトリックスは金と銀の合金を含む。金と銀は互いに完全に混和性であり、成分の1つを選択的に除去して高度に均一な細孔構造を得ることができる。例えば、金に溶解した銀の一部を、硝酸などの酸を用いた化学エッチングで除去することができる。
【0034】
充填材料は多孔性構造の細孔内に充填される。好適な充填処理の具体例としては、特に限定されないが、充填材料の熱蒸発、電子ビーム蒸発、スパッタ蒸着、スピンキャスティング、射出、溶射、圧力浸透、電着及び毛細管充填が挙げられる。使用するプロセスの詳細は、充填材料の融点、コスト及びその他様々な基準によって定まる。
【0035】
本発明の実施形態は、従前使用されてきた装置及び接点材料とは根本的に異なる。例えば、従前、液体金属接点マイクロスイッチ及びリードリレーが報告されている。これらの装置の大部分では、液体金属を制御/移動させて接触を構成及び解除する。本発明の装置では、接点材料は、多孔性マトリックス内に含まれる低融点合金を含む。接点材料は、実質的に低接触抵抗を示し、あらゆる種類の電気装置に適用できる。多孔性マトリックス内に低融点材料を組み込むことによって、実接触面積が本質的に増大し、低接触抵抗をもたらす。
【実施例】
【0036】
接点材料の製造方法
本実施例では、清浄化Siウェーハを基板として使用した。シリコンへの金の付着性を促進するため、Siウェーハ上に約5nmのクロム薄膜をDCスパッタリングで堆積させた。次いで、クロム薄膜上に約200nmの金薄膜をDCスパッタリングで堆積させた。上記のステップに続いて、金薄膜上に約200nmの金−銀(Au−Ag)薄膜(1:1組成)をDCスパッタリングで堆積させた。Au−AG薄膜を、200℃で1時間熱アニーリングに付した。Au−AG(1:1)の組成は元素分析でさらに確認した。Agの脱合金処理を、Au−Ag薄膜を70%HNO(体積百分率)中に1時間付すことによって実施した。脱合金処理後に、ウェーハを脱イオン水中で洗浄し、次に窒素ガス中で乾燥させた。脱合金処理した薄膜の電子顕微鏡観察で、均一な細孔の形成が確認された。さらに、熱蒸発法によって薄膜の細孔をガリウムで充填した。
【0037】
例示的な実施形態に関して本発明を説明してきたが、本発明の技術的範囲から逸脱せずに、本発明の構成要素に様々な変更を加えることができ、本発明の要素を均等な要素で置換できることは、当業者には明らかであろう。さらに、本発明の本質的な技術的範囲から逸脱せずに、特定の状況又は材料を本発明の教示内容に適合させるため数多くの修正をなすことができる。具体的には、カンチレバーアーム、アンカー構造、電気接点、ゲート、ソース及びドレーン領域は、複数のアンカー点、カンチレバーアーム及び電気接点を把持MeOする様々な形態で形成し得るる。従って、本発明は、本発明を実施するための最良の形態として開示した実施形態に限定されるものではなく、本発明は、特許請求の範囲の技術的範囲に属するあらゆる実施形態を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る装置の概略図。
【図2】本発明の別の実施形態に係る装置の概略図。
【図3】本発明の別の実施形態に係る装置の概略図。
【図4】本発明の一実施形態に係る電気接点の概略図。
【図5】本発明の一実施形態に係る接点材料の製造方法の流れ図。
【符号の説明】
【0039】
10 電流制御装置
12 第1の導体
14 第2の導体
16 固定端部
18 自由端部
20 電気接点
22 ソース電極
24 ドレーン電極
26 ゲート電極
30 電流制御装置
32 第1の導体
34 第2の導体
36 第1の導体の底部
38 円形ダイアフラムの上部
40 接点材料
42 マトリックス
44 細孔
46 充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導体(12)と、
第1の導体(12)と電気的に接続した状態と第1の導体(12)と電気的に切断された状態とが切り替わるように第1の導体(12)と切り替え可能に接続する第2の導体(14)と
を備える、電流の流れを制御するための装置(10)であって、
前記導体の少なくとも一方がさらに電気接点(40)を備えていて、電気接点(40)が、
複数の細孔(44)を含む固体マトリックス(42)と、
複数の細孔(44)の少なくとも一部に設けられた融点約575K未満の充填材料(46)と
を含んでなる、装置(10)。
【請求項2】
マトリックス(42)が、金属、絶縁体、半導体及び炭素質材料からなる群から選択される材料を含む、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記金属が、金、アルミニウム、白金、銅、チタン、モリブデン、銀及びタングステンからなる群から選択される1種以上を含む、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記材料が、ケイ素、窒化ケイ素、酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ガリウム及び窒化アルミニウムからなる群から選択される1種以上を含む、請求項2記載の装置。
【請求項5】
複数の細孔(44)が約1nm〜約10μmの範囲内のメジアン細孔径を有する、請求項1記載の装置。
【請求項6】
充填材料(46)が金属を含む、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記金属が、ガリウム、インジウム、亜鉛、スズ、タリウム、銅、ビスマス、ケイ素、水銀及びニッケルからなる群から選択される1種以上を含む、請求項6記載の装置。
【請求項8】
電気接点(40)が約10Ω未満の抵抗を有する、請求項1記載の装置。
【請求項9】
電気接点(40)が約1mΩ未満の抵抗を有する、請求項1記載の装置。
【請求項10】
当該装置を単一のデバイス阻止として用いたときに当該装置が約1cm未満の最大寸法を有する、請求項1記載の装置。
【請求項11】
当該装置がスイッチを備える、請求項1記載の装置。
【請求項12】
複数の細孔(44)を含む固体マトリックス(42)であって金を含む固体マトリックス(42)と、
複数の細孔(44)の少なくとも一部に設けられた充填材料(46)と
を備える電気接点(40)であって、充填材料(46)が融点約575K未満の金属を含む、電気接点(40)。
【請求項13】
電気接点(40)の製造方法(50)であって、
基板を準備するステップと、
基板の薄膜堆積材料上に複数の細孔(44)を設けるステップと、
複数の細孔(44)の少なくとも一部に融点約575K未満の充填材料(46)を設けるステップと
を含んでなる方法(50)。
【請求項14】
前記基板が、二次材料とマトリックス(42)材料との固溶体を含む合金を含む、請求項13記載の方法(50)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−16452(P2008−16452A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−175734(P2007−175734)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】