説明

接着剤組成物及び回路部材の接続構造体

【課題】ITOやIZOからなる接続端子の溶出を抑制し、優れた接着強度が得られ、信頼性試験後でも安定した性能を維持できる接着剤組成物を提供する。
【解決手段】第一の接続端子32を有する第一の回路部材30と第二の接続端子42を有する第二の回路部材40とを接続する接着剤組成物であり、第一の回路部材及び/又は第二の回路部材はTgが200℃以下の熱可塑性樹脂を含む基材から構成され、第一の接続端子及び/又は第二の接続端子はITO及び/又はIZOから構成され、接着剤組成物は(a)熱可塑性樹脂、(b)ラジカル重合性化合物、(c)ラジカル重合開始剤、(d)リン酸基を有するビニル化合物を含有し、(c)ラジカル重合開始剤はパーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイドの1種以上を含有する、接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物及び回路部材の接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子及び液晶表示素子において、素子中の種々の部材を結合させる目的で従来から種々の接着剤が使用されている。接着剤に対する要求は、接着性をはじめとして、耐熱性、高温高湿状態における信頼性等多岐に渡る。また、接着に使用される被着体には、プリント配線板やポリイミド等の有機基材をはじめ、SiN、SiO等の無機基材や、銅、アルミニウム等の金属、ITO(インジウムとスズの複合酸化物)、IZO(酸化インジウムと酸化亜鉛の複合物)等の多種多様な表面状態を有する基材が用いられている。また、最近、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリカーボネート(PC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の耐熱性の低い有機基材上に半導体素子や液晶表示素子及び配線が形成されるようにもなっている。そのため、これらの有機基材上に形成される配線等の材料としては、低温製膜が可能であり、エッチングが容易なためパターン加工性に優れる非晶質構造のITOやIZOが用いられるようになっている。
【0003】
従来から、上記半導体素子や液晶表示素子用の接着剤としては、高接着性でかつ高信頼性を示すエポキシ樹脂を用いた熱硬化性樹脂が用いられてきた(例えば、特許文献1参照)。樹脂の構成成分としては、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂と反応性を有するフェノール樹脂等の硬化剤、エポキシ樹脂と硬化剤の反応を促進する熱潜在性触媒が一般に用いられている。熱潜在性触媒は、室温等の貯蔵温度では反応せず、加熱の際に高い反応性を示す物質であって、硬化温度及び硬化速度を決定する重要な因子となっており、接着剤の室温での貯蔵安定性と加熱時の硬化速度の観点から種々の化合物が用いられてきた。実際の工程では、170〜250℃の温度で1〜3時間の硬化条件にて接着剤を硬化することにより、所望の接着を得ていた。
【0004】
しかしながら、PET、PC、PEN等の耐熱性の低い有機基材上に半導体素子や液晶表示素子及び配線が形成される場合、硬化時の加熱によって、有機基材及び周辺部材に悪影響を及ぼす恐れが出てきた。そのため、より低温硬化での接着が要求されている。
【0005】
このような中、最近、アクリレート誘導体やメタアクリレート誘導体等のラジカル重合性化合物とラジカル重合開始剤である過酸化物を併用した、ラジカル硬化型接着剤が注目されている。ラジカル硬化は、反応活性種であるラジカルが反応性に富むため、低温で且つ短時間硬化が可能である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−113480号公報
【特許文献2】国際公開第98/44067号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、非晶性のITO、IZOはエッチングレートが高いため、エッチング力の弱い弱酸等を用いてエッチングすることが可能である。しかしながら、接着剤の成分にラジカル重合開始剤として有機過酸化物を用いた場合、有機過酸化物の分解によって酸成分が生成する場合がある。そのため、生成した酸によって、非晶質構造のITOやIZOが容易に腐食(溶出)することが問題となっている。
【0008】
そこで、本発明は、非晶質構造のITOやIZOを接続端子として有する回路部材に対して、接続端子の溶出を抑制し、優れた接着強度を得ることができ、且つ長時間の信頼性試験(高温高湿試験)後においても安定した性能(接着強度及び接続抵抗)を維持することができる接着剤組成物及びそれを用いた回路部材の接続構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、主面上に第一の接続端子を有する第一の回路部材と、主面上に第二の接続端子を有する第二の回路部材とを接続するための接着剤組成物であって、上記第一の回路部材及び/又は上記第二の回路部材は、ガラス転移温度が200℃以下の熱可塑性樹脂を含む基材から構成され、上記第一の接続端子及び/又は上記第二の接続端子は、ITO及び/又はIZOから構成され、上記接着剤組成物は、(a)熱可塑性樹脂、(b)ラジカル重合性化合物、(c)ラジカル重合開始剤、及び、(d)リン酸基を有するビニル化合物を含有し、上記(c)ラジカル重合開始剤は、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、下記一般式(A)で表される化合物及び下記一般式(B)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、接着剤組成物を提供する。
【化1】



[式(A)中、Rは炭素数1〜12のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルキレン基を示し、aは1又は2を示す。]
【化2】



[式(B)中、R及びRは各々独立に炭素数1〜12のアルキル基を示す。]
【0010】
上記接着剤組成物は、上述した各成分を含有するとともに、上記(c)ラジカル重合開始剤がパーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、上記一般式(A)で表される化合物及び上記一般式(B)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することによって、接続端子を構成するITO、IZOの溶出を抑制することができ、優れた接着強度を得ることができ、且つ長時間の信頼性試験(高温高湿試験)後においても安定した性能(接着強度及び接続抵抗)を維持することができる。上記接着剤組成物が、上記(c)ラジカル重合開始剤としてパーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、上記一般式(A)で表される化合物及び上記一般式(B)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することによって、酸成分の生成を抑制することができるため、接続端子を構成するITO、IZOの溶出を抑制することができると考えられる。また、本発明の接着剤組成物は、上記(d)リン酸基を有するビニル化合物を含有することにより、特に金属から構成される接続端子を有する回路部材や、ITOやIZOから構成される接続端子を有する回路部材に対する優れた接着強度を得ることができる。更に、上記組成を有する接着剤組成物は、低温で且つ短時間での硬化が可能であり、ガラス転移温度が200℃以下の熱可塑性樹脂を含む基材から構成される回路部材の接着剤として好適に使用することができる。
【0011】
また、本発明の接着剤組成物は、(e)導電性粒子をさらに含有することが好ましい。(e)導電性粒子を含有することにより、接着剤組成物に良好な導電性又は異方導電性を付与することができるため、接着剤組成物を、接続端子(回路電極)を有する回路部材同士の接着用途等に特に好適に使用することが可能となる。また、上記接着剤組成物を介して電気的に接続した端子間の接続抵抗をより十分に低減することができる。
【0012】
本発明はまた、主面上に第一の接続端子を有する第一の回路部材と、主面上に第二の接続端子を有する第二の回路部材と、接続部材と、を備える回路部材の接続構造体であって、上記第一の接続端子及び上記第二の接続端子が対向するように、上記第一の回路部材及び上記第二の回路部材が、請求項1又は2記載の接着剤組成物からなる上記接続部材を介して配置されるとともに、上記第一の接続端子及び上記第二の接続端子が電気的に接続されており、上記第一の回路部材及び/又は上記第二の回路部材が、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート及びポリエチレンナフタレートからなる群より選ばれる少なくとも1種のガラス転移温度が200℃以下の熱可塑性樹脂を含有する基材から構成されており、上記第一の接続端子及び/又は上記第二の接続端子が、ITO及び/又はIZOから構成されている、回路部材の接続構造体を提供する。
【0013】
上記接続構造体は、一対の回路部材の接続に本発明の上記接着剤組成物からなる硬化物(接続部材)が用いられるため、接続端子の腐食を抑制するだけではなく、回路部材間の接着強度を十分に高くすることができるとともに、長時間の信頼性試験(例えば85℃/85%RH放置)後にも安定した性能を維持することができる。なお、接続部材として用いられる本発明の接着剤組成物は、完全硬化(所定硬化条件で達成できる最高度の硬化)している必要はなく、上記特性を生じる限りにおいて部分硬化の状態であってもよい。
【0014】
また、第一の回路部材及び/又は第二の回路部材が、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート及びポリエチレンナフタレートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する基材から構成されている回路部材であることによって、接着剤組成物との濡れ性が向上して接着強度がより向上し、優れた接続信頼性を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、非晶質構造のITOやIZOを接続端子として有する回路部材に対して、接続端子の溶出を抑制し、優れた接着強度を得ることができ、且つ長時間の信頼性試験(高温高湿試験)後においても安定した性能(接着強度及び接続抵抗)を維持することができる接着剤組成物及びそれを用いた回路部材の接続構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】導電性粒子を含有しない本発明の接着剤組成物を用いた、回路部材の接続構造体の一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】図1に示す回路部材の接続構造体を作製する前の、第一の回路部材、第二の回路部材及び接着剤組成物(導電性粒子を含有しない)を示す模式断面図である。
【図3】導電性粒子を含有する本発明の接着剤組成物を用いた、回路部材の接続構造体の一実施形態を示す模式断面図である。
【図4】図3に示す回路部材の接続構造体を作製する前の、第一の回路部材、第二の回路部材及び接着剤組成物(導電性粒子を含有する)を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、本発明において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はそれに対応するメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はそれに対応するメタアクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基又はメタアクリロイル基を意味する。
【0018】
また、本発明において、腐食とは、化学的あるいは電気化学的な反応によって金属回路(接続端子)の少なくとも一部が溶出して失われることを意味する。
【0019】
また、本発明において、重量平均分子量及び数平均分子量とは、下記表1に示す条件に従って、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)より標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した値をいう。
【0020】
【表1】



【0021】
本発明の接着剤組成物は、主面上に第一の接続端子を有する第一の回路部材と、主面上に第二の接続端子を有する第二の回路部材とを接続するための接着剤組成物であって、上記第一の回路部材及び/又は上記第二の回路部材は、ガラス転移温度が200℃以下の熱可塑性樹脂を含む基材から構成され、上記第一の接続端子及び/又は上記第二の接続端子は、ITO及び/又はIZOから構成され、上記接着剤組成物は、(a)熱可塑性樹脂、(b)ラジカル重合性化合物、(c)ラジカル重合開始剤、及び、(d)リン酸基を有するビニル化合物を含有し、上記(c)ラジカル重合開始剤は、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、下記一般式(A)で表される化合物及び下記一般式(B)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とするものである。
【0022】
【化3】



[式(A)中、Rは炭素数1〜12のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルキレン基を示し、aは1又は2を示す。]
【0023】
【化4】



[式(B)中、R及びRは各々独立に炭素数1〜12のアルキル基を示す。]
【0024】
以下、各成分について詳細に説明する。本発明において用いる(a)熱可塑性樹脂は、加熱により粘度の高い液状状態になって外力により自由に変形でき、冷却し外力を取り除くとその形状を保ったままで硬くなり、この過程を繰り返して行える性質を持つ樹脂(高分子)をいう。また、上記の性質を有する反応性官能基を有する樹脂(高分子)も含む。(a)熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、0〜190℃であることが好ましく、20〜170℃であることがより好ましい。
【0025】
このような(a)熱可塑性樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等を用いることができる。これらは単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。さらに、これら熱可塑性樹脂中にはシロキサン結合やフッ素置換基が含まれていてもよい。これらは、混合する樹脂同士が完全に相溶するか、もしくはミクロ相分離が生じて白濁する状態であれば好適に用いることができる。
【0026】
接着剤組成物をフィルム状にして利用する場合、上記熱可塑性樹脂の分子量が大きいほど良好なフィルム形成性が容易に得られ、またフィルム状接着剤組成物としての流動性に影響する溶融粘度を広範囲に設定できる。(a)熱可塑性樹脂の重量平均分子量としては、5,000〜150,000が好ましく、10,000〜80,000が特に好ましい。この重量平均分子量が5,000以上であると、良好なフィルム形成性が得られやすい傾向があり、一方、150,000以下であると、他の成分との良好な相溶性が得られやすい傾向がある。
【0027】
接着剤組成物における(a)熱可塑性樹脂の含有量は、接着剤組成物全量を基準として、5〜80質量%であることが好ましく、15〜70質量%であることがより好ましい。この含有量が5質量%以上であると、接着剤組成物をフィルム状にして利用する場合に特に、良好なフィルム形成性が得られやすい傾向があり、80質量%以下であると、良好な接着剤組成物の流動性が得られやすい傾向がある。
【0028】
(b)ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合開始剤の作用でラジカル重合を生じる化合物をいうが、光や熱等の活性化エネルギーを付与することでそれ自体ラジカルを生じる化合物であってもよい。ラジカル重合性化合物としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、マレイミド基等の活性ラジカルによって重合する官能基を有する化合物を好適に使用可能である。
【0029】
(b)ラジカル重合性化合物として具体的には、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等のオリゴマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性2官能(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性3官能(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンアクリレート、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルのグリシジル基に(メタ)アクリル酸を付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンアクリレート、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルのグリシジル基に(メタ)アクリル酸を付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルのグリシジル基にエチレングリコールやプロピレングリコールを付加させた化合物に(メタ)アクリロイルオキシ基を導入した化合物、下記一般式(C)及び(D)で示される化合物が挙げられる。
【0030】
【化5】



[式(C)中、R及びRは、各々独立に水素原子またはメチル基を示し、b及びcは、各々独立に1〜8の整数を示す。]
【0031】
【化6】



[式(D)中、R及びRは、各々独立に水素原子またはメチル基を示し、d及びeは、各々独立に0〜8の整数を表す。]
【0032】
また、(b)ラジカル重合性化合物としては、単独で30℃に静置した場合にワックス状、ろう状、結晶状、ガラス状、粉状等の流動性が無く固体状態を示すものであっても、特に制限することなく使用できる。このような(b)ラジカル重合性化合物として具体的には、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、N−フェニルマレイミド、N−(o−メチルフェニル)マレイミド、N−(m−メチルフェニル)マレイミド、N−(p−メチルフェニル)−マレイミド、N−(o−メトキシフェニル)マレイミド、N−(m−メトキシフェニル)マレイミド、N−(p−メトキシフェニル)−マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−オクチルマレイミド、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、N−メタクリロキシマレイミド、N−アクリロキシマレイミド、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、N−メタクリロイルオキシコハク酸イミド、N−アクリロイルオキシコハク酸イミド、2−ナフチルメタクリレート、2−ナフチルアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素、2−ポリスチリルエチルメタクリレート、N−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、テトラメチルピペリジルメタクリレート、テトラメチルピペリジルアクリレート、ペンタメチルピペリジルメタクリレート、ペンタメチルピペリジルアクリレート、オクタデシルアクリレート、N−t−ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−(ヒドロシキメチル)アクリルアミド、下記一般式(E)〜(N)で示される化合物が挙げられる。
【0033】
【化7】



[式(E)中、fは、1〜10の整数を示す。]
【0034】
【化8】



【0035】
【化9】



[式(G)中、R及びR10は、各々独立に水素原子またはメチル基を示し、gは、15〜30の整数を示す。]
【0036】
【化10】



[式(H)中、R11及びR12は、各々独立に水素原子またはメチル基を示し、hは、15〜30の整数を示す。]
【0037】
【化11】



[式(I)中、R13は、水素原子またはメチル基を示す。]
【0038】
【化12】



[式(J)中、R14は、水素原子またはメチル基を示し、iは、1〜10の整数を示す。]
【0039】
【化13】



[式(K)中、R15は、水素原子または下記一般式(i)もしくは(ii)で表される有機基を示し、jは、1〜10の整数を示す。]
【化14】



【化15】



【0040】
【化16】



[式(L)中、R16は、水素原子または下記一般式(iii)もしくは(iv)で表される有機基を示し、kは、1〜10の整数を示す。]
【化17】



【化18】



【0041】
【化19】



[式(M)中、R17は、水素原子またはメチル基を示す。]
【0042】
【化20】



[式(N)中、R18は、水素原子またはメチル基を示す。]
【0043】
また、(b)ラジカル重合性化合物に属する化合物である、N−ビニル化合物及びN,N−ジアルキルビニル化合物からなる群より選ばれるN−ビニル系化合物を、これら以外の(b)ラジカル重合性化合物と併用することができる。N−ビニル系化合物の併用により、接着剤組成物の橋かけ率を向上させることができる。
【0044】
N−ビニル系化合物として具体的には、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカプロラクタム、4,4’−ビニリデンビス(N,N−ジメチルアニリン)、N−ビニルアセトアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0045】
なお、後述する(d)リン酸基を有するビニル化合物は、ラジカル重合性化合物として機能するものであるが、本明細書における(b)ラジカル重合性化合物は、(d)リン酸基を有するビニル化合物以外のラジカル重合性化合物を意味するものとする。
【0046】
接着剤組成物における(b)ラジカル重合性化合物の含有量は、(a)熱可塑性樹脂100質量部に対して、50〜250質量部であることが好ましく、60〜150質量部であることがより好ましい。この含有量が50質量部以上であると、硬化後に充分な耐熱性が得られやすい傾向がある。また、250質量部以下であると、接着剤組成物をフィルム状にして使用する場合に、良好なフィルム形成性が得られやすい傾向がある。
【0047】
本発明において用いる(c)ラジカル重合開始剤としては、従来から知られている有機過酸化物やアゾ化合物等、外部からのエネルギーの付与によりラジカルを発生する化合物を用いることができる。(c)ラジカル重合開始剤としては、安定性、反応性、相溶性の観点から、1分間半減期温度が90〜175℃で、かつ分子量が180〜1,000の有機過酸化物が好ましい。1分間半減期温度がこの範囲にあることで、貯蔵安定性に優れ、ラジカル重合性も充分に高く、短時間で硬化できる。
【0048】
(c)ラジカル重合開始剤としては、酸素−酸素結合が分解した際に、アルコキシラジカルを生成する化合物、又はアルコキシラジカルを生成後、速やかにβ開裂反応を起こし炭素ラジカルを生成する化合物、又はアシロキシラジカルを生成後、速やかに、脱炭酸反応を起こし、炭素ラジカルを生成する化合物が好ましい。一方、芳香族化合物が結合するアシル基を有するラジカル重合性開始剤は、酸素−酸素結合が分解した際に、カルボキシルラジカルが、脱炭酸反応を起こしにくい。そのため、酸素ラジカルが水素引き抜き反応を起こし、酸を生成する恐れがある。
【0049】
(c)ラジカル重合開始剤として具体的には、1,1−ジ(t−へキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−へキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ジ(4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)シクロへキシル)プロパン、p−メタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ(2−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−へキシルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキセン−3、ジイソブチロイルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、t−へキシルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシネオヘプタネート、t−へキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサネート、t−ブチルパーオキシラウロネート、t−ブチルパーオキシアセテート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、下記一般式(A)〜(B)で示される化合物等の有機過酸化物が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いる他に、2種以上の化合物を混合して用いても良い。
【0050】
【化21】



[式(A)中、Rは炭素数1〜12のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルキレン基を示し、aは1又は2を示す。]
【0051】
【化22】



[式(B)中、R及びRは各々独立に炭素数1〜12のアルキル基を示す。]
【0052】
また、(c)ラジカル重合開始剤としては、150〜750nmの光照射によってラジカルを発生する化合物を用いることができる。このような化合物としては、例えば、Photoinitiation,Photopolymerization,and Photocuring,J.−P. Fouassier,Hanser Publishers(1995年、p17〜p35)に記載されているα−アセトアミノフェノン誘導体やホスフィンオキサイド誘導体が、光照射に対する感度が高いためより好ましい。これらの化合物は、単独で用いる他に、上記有機過酸化物やアゾ化合物と混合して用いても良い。
【0053】
本発明の接着剤組成物は、上述したラジカル重合開始剤のうち、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、上記一般式(A)で表される化合物及び上記一般式(B)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を、必須のラジカル重合開始剤として含有する必要がある。(c)ラジカル重合開始剤としては、これら必須のラジカル重合開始剤の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、必須のラジカル重合開始剤とそれ以外のラジカル重合開始剤とを組み合わせて用いてもよい。
【0054】
接着剤組成物における(c)ラジカル重合開始剤の含有量は、(a)熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1〜500質量部であることが好ましく、1〜300質量部であることがより好ましい。(c)ラジカル重合開始剤の含有量を0.1質量部以上とすると、接着剤組成物が充分に硬化しやすい傾向があり、また、500質量部以下とした場合には、良好な貯蔵安定性が得られやすい傾向がある。
【0055】
本発明において用いる(d)リン酸基を有するビニル化合物(リン酸基含有ビニル化合物)としては、リン酸基及ビニル基を有する化合物であれば特に制限はないが、ビニル基としてラジカル重合性に優れる(メタ)アクリロイル基を分子内に少なくとも一つ以上有するリン酸(メタ)アクリレート化合物がより好ましい。このような化合物としては、下記一般式(O)〜(Q)で示される化合物が挙げられる。
【0056】
【化23】



[式(O)中、R19は、(メタ)アクリロイル基を示し、R20は水素原子またはメチル基を示し、l及びmは、各々独立に1〜8の整数を示す。なお、式中、R19同士、R20同士、l同士及びm同士はそれぞれ同一でも異なっても良い。]
【0057】
【化24】



[式(P)中、R21は、(メタ)アクリロイル基を示し、n及びoは、各々独立に1〜8の整数を示す。なお、式中、R21同士、n同士及びo同士はそれぞれ同一でも異なっても良い。]
【0058】
【化25】



[式(Q)中、R22は、(メタ)アクリロイル基を示し、R23は、水素原子又はメチル基を示し、p及びqは、各々独立に1〜8の整数を示す。なお、式中、R22同士、R23同士、p同士及びq同士はそれぞれ同一でも異なっても良い。]
【0059】
(d)リン酸基を有するビニル化合物として具体的には、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシエチルアクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレート、2,2’−ジ(メタ)アクリロイロキシジエチルホスフェート、EO変性リン酸ジメタクリレート、リン酸変性エポキシアクリレート、リン酸ビニル等が挙げられる。
【0060】
接着剤組成物における(d)リン酸基を有するビニル化合物の含有量は、リン酸基を有するビニル化合物以外の(b)ラジカル重合性化合物の添加量とは独立に、(a)熱可塑性樹脂100質量部に対して0.2〜300質量部であることが好ましく、1〜200質量部であることがより好ましい。(d)リン酸基を有するビニル化合物の含有量を0.2質量部以上とすることで、高い接着強度が得られやすい傾向があり、また、300質量部以下とすることで、硬化後の接着剤組成物の物性が低下しにくく、信頼性を確保しやすくなる傾向がある。
【0061】
(e)導電性粒子は、その全体又は表面に導電性を有する粒子であればよいが、接続端子を有する回路部材の接続に使用する場合は、接続端子間距離より平均粒径が小さいものを用いることが好ましい。
【0062】
本発明において用いる(e)導電性粒子としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子やカーボン等が挙げられる。また、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等を核とし、この核に上記金属、金属粒子やカーボンを被覆したものでもよい。(e)導電性粒子が、プラスチックを核とし、この核に上記金属、金属粒子やカーボンを被覆したものや、熱溶融金属粒子の場合、加熱加圧による変形性を有するので、接続時に電極との接触面積が増加して信頼性が向上するため好ましい。
【0063】
また、これらの(e)導電性粒子の表面を、さらに高分子樹脂などで被覆した微粒子は、導電性粒子の配合量を増加した場合の粒子同士の接触による短絡を抑制し、電極回路間の絶縁性が向上できることから、適宜これを単独あるいは(e)導電性粒子と混合して用いてもよい。
【0064】
この(e)導電性粒子の平均粒径は、分散性、導電性の点から1〜18μmであることが好ましい。このような(e)導電性粒子を含有する場合、接着剤組成物は異方導電性接着剤として、好適に用いることができる。
【0065】
接着剤組成物における(e)導電性粒子の含有量は、特に制限は受けないが、接着剤組成物の固形分全体積を基準として0.1〜30体積%であることが好ましく、0.1〜10体積%であることがより好ましい。この値が、0.1体積%以上であると導電性が高くなる傾向があり、30体積%以下であると回路の短絡が生じにくくなる傾向がある。なお、体積%は23℃の硬化前の各成分の体積をもとに決定されるが、各成分の体積は、比重を利用して重量から体積に換算することができる。また、メスシリンダー等に、その成分を溶解したり膨潤させたりせず、その成分をよくぬらす適当な溶媒(水、アルコール等)を入れたものに、その成分を投入し増加した体積を、その成分の体積として求めることもできる。
【0066】
また、本発明の接着剤組成物には、硬化速度の制御や貯蔵安定性を付与するために、安定化剤を添加することできる。このような安定化剤としては、特に制限なく公知の化合物を使用することができるが、ベンゾキノンやハイドロキノン等のキノン誘導体;4−メトキシフェノールや4−t−ブチルカテコール等のフェノール誘導体;2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルや4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等のアミノキシル誘導体;テトラメチルピペリジルメタクリレート等のヒンダードアミン誘導体;等が好ましい。
【0067】
安定化剤の添加量は、安定化剤を除く接着剤組成物100質量部に対して、0.01〜30質量部であることが好ましく、0.05〜10質量部であることがより好ましい。この添加量が0.01質量部以上の場合、硬化速度の制御や貯蔵安定性が付与されやすくなる傾向があり、また、30質量部以下の場合には、他の成分との相溶性に悪影響を及ぼしにくい傾向がある。
【0068】
また、本発明の接着剤組成物には、アルコキシシラン誘導体やシラザン誘導体に代表されるカップリング剤、密着性向上剤及びレベリング剤などの接着助剤を適宜添加してもよい。カップリング剤として具体的には、下記一般式(R)で示される化合物が好ましい。接着助剤は、1種を単独で用いる他に、2種以上の化合物を混合して用いてもよい。
【0069】
【化26】



[式(R)中、R24、R25及びR26は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基又はアリール基を示し、R27は(メタ)アクリロイル基、ビニル基、イソシアナート基、イミダゾール基、メルカプト基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、フェニルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、モルホリノ基、ピペラジノ基、ウレイド基又はグリシジル基を示し、rは1〜10の整数を示す。]
【0070】
本発明の接着剤組成物には、応力緩和及び接着性向上を目的に、ゴム成分を添加してもよい。ゴム成分とは、そのままの状態でゴム弾性(例えばJIS K6200)を示す成分又は反応によりゴム弾性を示す成分をいう。ゴム成分は、室温(25℃)で固形でも液状でもよいが、流動性向上の観点から液状であることが好ましい。ゴム成分としては、ポリブタジエン骨格を有する化合物が好ましい。ゴム成分は、シアノ基、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基またはモルホリン基を有していてもよい。また、接着性向上の観点から、高極性基であるシアノ基、カルボキシル基を側鎖あるいは末端に含むゴム成分が好ましい。なお、ポリブタジエン骨格を有していても、熱可塑性を示す場合は(a)熱可塑性樹脂に分類し、ラジカル重合性を示す場合は(b)ラジカル重合性化合物に分類する。
【0071】
ゴム成分として具体的には、ポリイソプレン、ポリブタジエン、カルボキシル基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、カルボキシル基末端1,2−ポリブタジエン、水酸基末端1,2−ポリブタジエン、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、水酸基末端スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基またはモルホリン基をポリマ末端に含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、水酸基末端ポリ(オキシプロピレン)、アルコキシシリル基末端ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリオレフィングリコール等が挙げられる。
【0072】
また、上記高極性基を有し、室温で液状であるゴム成分としては、具体的には、液状アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基またはモルホリン基をポリマ末端に含有する液状アクリロニトリル−ブタジエンゴム、液状カルボキシル化ニトリルゴム等が挙げられる。これらの室温で液状であるゴム成分において、極性基であるアクリロニトリルの含有量は10〜60質量%であることが好ましい。
【0073】
これらのゴム成分は単独で用いる他に、2種以上の化合物を混合して用いてもよい。
【0074】
また、本発明の接着剤組成物には、応力緩和及び接着性向上を目的に、有機微粒子を添加してもよい。有機微粒子の平均粒径は、0.05〜1.0μmであることが好ましい。なお、有機微粒子が上述のゴム成分からなる場合は、有機微粒子ではなくゴム成分に分類し、有機微粒子が上述の(a)熱可塑性樹脂からなる場合は、有機微粒子ではなく(a)熱可塑性樹脂に分類する。
【0075】
有機微粒子として具体的には、ポリイソプレン、ポリブタジエン、カルボキシル基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、カルボキシル基末端1,2−ポリブタジエン、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基またはモルホリン基をポリマ末端に含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、水酸基末端ポリ(オキシプロピレン)、アルコキシシリル基末端ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリオレフィングリコール(メタ)アクリル酸アルキル−ブタジエン−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸アルキル−シリコーン共重合体又はシリコーン−(メタ)アクリル共重合体若しくは複合体からなる有機微粒子が挙げられる。
【0076】
これらの有機微粒子は単独で用いる他に、2種以上の有機微粒子を併用して用いても良い。
【0077】
本発明の接着剤組成物は、常温で液状である場合にはペースト状で使用することができる。室温で固体の場合には、加熱して使用する他、溶媒を使用してペースト化してもよい。使用できる溶媒としては、接着剤組成物及び添加剤と反応性がなく、かつ十分な溶解性を示すものが好ましく、常圧での沸点が50〜150℃であるものが好ましい。沸点が50℃以上の場合、室温で放置しても揮発する恐れが少なく、開放系での使用が容易となる傾向がある。また、沸点が150℃以下であると、溶媒を揮発させることが容易で、接着後の信頼性に悪影響を及ぼすことが少なくなる傾向がある。
【0078】
本発明の接着剤組成物はフィルム状にして用いることもできる。その場合、接着剤組成物に必要により溶媒等を加えるなどした溶液を、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、離型紙等の剥離性基材上に塗布し、あるいは不織布等の基材に上記溶液を含浸させて剥離性基材上に載置し、溶媒等を除去してフィルムとして使用することができる。接着剤組成物をフィルムの形状で使用すると、取扱性等の点から一層便利である。
【0079】
本発明の接着剤組成物は、加熱及び加圧を併用して接着させることができる。加熱温度は、100〜200℃の温度が好ましい。圧力は、被着体に損傷を与えない範囲が好ましく、一般的には0.1〜10MPaが好ましい。これらの加熱及び加圧は、0.5秒〜120秒間の範囲で行うことが好ましく、140〜190℃、3MPa、10秒の加熱でも接着させることが可能である。
【0080】
本発明の接着剤組成物は、熱膨張係数の異なる異種の被着体の接着剤として使用することができる。具体的には、異方導電接着剤、銀ペースト、銀フィルム等に代表される回路接続材料、CSP用エラストマー、CSP用アンダーフィル材、LOCテープ等に代表される半導体素子接着材料として使用することができる。
【0081】
本発明の接着剤組成物は、主面上に第一の接続端子を有する第一の回路部材と、主面上に第二の接続端子を有する第二の回路部材とを接続するための接着剤組成物として用いられる。ここで、上記第一の回路部材及び/又は上記第二の回路部材は、ガラス転移温度が200℃以下の熱可塑性樹脂を含む基材から構成され、上記第一の接続端子及び/又は上記第二の接続端子は、ITO及び/又はIZOから構成される。ガラス転移温度が200℃以下の熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート及びポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
【0082】
次に、上述した本発明の接着剤組成物を用いた回路部材の接続構造体について説明する。図1は、(e)導電性粒子を含有しない本発明の接着剤組成物を用いた、回路部材の接続構造体の一実施形態を示す模式断面図である。図2は、図1に示す回路部材の接続構造体を作製する前の、第一の回路部材、第二の回路部材及び接着剤組成物(導電性粒子を含有しない)を示す模式断面図である。
【0083】
図1に示す回路部材の接続構造体100は、第一の回路基板31の主面31a上に第一の接続端子32を有する第一の回路部材30と、第二の回路基板41の主面41a上に第二の接続端子42を有する第二の回路部材40と、第一の接続端子32と第二の接続端子42とが対向するように、第一の回路基板31の主面31aと第二の回路基板41の主面41aとを接続する接続部材10Cと、を備える。第一の接続端子32と第二の接続端子42は、互いに接することにより電気的に接続されている。また、接続部材10Cは、本発明の接着剤組成物10の硬化物からなる。
【0084】
図1に示す回路部材の接続構造体100は、例えば次のようにして製造することができる。
【0085】
まず、図2に示すように、第一の回路部材30、第二の回路部材40及びフィルム状に成形した接着剤組成物10を用意する。次に、接着剤組成物10を、第二の回路部材40における第二の接続端子42が形成されている主面42aに載せ、さらに、接着剤組成物10の上に、第一の接続端子32が第二の接続端子42と対向するように、第一の回路部材30を載せる。続いて、第一の回路部材30及び第二の回路部材40を介して接着剤組成物10を加熱しながらこれを硬化させ、同時に主面31a、41aに垂直な方向に加圧し、第一及び第二の回路部材30、40の間に接続部材10Cを形成させて、図1の回路部材の接続構造体100を得る。
【0086】
図3は、(e)導電性粒子を含有する本発明の接着剤組成物を用いた、回路部材の接続構造体の一実施形態を示す模式断面図である。図4は、図3に示す回路部材の接続構造体を作製する前の、第一の回路部材、第二の回路部材及び接着剤組成物(導電性粒子を含有する)を示す模式断面図である。
【0087】
図3に示す回路部材の接続構造体200は、第一の回路基板31の主面31a上に第一の接続端子32を有する第一の回路部材30と、第二の回路基板41の主面41a上に第二の接続端子42を有する第二の回路部材40と、第一の接続端子32と第二の接続端子42とが対向するように、第一の回路基板31の主面31aと第二の回路基板41の主面41aとを接続する接続部材20Cと、を備える。なお、接続部材20Cは、接着剤組成物の導電性粒子以外の成分21中に導電性粒子22が分散した接着剤組成物20の硬化物(すなわち、接着剤組成物の導電性粒子以外の成分の硬化物21C中に導電性粒子22が分散したもの)であり、対向する第一の接続端子32と第二の接続端子42との間において、導電性粒子22が両接続端子に接することにより、導電性粒子22を介して両接続端子が電気的に接続されている。
【0088】
図3に示す回路部材の接続構造体200は、例えば、図4に示すように、第一の回路部材30、第二の回路部材40及びフィルム状に成形した接着剤組成物20を用意し、上記の回路部材の接続構造体100を得るのと同様の方法により、製造することができる。
【0089】
ここで、第一の回路部材30及び第二の回路部材40のうちの少なくとも一方は、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート及びポリエチレンナフタレートからなる群より選ばれる少なくとも1種のガラス転移温度が200℃以下の熱可塑性樹脂を含有する基材から構成される。すなわち、第一の回路基板31及び第二の回路基板41のうちの少なくとも一方は、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート及びポリエチレンナフタレートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する。第一の回路部材30及び第二の回路部材40のうちの少なくとも一方が、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート及びポリエチレンナフタレートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する基材から構成されている回路部材であることによって、接着剤組成物との濡れ性が向上して接着強度がより向上する。そのため、このような回路部材の接続構造体は、より優れた接続信頼性を得ることができる。
【0090】
なお、第一の回路部材30及び第二の回路部材40のうちの一方は、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート及びポリエチレンナフタレートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有しない基材から構成されていてもよい。そのような回路部材を形成する基材としては、半導体、ガラス、セラミック等の無機物からなる基材、ポリイミド又はポリカーボネート等の有機物からなる基材、ガラス/エポキシ等の無機物と有機物とを組合せた基材などを用いることができる。
【0091】
また、第一の接続端子32及び第二の接続端子42のうちの少なくとも一方は、ITO及びIZOからなる群より選ばれる少なくとも1種で構成される。ITO及びIZOは、エッチングが容易でパターン加工性に優れるため、接続端子として好適である。そして、本発明の接着剤組成物を用いることにより、ITO及び/又はIZOで構成された接続端子の腐食を充分に抑制することができる。
【0092】
なお、第一の接続端子32及び第二の接続端子42のうちの一方は、ITO及びIZO以外の材料で構成されていてもよい。そのような接続端子としては、銅、銀、アルミニウム、金、パラジウム、ニッケル及びこれらの合金等の金属からなる接続端子を用いることができる。
【実施例】
【0093】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0094】
<熱可塑性樹脂>
(フェノキシ樹脂の調製)
フェノキシ樹脂(商品名:YP−50、東都化成株式会社製)40質量部を、メチルエチルケトン60質量部に溶解して、固形分40質量%の溶液とした。
【0095】
(ポリエステルウレタン樹脂の準備)
ポリエステルウレタン樹脂(商品名:UR−1400、東洋紡株式会社製)は、樹脂分30質量%のメチルエチルケトンとトルエンの1:1混合溶媒溶解品を用いた。
【0096】
<ラジカル重合性化合物>
(ウレタンアクリレート(UA)の合成)
攪拌機、温度計、塩化カルシウム乾燥管を備えた還流冷却管、及び、窒素ガス導入管を備えた反応容器に、2−ヒドロキシエチルアクリレート(Aldrich株式会社製)238質量部(2.05モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル(Aldrich株式会社製)0.53質量部、数平均分子量2000のポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペート)ジオール(Aldrich株式会社製)4000質量部(2.00モル)、ジブチルスズジラウレート(Aldrich株式会社製)5.53質量部を投入した。充分に窒素ガスを導入した後、70〜75℃に加熱し、イソフォロンジイソシアネート(Aldrich株式会社製)666質量部(3.00モル)を3時間で均一に滴下し、反応させた。滴下完了後、約15時間反応を継続し、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了してウレタンアクリレート(UA)を得た。得られたウレタンアクリレート(UA)の数平均分子量は3700であった。
【0097】
(イソシアヌル酸変性2官能アクリレートの準備)
イソシアヌル酸変性2官能アクリレート(商品名:M−215、東亞合成株式会社製、を準備した。
【0098】
<リン酸基を有するビニル化合物>
2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート(商品名:ライトエステルP−2M、共栄社化学株式会社製)を準備した。
【0099】
<ラジカル重合開始剤>
ラジカル重合開始剤として、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(商品名:パーブチルO、日油株式会社製)、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン(商品名:パーヘキサMC、日油株式会社製)、及び、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド(パーロイル355、日油株式会社製)ジベンゾイルパーオキサイド(商品名:ナイパーBW、日油株式会社製)を準備した。ここで、パーブチルOは一般式(A)を満たすものであり、パーロイル355は一般式(B)を満たすものであり、パーヘキサMCはパーオキシケタールに該当するものである。なお、ナイパーBWは、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、一般式(A)で表される化合物及び一般式(B)で表される化合物のいずれにも該当しないものである。
【0100】
<導電性粒子>
(導電性粒子の作製)
ポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に、厚み0.02μmの金層を設け、平均粒径10μm、比重2.5の導電性粒子を作製した。
【0101】
[実施例1〜6及び比較例1〜2]
固形質量比で表2に示すように各成分を配合し、さらに導電性粒子を、接着剤組成物の固形分全体積を基準として1.5体積%となるように配合分散させ、接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物を、塗工装置を用いて厚み80μmのフッ素樹脂フィルム上に塗布し、70℃、10分の熱風乾燥によって接着剤層の厚みが20μmのフィルム状接着剤組成物を得た。
【0102】
【表2】



【0103】
〔接続抵抗及び接着強度の測定〕
実施例1〜6及び比較例1〜2のフィルム状接着剤組成物を、ポリイミドフィルム(Tg:350℃)上にライン幅50μm、ピッチ100μm、厚み18μmの銅回路を250本有するフレキシブル回路板(FPC)と、PETフィルム(Tg:120℃)上に厚み0.2μmのITOの薄層を形成したPET基板(厚み:0.1mm、表面抵抗:30Ω/□)との間に介在させた。これを、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング社製)を用いて、150℃、2MPaで10秒間加熱加圧して幅2mmにわたり接続し、接続構造体を作製した。この接続構造体の隣接回路間の抵抗値を、接着直後と、85℃、85%RHの高温高湿槽中に240時間保持した後(試験後)にマルチメータで測定した。抵抗値は隣接回路間の抵抗37点の平均で示した。
【0104】
また、この接続構造体の接着強度を、JIS−Z0237に準じて90度剥離法で測定し、評価した。ここで、接着強度の測定装置は、東洋ボールドウィン株式会社製のテンシロンUTM−4(剥離速度:50mm/min、測定温度:25℃)を使用した。以上のようにして行ったフィルム状接着剤組成物の接続抵抗及び接着強度の測定結果を下記表3に示した。
【0105】
〔回路腐食の評価〕
実施例1〜6及び比較例1〜2のフィルム状接着剤組成物を、ポリイミドフィルム(Tg:350℃)上にライン幅100μm、ピッチ200μm、厚み18μmの銅回路を250本有するフレキシブル回路板(FPC)と、PETフィルム(Tg:120℃)上にライン幅100μm、ピッチ200μm、厚み0.2μmのITOの回路及びPETフィルム(Tg:120℃)上にライン幅100μm、ピッチ200μm、厚み0.2μmのIZOの回路を形成したPET基板との間に介在させた。これを上記接続抵抗及び接着強度の測定の際と同じ方法及び条件で加熱圧着して接続構造体を作製した。この接続構造体を、85℃、85%RHの高温高湿槽中に240時間保持した後(試験後)、ITO回路及びIZO回路の腐食の有無を、光学顕微鏡を用いて観察した。このとき、ITO回路及びIZO回路の少なくとも一部が溶出して失われていた場合を腐食有りとし、ITO回路及びIZO回路の溶出が認められなかった場合を腐食無しとした。以上のようにして行った回路腐食の有無の評価結果を下記表3に示した。
【0106】
【表3】



【0107】
実施例1〜6で得られた接着剤組成物は、加熱温度150℃において、接着直後及び85℃、85%RHの高温高湿槽中に240時間保持した後(試験後)で、良好な接続抵抗及び良好な接着強度を示し、且つ、試験後で回路腐食は観察されないことが明らかとなった。これらに対して、本発明における(c)ラジカル重合開始剤を使用していない比較例1、2では、85℃、85%RHの高温高湿槽中に240時間保持した後(試験後)に回路腐食が発生することが明らかになった。
【符号の説明】
【0108】
10、20…接着剤組成物、10C、20C…接続部材、21…導電性粒子を含まない接着剤組成物、22…導電性粒子、21C…導電性粒子を含まない接着剤組成物の硬化物、30…第一の回路部材、31…第一の回路基板、31a…主面、32…第一の接続端子、40…第二の回路部材、41…第二の回路基板、41a…主面、42…第二の接続端子、100、200…回路部材の接続構造体。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面上に第一の接続端子を有する第一の回路部材と、主面上に第二の接続端子を有する第二の回路部材とを接続するための接着剤組成物であって、
前記第一の回路部材及び/又は前記第二の回路部材は、ガラス転移温度が200℃以下の熱可塑性樹脂を含む基材から構成され、
前記第一の接続端子及び/又は前記第二の接続端子は、ITO及び/又はIZOから構成され、
前記接着剤組成物は、(a)熱可塑性樹脂、(b)ラジカル重合性化合物、(c)ラジカル重合開始剤、及び、(d)リン酸基を有するビニル化合物を含有し、
前記(c)ラジカル重合開始剤は、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、下記一般式(A)で表される化合物及び下記一般式(B)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、接着剤組成物。
【化1】



[式(A)中、Rは炭素数1〜12のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルキレン基を示し、aは1又は2を示す。]
【化2】



[式(B)中、R及びRは各々独立に炭素数1〜12のアルキル基を示す。]
【請求項2】
(e)導電性粒子をさらに含有する、請求項1記載の接着剤組成物。
【請求項3】
主面上に第一の接続端子を有する第一の回路部材と、主面上に第二の接続端子を有する第二の回路部材と、接続部材と、を備える回路部材の接続構造体であって、
前記第一の接続端子及び前記第二の接続端子が対向するように、前記第一の回路部材及び前記第二の回路部材が、請求項1又は2記載の接着剤組成物からなる前記接続部材を介して配置されるとともに、前記第一の接続端子及び前記第二の接続端子が電気的に接続されており、
前記第一の回路部材及び/又は前記第二の回路部材は、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート及びポリエチレンナフタレートからなる群より選ばれる少なくとも1種のガラス転移温度が200℃以下の熱可塑性樹脂を含有する基材から構成されており、
前記第一の接続端子及び/又は前記第二の接続端子が、ITO及び/又はIZOから構成されている、回路部材の接続構造体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−204898(P2011−204898A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70549(P2010−70549)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】