説明

接触燃焼式メタン検出装置及びメタン検出方法

【構成】
半導体基板の空洞に、薄膜ヒータをメタンの燃焼触媒で被覆した検知片と、薄膜ヒータを補償用材料で被覆した補償片とを設け、ブリッジ回路に組み込む。検知片がメタンの着火点以上に昇温しないように、駆動回路により電力を加えた際のブリッジ回路の出力を0点出力とし、複数の0点出力を基に基準値を発生させて記憶する。検知片がメタンの着火点以上の温度でのブリッジ回路の出力を、基準値により補正してメタンを検出する。
【効果】
半導体基板の空洞にヒータ薄膜を設けた接触燃焼式メタンセンサに対して、ヒータ抵抗のドリフトを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、接触燃焼式ガスセンサを用いたメタンの検出に関する。
【背景技術】
【0002】
発明者らは、半導体基板の空洞部に検知片と補償片とを設けた接触燃焼式ガスセンサにより、メタンを検出することを検討している。メタンの検出温度は約500℃で、1回の検出サイクルは例えば10秒で、この内100msの間ガスセンサを加熱し、他は室温とする。発明者はこの条件でガスセンサを駆動すると、数ヶ月程度でヒータ抵抗が1%程度変化することを見出した(図11,図16)。これはメタン濃度に換算すると10000ppm程度に相当する。また検知片と補償片とでヒータ抵抗の変化は同じではなかったので、検知片と補償片とをブリッジ回路に組み込んでも、出力の変動を打ち消すことはできなかった。そこで発明者は、接触燃焼式ガスセンサのヒータ抵抗の変化を補正することを検討して、この発明に至った。
【0003】
ここで関連する先行技術を示す。特許文献1(JP2006-112911A)は、一般的な接触燃焼式ガスセンサに対し、センサ温度を300〜500℃程度の温度と、100〜250℃程度の温度とに変化させ、300〜500℃での出力と100〜250℃での出力の差から、炭化水素を検出することを開示している。特許文献1は、100〜250℃との出力の差を求めることにより、水素の影響を補正し、センサの温度依存性を補正し、その他の特性変化を相殺できるとしている。特許文献1は、半導体基板の空洞にヒータ薄膜を設けた接触燃焼式ガスセンサについては、検討していない。
【0004】
特許文献2(JP4035099B)は、MEMS(Micro Electro Mechanical System)を用いた接触燃焼式ガスセンサによりエタノール等の有極性ガスを検出する載荷、センサを複数の温度に変化させ、温度の異なる信号で補正することにより、湿度の影響を補正することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】JP2006-112911A
【特許文献2】JP4035099B
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の課題は、半導体基板の空洞にヒータ薄膜を設けた接触燃焼式メタンセンサに対して、ヒータ抵抗のドリフトを補正することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、半導体基板の空洞に、薄膜ヒータをメタンの燃焼触媒で被覆した検知片と、薄膜ヒータを補償用材料で被覆した補償片とを設け、検知片と補償片とを組み込んだブリッジ回路の出力により、メタンを検出するメタン検出装置において、
前記ブリッジ回路に、検知片がメタンの着火点以上に昇温しないように、駆動回路により電力を加え、
検知片がメタンの着火点未満の温度での、ブリッジ回路の出力を0点出力とし、ガス検出部で複数の0点出力を基に基準値を発生させてメモリに記憶し、
検知片がメタンの着火点以上の温度でのブリッジ回路の出力を、ガス検出部で前記基準値により、薄膜ヒータの抵抗変化を補正してメタンを検出することを特徴とする。
【0008】
この発明はまた、半導体基板の空洞に、薄膜ヒータをメタンの燃焼触媒で被覆した検知片と、薄膜ヒータを補償用材料で被覆した補償片とを設け、検知片と補償片とを組み込んだブリッジ回路の出力により、メタンを検出する方法において、
前記ブリッジ回路に、検知片がメタンの着火点以上に昇温しないように、駆動回路により電力を加え、
検知片がメタンの着火点未満の温度での、ブリッジ回路の出力を0点出力とし、ガス検出部で複数の0点出力を基に基準値を発生させてメモリに記憶し、
検知片がメタンの着火点以上の温度でのブリッジ回路の出力を、ガス検出部で前記基準値により、薄膜ヒータの抵抗変化を補正してメタンを検出することを特徴とする。
【0009】
この発明ではメタンの着火点未満の温度でのブリッジ回路の出力を0点出力とし、複数の0点出力を用いて、即ち複数の0点出力の平均値、メジアン等を用いて、基準値を発生させる。ここで0点出力を発生させたときと、メタンを検出するときとで、ブリッジ回路に加える電圧が異なる場合、電圧の比に応じた補正を加える。そしてメタンの着火点以上の温度でのブリッジ回路の出力を基準値により補正し、例えばブリッジ回路の出力と基準値との差により、メタンを検出する。なお基準値の寄与を小さくし、例えばブリッジ回路の出力と(基準値×1/2)の差を用いても良い。この発明では、薄膜ヒータの抵抗値のドリフトを補正でき、例えばドリフトによる誤差を数分の1に補正できる。また基準値は、複数回測定した0点出力から発生させるので、信頼性が高い。この明細書において、メタン検出装置に関する記載はそのままメタン検出方法にも当てはまり、逆にメタン検出方法に関する記載はそのままメタン検出装置にも当てはまる。またこの発明の実施に際しては、当業者の常識、先行技術の開示等を参照し、実施例を変更できる。特許請求の範囲の用語の意味は、当業者の常識及びガスセンサでの周知技術を参酌して定める。
【0010】
好ましくは、ブリッジ回路の0点出力が定常値に達する時間以上の間、検知片を前記駆動回路によりメタンの着火点未満の温度に加熱する。定常値に達する時間以上の間とは、例えば90%応答時間以上の間を意味する。0点出力とは室温で測定しても良いが、極く小さな駆動電圧を作り出すことが難しく、またメタンを検出する温度に近い温度で測定する方が、誤差が小さい。そこで例えば100〜250℃で0点出力を測定する。するとブリッジ回路出力が安定するまでに時間が必要で、ブリッジ回路の0点出力が定常値に達する時間以上の間、検知片を前記駆動回路によりメタンの着火点未満の温度に加熱すると、0点出力の安定値を測定できる。
より好ましくは、検知片を室温、メタンの着火点未満の温度、メタンの着火点以上の温度の順に、前記駆動回路により温度変化させるサイクルを繰り返す。すると例えば100〜250℃に予熱した後に、500℃程度に検知片と補償片を加熱するので、検知片及び補償片に加わる熱衝撃が小さい。
【0011】
好ましくは、メモリに記憶した基準値の初期値と基準値との差が許容範囲を越えると、故障であることを出力する。このようにすると、ヒータ抵抗のドリフトを補正できる限界を定め、限界を越えると故障を報知できる。
特に好ましくは、検知片がメタンの着火点以上の温度でのブリッジ回路の出力中で、メタンが存在しない側の出力を参照出力としてメモリに記憶し、基準値と参照出力との差が第2の許容範囲を越えると故障であることを出力する。このようにすると、基準値の信頼性をより確実に確認できる。

【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例のガス検出装置のブロック図
【図2】実施例のマイクロコンピュータのブロック図
【図3】実施例で用いたメタンセンサの要部平面図
【図4】実施例での1サイクル分の動作を示すフローチャート
【図5】実施例の1サイクル分の動作を示す図で、PHはヒータ電力を、ΔTは昇温幅を、Voutはブリッジ回路出力を表す。
【図6】変形例の1サイクル分の動作を示す図で、PHはヒータ電力を、ΔTは昇温幅を、Voutはブリッジ回路出力を表す。
【図7】実施例での基準値の管理を示す図
【図8】実施例での基準値の管理を示すフローチャート
【図9】400℃へパルス加熱した際の、高温側でのヒータ抵抗の変化を示す特性図
【図10】450℃へパルス加熱した際の、高温側でのヒータ抵抗の変化を示す特性図
【図11】500℃へパルス加熱した際の、高温側でのヒータ抵抗の変化を示す特性図
【図12】550℃へパルス加熱した際の、高温側でのヒータ抵抗の変化を示す特性図
【図13】600℃へパルス加熱した際の、高温側でのヒータ抵抗の変化を示す特性図
【図14】400℃へパルス加熱した際の、低温側でのヒータ抵抗の変化を示す特性図
【図15】450℃へパルス加熱した際の、低温側でのヒータ抵抗の変化を示す特性図
【図16】500℃へパルス加熱した際の、低温側でのヒータ抵抗の変化を示す特性図
【図17】550℃へパルス加熱した際の、低温側でのヒータ抵抗の変化を示す特性図
【図18】600℃へパルス加熱した際の、低温側でのヒータ抵抗の変化を示す特性図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0014】
図1〜図18に、実施例を示す。図1において、2はガス検出装置で、4はマイクロコンピュータであり、6はトランジスタ等のスイッチ、8はダイオード、10はコイルあるいは磁性体などのインダクタンス素子、12はコンデンサである。そしてトランジスタ6〜コンデンサ12により、H/L2段階の出力の電源を構成し、電源の構成は任意である。 R1,R2は固定抵抗、14は補償片、16は検知片で、固定抵抗R1,R2及び補償片14,検知片16でブリッジ回路を構成する。そしてブリッジ回路の出力を差動増幅器18で増幅し、出力Voutとする。なお図1の鎖線の範囲に示すように、固定抵抗R1と補償片14とを直列に、固定抵抗R2と検知片16とを直列に接続してブリッジ回路としてもよい。
【0015】
マイクロコンピュータ4の構成を図2に示し、タイマ22は例えば10秒周期で動作し、例えば100msecが0点出力の測定用の区間、次の100msecがメタンの検出用の区間、残る9.8secが室温への放置区間である。電源制御ぶ24はタイマ22の信号に従ってトランジスタ6を制御し、例えば0点出力の測定用の区間では、トランジスタ6を例えば100kHzでオン/オフさせ、ブリッジ回路に実効電圧で0.5〜1.5V程度の電圧を加える。またメタン検出区間でトランジスタ6を常時オン、もしくはオン/オフさせ、ブリッジ回路に実効電圧で3V程度の電圧を加える。図5,図6にヒータ電力のパターンを示す。好ましくはブリッジ回路に加える電力を、図5,図6のように方形波状に変化させずに緩やかに変化させ、補償片14,検知片16へ加える熱衝撃を弱める。ガス検出部26は、メタンガス検出温度でのブリッジ回路の出力Voutと、基準値記憶部30に記憶した基準値との差からメタンガスを検出する。基準値管理部28は、複数の0点出力を基に基準値を発生させ、また基準値が許容範囲内であるかどうかを確認し、許容範囲を越えると故障信号を出力する。またA/D変換部32は出力VoutをA/D変換する。
【0016】
図3に接触燃焼式メタンセンサ34を示し、35はシリコンなどの半導体基板で、例えば一対の空洞36,36が設けられている。空洞36上に二酸化ケイ素,五二酸化タンタルなどの薄膜のブリッジ37、あるいは薄膜のダイアフラムが設けられ、その中央部に空洞40が設けられ、空洞36と連通し、ブリッジ37の底面側は空洞36に接している。ブリッジ37上に薄膜ヒータ38が設けられ、例えば膜厚500nm程度のPt膜から成り、検知片16も補償片14も、薄膜ヒータ38の構成は共通である。補償片14側では薄膜ヒータ38をメタン酸化活性の低い材料、例えばアルミナで覆い、検知片16側では薄膜ヒータ38をメタン燃焼触媒、例えばアルミナにPdもしくはPtを添加した触媒で覆う。薄膜ヒータ38をパッド41〜43に接続し、ワイヤボンディングなどにより、図1の回路を搭載した基板に接続する。なおメタンセンサ34の構造は任意で、例えば補償片14と検知片16とを別の基板に搭載してもよく、空洞40の有無は任意で、薄膜ヒータ38の材質も任意である。さらにブリッジ37無しで、薄膜ヒータ38をアルミナ等の補償片材料とメタン酸化触媒で被覆し、検知片16と補償片14とにしても良い。
【0017】
図4,図5に1サイクル分のガス検出装置の動作を示し、1サイクルは例えば10秒である。センサをT1秒間(例えば100msecで、好ましくは50〜150msec)電力P1で例えば100〜250℃程度に加熱する。なおメタンの着火点は一般に300℃以上で、この温度ではCO,エタノール,水素などは燃焼するが、メタンは燃焼しない。室温と200℃程度の間で温度変化させた際の、ブリッジ回路の出力の90%応答時間は例えば50m秒程度である。接触燃焼式ガスセンサを温度変化させた際の熱時定数は、補償片14と検知片16とで一般に異なる。そこでセンサを温度変化させると、検知片と補償片とは共に定常温度に向けて接近し、この間ブリッジ回路の出力は安定しない。このためT1秒間の期間をT2秒間の期間とほぼ等しくしし、センサ出力が定常値に達するのを待って、0点出力V1をサンプリングする。 そしてT1秒目の増幅回路の出力Voutを0点出力として記憶する。なお0点出力はT1秒目である必要はなく、ブリッジ回路の出力が定常値に達した後の出力であればよい。
【0018】
センサを室温へ冷却することなく、直ちにT2秒間電力P2で加熱する。ここでの加熱温度は例えば500℃とし、加熱時間T2は例えば100m秒(好ましくは80〜150msec)とし、電力P2と電力P1との比は例えば10:1〜3:1程度とする。時間T2秒程度の間かけて、センサ出力は定常値に近づき、500℃程度の区間での最後の信号をサンプリングし、0点出力を元に発生させた基準値との差からメタンを検出する。次いで例えば9.8秒間、ヒータ電力を0として待機する。図5のV1はT1秒間の加熱での最後の時点でのブリッジ回路出力(0点出力)を、V2はT2秒間の加熱での最後の時点でのブリッジ回路出力(メタン検出用の出力)を示す。ΔTは室温からの昇温幅を示す。
【0019】
基準値は例えば次にように発生させる。最初に複数サイクルの0点出力を、平均値を求める、分布の中央値を求める等により統計化する。0点出力を測定した時点と、メタンを検出する時点とで、ブリッジ回路に加える電圧が異なる場合、これに応じた補正を施し、基準値とする。例えば0点出力を測定する時点の回路電圧がU1、メタンを検出する時点での回路電圧がU2であれば、0点出力を統計化した値にU2/U1を乗算し基準値とする。加熱電力がPWM制御により制御され、回路電圧が一定であれば、回路電圧に対する補正は不要である。なお複数サイクルの0点出力を用いる代わりに、1サイクル内で複数回0点出力を測定して平均化しても良い。ただしこの手法では少数個の0点出力から基準値を発生させるので、信頼性が低い。また各サイクル毎に0点出力をサンプリングする必要はなく、例えば1日に数回程度0点出力をサンプリングしても良い。0点出力から基準値への統計化には、0点出力の平均値、分布のメディアンなどを用い、0点出力は例えば1日1回程度の頻度、好ましくは1週間に1回程度の頻度で、かつ毎月1回以上の頻度で更新する。
【0020】
図6は変形例を示し、例えば10m秒程度の短い時間の間、センサを極めて小さな電力P3で室温より僅かに加熱する。この時の温度変化の幅は例えば10℃〜20℃程度とする。すると温度変化の幅が小さいので、検知片と補償片とのヒータ抵抗の変化も僅かであり、室温でのヒータ抵抗を測定することができる。
【0021】
図7,図8に基準値の管理を示す。基準値記憶部30は基準値の推移を記憶し、基準値の初期値に対し、許容範囲±Aを定め、基準値がこの範囲から逸脱すると、故障を出力する。このようにして薄膜ヒータ38の抵抗値が初期値に対し所定値以上変化すると、故障と見なす。メタン検出の信頼性をさらに高めるため、メタン検出温度でのセンサ出力のうちで、即ち図5,図6の出力V2のうちで、メタンが存在しない側の出力を参照値として記憶する。メタンが存在すれば検知片16の抵抗値が増加し、補償片14の抵抗値は変化しないので、ブリッジ回路からの最低出力がメタンが存在しない際の出力に相当する。そこで例えば1日などの所定の期間での、メタン検出温度でのブリッジ回路の出力の最低値、あるいはブリッジ回路の出力のメディアンなどから、メタンが存在しない際の出力を参照値としてサンプリングし記憶する。そして参照値と基準値の差が第2の許容範囲±Bを越えると故障とする。
【0022】
図9〜図18に薄膜ヒータ38の挙動を示し、10秒間に100m秒ずつ400〜600℃まで加熱した際の、初期値に対する抵抗値の変化率を示す。図9〜図13は加熱温度での抵抗値の変化を示し、加熱温度は図9で400℃、図10で450℃、図11で500℃、図12で550℃、図13で600℃である。図14〜図18は同じ条件での室温での抵抗値の挙動を示し、加熱温度は図14で400℃、図15で450℃、図16で500℃、図17で550℃、図18で600℃である。また加熱温度が同じ図で、同じ記号は同じ薄膜ヒータを示している。図9〜図18の縦軸は、薄膜ヒータの抵抗変化率を示し、ブリッジ回路の出力ではない。さらに検知片16と補償片14のいずれかが特に抵抗値のドリフトが大きいということはなく、検知片も補償片も同程度に抵抗値がドリフトした。
【0023】
図9〜図18から明らかなように、薄膜ヒータ38の抵抗値は経時的にドリフトし、加熱温度が高いほどドリフトが著しい。また加熱温度が同じ図を比較すると、加熱温度での抵抗値と室温での抵抗値は平行に変化しており、このことは抵抗温度係数の変化が小さく、加熱温度での抵抗値と室温での抵抗値が強く相関することを意味している。そこでメタンの着火点未満の温度での抵抗値と、メタン検出温度での抵抗値とを組み合わせることにより、薄膜ヒータ38のドリフトを補正できる。そして具体的には、図5,図6での出力V2と基準値との差を求めることにより、ドリフトの影響を補正できる。
【0024】
薄膜ヒータ38の抵抗値が著しく変化した状況で、ガスの検出を続けることは好ましいことではない。例えばセンサの加熱温度が変化していることが考えられる。このため基準値が初期値に対して、許容範囲±A以上変動すると故障とする。また一般に参照値と基準値との差は、第2の許容範囲±Bの範囲に収まるはずである。そこでこの範囲から逸脱した場合にも、故障を検出する。
【0025】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) 図9〜図18の測定を続け、1年分のデータを取得した。加熱温度500℃での5個の薄膜ヒータの内で、初期値に対する1年後の抵抗値が最大のものと最小のものとを組み合わせ、接触燃焼式の検知片と補償片とすると、メタン5000ppmでの出力は15000〜-5000ppmとなる。これに対して実施例の補正を施すと、メタン5000ppmでの出力は7000〜3000ppmとなり、メタンセンサとして許容される範囲に含まれている。
(2) 図5のように100〜250℃まで100m秒程度かけて検知片と補償片とを加熱すると、検知片と補償片との間の熱時定数の差の影響を避けて、基準値を測定できる。そしてこの後、室温に戻すことなく、500℃程度まで加熱することにより、熱衝撃を弱めることができる。
(3) 基準値が初期値からどの程度変動したかを管理することにより、センサの信頼性を評価できる。
(4) 基準値とメタン検出温度でのメタンが無い際の出力に対応する参照値とを比較することにより、センサの信頼性をさらにチェックできる。

【符号の説明】
【0026】
2 ガス検出装置
4 マイクロコンピュータ
6 トランジスタ
8 ダイオード
10 インダクタンス素子
12 コンデンサ
R1,R2 固定抵抗
14 補償片
16 検知片
18 増幅器
22 タイマ
24 電源制御部
26 ガス検出部
28 基準値管理部
30 基準値記憶部
32 A/D変換部
34 接触燃焼式メタンセンサ
35 半導体基板
36,40 空洞
37 ブリッジ
38 薄膜ヒータ
41〜43 パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の空洞に、薄膜ヒータをメタンの燃焼触媒で被覆した検知片と、薄膜ヒータを補償用材料で被覆した補償片とを設け、検知片と補償片とを組み込んだブリッジ回路の出力により、メタンを検出する装置において、
前記ブリッジ回路に、検知片がメタンの着火点以上に昇温しないように、駆動回路により電力を加え、
検知片がメタンの着火点未満の温度での、ブリッジ回路の出力を0点出力とし、ガス検出部で複数の0点出力を基に基準値を発生させてメモリに記憶し、
検知片がメタンの着火点以上の温度でのブリッジ回路の出力を、ガス検出部で前記基準値により補正することにより、薄膜ヒータの抵抗変化を補正してメタンを検出する、
ように構成されていることを特徴とする、メタン検出装置。
【請求項2】
ブリッジ回路の0点出力が定常値に達する時間以上の間、検知片を前記駆動回路によりメタンの着火点未満の温度に加熱するように、構成されていることを特徴とする、請求項1のメタン検出装置。
【請求項3】
検知片を室温、メタンの着火点未満の温度、メタンの着火点以上の温度の順に、前記駆動回路により温度変化させるサイクルを繰り返すように構成されていることを特徴とする、請求項2のメタン検出装置。
【請求項4】
メモリに記憶した基準値の初期値と基準値との差が許容範囲を越えると、故障であることを出力するように構成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかのメタン検出装置。
【請求項5】
検知片がメタンの着火点以上の温度でのブリッジ回路の出力中で、メタンが存在しない側の出力を参照出力としてメモリに記憶し、基準値と参照出力との差が第2の許容範囲を越えると故障であることを出力するように構成されていることを特徴とする、請求項4のメタン検出装置。
【請求項6】
半導体基板の空洞に、薄膜ヒータをメタンの燃焼触媒で被覆した検知片と、薄膜ヒータを補償用材料で被覆した補償片とを設け、検知片と補償片とを組み込んだブリッジ回路の出力により、メタンを検出する方法において、
前記ブリッジ回路に、検知片がメタンの着火点以上に昇温しないように、駆動回路により電力を加え、
検知片がメタンの着火点未満の温度での、ブリッジ回路の出力を0点出力とし、ガス検出部で複数の0点出力を基に基準値を発生させてメモリに記憶し、
検知片がメタンの着火点以上の温度でのブリッジ回路の出力を、ガス検出部で前記基準値により、薄膜ヒータの抵抗変化を補正してメタンを検出することを特徴とする、メタン検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−63141(P2012−63141A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189247(P2010−189247)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000112439)フィガロ技研株式会社 (58)
【Fターム(参考)】