説明

接着剤組成物、それを用いたフィルム状接着剤及び回路接続材料

【課題】 低温速硬化性と優れた接続特性を有する接着剤組成物の提供。
【解決手段】 (A)下記一般式(I)で表されるポリウレタンイミドと、(B)下記一般式(II)で表される変性ポリウレタンと、(C)ラジカル重合開始剤と、を含有する接着剤組成物。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、それを用いたフィルム状接着剤及び回路接続材料に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体分野ではエポキシ樹脂などの有機材料が多く使われている(例えば、下記特許文献1参照)。また、封止材の分野では、封止システムの90%以上が樹脂封止システムに置き換わっている。封止材はエポキシ樹脂、硬化剤、各種添加剤、無機充填剤等によって構成される複合材料であり、エポキシ樹脂としてはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が多く使用されている。
【0003】
しかし、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂は、低吸水率、低弾性率といった特性において必ずしも満足する要求特性を有していないため、表面実装方式への対応が困難である。そのため、これに代わる新規高性能エポキシ樹脂が多く提案され実用化に至っている。
【0004】
また、エポキシ樹脂などの有機材料は、ダイボンディング用導電性接着剤として、エポキシ樹脂に銀粉を混練した銀ペーストとして多く使用されている。しかし、半導体素子の配線基板への装着方法が表面実装法に移行するに従い、銀ペーストに対する耐はんだリフロー性向上の要求が強まっている。この問題を解決するために、硬化後のダイボンディング用接着層のボイド、ピール強度、吸水率、弾性率等の改善がなされている。
【0005】
半導体実装分野では、低コスト化・高精細化に対応した新しい実装形態として、ICチップを直接プリント基板やフレキシブル配線板に搭載するフリップチップ実装が注目されている。
【0006】
フリップチップ実装方式としては、チップの端子にはんだバンプを設け、はんだ接続を行う方式や、導電性接着剤を介して電気的接続を行う方式が知られている。これらの方式では、接続するチップと基板の熱膨張係数差に基づくストレスが、各種環境に曝した場合に接続界面で発生し、接続信頼性が低下するという問題がある。
【0007】
このため、接続界面のストレスを緩和する目的で一般にエポキシ樹脂系のアンダフィル材をチップ/基板の間隙に注入する方式が検討されている。しかし、このアンダフィル注入工程は、プロセスを煩雑化し、生産性、コストの面で不利になるという問題がある。このような問題を解決すべく、最近では異方導電性と封止機能を有する異方導電性接着剤を用いたフリップチップ実装が、プロセス簡易性という観点から注目されている。
【0008】
一方、近年、半導体、液晶ディスプレイ等の分野において、電子部品を固定したり回路接続を行うために各種の接着材料が使用されている。これらの用途では、回路の高密度化、高精細化が進み、接着性をはじめとして耐熱性、高温高湿状態における信頼性などが要求される。
【0009】
特に、回路接続材料としては、液晶ディスプレイとTCPとの接続、FPCとTCPとの接続、及び、FPCとプリント配線板との接続には接着剤中に導電粒子を分散させた異方導電性接着剤が使用されている。
【0010】
また、最近では、半導体シリコンチップを基板に実装する場合でも、従来のワイヤーボンドではなく、半導体シリコンチップをフェイスダウンで基板に実装するいわゆるフリップチップ実装が行われており、ここでも異方導電性接着剤の適用が開始されている。また、精密電子機器の分野では、回路の高密度化が進んでおり、電極幅及び電極間隔が極めて狭くなっている。
【0011】
【特許文献1】特開平1−113480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のように精密電子機器の分野では、回路の高密度化が進んでおり、電極幅及び電極間隔が極めて狭くなっているため、従来のエポキシ樹脂を用いた回路接続用接着剤の接続条件では、配線の脱落、はく離、位置ずれが生じるなどの問題点がある。さらに、生産効率向上のために接続時間の短縮化が強く求められてきており、低温速硬化性(具体的には、160℃以下且つ10秒以下の条件で接続すること)が必要不可欠となっている。
【0013】
本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分な低温速硬化性を有し、且つ優れた接続特性を有する接着剤組成物、該接着剤組成物を用いたフィルム状接着剤及び回路接続材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は、(A)下記一般式(I)で表されるポリウレタンイミドと、(B)下記一般式(II)で表される変性ポリウレタンと、(C)ラジカル重合開始剤と、を含有する接着剤組成物を提供する。
【化1】


[式中、Rは芳香族環又は脂肪族環を含む2価の有機基を示し、Rは重量平均分子量100〜10,000の2価の有機基を示し、Rは4個以上の炭素原子を含む4価の有機基を示し、n及びmは各々独立に1〜100の整数を示す。]
【化2】


[式中、Xは芳香族環又は脂肪族環を含む2価の有機基を示し、Yは重量平均分子量100〜10,000の2価の有機基を示し、Zは4個以上の炭素原子を含む2〜4価の有機基を示し、Rは反応性を有する有機基を示し、pは0〜2の整数を示し、q及びrは各々独立に1〜100の整数を示す。]
【0015】
本発明の接着剤組成物によれば、(A)上記一般式(I)で表されるポリウレタンイミドと、(B)上記一般式(II)で表される変性ポリウレタンとを含有する構成を有することにより、低温度接続及び接続時間の短縮が可能で、十分な低温速硬化性を得ることができるとともに、優れた接続特性を得ることができる。特に本発明の接着剤組成物を用いて回路部材同士を接続する場合、回路の高密度化によって電極幅が狭くなった際にも低温短時間の接続条件で十分な接着強度及び接着信頼性を得ることができる。こうした効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、(A)ポリウレタンイミド及び(B)変性ポリウレタンが回路間のスペース部分に対しても高い接着力を有するようになるためであると考えられる。
【0016】
また、本発明の接着剤組成物において、上記一般式(I)中、Rの10〜100mol%が下記一般式(III)で表される構造を有する2価の有機基であり、Rの10〜100mol%が下記一般式(IV)で表される繰り返し単位からなる重量平均分子量100〜10,000の2価の有機基であることが好ましい。
【化3】


【化4】

【0017】
上記の条件を満たす(A)ポリウレタンイミドを用いることにより、低温速硬化性及び接続特性をより高水準で達成することができる。
【0018】
また、本発明の接着剤組成物において、上記一般式(II)中、−Z(R)−が、下記一般式(V)で表される構造を10mol%以上含むものであることが好ましい。
【化5】


[式中、Aは4個以上の炭素原子を含む4価の有機基を示し、Rは反応性を有する有機基を示す。]
【0019】
上記の条件を満たす(B)変性ポリウレタンを用いることにより、より高水準の接続特性を達成することができる。
【0020】
また、本発明の接着剤組成物は、上記(A)ポリウレタンイミド100質量部に対して、上記(B)変性ポリウレタン10〜250質量部及び上記(C)ラジカル重合開始剤0.05〜30質量部を含有してなるものであることが好ましい。これにより、より高い接続信頼性を得ることができる。
【0021】
また、本発明の接着剤組成物は、(D)ラジカル重合性化合物を更に含有することが好ましい。上記の(A)ポリウレタンイミド及び(B)変性ポリウレタンに加え、更に(D)ラジカル重合性化合物を含有せしめることにより、接着剤組成物の接続信頼性をより向上させることができる。
【0022】
また、本発明の接着剤組成物は、(E)導電粒子を更に含有することが好ましい。(E)導電粒子を含有せしめることにより、接着剤組成物に導電性又は異方導電性を付与することができるため、接着剤組成物を、回路電極を有する回路部材同士の接続用途等に好適に使用することが可能となる。
【0023】
上記(E)導電粒子を含有する場合、その含有量は、接着剤組成物の固形分の全体積を基準として0.1〜30体積%であることが好ましい。これにより、より良好な導通特性を得ることができる。
【0024】
本発明はまた、上記本発明の接着剤組成物をフィルム状に形成してなるフィルム状接着剤を提供する。フィルム状とした接着剤組成物は取扱性に優れるため、接着すべき被着体同士の接着をより効率的に行うことが可能となる。
【0025】
本発明は更に、上記本発明の接着剤組成物を含有し、回路電極を有する回路部材同士を、それぞれの回路部材が有する回路電極同士が電気的に接続されるように接着するために用いられる回路接続材料を提供する。かかる回路接続材料は、上記本発明の接着剤組成物を含有してなるものであるため、回路の高密度化によって電極幅が狭くなった際にも低温短時間の接続条件で十分な接着強度及び接着信頼性を得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、低温度接続、接続時間の短縮が可能で、十分な低温速硬化性を有するとともに、回路の高密度化による電極幅が狭くなった際にも十分な接着強度及び接着信頼性が得られる優れた接続特性を有する接着剤組成物、該接着剤組成物を用いたフィルム状接着剤組成物及び回路接続材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、場合により図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、本発明において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定を行い、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算したものである。
【0028】
本発明の接着剤組成物は、(A)ポリウレタンイミド、(B)変性ポリウレタン及び(C)ラジカル重合開始剤を含有することを特徴とするものである。
【0029】
このうち、(A)ポリウレタンイミドは、下記一般式(I)で表されるものであり、式中のRは芳香族環又は脂肪族環を含む2価の有機基、Rは重量平均分子量100〜10,000の2価の有機基、Rは4個以上の炭素原子を含む4価の有機基、n及びmは各々独立に1〜100の整数である。なお、下記一般式(I)において、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、また、R、R及びnが複数存在する場合、複数のR、R及びnはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0030】
【化6】

【0031】
ここで、上記一般式(I)中のRで示される芳香族環又は脂肪族環を含む2価の有機基は、ジイソシアネート残基であり、下記一般式(III)で表される構造を有する2価の有機基を10〜100mol%含むことが好ましい。
【0032】
【化7】

【0033】
また、残りのジイソシアネート残基Rとしては、上記(III)の他に、例えば、
【化8】


が挙げられる。これらは1種類あるいは2種類以上の組み合わせで用いることができる。
【0034】
また、上記一般式(I)中のRで示される重量平均分子量100〜10,000の2価の有機基は、ジオール残基であり、下記一般式(IV)で表される繰り返し単位からなる重量平均分子量100〜10,000の2価の有機基を10〜100mol%含むことが好ましい。
【化9】

【0035】
また、残りのジオール残基Rとしては、上記(IV)の他に、例えば、
【化10】


等の繰り返し単位を有するものが挙げられる。これらは1種類又は2種類以上の組み合わせで用いることができる。これらの重量平均分子量は100〜10,000である必要があり、500〜5,000であればより好ましい。
【0036】
また、上記一般式(I)中のRで示される4個以上の炭素原子を含む4価の有機基は、テトラカルボン酸無水物残基であることが好ましく、例えば、
【化11】


等が挙げられる。これらは1種類又は2種類以上の組み合わせで用いることができる。
【0037】
上記一般式(I)中のn及びmは各々独立に1〜100の整数である必要があり、20〜80の整数であることがより好ましい。
【0038】
(A)ポリウレタンイミドは、例えば以下の方法により合成することができる。すなわち、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などにジイソシアネート及びジオールを溶解し、70℃〜180℃で1時間〜5時間反応させてウレタンオリゴマを合成し、さらにテトラカルボン酸二無水物を添加して70℃〜180℃で1時間〜10時間反応させることでポリウレタンイミド樹脂のNMP溶液を得ることができる。また、必要に応じて、1価のアルコール、オキシム、アミン、イソシアネート、酸無水物等をさらに添加して、ポリウレタン樹脂の末端を修飾することもできる。また、合成の際には、水、アルコール、3級アミン等を触媒として用いることもできる。
【0039】
得られたポリウレタンイミド樹脂溶液は、目的に応じ、水による再沈殿法等によりポリウレタンイミド樹脂を分離することもできる。
【0040】
上記ウレタンオリゴマを構成するジイソシアネートとジオールの組成比は、ジイソシネート1.0molに対して、ジオール成分0.1〜1.0molが好ましい。(A)ポリウレタンイミド樹脂を構成するポリウレタンオリゴマとテトラカルボン酸二無水物の組成比は、ポリウレタンオリゴマ1.0molに対して、テトラカルボン酸二無水物0.1〜2.0molが好ましい。
【0041】
こうして得られる(A)ポリウレタンイミドは熱可塑性樹脂であり、それ自体接着性に優れ、重量平均分子量5,000〜100,000の範囲のものは特に、他の樹脂との併用により接着剤の溶融粘度を広範囲に設計することができる。
【0042】
(B)変性ポリウレタン樹脂は、下記一般式(II)で表されるものであり、一般式(II)中、Xは芳香族環又は脂肪族環を含む2価の有機基、Yは重量平均分子量100〜10,000の2価の有機基、Zは4個以上の炭素原子を含む2〜4価の有機基、Rは反応性を有する有機基、pは0〜2の整数、q及びrは各々独立に1〜100の整数である。なお、下記一般式(II)において、複数存在するXは同一でも異なっていてもよく、また、Y、Z、R、p及びqが複数存在する場合、複数のY、Z、R、p及びqはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0043】
【化12】

【0044】
上記一般式(II)中のXで示される芳香族環又は脂肪族環を含む2価の有機基は、ジイソシアネート残基であり、例えば、
【化13】


等であると好ましい。これらは1種類又は2種類以上の組み合わせで用いることができる。
【0045】
さらに、上記一般式(II)中のYで示される重量平均分子量100〜10,000の2価の有機基は、ジオール残基であり、例えば、
【化14】


等の繰り返し単位を有するものが挙げられる。これらは1種類又は2種類以上の組み合わせで用いることができる。これらの重量平均分子量は100〜10,000である必要があり、500〜5,000であればより好ましい。
【0046】
上記一般式(II)中の−Z(R)−は、下記一般式(V)で表される構造を10mol%以上含むことが好ましい。また、上記一般式(II)中の−Z(R)−は、下記一般式(V)で表される構造以外に、下記一般式(VI)及び(VII)で表される構造を含んでいてもよい。上記一般式(II)中の−Z(R)−が、下記一般式(V)、(VI)及び(VII)で表される構造の組合せからなる場合、それらの比率は、下記一般式(VI)で表される構造が10〜90mol%、下記一般式(V)で表される構造と下記一般式(VII)で表される構造との総量が10〜90mol%であることが好ましく、下記一般式(VI)で表される構造が20〜80mol%、下記一般式(V)で表される構造と下記一般式(VII)で表される構造との総量が20〜80mol%であることがより好ましい。下記一般式(V)、(VI)及び(VII)中、Aは4個以上の炭素原子を含む4価の有機基、Rは反応性を有する有機基である。
【0047】
【化15】

【0048】
【化16】

【0049】
【化17】

【0050】
上記一般式(V)、(VI)及び(VII)中のAで示される4個以上の炭素原子を含む4価の有機基は、テトラカルボン酸無水物残基であり、例えば、
【化18】


等が挙げられる。これらは1種類又は2種類以上の組み合わせで用いることができる。
【0051】
上記一般式(II)、(V)及び(VII)中のRで示される基は、反応性を有する基であり、一つ以上の(メタ)アクリレート基を含むものが好ましく、例えば、下記一般式(VIII)で表される基が挙げられる。
【0052】
【化19】


[式中、Rは、炭素数1〜50の2価の有機基を示す。]
【0053】
上記一般式(II)中のq及びrは各々独立に1〜100の整数である必要があり、1〜50であることがより好ましい。
【0054】
本発明で用いる(B)変性ポリウレタン樹脂は、例えば以下の方法により合成することができる。すなわち、(i)下記一般式(IX)、(X)及び(XI)で表される化合物の混合物と、(ii)イソシアネート末端ウレタンオリゴマとの重縮合により、(B)変性ポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0055】
【化20】

【0056】
(i)一般式(IX)、(X)及び(XI)で表される化合物の混合物は、例えば、テトラカルボン酸二無水物と所定量のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートとを溶媒中、70℃〜100℃で1時間〜10時間反応させることにより得ることができる。このとき、場合により、触媒として3級アミン類など、また、(メタ)アクリレートの重合を抑制する目的で、フェノール類等の重合禁止剤を用いることができる。
【0057】
(ii)イソシアネート末端ウレタンオリゴマは、例えば、溶媒中、過剰のジイソシアネート及びジオールを70℃〜160℃で1時間から10時間反応させることにより得ることができる。このとき、場合により一般的なウレタン合成に使用される触媒を用いることもできる。
【0058】
こうして得られた(i)成分及び(ii)成分を混合し、70℃〜100℃で1時間〜10時間、場合により触媒を用いて反応させることにより、変性ポリウレタン樹脂溶液を得ることができる。
【0059】
また、場合により、1価のアルコール、オキシム、アミン、イソシアネート、酸無水物等をさらに添加して反応を続け、変性ポリウレタン樹脂の末端を修飾することもできる。
【0060】
合成に用いる溶媒は、(i)成分の合成時及び(ii)成分の合成時で同一の溶媒を用いても異なる溶媒を用いてもよいが、変性ポリウレタン樹脂が溶解する溶媒を用いることが、高分子量化するためには好ましい。
【0061】
得られた変性ポリウレタン樹脂溶液は、目的に応じ、水による再沈殿法などにより変性ポリウレタン樹脂を分離することもできる。
【0062】
(ii)イソシアネート末端ウレタンオリゴマを構成するジイソシアネートとジオールの組成比は、ジイソシネート1.0molに対して、ジオール成分0.1〜1.0molが好ましい。(B)変性ポリウレタン樹脂を構成する(ii)ポリウレタンオリゴマと一般式(II)中で−Z(R)−で表される構造物の組成比は、ポリウレタンオリゴマ1.0molに対して、−Z(R)−で表される構造物0.1〜2.0molが好ましい。
【0063】
本発明の接着剤組成物において、(B)変性ポリウレタンの含有量は、(A)ポリウレタンイミド100質量部に対して10〜250質量部であることが好ましく、30〜200質量部であることがより好ましい。この(B)変性ポリウレタンの含有量が10質量部未満であると、接続特性が低下する傾向があり、250質量部を超えると、接着力が低下する傾向がある。
【0064】
(C)ラジカル重合開始剤としては、熱又は光によってラジカルを発生する化合物であれば特に制限はなく、過酸化物、アゾ化合物等があり、目的とする接続温度、接続時間、保存安定性等を考慮し適宜選択されるが、高反応性と保存安定性の点から、半減期10時間の温度が、40℃以上かつ、半減期1分の温度が180℃以下の有機過酸化物が好ましく、半減期10時間の温度が、50℃以上かつ、半減期1分の温度が170℃以下の有機過酸化物が特に好ましい。本発明の接着剤組成物を用いた回路部材同士の接続時間を10秒とした場合、十分な反応率を得るために、(C)ラジカル重合開始剤の含有量は、(A)ポリウレタンイミド100質量部に対して0.05〜30質量部であることが好ましく、1〜20質量部であることがより好ましい。
【0065】
本発明で使用される有機過酸化物の具体的な化合物としては、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイド等から選定できる。これらの中でも、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイドは、開始剤中の塩素イオンや有機酸が5000ppm以下であり、加熱分解後に発生する有機酸が少なく、回路部材の接続端子の腐食を抑えることができるため特に好ましい。
【0066】
ジアシルパーオキサイド類としては、イソブチルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニックパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエン、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0067】
パーオキシジカーボネート類としては、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシメトキシパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等が挙げられる。
【0068】
パーオキシエステル類としては、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシノエデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート等が挙げられる。
【0069】
パーオキシケタール類としては、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)デカン等が挙げられる。
【0070】
ジアルキルパーオキサイド類としては、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。
【0071】
ハイドロパーオキサイド類としては、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0072】
シリルパーオキサイド類としては、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジメチルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリビニルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジビニルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)ビニルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリアリルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジアリルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)アリルシリルパーオキサイド等が挙げられる。
【0073】
また、接着剤組成物が回路接続材料に使用される場合には、回路部材の接続端子(回路電極)の腐食を抑えるために、硬化剤(ラジカル重合開始剤)中に含有される塩素イオンや有機酸は5000ppm以下であることが好ましく、さらに、加熱分解後に発生する有機酸が少ないものがより好ましい。また、作製した回路接続材料の安定性が向上することから、室温、常圧下で24時間の開放放置後に20質量%以上の質量保持率を有することが好ましい。これらは適宜混合して用いることができる。
【0074】
これらの遊離ラジカル発生剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができ、分解促進剤、抑制剤等を混合して用いてもよい。また、これらの硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したものは、可使時間が延長されるために好ましい。
【0075】
以上、説明した(A)ポリウレタンイミド、(B)変性ポリウレタン及び(C)ラジカル重合開始剤を含有してなる接着剤組成物は、例えば、半導体又は液晶ディスプレイ等の表示システムなどにおいて、半導体素子の実装又は回路接続用等の接着剤として使用することができる。
【0076】
また、本発明の接着剤組成物には、接続信頼性を向上する目的でラジカル重合性化合物を組み合わせて用いることができる。
【0077】
上記ラジカル重合性化合物は、ラジカルにより重合する官能基を有する化合物であり、(メタ)アクリレート樹脂、マレイミド樹脂、シトラコンイミド樹脂、ナジイミド樹脂などが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。また、ラジカル重合性化合物は、モノマー、オリゴマーのいずれの状態でも使用することができ、モノマーとオリゴマーとを混合して用いてもよい。
【0078】
(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリレートをラジカル重合させることで得られる。(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、エテレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールテトラ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートトリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタン(メタ)アクリテート、イソシアヌール酸エチレンオキシド変性ジアクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。また、必要に応じて、ハイドロキノン、メチルエーテルハイドロキノン等のラジカル重合禁止剤を硬化性が損なわれない範囲で使用してもよい。
【0079】
マレイミド樹脂は、分子中にマレイミド基を少なくとも1個有しているものであり、例えば、フェニルマレイミド、1−メチル−2,4−ビスマレイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルスルホンビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−3,4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−マレイミドフェノキシ)フェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパンなどが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0080】
シトラコンイミド樹脂は、分子中にシトラコンイミド基を少なくとも1個有しているシトラコンイミド化合物を重合させたものである。シトラコンイミド化合物としては、例えば、フェニルシトラコンイミド、1−メチル−2,4−ビスシトラコンイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスシトラコンイミド、N,N’−p−フェニレンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジエチルジフェニルメタン)ビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルスルホンビスシトラコンイミド、2,2−ビス(4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−3,4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス(4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0081】
ナジイミド樹脂は、分子中にナジイミド基を少なくとも1個有しているナジイミド化合物を重合したものである。ナジイミド化合物としては、例えば、フェニルナジイミド、1−メチル−2,4−ビスナジイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスナジイミド、N,N’−p−フェニレンビスナジイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスナジイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスナジイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスナジイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジエチルジフェニルメタン)ビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルスルホンビスナジイミド、2,2−ビス(4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−3,4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−ナジイミドフェノキシ)フェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス(4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0082】
さらに、リン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質を使用した場合、金属等の無機物に対する接着力を向上させることができる。リン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質の使用量は、接着剤組成物の固形分全量を基準として0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
【0083】
リン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質は、無水リン酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの反応生成物として得られる。リン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質として具体的には、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0084】
本発明の接着剤組成物において、(A)ポリウレタンイミド及び(B)変性ポリウレタン樹脂と(D)ラジカル重合性化合物(三次元架橋性樹脂)との配合比は、質量比で(A)+(B):(D)=1:99〜99:1であることが好ましく、10:90〜90:10であることがより好ましい。
【0085】
(A)ポリウレタンイミド、(B)変性ポリウレタン及び(C)ラジカル重合開始剤を含有してなる本発明の接着剤組成物には、流動性や物性の向上、又は導電性、異方導電性、熱伝導性等の機能の付加を目的として、フィラーや粒子を添加することができる。
【0086】
このようなフィラーや粒子としては、シリカ、三酸化二アンチモン、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、カーボン、セラミック等からなるもの、及び、上記金属、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等を核とし、この核に上記金属やカーボンを被覆したもの等が挙げられる。
【0087】
こうしたフィラーや粒子の使用量は特に制限されないが、接着剤組成物の固形分の全体積を基準として0.1〜50体積%とすることが好ましく、0.1〜30体積%であることがより好ましい。
【0088】
また、本発明の接着剤組成物には、接着力及び接着剤の物性の向上を目的として、種々のポリマーを適宜添加してもよい。使用するポリマーは特に制限を受けない。このようなポリマーとしては、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂やビスフェノールF型フェノキシ樹脂、ビスフェノールA・ビスフェノールF共重合型フェノキシ樹脂等の汎用フェノキシ樹脂類、ポリメタクリレート類、ポリアクリレート類、ポリイミド類、ポリウレタン類、ポリエステル類、ポリビニルブチラール、SBS及びそのエポキシ変性体、SEBS及びその変性体などを用いることができる。これらは1種を単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0089】
さらに、これらポリマー中には、シロキサン結合やフッ素置換基が含まれていてもよい。これらは、混合する樹脂同士が完全に相溶するか又はミクロ相分離が生じて白濁する状態であれば接着剤組成物としては好適に用いることができる。上記ポリマーの分子量は特に制限を受けるものではないが、一般的な重量平均分子量としては5,000〜150,000が好ましく、10,000〜80,000が特に好ましい。この値が、5,000未満では接着剤の物性が低下する傾向があり、また150,000を超えると他の成分との相溶性が低下する傾向がある。
【0090】
ポリマーの使用量としては、変性ポリウレタン樹脂を含む接着剤組成物の固形分全量を基準として20〜70質量%とすることが好ましい。この使用量が、20質量%未満又は70質量%を超える場合は、流動性や接着性が低下する傾向がある。
【0091】
本発明の接着剤組成物には適宜、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃剤、カップリング剤を添加してもよい。また、本発明の接着剤組成物は、室温で液状である場合にはペースト状で使用することができる。室温で固体の場合には、加熱して使用する他、溶剤を用いてペースト化して使用してもよい。
【0092】
使用できる溶剤としては、接着剤組成物及び添加剤と反応性がなく、かつ十分な溶解性を示すものであれば、特に制限は受けないが、常圧での沸点が50〜150℃であるものが好ましい。使用する溶剤の沸点が50℃未満の場合、室温で放置すると揮発する恐れがあり、開放系での使用が制限される。一方、沸点が150℃を超えると、溶剤を揮発させることが難しく、接着後の信頼性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0093】
本発明の接着剤組成物は、フィルム状にして用いることもできる。フィルム状接着剤は、接着剤組成物に必要により溶剤等を加えるなどして得られた溶液を、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、離形紙等の剥離性基材上に塗布し又は不織布などの基材に上記溶液を含浸させて剥離性基材上に載置し、溶剤等を除去することで得ることができる。フィルムの形状で使用すると取扱性等の点から一層便利である。
【0094】
図1は、フィルム状接着剤の一実施形態を示す模式断面図である。図1に示すフィルム状接着剤1は、上述した接着剤組成物をフィルム状に形成してなるものである。このフィルム状接着剤によれば、取り扱いが容易であり、被着体へ容易に設置することができ、接続作業を容易に行うことができる。
【0095】
フィルム状接着剤1は、上述したように、接着剤組成物を溶媒に溶解した溶液を剥離性基材上に塗工装置を用いて塗布し、接着剤組成物が硬化しない温度で所定時間熱風乾燥することにより作製することができる。また、フィルム状接着剤1の厚さは、10〜50μmであることが好ましい。
【0096】
本発明の接着剤組成物は、熱膨張係数の異なる異種の被着体の接着剤として使用することができる。具体的には、銀ペースト、銀フィルム、異方導電接着剤等に代表される回路接続材料、CSP用エラストマー、CSP用アンダーフィル材、LOCテープ、ダイボンド接着材等に代表される半導体素子接着剤として使用することができる。
【実施例】
【0097】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
<ポリウレタンイミド樹脂(PUI−1)の合成>
ジフェニルメタン−4、4’−ジイソシアネート(1.0mol)、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート(1.0mol)及び数平均分子量が2,000のポリテトラメチレングリコール(0.8mol)を、1−メチル−2−ピロリドン(1500g)中で窒素雰囲気下、100℃で1時間反応させ、そこに4,4’−オキシフタル酸無水物(1.0mol)、トリエチルアミン(0.01mol)及び1−メチル−2−ピロリドン(1500g)を添加し、100℃で3時間攪拌した後、ベンジルアルコール(0.2mol)を更に添加し、100℃で1時間攪拌して反応を終了した。得られた溶液を激しく攪拌した水に入れ、生じた沈殿物を濾別し、真空中80℃で8時間乾燥させ、熱可塑性樹脂としてのポリウレタンイミド樹脂(PUI−1)を得た。得られたポリウレタンイミド樹脂を、GPCを用いて測定した結果、ポリスチレン換算で、Mw=55,000、Mn=25,000であった。また、このポリウレタンイミド樹脂は固形分30質量%でメチルエチルケトンに可溶であった。
【0098】
<変性ポリウレタン(PU−1)の合成)
オキシフタル酸二無水物(1.0mol)及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート(0.2mol)、トリエチルアミン(0.01mol)及びヒドロキノン(0.01mol)をγ−カプロラクトン(1500g)中で窒素雰囲気下、80℃で5時間攪拌し、一部エチルメタクリレートが付加したオキシジフタル酸二無水物混合液を得た。
【0099】
次に、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(1.0mol)、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート(1.0mol)及び数平均分子量が2,000のポリテロラメチレングリコール(0.8mol)を1−メチル−2−ピロリドン(1500g)中で窒素雰囲気下、100℃で2時間反応させ、そこに、上記一部エチルメタクリレートが付加したオキシジフタル酸二無水物混合液を加え、さらに80℃で5時間反応させた。
【0100】
次いで、得られた反応液中にベンジルアルコール(0.2mol)を添加し、80℃で2時間攪拌して反応を終了した。得られた溶液を激しく攪拌させた水に加え、生じた沈殿物を濾別し、さらにメタノール洗浄後、真空中60℃で8時間乾燥させ、変性ポリウレタン(PU−1)を得た。得られた変性ポリウレタンのGPCを測定した結果、ポリスチレン換算で、Mw=27,000、Mn=12,500であった。
【0101】
<ラジカル重合性化合物の準備>
ラジカル重合性化合物として、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート(東亞合成社製、商品名:アロニックスM215)、及び、ウレタンアクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名:UA−11)を準備した。
【0102】
<ラジカル重合開始剤の準備>
ラジカル重合開始剤として、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(日本油脂社(株)製、商品名:パーヘキサTMH)を準備した。
【0103】
<導電粒子の作製>
ポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に厚み0.02μmの金層を設けた、平均粒径が5μmで比重が2.5の導電性粒子を作製した。
【0104】
(実施例1)
上記で得られた変性ポリウレタン(PU−1)をメチルエチルケトンに固形分濃度40%となるように溶解させた溶液125質量部(固形分50質量部)と、熱可塑性樹脂として上記で得られたポリウレタンイミド(PUI−1)をメチルエチルケトンに固形分濃度30%となるように溶解させた溶液167質量部(固形分50質量部)とを混合した。次いで、この溶液に、重合開始剤として1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(日本油脂(株)製、商品名:パーヘキサTMH)を固形分として4質量部配合し、更に上記導電粒子を1.5体積%(接着剤組成物の全体積基準)配合分散させて接着剤組成物を得た。
【0105】
得られた接着剤組成物を、厚み80μmのフッ素樹脂フィルム上に塗工装置を用いて塗布し、70℃、10分の熱風乾燥によって乾燥させ、接着剤組成物からなる接着剤層の厚みが15μmのフィルム状回路接続材料を得た。
【0106】
(実施例2)
変性ポリウレタン(PU−1)及びイソシアヌル酸EO変性ジアクリレート(東亞合成社製、商品名:アロニックスM215)を2:1の割合(質量比)でメチルエチルケトンに固形分濃度40%となるように溶解させた溶液150質量部(固形分60質量部)と、熱可塑性樹脂としてポリウレタンイミド(PUI−1)をメチルエチルケトンに固形分濃度30%となるように溶解させた溶液133質量部(固形分40質量部)とを混合した。次いで、この溶液に、重合開始剤として1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(日本油脂(株)製、商品名:パーヘキサTMH)を固形分として4質量部配合し、更に上記導電粒子を1.5体積%(接着剤組成物の全体積基準)配合分散させて接着剤組成物を得た。この接着剤組成物を用い、実施例1と同様の工程を経てフィルム状回路接続材料を得た。
【0107】
(実施例3)
変性ポリウレタン(PU−1)及びウレタンアクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名:UA−511)を2:1の割合(質量比)でメチルエチルケトンに固形分濃度40%となるように溶解させた溶液150質量部(固形分60質量部)と、熱可塑性樹脂としてポリウレタンイミド(PUI−1)をメチルエチルケトンに固形分濃度30%となるように溶解させた溶液133質量部(固形分40質量部)とを混合した。次いで、この溶液に、重合開始剤として1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(日本油脂(株)製、商品名:パーヘキサTMH)を固形分として4質量部配合し、更に上記導電粒子を1.5体積%(接着剤組成物の全体積基準)配合分散させて接着剤組成物を得た。この接着剤組成物を用い、実施例1と同様の工程を経てフィルム状回路接続材料を得た。
【0108】
(実施例4〜7)
ポリウレタンイミド樹脂(PUI−1)、変性ポリウレタン(PU−1)及び他のラジカル重合性化合物(アロニックスM215及びUA−511)をそれぞれ下記の表1に示す割合(固形分)で配合した以外は実施例1と同様の工程を経て、接着剤組成物及びそれを用いたフィルム状回路接続材料を得た。なお、変性ポリウレタン(PU−1)及び他のラジカル重合性化合物は、下記表1に示す割合にて実施例1〜3と同様にメチルエチルケトンに固形分濃度40%となるように溶解させた溶液として用いた。また、ポリウレタンイミド(PUI−1)は、メチルエチルケトンに固形分濃度30%となるように溶解させた溶液として用いた。
【0109】
(比較例1)
変性ポリウレタン(PU−1)をメチルエチルケトンに固形分濃度40%となるように溶解させた溶液250質量部(固形分100質量部)に、重合開始剤として1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(日本油脂(株)製、商品名:パーヘキサTMH)を固形分として4質量部配合し、更に上記導電粒子を1.5体積%(接着剤組成物の全体積基準)配合分散させて接着剤組成物を得た。この接着剤組成物を用い、実施例1と同様の工程を経てフィルム状回路接続材料を得た。
【0110】
(比較例2)
変性ポリウレタン(PU−1)のうちの20質量部をイソシアヌル酸EO変性ジアクリレート(東亞合成社製、商品名:アロニックスM215)に換えた以外は実施例1と同様の工程を経て、接着剤組成物及びそれを用いたフィルム状回路接続材料を得た。
【0111】
上記の各実施例及び各比較例の接着剤組成物を得るための各成分の配合割合を、表1に示す。なお、表1中の数値は質量部(固形分)を示す。
【0112】
【表1】

【0113】
(回路部材の接続構造の作製)
上記で得られたフィルム状回路接続材料を用いて、40μmのポリイミドフィルム上にライン幅25μm、ピッチ50μm及び厚み10μmの銅回路500本を蒸着により形成した2層フレキシブル回路板(FPC)と、0.2μmの酸化インジウム(ITO)の薄層を形成したガラス(厚み1.1mm及び表面抵抗20Ω/□)とを、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング(株)製)を用いて160℃、3MPaの条件で10秒間の加熱加圧を行って幅2mmにわたり接続し、接続体(回路部材の接続構造)を作製した。
【0114】
(接着強度の測定)
得られた接続体における回路部材間の接着強度を、JIS−Z0237に準じて90度剥離法で測定し、評価した。ここで、接着強度の測定装置は東洋ボールドウィン(株)製のテンシロンUTM−4(剥離速度50mm/min、25℃)を使用した。なお、接着強度は、接続直後、及び、80℃、95%RHで240時間耐湿試験(高温高湿試験)を行った後に測定した。得られた結果を表2に示す。
【0115】
【表2】

【0116】
表2に示した結果から明らかなように、実施例1〜6のフィルム状回路接続材料を用いた場合、十分に低温(160℃)且つ短時間(10秒間)の条件で接続した場合でも、接続直後及び耐湿試験後の接着力は、ばらつきの少ない値を示し、広域の加熱温度に対して良好な接着特性が得られることが確認された。これに対して、比較例1及び2のフィルム状回路接続材料を用いた場合、接続直後及び耐湿試験後の接着力が実施例1〜6よりも大幅に低下することが確認された。即ち、本発明の変性ウレタン樹脂及びポリウレタンイミドを含む接着剤組成物は、低温速硬化で接着力に優れ、回路接続又は半導体実装用接着剤として好適であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明のフィルム状接着剤の一実施形態を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0118】
1…フィルム状接着剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(I)で表されるポリウレタンイミドと、
(B)下記一般式(II)で表される変性ポリウレタンと、
(C)ラジカル重合開始剤と、
を含有する接着剤組成物。
【化1】



[式中、Rは芳香族環又は脂肪族環を含む2価の有機基を示し、Rは重量平均分子量100〜10,000の2価の有機基を示し、Rは4個以上の炭素原子を含む4価の有機基を示し、n及びmは各々独立に1〜100の整数を示す。]
【化2】


[式中、Xは芳香族環又は脂肪族環を含む2価の有機基を示し、Yは重量平均分子量100〜10,000の2価の有機基を示し、Zは4個以上の炭素原子を含む2〜4価の有機基を示し、Rは反応性を有する有機基を示し、pは0〜2の整数を示し、q及びrは各々独立に1〜100の整数を示す。]
【請求項2】
前記一般式(I)中、Rの10〜100mol%が下記一般式(III)で表される構造を有する2価の有機基であり、Rの10〜100mol%が下記一般式(IV)で表される繰り返し単位からなる重量平均分子量100〜10,000の2価の有機基である請求項1記載の接着剤組成物。
【化3】


【化4】

【請求項3】
前記一般式(II)中、−Z(R)−が、下記一般式(V)で表される構造を10mol%以上含むものである、請求項1又は2記載の接着剤組成物。
【化5】


[式中、Aは4個以上の炭素原子を含む4価の有機基を示し、Rは反応性を有する有機基を示す。]
【請求項4】
前記(A)ポリウレタンイミド100質量部に対して、前記(B)変性ポリウレタン10〜250質量部及び前記(C)ラジカル重合開始剤0.05〜30質量部を含有してなる請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
(D)ラジカル重合性化合物を更に含有する請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
(E)導電粒子を更に含有する請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記(E)導電粒子の含有量が、接着剤組成物の固形分の全体積を基準として0.1〜30体積%である請求項6記載の接着剤組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の接着剤組成物をフィルム状に形成してなるフィルム状接着剤。
【請求項9】
請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の接着剤組成物を含有し、回路電極を有する回路部材同士を、それぞれの回路部材が有する回路電極同士が電気的に接続されるように接着するために用いられる回路接続材料。


【図1】
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【公開番号】特開2008−45099(P2008−45099A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305487(P2006−305487)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】