説明

接着シート

【課題】高接着性と低弾性を両立し得る接着シート及びそれを用いた半導体装置を提供する。
【解決手段】高分子量成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有する接着シートであって、上記熱硬化性成分(B)が特定の構造を有するフェノール樹脂及びフェノール誘導体の少なくとも一種であるフェノール類を含む接着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子をはじめとする各種電子部品を搭載した実装基板として最も重要な特性の一つとして信頼性がある。その中でも、熱疲労に対する接続信頼性は実装基板を用いた機器の信頼性に直接関係するため非常に重要な項目である。この接続信頼性を向上するための1つの課題として、熱膨張係数の異なる各種材料を用いていることから生じる熱応力の緩和が挙げられる。熱応力は、例えば、半導体素子の熱膨張係数が約4ppm/℃と小さいのに対して、電子部品を実装する配線板の熱膨張係数が15ppm/℃以上と大きいことから、これらを組み合わせた場合に熱衝撃に対して熱ひずみが発生することに起因する。最近、半導体装置の小型化、薄型化に伴い基板及びウエハの薄型化が進んでおり、上述したような熱応力に起因して素子の反りなどが発生しやくなっている。そのため、より低温、及び低荷重での実装が強く求められている。
一方、近年、携帯電話、携帯オ−ディオ機器用のメモリパッケージチップを多段に積層したスタックドMCP(Multi Chip Package)が普及している。このようなパッケージにおいては、チップの接着面に空隙を発生させることなくチップを実装することが、接続信頼性を向上するための課題の一つとなっている。特に、配線などを有する基板上にチップを積層する場合、この基板、リードフレーム、チップ表面の凹凸を十分に埋め込む埋め込み性がパッケージの接続信頼性の確保に重要とされている。
【0003】
しかし、低温及び低荷重での圧着実装のみで上記チップ表面の凹凸を十分埋め込むことは難しい。そのため、従来から、接着シート付きチップを基板上に熱圧着して固定し、パッケージ封止工程での熱と圧力で凹凸を埋め込む方法が主流となっている。このような埋め込み性を確保できる接着シートとして、例えば、特許文献1に記載されているようなエポキシ樹脂、フェノール樹脂及びアクリル共重合体を含む接着シートなどが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−220576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、半導体装置は急激に高集積化が進み、スタックドMCPを構成する接着シートは、チップの積層数の増加に伴って繰り返し起こる熱履歴を受けるため、熱劣化を起こすということが大きな問題となっている。長い熱履歴によって、接着シートが脆くなり、接着性が低下し、剥離を起こすといった問題や上述したパッケージ封止工程での熱と圧力で基板等の凹凸を埋め込む方法において、熱履歴のために硬化が進み、凹凸を埋め込むことが難しいといった問題が起こる。さらに近年、低コスト化や半導体素子の高速化のために銅リードフレームのような接着が難しい材料が使用され、接着性を維持するのが困難となっている。以上より、高集積化された半導体装置の信頼性を確保するためには、剥離等を防止するために高接着性であることと、凹凸を完全に埋め込むために長い熱履歴に対しても低弾性であることが求められる。しかしながら、高接着性と低弾性とは相反する特性であり、両立することが非常に困難である。したがって、本発明は、上述の状況に鑑み、高接着性と低弾性を両立し得る接着シート及びそれを用いた半導体装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、以下の(1)〜(6)に関する。
(1)高分子量成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有する接着シートであって、前記熱硬化性成分(B)が、下記一般式(1)で表される構造単位を有するフェノール樹脂もしくは下記一般式(2)又は(3)で表されるフェノール誘導体からなる群から選択される少なくとも一種のフェノール類を含む、接着シート。
【化1】

(一般式(1)中のR及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を示し、Rはアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、水酸基又はハロゲン原子を示し、nは0〜4の整数を示す。)
【化2】

(一般式(2)中のRないしRは、それぞれ炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基もしくはフェニル基を示し、それらは同一環内又は異なる環内で互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、a,b,c及びd及は、それぞれ0〜4の整数を示す。Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、フェニレン基を示し、eは0〜4の整数を示す。)
【化3】

(一般式(3)中のRないしR11は、それぞれ炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基もしくはフェニル基を示し、それらは同一環内又は異なる環内で互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、f,g及びhは、それぞれ0〜4の整数を示す。R12は、水素原子、アルキル基もしくはフェニル基を示す。)
(2)さらに硬化促進剤(C)、カップリング剤(D)及びフィラー(E)の少なくとも1種を含む、(1)に記載の接着シート。
(3)前記高分子量成分(A)の配合量が、接着シートの全構成成分の合計質量を基準として、50〜80質量%の範囲である、(1)又は(2)に記載の接着シート。
(4)前記熱硬化性成分(B)がさらにエポキシ樹脂を含む、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の接着シート。
(5)前記熱硬化性成分(B)における前記エポキシ樹脂と前記フェノール類との配合比が、エポキシ当量:OH当量で1.0:0.5〜1.0:1.2の範囲である、(1)〜(4)のいずれかに記載の接着シート。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の接着シートを用いて、半導体素子と配線付き基板とを、又は半導体素子同士を接着した構造を有してなる半導体装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高い接着性と低弾性を両立し、耐熱履歴性を有し、半導体装置の接続信頼性の向上を可能とする接着シート及びそれを用いた半導体装置を提供することができる。より詳細には、本発明による接着シートは、通常、接着性を維持することが困難な銅リードフレームに対して熱履歴をかけた場合であっても優れた接着性を示し、また通常の熱履歴に相当する熱時(170℃)での弾性率も良好である。そのため、本発明による接着シートを用いて構成される半導体装置は、熱時信頼性に優れたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の接着シートは、高分子量成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有する接着シートであって、上記熱硬化性成分(B)が下記一般式(1)で表される構造単位を有するフェノール樹脂と、下記一般式(2)又は(3)で表されるフェノール誘導体とからなる群から選択される少なくとも一種のフェノール類を含むことを特徴とする。
【化4】

(一般式(1)中のR及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を示し、Rはアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、水酸基又はハロゲン原子を示し、nは0〜4の整数を示す。)
【化5】

(一般式(2)中のRないしRは、それぞれ炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基もしくはフェニル基を示し、それらは同一環内又は異なる環内で互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、a,b,c及びd及は、それぞれ0〜4の整数を示す。Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、フェニレン基を示し、eは0〜4の整数を示す。)
【化6】

(一般式(3)中のRないしR11は、それぞれ炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基もしくはフェニル基を示し、それらは同一環内又は異なる環内で互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、f,g及びhは、それぞれ0〜4の整数を示す。R12は、水素原子、アルキル基もしくはフェニル基を示す。)
【0009】
以下、本発明の接着シートを構成する各成分について詳しく説明する。
【0010】
高分子量成分(A)
本発明における高分子量成分(A)としては、架橋性官能基を有するものであり、例えば架橋性官能基を有するポリイミド樹脂、(メタ)アクリル共重合体、ウレタン樹脂ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられ、これらのなかでも、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体が好ましい。これら高分子量成分(A)は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記架橋性官能基はポリマー鎖中に有していても、ポリマー鎖末端に有していてもよい。架橋性官能基の具体例としては、エポキシ基、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基等が挙げられ、これらのなかでも、エポキシ基が好ましく、グリシジシル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有モノマーを用いることによってポリマー鎖に導入することができる。
【0011】
本発明において好ましい高分子量成分(A)は、エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体であり、例えば、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エポキシ基含有アクリルゴムなどを挙げることができ、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体がより好ましい。アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とするものであり、例えば、ブチルアクリレートやエチルアクリレートとアクリロニトリルの共重合体などからなるゴムである。
【0012】
上記エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体は、グリシジル(メタ)アクリレートを、全モノマー量を基準として、0.5〜6.0質量%含むことが好ましく、0.5〜5.0質量%含むことがより好ましい。グリシジル(メタ)アクリレートの含有量が0.5質量%未満となる場合は接着力が低下する可能性があり、6.0質量%超となる場合はゲル化する可能性がある。グリシジル(メタ)アクリレートと共重合するコモノマーは、エチル(メタ)アクリレートやブチル(メタ)アクリレート又は両者の混合物、アクリロニトリルを用いることができるが、混合比率は、共重合体のガラス転移温度(Tg)等を考慮して決定すればよい。重合方法は特に制限はなく、パール重合、溶液重合等を使用することができる。なお、本発明では「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」、「メタクリル」を意味する。また、グリシジル(メタ)アクリレートは、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート及びそれらの混合物を意味する。
【0013】
高分子量成分(A)のガラス転移温度(以下、「Tg」と表記する)は、−50〜50℃であることが好ましく、−30〜20℃であることがより好ましい。前記Tgが−50℃未満では、シートに成形した後のタック力が上がり取り扱い性が悪化する可能性があり、逆に50℃を超えると流動性を損なう可能性がある。
【0014】
高分子量成分(A)の重量平均分子量(以下、「Mw」と表記する)は、特に限定されないが、5万〜120万であることが好ましく、10万〜120万であることがより好ましく、20万〜80万であることが特に好ましい。上記Mwが5万未満では、成膜性が悪くなる傾向があり、逆に120万を超えると流動性が落ちてしまう傾向がある。なお、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて換算した値であり、ポンプとして株式会社日立製作所製、製品名:L−6000を使用し、カラムとして日立化成工業株式会社製、製品名:ゲルパック(Gelpack)GL−R440、ゲルパックGL−R450及びゲルパックGL−R400M(各10.7mm(直径)×300mm)をこの順に連結したカラムを使用し、溶離液としてテトラヒドロフラン(以下、「THF」と言う。)を使用し、試料120mgを、THF:5mlに溶解させたサンプルについて、流速1.75mL/分で測定することができる。
【0015】
熱硬化性成分(B)
熱硬化性成分は、熱により架橋反応を起こし得る反応性化合物から構成される成分であり、本発明では、上記熱硬化性成分(B)として、下記一般式(1)で表される構造単位を有するフェノール樹脂と、下記一般式(2)又は(3)で表されるフェノール誘導体からなる群から選択される少なくとも一種のフェノール成分(以下、「フェノール類(b1)」と表す。)を含有することを特徴とする。
【化7】

【0016】
一般式(1)中のR及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基であり、例えば、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等の鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の環状アルキル基;等が挙げられる。これらのなかでも、R及びRはメチル基が好ましい。
は、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、水酸基又はハロゲン原子を示し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の環状アルキル基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;水酸基;塩素、臭素、フッ素、ヨウ素等のハロゲン原子;などが挙げられる。これらのなかでも、水素結合やπ結合などの静電気的相互作用を考慮すると、メチル基やエチル基などのアルキル基が好ましい。
上記一般式(1)で表される構造単位を有するフェノール樹脂の市販品としては、大日本インキ化学工業株式会社製の商品名フェノライトLFシリーズがある。
【0017】
【化8】

【0018】
一般式(2)中のRないしRは、それぞれ炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基もしくはフェニル基を示し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基;フェニル基;等が挙げられる。上記RないしRは同一環内又は異なる環内で互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。a,b,c及びdは、それぞれ0〜4の整数を示す。Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、フェニレン基を示し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基;フェニル基;等が挙げられ、なかでもフェニル基が好ましい。eは0〜4の整数を示す。
上記一般式(2)で表されるフェノール誘導体の市販品としては、旭有機材工業株式会社製の商品名:AVライト TEP−TPA(化学名:α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン)、AVライト TEP−DF(化学名:1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−エタン)、AVライト TEOC−DF(化学名:1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−エタン)、AVライト BIP−BI25X−TPA(化学名:α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−α’,α’−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−p−キシレン)等がある。
【0019】
【化9】

【0020】
一般式(3)中のRないしR11は、それぞれ炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基もしくはフェニル基を示し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基;フェニル基;等が挙げられる。上記RないしRは同一環内又は異なる環内で互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。f,g及びhは、それぞれ0〜4の整数を示す。R12は、水素原子、アルキル基もしくはフェニル基を示し、例えば、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の環状アルキル基;フェニル基;等が挙げられる。これらのなかでも、水素原子が好ましい。
上記一般式(3)で表されるフェノール誘導体の市販品としては、旭有機材工業株式会社製の商品名:AVライト BIP−PHBZ(化学名:トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン)、AVライト BIOC−VA(化学名:ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルメタン等がある。
【0021】
本発明の接着シートによれば、熱硬化性成分(B)が上記フェノール類(b1)を含むことにより、高い接着性と低弾性を両立し、接続信頼性を確保することができる。理論によって拘束するものではないが、上記フェノール類(b1)は多官能であるため、一官能のフェノール化合物と比較して、反応性が高く、接着性において有利であり、また架橋時にはより多分岐の構造を形成しやすくなり、低弾性と接着性との両立が可能になると推測される。そのため、本発明では、熱硬化性成分(B)において上記一般式(1)〜(3)の少なくとも1種である上記フェノール類(b1)を含むことが必須となる。上記フェノール類(b1)の中でも、上記一般式(2)で表されるフェノール誘導体は4官能フェノールであり、上記一般式(3)で表されるフェノール誘導体は3官能のフェノールであり、それぞれ放射状の構造を有するため、上記一般式(1)のフェノール樹脂と比較して、分岐の方向が多岐にわたり、規則性が崩れることによって、低弾性化においてより有利であると推測される。そのため、上記フェノール類(b1)の中でも、少なくとも上記一般式(2)又は(3)で表されるフェノール誘導体を使用することがより好ましい。しかし、本発明では、これらの実施形態に限定されることなく、上記フェノール類(b1)の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
本発明では、熱硬化性成分(B)として、上記フェノール類(b1)に加えて、当技術分野で熱硬化性樹脂として周知の化合物(以下、「熱硬化性樹脂(b2)」と表す。)を使用することが好ましい。熱硬化性樹脂(b2)としては、例えば、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂(上記フェノール類(b1)を除く)、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、レゾルシノールホルムアルデヒド樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、ポリイソシアネート樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含有する樹脂、トリアリルトリメリタートを含有する樹脂、シクロペンタジエンから合成された熱硬化性樹脂、芳香族ジシアナミドの三量化による熱硬化性樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、高温において優れた接着力を持たせることができる点で、エポキシ樹脂、シアネート樹脂及びビスマレイミド樹脂が好ましく、半導体素子を実装する場合に要求される耐熱性及び耐湿性を有し、150℃以上で反応し、高分子量化するエポキシ樹脂を好適に用いることができる。これらの熱硬化性樹脂(b2)は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
上記エポキシ樹脂としては、硬化して接着作用を有するものであれば特に制限はない。エポキシ樹脂として、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等の二官能エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;多官能エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂など一般に知られているものを適用することができる。これらのなかでも、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本発明による樹脂シートにおいて、熱硬化性成分(B)となる上記フェノール類(b1)と、熱硬化性樹脂(b2)との配合比は、熱硬化性樹脂の硬化が良好に達成できる範囲であれば特に限定されない。本発明の一実施形態において、上記配合比は、1.0:0.5〜1.0:1.2の範囲で適宜調整することが望ましい。例えば、熱硬化性樹脂(b2)としてエポキシ樹脂を使用する場合、上記熱硬化性成分(B)における上記エポキシ樹脂と上記フェノール類との配合比は、エポキシ当量:OH当量で1.0:0.5〜1.0:1.2の範囲であることが好ましく、1.0:0.8〜1.0:1.0の範囲であることがより好ましい。上記OH当量を0.5以上にすることによって、エポキシ樹脂が未硬化となる不具合を低減することができる。また上記OH当量を1.2以下にすることによって、未反応のフェノール類の量を低減することができ、信頼性を低下させるアウトガスの発生等の抑制することができる。
【0025】
また、本発明の接着シートは、硬化促進剤(C)、カップリング剤(D)及びフィラー(E)の少なくとも1種を更に含んでもよい。本発明において、上記高分子量成分(A)及び熱硬化性成分(B)に加えて、上記成分(C)〜(E)の少なくとも1種を含む接着シートは、接着性及び接続信頼性により優れたものとなる。以下、各成分について詳細に説明する。
【0026】
硬化促進剤(C)
本発明の接着シートは、さらに硬化促進剤(C)を含有することができる。硬化促進剤(C)としては、特に制限はなく、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のシクロアミジン化合物及びこれらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類及びこれらの誘導体、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類及びこれらの誘導体、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン類及びこれらのホスフィン類に無水マレイン酸、上記キノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有するリン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムエチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムテトラブチルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩及びこれらの誘導体が挙げられる。これらの硬化促進剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのなかでも、硬化促進剤としては、イミダゾール類を含むことが好ましい。
【0027】
カップリング剤(D)
本発明の接着シートは、異種材料間の界面結合をよくするためにカップリング剤を含有することもできる。カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤が挙げられ、これらのなかでもシラン系カップリング剤が好ましい。
シラン系カップリング剤の具体例としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0028】
フィラー(E)
本発明の接着シートは、上記成分の他にフィラー(E)を含有することもできる。フィラー(E)としては特に制限はないが、無機フィラーが好ましく、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、窒化アルミニウム、ほう酸アルミウイスカ、窒化ホウ素、結晶性シリカ及び非晶性シリカを使用できる。これらは1種を単独又は2種類以上を混合して用いてもよいし、特に問題がなければ添加しなくても良い。
【0029】
熱伝導性向上の観点からは、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、結晶性シリカ又は非晶性シリカを用いることが好ましい。また、溶融粘度の調整やチクソトロピック性の付与の点からは、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、結晶性シリカ又は非晶性シリカを用いることが好ましい。また、ダイシング性の向上の観点からは、アルミナ又はシリカを用いることが好ましい。
【0030】
フィラー(E)の平均粒径は、0.005〜2.0μmであることが好ましい。平均粒径が0.005μm未満であるか又は2.0μmを超えると接着シートの接着性が低下する可能性がある。良好な成膜性と高い接着力を得るためには、フィラー(E)の平均粒径は0.005〜1.5μmであることがより好ましく、0.005〜1.0μmであることがさらに好ましい。
【0031】
特に限定するものではないが、本発明の好ましい一実施形態として、上記成分(A)〜(E)の合計量100質量%を基準として、高分子量成分(A)を50〜80質量%、熱硬化性成分(B)を15〜50質量%、硬化促進剤(C)を0〜0.15質量%、カップリング剤(D)を0〜2質量%及びフィラー(E)を0〜10質量%から構成される接着シートが挙げられる。
【0032】
高分子量成分(A)が50質量%未満では、接着剤層が脆くなる傾向があり、80質量%を超えると接着剤層の流動性が低下する傾向がある。また、熱硬化性成分(B)が15質量%未満では、接着剤層の硬化性が低下する傾向があり、50質量%を超えると接着剤層が脆くなる傾向がある。
【0033】
本発明の接着シートは、例えば、下記のようにして作製することができる。まず、上述の接着シートを構成する各成分を有機溶媒中で混合、混練してワニスを調製する。ワニスの調製に用いる有機溶媒は、接着シートを構成する成分を均一に溶解、混練又は分散できるものであれば制限はなく、従来公知のものを使用することができる。このような溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒が挙げられる。乾燥速度が速く、価格が安い点でメチルエチルケトン、シクロヘキサノンを使用することが好ましい。
有機溶媒は、形成される接着剤層中の残存揮発分が全質量基準で0〜1.0質量%となるような範囲で使用することが好ましく、接着剤層の発泡などによる信頼性低下への懸念から全質量基準で0〜0.5質量%となる範囲で使用することが好ましい。
【0034】
上記の混合、混練は、通常の撹拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。
【0035】
上記で得られたワニスを基材フィルム上に均一に塗工し、ワニスの層を形成する。基材フィルムとして、特に制限はなく、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、メチルペンテンフィルム等が用いられる。これらの基材フィルムに対して、必要に応じてプライマー塗布、UV処理、コロナ放電処理、研磨処理、エッチング処理等の表面処理を行ってもよい。基材フィルムの厚みは、特に制限はなく、接着剤層の厚みや接着シートの用途によって適宜選択される。
【0036】
上記で得られた、ワニスを塗工した接着剤層を加熱乾燥することにより接着シートを得ることができる。また、接着剤層の乾燥後に基材フィルムを除去して、接着剤層のみから構成される接着シートとしてもよい。加熱乾燥の条件は、使用した有機溶媒が充分に揮散する条件であれば特に制限はないが、通常60〜200℃で、0.1〜90分間加熱して行う。
【0037】
本発明の接着シートは、長い熱履歴でも低弾性を維持し、凹凸の埋め込み性を確保する観点から、170℃で5時間硬化後の170℃における弾性率が600MPa以下であることが好ましく、100MPa以下であることがより好ましい。上記弾性率が600MPaを超えると、埋込性が不十分となる傾向がある。かかる弾性率は、例えば、動的粘弾性測定装置(レオロジ社製、DVE)を使用し、接着シートを構成する組成物の硬化物に引張荷重をかけて、周波数10Hz、昇温速度3℃/分の条件で室温から270℃まで測定する、温度依存性測定モードによって測定できる。
【0038】
また、接着剤層の厚みは、基板の配線回路や下層のチップの凹凸を充てん可能とするため、3〜250μmであることが好ましい。この厚みが3μm未満であると応力緩和効果や接着性が乏しくなる傾向があり、250μmを超えると経済的でなくなる上に、半導体装置の薄型化の要求に応えられない可能性がある。接着剤層の厚みは、接着性確保の点から3〜100μmであることが好ましく、半導体装置を薄型化できる点から3〜25μmであることがより好ましい。
【0039】
本発明の接着シートは、高い接着性を示し、基板又は半導体チップの凹凸を完全に埋め込むために長い熱履歴に対しても低弾性である。従って、半導体装置の製造における半導体チップと基材との間や半導体チップ同士の間を接着するための工程において、接着信頼性に優れる接着シートとして使用することができる。
【0040】
基板又は半導体チップの凹凸を接着シートにより充填するときの荷重は適宜選択される。基板又は半導体チップの凹凸を接着シートにより充填する際に、基板の配線、半導体チップの凹凸を加熱することが好ましい。加熱方法としては、凹凸を有する基板又は半導体チップを予め加熱した熱板に接触させる方法が挙げられる。
【0041】
本発明の接着シートは、IC、LSI等の半導体素子間、あるいは、半導体素子と、42アロイリードフレーム、銅リードフレーム等のリードフレーム、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリイミド系樹脂、マレイミド系樹脂等のプラスチックフィルム、ガラス不織布等基材にポリイミド、エポキシ樹脂、ポリイミド系樹脂、マレイミド系樹脂等のプラスチックを含浸・硬化させたもの、アルミナ等のセラミックス等の絶縁性支持基板などの支持部材の接合に用いることができる。すなわち、前記したような半導体素子間、あるいは半導体素子と支持部材との間に本発明の接着フィルムを挟み、加熱圧着して両者を接着させる。
本発明の半導体装置は、上記本発明の接着シートを用いて製造されたものであれば特にその構造に制限はなく、例えば、本発明の接着シートを用いて、半導体素子同士又は半導体素子と支持部材とを接着した構造を有してなる半導体装置が挙げられる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0043】
実施例1〜3、比較例1
[接着シートの作製]
表1に示す質量部で熱硬化性成分(B)を配合した後に、シクロヘキサノンを加えて撹拌し、次いで表1に示す高分子量成分(A)、硬化促進剤(C)及びカップリング剤(D)をそれぞれ加え、各成分が均一になるまで撹拌することによって、接着剤組成物のワニスを得た。
次いで上記ワニスを、基材フィルムである厚み38μmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、115℃で5分間加熱乾燥して、接着剤層(厚み25μm)が基材フィルム上に形成された接着シートを作製した。
【0044】
上記接着シートの作製で使用した各種成分の詳細は以下のとおりである。
高分子量成分(A)
グリシジルメタクリレート2.4質量%、メタクリル酸メチル43.5質量%、アクリル酸エチル18.3質量%及びアクリル酸ブチル35.8質量%のエポキシ基含有アクリル系ランダム共重合体:重量平均分子量 80万、Tg −13℃
【0045】
熱硬化性成分(B)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂:東都化成株式会社製、商品名「YDCN−700−10」、エポキシ当量:210
フェノール樹脂1:三井化学株式会社製、商品名「ミレックスXLC−LL」、水酸基当量175、フェノール・p−キシリレングリコールジメチルエーテル共重合樹脂
フェノール樹脂2:大日本インキ化学工業株式会社製、商品名「フェノライトLF−4871」、水酸基当量118、ビスフェノールAノボラック樹脂
フェノール誘導体1:旭有機材工業株式会社製、商品名「BIP−PHBZ」、水酸基当量292、構造式は下記式(4)で示される。
【化10】

フェノール誘導体2:旭有機材工業株式会社製、商品名「TEP−TPA」、水酸基当量119、構造式は下記式(5)で示される。
【化11】

【0046】
硬化促進剤(C)
1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールキュアゾール:四国化成工業株式会社製、商品名「2PZ−CN」
【0047】
カップリング剤(D)
γ―メルカプトプロピルトリメトキシシラン:日本ユニカー株式会社製、商品名「NUC A−189」
γ―ウレイドプロピルトリエトキシシラン:日本ユニカー株式会社製、商品名「NUC A−1160」
【0048】
[接着シートの評価]
実施例1〜3及び比較例1で作製した接着シートの特性を、以下のようにして評価した。
(1)接着強度の測定
接着剤層のダイシェア強度(接着強度)を下記の方法により測定した。まず、接着シートの接着剤層を厚み400μmの半導体ウエハに70℃で貼り付けた。次に、それらを5mm角にダイシングして接着剤層付き半導体チップを得た。個片化した接着剤層付き半導体チップの接着剤層側を銅リードフレーム(古河電気工業株式会社製、商品名「TEC−64T」)表面上に、120℃、1kgf/cm、1秒間の条件で熱圧着してサンプルを得た。得られたサンプルの接着剤層を130℃で0.5時間硬化させ、6.7MPaの圧力下、181℃で30秒の加熱、加圧処理を行ったあと、170℃で5時間硬化した。85℃、85%のRHの恒温恒湿槽に48時間投入した後、万能ボンドテスター(Dage社製、シリーズ4000)を用いて、260℃でダイシェア強度を測定し、接着強度とした。結果を表1に示す。
【0049】
(2)170℃での動的粘弾性の測定
動的粘弾性測定装置DVE レオスペクトラ(レオロジ株式会社製)を用いて以下の手順にて測定した。実施例1〜3及び比較例1で作製した接着シートから基材フィルムを剥離した後、接着剤層を長さ20.0mm、幅4.0mmに切断して試験片(膜厚:25μm)を作製し、170℃で5時間硬化させて硬化物を得た。その硬化物を昇温速度3℃/分で、室温から270℃までの粘弾性測定を行い、170℃の弾性率を読み取った。なお、測定中の空気流量は35L/分とした。
【0050】
【表1】

【0051】
半導体パッケージの製造において、弾性率が100MPa以下、接着強度が1.5MPa以上の接着シートが実現できれば、一般的な現行のPKGの集積数に耐え得ると考えられる。表1に示されるように、実施例1〜3は共に、接着強度が1.5MPa以上であるため、分岐した多官能のフェノール樹脂を用いることにより、高接着性を有することが明らかである。
さらに、実施例1、2は、分岐したフェノールの中でも、放射状となったフェノール樹脂を用いているが、直鎖状フェノール樹脂を使用した実施例3、直鎖状でも分岐していないフェノール樹脂を用いた比較例1と比較しても低弾性であり、高い接着性と低弾性との両立において良好な結果が得られた。今後、集積数が増加した場合には、より低弾性率で高接着性の接着シートが求められると考えられる。上述の実施例から明らかなように、本発明によれば、現行のPKGの集積数に耐え得る弾性率及び接着性とを実現し、半導体装置の接続信頼性を向上することができるだけでなく、さらなるニーズにも十分に対応可能であると推測される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子量成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有する接着シートであって、前記熱硬化性成分(B)が、下記一般式(1)で表される構造単位を有するフェノール樹脂もしくは下記一般式(2)又は(3)で表されるフェノール誘導体からなる群から選択される少なくとも一種のフェノール類を含む、接着シート。
【化1】

(一般式(1)中のR及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を示し、Rはアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、水酸基又はハロゲン原子を示し、nは0〜4の整数を示す。)
【化2】

(一般式(2)中のRないしRは、それぞれ炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基もしくはフェニル基を示し、それらは同一環内又は異なる環内で互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、a,b,c及びd及は、それぞれ0〜4の整数を示す。Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、フェニレン基を示し、eは0〜4の整数を示す。)
【化3】

(一般式(3)中のRないしR11は、それぞれ炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基もしくはフェニル基を示し、それらは同一環内又は異なる環内で互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、f,g及びhは、それぞれ0〜4の整数を示す。R12は、水素原子、アルキル基もしくはフェニル基を示す。)
【請求項2】
さらに硬化促進剤(C)、カップリング剤(D)及びフィラー(E)の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の接着シート。
【請求項3】
前記高分子量成分(A)の配合量が、接着シートの全構成成分の合計質量を基準として、50〜80質量%の範囲である、請求項1又は2に記載の接着シート。
【請求項4】
前記熱硬化性成分(B)がさらにエポキシ樹脂を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着シート。
【請求項5】
前記熱硬化性成分(B)における前記エポキシ樹脂と前記フェノール類との配合比が、エポキシ当量:OH当量で1.0:0.5〜1.0:1.2の範囲である、請求項1〜4のいずれかに記載の接着シート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の接着シートを用いて、半導体素子と配線付き基板とを、又は半導体素子同士を接着した構造を有してなる半導体装置。

【公開番号】特開2012−246461(P2012−246461A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121800(P2011−121800)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】