説明

換気機能を備えた横葺屋根装置

【課題】 屋根葺した屋根板と野地板との間に空間部を形成し、外気温度の変化により外気を前記空間部に流通させて棟部から外気に排出し、屋根裏の温度を下げる。
【解決手段】
それぞれアルミ押出成形材により同一断面形状に形成された幅方向が長尺な複数の屋根板と、前記屋根板を野地板上にそれぞれ固定する複数の足高吊子と、屋根の棟部分に取付ける換気棟枠と、先端に設けた外気取入部に形成した複数の通気口を開閉可能にするスライド板を、形状記憶合金材により形成した変位ばねを内蔵した換気装置の可動軸と連結して形成した軒先板枠とからなり、前記各屋根材を使用して屋根葺をすることにより、屋根板と野地板との間に空間部を形成し、屋根板裏側の気温が高くなると、軒先板枠に取付けた換気装置が作用して通気口を開口させ、外気を屋根板の裏側に設けた空間部から換気棟枠の排気路に流通させて大気中に排気して空気を循環させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外気温度の変化によって屋根板材の裏側に外気を流通させて換気させる機能を有する屋根装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般住宅の屋根材は瓦またはスレート板、工場や体育館等の大型屋根はスレ−ト瓦や金属性のいわゆるトタン板などを用いて屋根葺きが行っているが、昨今は軽量で丈夫な金属製の亜鉛メッキ板やカラー鉄板などからなる屋根板を用いて屋根葺きが行われている。
【0003】
屋根葺は、屋根構造材である梁の上に取付けた垂木に、野地板を敷き、該野地板の上に断熱シートや防止シートを張り、該シートの上面に複数の屋根板材を複数の吊子を介して軒側から棟方向に順に固定しながら接続して行っている。
【0004】
金属製板材からなる屋根板は、板厚が薄いことから屋根葺を行う場合、屋根葺作業や屋根板点検などで屋根に乗ると、重さで屋根板が変形しやすいため屋根板を直接野地板に固定している。そのため、屋根板と野地板との間に空気層を設けて屋根葺を行うことができなかった。したがって、夏季などの高温時期における屋根板の裏側に溜った熱せられた高温の空気が屋内側に伝わるため、屋内は必然的にエアコンが必要であった。
【0005】
さらに、野地板と屋根板との間に隙間を設けて外気を流通させる屋根装置もあるが、その構造は野地板を二重に形成し、下側野地板と上側野地板との間に隙間を設けて屋根葺を行って空気を流通させることにより、屋根の裏側に熱がこもるのを防止しているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−125773号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のように従来の金属製屋根板は、直接野地板に一端を固着して形成してあるため、昼夜または季節による温度変化により屋根板が伸縮したり、結露しやすく、また、屋根板の裏側に空気を流通させることができないため、屋根の裏側に溜った空気は高温となりやすいという問題点を有していた。さらには、前記特許文献の発明は、野地板を二重に形成して空気の流通路を設ける必要が有り、そのため屋根が重くなり危険であると共に、屋根葺のコストが高く不経済であるなどの問題点を有している。本発明は、屋根葺に使用する屋根板材を軽量で、且つ頑丈なアルミ押出成形で形成したことにより、屋根板と野地板との間に空気を流通する空間を設けて換気をできるようにし、また、冬季などの気温が下がる時期は、屋根裏の暖気を逃がさないようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、裏面に断熱シート4を取付けた平坦部3の軒側端部を下方に折曲げて軒側係合部5を形成し、前記平坦部3の棟側端部を上方に折り曲げて棟側連結部10をそれぞれ一体に形成したアルミ押出成形材からなる屋根板2と、中央を山形に形成した棟部17の両側に設けた壁面板18の下端を内側に折り返して設けた係止受部19に、屋根の棟部分に一定間隔で複数取付ける棟枠固定片21の両側に左右対称に形成した門形の棟止部23の両側に設けた掛止部24を嵌合固着したアルミ押出形成材からなる換気棟枠16と、座部26の両端を垂下して設けた脚部27の下端を折曲げて基部28形成し、前記座部26の棟側に設けた立上部29の上方を軒側に鉤形に折り曲げて棟受部30を形成し、前記座部26の軒側先端に屋根板2の棟側下端を係止させる屋根受部31を設けたアルミ押出成形材からなる複数の足高吊子片25と、板状に形成した軒先基板34の軒側に外側板部35と内側板部36を並行に垂下させ、前記外側板部35と内側板部36との間に設けた外気取入部37の長尺な幅方向に複数の通気口38を形成し、該通気口38の下面に防虫網Mを取付け、前記外気取入部37の上面短尺方向に鉤形の保持爪部41を対向して形成し、該保持爪部に前記通気口38と合致する位置にそれぞれ換気口43を設けたスライド板42を摺動可能に取付けて形成したアルミ押出成形材からなる軒先板枠33と、外気温度の変化により作用する形状記憶合金製の変位ばね52、85、96を内蔵した換気装置50、80、90を前記軒先板枠33の外気取入部37に取付け、該換気装置の可動軸53、82、92と前記スライド板42を連結し、前記変位ばね52、85、96の伸縮により可動軸53、82、92とスライド板42を摺動させて通気口38を開閉可能に形成してなり、軒先固定片Sに、前記換気装置50、80、90を設けた軒先板枠33を取付け、該軒先板枠に屋根板2aの軒側を連結し、該屋根板の棟側に複数の足高吊子片25をそれぞれ連結して基部28を野地板Tにそれぞれ固着し、次の屋根板2bの軒側を前記足高吊子片25に係止した屋根板2aの棟側に連結する操作を繰返して棟側方向に順次連結し、棟付近に位置した屋根板2eの棟側を、前記棟枠固定片21の棟止部23内に止めてから棟枠固定片21をそれぞれ棟に取付け、該棟枠固定片に前記換気棟枠16を被せて嵌合固着して屋根葺をすることにより、各屋根板2と野地板Tとの間に連続して空間部Xを形成し、外気温度の変化により前記軒先板枠33に取付けた換気装置50、80、90が作用して通気口38を開口させて外気を空間部Xから換気棟枠16の排気路Wを通って大気中に排出させる流通路を設けたことを特徴とする。また、第1換気装置50は、第1可動軸53に形状記憶合金製の変位ばね52を挿通して軸支した第1ばね受枠51と第2可動軸58に弾発ばね57を挿通して軸支した第2ばね受枠56とからなり、前記第1ばね受枠51を第1軒先板枠33に設けた外気取入部37の一端に取付け、第2ばね受枠56を外気取入部37の他端に取付け、前記ばね受枠51、56にそれぞれ軸支した第1、2可動軸53、58に設けた連結頭部54、59を、前記スライド板42の両端に取付けた連結片45、45にそれぞれ連結してなり、外気温度が所定温度以上になると前記変位ばね52が伸びて第1可動軸53とスライド板42を第2ばね受枠56方向に摺動させて換気口43と通気口38を合致させて開口し、外気温度が所定温度以下になると、前記変位ばね52が収縮して弾発ばね57の弾発力で第2可動軸58とスライド板42を第1ばね受枠51方向に摺動させて前記通気口38を閉口することを特徴とする。さらに、第2換気装置80は、中央に仕切板83を固着した可動軸82の一方に形状記憶合金製の変位ばね85を挿通し、他方に弾発ばね86を挿通して軸受基枠81に軸支して形成し、該第2換気装置を前記第1軒先板枠33に設けた外気取入部37の一端に固定し、軸受基枠81の一端から突出させた可動軸82の先端係止頭部84を、スライド板42の一端に設けた連結片45に連結してなり、前記第2換気装置80に取付けた変位ばね85が所定の外気温度に達すると、変位ばね85が伸びて可動軸82とスライド板42を弾発ばね86方向に摺動させて換気口43と通気口38を合致させて開口し、外気温度が所定温度以下になると、変位ばね85が収縮して弾発ばね86の弾発力で可動軸82とスライド板42を変位ばね85方向に摺動して通気口38を閉口可能に形成したことを特徴とする。さらにはまた、第3換気装置90は、ばね受基枠91の中央に摺動可能に位置した可動軸92の一側に位置した形状記憶合金製の変位ばね96の一端を、前記可動軸92の長手方向一端に設けた第1ばね止部95aに取付け、他端を前記ばね受基枠91の反対側に設けた係止ピン98aに取付けて付勢させ、前記可動軸92の反対側に位置した弾発ばね97の一端を、前記第1ばね止部95aと反対側に設けた第2ばね止部95bに取付け、他端を前記ばね受基枠91の反対側に軸支した係止ピン98bに取付けて弾発させて形成し、前記ばね受基枠91を外気取入部37の上面任意箇所に取付けると共に、前記可動軸92の下面中央で垂直方向に設けた連結軸94を前記スライド板42に連結してなり、前記第3換気装置90を構成する変位ばね96が所定の外気温度以上になって伸びると、連結軸94を介して可動軸92とスライド板42が摺動して換気口43と通気口38とを合致させて開口し、外気温度が所定温度以下になると、変位ばね96が収縮し、弾発ばね97の弾発力により連結軸94を介して可動軸92とスライド板42が反対方向に摺動して通気口38を閉口可能に形成したことを特徴とする。また、水平に形成した軒先基板62の軒側に外側板部63と内側板部64を並行に垂下させ、前記外側板部63と内側板部64との間に設けた外気取入部65の幅方向に短冊状に形成した複数の通気口66aと複数のガイド孔69a、69bを幅方向に形成し、前記通気口66aと合致する位置にそれぞれ換気口71を有した幅方向を長尺にした第2スライド板70を前記外気取入部65の下面側に摺動可能に取付け、前記ガイド孔69bに吊下軸78の上端を挿通係止し、下端を第2スライド板70に軸支して形成したアルミ押出成形材からなる第2軒先板枠61と、前記第2軒先板枠61の外気取入部65の一端に前記第2換気装置80を固定し、該第2換気装置の軸受基枠81の一端から突出させた可動軸82の係止頭部84と連結させた連結片73と前記外気取入部65の下面に位置した第2スライド板70の一端とをガイド孔69aを介して連結軸77で連結してなり、前記第2換気装置80に取付けた変位ばね85が所定の外気温度に達すると、変位ばね85が伸びて弾発ばね86方向に摺動して可動軸82の先端に取付けた連結片73を介して第2スライド板70を摺動させて換気口71と通気口66aを合致させて開口し、外気温度が所定温度以下になると、変位ばね85が収縮して弾発ばね86の弾発力で可動軸82を変位ばね85方向に摺動させると、連結片73が第2スライド板70を摺動させて通気口66aを閉口可能に形成したことを特徴とする。さらには、前記換気装置50、80、90を構成する形状記憶合金製の変位ばね52、85、96がそれぞれ作用する外気温度は、好ましくは、摂氏17度以上で伸び、摂氏7度以下で収縮可能に形成してなることを特徴とする。
【0009】
したがって、屋根板2と、複数の足高吊子25と、棟に取付ける換気棟枠16と、通気口38、66を有したスライド板42、70を作動させる第1、2、3換気装置50、80、90をそれぞれ取付けた軒先板枠33、61を使用して屋根葺を行うことにより、屋根板2と野地板Tとの間に空間部Xを形成することができ、気温が高くなると前記軒先板枠33、61に取付けた換気装置50、80、90が温度を感知して通気口38、66を開口し、外気を通気口から屋根板2の裏側空間部Xに流通させて換気棟枠16の排気路Wから外部に排出させる流通路を形成して循環させることにより、屋根板の裏側温度を下げることができ、また、冬季は軒先板枠33、61の通気口38、66を換気装置50、80、90で閉口することにより、屋根板裏側の暖気が逃げるのを防止し、室内の温度が下がるのを防止することができるので、エアコンの設定温度を低くすることができるので、エネルギー消費を減少することができ大変経済的である。また、本発明は上記作用を有することから、外気温度が高い、例えば沖縄のような地域、または外気温度が低い、例えば北海道のような地域でも、同じ屋根装置をそのまま使用することができるので、量産効果によるコストダウンを図ることができる効果を有する。
【0010】
請求項7の発明は、裏面に断熱シート4を取付けた平坦部3の軒側端部を下方に折曲げて軒側係合部5と前記平坦部3の棟側端部を上方に折り曲げて棟側連結部10を一体に設けたアルミ押出成形材からなる屋根板2と、中央を山形に形成した棟部17の両側に設けた壁面板18の下端を内側に折り返して設けた係止受部19に、屋根の棟部分に一定間隔で複数取付ける棟枠固定片21の両側で左右対称に形成した門形の棟止部23の両側に設けた掛止部24を嵌合固着したアルミ押出形成材からなる換気棟枠16と、座部26の両端を垂下して設けた脚部27の下端を折曲げて基部28を形成し、前記座部26の棟側に設けた立上部29の上方を軒側に鉤形に折曲げて棟受部30を形成し、前記座部26の軒側先端に屋根板2の棟側下端を係止させる屋根受部31を設けたアルミ押出成形材からなる複数の足高吊子片25と、板状に形成した軒先基板62の軒側に外側板部63と内側板部64を並行に垂下させ、前記外側板部63と内側板部64との間に設けた外気取入部65の幅方向に複数の通気口66bを設け、該通気口の下面に防虫網Mを取付けたアルミ押出成形材からなる第2軒先板枠61と、前記第2軒先板枠61の各通気口66bに所定の外気温度で変形する、例えば形状記憶合金製の板材により形成した開閉板104の長手方向または短尺方向の縁部をビス、ねじまたは溶接などの固定具105で固着した第4換気装置103をそれぞれ取付けてなり、軒先固定片Sに前記第4換気装置103を設けた第2軒先板枠61を取付け、該軒先板枠に、屋根板2の軒側係合部5を連結し、該屋根板2の棟側連結部10に複数の足高吊子片25の棟受部30をそれぞれ連結すると共に、足高吊子片25の基部28を野地板Tにそれぞれ固着し、次の屋根板2bの軒側を前記足高吊子片25に係止した屋根板2aの棟側に連結して棟側方向に順次連結し、棟付近に位置した屋根板2eの棟側を、前記棟枠固定片21の棟止部23内に止めてから棟枠固定片21をそれぞれ棟に取付け、該棟枠固定片に前記換気棟枠16を被せて嵌合固着して屋根葺をすることにより、各屋根板2と野地板Tとの間に連続して空間部Xを形成し、外気温度の変化、例えば摂氏17度以上になると第2軒先板枠61の通気口66bに取付けた第4換気装置103の開閉板104が変形して通気口66bを開口し、該通気口から進入した外気は空間部Xから換気棟枠16の排気路Wを通って大気中に排出して循環可能に形成し、また摂氏7度以下になると開閉板104が元の形態に戻って通気口66bを閉口可能に形成したことを特徴とする。
【0011】
したがって、屋根葺を部品数が少なく安価な第4換気装置103を取付けた第2軒先板枠61と、複数の屋根板2と、複数の足高吊子25と、棟に取付ける換気棟枠16とを使用して行うことにより、屋根板2と野地板Tとの間に空間部Xを形成し、気温が高くなると第2軒先板枠61に取付けた第4換気装置103が温度を感知して通気口66bを開口し、外気を通気口66bから屋根板2の裏側空間部Xに流通させて換気棟枠16から外部に排気させる流通路を形成することにより、屋根板裏側に空気を循環させて温度を下げることができ、また、気温が下がる冬季は第2軒先板枠61の通気口66bを第4換気装置103で閉口して屋根板裏側の暖気が逃げるのを防止することにより、室内の温度が下がるのを防止することができるので、エアコンの温度設定を低くすることができ、エネルギー消費の減少を図ることができ大変経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】野地板に装着した屋根装置の空気流通路を示す一部省略した説明図である。
【図2】屋根板の端面図である。
【図3】棟固定片に取付けた換気棟枠の断面図である。
【図4】足高吊子の端面図である。
【図5】第1スライド板を取付けた第1軒先板枠の断面図である。
【図6】第1軒先板枠の外気取入部に第1換気装置を取付けた状態の一部破断した平面図である。
【図7】第1換気装置を取付けた第1軒先板枠の通気口を閉口した状態を示す一部破断した断面図である。
【図8】第1換気装置を構成する第1ばね受枠の要部拡大断面図である。
【図9】第1軒先板枠を使用して屋根葺をした屋根の裏側に空気流路を形成した状態を示す要部拡大断面図である。
【図10】棟に取付けた換気棟枠の空気流路を示す要部拡大断面図である。
【図11】第2換気装置を取付けた第1軒先板枠の通気口の開口状態を示す一部破断した断面図である。
【図12】第2換気装置を取付けた第1軒先板枠の通気口の閉口状態を示す一部破断した断面図である。
【図13】第2換気装置の要部拡大断面図である。
【図14】第3換気装置を取付けた第1軒先板枠の通気口の閉口状態を示す一部破断した平面図である。
【図15】第3換気装置の中央拡大横断面図である。
【図16】第3換気装置の中央拡大縦断面図である。
【図17】第2スライド板を取付けた第2軒先板枠の外気取入部に第2換気装置を取付けた状態の断面図である。
【図18】第2軒先板枠の外気取入部に第2換気装置を取付けた状態を示す一部破断した平面図である。
【図19】第2軒先板枠に第2換気装置を取付けた状態の要部拡大平面図である。
【図20】第2軒先板枠に取付けた第2換気装置の要部拡大断面図である。
【図21】第2軒先板枠を使用して屋根葺をした屋根の裏側に空気流路を形成した状態の要部拡大断面図である。
【図22】第2軒先板枠に第4換気装置の第1次実施例を示す一部破断した平面図である。
【図23】第2軒先板枠に第4換気装置の第2次実施例を示す一部破断した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面により説明すると、図1は野地板に装着した屋根装置の空気流通路を示す一部省略した説明図、図2は屋根板の端面図、図3は棟固定片に取付けた換気棟枠の断面図、図4は足高吊子の端面図、図5は第1スライド板を取付けた第1軒先板枠の断面図、図6は第1軒先板枠の外気取入部に第1換気装置を取付けた状態の一部破断した平面図、図7は第1換気装置を取付けた第1軒先板枠の通気口を閉口した状態を示す一部破断した断面図、図8は第1換気装置を構成する第1ばね受枠の要部拡大断面図である。屋根装置1は、屋根基枠を構成する垂木の上面に野地板Tを敷設し、該野地板の上面に防水シ−トUを取付けた上面に複数の屋根板2と、屋根の棟部分に取付ける換気棟枠16と、前記屋根板2を野地板に固定する複数の足高吊子25と、屋根の勾配下端(軒先固定片S)に取付ける第1軒先板枠33とで構成されている。
【0014】
屋根板2は、図2に示すごとく、アルミ合金材を押出成形して同一断面形状に形成し、幅方向を長尺に形成した平坦部3の裏面全体に断熱シート4を取付け、前記平坦部3の軒側端部を下方に折曲げて形成した軒側係合部5と、前記平坦部3の棟側端部を上方に折り曲げて形成した棟側連結部10を一体に形成してある。
【0015】
前記屋根板2の軒側に設けた軒側係合部5は、軒側の先端を下方に折曲げて前面部6を形成し、該前面部の下端を棟側に折り返して形成した水平部7の先端を斜上方に傾斜させて挿入部8を連続して形成してある。
【0016】
前記棟側連結部10は、上方に折曲げた立上部11の先端を棟側に折り曲げて水平部12を形成し、該水平部の端部を上方に垂直に折曲げた垂直部15の上方を軒側に湾曲して折り返して係合凹部13を設け、該係合凹部の先端に係止部14を連続して設けてある。
【0017】
前記軒側係合部5は、他の屋根板2bの棟側連結部10bと嵌合したり、前記軒先板枠33の係止受部39と嵌合可能に形成し、棟側連結部10は、野地板Tに固定するための足高吊子25の棟受部30と嵌合可能に形成してある。
【0018】
前記換気棟枠16は、図3に示すごとく、アルミ合金材を押出成形して同一断面形状に形成し、中央に設けた山形の棟板17の両側に垂直な壁面部18を形成し、この壁面部18の下端を内側に折曲げて係止受部19を設けてある。この壁面部18には屋根裏を流通した空気を外部に排気する通気口(図示せず)を複数設けたり、または、前記壁面部18の外側に、屋根材2eと換気棟部16との隙間を調節する調整板Yを上下動可能に取付けてもよい
図10)。
【0019】
21は棟枠固定片で、図3に示すごとく、アルミ合金材を押出成形して同一断面形状に形成して幅方向を短尺にしてなり、中央に位置した固定部22の左右両側に山形状の棟止部23を形成し、前記棟枠固定片21の外側に前記換気棟枠16の壁面板18に設けた係止受部19に係合する掛止部24を設けてある。
【0020】
前記換気棟枠16を棟に取付ける場合、棟の長手方向に複数の棟枠固定片21を固定し、該棟枠固定片の上方から長尺な換気棟枠16を被せ、係止受部19に掛止部24を嵌合して固着し、屋根板2の裏面を上昇する外気は換気棟枠16の壁面部18の下側に設けた排気路Wから外部に排気させることができる(図10)。
【0021】
25は足高吊子片で、図4に示すごとく、アルミ合金材を押出成形して同一断面形状で幅方向を短尺に形成され、中央に設けた座部26の両端を垂下して設けた脚部27の下端を折り曲げて前記野地板Tに取付ける基部28を形成し、前記座部26の棟側上方に設けた立上部29の上方を鉤形に折り曲げて棟受部30を形成し、前記座部26の軒側先端に屋根受部31を設けてある。したがって、この足高吊子片25を使用して屋根葺をすると、野地板Tと屋根板2との間に脚部27の長さ分の空間部X(図9)を形成することができる。
【0022】
33は第1軒先板枠で、図5に示すごとく、アルミ合金材を押出成形により同一断面形状に形成し、扁平に形成した軒先基板34の軒側に外側板部35とやや長く形成した内側板部36を並行に垂下させ、前記外側板部35の上方に前記屋根板2の軒側係合部5と係合する係止受部39と水平な軒先受部40を設けて形成してある。
【0023】
37は前記外側板部35と内側板部36との間に水平方向に設けた外気取入部で、該外気取入部の長尺な幅方向にそれぞれ短冊状に形成した複数の通気口38を形成し、該通気口を挟んだ外気取入部37の短尺方向に対向させて鉤形の保持爪部41を設け、該保持爪部の間に前記通気口38と合致する位置にそれぞれ換気口43を有した長尺な第1スライド板42を摺動可能に取付けてある。前記外気取入部37の上面には、外気温度の変化によって前記第1スライド板42を操作して通気口38を開閉させる第1換気装置50を取付けてある。前記外気取入部37の通気口38には、外部から屋根裏に虫が入るのを防止する防虫網Mを取付け可能に形成してある。
【0024】
図6、7、8は、屋根装置の第1の実施の形態で、前記第1軒先板枠33に第1換気装置50を取付けて形成したもので、第1換気装置50は、一対の第1、2ばね受枠51、56と、該ばね受枠内に挿通して軸支する一対の第1、2可動軸53、58と、一方の第1ばね受枠51に収容する形状記憶合金製の変位ばね52と、他方の第2ばね受枠56に収容する金属製の弾発ばね57とからなり、前記外気取入部37の上面一端に第1ばね受枠51を取付け、外気取入部37の他端に第2ばね受枠56を位置し、該ばね受枠の第1、2可動軸53、58を互いに向き合わせて同一軸心上に位置させると共に、該第1、2可動軸の先端にそれぞれ形成した連結頭部54、59をスライド板42の両端に取付けた連結片45、45の嵌合凹部46、46に嵌合させて連結してある。
【0025】
前記第1可動軸53に挿通した変位ばね52は、一端を第1ばね受枠51の内壁に当接し、他端を第1可動軸53に軸支したばね止部55に当接させて取付けることにより、変位ばね52が伸びてばね止部55を付勢することにより、第1可動軸53を軸心方向に摺動可能に取付けてある(図6)。
【0026】
前記第2可動軸58に挿通した弾発ばね57は、一端を第2ばね受枠56の内壁に当接し、他端を第2可動軸58に軸支したばね止部60に当接させることにより、変位ばね52が収縮して弾発力が弱くなると、弾発ばね57の弾発力が勝り、第2可動軸58を第1可動軸53方向に付勢可能に取付けてある(図7)。
【0027】
前記第1換気装置50を構成する変位ばね52は、例えば、ニッケルやチタンなどの金属材により形成した形状記憶合金をコイル状に形成してなり、所定の外気温度、好ましくは、摂氏17度以上で伸びて第1可動軸53の先端に連結してあるスライド板42が弾発ばね57方向に移動して換気口43と通気口38を合致させて開口し、該通気口から外気を屋根裏の空間部Xに進入させることができる(図8)。
【0028】
また、外気温度が所定温度以下、好ましくは摂氏7度以下になると、前記変位ばね52が収縮し、第2可動軸58のばね止部60を弾発ばね57の弾発力が勝るとスライド板42を変位ばね52方向に摺動させて、前記通気口38を閉口することができる(図7)。
【0029】
第1軒先板枠33に取付けた第1換気装置50が作動して通気口38を開口させると屋根裏の空間部Xに外気が進入し、外気はさらに棟方向に上昇して換気棟枠16の排気路Wから大気中に排出されて空気を循環させることができる(図9、10)。したがって、夏季などの屋根裏に溜った空気が熱せられて高温になると、室内温度が上昇することから、本願の第1軒先板枠33に取付けた第1換気装置50が作動して通気口38を開口すると、外部の新しい冷えた空気が流入して空間部Xを流通して上昇させて換気棟枠16の排気路Wから排気させて循環することにより、屋根裏の温度を外気温度に比して10度以上下げることができる。このことは別紙資料に示す「品質性能試験報告書」財団法人建材試験センターの実験データからも明らかである。
【0030】
図11〜13は、屋根装置の第2の実施の形態で、前記第1軒先板枠33に第2換気装置80を取付けて形成したもので、第2換気装置80は、軸受基枠81に軸支した可動軸82の中央に仕切板83を固着し、該可動軸の一方に形状記憶合金製の変位ばね85を挿通し、他方に金属製の弾発ばね86を挿通し、前記軸受基枠81の一端から突出した可動軸82の先端に異径の係止頭部84を設けて形成してある。
【0031】
この第2換気装置80を前記第1軒先板枠33に設けた外気取入部37の上面一側に位置させ、スライド板42の一端に設けた連結片45の嵌合凹部46に第2換気装置80の可動軸82の先端に設けた係止頭部84を嵌合連結して形成してある(図13)。
【0032】
この第2換気装置80は、変位ばね85と弾発ばね86を仕切板83を介して一本の可動軸82に挿通して軸受基枠81に軸支してコンパクトに形成してあるため、設置スペースを小さくすることができ、外気取入部37の左右いずれか一方に取付けてスライド板42を作動させることができるので、外気取入部37のデッドスペースが少なくて済み、多くの通気口を形成することができる。また取付け作業も一回で済み作業の効率化を図ることができる。
【0033】
第1軒先板枠33に設けた通気口38の開閉は、所定の外気温度(摂氏17度以上)に達すると、第2換気装置80に取付けた変位ばね85が弾発ばね86の弾発力に抗して伸びて仕切板83を介して可動軸82とスライド板42を弾発ばね86方向に摺動させて換気口43と通気口38を合致させて開口する。
【0034】
外気温度が所定温度(摂氏7度以下)になると、第2換気装置80の変位ばね85が収縮し、弾発ばね86の弾発力で仕切板83を介して可動軸82とスライド板42を変位ばね85方向に摺動させて通気口38を閉口する。
【0035】
前記第2換気装置80を構成する変位ばね85は、前記第1換気装置50を構成する変位ばね52と同じ形状記憶合金材で形成され、同じ外気温度で作用することから、ここでの説明を省略する。
【0036】
図14、15、16は屋根装置の第3の実施の形態で、前記第1軒先板枠33に第3換気装置90を取付けて形成したもので、第3換気装置90は、ばね受基枠91の中央に可動軸92を位置させ、該可動軸の上下両面に設けたガイドピン93をばね受基枠91の上下両面に設けたガイド溝91aに挿通して可動軸92を摺動可能に取付け、さらに可動軸92の軸心方向の両端に設けたばね止部95a、95bを互いに反対向きの直角方向に設けてある。
【0037】
前記可動軸92の一側で並行に位置した形状記憶合金製の変位ばね96の一端を、一方のばね止部95aに取付け、他端を前記ばね受基枠91の反対側に設けた係止ピン98aに取付け、前記可動軸92の他側で並行に位置した金属製の弾発ばね97の一端を他方のばね止部95bに取付け、他端を前記ばね受基枠91の反対側に設けた係止ピン98bに取付けて形成し、前記可動軸92の下面中央で直角方向に取付けた連結軸94の先端をガイド溝99を介して第1スライド板42に連結してある(図14)。
【0038】
第3換気装置90の第1軒先板枠33への取付けは、ばね受基枠91の下面を外気取入部37の上面に設けた保持爪部41上の任意箇所に位置し、一側面を軒先基板34と外側板部36とが交差する壁面の任意箇所に取付け、可動軸92の下面中央で直角方向に設けた連結軸94の先端を、前記スライド板42の任意箇所(例えば、スライド板の中央)に連結して形成する。したがって、第1軒先板枠33の外気取入部37の両側または片側に第3換気装置を取付けるためのスペースを必要としないため、外気取入部37に多くの通気口を形成することができる(図15)。
【0039】
前記変位ばね96は、所定の外気温度以上になると、弾発ばね97の弾発力に抗して伸びて可動片92と連結したスライド板42を摺動させて換気口43と通気口38とを合致させて開口し、外気温度が所定温度以下になると、変位ばね96が収縮して弾発ばね97の弾発力により可動軸92とスライド板42が摺動して通気口38を閉口可能に形成してある。前記した第3換気装置90を構成する変位ばね96は、前記第1換気装置50を構成する変位ばね52と同じ形状記憶合金材で形成されているため、同じ外気温度で作用することから、ここでの説明を省略する。
【0040】
図17は軒先板枠の第2の実施の形態を示す第2軒先板枠61で、アルミ合金材を押出成形により同一断面形状に形成してなり、平坦に形成した軒先基板62の軒側に、外側板部63と内側板部64を並行に垂下させ、前記外側板部63の上方に前記屋根板2の軒側係合部5と係合する屋根板受部67と水平方向に軒先受部68を連設し、前記外側板部63と内側板部64との間の水平方向に外気取入部65を設け、該外気取入部の幅方向にそれぞれ細幅で短冊状に形成した複数の通気口66aと複数のガイド孔69a、69bを設けてなり、外気取入部65の下面で各通気口66aと合致する位置に換気口71を有した断面門型の第2スライド板70を位置し、該第2スライド板を外気取入部65の中央と一端に設けたガイド孔69bに一端を挿通した吊下軸78の下端を第2スライド板70に取付けて摺動可能に懸架してある。前記外気取入部65の通気口66aには、外部から屋根裏に虫が入るのを防止する防虫網Mを取付け可能に形成してある。
【0041】
図18、19、20は屋根装置の第4の実施の形態で、前記第2軒先板枠61の外気取入部65の一端に前記第2換気装置80を取付けて形成したもので、前記第2スライド板70の一端に連結軸77で固定した連結片73を前記外気取入部65に設けたガイド孔69aに挿通し、該連結片73の係止溝部75に前記軸受基枠81の一端から突出させた可動軸82の係止頭部84を嵌合して連結してある。
【0042】
前記第2換気装置80に取付けた変位ばね85が所定の外気温度に達すると、変位ばね85が伸びて弾発ばね86方向に摺動すると、可動軸82の先端に連結した連結片73の連結軸77で第2スライド板70を摺動させて換気口71と通気口66aを合致させて開口し、外気温度が所定温度以下になると、変位ばね85が収縮して弾発ばね86の弾発力で可動軸82が変位ばね85方向に摺動すると、連結片73が第2スライド板70を摺動させて通気口66aを閉口可能に形成してある。
【0043】
図22、23は屋根装置1の第5の実施の形態を示すもので、前記第2軒先板枠61の外気取入部65に設けた横長に形成した複数の通気口66bにそれぞれ第4換気装置103を取付けてなり、前記第4換気装置103は、形状記憶合金材、例えば、ニッケルやチタンの合金を板状に形成した複数の開閉板104と、該開閉板を前記外気取入部65の通気口66に固定する固定具105とからなり、前記開閉板104の長手方向の縁部または短尺方向の縁部をビス、ねじまたは溶接などの固定具105で外気取入部65に設けた通気口66を開閉可能に取付けてある。
【0044】
この第4換気装置103を構成する形状記憶合金材からなる開閉板104は、所定の外気温度、例えば摂氏17度以上になると変形して通気口66bを開口し、摂氏7度以下になると閉じる方向に変形して通気口66bを閉口可能に形成してある。
【0045】
第2軒先板枠61に取付けた第4換気装置103は、開閉板104と固定具105だけの少ない部品数と簡単な構造であるため、コストが安価で経済的である。また、第4換気装置103を取付けた第2軒先板枠61を使用した屋根装置1は、夏季などの気温が上昇すると、第4換気装置103が所定の温度を感知して開閉板104が上方に反るように変形して通気口66bを開口させることにより外気を内部に進入させることができる。
【0046】
前記第2軒先板枠61を使用して屋根葺した屋根は、第2軒先板枠61の通気口66bから屋根の裏側に形成した空間部Xに外気が進入すると、外気は棟方向に上昇して換気棟枠16の排気路Wから大気中に排出して循環する。そのため、屋根裏の空間部Xに常に新しい空気が流入し、屋根裏の温度を外気温度に比して10度以上低くすることができる。このことは別紙資料に示す「品質性能試験報告書」財団法人建材試験センターの実験データからも明らかである。したがって、室内のエアコンの温度設定を低く設定することができ、エネルギー消費を少なくすることができ大変経済的である。
【0047】
以下、本発明の実施の形態の作用について説明すると、第1、第2または第3換気装置50、80、90を取付けた第1軒先板枠33を使用した屋根装置1は、図1、9及び図10に示すごとく、軒先固定片Sに第1軒先板枠33の軒先基板34を取付け、該第1軒先板枠の係止受部39と、屋根板2aの軒側係合部5aを掛止させ、次いで、軒側係合部5aに設けた挿入部8aを係止受部39の内側に係止させてから屋根板2aの棟側を野地板T方向に下ろすと水平部7aが軒先受部40の上面に接合して係止する。
【0048】
屋根板2aの棟側連結部10aは、棟側に設けた挿入部14aと、足高吊子片25の棟受部30とを掛止して足高吊子片25の立上部29の内側と、棟側連結部10aの垂直部15aの外側とを合致させてから基部28を野地板Tに固定する。前記屋根板2aは、脚部27を有した足高吊子片25で野地板Tに固定することにより、屋根板2の棟側下辺が直接野地板と接触することなく、屋根板2と野地板Tとの間に空間部Xを設けて固定することができる。
【0049】
前記屋根材2aの棟側連結部10aを足高吊子片25で固定した後、棟側に次の屋根板2bの軒側係合部5bの挿入部8bを、屋根材2aの棟側連結部10aに設けた係合凹部13aに挿入して屋根板2bを野地板T方向に下ろして水平部7bの下面と、屋根板2aの棟側連結部10aの水平部12aの上面に載置されて係止する。
【0050】
さらに屋根板2bの棟側連結部10bに足高吊子片25を前記したごとく連結して野地板Tに固定して接続する。この作業を繰り返すことにより屋根材2を換気棟部16方向に順に接続して屋根葺を行う。棟部分は図10に示すごとく、屋根板2eの棟側連結部10eを棟止吊子片Lに係止し、この棟止吊子片Lを棟固定片21の棟止部23の内側に被せて取付け、前記棟固定片21の両側に設けた掛止部24と、換気棟枠16の両側に夫々設けた壁面部18の係止受部19を係止して固着することにより屋根葺を行うものである。
【0051】
屋根装置1に使用する屋根板材を軽量で頑丈なアルミ押出成形材により形成したことにより、足高吊子25を使用して野地板Tと屋根板2との間に空間部Xを設けても、屋根板上を作業員が歩行しても屋根板が変形したり割れたりすることなく安心して屋根葺や保守点検をすることができる。
【0052】
屋根板2と野地板Tとの間に空間部Xを設けたことにより、第1軒先板枠33の通気口38から流入した外気は、図1の矢印で示す如く屋根の傾斜に沿って上昇し、図10に示す如く換気棟枠16の排気路Wから屋外に排気されるので、屋根板裏側には常に新しい外気を循環させることができ、資料に示す如く、屋根板裏側の温度を通常の屋根板材で形成したのと比べて10度以上下げることができる。したがって、室内のエアコンの温度設定を低く設定することができ、エネルギー消費を少なくすることができ大変経済的である。
【0053】
さらには、屋根板の裏側に空間部Xを設けて外気を流通させて屋根板の裏側に空気が滞留するのを防止することにより、屋根板裏側の湿気を抑えて結露の発生を防止することができる。万一、結露した場合でも、空気が流通するので素早く乾燥させて結露を除去することができる。
【0054】
冬季などの外気温度が摂氏7度以下に下がると、第1、2、3換気装置50、80、90に取付けた変位ばね52、85、96が収縮して可動軸53、82、92が摺動すると、通気口38と合致していた第1スライド板42の換気口43が通気口38から外れて閉口することにより外気の進入を防止して屋根板2と野地板Tとの空間部X内に暖かい空気を溜めることができる断熱効果を有する。
【0055】
第2軒先板枠61は、外気取入部65の下面に第2スライド板70を摺動可能に取付け、第2換気装置80を外気取入部65の一端に取付けて可動軸と第2スライド板70の連結片73を連結するだけの簡単な作業で取付けることができ、また部品数も少ないことからコストが安価で経済的である。
また、夏季などの屋根裏が高温になった場合、第2換気装置80に取付けた変位ばね85が所定の外気温度(摂氏17度以上)に達すると、変位ばね85の弾発力が弾発ばね86の弾発力に抗して伸びると可動軸82と第2スライド板70を摺動させて換気口71と通気口66aを合致させて開口する。
【0056】
外気温度が所定温度(摂氏7度以下)になると、第2換気装置80の変位ばね85が収縮し、弾発ばね86の弾発力で仕切板83を介して可動軸82と第2スライド板70を変位ばね85方向に摺動させて通気口66aを閉口する。
【0057】
第2軒先板枠61に第4換気装置103を取付けた屋根装置は、形状記憶合金材により形成した開閉板104が、所定の温度を感知すると、上方に反って変形することにより通気口66bを開口して外気を屋根裏側に進入させて循環させることにより屋根板裏側の温度を通常の屋根板材で形成したのと比べて10度以上下げることができる。
【0058】
したがって、室内に取付けたエアコンの設定温度を下げ、且つ、使用時間が少なくて済み消費電力を抑えることができるので大変経済的である。冬季などの外気温度が7度以下に下がると、第4換気装置104に取付けた開閉板105がもとの形にもどって通気口を閉口することにより外気の進入を防止して屋根板2と野地板Tとの空間部X内に暖かい空気を溜めることができる断熱効果を有する。
【0059】
第2軒先板枠61に取付けた第4換気装置103は、外気取入部65の通気口66bに開閉板104を固定具105でそれぞれ固定するだけの簡単な作業で取付けることができ、また部品数も少ないことからコストが安価で経済的である。
【符号の説明】
【0060】
1 屋根装置
2 屋根板
3 平坦部
5 軒側係合部
10 棟側連結部
16 換気棟枠
17 棟部
18 壁面部
21 棟枠固定片
25 足高吊子片
33 第1軒先板枠
34 軒先基板
35 外側板部
36 内側板部
37 外気取入部
38 通気口
42 第1スライド板
43 換気口
45 連結片
46 嵌合凹部
50 第1換気装置
51 第1ばね受枠
52 変位ばね
53 第1可動軸
54 連結頭部
56 第2ばね受枠
57 弾発ばね
58 第2可動軸
59 連結頭部
61 第2軒先板枠
62 軒先基板
63 外側板部
64 内側板部
65 外気取入部
66 通気口
69 ガイド孔
70 第2スライド板
71 換気口
73 連結片
77 連結軸
78 吊下軸
80 第2換気装置
81 軸受基枠
82 可動軸
83 仕切板
85 変位ばね
86 弾発ばね
90 第3換気装置
91 ばね受基枠
92 可動軸
94 連結軸
95 ばね止部
96 変位ばね
97 弾発ばね
98 係止ピン
103 第4換気装置
104 開閉板
105 固定具
L 棟止吊子片
M 防虫網
S 軒先固定片
T 野地板
U 防水シート
W 排気路
X 空間部
Y 調整板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面に断熱シート4を取付けた平坦部(3)の軒側端部を下方に折曲げて軒側係合部(5)を形成し、前記平坦部(3)の棟側端部を上方に折り曲げて棟側連結部(10)をそれぞれ一体に形成したアルミ押出成形材からなる屋根板(2)と、
中央を山形に形成した棟部(17)の両側に設けた壁面板(18)の下端を内側に折り返して設けた係止受部(19)に、屋根の棟部分に一定間隔で複数取付ける棟枠固定片(21)の両側に左右対称に形成した門形の棟止部(23)の両側に設けた掛止部(24)を嵌合固着したアルミ押出形成材からなる換気棟枠(16)と、
座部(26)の両端を垂下して設けた脚部(27)の下端を折曲げて基部(28)を形成し、前記座部(26)の棟側に設けた立上部(29)の上方を軒側に鉤形に折り曲げて棟受部(30)を形成し、前記座部(26)の軒側先端に屋根板(2)の棟側下端を係止させる屋根受部(31)を設けたアルミ押出成形材からなる複数の足高吊子片(25)と、
板状に形成した軒先基板(34)の軒側に外側板部(35)と内側板部(36)を並行に垂下させ、前記外側板部(35)と内側板部(36)との間に設けた外気取入部(37)の幅方向に複数の通気口(38)を形成し、前記外気取入部(37)の上面短尺方向に鉤形の保持爪部(41)を対向して設け、該保持爪部に前記通気口(38)と合致する位置にそれぞれ換気口(43)を設けたスライド板(42)を摺動可能に取付けて形成したアルミ押出成形材からなる軒先板枠(33)と、
外気温度の変化により作用する形状記憶合金製の変位ばね(52、85、96)を内蔵した換気装置(50、80、90)を前記軒先板枠33の外気取入部(37)に取付けると共に、該換気装置の可動軸(53、82、92)の先端とスライド板(4)を連結し、前記変位ばね(52、85、96)の伸縮により可動軸(53、82、92)とスライド板(42)を摺動させて通気口(38)を開閉可能に形成してなり、軒先固定片(S)に、前記換気装置(50、80、90)を設けた軒先板枠(33)を取付け、該軒先板枠に屋根板(2a)の軒側を連結し、該屋根板の棟側に複数の足高吊子片(25)をそれぞれ連結して基部(28)を野地板(T)にそれぞれ固着し、次の屋根板(2b)の軒側を前記足高吊子片(25)に係止した屋根板(2a)の棟側に連結する操作を繰返して棟側方向に順次連結し、棟付近に位置した屋根板(2e)の棟側を、前記棟枠固定片(21)の棟止部(23)内に止めてから棟枠固定片(21)をそれぞれ棟に取付け、該棟枠固定片に前記換気棟枠(16)を被せて嵌合固着して屋根葺をすることにより、各屋根板(2)と野地板(T)との間に連続して空間部(X)を形成し、外気温度の変化により前記軒先板枠(33)に取付けた換気装置(50、80、90)が作用して通気口(38)を開口させて外気を空間部(X)から換気棟枠(16)の排気路(W)を通って大気中に排出させる流通路を設けたことを特徴とする換気機能を備えた横葺屋根装置。
【請求項2】
第1換気装置(50)は、第1可動軸(53)に形状記憶合金製の変位ばね(52)を挿通して軸支した第1ばね受枠(51)と第2可動軸(53)に弾発ばね(57)を挿通して軸支した第2ばね受枠(56)とからなり、前記第1ばね受枠(51)を第1軒先板枠(33)の外気取入部(37)の一端に取付け、第2ばね受枠(56)を外気取入部(37)の他端に取付け、前記ばね受枠(51、56)にそれぞれ軸支した第1、2可動軸(53、58)の先端連結頭部(54、59)を、前記スライド板(42)の両端に取付けた連結片(45、45)をそれぞれ連結してなり、外気温度が所定温度以上になると前記変位ばね(52)が伸びて第1可動軸(53)とスライド板(42)を第2ばね受枠(56)方向に摺動させて換気口(43)と通気口(38)を合致させて開口し、外気温度が所定温度以下になると、前記変位ばね(52)が収縮して弾発ばね(57)の弾発力で第2可動軸(53)とスライド板(42)を第1ばね受枠(51)方向に摺動させて前記通気口(38)を閉口することを特徴とする請求項1記載の換気機能を備えた横葺屋根装置。
【請求項3】
第2換気装置(80)は、中央に仕切板(83)を固着した可動軸(82)の一方に形状記憶合金製の変位ばね(85)を挿通し、他方に弾発ばね(86)を挿通して軸受基枠(81)に軸支して形成し、該第2換気装置を前記第1軒先板枠(33)に設けた外気取入部(37)の一端に固定し、軸受基枠(81)の一端から突出させた可動軸(82)の先端係止頭部(84)を、スライド板(42)の一端に設けた連結片(45)に連結してなり、前記第2換気装置(80)に取付けた変位ばね(85)が所定の外気温度に達すると、変位ばね(85)が伸びて可動軸(82)とスライド板(42)を弾発ばね(86)方向に摺動させて換気口(43)と通気口(38)を合致させて開口し、外気温度が所定温度以下になると、変位ばね(85)が収縮して弾発ばね(86)の弾発力で可動軸(82)とスライド板(42)を変位ばね(85)方向に摺動して通気口(38)を閉口可能に形成したことを特徴とする請求項1記載の換気機能を備えた横葺屋根装置。
【請求項4】
第3換気装置(90)は、ばね受基枠(91)の中央に摺動可能に位置した可動軸(92)の一側に位置した形状記憶合金製の変位ばね(96)の一端を、前記可動軸(92)の長手方向一端に設けた第1ばね止部(95a)に取付け、他端を前記ばね受基枠(91)の反対側に設けた係止ピン(98a)に取付けて付勢させ、前記可動軸(92)の反対側に位置した弾発ばね(97)の一端を、前記第1ばね止部(95a)と反対側に設けた第2ばね止部(95b)に取付け、他端を前記ばね受基枠(91)の反対側に軸支した係止ピン(98b)に取付けて弾発させて形成し、前記ばね受基枠(91)を外気取入部(37)の上面任意箇所に取付けると共に、前記可動軸(92)の下面中央で垂直方向に設けた連結軸(94)を前記スライド板(42)に連結してなり、前記第3換気装置(90)を構成する変位ばね(96)が所定の外気温度以上になって伸びると、連結軸(94)を介して可動軸(92)とスライド板(42)が摺動して換気口(43)と通気口(38)とを合致させて開口し、外気温度が所定温度以下になると、変位ばね(96)が収縮し、弾発ばね(97)の弾発力により連結軸(94)を介して可動軸(92)とスライド板(42)が反対方向に摺動して通気口(38)を閉口可能に形成したことを特徴とする請求項1記載の換気機能を備えた横葺屋根装置。
【請求項5】
水平に形成した軒先基板(62)の軒側に外側板部(63)と内側板部(64)を並行に垂下させ、前記外側板部(63)と内側板部(64)との間に設けた外気取入部(65)の幅方向に短冊状に形成した複数の通気口(66a)と複数のガイド孔(69a、69b)を幅方向に形成し、前記通気口(66a)と合致する位置にそれぞれ換気口(71)を有した幅方向を長尺にした第2スライド板(70)を前記外気取入部(65)の下面側に摺動可能に取付け、前記ガイド孔(69b)に吊下軸(78)の上端を挿通係止し、下端を第2スライド板(70)に軸支して形成したアルミ押出成形材からなる第2軒先板枠(61)と、前記第2軒先板枠(61)の外気取入部(65)の一端に前記第2換気装置(80)を固定し、該第2換気装置の軸受基枠(81)の一端から突出させた可動軸(82)の係止頭部(84)と連結させた連結片(73)と前記外気取入部(65)の下面に位置した第2スライド板(70)の一端とをガイド孔(69a)を介して連結軸(77)で連結してなり、前記第2換気装置(80)に取付けた変位ばね(85)が所定の外気温度に達すると、変位ばね(85)が伸びて弾発ばね(86)方向に摺動して可動軸(82)の先端に取付けた連結片(73)を介して第2スライド板(70)を摺動させて換気口(71)と通気口(66a)を合致させて開口し、外気温度が所定温度以下になると、変位ばね(85)が収縮して弾発ばね(86)の弾発力で可動軸(82)を変位ばね(85)方向に摺動させると、連結片(73)が第2スライド板(70)を摺動させて通気口(66a)を閉口可能に形成したことを特徴とする請求項1記載の換気機能を備えた横葺屋根装置。
【請求項6】
前記換気装置(50、80、90)を構成する形状記憶合金製の変位ばね(52、85、96)がそれぞれ作用する外気温度は、好ましくは、摂氏17度以上で伸び、摂氏7度以下になると収縮することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1記載の換気機能を備えた横葺屋根装置。
【請求項7】
裏面に断熱シート(4)を取付けた平坦部(3)の軒側端部を下方に折曲げて軒側係合部(5)と前記平坦部(3)の棟側端部を上方に折り曲げて棟側連結部(10)を一体に設けたアルミ押出成形材からなる屋根板(2)と、
中央を山形に形成した棟部(17)の両側に設けた壁面板(18)の下端を内側に折り返して設けた係止受部(19)に、屋根の棟部分に一定間隔で複数取付ける棟枠固定片(21)の両側で左右対称に形成した門形の棟止部(23)の両側に設けた掛止部(24)を嵌合固着したアルミ押出形成材からなる換気棟枠(16)と、
座部(26)の両端を垂下して設けた脚部(27)の下端を折曲げて基部(28)を形成し、前記座部(26)の棟側に設けた立上部(29)の上方を軒側に鉤形に折曲げて棟受部(30)を形成し、前記座部(26)の軒側先端に屋根板(2)の棟側下端を係止させる屋根受部(31)を設けたアルミ押出成形材からなる複数の足高吊子片(25)と、
板状に形成した軒先基板(62)の軒側に外側板部(63)と内側板部(64)を並行に垂下させ、前記外側板部(63)と内側板部(64)との間に設けた外気取入部(65)の幅方向に複数の通気口(66b)を設け、該通気口に防虫網(M)を取付けたアルミ押出成形材からなる第2軒先板枠(61)と、
前記第2軒先板枠(61)の各通気口(66b)に、所定の外気温度で変形する、例えば形状記憶合金製の板材により形成した開閉板(104)の長手方向または短尺方向の縁部をビス、ねじまたは溶接などの固定具(105)で固着した第4換気装置(103)をそれぞれ取付けてなり、
軒先固定片(S)に、前記第2換気装置(103)を設けた第2軒先板枠(61)を取付け、該軒先板枠に屋根板(2)の軒側係合部(5)を連結し、該屋根板の棟側連結部(10)に複数の足高吊子片(25)の棟受部(30)をそれぞれ連結すると共に、足高吊子片(25)の基部(28)を野地板(T)にそれぞれ固着し、次の屋根板(2b)の軒側を前記足高吊子片(25)に係止した屋根板(2a)の棟側に連結して棟側方向に順次連結し、棟付近に位置した屋根板(2e)の棟側を、前記棟枠固定片(21)の棟止部(23)内に止めてから棟枠固定片(21)をそれぞれ棟に取付け、該棟枠固定片に前記換気棟枠(16)を被せて嵌合固着して屋根葺をすることにより、各屋根板(2)と野地板(T)との間に連続して空間部(X)を形成し、外気温度の変化、例えば摂氏17度以上になると第2軒先板枠(61)の通気口(66b)に取付けた第4換気装置(103)の開閉板(104)が変形して通気口(66b)を開口し、該通気口から進入した外気は空間部(X)から換気棟枠(16)の排気路(W)を通って大気中に排出可能に形成し、また摂氏7度以下になると開閉板(104)が元の形態に戻って通気口(66b)を閉口可能に形成したことを特徴とする換気機能を備えた横葺屋根装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−7153(P2013−7153A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135218(P2011−135218)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(593207330)アルアピア株式会社 (1)
【Fターム(参考)】