説明

描画装置

【課題】シリコンなどのウエハー上にレーザー光を用いて露光することで描画を行う描画装置において、ナノミクロンオーダーの高精度な位置決めを行うこと。
【解決手段】レーザー光を一定方向に往復させて所定の間隔でドットパターンの描画を行う光学素子用の描画装置であって、レーザー光を照射する照明光学系と、
基盤を載置するXYステージと前記照明光学系と前記XYステージとの相対位置を測定する前記XYステージ上に設置されたナノスケールと、前記基盤上の描画信号の基準位置とその描画信号波形データ出力と、前記ナノスケールによって測定された往路のドットパターンの描画終了位置から、復路のドットパターンの描画開始位置を抽出する軸制御ユニットと、前記軸制御ユニットによって抽出された描画開始位置から描画を開始するように前記照明光学系の位置を補正する位置補正手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンなどのウエハー上にレーザー光を用いて露光することで描画を行う描画装置であり、特にナノミクロンオーダーの高精度な位置決めを行う描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーザー光による照射位置の位置補正は、二次元パターンが形成された基準基板の画像を撮像し、この撮像で得た二次元パターンから位置決めステージの位置ずれを求め、この位置ずれに基づいて位置決めステージの位置を二次元で構成し、位置補正が行われる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−214388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように基準基板の画像を撮像して得た二次元パターンから、位置決めステージの位置ずれを求めて位置補正を行う場合、高速カメラのシャッター開放時間を短くして連続撮像することで、二次元位置精度をサブミクロンのオーダーで補正することができる。しかしながら、位置補正をナノミクロンオーダーで補正することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の描画装置は、レーザー光を一定方向に往復させて所定の間隔でドットパターンの描画を行う光学素子用の描画装置であって、レーザー光を照射する照明光学系と、基盤を載置するXYステージと前記照明光学系と前記XYステージとの相対位置を測定する前記XYステージ上に設置されたナノスケールと、前記基盤上の描画信号の基準位置とその描画信号波形データ出力と、前記ナノスケールによって測定された往路のドットパターンの描画終了位置から、復路のドットパターンの描画開始位置を抽出する軸制御ユニットと、前記軸制御ユニットによって抽出された描画開始位置から描画を開始するように前記照明光学系の位置を補正する位置補正手段と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
上記の構成によれば、位置補正をナノミクロンオーダーで補正することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施の形態における描画装置の概略構成図
【図2】実施の形態におけるドットパターンを描画する時の光学ヘッドの軌跡を示す模式図
【図3】実施の形態における描画ドット位置間距離の補正制御を説明する模式図
【図4】実施の形態における描画ドットパターンの行間位置制御のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は本実施の形態の描画装置の概略構成図である。描画装置1は、XYステージ2と、レーザーを照射する光学ヘッド3とそれを制御する光学系制御ユニット4、信号発生器5、入力部6によって構成される。XYステージ2は、被処理基盤7を保持するワーク台座8とそれを支持するX軸スライダー9と、Y1軸スライダー10と、Y2軸スライダー11と、各スライダーを動作させるX軸ドライバ12、Y1軸ドライバ13、Y2軸ドライバ14と被処理基盤7のXY位置情報を測定するX軸ナノスケール15、Y1軸ナノスケール16、Y2軸ナノスケール17と、入力部6からの動作制御信号によりX軸ドライバ12、Y1軸ドライバ13、Y2軸ドライバ14に駆動命令を入力する軸制御ユニット18と、X軸ナノスケール15、Y1軸ナノスケール16、Y2軸ナノスケール17からの位置情報を軸制御ユニット18へ出力するX軸ナノスケールドライバ19、Y1軸ナノスケールドライバ20、Y2軸ナノスケールドライバ21と、X軸スライダー9、Y1軸スライダー10、Y2軸スライダー11が設置される定盤22と除振台23よって構成される。
X軸ナノスケール15で測定された位置データを信号発生器5に出力する。
【0009】
被処理基盤7は、硝子板やシリコンなどのウエハー上に感光レジストや熱反応材料を塗布したものである。
【0010】
光学ヘッド3は、ガスレーザーや半導体レーザーなどのレーザーと波長板や偏光ビームスプリッタや対物レンズなどの光学素子で構成される。
【0011】
被処理基盤7をワーク台8に設置し、入力部6に以下の設定値を入力する。レーザー光を露光するエリアである描画領域を示すX描画開始位置/X描画終了位置/Y描画開始位置/Y描画終了位置と、Y方向の描画ピッチの間隔を示すY方向描画ピッチ間隔設定値、描画パターンのドット位置補正設定、レーザー光のパワーや発光パルス周波数などの光学系の設定値、描画動作中のX方向速度・Y方向速度などのXYステージテーブル駆動設定値を入力する。これらの設定値に基づいて、光学系制御ユニット4、信号発生器5、軸制御ユニット18に描画動作の命令を行う。その命令に従い、披処理基盤7を光学ヘッド3によって露光、ドットパターンを描画する。具体的には、X描画開始位置/X描画終了位置によって、X軸スライダー9の駆動範囲を設定し、Y描画開始位置/Y描画終了位置によって、Y1軸スライダー10、Y2軸スライダー11の駆動範囲を設定し、Y方向描画ピッチ間隔設定値によって、Y1軸スライダー10、Y2軸スライダー11のY方向描画ピッチ幅を設定する。レーザー光のパワーや発光パルス周波数などの光学系の設定値によって光学ヘッド3からレーザーの照射に必要な設定を行う。
【0012】
ドットパターンの描画は、ワーク台8に設置された被処理基盤7のX軸スライダー9をX方向に移動させ、Y1軸スライダー10およびY2軸スライダー11をY方向に移動させながら、発光パルス周波数によって光学ヘッド3からレーザーを照射することで、ドットパターンを作成する。ドットパターンはX軸スライダー9の往路方向と復路方向の2方向を進行しながら作成する。X軸スライダー9の往路方向動作は、X描画開始位置まで、ステージをX方向に加速させ、描画開始位置より一定の速度で所定の描画終了位置描画までいき、描画終了位置より減速し停止する。
【0013】
X軸スライダー9復路方向動作は、Y1軸スライダー10、Y2軸スライダー11をY方向にピッチ間隔の設定距離進み、復路方向にX方向ステージを加速していき、往路での描画終了位置もしくはその近辺位置から一定の速度で往路での描画開始位置もしくはその近辺位置まで進み、その位置より減速し停止する。
【0014】
ドットパターンの描画は、X軸スライダー9が一定の速度で動作している時に、信号発生器5の設定された発光周波数により、光学ヘッドのレーザーをON/OFF発光させ、ドットパターンを描画する。
【0015】
図2は描画装置1でドットパターンを描画する時の光学ヘッドの軌跡を示す模式図である。
【0016】
XYステージ2上のワーク台座8に固定されている処理基盤220は、X方向往路動作21をし、Y方向移動動作222をし、X方向復路動作223をし、Y方向移動動作224を繰り返す。上記動作中の描画開始位置225より、レーザーを発光し、露光エリア226中露光する。上記より、ドットパターンの描画はX軸スライダー9、Y1軸スライダー10、Y2軸スライダー11が一定の速度で動作している時であるので、X軸スライダー9の加減速時、およびY方向移動時には、レーザーを発光させない。そして、描画終了位置227にて露光を終了する。この往復動作により、露光エリア226にドットパターンの描画を行う。
【0017】
図3は描画ドット位置間距離の補正制御を説明する模式図である。ドットを描画した時に行間ドット位置が揃うようにするための補正機能である。まず、1列目の往路方向の描画を発光パルス周波数によって設定された描画パルス信号に対応させて行い、描画終了位置情報をX軸ナノスケール15、Y1軸ナノスケール16、Y2軸ナノスケール17より取得する。
【0018】
次に、2列目の復路方向の描画だが、1列目の描画終了位置と2列目の描画開始位置のY方向位置をナノオーダーで揃えるのは非常に困難である。そこで、描画パルス信号にDelay処理を行う事で行間ドット位置補正を行う。
上記、Delay処理は、まずナノスケールより取得された1列目の描画終了位置から2列目の描画開始目標位置を決定する。次にその目標位置に対しての、任意設定できるXステージ速度及び描画パルス信号により、描画される位置との差分値を求める。差分値は最大で描画パルス信号の半波長となる。その差分値を描画パルスにDelay処理することで、行間位置補正を行う。行間位置補正は軸制御ユニット18で設定し、X軸ドライバ12、Y1軸ドライバ13、Y2軸ドライバ14を駆動させる。
【0019】
上記のように、往路描画終了位置と復路描画開始位置を合わせると正方格子のドットパターンが描画される。
【0020】
また、入力部6でのドット補正設定を行うことにより任意の位置制御を行うことができる。
描画パルス周波数とX方向ステージスピードにより算出される描画ドット間距離をドット補正設定により1/2ずらすことによって、六方細密のドットパターンを描画することができる。
上記のように、描画ドット間距離の1/2、1/3、1/4・・・・ずらすことによって、任意の行間ドット位置制御を行う事が可能である。
【0021】
また、往路と復路によって、XYステージ2の移動方向が違うため、3列目の往路方向の描画は1列目の描画開始位置を基準とし、描画を開始する。
【0022】
また、描画パルス信号が出力後、光学ヘッド発光までの電気的な遅れについては、あらかじめ補正しているものとし、被処理基盤に描画ドットが加工するまで遅れはステージ速度に応じて補正する。
【0023】
図4は描画ドットパターンの行間ドット位置制御のフローチャートである。
【0024】
はじめに、描画パルス周波数とX方向速度と前行の描画ドット位置との行間ドット位置補正設定値を入力し、描画加工を行う(S1)。まず、1列目のX往路方向の描画ドット加工を行い、Y方向へ移動する(S2)。次に、XYテーブルに設置されたナノスケールにより、1列目の描画終了位置情報を取得し、信号発生器5に入力する。(S3)
続いて、信号発生器5にてX軸ナノスケール15、Y1軸ナノスケール16、Y2軸ナノスケール17の位置と描画パルス周波数よりDelay値を計算する。(S4)次に、描画パルス信号をDelay処理し(S5)、2列目の復路の描画ドット加工を行う。(S6)この往路・復路の描画を繰り返し(S7)、描画ドットパターンの行間ドット位置補正を行う。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、シリコンなどのウエハー上にレーザー光を用いて露光することで描画を行う描画装置であり、特にナノミクロンオーダーの高精度な位置決めが必要な、光学特性を制御する光学素子用の描画装置として有用である。
【符号の説明】
【0026】
2 XYステージ
3 光学ヘッド
4 光学系制御ユニット
5 信号発生器
6 入力部
7 被処理基盤
8 ワーク台座
9 X軸スライダー
10 Y1軸スライダー
11 Y2軸スライダー
12 X軸ドライバ
13 Y1軸ドライバ
14 Y2軸ドライバ
15 X軸ナノスケール
16 Y1軸ナノスケール
17 Y2軸ナノスケール
18 軸制御ユニット
19 X軸ナノスケールドライバ
20 Y1軸ナノスケールドライバ
21 Y2軸ナノスケールドライバ
22 定盤
23 除振台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を一定方向に往復させて所定の間隔でドットパターンの描画を行う光学素子用の描画装置であって、
レーザー光を照射する照明光学系と、
基盤を載置するXYステージと
前記照明光学系と前記XYステージとの相対位置を測定する前記XYステージ上に設置されたナノスケールと、
前記基盤上の描画信号の基準位置とその描画信号波形データ出力と、前記ナノスケールによって測定された往路のドットパターンの描画終了位置から、復路のドットパターンの描画開始位置を抽出する軸制御ユニットと、
前記軸制御ユニットによって抽出された描画開始位置から描画を開始するように前記照明光学系の位置を補正する位置補正手段と、
を備えた光学素子用の描画装置。
【請求項2】
前記ナノスケールは、X軸ナノスケールとY軸ナノスケールで構成される、
請求項1記載の光学素子用の描画装置。
【請求項3】
前記位置補正手段は、X軸位置補正手段とY軸位置補正手段で構成される、
請求項1記載の光学素子用の描画装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−61363(P2013−61363A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11619(P2010−11619)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】