説明

接着フィルム付き電子部品の製造方法および実装体の製造方法

【課題】ウエハの表面に接着層を貼り付けた状態でウエハを分割するときに、切削屑などが接着層に付着することを防止する。
【解決手段】電子部品が形成されたウエハの表面に、基材と接着層とが積層されてなる接着フィルムを貼付する貼付段階と、ウエハの表面で反射して基材および接着層を透過した光を受光することにより、ウエハの表面の画像を撮像する撮像段階と、画像に基づいて、ウエハを分割する位置を決定する分割位置決定段階と、ウエハを分割して電子部品を個片化する分割段階とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着フィルム付き電子部品の製造方法および実装体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の半導体装置が形成されたウエハを個々の半導体装置に分割して、個片化された半導体装置を配線基板に実装することが行われている(例えば、特許文献1を参照。)。また、プラスチックフィルムと接着組成物とを有する接着シート材を用いて、半導体チップを回路基板に実装することが知られている(例えば、特許文献2を参照。)。
特許文献1 特開2000−021915号公報
特許文献2 特開2007−211246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ウエハに接着組成物を貼り付けたままウエハを分割すると、ウエハを個々の半導体チップに分割するときに発生する切削屑などが接着組成物に付着しやすい。また、ウエハにプラスチックフィルムおよび接着組成物を貼り付けたままウエハを分割すると、プラスチックフィルムが接着組成物から剥離しやすい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、電子部品が形成されたウエハの表面に、基材と接着層とが積層されてなる接着フィルムを貼付する貼付段階と、ウエハの表面で反射して基材および接着層を透過した光を受光することにより、ウエハの表面の画像を撮像する撮像段階と、画像に基づいて、ウエハを分割する位置を決定する分割位置決定段階と、ウエハを分割して電子部品を個片化する分割段階とを備える接着フィルム付き電子部品の製造方法が提供される。
【0005】
上記の方法において、貼付段階は、ヘッドに保持されている弾性体で、接着フィルムをウエハの表面に押圧する段階を有してよい。上記の方法において、基材と接着層との間の剥離力は、0.17N/5cm以上であってよい。上記の方法において、基材の厚さは、75μm以上であってよい。上記の方法において、接着フィルムにおける、波長が440nm〜700nmの光の透過率は、74%以上であってよい。
【0006】
上記の方法において、撮像段階の前に、表面に接着フィルムを貼付されたウエハの裏面を研削する裏面研削段階をさらに備えてよい。上記の方法において、裏面研削段階は、基材を保護する保護層が基材の上に貼り付けられていないウエハの裏面を研削する段階を有してよい。上記の方法において、接着層はNCFまたはACFを含んでよい。
【0007】
本発明の第2の態様においては、上記の方法により製造された接着フィルム付き電子部品の接着層から、基材を剥離する剥離段階と、基材が剥離された接着層付き電子部品を、接着層を用いて基板の表面に接着する接着段階とを備える実装体の製造方法が提供される。
【0008】
上記の方法において、接着段階は、ヘッドに保持されている弾性体で、接着層付き電子部品を基板の表面に押圧する押圧段階を有してよい。上記の方法において、押圧段階は、弾性体で、複数の接着層付き電子部品を基板の表面に同時に押圧する段階を有してよい。
【0009】
上記の方法において、分割段階は、ウエハの裏面にダイシングテープが貼り付けられた状態で、ウエハを分割する段階を有してよく、剥離段階は、複数の接着フィルム付き電子部品がダイシングテープに貼り付けられた状態のまま、複数の接着フィルム付き電子部品のそれぞれの接着層から、基材を剥離する段階を有してよい。上記の方法において、剥離段階の後、接着フィルム付き電子部品の接着層から、基材が剥離されているか否かを確認して選別する選別段階をさらに備えてよく、接着段階は、基材が剥離されていることが確認された接着層付き電子部品を、接着層を用いて基板の表面に接着する段階を有してよい。
【0010】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実装体100の断面の一例を概略的に示す。
【図2】ウエハ200の一例を概略的に示す。
【図3】治具300にウエハ200を接着する段階の一例を概略的に示す。
【図4】ウエハ200に接着フィルム400を貼付する段階の一例を概略的に示す。
【図5】ウエハ200をダイシング装置510のチャックテーブル520に載置する段階の一例を概略的に示す。
【図6】ウエハ200の表面の画像を撮像する段階の一例を概略的に示す。
【図7】ウエハ200を分割する段階の一例を概略的に示す。
【図8】接着層404から基材402を剥離する段階の一例を概略的に示す。
【図9】基材402が剥離されていることを確認する段階の一例を概略的に示す。
【図10】接着層付きチップ900を回路基板110に接着する段階の一例を概略的に示す。
【図11】回路基板110にチップ120を実装する方法の他の例を概略的に示す。
【図12】回路基板110にチップ120を実装する方法の他の例を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
以下、図面を参照して、実施形態について説明するが、図面の記載において、同一または類似の部分には同一の参照番号を付して重複する説明を省く場合がある。なお、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なる場合がある。また、説明の都合上、図面相互間においても互いの寸法の関係又は比率が異なる部分が含まれる場合がある。
【0014】
図1は、実装体100の断面の一例を概略的に示す。実装体100は、回路基板110と、チップ120と、接着層130とを備える。実装体100は、回路基板110にチップ120を実装して得られる。実装体100は、複数のチップ120を備えてよい。複数のチップ120は、同一の工程で回路基板110に実装されてよい。
【0015】
回路基板110は、チップ120が実装される側の表面に、電極114を有する。回路基板110としては、プリント配線板、多層配線基板、フレキシブル基板などを例示できる。回路基板110は基板の一例であってよい。
【0016】
チップ120は、デバイス122と、バンプ124とを有する。チップ120は、電子部品の一例であってよい。バンプ124は、回路基板110の電極114と電気的に接続され、デバイス122と回路基板110とを電気的に接続する。
【0017】
デバイス122は、能動素子であってもよく、受動素子であってもよい。能動素子としては、MISFET、HBT、HEMT等の半導体デバイス、IC、LSI等の集積回路素子、半導体レーザー、発光ダイオード、発光サイリスタ等の発光デバイス、光センサ、受光ダイオード等の受光デバイス、または、太陽電池を例示できる。受動素子としては、抵抗、キャパシタ、インダクタを例示できる。デバイス122は、電子部品の一例であってよい。
【0018】
接着層130は、回路基板110とチップ120とを接着する。接着層130は、例えば、熱硬化性樹脂を含む組成物を熱硬化させることで得られる。図2から図10を用いて、回路基板110にチップ120を実装する方法の一例を説明する。
【0019】
図2は、ウエハ200の一例を概略的に示す。本実施形態において、まず、ウエハ200を準備する。ウエハ200としては、シリコンウエハ等の半導体ウエハを例示できる。ウエハ200の表面には、複数のデバイス122が形成されてよい。ウエハ200の表面には、格子状のスクライブライン202が形成されてよい。複数のデバイス122のそれぞれは、スクライブライン202によって区画された複数の領域のそれぞれに形成されてよい。ウエハ200のデバイス122が形成された面(機能面と称する場合がある。)には、バンプ124が形成されてよい。ウエハ200は、バックグラインド装置等により、機能面と反対側の面(裏面と称する場合がある。)が研削されてよい。これにより、ウエハ200の厚さを薄くすることができる。
【0020】
図3は、治具300にウエハ200を接着する段階における断面図の一例を概略的に示す。本実施形態においては、準備したウエハ200を治具300に固定する。治具300は、ウエハ200の直径よりも大きな直径を有するリング状または枠状のフレーム302と、一方の面が接着性を有するダイシングテープ304とを備えてよい。ダイシングテープ304は、フレーム302の一方の面の側に貼り付けられ、フレーム302の内側に展張されてよい。ウエハ200は、治具300の中央部に貼り付けられてよい。ウエハ200は、機能面の反対側の面がダイシングテープ304に貼り付けられてよい。
【0021】
ダイシングテープ304は、紫外線を照射することにより剥離力が小さくなる粘着フィルムであってよい。これにより、ウエハ200を複数のチップ分割した後、ダイシングテープ304に紫外線を照射することで、個々のチップをピックアップするときにチップをダイシングテープ304から分離するのが容易になる。
【0022】
図4は、ウエハ200に接着フィルム400を貼付する段階における断面図の一例を概略的に示す。本実施形態において、まず、ウエハ200の機能面に、基材402と接着層404とが積層されてなる接着フィルム400を配置する。
【0023】
基材402は、接着フィルム400をリール状に巻き取った場合に、接着層404同士が接着することを防止する。基材402は、ダイシング装置などを用いてウエハ200を分割するときに、切削屑などが接着層404に付着することを抑制する。基材402としては、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のプラスチック材料、または、上質紙、グラシン紙等の紙類を例示できる。基材402は、表面にシリコーン処理などの離型処理が施されてよい。
【0024】
基材402は、可視光を透過してよい。これにより、安価な光学系を用いた場合であっても、基材402および接着層404をウエハ200に貼り付けた状態で、ウエハ200の表面の画像を撮像することができる。つまり、IRカメラのような高価な光学系を使用しなくても、ウエハ200の機能面に形成されたデバイス122、スクライブライン202、バンプ124、アライメントマークなどの画像を撮像することができる。
【0025】
基材402は、可視光のうち、特定の波長の光を吸収してよい。基材402は、波長が440nm以上700nm以下の光のうち、特定の波長の光を吸収してもよい。この場合、ウエハ200の表面の可視光画像を撮像すると、当該可視光画像において基材402が存在する領域は着色されて見える。
【0026】
これにより、ウエハ200の表面を撮像した可視光画像に基づいて、基材402の有無を判別することができる。基材402が、特定の波長の光を吸収する場合であっても、基材402が、可視光のうち上記特定の波長の光以外の光を十分に透過させる場合には、基材402が存在する領域において、ウエハ200の表面のパターンを判別することができる。
【0027】
例えば、ウエハ200を複数のチップ120に分割する工程の途中で基材402が接着層404から剥離した場合には、接着層404に切削屑が付着している可能性がある。このような場合には、基材402が剥離したチップ120を不良品と判断することが好ましい。そこで、ウエハ200を分割する工程を実施した後、ウエハ200の表面の可視光画像を撮像して、基材402の有無を判断してよい。これにより、切削屑に汚染されたチップ120が実装されることを抑制できる。
【0028】
また、基材402は、実装工程の前に接着層404から剥離される。しかし、基材402が剥離されないまま実装工程が実施されると、実装体100に不具合が生じる可能性がある。そこで、基材402を剥離する工程を実施した後、ウエハ200の表面の可視光画像を撮像して、基材402の有無を判断してよい。これにより、基材402が剥離されないまま実装工程が実施されることを抑制できる。
【0029】
基材402の厚さは、75μm以上であってよい。基材402の厚さが75μm未満の場合には、ダイシング装置等を用いてウエハ200を分割する工程の途中で基材402が接着層404から剥離する場合があり、基材402の厚さが75μm以上の場合と比較して加工性に劣る。基材402の厚さは、125μm以下であってよい。基材402の厚さが125μmを超えると、基材402の上に接着層404を塗布して接着フィルム400を製造するときに、基材402の上に接着層404を塗布しにくくなる。
【0030】
接着層404は、膜形成樹脂、液状硬化成分および硬化剤を含んでよい。接着層404は、各種ゴム成分、柔軟剤、各種フィラー類等の添加剤を含んでもよく、更に、導電性粒子を含んでもよい。接着層404は、NCF(Non Particle Conductive Film)、ACF(Anisotropic Conductive Film)、またはそれらを積層させたものであってもよい。
【0031】
膜形成樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂を例示できる。材料の入手の容易さおよび接続信頼性の観点からフェノキシ樹脂を含むことが好ましい。液状硬化成分としては、液状エポキシ樹脂、アクリレートを例示できる。接続信頼性および硬化物の安定性の観点から2以上の官能基を有することが好ましい。硬化剤としては、液状硬化成分が液状エポキシ樹脂の場合は、イミダゾール、アミン類、スルホニウム塩、オニウム塩、フェノール類を例示できる。液状硬化成分がアクリレートの場合には、硬化剤として有機過酸化物を例示できる。
【0032】
基材402と接着層404との間の剥離力は、0.17N/5cm以上であってよい。ここで、基材402と接着層404との間の剥離力とは、JIS Z0237に基づいて、180度方向にT型剥離した場合の剥離力を示す。基材402と接着層404との間の剥離力が0.17N/5cm未満の場合には、ダイシング装置などを用いてウエハ200を分割する工程の途中で基材402が接着層404から剥離する場合があり、基材402と接着層404との間の剥離力が0.17N/5cm以上の場合と比較して加工性に劣る。
【0033】
基材402と接着層404との間の剥離力は、図3に関連して説明した治具300にウエハ200を接着する段階における、ウエハ200とダイシングテープ304との剥離力より小さくてよい。基材402と接着層404との間の剥離力は、紫外線の照射等により剥離力が小さくなる前の状態におけるウエハ200とダイシングテープ304との剥離力より小さくてよい。
【0034】
基材402は、基材402の厚さが75μm以上であり、かつ、基材402と接着層404との間の剥離力が0.17N/5cm以上であってよい。これにより、ダイシング装置などを用いてウエハ200を分割する工程における加工性に優れた接着フィルム400が得られる。
【0035】
接着フィルム400は、波長が440nm以上700nm以下の光の透過率が74%以上であってよい。上記光の透過率は、基材402または接着層404の材質、厚さ、表面処理などにより調整できる。上記光の透過率は、基材402または接着層404に添加する添加剤の種類または添加量により調整できる。例えば、接着層404に無機フィラーを添加することで、接着層404の光の透過率を低下させることができる。
【0036】
ここで、波長が440nm以上700nm以下の光の透過率が74%以上とは、波長が440nm以上700nm以下の光の透過率の最大値が74%以上であることを示す。また、上記光の透過率は、接着フィルム400の厚さによって異なる。そこで、上記光の透過率とは、ウエハ200に貼り付けられた状態における接着フィルム400の厚さにおける、上記光の透過率を示す。接着フィルム400は、波長が440nm以上700nm以下の全範囲における光の透過率が74%以上であってもよい。
【0037】
次に、押圧装置410を用いて、接着フィルム400をウエハ200に貼付する。押圧装置410は、ステージ420とヘッド430とを備えてよい。ステージ420は、ウエハ200を載置してよい。ウエハ200は、治具300に保持されたまま、ステージ420に載置されてよい。ステージ420は加熱装置422を有してよい。なお、接着フィルム400をウエハ200に貼付する段階においては、加熱装置422を使用しなくてもよい。
【0038】
ヘッド430は、押圧部材432と、押圧部材432を保持する保持部434とを有してよい。ヘッド430は、押圧部材432をステージ420側に向かって押圧する。押圧部材432は、弾性体であってよい。弾性体は、シリコーンゴムなどのエラストマーであってよい。これにより、金属製の押圧部材と比較して、接着フィルム400をウエハ200に均一に貼付することができる。
【0039】
押圧装置410は、表面に接着フィルム400が配置されたウエハ200を、ステージ420とヘッド430との間に挟んで押圧する。本実施形態においては、まず、ステージ420の上に、治具300に保持されたウエハ200を載置する。次に、ヘッド430に保持されている押圧部材432で、接着フィルム400をウエハ200の機能面に押圧する。これにより、接着フィルム400をウエハ200に貼付することができる。
【0040】
なお、本実施形態において、押圧装置410を用いて、接着フィルム400をウエハ200に貼付する場合について説明した。しかし、接着フィルム400をウエハ200に貼付する方法は、これに限定されない。例えば、ロールラミネーターを用いて、接着フィルム400をウエハ200に貼付してもよい。
【0041】
図5は、ウエハ200をダイシング装置510のチャックテーブル520に載置する段階の一例を概略的に示す。本実施形態においては、まず、接着フィルム400が貼り付けられたウエハ200が、ダイシング装置510のチャックテーブル520の上に載置される。ウエハ200は、治具300に保持された状態でチャックテーブル520の上に載置されてよい。
【0042】
図5は、ダイシング装置510の断面の一例を概略的に示す。ダイシング装置510は、例えば、スクライブライン202に沿ってウエハ200を分割する。これにより、ウエハ200を複数のチップ120に個片化することができる。ダイシング装置510は、ウエハを分割する分割装置の一例であってよい。ウエハ200は、治具300に保持された状態で分割されてよい。ウエハ200は、表面に接着フィルム400が貼り付けられた状態で分割されてよい。
【0043】
ダイシング装置510は、チャックテーブル520と、アライメントステージ530と、撮像部540と、切削部550と、制御部560とを備えてよい。チャックテーブル520は、ウエハ200を保持した治具300を載置することができる。チャックテーブル520は、図示しない減圧装置により治具300を吸引して、チャックテーブル520の上に治具300を固定してよい。
【0044】
アライメントステージ530は、制御部560の指示に基づいて、チャックテーブル520をx方向およびy方向に移動させてよい。アライメントステージ530は、xyステージであってよい。
【0045】
撮像部540は、ウエハ200の表面で反射して接着フィルム400を透過した光を受光することにより、ウエハ200の表面の画像を撮像してよい。撮像部540は、例えば、ウエハ200を照明する照明部材と、ウエハ200の表面で反射した光を受光する光学系と、光学系が捉えた像を撮像する撮像素子とを有する。撮像部540は、撮像した画像の情報を制御部560に送信してよい。撮像部540は特に限定されるものではないが、撮像部540は、可視光画像を撮像することが好ましい。これにより、安価な光学系を用いることができる。
【0046】
切削部550は、制御部560の指示に基づいて、ウエハ200を切削してよい。切削部550は、ウエハ200を切削するブレード552を有してよい。切削部550は、回転するブレード552をウエハ200に押圧して、ウエハ200を切削してよい。
【0047】
制御部560は、画像処理部562と、駆動部564とを有してよい。画像処理部562は、撮像部540から、ウエハ200表面の画像の情報を受け取ってよい。画像処理部562は、受け取った画像の情報に基づいて、スクライブライン202の位置を判断してよい。画像処理部562は、スクライブライン202の位置でウエハ200を分割することを決定してよい。画像処理部562は、ウエハ200を分割する位置に関する情報を駆動部564に送信してよい。
【0048】
駆動部564は、画像処理部562から、ウエハ200を分割する位置に関する情報を受け取ってよい。駆動部564は、上記のウエハ200を分割する位置に関する情報に基づいて、アライメントステージ530および切削部550を駆動してよい。これにより、駆動部564は、ウエハ200を分割してデバイス122を個片化することができる。
【0049】
例えば、画像処理部562がスクライブライン202に沿って、ウエハ200をx方向に分割することを決定した場合、駆動部564は、アライメントステージ530を駆動して、スクライブライン202の一端がブレード552の下方に位置するように、チャックテーブル520を移動させる。
【0050】
次に、駆動部564は、切削部550を駆動して、ブレード552を回転させた状態で切削部550を下方に移動させて、ブレード552をウエハ200に圧接させる。その後、駆動部564は、アライメントステージ530を駆動して、ウエハ200をx方向に移動させる。これにより、スクライブライン202に沿って、ウエハ200をx方向に分割することができる。
【0051】
図6は、ウエハ200の表面の画像を撮像する段階における断面図の一例を概略的に示す。本実施形態においては、まず、ダイシング装置510の撮像部540が、ウエハ200の表面で反射して基材402および接着層404を透過した光を受光することにより、ウエハ200の表面の画像を撮像する。
【0052】
接着フィルム400の440nm以上700nm以下の光の透過率が74%以上である場合には、撮像部540として、可視光領域の画像を撮像する安価な機器を使用することができる。また、ウエハ200の表面に基材402および接着層404を貼り付けた状態のまま、スクライブライン202、バンプ124、回路パターン、アライメントマーク等の画像を撮像することができる。これにより、ウエハ200の表面に基材402および接着層404を貼り付けた状態のまま、ウエハ200を分割することができる。
【0053】
次に、ダイシング装置510の画像処理部562が、撮像部540が撮像した画像の情報を受け取る。画像処理部562は、上記の画像の情報に基づいて、ウエハ200を分割する位置を決定する。画像処理部562は、ウエハ200の機能面の画像からスクライブライン202の位置を認識して、スクライブライン202に沿って、ウエハ200を分割することを決定してよい。画像処理部562は、ウエハ200の機能面の画像からバンプ124またはアライメントマークの位置を認識して、スクライブライン202の位置を認識してもよい。
【0054】
図7は、ウエハ200を分割する段階における断面図の一例を概略的に示す。本実施形態において、画像処理部562がウエハ200を分割する位置を決定すると、駆動部564は、上記の決定に基づいてアライメントステージ530および切削部550を駆動して、ウエハ200を分割してチップ120を個片化する。ダイシング装置510は、ウエハ200の裏面にダイシングテープ304が貼り付けられた状態でウエハ200を分割してよい。これにより、ウエハ200を分割した後のハンドリングが容易になる。
【0055】
以上の工程により、接着フィルム付きチップ700を製造することができる。本実施形態によれば、接着層404の表面が基材402に覆われた状態で、接着フィルム付きチップ700を製造することができるので、接着層404の表面に切削屑が付着することを抑制できる。接着フィルム付きチップ700は、接着フィルム付き電子部品の一例であってよい。
【0056】
図8は、接着層404から基材402を剥離する段階における断面図の一例を概略的に示す。本実施形態において、まず、複数の接着フィルム付きチップ700がダイシングテープ304に貼り付けられた状態のまま、複数の接着フィルム付きチップ700の基材402の上に、粘着フィルム800を貼り付ける。粘着フィルム800の材質は、粘着フィルム800と基材402との剥離力が、基材402と接着層404との剥離力より大きくなるように選択してよい。
【0057】
次に、粘着フィルム800を図中矢印の方向に引っ張ることで、接着フィルム付きチップ700の接着層404から、基材402を剥離する。これにより、複数の接着フィルム付きチップ700がダイシングテープ304に貼り付けられた状態のまま、複数の接着フィルム付きチップ700のそれぞれの接着層404から、基材402を剥離することができる。
【0058】
図9は、基材402が剥離されているかを確認する段階における断面図の一例を概略的に示す。図9に示すとおり、接着フィルム付きチップ700の接着層404から基材402を剥離することで、接着層付きチップ900を製造することができる。本実施形態においては、接着フィルム付きチップ700の接着層404から基材402を剥離した後、ダイシング装置510の撮像部540が、ウエハ200の表面の画像を撮像する。画像処理部562は、ウエハ200の表面の画像を処理して、接着フィルム付きチップ700の接着層404から、基材402が剥離されているか否かを確認する。
【0059】
例えば、基材402として、波長が440nm以上700nm以下の光のうち特定の波長の光を吸収する材料を用いた場合、ウエハ200の表面の可視光画像における基材402が存在する領域は着色されて見える。これにより、接着フィルム付きチップ700の接着層404から、基材402が剥離されているか否かを確認することができる。画像処理部562は、基材402が剥離されている接着層付きチップ900を選別してよい。
【0060】
なお、本実施形態においては、ダイシング装置510が、接着フィルム付きチップ700の接着層404から基材402が剥離されているか否かを確認する場合について説明した。しかしながら、上記の確認方法はこれに限定されない。例えば、ダイシングテープ304から個々の接着層付きチップ900を分離するピックアップ装置が、接着フィルム付きチップ700の接着層404から基材402が剥離されているか否かを確認してもよい。
【0061】
また、本実施形態においては、ウエハ200の表面の可視光画像を画像処理することで、接着フィルム付きチップ700の接着層404から基材402が剥離されているか否かを確認する場合について説明した。しかしながら、上記の確認方法はこれに限定されない。例えば、ダイシングテープ304から個々の接着層付きチップ900を分離するピックアップ装置が接着層付きチップ900をピックアップする場合、接着層404から基材402が剥離されていないときには、接着層404から基材402が剥離されているときと比較して、ピックアップ装置の先端とダイシングテープ304との距離がより遠い地点で、ピックアップ装置と接着層付きチップ900とが接触する。そこで、ピックアップ装置が検出する圧力変化に基づいて、接着フィルム付きチップ700の接着層404から基材402が剥離されているか否かを確認してよい。
【0062】
図10は、接着層付きチップ900を回路基板110に接着する段階における断面図の一例を概略的に示す。本実施形態においては、まず、基材402が剥離されていることが確認された接着層付きチップ900をピックアップして、回路基板110の表面の所定の位置に配置する。接着層付きチップ900と回路基板110とは、両者を押圧したときに、接着層付きチップ900のバンプ124と回路基板110の電極114とが電気的に接続するように位置合わせされる。
【0063】
次に、接着層付きチップ900が配置された回路基板110を、押圧装置410のステージ420の上に載置する。そして、ヘッド430に保持されている押圧部材432で、接着層付きチップ900を回路基板110の表面に押圧する。このとき、加熱装置422がステージ420を介して、接着層404を加熱してよい。これにより、基材402が剥離された接着層付きチップ900を、接着層404を用いて回路基板110の表面に接着することができる。
【0064】
押圧部材432は弾性体であってよい。これにより、複数の接着層付きチップ900を回路基板110の表面に同時に押圧した場合であっても、接着層付きチップ900と回路基板110とを良好に接続することができる。
【0065】
以上の工程により、実装体100を製造することができる。本実施形態においては、ウエハ200の機能面側に接着フィルム400が貼り付けられた状態で、ウエハ200が個々のチップ120に分割される。これにより、接着フィルム400の接着層404に切削屑などが付着することを抑制できる。本実施形態においては、接着フィルム400は、波長が440nm以上700nm以下の光の透過率が74%以上であってよい。これにより、ウエハ200の機能面側に接着フィルム400が貼り付けられた状態で、ウエハ200を分割する位置を決定することができる。
【0066】
本実施形態においては、接着フィルム400の基材402の厚さは、75μm以上であってよく、基材402と接着層404との間の剥離力は、0.17N/5cm以上であってよい。これにより、ウエハ200の機能面側に接着フィルム400が貼り付けられた状態でウエハ200を分割する場合であっても、当該分割工程における接着層404からの基材402の剥離を防止することができる。
【0067】
本実施形態においては、ウエハ200の裏面を研削した後、ウエハ200の機能面に接着フィルム400を貼り付けて、ウエハ200をダイシングしてよい旨を説明した。しかし、実装体100の製造方法はこれに限定されない。例えば、ウエハ200の機能面に接着フィルム400を貼り付けた後、ウエハ200の裏面研削とウエハ200のダイシングとを実施してもよい。ウエハ200の裏面を研削する場合、接着フィルム400をウエハ200の機能面を保護する保護層として利用してもよく、接着フィルム400の上にさらに保護層を設けてもよい。
【0068】
図11は、回路基板110にチップ120を実装する方法の他の例を概略的に示す。図11において、図1から図10までと同一または類似の部分には、図1から図10までと同一の参照番号を付して、重複する説明を省く場合がある。
【0069】
本実施形態では、S1102において、ウエハ200を準備する。S1104において、ウエハ200の機能面に接着フィルム400を貼り付ける。接着フィルム400の貼り付けは、図4に関連して説明した方法と同様にして実施することができる。
【0070】
S1106において、機能面に接着フィルム400が貼付されたウエハ200の裏面を研削する。ウエハ200の裏面研削は、例えば、以下の手順で実施できる。まず、バックグラインド装置のチャックテーブル1162の上に、機能面に接着フィルム400が貼付されたウエハ200を載置する。
【0071】
このとき、接着フィルム400側の面とチャックテーブル1162とが対向するように、ウエハ200を載置する。本実施形態においては、ウエハ200の機能面に接着フィルム400が貼り付けられているので、接着フィルム400の基材402の上に、基材402を保護する保護層(バックグラインドテープ)を貼り付けなくてもよい。これにより、実装体100、接着フィルム付きチップ700および接着層付きチップ900の製造費用を抑制することができる。
【0072】
次に、バックグラインド装置の研削ホイール1164を回転させ、回転している研削ホイール1164をウエハ200の裏面に押圧する。これにより、ウエハ200の裏面を研削することができる。
【0073】
S1108において、ウエハ200をダイシングテープ304に転写する。これにより、治具300にウエハ200を接着することができる。このとき、ウエハ200の裏面と、ダイシングテープ304とを貼り付けてよい。S1110において、ウエハ200をダイシングする。これにより、接着フィルム付きチップ700を製造することができる。ウエハ200のダイシングは、図5から図7に関連して説明した方法と同様にして実施することができる。
【0074】
S1112において、接着層404から基材402を剥離する。これにより、接着層404が露出する。また、接着層付きチップ900が得られる。基材402の剥離は、図8に関連して説明した方法と同様にして実施することができる。S1114において、個片化された接着層付きチップ900をピックアップする。ピックアップ装置のピックアップツール1172は、接着層付きチップ900を吸着することで、接着層付きチップ900をピックアップしてよい。
【0075】
このとき、基材402が剥離されていることが確認された接着層付きチップ900を選別して、ピックアップしてよい。接着層付きチップ900の選別は、図9に関連して説明した方法と同様にして、接着フィルム付きチップ700の接着層404から基材402が剥離されていることを確認することで、実施することができる。
【0076】
S1116において、回路基板110の所定の位置に、接着層付きチップ900を配置する。S1118において、接着層付きチップ900を回路基板110に圧着する。接着層付きチップ900の配置および圧着は、図10に関連して説明した方法と同様にして実施することができる。以上の工程により、実装体100を製造することができる。
【0077】
なお、上記の実施形態において、押圧部材432にエラストマーなどの弾性体を用いて、複数の接着層付きチップ900を回路基板110に一括して実装する場合について説明した。しかし、回路基板110にチップ120を実装する方法は、これに限定されない。例えば、エラストマーなどの弾性体を用いずに、接着層付きチップ900を回路基板110に実装してもよい。また、複数の接着層付きチップ900を、1つずつ回路基板110に実装してもよい。
【0078】
図12は、回路基板110にチップ120を実装する方法の他の例を概略的に示す。図12は、接着層付きチップ900を回路基板110に接着する段階における断面図の一例を概略的に示す。図12において、図1から図11までと同一または類似の部分には、図1から図11までと同一の参照番号を付して、重複する説明を省く場合がある。
【0079】
押圧装置1210は、フリップチップボンディングにより、回路基板110とチップ120とを電気的に接続する。押圧装置1210は、ステージ1220と、セラミックツール1230とを備える。押圧装置1210およびステージ1220は、それぞれ、押圧装置410およびステージ420と同様の構成を有してよい。
【0080】
セラミックツール1230は、接着層付きチップ900を回路基板110に対して押圧する。セラミックツール1230は、複数の接着層付きチップ900を、1つずつ回路基板110に対して押圧してよい。セラミックツール1230は、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム等のセラミックを含んでよい。セラミックツール1230は、ヘッドの一例であってよい。セラミックツール1230は、セラミックツール1230を加熱する加熱装置1232を有してよい。加熱装置1232は、セラミックヒータであってよい。
【実施例】
【0081】
(実施例1〜9)
表1の実施例1から実施例8に示すとおり、「接着層と基材との剥離力」、「基材の厚さ」および「可視光の透過率」が異なる、8種類の接着フィルムを用意した。実施例1から実施例8では、接着フィルムの接着層の一例としてNCFを用いた。また、実施例9として、接着層の一例としてACFを用いた接着フィルムを用意した。各接着フィルムの基材には、離型処理方法と厚さの異なるPETフィルムを用いた。
【0082】
実施例1から実施例8までの接着フィルムは、以下の手順で作製した。まず、フェノキシ樹脂(YP−50、東都化成株式会社製)10質量部、液状エポキシ樹脂(EP828、ジャパンエポキシレジン株式会社製)10質量部、イミダゾール系潜在性硬化剤(ノバキュア3941HP、旭化成株式会社製)15質量部、ゴム成分(RKB、レジナス化成株式会社製)5質量部およびシランカップリング剤(A−187、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)1質量部にトルエン100質量部を加えて攪拌して、均一な樹脂溶液を調整した。
【0083】
次に、バーコーターを用いて、実施例1から実施例8で使用するそれぞれの基材の上に、上記の樹脂溶液を塗布した。樹脂溶液を塗布した基材を80℃のオーブンに入れ、溶媒を揮発させて、樹脂溶液を乾燥させることで、PETフィルムとNCFとを有する接着フィルムを作製した。作製した接着フィルムのNCFの厚さは、すべて30μmであった。
【0084】
実施例9の接着フィルムは、以下の手順で作製した。まず、フェノキシ樹脂(YP−50、東都化成株式会社製)10質量部、液状エポキシ樹脂(EP828、ジャパンエポキシレジン株式会社製)10質量部、イミダゾール系潜在性硬化剤(ノバキュア3941HP、旭化成株式会社製)15質量部、ゴム成分(RKB、レジナス化成株式会社製)5質量部、シランカップリング剤(A−187、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)1質量部および導電性粒子(AUE、積水化学工業)5質量部にトルエン100質量部を加えて攪拌して、均一な樹脂溶液を調整した。
【0085】
次に、バーコーターを用いて、実施例9で使用する基材の上に、上記の樹脂溶液を塗布した。樹脂溶液を塗布した基材を80℃のオーブンに入れ、溶媒を揮発させて、樹脂溶液を乾燥させることで、PETフィルムとACFとを有する接着フィルムを作製した。作製した接着フィルムのACFの厚さは、30μmであった。
【0086】
実施例1から実施例9までの接着フィルムにおいて、接着層と基材との剥離力は、基材の上に樹脂溶液を塗布する前に、基材の表面に離型処理を施すことで調整した。離型処理は、シリコーン系の剥離剤を基材の表面に塗布した後、基材を加熱して、基材を乾燥させることで実施した。シリコーン系の剥離剤の配合を調整することで、接着層と基材との剥離力が異なる接着フィルムを作製した。
【0087】
基材と接着層との剥離力は、テンシロン(株式会社オリエンテック製)を用いて測定した。測定は、幅50mm、長さ100mmの接着フィルムを用いて実施した。引張方向は180度方向とし、引張方法はT型剥離とした。引張速度は毎分300mmに設定した。測定は、温度23±2℃、湿度55±10%RHの条件で実施した。
【0088】
接着フィルムの透過率は、MCPD−2000(大塚電子株式会社製)を用いて、平行光線透過率を測定した。接着フィルムの透過率は、以下の手順で算出した。まず、接着フィルムの接着層とガラス基板とが対向するように各接着フィルムをガラス基板の上に貼り付けて、測定試料を準備した。ガラス基板の厚さは1.1mmであった。次に、ガラス基板単体の平行光線透過率を測定した。測定は、透過させる光の波長を300nmから1100nmまで連続的に変化させて実施した。次に、準備した測定試料のそれぞれについても同様に、平行光線透過率を測定した。ガラス基板単体の平行光線透過率を100%として、各接着フィルムの透過率を算出した。
【0089】
基材の厚さは、マイクロメーター(ミツトヨ株式会社製)を用いて測定した。
【0090】
次に、実施例1から実施例9までの接着フィルムのそれぞれをシリコンウエハの一方の面の全面に貼り付けて、ダイシング試験に用いる試料を準備した。シリコンウエハの直径は6インチであり、シリコンウエハの厚さは400μmであった。
【0091】
次に、ダイシングにより、上記試料のそれぞれを6.3mm×6.3mmのチップに分割して、パターンの視認性と加工性とを評価した。ダイシング装置は、DFD−651(株式会社ディスコ製)を用いた。ブレードは、NBC−ZB2030−0.04t(株式会社ディスコ製)を用いた。ブレードの厚さは40μmであった。ブレードの回転数は30000rpmに設定した。ブレードの送り速度は10mm/secに設定した。
【0092】
パターンの視認性は、DFD−651に搭載されたCCDカメラでシリコンウエハの表面に形成されたパターンを観察した。パターンの線幅は30μmであった。加工性は、ダイシング装置によりシリコンウエハを分割して、6.3mm×6.3mmのチップに個片化した場合に、接着層から基材が剥離したチップの数を測定することで評価した。
【0093】
表1に、実施例1から実施例8までの接着フィルムを用いてシリコンウエハを分割した場合における、パターンの視認性と加工性とを示す。表1において、◎は、非常に良好であったことを表す。○は、良好であったことを表す。
【表1】

【0094】
表1に示すとおり、実施例1から実施例8までの接着フィルムを貼り付けた状態で、シリコンウエハ上のパターンを良好に判別することができた。表1に示すとおり、実施例1から実施例8までの接着フィルムを貼り付けた状態でシリコンウエハをダイシングした場合であっても、接着層からの基材の剥離を抑制することができた。
【0095】
実施例9の接着フィルムについても、実施例9の接着フィルムをシリコンウエハに貼り付けた状態で、シリコンウエハ上のパターンを良好に判別することができた。また、実施例9の接着フィルムをシリコンウエハに貼り付けた状態でシリコンウエハをダイシングした場合であっても、接着層からの基材の剥離を抑制することができた。
【0096】
実施例9と同様にして、厚さが5〜30μmACFを接着層として用いた接着フィルムを製造した。製造した接着フィルムのそれぞれについて、実施例1から実施例9と同様にして、パターンの視認性と加工性とを評価した。これらの接着フィルムについても、シリコンウエハ上のパターンを良好に判別することができた。また、これらの接着フィルムをシリコンウエハに貼り付けた状態でシリコンウエハをダイシングした場合であっても、接着層からの基材の剥離を抑制することができた。また、NCFとACFとを積層させて得られた接着層を有する接着フィルムを製造した場合も、同様の効果を得ることができた。
【0097】
(比較例1〜10)
表2の比較例1から比較例10に示すとおり、「接着層と基材との剥離力」、「基材の厚さ」および「可視光の透過率」が異なる、10種類の接着フィルムを用意した。「接着層と基材との剥離力」、「基材の厚さ」および「可視光の透過率」は、実施例1から実施例9の場合と同様にして測定した。
【0098】
比較例1の接着フィルムは、実施例1から実施例8までの接着フィルムと同様の方法により製造した。シリコーン系の剥離剤の配合を調整することで、実施例1から実施例8までの接着フィルムと比較して、接着層と基材との剥離力が弱い接着フィルムを作製した。
【0099】
比較例2および比較例3の接着フィルムは、以下の手順で作製した。まず、フェノキシ樹脂(YP−50、東都化成株式会社製)10質量部、液状エポキシ樹脂(EP828、ジャパンエポキシレジン株式会社製)10質量部、イミダゾール系潜在性硬化剤(ノバキュア3941HP、旭化成株式会社製)15質量部、ゴム成分(RKB、レジナス化成株式会社製)5質量部、無機フィラー(SOE2、株式会社アドマテックス製)50質量部、シランカップリング剤(A−187、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)1質量部にトルエン100質量部を加えて攪拌して、均一な樹脂溶液を調整した。
【0100】
次に、比較例2および比較例3で使用するそれぞれの基材の上に、バーコーターを用いて、上記の樹脂溶液を塗布した。樹脂溶液を塗布した基材を80℃のオーブンに入れ、溶媒を揮発させて、樹脂溶液を乾燥させることで、PETフィルムとNCFとを有する接着フィルムを作製した。作製した接着フィルムのNCFの厚さは、すべて30μmであった。
【0101】
比較例2および比較例3においても、基材の上に樹脂溶液を塗布する前に、基材の表面に離型処理を施すことで、接着層と基材との剥離力を調整した。離型処理は、シリコーン系の剥離剤を基材の表面に塗布した後、基材を加熱して、基材を乾燥することで実施した。シリコーン系の剥離剤の配合を調整することで、接着層と基材との剥離力が異なる接着フィルムを作製した。
【0102】
比較例4から比較例10までの接着フィルムは、基材として厚さが25μmまたは50μmのPETフィルムを用いた以外は、実施例1から実施例8までの接着フィルムと同様の方法により製造した。
【0103】
比較例4から比較例10においても、基材の上に樹脂溶液を塗布する前に、基材の表面に離型処理を施すことで、接着層と基材との剥離力を調整した。離型処理は、シリコーン系の剥離剤を基材の表面に塗布した後、基材を加熱して、基材を乾燥することで実施した。シリコーン系の剥離剤の配合を調整することで、接着層と基材との剥離力が異なる接着フィルムを作製した。
【0104】
比較例1から比較例10までの接着フィルムのそれぞれをシリコンウエハの一方の面の全面に貼り付けて、ダイシング試験に用いる試料を準備した。シリコンウエハの直径は6インチであり、シリコンウエハの厚さは400μmであった。実施例1から実施例9の場合と同様にして、ダイシングにより、上記試料のそれぞれを6.3mm×6.3mmのチップに分割して、パターンの視認性と加工性とを評価した。
【0105】
表2に、比較例1から比較例10までの接着フィルムを用いてシリコンウエハを分割した場合における、パターンの視認性と加工性とを示す。表2において、◎は、非常に良好であったことを表す。○は、良好であったことを表す。△は、一部不良であったことを表す。×は、不良であったことを表す。
【表2】

【0106】
表2に示すとおり、比較例1においては、実施例1から実施例9と比較して加工性に劣る。比較例1の接着フィルムは、接着層と基材との剥離力が0.17N/5cmより小さいので、ダイシング工程が終了したときに、基材が接着層から剥離することがあった。
【0107】
比較例2および比較例3においては、波長が440nm以上700nm以下の光の透過率が74%より小さいので、実施例1から実施例9と比較してパターンの視認性に劣る。また、比較例2および比較例3においては、実施例1から実施例9と比較して加工性がやや劣る。比較例2および比較例3の接着フィルムは、基材に無機フィラーが添加されているので、ダイシング工程が終了したときに、基材の表面が荒れることがあった。
【0108】
比較例4から比較例10においては、実施例1から実施例9と比較して加工性に劣る。比較例4から比較例10の接着フィルムは、基材の厚さが75μmより小さいので、ダイシング工程が終了したときに、基材が接着層から剥離することがあった。
【0109】
(実施例10)
表面に複数のバンプが形成されたシリコンウエハを用意した。シリコンウエハは、直径が6インチであり、厚さが0.6mmであった。バンプは、Cuの電極の表面に半田をプリコートすることで形成した。半田の厚さは25μmであった。Cuの電極は、直径が33mmであり、厚さが25μmであった。バンプのピッチは、85μmであった。バンプの数は、272個であった。
【0110】
次に、実施例1から実施例8までと同様にして、接着フィルムを作製した。実施例10の接着フィルムの基材としては、厚さが100μmの透明なPETフィルムを用いた。実施例10の接着フィルムの接着層としては、実施例1から実施例8までと同様のNCFを用いた。実施例10の接着層のNCFの厚さは、30μmであった。実施例10の接着フィルムにおいて、接着層と基材との剥離力は0.72N/5cmであった。実施例10の接着フィルムにおいて、波長が440nm、550nmおよび700nmの光の透過率は、全て74%以上であった。
【0111】
次に、シリコンウエハのバンプが形成された側の面の全面に、作製した接着フィルムを貼り付けた。次に、バックグラインド装置(DFG8540、株式会社ディスコ製)を用いて、シリコンウエハの接着フィルムが貼り付けられていない側の面を研削して、シリコンウエハの厚さを200μmにした。バックグラインドの条件は、粗加工が0.4μm/secであり、仕上げ加工が0.3μm/secであった。
【0112】
バックグラインドを実施した後、接着フィルムを剥がして、バンプの破損および変形の有無を調べた。バンプの破損および変形の有無は、DFG8540に搭載されたCCDカメラで撮影した画像を観察することにより実施した。その結果、全てのバンプにおいて、バンプの破損および変形は認められなかった。また、バックグラインド中にシリコンウエハが欠けたり、割れたりすることもなかった。研削面の一部には、転写と呼ばれる加工ムラが認められた。しかし、加工ムラの程度は、一般的なバックグラインドテープをシリコンウエハの機能面に貼り付けて、シリコンウエハをバックグラインドした場合と同程度であった。
【0113】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0114】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0115】
100 実装体
110 回路基板
114 電極
120 チップ
122 デバイス
124 バンプ
130 接着層
200 ウエハ
202 スクライブライン
300 治具
302 フレーム
304 ダイシングテープ
400 接着フィルム
402 基材
404 接着層
410 押圧装置
420 ステージ
422 加熱装置
430 ヘッド
432 押圧部材
434 保持部
510 ダイシング装置
520 チャックテーブル
530 アライメントステージ
540 撮像部
550 切削部
552 ブレード
560 制御部
562 画像処理部
564 駆動部
700 接着フィルム付きチップ
800 粘着フィルム
900 接着層付きチップ
1162 チャックテーブル
1164 研削ホイール
1172 ピックアップツール
1210 押圧装置
1220 ステージ
1230 セラミックツール
1232 加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が形成されたウエハの表面に、基材と接着層とが積層されてなる接着フィルムを貼付する貼付段階と、
前記ウエハの前記表面で反射して前記基材および前記接着層を透過した光を受光することにより、前記ウエハの前記表面の画像を撮像する撮像段階と、
前記画像に基づいて、前記ウエハを分割する位置を決定する分割位置決定段階と、
前記ウエハを分割して前記電子部品を個片化する分割段階と、
を備える接着フィルム付き電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記貼付段階は、ヘッドに保持されている弾性体で、前記接着フィルムを前記ウエハの前記表面に押圧する段階を有する、
請求項1に記載の接着フィルム付き電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記基材と前記接着層との間の剥離力は、0.17N/5cm以上である、
請求項1または2に記載の接着フィルム付き電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記基材の厚さは、75μm以上である、
請求項1から3のいずれかに記載の接着フィルム付き電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記接着フィルムにおける、波長が440nm〜700nmの光の透過率は、74%以上である、
請求項1から4のいずれかに記載の接着フィルム付き電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記接着層が、NCFまたはACFを含む、
請求項1から5のいずれかに記載の接着フィルム付き電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記撮像段階の前に、前記表面に前記接着フィルムを貼付された前記ウエハの裏面を研削する裏面研削段階をさらに備える、
請求項1から6のいずれかに記載の接着フィルム付き電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記裏面研削段階は、前記基材を保護する保護層が前記基材上に貼り付けられていない前記ウエハの裏面を研削する段階を有する、
請求項7に記載の接着フィルム付き電子部品の製造方法。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の接着フィルム付き電子部品の製造方法により製造された前記接着フィルム付き電子部品の前記接着層から、前記基材を剥離する剥離段階と、
前記基材が剥離された接着層付き電子部品を、前記接着層を用いて基板の表面に接着する接着段階と、
を備える実装体の製造方法。
【請求項10】
前記接着段階は、ヘッドに保持されている弾性体で、前記接着層付き電子部品を前記基板の前記表面に押圧する押圧段階を有する、
請求項9に記載の実装体の製造方法。
【請求項11】
前記押圧段階は、前記弾性体で、複数の前記接着層付き電子部品を前記基板の前記表面に同時に押圧する段階を有する、
請求項10に記載の実装体の製造方法。
【請求項12】
前記分割段階は、前記ウエハの裏面にダイシングテープが貼り付けられた状態で、前記ウエハを分割する段階を有し、
前記剥離段階は、複数の前記接着フィルム付き電子部品が前記ダイシングテープに貼り付けられた状態のまま、前記複数の接着フィルム付き電子部品のそれぞれの前記接着層から、前記基材を剥離する段階を有する、
請求項9から11のいずれかに記載の実装体の製造方法。
【請求項13】
前記剥離段階の後、前記接着フィルム付き電子部品の前記接着層から、前記基材が剥離されているか否かを確認して選別する選別段階をさらに備え、
前記接着段階は、前記基材が剥離されていることが確認された前記接着層付き電子部品を、前記接着層を用いて基板の表面に接着する段階を有する、
請求項9から12のいずれかに記載の実装体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−171688(P2011−171688A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68818(P2010−68818)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】