説明

接着剤組成物およびこれを用いてなるフレキシブルプリント配線基板

【課題】各種プラスチックフィルムへの接着性や、銅、アルミ、ステンレスなどの金属への接着性、ガラスへの接着性、耐熱性、耐湿性、シェルフライフ、耐マイグレーション性等に優れたノンハロ難燃性接着剤を得る。
【解決手段】ポリエステル(A)、エポキシ化合物(B)、硬化触媒(C)を含んでなる接着剤組成物において、ポリエステル(A)が式(I)および式(II)で表される成分を共重合成分として含有することを特徴とする接着剤組成物とこれを用いてなるフレキシブルプリント配線基板に関する。
式(I);
【化1】


(式中、Rは−(CH2nCOOH、或いはRは−(CH2nOHであり、nは1≦n≦20を示す。)
式(II);
【化2】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は難燃性、耐半田耐熱性、耐マイグレーション性、接着性に優れた接着剤組成物に関する。該接着剤組成物はフレキシブルプリント配線基板の用途に用いると卓越した効果を奏する。
【背景技術】
【0002】
近年、接着剤は様々な分野で使用されているが、使用目的の多様化により各種プラスチックフィルムへの接着性や、銅、アルミ、ステンレスなどの金属への接着性、ガラスへの接着性、耐熱性、耐湿性、シェルフライフ等において、更なる高性能化が求められている。例えば、回路基板用接着剤として、エポキシ/アクリルブタジエン系接着剤や、エポキシ/ポリビニルブチラール系接着剤等が使用されている。フレキシブルプリント配線基板をはじめとする回路基板用接着剤として用いられる場合、ハンダ耐熱性や、高温雰囲気下での接着性が求められる。
【0003】
一方、構造用プラスチックスとしてポリエステル系の樹脂は、その共重合体による樹脂特性の設計範囲が大きい点や、リサイクル性から、多種多様な分野で採用されている。
【0004】
特に最近の鉛フリーハンダに対応する為、より高度な耐熱性を有する接着剤が求められている。また、接着剤を被着体に塗布・乾燥した後、回路基板を作成するまでの保管に際して、長い可使時間が必要とされる。従来のエポキシ/アクリルブタジエン系接着剤や、エポキシ/ポリビニルブチラール系接着剤では、可使時間が短く、また、低温にて保管しなければならず、また、金属やプラスチックフィルムの接着性も十分ではなかった。またこれら従来の接着剤では、銅の耐マイグレーション性が不十分であるため、回路のショートや銅の変色等が生じてしまい十分に満足できる接着剤が得られていない。また、構造用プラスチックスとしてポリエステル系の樹脂は、その共重合体による樹脂特性の設計範囲が大きい点や、リサイクル性から、多種多様な分野で採用されている。
【0005】
これら樹脂組成物は本質的に可燃性である為、工業用材料として使用するには一般の化学的、物理的諸特性をバランスよく満足する以外に、火炎に対する安全性、すなわち難燃性を要求される場合が多い。特にフレキシブルプリント配線基板をはじめとする家電用途で使用される場合の多くは、「UL規格でV−0」等の高度な難燃性を要求される。一般的に、樹脂に難燃性を付与する方法としては、難燃剤としてハロゲン系有機化合物、さらに難燃助剤としてアンチモン化合物を樹脂に添加する方法が挙げられる。しかしながら、この方法には燃焼時に腐食性のハロゲンガスが発生するという指摘もある。そこで近年、これらハロゲン系難燃剤の環境への悪影響を排除する為、ハロゲンを全く含まない、即ちハロゲンフリーの難燃剤を用いることが強く望まれるようになった。
【0006】
ハロゲンフリーの難燃処方については、たとえばリン系難燃剤や窒素系難燃剤の配合やリン系化合物への分子内への導入等が知られている(例えば特許文献1参照)。しかし、これら添加剤で難燃性を付与するには、樹脂に大量に配合しなければならず、接着性、耐熱性、耐ハンダ性等の樹脂特性が低下するだけでなく、難燃剤がブリードアウトする問題も生じる。
【特許文献1】特開2001−2931号公報
【特許文献2】特開2002−332332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は接着剤に関するものであり、その目的として各種プラスチックフィルムへの接着性や、銅、アルミ、ステンレスなどの金属への接着性、ガラスへの接着性、耐熱性、耐湿性、シェルフライフ、耐マイグレーション性等に優れたノンハロ難燃性接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、各種プラスチックフィルムへの接着性や、銅、アルミ、ステンレスなどの金属への接着性、ガラスへの接着性、耐熱性、耐湿性、シェルフライフ、耐マイグレーション性等に優れた接着剤を得るべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に達した。すなわち、本発明は、ポリエステル(A)、エポキシ化合物(B)、硬化触媒(C)を含んでなる接着剤組成物において、ポリエステル(A)が式(I)および式(II)で表される成分を共重合成分として含有することを特徴とする接着剤組成物とそれを用いたフレキシブルプリント配線基板に関する。
式(I);
【化1】

(式中、Rは−(CH2nCOOH、或いはRは−(CH2nOHであり、nは1≦n≦20を示す。)
式(II);
【化2】

【発明の効果】
【0009】
本発明は、各種プラスチックフィルムへの接着性や、銅、アルミ、ステンレスなどの金属への接着性、ガラスへの接着性、耐熱性、耐湿性、シェルフライフ、耐マイグレーション性等に優れたノンハロ難燃性接着剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の接着剤組成物は、少なくともポリエステル(A)、エポキシ化合物(B)、硬化触媒(C)を含む。
本発明の接着剤組成物の構成成分として用いられるポリエステル(A)は式(I)で表される成分を酸成分および/またはアルコール成分中に共重合することで得られる。その際の共重合量は全酸成分と全アルコール成分をそれぞれ100モル%としたときに、3モル%以上であることが好ましい。
またポリエステル(A)は、式(II)で表される成分を共重合することが望ましい。その共重合量は酸成分中に5モル%以上含まれることが望ましい。さらに、ポリエステル(A)の数平均分子量は5000〜50000であることが好ましい。
ポリエステル(A)において式(I)で表される成分が、酸成分および/またはアルコール成分中に3モル%より少ない場合は、エポキシ化合物(B)と反応するポリエステル(A)中の官能基数が少なくなるため、十分な架橋密度が得られず、十分な耐熱性が得られないことがある。十分な架橋密度を得るために好ましくは6モル%以上である。また、式(II)で表される化合物を酸成分中に5モル%より少ない場合には「UL規格でV−0」等の高度な難燃性を満足させる十分な難燃性が得られないおそれがある。十分な難燃性を得るためには好ましくは10モル%以上、より好ましくは15モル%以上である。また、ポリエステル(A)の数平均分子量が5000より低いポリエステルであると、接着剤としての機械特性が不足し十分な接着性、耐熱性が得られないことがある。数平均分子量が50000より高いと、本接着剤を溶剤に溶解して使用する場合に、溶液粘度が高くなりすぎて、実使用できない等の問題が生じることがある。
【0011】
ポリエステル(A)に式(II)の成分を共重合するための方法としては従来知られた方法を用いることが出来る。例えば式(II)の成分をそのまま利用してエステル化(交換)反応を行って重縮合しても良いし、式(II)成分のエチレングリコール等のエステル化物を利用しても良いし、イタコン酸と9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドを別々に反応系に仕込み、エステル化(交換)反応中に同時にマイケル付加反応を行ってもよい。
【0012】
ポリエステル(A)の酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5−ナフタル酸、2,6−ナフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族二塩基酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂肪族や脂環族二塩基酸、無水トリメリット酸等の芳香族三塩基酸等が挙げられる。
【0013】
アルコール成分としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルヒドロキシピバリン酸エステル、ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサスド付加物、1,9−ノナンジオール、2−メチルオクタンジオール、1,10−ドデカンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリシクロデカンジメタノール等が挙げられる。
【0014】
式(I)で表される化合物としては、ビス(2−カルボキシメチル)イソシアヌレート、ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、ビス(2−ヒドロキシメチル)イソシアヌレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0015】
本発明において用いられるポリエステル樹脂(A)の組成を決定する方法としては例えばポリエステル樹脂をクロロホルムD等の溶媒に溶解して測定する1H−NMRや13C−NMR、ポリエステル樹脂のメタノリシス後に測定するガスクロマトグラフィーによる定量等が挙げられる。これらのうち、1H−NMRが簡便であり好ましい。
【0016】
本発明の接着剤組成物に用いるエポキシ化合物(B)としては、具体的には、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、ブロム化ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテルタイプ、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等のグリシジルエステルタイプ、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミン、あるいは3,4−エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の脂環族あるいは脂肪族エポキサイドが挙げられる。
【0017】
本発明の接着剤組成物に用いるエポキシ硬化触媒(C)としては、イミダゾール系化合物や3級アミン類、トリフェニルフォスフィン、カチオン系触媒が挙げられる、それらのうち、アミン系触媒がライフ等の観点から好ましい。
【0018】
また、必要に応じ、シランカッブリング剤、レベリング剤等の添加剤やシリカ等の配合剤、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ホスファゼン化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等のノンハロ系難燃剤を配合することができる。
【0019】
本発明の接着剤組成物はフレキシブルプリント配線基板用途に用いることが好ましい。例えばポリイミド等の基材と銅箔を貼り合わせる接着剤、エッチング処理により回路加工されたフレキシブルプリント配線基板に回路面にポリイミドフィルム等のカバーフィルムを貼り合わせる接着剤として好適である。
【実施例】
【0020】
以下、実施例により本発明を具体的に例示する。実施例中に単に部とあるのは重量部を示す。
【0021】
ポリエステル(A)の合成例1
温度計、撹拌機、還流式冷却管および蒸留管を具備した反応容器にテレフタル酸41.5部、イソフタル酸41.5部、イタコン酸41.6部、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド64.8部、エチレングリコール62.0部、3メチル−1,5ペンタンジオール118.0部、n−トリブチルアミン0.19部、酸化防止剤IRGANOX1330(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製)0.3部を仕込み、4時間かけて230℃まで徐々に上昇し、留出する水を系外に除きつつエステル化反応を行った。続いて200℃まで冷却を行い、ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート49.1部、チタンテトラブトキシド0.45部を仕込み、2時間かけて220℃まで徐々に上昇し、留出する水を系外に除きつつエステル化反応を行った。続いてこれを30分かけて10mmHgまで減圧初期重合を行うと共に温度を240℃まで昇温し、更に1mmHg以下で40分間後期重合を行いポリエステルを得た。この様にして得られたポリエステルの特性値を表1に示した。
各測定評価項目は以下の方法に従った。
【0022】
(1)還元粘度の測定
ポリエステル0.1gをフェノール/テトラクロロエタン(重量比6/4)混合溶媒25ccに溶かし、ウベローデ粘度計を用いて30℃にて測定した。
単位をdl/gで示す。
(2)ガラス転移温度の測定
示差走査熱量計(DSC)を用いて20℃/分の昇温速度で測定した。
(3)酸価の測定
ポリエステル0.2gを20mlのクロロホルムに溶解し、0.1NのKOHエタノール溶液で滴定し、樹脂トン当たりの当量(当量/t)を求めた。
【0023】
ポリエステル(A)合成例2
温度計、撹拌機、還流式冷却管および蒸留管を具備した反応容器にテレフタル酸54.8部、イソフタル酸部54.8部、ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート24.6部、エチレングリコール26.8部、3メチル−1,5ペンタンジオール118.9部、チタンテトラブトキシド0.1部を仕込み、4時間かけて230℃まで徐々に上昇し、留出する水を系外に除きつつエステル化反応を行った。続いて、200℃まで冷却を行い、式(II)をエチレングリコールでエステル化した溶液(式(II)/エチレングリコール=50/50固形重量比(三光株式会社製GHM))173.0部を仕込み、220℃にて5分間撹拌を行った後、30分かけて10mmHgまで減圧初期重合を行うと共に温度を240℃まで昇温し、更に1mmHg以下で40分間後期重合を行いポリエステルを得たこの様にして得られたポリエステルの特性値を表1に示した。
【0024】
ポリエステル(A)の合成例3
温度計、撹拌機、還流式冷却管および蒸留管を具備した反応容器にテレフタル酸16.6部、イソフタル酸66.4部、イタコン酸41.6部、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド64.8部、エチレングリコール62.0部、1,9−ノナンジオール160.0部、n−トリブチルアミン0.19部、酸化防止剤IRGANOX1330(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製)0.3部を仕込み、4時間かけて230℃まで徐々に上昇し、留出する水を系外に除きつつエステル化反応を行った。続いて200℃まで冷却を行い、ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート49.1部、チタンテトラブトキシド0.45部、フェノチアジン0.1部を仕込み、2時間かけて220℃まで徐々に上昇し、留出する水を系外に除きつつエステル化反応を行った。続いてこれを30分かけて10mmHgまで減圧初期重合を行うと共に温度を240℃まで昇温し、更に1mmHg以下で40分間後期重合を行った。常圧に戻した後に、続いて、窒素気流化において200℃まで冷却し、無水トリメリット酸1.92部を添加し、200℃にて30分間撹拌を行い、ポリエステル末端の酸変性を行った。この様にして得られたポリエステルの特性値を表1に示した。
【0025】
ポリエステル(A)比較合成例1
温度計、撹拌機、還流式冷却管および蒸留管を具備した反応容器にテレフタル酸49.8、イソフタル酸部93.0部、ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート38.2部、エチレングリコール62.0部、3メチル−1,5ペンタンジオール118.0部、チタンテトラブトキシド0.1部を仕込み、4時間かけて230℃まで徐々に上昇し、留出する水を系外に除きつつエステル化反応を行った。続いて30分かけて10mmHgまで減圧初期重合を行うと共に温度を240℃まで昇温し、更に1mmHg以下で40分間後期重合を行いポリエステルを得た。この様にして得られたポリエステルの特性値を表1に示した。
【0026】
ポリエステル(A)比較合成例2
温度計、撹拌機、還流式冷却管および蒸留管を具備した反応容器にテレフタル酸56.4部、イソフタル酸56.4部、イタコン酸41.6部、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド64.8部、エチレングリコール62.0部、3メチル−1,5ペンタンジオール118.0部、n−トリブチルアミン0.19部、酸化防止剤IRGANOX1330(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製)0.3部を仕込み、4時間かけて230℃まで徐々に上昇し、留出する水を系外に除きつつエステル化反応を行った。続いて200℃まで冷却を行い、チタンテトラブトキシド0.45部を仕込み、220℃にて5分撹拌後、30分かけて10mmHgまで減圧初期重合を行うと共に温度を240℃まで昇温し、更に1mmHg以下で40分間後期重合を行いポリエステルを得た。この様にして得られたポリエステルの特性値を表1に示した。
【0027】
実施例1
パターン化された銅貼り積層板の作成方法
ポリエステル(A)合成例1で得られたポリエステルを100部、及びエポキシ化合物(B)として、大日本インキ化学工業(株)社製HP7200H(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)を16部をメチルエチルケトンを用いて固形分濃度が30%となるように溶解した。続いて水酸化アルミニウム30部(昭和電工(株)社製ハイジライトH−42M)を添加し、分散を行った。この溶液に、硬化触媒(C)として、四国化成工業(株)社製キュアゾール1B2PZを0.3部加えて十分に撹拌を行い目的とする接着剤溶液を得た。
【0028】
上記接着剤溶液を25μmのポリイミドフィルムに、乾燥後の厚みが30μmとなる様に塗布し、120℃で5分乾燥した。この様にして得られた接着性フィルムを30μmの圧延銅箔と貼り合わせる際、圧延銅箔の酸処理面が接着剤と接する様にして、温度140℃、圧力3kg/cm2、ロール速度5m/分の条件にてロールラミネートによる貼り合わせを行った。得られた接着サンプルを150℃にて間熱処理して硬化させた。この様にして銅貼り積層板を得た。この銅貼り積層板を常法により銅箔面にフォトレジスト塗布、パターン露光、現像、銅箔パターンエッチング、フォトレジスト剥離行程をへて、銅線間が0.1mmとなる様にパターン化された銅貼り積層板を作成した。
【0029】
フレキシブルプリント配線板カバーフィルム作成方法
ポリエステル(A)合成例1で得られたポリエステルを100部、及びエポキシ化合物(B)として、大日本インキ化学工業(株)社製HP7200H(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)を16部をメチルエチルケトンを用いて固形分濃度が30%となるように溶解した。続いてポリリン酸メラム20部(日産化学(株)社製PMP−200)を添加し、分散を行った。
【0030】
この溶液に、硬化触媒(C)として、サンアプロ(株)社製UCAT−5002を0.3部加えて十分に撹拌を行い目的とする接着剤溶液を得た。上記接着剤溶液を25μmのポリイミドフィルムに、乾燥後の厚みが30μmとなる様に塗布し、120℃で5乾燥し、フレキシブルプリント配線板カバーフィルムを得た。
【0031】
フレキシブルプリント配線板作成方法
上記の作成方法により得られたパターン化された銅貼り積層板およびフレキシブルプリント配線板カバーフィルムを温度120℃プレス圧力5kg/cm2にて30秒間真空プレスにより貼り合わせを行った。このサンプルを150℃にて4時間の熱処理を行い目的のフレキシブルプリント配線板を得た。この様にして得られたフレキシブルプリント配線板の評価を下記の通り行った。
【0032】
耐マイグレーション試験
(条件)温度85℃、湿度85%、直流100V、1000時間
(判定)○:短絡、変色なし
×:短絡もしくは変色を起こす
【0033】
耐ハンダ性試験
(条件)
常態:サンプルを120℃にて30分乾燥した後、300℃のハンダ浴にカバーフィ ルム面を上にして30秒浸漬し膨れの有無を観察した。
加湿:サンプルを40℃、80%加湿下にて2日間放置後、260℃のハンダ浴にカ バーフィルム面を上にして30秒浮かべて、膨れの有無を観察した。
(判定) ○:全く異常なし
×:全面的な膨れ発生
【0034】
剥離強度試験
(条件)
25℃及び100℃の雰囲気下において、サンプル幅1cm、引張速度100mm/minでパターン化された銅貼り積層板およびカバーフィルム間の90゜剥離試験を行った。
【0035】
シェルフライフ試験
(条件)
上記により得られたフレキシブルプリント配線板カバーフィルムを20℃雰囲気中に6ヶ月放置し、フレキシブルプリント配線板カバーフィルムを上記のパターン化された銅貼り積層板と上記方法により貼り合わせ、同様に耐マイグレーション、耐ハンダ性、剥離強度の試験を同様に行った。
(判定)
初期の評価結果と20℃6ヶ月放置後の評価結果とを比較し、
○:性能の低下なし
×:性能が低下した
この試験結果を表4示す。
【0036】
難燃性試験
(条件)
25μmのポリイミドフィルムに、乾燥後の厚みが30μmとなる様に接着剤組成物を塗布し、120℃で5分乾燥した後、サンプルを150℃にて4時間熱処理して硬化させたものを作成した。これを米国のアンダーライターズ・ラボラトリーズ(UL)で規格化されたサブジェクト94号(UL94)に基づき、長さ125mm×幅12.5mmの試験片を用いて評価した。
(判定)○:難燃性クラスV−0で合格したもの
×:合格しなかったもの
【0037】
実施例2
合成例2で得られたポリエステル樹脂を表2示す様に、実施例1と同様に配合し、サンプルを作成した。得られたサンプルの各評価を実施例1と同様に行った。この試験結果を表4に示す。
【0038】
実施例3
合成例3で得られたポリエステル樹脂を表2に示す様に、実施例1と同様に配合し、サンプルを作成した。得られたサンプルの各評価を実施例1と同様に行った。この試験結果を表4に示す。
【0039】
実施例4
合成例1で得られたポリエステル樹脂を表2に示す様に、実施例1と同様に配合し、サンプルを作成した。得られたサンプルの各評価を実施例1と同様に行った。この試験結果を表4に示す。
【0040】
実施例5
合成例2で得られたポリエステル樹脂を表2に示す様に、実施例1と同様に配合し、サンプルを作成した。得られたサンプルの各評価を実施例1と同様に行った。この試験結果を表4に示す。
【0041】
実施例6
合成例3で得られたポリエステル樹脂を表2に示す様に、実施例1と同様に配合し、サンプルを作成した。得られたサンプルの各評価を実施例1と同様に行った。この試験結果を表4に示す。
【0042】
実施例7
合成例3で得られたポリエステル樹脂を表2に示す様に、実施例1と同様に配合し、サンプルを作成した。得られたサンプルの各評価を実施例1と同様に行った。この試験結果を表4に示す。
【0043】
比較例1
比較合成例1で得られたポリエステル樹脂を表3に示す様に、実施例1と同様に配合し、サンプルを作成した。得られたサンプルの各評価を実施例1と同様に行った。この試験結果を表5に示す。
比較例1はポリエステル(A)に比較合成例1のポリエステルを用いており、このポリエステルは式(II)で表される化合物を含有しておらず、難燃性に劣る。
【0044】
比較例2
比較合成例2で得られたポリエステル樹脂を表3に示す様に、実施例1と同様に配合し、サンプルを作成した。得られたサンプルの各評価を実施例1と同様に行った。この試験結果を表5に示す。
比較例2はポリエステル(A)に比較合成例2のポリエステルを用いており、このポリエステルは式(I)で表される化合物を含有しておらず、架橋性が不足している為、耐マイグレーション性、接着性、耐ハンダ性に劣る。
【0045】
比較例3
日本ゼオン(株)社製Nipol1072J 25部、日本化薬(株)社製BREN−S 20部、東都化成(株)社製YDB400 20部、東都化成(株)社製YD014 30部、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物 5部、新日本理化(株)社製リカシッドTMTA−C 4部、四国ファインケミカルズ(株)社製C11Z−AZINE 0.5部、四国ファインケミカルズ(株)社製2PHZ−CN 0.5部、水酸化アルミニウム(昭和電工(株)社製ハイジライトH−42M)30部をメチルエチルケトンを用いて固形分濃度が40%となるように溶解し、接着剤溶液を得た。この様にして得られた接着剤溶液を用いて、実施例1と同様に試験を行った。この試験結果を表5に示す。比較例3は従来より一般的に使用されているハロゲン含有エポキシを用いた接着剤組成物であり、本発明の接着剤組成物はノンハロ難燃性でありながら従来のハロゲン系接着剤と同等以上の性能を有する事が伺える。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
YDCN703:東都化成(株)社製 o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂
EXA−4850−1000:大日本インキ化学工業(株)社製エポキシ樹脂
FX−289B:東都化成(株)社製 燐含有エポキシ樹脂
TETRAD−X:三菱瓦斯化学(株)社製 N,N,N’,N’−テトラグリシジルm −キシレンジアミン
UCAT5002:サンアプロ(株)社製 1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウ ンデセン−7のテトラフェニルボレート塩
EH−30:コグニスジャパン(株)社製 2,4,6−トリ(ジメチルアミノメチル) フェノール
MC−640:日産化学(株)社製 メラミンシアヌレート
SP703:四国化成工業(株)社製 燐系難燃剤
CoatOSil1770:β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシ シラン
【0050】
【表4】

【0051】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、各種プラスチックフィルムへの接着性や、銅、アルミ、ステンレスなどの金属への接着性、ガラスへの接着性、耐熱性、耐湿性、シェルフライフ、耐マイグレーション性等に優れたノンハロ難燃性接着剤を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル(A)、エポキシ化合物(B)、硬化触媒(C)を含んでなる接着剤組成物において、ポリエステル(A)が式(I)および式(II)で表される成分を共重合成分として含有することを特徴とする接着剤組成物。
式(I);
【化1】

(式中、Rは−(CH2nCOOH、或いはRは−(CH2nOHであり、nは1≦n≦20を示す。)
式(II);
【化2】

【請求項2】
ポリエステル(A)の式(I)で表される成分が、酸成分および/またはアルコール成分中に3モル%以上含有することを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
ポリエステル(A)の式(II)で表される成分が、酸成分中に5モル%以上含有することを特徴とする請求項1または2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
ポリエステル(A)の数平均分子量が5000〜50000であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項5】
硬化触媒(C)がアミン系触媒であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の接着剤組成物を用いてプラスチックフィルム層と金属層を貼り合わせた層構成を有するフレキシブルプリント配線基板。

【公開番号】特開2007−70481(P2007−70481A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259402(P2005−259402)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】