説明

接着剤付成形部品及びその製造方法

【課題】 打ち抜き加工を用いず、両面テープ貼付工程の不要な接着剤付成形部品及びその製造方法の提供。
【解決手段】 接着剤層の形状を少なくとも一部に有するスペーサーを成形部品に当接してなる構造体を型として用いて、プラスチックフィルムを真空成形又は圧空成形して前記構造体に沿った凹み型を製造する凹み型形成工程と、
前記凹み型形成工程後、前記スペーサーを接着剤組成物に置き換えて、前記成形部品上に接着剤層を形成する接着剤層形成工程と、
を有することを特徴とする接着剤付成形部品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤付成形部品及びその製造方法に関するものであり、特に粘着剤付成形部品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着剤付成形部品の製造においては両面テープが用いられてきた。例えば、自動車のエンブレム等の成型部品に両面テープを貼付する場合、成型部品に打ち抜き加工した両面テープを、手作業で位置合わせしながら貼り付けていた。打ち抜き加工においては、打ち抜きの形状によって切れ端として廃棄される両面テープが多く出ることがある。これはコストアップや環境負荷増大の要因となっている。また、位置合わせと貼り付けの作業を自動化するためには、位置合わせセンサーの設置等の新たな設備投資が必要になる。したがって、これら位置合わせ及び貼り付け作業は、手作業でおこなわれているのが現状である。
【0003】
一方、両面粘着テープを使わず直接成形部品に粘着剤を塗布したのでは、粘着剤が流れてしまい粘着剤層の正確な厚みや形状を維持することができない。また、粘着剤乾燥時に有機溶剤が揮発するなど作業環境上の問題も発生する。
【0004】
従来、光を照射することにより硬化し、優れた粘着力・凝集力を示す光硬化性粘着剤組成物として、例えば特許文献1が知られている。このような光硬化性粘着剤組成物を用いた両面テープは有機溶剤を使用せず、環境負荷も少ないが上記問題点を解決するものではない。また、打ち抜き加工を省略する為に、光硬化性粘着剤組成物を成形部品に単純にパターン塗布しただけでは、光硬化性粘着剤組成物が光硬化する前に流れてしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭58‐19710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、打ち抜き加工を用いず、両面テープ貼付工程の不要な接着剤付成形部品及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(1)は、接着剤層の形状を少なくとも一部に有するスペーサーを成形部品に当接してなる構造体を型として用いて、プラスチックフィルムを真空成形又は圧空成形して前記構造体に沿った凹み型を製造する凹み型形成工程と、
前記凹み型形成工程後、前記スペーサーを接着剤組成物に置き換えて、前記成形部品上に接着剤層を形成する接着剤層形成工程と、
を有することを特徴とする接着剤付成形部品の製造方法である。
【0008】
本発明(2)は、前記凹み型形成工程において、前記凹み型が、スペーサーの配置される部分が開口部となるように形成されることを特徴とする前記発明(1)の接着剤付成形部品の製造方法である。
【0009】
本発明(3)は、前記接着剤層形成工程において、置き換えた接着剤組成物の上から、剥離性フィルムをラミネートすることを特徴とする前記発明(2)の接着剤付成形部品の製造方法である。
【0010】
本発明(4)は、前記剥離性フィルムが、365nmにおける全光線透過率が30%以上であり、
前記接着剤組成物が光硬化性感圧性接着剤であり、
前記光硬化性感圧性接着剤に対して、前記剥離性フィルムを介して光を照射して硬化させることを特徴とする前記発明(3)の接着剤付成形部品の製造方法である。
【0011】
本発明(5)は、前記凹み型形成工程において、凹み型が、前記スペーサーが前記プラスチックフィルムに覆われるように形成されており、
前記接着剤層形成工程において、成形部品及びスペーサーを取り除き前記スペーサーが配置されていた部分に接着剤組成物を導入し、前記成形部品を前記凹み型内部に戻して前記成形部品上に接着剤層を形成することを特徴とする前記発明(1)の接着剤付成形部品の製造方法である。
【0012】
本発明(6)は、前記プラスチックフィルムが、365nmにおける全光線透過率が30%以上である剥離性プラスチックフィルムであり、
前記接着剤組成物が光硬化性感圧性接着剤であり、
前記接着剤層形成工程において、前記プラスチックフィルム側から光を照射して前記光硬化性感圧性接着剤を硬化させることを特徴とする前記発明(5)の接着剤付成形部品の製造方法である。
【0013】
本発明(7)は、前記接着剤組成物をスクリーン印刷によって配置することを特徴とする前記発明(1)〜(6)のいずれか一つの接着剤付成形部品の製造方法である。
【0014】
本発明(8)は、前記接着剤組成物を多軸型ロボットに装備されたディスペンサーによって配置することを特徴とする前記発明(1)〜(6)のいずれか一つの接着剤付成形部品の製造方法である。
【0015】
本発明(9)は、前記接着剤組成物が炭素数4〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート50〜100重量%、及び該アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能なビニルモノマー0〜50重量%からなる光重合性モノマー(A)、エチレン‐酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル‐ブタジエン共重合体、スチレン系ブロック共重合体から選ばれる少なくとも1種類以上からなるエラストマー(B)及び光重合開始剤(C)を含む混合物からなる光硬化性感圧性接着剤であることを特徴とする前記発明(1)〜(8)のいずれか一項記載の接着剤付成形部品の製造方法である。
【0016】
本発明(10)は、成形部品と、
前記成形部品上に形成された接着剤層と、
前記成形部品に沿うように形成されたプラスチックフィルムと、
を有することを特徴とする接着剤付成形部品である。
【0017】
本発明(11)は、前記接着剤層を構成する接着剤が、感圧性接着剤であることを特徴とする前記発明(10)の接着剤付成形部品である。
【0018】
本発明(12)は、前記接着剤層上に、更に、剥離性フィルムが貼り付けられていることを特徴とする前記発明(11)の接着剤付成形部品である。
【0019】
本発明(13)は、前記プラスチックフィルムが、剥離性フィルムであり、前記接着剤層を覆うように形成されていることを特徴とする前記発明(10)又は(11)の接着剤付成形部品である。
【0020】
ここで、本明細書において使用する各種用語の意味を説明する。「接着剤」とは、一般的な広義の意味の接着剤を意味し、感圧性接着剤や、ホットメルト接着剤を含む概念である。「真空成形」とは、加熱などにより軟化状態のプラスチックを型に配置して、そのプラスチックと型の間の空間を真空にすることによって、プラスチックを型に吸いつけて成形する方法を意味する。真空成形の例としては、特に限定されないが、ストレート法、ドレープ法、プラグアシスト法、エアースリップ法、スナップバック法、リバースドロー法、プラグアシスト・リバースドロー法、エアークッション法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。「圧空成形」とは、加熱などにより軟化状態のプラスチックを型に配置して、プラスチック側から型方向にガス圧を及ぼして成形する方法を意味する。尚、「真空成形又は圧空成形」とは、前記圧空成形と真空成形の両方を組み合わせた圧空真空成形を含む。「構造体に沿った凹み型」とは、少なくとも、スペーサーの位置する周縁部が構造体に沿った形状を有していれば足り、構造体全体に沿った形状を有することが好適である。また、凹み型は構造体に密着していることが好適である。「スクリーン印刷」とは、接着剤組成物を網版に塗りこみ、網から流れ落ちたインクを、型上に配置する方法を意味する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、両面テープの打ち抜き加工を用いず、両面テープ貼付工程の不要な接着剤付成形部品の製造方法を提供することができる。本発明においては、スペーサーや成形部品そのものを用いて真空成形又は圧空成形により型を作成するため、容易に型を得ることができ、このため、型を用いた方法であっても容易に接着剤を形成することができる。
【0022】
また、本発明に係る製造方法において、プラスチックフィルムを真空成形又は圧空成形することにより、成形部品の表面がプラスチックフィルムで覆われるため、当該フィルムをそのまま貼り付けておくことにより、保護フィルムとして使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、第一形態に係る製造方法の概要を示した図である。
【図2】図2は、第一形態に係る製造方法において使用可能なスペーサーの概略断面図である。
【図3】図3は、第一形態において接着剤を剥離性プラスチックフィルムで覆う場合の製造方法の概要を示した図である。
【図4】図4は、第二形態に係る製造方法の概要を示した図である。
【図5】図5は、第二形態において複数のスペーサーを使用する場合の製造方法の概要を示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明に係る接着剤付成形部品は、自動車のエンブレム、バックミラー等の成形部品上に、所望形状を有する接着剤層を形成する方法である。プラスチックフィルムを真空成形又は圧空成形することにより得られる凹み型を用いて、接着剤層を製造することを特徴とする。より具体的には、本発明に係る製造方法は、凹み型を製造する凹み型形成工程と、当該型を用いて接着剤層を形成する接着剤層形成工程により構成される。
【0025】
凹み型形成工程では、接着剤層の形状を少なくとも一部に有するスペーサーを成形部品に当接してなる構造体を型として用いて、プラスチックフィルムを真空成形又は圧空成形して前記構造体に沿った凹み型を製造する。接着剤層形成工程では、前記凹み型形成工程後、前記スペーサーが配置されていた部分を接着剤組成物に置き換えて、前記成形部品上に接着剤層を形成する。
【0026】
本発明に係る接着剤組成物は、特に限定されず、光硬化性感圧性接着剤や、熱硬化性感圧性接着剤や、ホットメルト接着剤等が使用可能である。これらの接着剤の中でも、光硬化性感圧性接着剤が好適である。光硬化性感圧性接着剤とは、光により硬化して感圧性接着剤としての性質を発現する組成物を意味する。また、光硬化性感圧性接着剤は、前記光硬化の後に、感圧性接着剤の性質を発現した後、更に加熱することにより硬化する接着剤であってもよい。
【0027】
光硬化性感圧性接着剤は特に限定されない。アクリル系やシリコーン系の光硬化性感圧性接着剤組成物を用いてもよい。アクリル系の光硬化性感圧性接着剤組成物が特に好適に用いられる。とりわけ、アクリル系の光硬化性感圧性接着剤組成物としては、炭素数4〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート50〜100重量%(好適には50〜99重量%)、及び該アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能なビニルモノマー0〜50重量%(当該ビニルモノマーは任意構成であり、好適には1〜50重量%)からなる光重合性モノマー(A)、エチレン‐酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル‐ブタジエン共重合体、スチレン系ブロック共重合体から選ばれる少なくとも1種類以上からなるエラストマー(B)及び光重合開始剤(C)を含む混合物が好ましく用いることができる。
【0028】
本発明において、プラスチックフィルムは、真空成形又は圧空成形できるものであれば特に限定されないが、A−PET(非晶質ポリエチレンテレフタレート)、B−PET、C−PET(結晶性ポリエチレンテレフタレート)、PET−G(非晶質ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステルフィルム、PE(ポリエチレン)フィルム、CPP(キャスティングポリプロピレン)フィルム、PS(ポリスチレン)フィルム、PC(ポリカーボネート)フィルム、AS(アクリロニトリル‐スチレン)フィルム、ABS(アクリロニトリル‐スチレン‐ブタジエン樹脂)フィルム、アクリルフィルムが挙げられる。これらのプラスチックフィルムの中でも、ポリエステルフィルムが好適に用いられる。市販されているものには、カネロン A−PET(進栄化成株式会社)、SP−PET(東セロ株式会社)などがある。光硬化性感圧性接着剤を使用する場合、A−PET、B−PET、PET−G、PE、CPP、PSが好適である。熱硬化性感圧性接着剤を使用する場合には、B−PET、CPP、PCが好適である。ホットメルト接着剤を使用する場合、B−PET、PET−G、CPP、PCが好適である。
【0029】
本発明において、プラスチックフィルムは、365nmにおける全光線透過率が30%以上であることが好適である。このように光透過性を有するプラスチックフィルムを使用することにより、プラスチックフィルムを介して光を照射して、光硬化性感圧性接着剤を硬化させることができる。
【0030】
本発明において、プラスチックフィルムは、表面に剥離処理を施した剥離性プラスチックフィルムを使用することが好適である。剥離性プラスチックフィルムを用いることにより、当該プラスチックフィルムにより形成される型内部に感圧性接着剤層を形成した場合には、当該フィルムを剥離フィルムとして使用することができる。ここで剥離性プラスチックフィルムとは、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(例えば、非晶質)シートに剥離処理を施したものが好ましい。剥離処理としては、シリコーン系剥離剤など公知の剥離剤を塗布する処理など適宜用いることができる。
【0031】
本発明において、使用するプラスチックフィルムの厚さとしては、特に限定されず、真空成形又は圧空成形に適した厚さを有することが好適であるが、より具体的には40μm〜5mmが好ましく、100μm〜2mmがより好ましい。また、真空成形又は圧空成形のしやすさの観点から、プラスチックフィルムは、延伸されていないものであることが好適である。
【0032】
感圧性接着剤として熱硬化性感圧性接着剤やホットメルト接着剤を使用する場合、フィルムの耐熱性が120℃以上であることが好適である。
【0033】
本発明に係るスペーサーは、少なくとも一部に接着剤層の形状を有していればよく、例えば、全体が接着剤層の形状であってもよい。当該スペーサーと、成形部品とを当接してプラスチックフィルムを真空成形又は圧空成形することにより、当該スペーサーにより接着剤層の形を有する部分が形成される。すなわち、スペーサーは、接着剤が配置されるスペース(空間)を確保するためものである。スペーサーの材質は、真空成形又は圧空成形の際に変形等の不具合を生じないものであれば特に限定されない。
【0034】
「成形部品」とは、接着剤層を形成する対象であって一定形状を有する部材であれば、特に限定されないが、より具体的には、自動車用のエンブレム、銘板、バックミラー等が挙げられる。
【0035】
成形部品の材質は、真空成形又は圧空成形の際に変形等の不具合を生じないものであれば特に限定されない。例えば、成形部品として金属、プラスチックなども用いることができる。成形部品の材質としては、ポリブチレンテレフタレートがより好ましい。成形部品の形状は特に限定されないが、凹み型から成形部品を取り外す作業の効率を考えると、自動車のエンブレムや銘板のような略板状の形状がより好ましい。
【0036】
第一形態
第一形態に係る製造方法においては、凹み型形成工程において、凹み型が、スペーサーの配される部分が開口部となるように形成されていることを特徴とする。すなわち、凹み型の開口部にスペーサーが位置するように真空成形又は圧空成形することにより、スペーサーのみを取り除き、当該部分を接着剤に置き換えて硬化させることにより、成形部品上に接着剤層を形成することが可能となる。
【0037】
図1は、本形態に係る製造方法の概要を示した図である。本発明に係る製造方法は、成形部品2と、スペーサー3とを当接してプラスチックフィルム1を真空成形又は圧空成形して凹み型を成形する。この際、スペーサー3が、当該凹み型の開口部に位置するようにして成形する(図1(a))。すなわち、成形部品のスペーサー3とは反対側からプラスチックフィルム1を当てて、プラスチックフィルム1を加熱して、真空又は圧空状態に配して、成形部品2及びスペーサー3の形状に沿った凹み型を作成する。
【0038】
ここで用いるスペーサーの形状は、感圧性接着剤層の形状と同じ形状であっても良いし、感圧性接着剤層の形状を部分的に有する形状であっても良い。後者の例としては、図2(a)に図示するように、接着剤層の形状を有する凸部41と、平面台座42と、を有するスペーサー4を使用することができる。当該スペーサー4は、例えば図2(b)に示すようにプラスチックフィルム1を真空成形により凹み型を形成する際に使用する。
【0039】
凹み型形成工程後、当該凹み型の開口部に位置しているスペーサーを取り外す(図1(b)、(c))。この際、成形部品は、真空成形又は圧空成形時から当該凹み型の中に配された状態を保持することができる。当該スペーサーを取り外すことにより、成形部品の接着剤層を形成しようとする表面部分に、液体状の接着剤を溜めるための土手(囲い)が形成された状態となる(図1(c))。当該スペーサーの配置されていた部分に接着剤を充填する(図1(d))。
【0040】
当該スペーサーの配置されていた部分に接着剤を充填する方法は、特に限定されないが、スクリーン印刷や、多軸型ロボットに装備されたディスペンサーによって配置することができる。ディスペンサーとは液体定量吐出装置であり、これを単軸あるいは2軸以上の多軸ロボットに搭載して、塗布・充填作業の自動化が可能となる。
【0041】
次に、先述のように接着剤が配された状態で、当該接着剤を硬化させる。ここで、接着剤が光硬化性感圧性接着剤である場合には、光により硬化する。ここで光硬化方法は、特に限定されない。紫外線、電子線等の電離性放射線を照射してもよい。特に、紫外線照射による硬化は、設備が簡便で取り扱いも容易であり、好ましい。
【0042】
また、硬化させる際に、充填した接着剤の上部を剥離性プラスチックフィルム6で覆ってラミネートすることが好適である(図3)。尚、接着剤が光硬化性感圧性接着剤である場合には、365nmにおける全光線透過率が30%以上である剥離性プラスチックフィルムであることが好適である。
【0043】
以上の工程により、成形部品上に接着剤層が形成された接着剤付成形部品を得ることができる。当該成形部品は、凹み型として用いたプラスチックフィルムをそのまま貼り付けた状態で組立作業等を行なってもよい。このように、プラスチックフィルムをそのまま貼り付けることによって、保護フィルムとしての機能を有する。また、前述のように感圧性接着剤層上に剥離性プラスチックフィルムを設けている場合には、当該プラスチックフィルムを当該剥離フィルムをはがして使用する。
【0044】
第二形態
第二形態に係る製造方法においては、前記スペーサーがフィルムに覆われるように形成されることを特徴とする。そして、本形態に係る方法は、成形部品及びスペーサーを取り除き前記スペーサーが配置されていた部分を接着剤に置き換えて、前記成形部品を前記凹み型内部に戻して前記成形部品上に接着剤層を形成することを特徴とする。
【0045】
本形態において接着剤として光硬化性感圧性接着剤を使用した場合には、プラスチックフィルムとして、365nmにおける全光線透過率が30%以上である剥離性プラスチックフィルムを用いることが好適である。以下、光硬化性感圧性接着剤を使用する場合を例にとり説明する。
【0046】
図4は、本形態に係る製造方法の概要を示した図である。第一形態と重複する部分も多く含まれるので、主に相違点のみについて説明して、全体の説明は省略する。本形態においては、スペーサーがフィルムに覆われるように凹み型を成形する。すなわち、感圧性接着剤層の形状を有するスペーサーを成形部品に当接してスペーサー3の配された側からフィルムを当てて、プラスチックフィルム1を加熱して、真空又は圧空状態に配して、成形部品2及びスペーサー3の形状に沿った凹み型を作成する(図4(a)、(b))。ここで、凹み型は、少なくとも、スペーサーとその周辺を覆うものであれば足りる。また、スペーサーは一つに限定されず、接着剤層を形成しようとする部分のみに複数配置されていてもよい(図5)。
【0047】
凹み型形成工程後、成形部品及びスペーサーを取り除き、当該スペーサーが配されていた部分に光硬化性感圧性接着剤を充填する(図4(c))。その後、凹み型内に成形部品を戻す(図4(d))。その後、プラスチックフィルムを介して光を照射することにより、光硬化性感圧性接着剤を硬化させる。これにより、接着剤層の形成された接着剤付成形部品を製造することが可能となる。また、得られた接着剤付成形部品は、凹み型として用いたプラスチックフィルムに覆われた状態となっている。当該部品を対象物に貼り付ける際に当該プラスチックフィルムを剥がして使用する(図4(f))。また、プスチックフィルムは、接着剤付成形部品のほぼ全面を覆っているので、当該フィルムが保護フィルムの役割も果たす。
【実施例】
【0048】
以下に本発明の実施例を記載する。
ただし、本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
[実施例1]
成形部品:PBT(ポリブチレンテレフタレート)板;
ジュラネックス(登録商標)2002、3mm厚板(ポリプラスチック株式会社)
サイズ50mm×30mm×厚さ3mm
スペーサー:材質ステンレス、サイズ50mm×30mm×厚さ1mm
プラスチックフィルム(凹み型用シート):剥離処理済A−PET(非晶質ポリエチレンテレフタレートシート);カネロン A−PET 200μm厚、365nmにおける全光透過率:78.52%(進栄化成株式会社)
ラミネートカバー剥離処理フィルム:PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム;SP−PET‐01‐BU 38μm厚(東セロ)、365nmにおける全光透過率76.76%
真空成形機:PIMF‐0305‐W(布施真空)
成形条件:加熱温度100℃
感圧性接着剤配合:下記表1
【0049】
【表1】

BA:アクリル酸ブチル
AA:アクリル酸
エバフレックス(登録商標)EV 45LX:エチレン‐酢酸ビニル共重合体(三井・デュポン ポリケミカル)[メルトフローレート(190℃,2.16kg荷重)=2.5g/10分、酢酸ビニル含量(JISK7192:1999)=46wt%]
IRGACURE(登録商標) 819:光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ);ビス(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド
ミクロエース(登録商標)K‐1:タルク(日本タルク);白色度(JISP8123)=94%、粒子径D50(レーザー回折法)=8.0μm
【0050】
感圧性接着剤混合条件:ディゾルバーにて混合撹拌して調製
感圧性接着剤注入条件:ロボットディスペンサーにて感圧性接着剤注入。
UV照射条件:照射方向;上から(剥離処理フィルム側から)。積算照射量;360mJ/cm
【0051】
図3に示す方法により、感圧性接着剤付成形部品を製造した。真空成形機金型に1mm厚のスペーサーとその上に成形部品(PBT板)を固定し、剥離処理面が下になるようにA−PETシートをセットし(図3(a)に例示)、真空成形を行い、凹み型を作製した(図3(b))。その凹み型を裏返し、1mm厚のスペーサーのみを取り除き、成形部品が装着された凹み型の凹み部分に、感圧性接着剤を注入した。更に、剥離処理面が下になるようにラミネートカバー剥離処理フィルム(PET)をラミネートした。ラミネートカバー剥離処理フィルム面からUVを所定の条件で照射し、感圧性接着剤をUV硬化した。これにより感圧性接着剤付き成形部品を得ることが出来た。得られた感圧性接着剤層のプローブタック値は10.75 N/5mmφであった。
【0052】
[実施例2]
成形部品:PBT(ポリブチレンテレフタレート)板;ジュラネックス2002 3mm厚板(ポリプラスチック)
凹み型用シート:剥離処理済A−PET(非晶質ポリエチレンテレフタレートシート);カネロン A−PET 200μm厚、365nmにおける全光透過率:78.52%(進栄化成)
真空成形機:実施例1と同じ。
成形条件:実施例1と同じ。
感圧性接着剤配合:実施例1と同じ。
感圧性接着剤混合条件:実施例1と同じ。
感圧性接着剤注入条件:ロボットディスペンサーにて感圧性接着剤注入
UV照射条件:照射方向;下から照射(剥離処理済A−PET側から、図4(e)に例示)、積算照射量;360mJ/cm
【0053】
図4に示す方法により、感圧性接着剤付成形部品を製造した。真空成形機の金型に成形部品(PBT板)とその上に1mm厚のスペーサーを固定し、剥離処理面が下になるようにA‐PETシートをセットし、真空成形を行い、凹み型を作製した。その凹み型から成形部品と1mm厚のスペーサーを取り除き、凹み面(開口部)が上になるように凹み型を置き、その凹み部分に、感圧性接着剤を注入し、その上に、成形部品(PBT板)をセットした。下面(フィルム側)からUVを所定の条件で照射し、感圧性接着剤をUV硬化した。これにより感圧性接着剤付き成形部品を得ることが出来た。得られた感圧性接着剤層のプローブタック値は11.25 N/5mmφであった。
【符号の説明】
【0054】
1:プラスチックフィルム
2:成型部品
3:スペーサー
4:スペーサー(受け治具タイプ)
41:凸部
42:平面台座
5:光硬化性感圧性接着剤組成物
6:剥離性プラスチックフィルム
7:ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤層の形状を少なくとも一部に有するスペーサーを成形部品に当接してなる構造体を型として用いて、プラスチックフィルムを真空成形又は圧空成形して前記構造体に沿った凹み型を製造する凹み型形成工程と、
前記凹み型形成工程後、前記スペーサーを接着剤組成物に置き換えて、前記成形部品上に接着剤層を形成する接着剤層形成工程と、
を有することを特徴とする接着剤付成形部品の製造方法。
【請求項2】
前記凹み型形成工程において、前記凹み型が、スペーサーの配置される部分が開口部となるように形成されることを特徴とする請求項1記載の接着剤付成形部品の製造方法。
【請求項3】
前記接着剤層形成工程において、置き換えた接着剤組成物の上から、剥離性フィルムをラミネートすることを特徴とする請求項2記載の接着剤付成形部品の製造方法。
【請求項4】
前記剥離性フィルムが、365nmにおける全光線透過率が30%以上であり、
前記接着剤組成物が光硬化性感圧性接着剤であり、
前記光硬化性感圧性接着剤に対して、前記剥離性フィルムを介して光を照射して硬化させることを特徴とする請求項3記載の接着剤付成形部品の製造方法。
【請求項5】
前記凹み型形成工程において、凹み型が、前記スペーサーが前記プラスチックフィルムに覆われるように形成されており、
前記接着剤層形成工程において、成形部品及びスペーサーを取り除き前記スペーサーが配置されていた部分に接着剤組成物を導入し、前記成形部品を前記凹み型内部に戻して前記成形部品上に接着剤層を形成することを特徴とする請求項1記載の接着剤付成形部品の製造方法。
【請求項6】
前記プラスチックフィルムが、365nmにおける全光線透過率が30%以上である剥離性プラスチックフィルムであり、
前記接着剤組成物が光硬化性感圧性接着剤であり、
前記接着剤層形成工程において、前記プラスチックフィルム側から光を照射して前記光硬化性感圧性接着剤を硬化させることを特徴とする請求項5記載の接着剤付成形部品の製造方法。
【請求項7】
前記接着剤組成物をスクリーン印刷によって配置することを特徴とする請求項1〜6記載のいずれか一項記載の接着剤付成形部品の製造方法。
【請求項8】
前記接着剤組成物を多軸型ロボットに装備されたディスペンサーによって配置することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の接着剤付成形部品の製造方法。
【請求項9】
前記接着剤組成物が炭素数4〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート50〜100重量%、及び該アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能なビニルモノマー0〜50重量%からなる光重合性モノマー(A)、エチレン‐酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル‐ブタジエン共重合体、スチレン系ブロック共重合体から選ばれる少なくとも1種類以上からなるエラストマー(B)及び光重合開始剤(C)を含む混合物からなる光硬化性感圧性接着剤であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項記載の接着剤付成形部品の製造方法。
【請求項10】
成形部品と、
前記成形部品上に形成された接着剤層と、
前記成形部品に沿うように形成されたプラスチックフィルムと、
を有することを特徴とする接着剤付成形部品。
【請求項11】
前記接着剤層を構成する接着剤が、感圧性接着剤であることを特徴とする請求項10記載の接着剤付成形部品。
【請求項12】
前記接着剤層上に、更に、剥離性フィルムが貼り付けられていることを特徴とする請求項11記載の接着剤付成形部品。
【請求項13】
前記プラスチックフィルムが、剥離性フィルムであり、前記接着剤層を覆うように形成されていることを特徴とする請求項10又は11記載の接着剤付成形部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−206650(P2011−206650A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75427(P2010−75427)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000004020)ニチバン株式会社 (80)
【Fターム(参考)】