説明

接続構造体の製造方法及び接続構造体

【課題】第1,第2の接続対象部材の接続信頼性を高めることができる接続構造体を提供する。
【解決手段】本発明に係る接続構造体1の製造方法は、第1の接続対象部材2上に、熱硬化性成分を含む硬化性組成物を直線状に塗布して、硬化性組成物層を形成する工程と、硬化性組成物層上に、第1の接続対象部材2よりも小さい第2の接続対象部材4を積層する工程と、硬化性組成物層を加熱して本硬化させて、硬化物層3を形成する工程とを備える。本発明に係る接続構造体1の製造方法では、塗布方向と直交する方向における硬化性組成物層の中央部3xの最小厚み(μm)をTとしたときに、塗布方向と直交する方向における硬化性組成物層の中央部3xの外側の縁部3yの最大厚み(μm)が1.1T以上、1.6T以下になるように、かつ縁部3yが盛り上がった形状になるように、硬化性組成物を直線状に塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の接続対象部材上に硬化性組成物を塗布して、該硬化性組成物が硬化した硬化物層により上記第1の接続対象部材と第2の接続対象部材とを接続する接続構造体の製造方法、並びに該接続構造体の製造方法により得られる接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な接続対象部材を接着して、各種の接続構造体を得るために、硬化性組成物が用いられている。該硬化性組成物は、電気、電子、建築及び車両等の各種用途に広く用いられている。また、様々な接続対象部材における電極間を電気的に接続するために、上記硬化性組成物に、導電性粒子が配合されることがある。導電性粒子を含む硬化性組成物は、異方性導電ペーストと呼ばれている。異方性導電ペーストでは、バインダー樹脂などに複数の導電性粒子が分散されている。
【0003】
上記異方性導電ペーストは、各種の接続構造体を得るために、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))、並びにフレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board)等に使用されている。
【0004】
上記接続構造体の製造方法の一例として、下記の特許文献1には、配線基板上に最低溶融粘度が1.0×10Pa・s以下である導電性接着剤を載せて、該導電性接着剤上に、厚みが200μm以下である電気部品を載せる工程と、ゴム硬度が60以下であるエラストマーを用いた圧着部を有する熱圧着ヘッドによって上記電気部品を加熱し、該電気部品を上記配線基板上に熱圧着する工程とを備える接続構造体の製造方法が開示されている。上記導電性接着剤として、複数の導電性粒子を含む異方性導電ペースト等が用いられている。
【0005】
また、下記の特許文献2には、相対する電極を有する被接続部材を、両者間に配置したペースト状接続材料の硬化物により接続する接続構造体の製造方法が開示されている。特許文献2では、ペースト状接続材料を下記式(I)で示されるYの1.1〜1.5倍量であって、接続領域の間隙に充満し、かつ接続領域の周辺部の硬化可能領域に実質的に均一に分布して、上記ペースト状接続材料を硬化させている。上記ペースト状接続材料として、複数の導電性粒子を含む異方性導電ペースト等が用いられている。
【0006】
Y=(一方の被接続部材の電極の高さ+他方の被接続部材の電極の高さ)×接続領域の面積 ・・・式(I)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−141269号公報
【特許文献2】特開2001−135672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2に記載のような従来の接続構造体の製造方法では、硬化性組成物が硬化した硬化物層にボイドが生じるなどして、該硬化物層により接続された第1,第2の接続対象部材の接続信頼性が十分に高くならないことがある。さらに、得られる接続構造体に冷熱サイクルなどの熱衝撃が与えられたり、又は接続構造体が高温高湿下に晒されたりしたときに、十分な接続信頼性を確保できないことがある。
【0009】
また、従来の接続構造体の製造方法では、第1,第2の接続対象部材における電極間を電気的に接続したときに、電極間に導電性粒子が精度よく配置されないことがある。このため、得られる接続構造体における電極間の導通信頼性が低くなることがある。
【0010】
本発明の目的は、第1,第2の接続対象部材の接続信頼性を高めることができる接続構造体の製造方法、並びに該接続構造体の製造方法により得られる接続構造体を提供することである。
【0011】
本発明の限定的な目的は、冷熱サイクルなどの熱衝撃が与えられたり、又は高温高湿下に晒されたりしても、十分な接続信頼性を確保できる接続構造体の製造方法、並びに該接続構造体の製造方法により得られる接続構造体を提供することである。
【0012】
本発明の限定的な目的は、導電性粒子を含む異方性導電ペーストが用いられ、第1,第2の接続対象部材における電極間の導通信頼性を高めることができる接続構造体の製造方法、並びに該接続構造体の製造方法により得られる接続構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の広い局面によれば、第1の接続対象部材上に、熱硬化性成分を含む硬化性組成物を直線状に塗布して、硬化性組成物層を形成する工程と、上記硬化性組成物層上に、上記第1の接続対象部材よりも小さい第2の接続対象部材を積層する工程と、上記硬化性組成物層を加熱して本硬化させて、硬化物層を形成する工程とを備え、塗布方向と直交する方向における上記硬化性組成物層の中央部の最小厚み(μm)をTとしたときに、塗布方向と直交する方向における上記硬化性組成物層の上記中央部の外側の縁部の最大厚み(μm)が1.1T以上、1.6T以下になるように、かつ上記縁部が盛り上がった形状になるように、上記硬化性組成物を直線状に塗布する、接続構造体の製造方法が提供される。
【0014】
本発明に係る接続構造体の製造方法のある特定の局面では、上記硬化性組成物として、熱硬化性成分と導電性粒子とを含む異方性導電ペーストを用い、上記硬化性組成物層として異方性導電ペースト層を形成し、第1の電極を上面に有する上記第1の接続対象部材上に、導電性粒子を含む異方性導電ペーストである上記硬化性組成物を直線状に塗布して、異方性導電ペースト層である硬化性組成物層を形成する工程と、上記硬化性組成物層上に、上記第1の接続対象部材よりも小さく、かつ第2の電極を下面に有する第2の接続対象部材を積層する工程と、上記硬化性組成物層を加熱して本硬化させて、硬化物層を形成する工程とを備え、塗布方向と直交する方向における上記硬化性組成物層の中央部の最小厚み(μm)をTとしたときに、塗布方向と直交する方向における上記硬化性組成物層の上記中央部の外側の縁部の最大厚み(μm)が1.1T以上、1.6T以下になるように、かつ上記縁部が盛り上がった形状になるように、上記硬化性組成物を直線状に塗布する。
【0015】
本発明に係る接続構造体の製造方法の他の特定の局面では、上記第2の接続対象部材として、アスペクト比が5以上であり、かつ短辺方向における中央部と短辺方向における縁部とで上記第2の電極が偏在しており、短辺方向の上記中央部よりも短辺方向の上記縁部に上記第2の電極が多く存在する第2の接続対象部材を用い、上記硬化性組成物の塗布方向と上記第2の接続対象部材の長辺方向とが略平行となるように、上記硬化性組成物層上に上記第2の接続対象部材を積層する。
【0016】
本発明に係る接続構造体の製造方法のさらに他の特定の局面では、塗布方向と直交する方向における上記硬化性組成物層の上記縁部の最大厚み部分に対して、塗布方向と直交する方向における上記第2の接続対象部材の側面を、揃えるか、又は上記硬化性組成物層の塗布方向と直交する方向において300μm以下ずらすように、上記硬化性組成物を直線状に塗布し、かつ上記硬化性組成物層上に上記第2の接続対象部材を積層する。
【0017】
本発明に係る接続構造体の製造方法の別の特定の局面では、上記硬化性組成物として、25℃及び10rpmでの粘度が10Pa・s以上、400Pa・s以下である硬化性組成物が用いられる。
【0018】
本発明に係る接続構造体の製造方法のさらに別の特定の局面では、上記硬化性組成物として、25℃及び1rpmでの粘度の25℃及び10rpmの粘度に対する比である粘度比が1.1以上、5以下である硬化性組成物が用いられる。
【0019】
本発明に係る接続構造体の製造方法の他の特定の局面では、上記硬化性組成物として、熱硬化性成分を含む硬化性組成物を用いるか、又は熱硬化性成分と光硬化性成分とを含む硬化性組成物を用いて、上記硬化性組成物層に熱を付与又は光を照射することにより硬化を進行させて、Bステージ化された硬化性組成物層を形成する工程がさらに備えられ、上記Bステージ化された硬化性組成物層の上面に、上記第2の接続対象部材を積層し、上記Bステージ化された硬化性組成物層を加熱して本硬化させて、硬化物層を形成する。
【0020】
本発明に係る接続構造体の製造方法のさらに他の特定の局面では、上記硬化性組成物として、熱硬化性成分と光硬化性成分とを含む硬化性組成物を用いて、上記硬化性組成物層に光を照射することにより硬化を進行させて、Bステージ化された硬化性組成物層を形成し、上記Bステージ化された硬化性組成物層を加熱して本硬化させて、硬化物層を形成する。
【0021】
本発明に係る接続構造体の製造方法の別の特定の局面では、上記硬化性組成物の塗布方向と直交する方向における上記第2の接続対象部材の側面に、上記硬化物層によるフィレットが形成される。
【0022】
本発明に係る接続構造体の製造方法のさらに別の特定の局面では、上記第2の接続対象部材のコーナー部であって、上記第2の接続対象部材の厚みの10%以上、100%以下の厚み部分に、上記硬化物層によるフィレットが形成される。
【0023】
本発明に係る接続構造体は、上記接続構造体の製造方法により得られ、上記第1の接続対象部材と、上記第2の接続対象部材と、上記第1の接続対象部材と上記第2の接続対象部材とを接続している上記硬化物層とを備える。
【0024】
本発明に係る接続構造体のある特定の局面では、上記硬化性組成物が、上記導電性粒子を含む上記異方性導電ペーストであり、接続構造体は、上記第1の電極を上面に有する上記第1の接続対象部材と、上記第2の電極を下面に有する上記第2の接続対象部材と、上記第1の接続対象部材と上記第2の接続対象部材とを接続している上記硬化物層とが備えられ、上記第1の電極と上記第2の電極とが、上記導電性粒子により電気的に接続されている。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る接続構造体の製造方法は、第1の接続対象部材上に、熱硬化性成分を含む硬化性組成物を直線状に塗布して、硬化性組成物層を形成した後、該硬化性組成物層上に、上記第1の接続対象部材よりも小さい第2の接続対象部材を積層し、次に上記硬化性組成物層を加熱して本硬化させて、硬化物層を形成するので、更に塗布方向と直交する方向における上記硬化性組成物層の中央部の最小厚み(μm)をTとしたときに、塗布方向と直交する方向における上記硬化性組成物層の上記中央部の外側の縁部の最大厚み(μm)が1.1T以上、1.6T以下になるように、かつ上記縁部が盛り上がった形状になるように、上記硬化性組成物を直線状に塗布するので、第1,第2の接続対象部材の接続信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る接続構造体の製造方法により得られた接続構造体を模式的に示す正面断面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る接続構造体の製造方法により得られた接続構造体を模式的に示す部分切欠平面図である。
【図3】図3(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係る接続構造体の製造方法の各工程を説明するための部分切欠正面断面図である。
【図4】図4は、硬化性組成物の塗布形状を説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0028】
図1に、本発明の一実施形態に係る接続構造体の製造方法により得られた接続構造体を模式的に正面断面図で示す。図2に、図1に示す接続構造体を部分切欠平面図で示す。図1では、図2に示す接続構造体におけるI−I線に沿う断面図が示されている。
【0029】
図1,2に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材4と、第1,第2の接続対象部材2,4を接続している硬化物層3とを備える。硬化物層3は、第1,第2の接続対象部材2,4を接続している接続部である。硬化物層3は、熱硬化性成分と導電性粒子5とを含む異方性導電ペーストを硬化させることにより形成されている。上記異方性導電ペーストは、複数の導電性粒子5を含む。上記異方性導電ペーストは、硬化性組成物である。
【0030】
第1の接続対象部材2は上面2aに、複数の第1の電極2bを有する。第2の接続対象部材4は下面4aに、複数の第2の電極4bを有する。第1の電極2bと第2の電極4bとが、1つ又は複数の導電性粒子5により電気的に接続されている。
【0031】
第1の接続対象部材2は、第2の接続対象部材4の外周側面よりも側方に張り出した領域を有する。従って、第2の接続対象部材4は、第1の接続対象部材2よりも小さい。第2の接続対象部材4の平面積は、第1の接続対象部材2の平面積よりも小さい。第2の接続対象部材4の後述する硬化性組成物の塗布方向(図2のS方向)と直交する方向における寸法は、第1の接続対象部材2の後述する硬化性組成物の塗布方向と直交する方向における寸法よりも小さい。
【0032】
硬化物層3は、第2の接続対象部材4の外周側面よりも側方に張り出した領域を有する。硬化物層3は、第2の接続対象部材4よりも大きい。硬化物層3の平面積は、第2の接続対象部材4の平面積よりも大きい。
【0033】
第1の接続対象部材2は、硬化物層3の外周側面よりも側方に張り出した領域を有する。第1の接続対象部材2は、硬化物層3よりも大きい。第1の接続対象部材2の平面積は、硬化物層3の平面積よりも大きい。
【0034】
図1,2に示す接続構造体1は、以下のようにして得ることができる。ここでは、上記硬化性組成物として、熱硬化性成分と導電性粒子5とに加えて、光硬化性成分をさらに含む異方性導電ペーストを用いた場合の接続構造体1の製造方法を具体的に説明する。
【0035】
図3(a)に示すように、第1の電極2bを上面2aに有する第1の接続対象部材2を用意する。次に、第1の接続対象部材2の上面2aに、熱硬化性成分と光硬化性成分と導電性粒子5とを含む異方性導電ペーストである硬化性組成物を塗布して、第1の接続対象部材2の上面2aに異方性導電ペースト層である硬化性組成物層3Aを形成する。このとき、電極2b上に、1つ又は複数の導電性粒子5が配置されていることが好ましい。
【0036】
図4に断面図で示すように、塗布方向(図2に示すS方向)と直交する方向における硬化性組成物層3Aの中央部3xの最小厚み(μm)をTとしたときに、塗布方向と直交する方向における硬化性組成物層3Aの中央部3xの外側の縁部3yの最大厚みT2(μm)が1.1T以上、1.6T以下になるように、かつ縁部3yが盛り上がった形状になるように、上記硬化性組成物を直線状に塗布する。すなわち、縁部3yの最大厚みT2(μm)を、中央部3xの最小厚みT(μm)の1.1倍以上、1.6倍以下にする。塗布された硬化性組成物層3Aでは、中央部3xが凹み、かつ縁部3yが盛り上がった形状である。このような塗布形状で上記硬化性組成物を塗布することにより、硬化物層にボイドを生じ難くすることができ、第1,第2の接続対象部材の接続信頼性を高めることができる。さらに、得られる接続構造体に冷熱サイクルなどの熱衝撃が与えられたり、又は接続構造体が高温高湿下に晒されたりしても、十分な接続信頼性を確保できる。
【0037】
中央部3xは、上記塗布方向と直交する方向における硬化性組成物層3Aの5.5〜7.5/10、より好ましくは、6〜7/10の領域であり、両側の2つの縁部3y,縁部3yはそれぞれ、好ましくは上記塗布方向と直交する方向における硬化性組成物層3Aの2.25〜0.75/10、2.25〜0.75/10、より好ましくは、1.5〜2/10、1.5〜2/10の領域である。
【0038】
また、図4では、上記硬化性組成物を塗布する際に、塗布方向と直交する方向における硬化性組成物層3Aの縁部3yの最大厚み部分に対して、塗布方向と直交する方向における第2の接続対象部材4の側面4cは、硬化性組成物層3Aの塗布方向と直交する方向においてずれている。このずれ距離Dは、300μm以下であることが好ましい。上記最大厚み部分に対して側面4cは300μm以下で内側にずれていてもよく、300μm以下で外側にずれていてもよい。従って、塗布方向と直交する方向における上記硬化性組成物層の上記縁部の最大厚み部分に対して、塗布方向と直交する方向における上記第2の接続対象部材の側面を、揃えるか、又は上記硬化性組成物層の塗布方向と直交する方向において300μm以下ずらすように、上記硬化性組成物を直線状に塗布し、かつ上記硬化性組成物層上に上記第2の接続対象部材を積層することが好ましい。このように硬化性組成物を塗布し、かつ第2の接続対象部材を積層することによって、硬化物層にボイドを生じ難くすることができ、第1,第2の接続対象部材の接続信頼性をより一層高めることができる。さらに、得られる接続構造体に冷熱サイクルなどの熱衝撃が与えられたり、又は接続構造体が高温高湿下に晒されたりしても、十分な接続信頼性をより一層効果的に確保できる。
【0039】
次に、硬化性組成物層3Aに光を照射することにより、硬化性組成物層3Aの硬化を進行させる。硬化性組成物層3Aの硬化を進行させて、硬化性組成物層3AをBステージ化する。図3(b)に示すように、硬化性組成物層3AのBステージ化により、第1の接続対象部材2の上面2aに、Bステージ化された硬化性組成物層3Bを形成する。
【0040】
第1の接続対象部材2の上面2aに、硬化性組成物を配置しながら、硬化性組成物層3Aに光を照射することが好ましい。さらに、第1の接続対象部材2の上面2aへの硬化性組成物の塗布と同時に、又は塗布の直後に、硬化性組成物層3Aに光を照射することも好ましい。塗布と光の照射とが上記のように行われた場合には、硬化性組成物層の流動をより一層抑制できる。このため、第1,第2の接続対象部材の接続信頼性、及び電極間の導通信頼性をより一層高めることができる。第1の接続対象部材2の上面2aに上記硬化性組成物を塗布してから光を照射するまでの時間は、0秒以上、好ましくは3秒以下、より好ましくは2秒以下である。
【0041】
光の照射により硬化性組成物層3AをBステージ化させるために、硬化性組成物層3Aの硬化を適度に進行させるための光照射強度は、例えば、好ましくは0.1〜100mW/cm程度である。また、硬化性組成物層3Aの硬化を適度に進行させるための光の照射エネルギーは、好ましくは50mJ/cm以上、より好ましくは500mJ/cm以上、好ましくは10000mJ/cm以下、より好ましくは3000mJ/cm以下である。
【0042】
光を照射する際に用いる光源は特に限定されない。該光源としては、例えば、波長420nm以下に充分な発光分布を有する光源等が挙げられる。また、光源の具体例としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ及びLED等が挙げられる。
【0043】
なお、光の照射により硬化性組成物層をBステージ化せずに、熱の付与により硬化性組成物層をBステージ化してもよい。硬化性組成物層に熱を付与することにより硬化を進行させて、硬化性組成物層をBステージ化する場合には、硬化性組成物層を十分にBステージ化させるための加熱温度は好ましくは80℃以上、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下である。光の照射ではなく熱の付与により硬化性組成物層をBステージ化した場合でも、上述した塗布形状で上記硬化性組成物が塗布されていれば、第1,第2の接続対象部材の接続信頼性及び電極間の導通信頼性が十分に高くなる。
【0044】
次に、図3(c)に示すように、Bステージ化された硬化性組成物層3Bの上面3aに、第2の接続対象部材4を降下させて(図4のP方向)、第2の接続対象部材4を積層する。第1の接続対象部材2の上面2aの第1の電極2bと、第2の接続対象部材4の下面4aの第2の電極4bとが対向するように、第2の接続対象部材4を積層する。なお、第2の接続対象部材4の積層の後に、硬化性組成物層3AをBステージ化させるために光を照射してもよく、熱を付与してもよい。
【0045】
さらに、第2の接続対象部材4の積層の際に、Bステージ化された硬化性組成物層3Bを加熱して本硬化させ、硬化物層3を形成する。ただし、第2の接続対象部材4の積層の前に、硬化性組成物層3Bを加熱してもよい。第2の接続対象部材4を積層すると共に、もしくは積層した後に、硬化性組成物層3Bを加熱して本硬化させることが好ましい。
【0046】
熱の付与により硬化性組成物層3Bを硬化させるために、硬化性組成物層3Bを充分に硬化させるための加熱温度は好ましくは150℃以上、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。
【0047】
なお、硬化性組成物層3Aに光を照射せずに、硬化性組成物層3AをBステージ化しない場合には、硬化性組成物層3Aの上面3aに第2の接続対象部材4を積層し、硬化性組成物層3Aを加熱して、本硬化させればよい。
【0048】
硬化性組成物層3Bを硬化させる際に、加圧することが好ましい。加圧によって第1の電極2bと第2の電極4bとで導電性粒子5を圧縮することにより、第1,第2の電極2b,4bと導電性粒子5との接触面積を大きくすることができる。このため、導通信頼性を高めることができる。
【0049】
硬化性組成物層3Bを硬化させることにより、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材4とが、硬化物層3を介して接続される。また、第1の電極2bと第2の電極4bとが、導電性粒子5を介して電気的に接続される。このようにして、図1に示す接続構造体1を得ることができる。本実施形態では、光硬化と熱硬化とが併用されているため、硬化性組成物を短時間で硬化させることができる。
【0050】
さらに、接続構造体の作製時に、上記異方性導電ペーストを熱の付与又は光の照射によりBステージ化した後に、本硬化させることで、第1の接続対象部材上に配置された異方性ペースト層に含まれている導電性粒子が、硬化段階で大きく流動し難くなる。従って、導電性粒子が所定の領域に配置されやすくなる。具体的には、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を配置することができ、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続されるのを抑制できる。このため、接続構造体における電極間の導通信頼性を高めることができる。
【0051】
上記第2の接続対象部材として、アスペクト比が5以上である第2の接続対象部材を用いることが好ましい。上記第2の接続対象部材として、厚みが0.5mm以下である第2の接続対象部材を用いることが好ましい。このようなアスペクト比又は厚みを満足する第2の接続対象部材を用いた場合には、接続構造体が冷熱サイクル又は高温高湿下に晒された場合に、接続信頼性が特に問題となりやすい傾向がある。これに対して、上述した塗布形状で硬化性組成物を塗布することで、接続構造体が冷熱サイクル又は高温高湿下に晒された場合でも、接続信頼性を十分に高めることができる。上記第2の接続対象部材の上記アスペクト比の上限は特に限定されないが、該アスペクト比は好ましくは25以下である。上記アスペクト比は第2の接続対象部材における縦寸法と横寸法との比である。上記第2の接続対象部材の厚みの下限は特に限定されないが、該第2の接続対象部材の厚みは好ましくは0.1mm以上である。
【0052】
上記第2の接続対象部材のアスペクト比が1を超える場合に、上記第2の接続対象部材として、短辺方向における中央部と短辺方向における縁部とで上記第2の電極が偏在しており、上記短辺方向の中央部よりも短辺方向の縁部に上記第2の電極が多く存在する第2の接続対象部材を用い、上記硬化性組成物の塗布方向と上記第2の接続対象部材の長辺方向とが略平行となるように、上記硬化性組成物層上に、上記第2の接続対象部材を積層することが好ましい。この場合には、電極間の導通信頼性をより一層高めることができる。
【0053】
接続構造体1では、第2の接続対象部材4の外周の側面よりも側方の全領域に、硬化物層3が至っており、該硬化物層3によるフィレットXが形成されている。従って、上記硬化性組成物の塗布方向(図2に示すS方向)と直交する方向における第2の接続対象部材4の側面4cに、硬化物層3によるフィレットXが形成されている。このようなフィレットが形成されていることで、上記第1,第2の接続対象部材を強固に接続することができ、特に上記第2の接続対象部材の剥離を生じ難くすることができる。従って、上記接続構造体における第1,第2の接続対象部材の接続信頼性を効果的に高めることができる。
【0054】
上記第2の接続対象部材の外周の側面よりも側方の少なくとも一部の領域に、上記硬化物層が至っていることが好ましい。なお、上記第2の接続対象部材の外周側面よりも側方の全領域に、上記硬化物層が至っていなくてもよい。すなわち、上記第2の接続対象部材の外周側面よりも側方の全領域において、フィレットが形成されていてもよく、上記第2の接続対象部材の外周側面よりも側方の一部の領域に、フィレットが部分的に形成されていてもよい。
【0055】
上記第2の接続対象部材に対して、第1の接続対象部材が張り出した構造を、第2の接続対象部材の少なくとも1辺に有する接続構造体も本発明の範囲である。例えば、FOGや、FOBの場合に上記接続構造であることがある。
【0056】
第1,第2の接続対象部材の接続信頼性をより一層高める観点からは、フィレットの角度αは、0度を超え、好ましくは5度以上、より好ましくは10度以上、更に好ましくは20度以上、特に好ましくは30度以上、好ましくは90度未満、より好ましくは60度以下、更に好ましくは50度以下である。
【0057】
本明細書において、フィレットの角度αとは、フィレットの上端と下端とを結ぶ直線と、第2の接続対象部材の外周側面とのなす角度をいう。接続構造体1では、フィレットXの上端Xaは、上方の第2の接続対象部材4の外周側面よりも側方の領域に位置する先端であり、フィレットXの下端Xbは、下方の第1の接続対象部材2の上面2aと接している。なお、図1では、フィレットXの外表面は、直線状に延びている。フィレットの外表面は、凹状であってもよい。
【0058】
上記第2の接続対象部材上で、上記硬化物層の外周縁近傍の上面の一部が平坦になっていてもよい。この場合には、上記硬化物層の上面が平坦になっている部分はフィレットを形成していない。この場合には、フィレットの上端は、上方の第2の接続対象部材の外周側面よりも側方の領域に位置する先端であり、フィレットの下端は、下方の上記第1の接続対象部材の上面において、上記硬化物層の外周縁近傍の上面が平坦になる起点部分である。
【0059】
第2の接続対象部材4のコーナー部であって、第2の接続対象部材4の厚みの10%以上、100%以下の厚み部分に、硬化物層3によるフィレットを形成することが好ましい。第2の接続対象部材4のコーナー部であって、第2の接続対象部材4の厚みのより好ましくは25%以上、更に好ましくは50%以上、より好ましくは95%以下、更に好ましくは80%以下の厚み部分に、硬化物層3によるフィレットが形成される。このような高さで上記コーナー部にフィレットを形成することによって、第1,第2の接続対象部材の接続信頼性をより一層高めることができる。さらに、得られる接続構造体に冷熱サイクルなどの熱衝撃が与えられたり、又は接続構造体が高温高湿下に晒されたりしても、十分な接続信頼性をより一層効果的に確保できる。
【0060】
フィレットXの高さhは、第2の接続対象部材4の側面4cにおけるフィレット高さhで、好ましくは20μm以上、より好ましくは50μm以上、さらに好ましくは100μm以上である。また、フィレットXの高さhは、第2の接続対象部材4の厚みの、好ましくは25%以上、より好ましくは50%以上、好ましくは95%以下、より好ましくは80%以下である。
【0061】
フィレットXの幅wは、好ましくは50μm以上、より好ましくは100μm以上、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下である。
【0062】
上記フィレットの高さh及び上記フィレットの幅wはそれぞれ、第2の接続対象部材の1辺における平均値である。
【0063】
本発明に係る接続構造体の製造方法は、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))、又はフレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))等に使用できる。なかでも、本発明に係る接続構造体の製造方法は、COG用途に好適である。本発明に係る接続構造体の製造方法では、上記第1の接続対象部材と上記第2の接続対象部材として、半導体チップとガラス基板とを用いることが好ましい。
【0064】
COG用途では、特に、半導体チップとガラス基板との電極間を、異方性導電ペーストの導電性粒子により確実に接続することが困難なことが多い。例えば、COG用途の場合には、半導体チップの隣り合う電極間、及びガラス基板の隣り合う電極間の間隔が10〜20μm程度であることがあり、微細な配線が形成されていることが多い。微細な配線が形成されていても、本発明に係る接続構造体の製造方法により、導電性粒子を電極間に精度よく配置することができることから、半導体チップとガラス基板との電極間を高精度に接続することができ、導通信頼性を高めることができる。
【0065】
なお、上記硬化性組成物は、導電性粒子を含んでいなくてもよい。この場合には、第1,第2の接続対象部材を導電性粒子により電気的に接続することなく、第1,第2の接続対象部材を接着して接続するために、上記硬化性組成物を用いることができる。
【0066】
上記硬化性組成物は、熱硬化性成分を含む。上記異方性導電ペーストは、熱硬化性成分と導電性粒子とを含む。該熱硬化性成分は、熱硬化性化合物と熱硬化剤とを含有することが好ましい。また、上記硬化性組成物は、熱硬化性成分に加えて、光硬化性成分をさらに含むことが好ましい。該光硬化性成分は、光硬化性化合物と光硬化開始剤とを含むことが好ましい。上記硬化性組成物は、硬化性化合物として、熱硬化性化合物を含み、光硬化性化合物をさらに含むことが好ましい。上記熱硬化性化合物は、エポキシ基又はチイラン基を有する化合物であることが好ましい。上記光硬化性化合物は(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましい。
【0067】
硬化物層にボイドをより一層生じ難くし、第1,第2の接続対象部材の接続信頼性をより一層高める観点からは、上記硬化性組成物として、25℃及び10rpmでの粘度η1(10rpm)が10Pa・s以上、400Pa・s以下である硬化性組成物を用いることが好ましい。
【0068】
硬化物層にボイドをより一層生じ難くし、第1,第2の接続対象部材の接続信頼性をより一層高める観点からは、上記硬化性組成物として、25℃及び1rpmでの粘度η1(1rpm)の25℃及び10rpmの粘度η1(10rpm)に対する比である粘度比が1.1以上、5以下である硬化性組成物を用いることが好ましい。
【0069】
硬化物層にボイドをより一層生じ難くする観点からは、上記硬化性組成物の測定温度範囲40〜300℃での最低溶融粘度η2は、好ましくは1Pa・s以上、より好ましくは10Pa・s以上、更に好ましくは1000Pa・s以上である。上記最低溶融粘度η1の上限は特に限定されないが、上記最低溶融粘度η1は、好ましくは20万Pa・s以下、より好ましくは15000a・s以下、更に好ましくは5000Pa・s以下である。上記最低溶融粘度η1が1Pa・s未満であると、樹脂の流出によりボイドが発生しやすくなる傾向がある。上記最低溶融粘度η1が上記上限以下であると、導電性粒子と電極間に樹脂がかみ込み難くなり、接続不良をより一層確実に防ぐことができる。
【0070】
上記最低溶融粘度は、レオメーターを用いて、最低複素粘度η*を測定することにより求められる。測定条件は、歪制御1rad、周波数1Hz、昇温速度20℃/分、測定温度範囲40〜300℃とする。
【0071】
上記レオメーターとしては、STRESSTECH(EOLOGICA社製)等が挙げられる。
【0072】
上記硬化性組成物の上記最低溶融粘度を示す温度での1Hzにおける粘度η2(Pa・s)の最低溶融粘度を示す温度での10Hzにおける粘度η3(Pa・s)に対する粘度比(η2/η3)は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上である。上記粘度比(η2/η3)が上記下限以上であると、硬化物層により一層ボイドが生じ難くなる。上記粘度比(η2/η3)が3以上であると、硬化物層にボイドがかなり生じ難くなる。
【0073】
さらに、上記粘度比(η2/η3)が上記下限以上であると、硬化前又は硬化時に上記硬化性組成物が意図せずに濡れ拡がるのを抑制でき、接続構造体における汚染を生じ難くすることができる。従って、上記粘度比(η2/η3)が上記下限以上であると、硬化物層におけるボイドの抑制と上記硬化性組成物層の流動による汚染の抑制との双方の効果を得ることができる。上記粘度比(η2/η3)の上限は特に限定されないが、上記粘度比(η2/η3)は、8以下であることが好ましい。
【0074】
以下、上記硬化性組成物に含まれる各成分、及び含まれることが好ましい各成分の詳細を説明する。
【0075】
[熱硬化性化合物]
上記熱硬化性化合物は熱硬化性を有する。上記熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0076】
上記熱硬化性化合物としては、オキセタン化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。上記熱硬化性化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0077】
上記硬化性組成物の硬化を容易に制御したり、接続構造体における導通信頼性をより一層高めたりする観点からは、上記熱硬化性化合物は、エポキシ基又はチイラン基を有する熱硬化性化合物を含むことが好ましく、チイラン基を有する熱硬化性化合物を含むことがより好ましい。エポキシ基を有する熱硬化性化合物は、エポキシ化合物である。チイラン基を有する熱硬化性化合物は、エピスルフィド化合物である。硬化性組成物の硬化性を高める観点からは、上記熱硬化性化合物100重量%中、上記エポキシ基又はチイラン基を有する化合物の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、100重量%以下である。上記熱硬化性化合物の全量が上記エポキシ基又はチイラン基を有する化合物であってもよい。
【0078】
上記エピスルフィド化合物は、エポキシ基ではなくチイラン基を有するので、低温で速やかに硬化させることができる。すなわち、チイラン基を有するエピスルフィド化合物は、エポキシ基を有するエポキシ化合物と比較して、チイラン基に由来してより一層低い温度で硬化可能である。
【0079】
上記エポキシ基又はチイラン基を有する熱硬化性化合物は、芳香族環を有することが好ましい。上記芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、クリセン環、トリフェニレン環、テトラフェン環、ピレン環、ペンタセン環、ピセン環及びペリレン環等が挙げられる。なかでも、上記芳香族環は、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環であることが好ましく、ベンゼン環又はナフタレン環であることがより好ましい。また、ナフタレン環は、平面構造を有するためにより一層速やかに硬化させることができるので好ましい。
【0080】
[光硬化性化合物]
光の照射によって硬化するように、上記硬化性組成物は、光硬化性化合物を含むことが好ましい。光の照射により光硬化性化合物を半硬化(Bステージ化)させ、硬化性組成物の流動性を低下させることができる。
【0081】
上記光硬化性化合物としては特に限定されず、(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物及び環状エーテル基を有する光硬化性化合物等が挙げられる。
【0082】
上記光硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物であることが好ましい。(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物の使用により、接続構造体の導通信頼性をより一層高めることができる。得られる接続構造体の導通信頼性を効果的に高める観点からは、上記光硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を1個又は2個有することが好ましい。
【0083】
上記(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物としては、エポキシ基及びチイラン基を有さず、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物、及びエポキシ基又はチイラン基を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物が挙げられる。
【0084】
上記(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物として、(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート、又はイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート等が好適に用いられる。上記「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基とを示す。上記「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルとを示す。上記「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとを示す。
【0085】
上記(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物は特に限定されない。該エステル化合物として、単官能のエステル化合物、2官能のエステル化合物及び3官能以上のエステル化合物のいずれも用いることができる。
【0086】
上記エポキシ基又はチイラン基を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物の一部のエポキシ基又は一部のチイラン基を、(メタ)アクリロイル基に変換することにより得られた光硬化性化合物であることが好ましい。このような光硬化性化合物は、部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物又は部分(メタ)アクリレート化エピスルフィド化合物である。
【0087】
光硬化性化合物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物と、(メタ)アクリル酸との反応物であることが好ましい。この反応物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られる。エポキシ基又はチイラン基の20%以上が(メタ)アクリロイル基に変換(転化率)されていることが好ましい。該転化率は、より好ましくは30%以上、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。エポキシ基又はチイラン基の40%以上、60%以下が(メタ)アクリロイル基に変換されていることが最も好ましい。
【0088】
上記部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物としては、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、カルボン酸無水物変性エポキシ(メタ)アクリレート、及びフェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0089】
光硬化性化合物として、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有するフェノキシ樹脂の一部のエポキシ基又は一部のチイラン基を(メタ)アクリロイル基に変換した変性フェノキシ樹脂を用いてもよい。すなわち、エポキシ基又はチイラン基と(メタ)アクリロイル基とを有する変性フェノキシ樹脂を用いてもよい。
【0090】
また、上記光硬化性化合物は、架橋性化合物であってもよく、非架橋性化合物であってもよい。
【0091】
上記架橋性化合物の具体例としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジビニルベンゼン、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0092】
上記非架橋性化合物の具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0093】
光硬化性化合物を用いる場合には、光硬化性化合物と熱硬化性化合物との配合比は、光硬化性化合物と熱硬化性化合物との種類に応じて適宜調整される。上記硬化性組成物は、光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを重量比で、1:99〜90:10で含むことが好ましく、5:95〜70:30で含むことがより好ましく、10:90〜50:50で含むことが更に好ましい。上記硬化性組成物は、光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを重量比で、1:99〜50:50で含むことが特に好ましい。
【0094】
(熱硬化剤)
上記熱硬化剤は特に限定されない。上記熱硬化剤として、従来公知の熱硬化剤を用いることができる。上記熱硬化剤としては、イミダゾール硬化剤、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、ポリチオール硬化剤、酸無水物及びカチオン硬化剤等が挙げられる。上記熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0095】
硬化性組成物を低温でより一層速やかに硬化させることができるので、上記熱硬化剤は、イミダゾール硬化剤、ポリチオール硬化剤又はアミン硬化剤であることが好ましい。また、硬化性組成物の保存安定性を高めることができるので、潜在性の硬化剤が好ましい。該潜在性の硬化剤は、潜在性イミダゾール硬化剤、潜在性ポリチオール硬化剤又は潜在性アミン硬化剤であることが好ましい。上記熱硬化剤は、ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂等の高分子物質で被覆されていてもよい。
【0096】
上記イミダゾール硬化剤としては、特に限定されず、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
【0097】
上記ポリチオール硬化剤としては、特に限定されず、トリメチロールプロパン トリス−3−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトール テトラキス−3−メルカプトプロピオネート及びジペンタエリスリトール ヘキサ−3−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
【0098】
上記アミン硬化剤としては、特に限定されず、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0099】
上記カチオン硬化剤として、ヨードニウム塩又はスルホニウム塩が好適に用いられる。例えば、三新化学工業社製のサンエイドSI−45L、SI−60L、SI−80L、SI−100L、SI−110L、SI−150L、並びにADEKA製のアデカオプトマーSP−150、SP−170等が挙げられる。
【0100】
好ましいカチオン系硬化剤のアニオン部分としては、PF、BF、及びB(Ph-Fが挙げられる。
【0101】
上記熱硬化剤の含有量は特に限定されない。上記硬化性化合物中の上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記熱硬化剤の含有量は、好ましくは4重量部以上、より好ましくは10重量部以上、好ましくは40重量部以下、より好ましくは30重量部以下、更に好ましくは20重量部以下である。上記熱硬化剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化性組成物を充分に熱硬化させることができる。
【0102】
(光硬化開始剤)
上記光硬化開始剤は特に限定されない。上記光硬化開始剤として、従来公知の光硬化開始剤を用いることができる。上記光硬化開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0103】
上記光硬化開始剤としては、特に限定されず、アセトフェノン光硬化開始剤、ベンゾフェノン光硬化開始剤、チオキサントン、ケタール光硬化開始剤、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド及びアシルホスフォナート等が挙げられる。
【0104】
上記アセトフェノン光硬化開始剤の具体例としては、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、及び2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン等が挙げられる。上記ケタール光硬化開始剤の具体例としては、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
【0105】
上記光硬化開始剤の含有量は特に限定されない。上記硬化性化合物中の上記光硬化性化合物100重量部に対して、上記光硬化開始剤の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、好ましくは2重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。上記光硬化開始剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化性組成物を適度に光硬化させることができる。硬化性組成物に光を照射し、Bステージ化することにより、硬化性組成物の流動を抑制できる。
【0106】
(導電性粒子)
上記硬化性組成物は導電性粒子を含むことが好ましい。該導電性粒子は、第1,第2の接続対象部材の電極間を電気的に接続する。上記導電性粒子は、導電性を有する粒子であれば特に限定されない。導電性粒子の導電層の表面が絶縁層により被覆されていてもよい。この場合には、接続対象部材の接続時に、導電層と電極との間の絶縁層が排除される。上記導電性粒子としては、例えば、有機粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子もしくは金属粒子等の表面を金属層で被覆した導電性粒子、並びに実質的に金属のみで構成される金属粒子等が挙げられる。上記金属層は特に限定されない。上記金属層としては、金層、銀層、銅層、ニッケル層、パラジウム層及び錫を含有する金属層等が挙げられる。
【0107】
電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に設けられた導電層とを有することが好ましい。
【0108】
導電性粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。熱履歴を受けた場合の接続構造体の接続信頼性をより一層高める観点からは、導電性粒子の平均粒子径は、1μm以上、10μm以下であることが特に好ましい。
【0109】
導電性粒子の「平均粒子径」は、数平均粒子径を示す。導電性粒子の平均粒子径は、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
【0110】
上記導電性粒子の含有量は特に限定されない。硬化性組成物(異方性導電ペースト)100重量%中、上記導電性粒子の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、更に好ましくは19重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を容易に配置できる。さらに、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続され難くなる。すなわち、隣り合う電極間の短絡をより一層防止できる。
【0111】
(他の成分)
上記硬化性組成物は、フィラーを含むことが好ましい。フィラーの使用により、硬化性組成物の硬化物の熱線膨張率を抑制できる。上記フィラーの具体例としては、シリカ、窒化アルミニウム、アルミナ、ガラス、窒化ボロン、窒化ケイ素、シリコン、カーボン、グラファイト、グラフェン及びタルク等が挙げられる。フィラーは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。熱伝導率が高いフィラーを用いると、本硬化時間を短縮することができる。
【0112】
上記硬化性組成物は、硬化促進剤をさらに含むことが好ましい。硬化促進剤の使用により、硬化速度をより一層速くすることができる。硬化促進剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0113】
上記硬化促進剤の具体例としては、イミダゾール硬化促進剤及びアミン硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、イミダゾール硬化促進剤が好ましい。なお、イミダゾール硬化促進剤又はアミン硬化促進剤は、イミダゾール硬化剤又はアミン硬化剤としても用いることができる。
【0114】
上記硬化性組成物は、溶剤を含んでいてもよい。該溶剤の使用により、硬化性組成物の粘度を容易に調整できる。上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルセロソルブ、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン及びジエチルエーテル等が挙げられる。
【0115】
熱履歴を受けた場合の接続構造体の接続信頼性をさらに一層高める観点からは、上記硬化性組成物は、チクソ付与剤を含むことが好ましい。該チクソ付与剤としては、エラストマー粒子及びシリカ等が挙げられる。該エラストマー粒子としては、ゴム粒子が挙げられる。該ゴム粒子としては、天然ゴム粒子、イソプレンゴム粒子、ブタジエンゴム粒子、スチレンブタジエンゴム粒子、クロロプレンゴム粒子及びアクリロニトリルブタジエンゴム粒子等が挙げられる。上記シリカは、ナノシリカであることが好ましい。上記ナノシリカの平均粒子径は1000nm未満である。
【0116】
上記硬化性組成物100重量%中、上記チクソ付与剤の含有量は好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、好ましくは30重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。上記チクソ付与剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、熱履歴を受けた場合の接続構造体の接続信頼性がより一層高くなる。
【0117】
第1,第2の接続構造体の接続信頼性をより一層高める観点からは、上記硬化性組成物は、接着付与剤としては、カップリング剤及び可撓性材料等が挙げられる。
【0118】
上記硬化性組成物100重量%中、上記接着付与剤の含有量は好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、好ましくは50重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。上記接着付与剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、第1,第2の接続対象部材の接続信頼性がより一層高くなる。
【0119】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0120】
実施例及び比較例では、以下の材料を用いた。
【0121】
[光硬化性化合物]
DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
EBECRYL3702(ダイセル・サイテック社製、脂肪酸変性エポキシアクリレート)
[光硬化開始剤]
イルガキュア651(BASF社製)
[熱硬化性化合物]
レゾルシノール型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製「EX−201P」)
CTBN変性エポキシ樹脂(ADEKA社製「EPR−4023」)
[熱硬化剤]
TEP−2E4MZ(日本曹達社製、包摂イミダゾール)
[接着付与剤]
KBE−403(信越化学工業社製、エポキシ基含有シランカップリング剤)
[導電性粒子]
ニッケル被覆粒子(積水化学工業社製、平均粒子径3μm、ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面にニッケルめっき層1100Åが形成されている粒子)
[チクソ付与剤]
ナノシリカPM20L(トクヤマ社製)
[フィラー]
表面メチル処理シリカ(平均粒径0.7mm)(トクヤマ社製)
【0122】
(実施例1)
(1)異方性導電ペーストの調製
光硬化性化合物であるDPHA10重量部と、光硬化開始剤であるイルガキュア651を0.2重量部と、熱硬化性化合物であるレゾルシノール型エポキシ樹脂50重量部及びCTBN変性エポキシ樹脂10重量部と、熱硬化剤であるTEP−2E4MZ5重量部と、接着付与剤であるKBE−403を3重量部と、導電性粒子であるニッケル被覆粒子15重量部と、チクソ付与剤であるナノシリカPM20L3重量部と、フィラーである表面メチル処理シリカ(平均粒径0.7mm)50重量部とを配合して、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、異方性導電ペースト(硬化性組成物)を得た。
【0123】
(2)接続構造体の作製
L/Sが15μm/15μmのITO電極パターンが上面に形成された透明なガラス基板(第1の接続対象部材、縦24mm×横52mm×厚み0.6mm)を用意した。また、L/Sが15μm/15μmの金電極パターンが下面に形成された半導体チップ(第2の接続対象部材、縦15mm×横1.6mm×厚み0.2mm、短辺方向における中央部と短辺方向における縁部とで電極が偏在しており、短辺方向の中央部よりも短辺方向の縁部に電極が多く存在する)を用意した。
【0124】
上記ガラス基板上に、得られた異方性導電ペーストを直線状に塗布し、異方性導電ペースト層(硬化性組成物層)を形成した。
【0125】
なお、塗布方向と直交する方向における上記異方性導電ペースト層の中央部の最小厚みT(μm)と、塗布方向と直交する方向における上記異方性導電ペースト層の上記中央部の外側の縁部の最大厚みT2(μm)とを下記の表1に示すように設定した。また、塗布方向と直交する方向における上記異方性導電ペースト層の上記中央部が凹み、かつ上記縁部が盛り上がった形状になるように異方性導電ペーストを直線状に塗布した。
【0126】
次に、紫外線照射ランプを用いて、照射エネルギーが200mJ/cmとなるように、異方性導電ペースト層に上方から紫外線を照射し、光重合によって異方性導電ペースト層を半硬化させ、Bステージ化した。次に、Bステージ化された異方性導電ペースト層上に上記半導体チップを、電極同士が対向するように積層した。このとき、塗布方向と直交する方向における上記異方性導電ペースト層の上記縁部の最大厚み部分に対して、塗布方向と直交する方向における上記半導体チップの側面のずれ距離(μm)は、下記の表1に示す距離であった。
【0127】
その後、Bステージ化された異方性導電ペースト層の温度が185℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加圧加熱ヘッドを載せ、3MPaの圧力をかけて異方性導電ペースト層を185℃で10秒加熱して硬化させ、接続構造体を得た。
【0128】
(実施例2〜4)
異方性導電ペーストの調製の際に、下記の表1に示す成分を下記の表1に示す配合量で用いたこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0129】
得られた異方性導電ペーストを用いて、接続構造体の作製の際に、上記中央部の最小厚みT(μm)と、上記縁部の最大厚みT2(μm)と、上記半導体チップの側面のずれ距離(μm)とを下記の表1に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0130】
なお、塗布方向と直交する方向における上記異方性導電ペースト層の上記異方性導電ペーストにおける上記中央部が凹み、かつ上記縁部が盛り上がった形状になるように、塗布時のノズル内径、外径を選択することで、異方性導電ペーストを直線状に塗布した。
【0131】
また、実施例1〜4に関しては、塗布方向に対して、半導体チップ短辺より750μm
外側にて、硬化後のT(μm)と、T2(μm)を再測定したところ、ほぼ同じ値を示した。
【0132】
(比較例1〜2)
異方性導電ペーストの調製の際に、下記の表1に示す成分を下記の表1に示す配合量で用いたこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0133】
得られた異方性導電ペーストを用いて、接続構造体の作製の際に、上記中央部の最小厚みT(μm)と、上記縁部の最大厚みT2(μm)と、上記半導体チップの側面のずれ距離(μm)とを下記の表1に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0134】
(比較例3)
実施例1の異方性導電ペーストを用いて、ノズルを変更することで、ずれ距離を下記の表1に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0135】
(評価)
(1)室温での粘度
E型粘度測定装置(TOKI SANGYO CO.LTD社製、商品名:VISCOMETER TV−22、使用ローター:φ15mm、温度:25℃)を用いて、10rpm及び25℃での異方性導電ペーストの粘度η1(10rpm)を測定した。また、同様に1rpm条件下での粘度η1(1rpm)を測定し、粘度比(η1(1rpm)/η1(10rpm))を求めた。
【0136】
(2)上記粘度比(η2/η3)
レオメーター(EOLOGICA社製「STRESSTECH」)を用いて、測定条件:歪制御1rad、周波数1Hz、昇温速度20℃/分、測定温度範囲40〜300℃にて、最低溶融粘度η2及び最低溶融粘度を示す温度を測定した。また、周波数を10Hzにしたこと以外は上記と同様に粘度測定を行い、上記最低溶融粘度を示す温度での最低溶融粘度η3を測定し、上記粘度比(η2/η3)を求めた。
【0137】
(3)フィレット
レーザー顕微鏡(キーエンス製「VK−X200」)を用いて、得られた接続構造体において、上記半導体チップのコーナー部であって、上記半導体チップの厚みのどれだけの厚み部分に、上記硬化物層によるフィレットが形成されるか否かを評価した(コーナー部におけるフィレット高さ)。また、上記半導体チップの1辺での平均値で、半導体チップの側面におけるフィレット高さh及びフィレット幅wを測定した。
【0138】
(4)接続構造体における硬化物層におけるボイドの有無
得られた接続構造体において、異方性導電ペースト層が硬化した硬化物層にボイドが生じているか否かを、フレキシブルプリント基板又はガラス基板側から光学顕微鏡により観察した。ボイドの有無を下記の基準で判定した。ボイドが無いと接続信頼性が高くなり、ボイドが少ないほど接続信頼性が高くなる。
【0139】
[ボイドの有無の判定基準]
○:ボイド無し
△:僅かにボイドがあるが、電極のL/S、ピッチ以上のボイドはなし
×:隣接する電極間以上のサイズのボイドあり
【0140】
(5)電極間における導電性粒子の捕捉率(導電性粒子の配置精度)
得られた接続構造体における対向する上下の電極間に存在する導電性粒子の数を光学顕微鏡にてカウントした。導電性粒子の捕捉率を下記の判定基準で判定した。
【0141】
[導電性粒子の捕捉率の判定基準]
○:各電極間に存在する粒子が10個以上
×:各電極間に存在する粒子が9個以下
【0142】
(6)導通性
得られた接続構造体を四端子法用にて、20箇所の抵抗値を4端子法にて評価した。導通信頼性を下記の判定基準で判定した。
【0143】
[導通信頼性の判定基準]
○:全ての箇所で抵抗値が3Ω以下にある
△:抵抗値が3Ω以上の箇所が1箇所以上ある
×:全く導通していない箇所が1箇所以上ある
【0144】
(7)熱履歴を受けた場合の接続信頼性
得られた接続構造体100個を、−40℃で5分間保持し、次に125℃まで25分で昇温し、125℃で5分間保持した後、−40℃まで25分で降温する過程を1サイクルとする冷熱サイクル試験を実施した。1000サイクル後に、接続構造体を取り出した。
【0145】
冷熱サイクル試験後の100個の接続構造体について、上下の電極間の導通不良が生じているか否かを評価した。100個の接続構造体のうち、導通不良が生じている個数が1個以下である場合を「○」、2個以上、3個以下である場合を「△」、4個を超える場合を「×」と判定した。
【0146】
(8)耐湿熱試験
得られた接続構造体(n=15)において、85℃及び85%RHの条件で1000時間放置した後、同様に導通性を評価した。上記(6)の導通性の判定基準における結果が「○」である場合を「○」、導通性の判定基準における結果が「×」になる場合を「×」と判定した。
【0147】
さらに、得られた接続構造体(n=15)において、85℃及び85%RHの条件で、5Vにて隣接するバンプ間に電圧を印可して、500時間放置した後、同様に導通性を評価した。リーク電流が、3桁以上増加した場合を「×」、3桁未満であった場合を「○」と判定した。
【0148】
結果を下記の表1に示す。
【0149】
【表1】

【符号の説明】
【0150】
1…接続構造体
2…第1の接続対象部材
2a…上面
2b…第1の電極
3…硬化物層
3a…上面
3x…中央部
3y…縁部
3A…硬化性組成物層
3B…Bステージ化された硬化性組成物層
4…第2の接続対象部材
4a…下面
4b…第2の電極
4c…側面
5…導電性粒子
X…フィレット
Xa…上端
Xb…下端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の接続対象部材上に、熱硬化性成分を含む硬化性組成物を直線状に塗布して、硬化性組成物層を形成する工程と、
前記硬化性組成物層上に、前記第1の接続対象部材よりも小さい第2の接続対象部材を積層する工程と、
前記硬化性組成物層を加熱して本硬化させて、硬化物層を形成する工程とを備え、
塗布方向と直交する方向における前記硬化性組成物層の中央部の最小厚み(μm)をTとしたときに、塗布方向と直交する方向における前記硬化性組成物層の前記中央部の外側の縁部の最大厚み(μm)が1.1T以上、1.6T以下になるように、かつ前記縁部が盛り上がった形状になるように、前記硬化性組成物を直線状に塗布する、接続構造体の製造方法。
【請求項2】
前記硬化性組成物として、熱硬化性成分と導電性粒子とを含む異方性導電ペーストを用い、前記硬化性組成物層として異方性導電ペースト層を形成し、
第1の電極を上面に有する前記第1の接続対象部材上に、導電性粒子を含む異方性導電ペーストである前記硬化性組成物を直線状に塗布して、異方性導電ペースト層である硬化性組成物層を形成する工程と、
前記硬化性組成物層上に、前記第1の接続対象部材よりも小さく、かつ第2の電極を下面に有する第2の接続対象部材を積層する工程と、
前記硬化性組成物層を加熱して本硬化させて、硬化物層を形成する工程とを備え、
塗布方向と直交する方向における前記硬化性組成物層の中央部の最小厚み(μm)をTとしたときに、塗布方向と直交する方向における前記硬化性組成物層の前記中央部の外側の縁部の最大厚み(μm)が1.1T以上、1.6T以下になるように、かつ前記縁部が盛り上がった形状になるように、前記硬化性組成物を直線状に塗布する、請求項1に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項3】
前記第2の接続対象部材として、アスペクト比が5以上であり、かつ短辺方向における中央部と短辺方向における縁部とで前記第2の電極が偏在しており、短辺方向の前記中央部よりも短辺方向の前記縁部に前記第2の電極が多く存在する第2の接続対象部材を用い、
前記硬化性組成物の塗布方向と前記第2の接続対象部材の長辺方向とが略平行となるように、前記硬化性組成物層上に前記第2の接続対象部材を積層する、請求項2に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項4】
塗布方向と直交する方向における前記硬化性組成物層の前記縁部の最大厚み部分に対して、塗布方向と直交する方向における前記第2の接続対象部材の側面を、揃えるか、又は前記硬化性組成物層の塗布方向と直交する方向において300μm以下ずらすように、前記硬化性組成物を直線状に塗布し、かつ前記硬化性組成物層上に前記第2の接続対象部材を積層する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項5】
前記硬化性組成物として、25℃及び10rpmでの粘度が10Pa・s以上、400Pa・s以下である硬化性組成物を用いる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項6】
前記硬化性組成物として、25℃及び1rpmでの粘度の25℃及び10rpmの粘度に対する比である粘度比が1.1以上、5以下である硬化性組成物を用いる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項7】
前記硬化性組成物として、熱硬化性成分を含む硬化性組成物を用いるか、又は熱硬化性成分と光硬化性成分とを含む硬化性組成物を用いて、
前記硬化性組成物層に熱を付与又は光を照射することにより硬化を進行させて、Bステージ化された硬化性組成物層を形成する工程をさらに備え、
前記Bステージ化された硬化性組成物層の上面に、前記第2の接続対象部材を積層し、
前記Bステージ化された硬化性組成物層を加熱して本硬化させて、硬化物層を形成する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項8】
前記硬化性組成物として、熱硬化性成分と光硬化性成分とを含む硬化性組成物を用いて、

前記硬化性組成物層に光を照射することにより硬化を進行させて、Bステージ化された硬化性組成物層を形成し、
前記Bステージ化された硬化性組成物層を加熱して本硬化させて、硬化物層を形成する、請求項7に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項9】
前記硬化性組成物の塗布方向と直交する方向における前記第2の接続対象部材の側面に、前記硬化物層によるフィレットを形成する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項10】
前記第2の接続対象部材のコーナー部であって、前記第2の接続対象部材の厚みの10%以上、100%以下の厚み部分に、前記硬化物層によるフィレットを形成する、請求項9に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の接続構造体の製造方法により得られた接続構造体であって、
前記第1の接続対象部材と、
前記第2の接続対象部材と、
前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続している前記硬化物層とを備える、接続構造体。
【請求項12】
前記硬化性組成物が、前記導電性粒子を含む前記異方性導電ペーストであり、
前記第1の電極を上面に有する前記第1の接続対象部材と、
前記第2の電極を下面に有する前記第2の接続対象部材と、
前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続している前記硬化物層とを備え、
前記第1の電極と前記第2の電極とが、前記導電性粒子により電気的に接続されている、請求項11に記載の接続構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−175048(P2012−175048A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38430(P2011−38430)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】