説明

接着性樹脂組成物および成型体

【課題】簡素な装置を用い、容易な方法により、難接着基材に対し優れた接着性を有する接着性樹脂、該樹脂を含有する組成物を提供する。
【解決手段】(1)(a)ポリオレフィン樹脂に対して(b)ラジカル重合開始剤存在下、必須成分として(c)エポキシ基含有ビニル単量体および(d)芳香族ビニル単量体、任意成分として(e)その他ビニル単量体を溶融混練して得られ、(a)ポリオレフィン樹脂、(c)エポキシ基含有ビニル単量体、(d)芳香族ビニル単量体及び(e)その他ビニル単量体の合計100重量%中における(c)エポキシ基含有ビニル単量体の割合が、0.1〜50重量%の範囲にある変性ポリオレフィン樹脂組成物100重量部、および、(2)塩素化樹脂0.01〜100重量部からなる接着性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン樹脂とラジカル重合開始剤の存在下、エポキシ基含有ビニル単量体と芳香族ビニル単量体とその他ビニル単量体を加え溶融混練して得られる変性ポリオレフィン樹脂組成物と塩素含有樹脂からなる接着性樹脂組成物及び該樹脂を含有する組成物に関する。さらに、難接着基材に対する優れた接着性を有するシート状またはフィルム状成形体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂、例えばポリプロピレン樹脂は、その成形性、剛性、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性などに優れ、また安価であることから、フィルム、繊維、そのほか様々な形状の成形品として汎用的に使用されている。一方で、ポリプロピレンは分子内に極性基を持たず、非極性で化学的に極めて不活性な高分子である。そのため、接着性、塗装密着性、耐油性等が低いという課題がある。この課題を改善するために、ポリオレフィン樹脂へ極性官能基を有する重合可能なモノマーをグラフト重合させて、変性樹脂を製造する方法が試みられ、以下のような方法が提案されている。(i)水中に分散させたポリオレフィン樹脂粒子にビニル単量体を含浸させ、過酸化物の存在下で加熱して変性ポリオレフィンを製造する方法(特許文献1)。(ii)ポリオレフィン樹脂、無水マレイン酸と有機過酸化物とを溶融混練し、変性ポリオレフィンを製造する方法(特許文献2)。(i)の方法では様々なビニル単量体をポリオレフィン樹脂にグラフトさせることができる。しかし、エポキシ基などの極性の高い官能基を持つモノマーは、低極性であるポリオレフィン樹脂に含浸しにくいので、共重合できる量に限界があった。また、該モノマーの水への溶解抑制剤を必要とするため、反応後の変性ポリオレフィン組成物中に溶解抑制剤が残存し、印刷性、インキ密着性、接着性を阻害するという問題点があった。
【0003】
(ii)の方法では、ポリオレフィン樹脂に共重合できるモノマーの種類は限られている。例えば無水マレイン酸の代わりにメタクリル酸グリシジルを用いると、モノマーが未反応のまま揮発したり、モノマー同士の重合が起こるだけでポリオレフィン樹脂にグラフトしなかったり、余剰の過酸化物によりポリオレフィンの主鎖が切断されて低分子量化するため、機械的特性が低下し、接着性への充分な要求に応えるレベルに達しているとは言えないのが現状である。
【特許文献1】特開平6−122738号公報
【特許文献2】特開平9−278956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、簡素な装置を用い、容易な方法により、難接着基材に対し優れた接着性を有する接着性樹脂、該樹脂を含有する組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上述の現状に鑑み、鋭意検討した結果、ポリオレフィン樹脂とラジカル重合開始剤の存在下、エポキシ基含有ビニル単量体と芳香族ビニル単量体とその他ビニル単量体を加え溶融混練することにより得られた変性ポリオレフィン樹脂組成物に、塩素含有樹脂を配合することにより、優れた接着性能が発現することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0007】
1)本発明の第1は、(1)(a)ポリオレフィン樹脂に対して(b)ラジカル重合開始剤存在下、必須成分として(c)エポキシ基含有ビニル単量体および(d)芳香族ビニル単量体、任意成分として(e)その他ビニル単量体を溶融混練して得られ、(a)ポリオレフィン樹脂、(c)エポキシ基含有ビニル単量体、(d)芳香族ビニル単量体及び(e)その他ビニル単量体の合計100重量%中における(c)エポキシ基含有ビニル単量体の割合が、0.1〜50重量%の範囲にある変性ポリオレフィン樹脂組成物100重量部、および、(2)塩素含有樹脂0.01〜100重量部からなる接着性樹脂組成物である(請求項1)。
【0008】
2)本発明の第2は、(a)ポリオレフィン樹脂が、プロピレン単位が過半量であるポリプロピレン樹脂である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物である(請求項2)。
【0009】
3)本発明の第3は、(e)その他ビニル単量体が(メタ)アクリル酸エステル単量体である、請求項1、2記載の熱可塑性樹脂組成物である(請求項3)。
【0010】
4)本発明の第4は、(1)変性ポリオレフィン樹脂組成物が多相構造を形成しており、(a)ポリオレフィン樹脂から成る相中にある(c)エポキシ基含有ビニル単量体、(d)芳香族ビニル単量体及び/または(e)その他ビニル単量体から成る相が平均1μm以下の粒子径を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物である(請求項4)。
【0011】
5)本発明の第5は、(1)変性ポリオレフィン樹脂組成物が、(a)ポリオレフィン樹脂と(b)ラジカル重合開始剤を溶融混練した後、次いで(c)エポキシ基含有ビニル単量体、(d)芳香族ビニル単量体及び/または(e)その他ビニル単量体を加え溶融混練して得られることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物である(請求項5)。
【0012】
6)本発明の第6は、(2)塩素含有樹脂が、塩素化ポリオレフィンであることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物である(請求項6)。
【0013】
7)本発明の第7は、請求項1〜6の何れか一項に記載の接着性樹脂組成物にポリオレフィン樹脂を含有する接着性ポリオレフィン樹脂組成物である(請求項7)。
【0014】
8)本発明の第8は、プロピレン単位が過半量であるポリプロピレン樹脂100重量部に対し、請求項1〜7の何れか一項に記載の接着性樹脂組成物を0.1〜100重量部含有する接着性ポリオレフィン樹脂組成物である(請求項8)。
【0015】
9)本発明の第9は、請求項1〜8の何れか一項記載の熱可塑性樹脂組成物からなり、熱溶着性を有するシート状またはフィルム状成形体である(請求項9)。
【0016】
10)本発明の第10は、 請求項1〜8の何れか一項記載の熱可塑性樹脂組成物を溶融混練した後、シートまたはフィルム状に成形加工することを特徴とするシート状またはフィルム状成形体の製造方法である(請求項10)。
【0017】
11)本発明の第11は、 請求項1〜8の何れか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物、および請求項9に記載のシート状またはフィルム状成形体からなる群より選ばれる少なくとも1つ以上で接着されてなる接着体である(請求項11)。
【発明の効果】
【0018】
本発明の接着性樹脂組成物は、単独使用のみならず、ポリオレフィン樹脂に添加剤として使用しても、難接着基材に対し優れた接着力を確保することができ、文具、雑貨、食品などの包装材、自動車用部品、家電などの電気電子部品、各種産業用資材などの幅広い分野に好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明の詳細について述べる。
【0020】
<<ポリオレフィン樹脂について>>
前記(a)ポリオレフィン樹脂とは、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレンおよび/または1−ブテンとのあらゆる比率でのランダム共重合体またはブロック共重合体、エチレンとプロピレンとのあらゆる比率においてジエン成分が50重量%以下であるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリメチルペンテン、シクロペンタジエンとエチレンおよび/またはプロピレンとの共重合体などの環状ポリオレフィン、エチレンまたはプロピレンと50重量%以下のビニル化合物などとのランダム共重合体、ブロック共重合体などが挙げられる。
【0021】
中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイソブチレンが好ましく、ポリプロピレンが特に好ましい。
【0022】
また、極性基を有する不飽和カルボン酸単量体と相溶し易い点で、極性基が導入されたポリオレフィン樹脂も使用できる。極性基が導入されたポリオレフィン樹脂の具体例としては、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、アクリル酸変性ポリプロピレンなどの酸変性ポリプロピレン;エチレン/塩化ビニル共重合体、エチレン/塩化ビニリデン共重合体、エチレン/アクリロニトリル共重合体、エチレン/メタクリロニトリル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリルアミド共重合体、エチレン/メタクリルアミド共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン/アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン/メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸イソブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸金属塩共重合体、エチレン/メタクリル酸金属塩共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、又はその鹸化物、エチレン/プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体エチレン/アクリル酸エチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/ビニル単量体共重合体が挙げられる。これらの極性基導入ポリオレフィンは混合しても使用できる。工業的規模で安価に製造できるという点でポリプロピレンが好ましい。
【0023】
また、これらポリオレフィン樹脂は、粒子状のものであってもペレット状のものであってもよく、その大きさや形はとくに制限されるものではない。
【0024】
ポリオレフィン樹脂におけるプロピレン成分に関しては、ポリオレフィン樹脂に対しラジカルが発生し易くなる点で、プロピレン単位が過半量であることが好ましい。ここでいう過半量とはポリオレフィン樹脂に対するプロピレン成分が50重量%以上のことを意味する。
【0025】
ポリオレフィン樹脂には結晶性のものと非結晶性のものがあるが、本発明においてはいずれも特に限定なく使用できる。
【0026】
<<エポキシ基含有ビニル単量体について>>
エポキシ基含有ビニル単量体としては、特に制限されないが、好ましくは炭素数4〜20、より好ましくは4〜10のエポキシ基含有ビニル単量体である。例示するならば、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、マレイン酸モノグリシジル、マレイン酸ジグリシジル、イタコン酸モノグリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルコハク酸モノグリシジル、アリルコハク酸ジグリシジル、p−スチレンカルボン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、メタアリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレンなどのグリシジル基含有ビニル単量体、3,4−エポキシ−1−ブテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテンなどのエポキシオレフィン、ビニルシクロヘキセンモノオキシドなどの1種または2種以上が挙げられる。
【0027】
これらのうち、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジルが安価という点で好ましい。前記エポキシ基含有ビニル単量体の添加量は、(a)ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、0.1〜100重量部であることが好ましく、0.5〜50重量部であることがさらに好ましい。また、(c)エポキシ基含有ビニル単量体の割合が、(a)ポリオレフィン樹脂、(c)エポキシ基含有ビニル単量体及び(d)芳香族ビニル単量体の合計量の0.1〜50重量%の範囲であることが好ましく、0.5〜40重量%の範囲であることがより好ましく、1〜30重量%の範囲であることが特に好ましい。添加量が少なすぎると接着性が充分に改善されない傾向があり、添加量が多すぎると好適な形状や外観を有する樹脂組成物として取得できない傾向がある。
【0028】
<<芳香族ビニル単量体について>>
芳香族ビニル単量体としては、特に制限されないが、好ましくは炭素数4〜20、より好ましくは6〜15の芳香族ビニル単量体である。例示するならば、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレンなどのメチルスチレン;o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、α−クロロスチレン、β−クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンなどのクロロスチレン;o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレンなどのブロモスチレン;o−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、p−フルオロスチレン、ジフルオロスチレン、トリフルオロスチレンなどのフルオロスチレン;o−ニトロスチレン、m−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン、ジニトロスチレン、トリニトロスチレンなどのニトロスチレン;o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、ジヒドロキシスチレン、トリヒドロキシスチレンなどのビニルフェノール;o−ジビニルスチレン、m−ジビニルスチレン、p−ジビニルスチレンなどのジビニルスチレン;o−ジイソプロペニルベンゼン、m−ジイソプロペニルベンゼン、p−ジイソプロペニルベンゼンなどのジイソプロペニルベンゼン;などの1種または2種以上が挙げられる。これらのうちスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどのメチルスチレン、ジビニルベンゼン単量体またはジビニルベンゼン異性体混合物が安価であるという点で好ましい。
【0029】
前記(d)芳香族ビニル単量体の添加量は、(a)ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、0.1〜50重量部であることが好ましく、0.5〜40重量部であることがさらに好ましく、1〜30重量部であることが特に好ましい。添加量が少なすぎるとポリオレフィン樹脂に対するエポキシ基含有ビニル単量体のグラフト率が劣る傾向がある。一方、添加量が多すぎるとエポキシ基含有ビニル単量体のグラフト効率が飽和域に達するので、50重量部を上限とすることが好ましい。
【0030】
<<その他ビニル単量体について>>
その他ビニル単量体として例示するならば、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニルn−ブチルエーテル、ビニルtert−ブチルエーテル等のビニルエーテル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニルエチル、(メタ)アクリル酸ナフチル等が挙げられる。これらの単量体は単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。なかでも(メタ)アクリル酸メチルおよび(メタ)アクリル酸n−ブチルが安価である点で好ましい。
【0031】
前記(e)その他ビニル単量体の添加量は、(a)ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、0.01〜50重量部であることが好ましく、0.05〜40重量部であることがさらに好ましく、0.1〜30重量部であることが特に好ましい。添加量が少なすぎるとポリオレフィン樹脂に対するエポキシ基含有ビニル単量体のグラフト率が劣る傾向がある。一方、添加量が多すぎるとグラフトに寄与しないフリーポリマーが副生する傾向があるので、芳香族ビニル単量体と同重量部を上限とすることが好ましい。
【0032】
<<ラジカル開始剤について>>
ラジカル重合開始剤としては、一般に過酸化物またはアゾ化合物などがあげられる。前記ラジカル重合開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール;パーメタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−メトキシブチルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート;t−ブチルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどの有機過酸化物の1種または2種以上があげられる。
【0033】
これらのうち、とくに水素引き抜き能が高いものが好ましく、そのようなラジカル重合開始剤としては、たとえば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール;ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどの1種または2種以上があげられる。
【0034】
前記ラジカル重合開始剤の添加量は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲内にあることが好ましく、0.2〜5重量部の範囲内にあることがさらに好ましい。0.01重量部未満では変性が充分に進行せず、10重量部を超えると流動性、機械的特性の低下を招くことがある。
【0035】
<<変性ポリオレフィン樹脂組成物について>>
本発明の(1)変性ポリオレフィン樹脂組成物は、(a)ポリオレフィン樹脂に対して(b)ラジカル重合開始剤存在下、一定量の(c)エポキシ基含有ビニル単量体、(d)芳香族ビニル単量体及び/または(e)その他ビニル単量体を溶融混練して得られる。必須成分として(c)エポキシ基含有ビニル単量体および(d)芳香族ビニル単量体を使用し、必要に応じて(e)その他ビニル単量体を使用してもよい。これらを溶融混練することにより、含浸重合などの方法で反応させる場合に比べてエポキシ基含有ビニル単量体の使用量を増やすことができる。さらに、(c)エポキシ基含有ビニル単量体と(d)芳香族ビニル単量体及び(e)その他ビニル単量体を併用し、かつ(a)成分、(c)成分、(d)成分、(e)成分の合計100重量%中における(c)成分の割合を0.1〜50重量%の範囲にすることにより、グラフト効率を向上させ本発明の効果を得ることができる。
【0036】
溶融混練時の添加順序及び方法については、ポリオレフィン樹脂とラジカル重合開始剤を溶融混練した混合物に、エポキシ基含有ビニル単量体、芳香族ビニル単量体、その他ビニル単量体を加え溶融混練する添加順序がよく、この添加順序で行うことでグラフトに寄与しない低分子量体の生成を抑制することができる。
【0037】
溶融混練時の加熱温度は、130〜300℃であることが、ポリオレフィン樹脂が充分に溶融し、かつ熱分解しないという点で好ましい。また溶融混練の時間(ラジカル重合開始剤を混合してからの時間)は、通常30秒間〜60分間である。
【0038】
また、前記の溶融混練の装置としては、一軸又は多軸押出機、バンバリーミキサー、プラストミル、加熱ロールニーダー、などを使用することができる。生産性の面から減圧装置を装備した単軸あるいは二軸押出機を用いる方法が好ましい。また、各々の材料を充分に均一に混合するために、前記溶融混練を複数回繰返してもよい。
【0039】
本発明は、(1)変性ポリオレフィン樹脂が多相構造を形成し、ポリオレフィン樹脂から成る相中のエポキシ基含有ビニル単量体、芳香族ビニル単量体及びその他ビニル単量体から成る相が微分散している場合に、特に効果的である。加熱温度、溶融混練の時間等の反応条件にも拠るが、ポリオレフィン樹脂から成る相中のエポキシ基含有ビニル単量体、芳香族ビニル単量体及びその他ビニル単量体から成る相が平均1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがさらに好ましく、0.3μm以下であることが特に好ましい。エポキシ基含有ビニル単量体から成るエポキシ基が微分散しているため、効率よく接着性を向上することができる。
【0040】
<<塩素含有樹脂について>>
本発明の(2)塩素含有樹脂としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等その重合方法には特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル三元共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソプレン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−各種ビニルエーテル共重合体等の塩素含有樹脂、及びそれらの相互のブレンド品あるいはそれらの塩素含有樹脂と他の塩素を含まない合成樹脂、例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン三元共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、ポリエステル等とのブレンド品、ブロック共重合体、グラフト共重合体等を挙げることができる。
【0041】
上記の塩素含有樹脂うち、該変性ポリオレフィン樹脂との相溶性の点から塩素化ポリオレフィンの使用が好ましく、中でも塩素化ポリプロピレンあるいは無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレンの使用がより好ましい。また、これら塩素化ポリオレフィンは、塊状のものであってもペレット状のものであってもよく、その大きさや形はとくに制限されるものではないが、扱い易さの観点から、ペレット状であることが好ましい。なお、上記塩素含有樹脂を変性ポリオレフィン樹脂に溶融混練する際には、塩素含有樹脂の熱分解による樹脂配合物の劣化を抑制するため、塩化ビニル重合体および共重合体用の安定剤を添加することが好ましい。安定剤としては、金属石鹸系(バリウム―亜鉛系、カルシウム―亜鉛系)、有機錫系、鉛系、エポキシ系、有機リン系などが一般に知られているが、これらは特に限定されず、市販のものを単独あるいは複合で使用することができる。また安定剤の配合量としては、5重量%以下程度がブリードアウトせずに使用できて好ましい。
【0042】
<<接着性樹脂組成物について>>
(2)塩素含有樹脂の配合量は、(1)変性ポリオレフィン樹脂組成物100重量部に対して、0.01〜100重量部の範囲内にあることが好ましく、10〜50重量部の範囲内にあることがより好ましい。0.01重量部未満では、接着性能の向上効果が十分でなく、200重量部を越えると接着性能が低下する。
【0043】
(2)塩素含有樹脂と(1)変性ポリオレフィン樹脂組成物を配合する方法は、公知のいずれの方法を用いても良いが、均一に混合するのが容易であるという点からは、特に溶融混錬が好ましい。溶融混錬の装置としては、一軸又は多軸押出機、バンバリーミキサー、プラストミル、加熱ロールニーダー、などを使用することができる。生産性の面から減圧装置を装備した単軸あるいは二軸押出機を用いる方法が好ましい。また、各々の材料を充分に均一に混合するために、前記溶融混練を複数回繰返してもよい。接着性樹脂組成物には必要に応じて、酸化防止剤、金属不活性剤、燐系加工安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、蛍光増白剤、金属石鹸、制酸吸着剤などの安定剤、または架橋剤、連鎖移動剤、核剤、滑剤、可塑剤、充填材、強化材、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を本発明の効果を損なわない範囲内で添加してもよい。これらの安定剤および添加剤を用いる場合は、予め(a)ポリオレフィン樹脂に添加されているものであってもよく、(a)ポリオレフィン樹脂に(b)〜(e)成分を加えて溶融混練する際に添加されるものであってもよく、(1)変性ポリオレフィン樹脂と(2)塩素含有樹脂を溶融混錬する際に添加されるものであってもよく、また、接着性樹脂組成物を製造したのちに適宜の方法で添加されるものであってもよい。
【0044】
また、本発明の接着性樹脂組成物は、添加剤として(3)塩素化ポリオレフィン以外のポリオレフィン樹脂に添加しても、接着性を向上することができる。(3)成分として用いるポリオレフィン樹脂は、(a)成分として用いるポリオレフィン樹脂と同じでも異なっていてもよい。
【0045】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂が配合される(3)塩素化ポリオレフィン以外のポリオレフィン樹脂としては、例えばポリプロピレン単独重合体、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリ−1−ブテン、ポリイソブチレン、ポリメチルペンテン、シクロペンタジエンとエチレンおよび/またはプロピレンとの共重合体などの環状ポリオレフィン、エチレンまたはプロピレンと50重量%以下のたとえば酢酸ビニル、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、芳香族ビニルなどのビニル化合物などとのランダム共重合体などが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。剛性が高く、安価であるという点からはポリプロピレン単独重合体が好ましく、剛性および耐衝撃性がともに高いという点からはプロピレンと他の単量体とのブロック共重合体であることが好ましい。
【0046】
本発明の接着性樹脂組成物を(3)塩素化ポリオレフィン以外のポリオレフィン樹脂に配合する際に、その配合量は特に限定はないが、ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、0.1〜100重量部、更には0.1〜70重量部を含有させることが好ましい。より好ましくは0.3〜50重量部であり、更に好ましくは0.5〜20重量部である。この範囲より少ないとポリオレフィン樹脂に対して本発明の改質効果が得られない傾向がある。逆に多すぎるとポリオレフィン樹脂本来の機械特性が低下し、また経済的な課題が生じてくる場合がある。
【0047】
<<シートまたはフィルム状成形体について>>
本発明の接着性樹脂組成物は、熱溶着性を有するシート状またはフィルム状成形体にすることができる。また、ポリオレフィン樹脂に本発明の接着性樹脂組成物を添加してなる樹脂組成物も、熱溶着性を有するシート状またはフィルム状成形体にすることができる。本発明でいう熱溶着性とは、熱で溶けて被着体と接合する性質のことである。本発明のシートまたはフィルム状成形体とは、成形体の厚みとしては3μmから3mmが例示でき、好ましくは10μm〜2mmであり、シートあるいはフィルムとして利用することができるものである。
【0048】
本発明の熱溶着性を有するシート状またはフィルム状成形体の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば本発明の接着性組成物とポリオレフィン樹脂をドライブレンド、あるいは溶融混練した後に、各種の押出成形機、射出成形機、カレンダー成形機、インフレーション成形機、ロール成形機、あるいは加熱プレス成形機などを用いてシート状成形体に成形加工することが可能である。
【0049】
本発明で用いられる被着体の材料としては、例えば、本発明の接着性フィルムの接着樹脂層と接着し得る材料である。具体的には、例えば、シリコン;金、銀、銅、鉄、錫、鉛、鋼、アルミニウムなどの金属;ガラス、セラミックスなどの無機材料;紙、布などのセルロース高分子材料、メラミン樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂などの合成高分子材料等が挙げられる。
【0050】
被着体の材料として、異なる2種類以上の材料を混合、複合してもよい。また、積層体が本発明の接着性フィルムを介して、異なる2つの被着体が接着してなるものである場合、2つの被着体を構成する材料は、同じ種類の材料でも異なる種類の材料のいずれでもよい。被着体の性状としては特に限定されないが、例えば、フィルム状、シート状、板状、繊維状などが挙げられる。また、被着体には、必要に応じて、離型剤、メッキなどの被膜、塗料による塗膜、プラズマやレーザーなどによる表面改質、表面酸化、エッチングなどの表面処理等を実施してもよい。
【0051】
被着体の用途の具体例としては、トリム類(ドアトリム、内装トリムなど)、成形天井、シート材(内装シート、インパネ表皮、装飾シートなど)等の自動車部材や、室内ドア、パーティション、内装壁板、家具、システムキッチン等の住宅資材で使用される化粧フィルムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0052】
以下に具体的な実施例を示すが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。下記実施例および比較例中「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を表す。
【0053】
[T字剥離評価]
T字剥離評価は、島津製作所製AG−2000Aを用い、23℃にて引張テストスピード200mm/minで行った。テストサンプルは、以下の方法で作成した。2枚の鋼板プレート(25mm×150mm、厚さ0.15mm)の間にフィルムを挟み、プレス機(神藤金属工業所、型式NSF−50、プレス温度220℃、無圧・予熱4分、2MPa・プレス30秒、無圧・冷却プレス3min)にて接着し、テストサンプルを得た。
【0054】
(製造例1)
(a)ホモポリプロピレン((株)プライムポリマー製J107G、MFR=30)100部、(b)1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日本油脂(株)製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.5部をシリンダー温度200℃、スクリュ回転数150rpmに設定した二軸押出機(44mmφ、L/D=38.5、(株)日本製鋼所製、製品名TEX44XCT)に供給して溶融混練した後、次いで、シリンダー途中よりメタクリル酸グリシジル5部、およびスチレン5部を加え溶融混練して変性ポリオレフィン樹脂ペレットを得た。
【0055】
(実施例1)
製造例1で得られた変性ポリオレフィン樹脂ペレット80部、塩素化ポリプロピレン(東洋化成工業製14-LWP、塩素含量27%)20部、及び錫系安定剤(ADEKA製アデカスタブ465E、メルカプタイド系)3部をラボプラストミル((株)東洋精機製、LABOPLASTOMILL)により温度200℃のもと5分間100rpmで溶融混練し、接着性樹脂の配合組成物を得た。得られた樹脂ペレットを、圧縮成形機(神藤金属工業所、型式NSF−50、最大使用圧21MPa、型締力50t、シリンダー径176mm、ストローク200mm)により、プレス条件:200℃、無圧、7分→200℃、5MPa、1分→室温、無圧、3分のもと、厚み100μmのシート(A1)とした。このシート(A1)にて接着させた鋼板プレートのT字剥離強度は、39.7N/25mmであった。
【0056】
(実施例2)
製造例1で得られた変性ポリオレフィン樹脂ペレット80部、無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン (東洋化成工業製CY-9124P、塩素含量24%)20部、及び錫系安定剤(ADEKA製アデカスタブ465E、メルカプタイド系)3部をラボプラストミル((株)東洋精機製、LABOPLASTOMILL)により温度200℃のもと5分間100rpmで溶融混練し、接着性樹脂の配合組成物を得た。得られた樹脂ペレットを、圧縮成形機(神藤金属工業所、型式NSF−50、最大使用圧21MPa、型締力50t、シリンダー径176mm、ストローク200mm)により、プレス条件:200℃、無圧、7分→200℃、5MPa、1分→室温、無圧、3分のもと、厚み100μmのシート(A2)とした。このシート(A2)にて接着させた鋼板プレートのT字剥離強度は、37.1N/25mmであった。
【0057】
(比較例1)
製造例1で得られた、変性ポリオレフィン樹脂ペレットを、シリンダー及びダイス温度200℃、スクリュ回転数100rpmに設定した単軸押出機(20mmφ、L/D=20、(株)東洋精機製、製品名ラボプラストミル)のホッパーに投入し、ダイス先端に取り付けたT型ダイスより、幅約13cm、厚み30μmのフィルム(A3)を得た。このシート(A3)にて接着させた鋼板プレートのT字剥離強度は、29.5N/25mmであった。
【0058】
実施例、比較例の配合表および剥離強度測定結果を、表1にまとめた。
【0059】
【表1】

【0060】
変性ポリオレフィン樹脂に、塩素化ポリプロピレンあるいは無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレンを配合した場合、変性ポリオレフィン樹脂単独で用いた場合と比較して良好な接着強度が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)(a)ポリオレフィン樹脂に対して(b)ラジカル重合開始剤存在下、必須成分として(c)エポキシ基含有ビニル単量体および(d)芳香族ビニル単量体、任意成分として(e)その他ビニル単量体を溶融混練して得られ、(a)ポリオレフィン樹脂、(c)エポキシ基含有ビニル単量体、(d)芳香族ビニル単量体及び(e)その他ビニル単量体の合計100重量%中における(c)エポキシ基含有ビニル単量体の割合が、0.1〜50重量%の範囲にある変性ポリオレフィン樹脂組成物100重量部、および、(2)塩素含有樹脂0.01〜100重量部からなる接着性樹脂組成物。
【請求項2】
(a)ポリオレフィン樹脂が、プロピレン単位が過半量であるポリプロピレン樹脂である、請求項1に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項3】
(e)その他ビニル単量体が(メタ)アクリル酸エステル単量体である、請求項1、2記載の接着性樹脂組成物。
【請求項4】
(1)変性ポリオレフィン樹脂組成物が多相構造を形成しており、(a)ポリオレフィン樹脂から成る相中にある(c)エポキシ基含有ビニル単量体、(d)芳香族ビニル単量体及び/または(e)その他ビニル単量体から成る相が平均1μm以下の粒子径を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項5】
(1)変性ポリオレフィン樹脂組成物が、(a)ポリオレフィン樹脂と(b)ラジカル重合開始剤を溶融混練した後、次いで(c)エポキシ基含有ビニル単量体、(d)芳香族ビニル単量体及び/または(e)その他ビニル単量体を加え溶融混練して得られることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項6】
(2)塩素含有樹脂が、塩素化ポリオレフィンであることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の接着性樹脂組成物にポリオレフィン樹脂を含有する接着性樹脂組成物。
【請求項8】
プロピレン単位が過半量であるポリプロピレン樹脂100重量部に対し、請求項1〜7の何れか一項に記載の接着性樹脂組成物を0.1〜100重量部含有する接着性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項記載の接着性樹脂組成物からなり、熱溶着性を有するシート状またはフィルム状成形体。
【請求項10】
請求項1〜8の何れか一項記載の接着性樹脂組成物を溶融混練した後、シートまたはフィルム状に成形加工することを特徴とするシート状またはフィルム状成形体の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜8の何れか一項に記載の接着性樹脂組成物、および請求項9に記載のシート状またはフィルム状成形体からなる群より選ばれる少なくとも1つ以上で接着されてなる接着体。

【公開番号】特開2010−95612(P2010−95612A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267329(P2008−267329)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】