説明

揮発性成分除去装置および方法

本発明の実施形態は、加熱チャネルを有するプレート加熱器を使用する流動性物質(例えば混入または溶解溶媒または未反応モノマーまたはコモノマーを有する溶融ポリマー)の揮発性成分除去のための装置または方法であって、上記加熱チャネルの設計または作動はより大きな第1のゾーンの通過時に流動性物質をその泡立ち点圧力より高く維持し、それから上記加熱チャネルのより小さな第2のゾーンにおいて、またはその下流においてフラッシングを誘発する、流動性物質の揮発性成分除去のための装置または方法を提供する。本装置は、現在の揮発性成分除去装置と比較して同等またはより良好な揮発性成分除去を達成しながら、より高い1加熱チャネル当たりスループットを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレート熱交換器を備える揮発性成分除去装置と高いスループットでの流動性物質の揮発性成分除去のための関連方法とに関する。
(関連出願への相互参照)
本出願は、以下に全部再現されているように、その教示が参照により組み込まれている「DEVOLATILIZATION APPARATUS AND PROCESS」と題する2010年2月11日に出願された米国特許本出願第12/704,161号から優先権を主張する本出願である。
【背景技術】
【0002】
「揮発性成分除去」と呼ばれる流動性物質からの揮発性成分の除去は、多くのポリマー(重合体)の商業的製造を含む幾つかの工業的方法における必要なステップである。特に、ポリマーがモノマー(単量体)の溶液から製造される場合には、最終製品から溶媒と未反応モノマーとを除去することが必要である。例えば残留モノマーおよび揮発性物質は、ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル・コポリマー(共重合体)(SAN)、またはゴム変性スチレン/アクリロニトリル・コポリマー(ABS、AESなど)、およびオレフィン系ポリマー(例えばポリプロピレン、ポリエチレン、オレフィンブロック・コポリマー、およびEPDM)のバルク重合または溶液重合においてポリマー製品から除去されなければならない。
【0003】
溶融ポリマー溶液からの揮発性成分の分離は一般に蒸発によって達成され、この方法は揮発性成分の沸点より高い温度にポリマー溶液を加熱することと、放出された揮発性成分を除去することとからなる。1つの揮発性成分除去方法は、ポリマー溶液をして熱交換器を通過させ、それから減圧された圧力のゾーン内に入れることを含む。この目的のために適当な熱交換器例えば平板(フラットプレート)加熱器または平板(フラットプレート)熱交換器と呼ばれる熱交換器は、加熱されて揮発性成分除去される溶液の通過のための加熱器の内側部分(ポリマー溶液が供給される)と外側部分とを接続する種々の加熱チャネルを有する複数のスタック状または層状に配置された多数の加熱プレートを備える。改善された性能は、ある程度排気される閉鎖されたシェル内に加熱器を配置することによって達成される。
【0004】
平板加熱器の従来の設計は、米国特許第3,014,702号;第4,153,501号;第4,421,162号;第4,423,767号;第4,564,063号;第4,808,262号;第5,084,134号;第5,453,158号および第5,861,474号に、そしてまたPCT公告第WO96/21836号に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,014,702号
【特許文献2】米国特許第4,153,501号
【特許文献3】米国特許第4,421,162号
【特許文献4】米国特許第4,423,767号
【特許文献5】米国特許第4,564,063号
【特許文献6】米国特許第4,808,262号
【特許文献7】米国特許第5,084,134号
【特許文献8】米国特許第5,453,158号
【特許文献9】米国特許第5,861,474号
【特許文献10】PCT公告WO96/21836号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
世界経済において競争するために、より大きな生産能力(ある場合には、年間330,000メトリックトン、330KTAを超える)を有する重合プラント(工場)を設置することが必要になっている。このサイズのプラントでは、最も効率的な従来設計(例えば米国特許第5,453,158号に開示されている設計)でも典型的には、実際問題として経済的に構成されて成功裏に運用され得る平板加熱器の物理的サイズ限界に到達するか、このサイズ限界を超える。特にこれらの従来設計は、必要な揮発性成分除去の程度とこれらの大型プラントの高いスループットの両方を達成するためには不十分であり、したがってこれらの熱交換器は、より大型の重合プラントのための揮発性成分除去装置の設計において生産能力限定要素になっている。
【0007】
したがって、揮発性成分が除去される材料における十分に少ない残留揮発性物質を達成しながら、より高い効率とスループットとを可能にする改善された加熱チャネル設計を有するプレート熱交換器を組み入れた改良型揮発性成分除去装置の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は:
流動性物質の温度によって変化する泡立ち点圧力によって特徴付けられる流動性物質であって少なくとも1つの混入または溶解揮発性成分に加えて少なくとも1つの液体または流動性固形物からなる加圧された流動性物質を供給するための供給手段と、
収集兼揮発性物質分離手段と、
各加熱チャネル(流路)が2つのゾーンを有する複数の加熱チャネルを画定する多数のプレートであって、上記2つのゾーンは:
(1)平均動水半径(average hydraulic radius)と(2)上記供給手段からの上記流動性物質を受けるように適応した入口とを有する第1のゾーンと、
各チャネルの残り部分を構成する第2のゾーンであって、上記第1のゾーンからの上記流動性物質を受けるように適応していて、上記流動性物質を上記収集兼揮発性物質分離手段内に放出するように適応した少なくとも1つの出口を有し、上記第2のゾーンの少なくとも一部分が上記第1のゾーンの上記平均動水半径より小さな動水半径を有する、第2のゾーンと、からなる多数のプレートと、とを備える揮発性成分除去装置であって、
上記加熱チャネルの少なくともある幾つかのチャネルの設計または運用はこれらの加熱チャネルの上記第1のゾーン内の本質的にすべての位置における上記流動性物質の圧力が上記流動性物質の泡立ち点圧力を超えるものである、揮発性成分除去装置を提供する。
【0009】
本発明はまた:
(a)流動性物質の温度によって変化する泡立ち点圧力によって特徴付けられる流動性物質であって少なくとも1つの溶融ポリマーと少なくとも1つの溶解または混入揮発性成分とからなる加圧された流動性物質を供給するためのポンプと、
(b)収集兼揮発性物質分離容器と、
(c)各チャネルが実質的に均等な高さと2つのゾーンとを有する複数の加熱チャネルを画定する多数のプレートであって、上記2つのゾーンは:
(1)平均動水半径と(2)上記ポンプからの上記流動性物質を受けるように適応した入口とを有する第1のゾーンと、
各チャネルの残り部分を構成する第2のゾーンであって、上記第1のゾーンからの上記流動性物質を受けるように適応していて、上記収集兼揮発性物質分離手段内に上記流動性物質を放出するように適応した少なくとも1つの出口を有し、上記第2のゾーンの少なくとも一部分が上記第1のゾーンの上記平均動水半径より小さい動水半径を有する、第2のゾーンと、からなり、
上記加熱チャネルの少なくともある幾つかのチャネルの設計または運用は、これらの加熱チャネルの上記第1のゾーン内の本質的にすべての位置における上記流動性物質の圧力が上記流動性物質の泡立ち点圧力を超える、多数のプレートと、
(d)上記流動性物質が上記加熱チャネル内を流れるときに上記流動性物質の温度を高めるように上記プレートの少なくともある幾つかを加熱することに適応した複数の加熱要素と、を備える揮発性成分除去装置を提供する。
【0010】
本発明はまた、少なくとも1つの混入または溶解された揮発性成分に加えて液体または流動性固形物からなる流動性物質の揮発性成分除去のための方法(プロセス)であって、上記揮発性成分を分離して実質的に揮発性成分除去された製品を製造するように揮発性成分除去条件下で機能しながら上記流動性物質をして上記揮発性成分除去装置内を通過させることを備える方法を提供する。
【0011】
更に本発明は、担持触媒または非担持触媒の存在時における少なくとも1つのモノマーおよび任意選択的に1つまたはそれ以上のコモノマーからのポリマーの製造方法であって、上記製造されるポリマーは溶媒内に溶解または懸濁しており、溶融状態のポリマーと溶媒と1つまたはそれ以上の未反応モノマーまたはコモノマーとからなる流動性物質は溶融ポリマーから溶媒と未反応モノマーまたはコモノマーとの大部分を除去するように処理され、この改善点は2000wppm未満の溶媒と未反応モノマーまたはコモノマーとの残留内容物を有する実質的に揮発性成分が除去されたポリマー製品を製造するように上記流動性物質を処理するために請求項1に記載の揮発性成分除去装置を使用することを含む、ポリマーの製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の装置の一実施形態における有用な単一加熱チャネルを示す図である。
【0013】
【図2】図1の加熱チャネル設計を組み込んだ本発明の装置の有用な平板(フラットプレート)の単純化された軸方向上面図である。
【0014】
【図3】図2の3−3で示された断面に沿って取られた平板のスタックの周囲の一部分を示す側面部分断面図である。
【0015】
【図4】図2の加熱チャネル設計を組み込んだ平板のスタックを含む本発明の装置の一実施形態の部分等角図(斜視図)である。
【0016】
【図5】本発明の装置の一実施形態の種々の要素を示す概略図である。
【0017】
【図6A】本発明の装置における有用な加熱チャネルの代替実施形態を示す図である。
【図6B】本発明の装置における有用な加熱チャネルの代替実施形態を示す図である。
【図6C】本発明の装置における有用な加熱チャネルの代替実施形態を示す図である。
【0018】
【図7】図1、2および4の加熱チャネル設計との比較のためにその従来加熱チャネル設計が使用された米国特許第5,453,158号に開示されているタイプの平板加熱器の単一加熱チャネルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
反対に記述されていない限り前後関係または当分野における慣習から暗示されるように、すべての部分および割合は重量に基づいている。米国特許実務のために、ここに参照されている如何なる特許、特許出願または公告の内容も、特に合成的技法、定義(ここで与えられる如何なる定義にも矛盾しない程度の)および当分野における一般的知識に関してはすべての記載内容を参照によりここに組み込まれている(あるいはこれの同等な米国バージョンは参照により組み込まれている)。
【0020】
(定義)
加熱チャネル内のゾーンの寸法(例えば幅または高さ)または断面積に関連して使用される「実質的に均等な」によって、同用語は収束も発散もまったくしないこと、またはこの寸法の平均の10パーセント以下だけ収束および/または発散することが意味されている。
【0021】
「ポリマー(重合体)」は、同じタイプのモノマーか異なるタイプのモノマーかにかかわらず複数のモノマーを重合させることによって調製される化合物を指す。一般名「ポリマー」は用語「オリゴマー」、「ホモポリマー(単独重合体)」、「コポリマー(共重合体)」、「ターポリマー(三元重合体)」ならびに「インターポリマー(共重合体)」を包含する。
【0022】
「インターポリマー」は、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって用意されるポリマーを指す。一般名「インターポリマー」は、用語「ターポリマー」(これは通常3つの異なるタイプのモノマーから用意されるポリマーを指すために使用される)に加えて用語「コポリマー」(これは通常2つの異なるモノマーから用意されるポリマーを指すために使用される)を含む。「インターポリマー」はまた4つまたはそれ以上のタイプのモノマーを重合させることによって作られるポリマーを包含する。
【0023】
「オリゴマー」は、ほんの僅かなモノマーユニット例えばダイマー(二量体)、トリマー(三量体)またはテトラマー(四量体)から成るポリマー分子を指す。
【0024】
「泡立ち点圧力」は、蒸気の最初の泡が所定の温度で形成されるときの最も高い圧力を意味する。
【0025】
加熱チャネルのゾーンに関して使用される「動水半径」は、(a)流体が流れている導管の断面積対(b)この導管の流体で濡れている全断面周囲長の比を意味する。
【0026】
「流動性固形物」は、ある幾つかの通常固形の成分からなるが運用条件または設計条件の下では本発明の装置の加熱チャネル内を流れることができる物質(例えば粒子状固形物を含むスラリーまたは分散液または懸濁液)を意味する。
【0027】
「熱流体」は、加熱源からの熱を搬送してこの熱を間接的熱交換によって本発明の装置のプレートに伝達するために有用な流体を意味する。適当な熱流体は、水蒸気、熱油、および他の熱流体例えば登録商標「DOWTHERM」の下でDow Chemical Companyによって販売されている熱流体を含む。
【0028】
(流動性物質の揮発性成分除去)
本発明の装置および方法は幅広い種々の流動性物質を揮発性成分除去するために適しており、またこれらは粘性のある流動性物質を揮発性成分除去するために特に適している。適当な流動性物質は、混入または溶解した揮発性成分を有するが揮発性成分除去装置内でこれらの条件下では流動可能である通常固体の物質(例えばポリマーまたは食料品)に加えて揮発性成分が混入または溶解している通常液体の組成物を含む。このような流動性物質は、(a)液体または流動性固形物と(b)混入または溶解した揮発性成分とからなる任意の他の流動性物質に加えて典型的には溶液重合方法またはスラリー重合方法で製造されたポリマー製品を含むが、これらに限定されることはない。
【0029】
流動性物質の液体または流動性固形内容物は、種々の物質のうちの任意の1つまたはそれ以上のものであり得る。このような液体または流動性固形物の例は:溶融ポリマー、蛋白質、メチレン・ジイソシアナート、トルエン・ジイソシアナート、チーズ、ソーセージ、ドレッシング、キャンディ、チョコレート、糖蜜、他の食品、ワックス、重油、タール、アスファルト、他の建設材料(例えば水に入れられた土、プラスター(石膏)、セメントまたは骨材)、樹液、パルプ、紙、石鹸、液状洗剤、バイオマス、接着剤、調合薬、他の粘性液体、またはこれらの任意の組合せを含む。流動性物質はまた、通常固形の成分からなるが運用条件または設計条件の下で本発明の装置の加熱チャネル内を流れることができる流動性固形物(例えば粒子状固形物を含むスラリーまたは分散液または懸濁液)を含む。
【0030】
本発明の装置および方法は、溶融ポリマー例えばオレフィン系ポリマー、芳香族ビニール・ポリマー、縮合重合体、ポリオール、高分子量エポキシなどの揮発性成分除去のために好適である。本発明のために芳香族ビニール・ポリマーは、すべてのホモポリマーおよび、1つまたはそれ以上の芳香族ビニール・モノマーと、これらと更なるポリマーとの混合物と、のコポリマー(グラフトコポリマーを含む)であると理解されるべきである。このようなポリマーの例は、ポリスチレン、ゴム変性または耐衝撃性ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル・コポリマー(これらのゴム変性バージョン例えばABSまたはAESコポリマーを含む)、および上記のものと他のポリマー例えばポリカーボネートまたはポリフェニレンいずれかのポリマーとの混合物を含む。好適な芳香族ビニール・ポリマーは、ポリスチレン、耐衝撃性改質ポリスチレン(HIPS)およびABSである。
【0031】
オレフィン系ポリマーの例は、ホモポリマーと、ポリプロピレンおよび他のプロピレン系ポリマーとポリエチレンおよび他のエチレン系ポリマーとオレフィンブロック・コポリマーとを含むが、これらに限定されない1つまたはそれ以上のC〜C10オレフィンのコポリマー(グラフトコポリマーを含む)と、を含む。このようなオレフィン系ポリマーは、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(例えば登録商標「DOWLEX」の下でDow Chemical Companyによって販売されているLLDPE)、改良ポリエチレン(例えば登録商標「ELITE」の下でDow Chemical Companyによって販売されているもの)、メタロセン触媒による線状または実質的に線状のエチレン・コポリマー(例えば登録商標「AFFINITY」および「ENGAGE」の下でDow Chemical Companyによって販売されているものおよび登録商標「Exact」および「Exceed」の下でExxonMobile Chemical Companyによって販売されているもの)、プロピレン系コポリマー(例えば登録商標「VERSIFY」の下でDow Chemical Companyによって販売されているものおよび登録商標「Vistamaxx」の下でExxonMobile Chemical Companyによって販売されているもの)、およびオレフィンブロック・コポリマー(例えば登録商標「INFUSE」の下でDow Chemical Companyによって販売されているもの)、および他のポリオレフィン・エラストマー(例えば登録商標「NORDEL」または「NORDEL IP」の下でDow Chemical Companyによって販売されているEPMD)を含むが、これらに限定されない。
【0032】
ポリマーの他の例は、種々のオリゴマー例えば登録商標「DER」の下でDow Chemical Companyから入手可能な改良エポキシ樹脂および登録商標「DEN」の下でDow Chemical Companyから入手可能なノボラック樹脂を含む。
【0033】
このようなポリマーの分子量およびメルトインデックス(ASTM方式D−1238によって測定されたI2)は大幅に変化する可能性がある。例は、約0.1から約1000gm/10分、好適には約0.3から約200gm/10分、更に好適には約0.5から約10gm/10分のメルトインデックス(ASTM方式D−1238(190℃および2.16kgの条件)によって測定されたI2)を有するエチレン系ポリマーを含むが、これに限定されない。更なる例は、約0.1から約1000gm/10分、好適には約0.3から約200gm/10分、更に好適には約0.5から約10gm/10分のメルトインデックス(ASTM方式D−1238(230℃および2.16kgの条件)によって測定されたI2)を有するプロピレン系ポリマーを含むが、これに限定されない。
【0034】
上記のポリマーは典型的には、モノマーと生成されたポリマーとが溶媒に混入された溶液またはスラリー重合反応装置内で製造される。他のポリマー溶液も多量または少量の揮発性成分を含んで(意図的に、または意図的でなく)作られ得る。典型的な揮発性成分は、未反応モノマーおよび/またはコモノマーに加えて溶媒(例えば芳香族または脂肪族不活性希釈剤)を含む。ポリマー溶液から除去されるべき溶媒、未反応モノマー、未反応コモノマーおよび/または他の揮発性成分の量は、大きな過剰分から単なる汚染量までの範囲に及ぶ可能性がある。初期フラッシュ揮発性成分除去ステージ後でも溶液重合またはスラリー重合プラントにおいて製造された溶融ポリマーはしばしば、これらがプレート加熱器揮発性成分除去装置内で処理される時点で10から25重量パーセントまたはそれ以上の溶解または混入揮発性成分を包含する。典型的には揮発性成分除去ポリマー内に残留する残留揮発性成分の量は、ASTM D−4526によって測定されたときに約2000wppm未満、好適には1500wppm未満、更に好適には1000wppm未満であるべきである。
【0035】
揮発性成分が除去されるべき流動性物質内の揮発性成分の初期濃度と揮発性成分除去された製品において許容可能である残留揮発性物質のレベルとに依存して、揮発性成分除去装置の1つより多いステージ(例えば2または3ステージ)が使用される可能性がある。更にこの揮発性成分除去装置は、他の公知の揮発性成分除去技法例えば単純なフラッシュ揮発性成分除去、イオン流体抽出、超臨界流体を使用する抽出、蒸留、スチームストリッピングまたは二酸化炭素ストリッピングと組み合わせて、または別の揮発性成分除去ステージにおいて、または(例えばスチームストリッピング(水蒸気蒸留)または二酸化炭素ストリッピングの場合に)同じ揮発性成分除去ステージ内で本発明の装置と組み合わせて、使用され得る。
【0036】
(装置の説明)
本発明の揮発性成分除去装置は、熱交換と揮発性成分の実質的に完全な蒸発との両方の高い速度を達成しながら流動性物質のより高い流量を可能にし、それによって熱交換器のスループットと効率とを向上させる改良された熱交換器を含む。プレートは、如何なる適当な材料からも作られ得るが、好適には鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、または他の金属材料から作られる。
【0037】
図1は、本発明の装置の一実施形態による単一の加熱チャネル(12)の形状を示す。この加熱チャネル(12)は、周囲プレート(これの1つのプレートの直接隣接する部分だけが40として示されている)の壁(30)と、チャネル(12)の床および天井を画定する隣接ブロックまたは他のプレート(図示せず)と、によって画定された空間である。加熱チャネル自身は、2つのゾーン、すなわちチャネルの入口(14)から出口(16)までの比較的大きな断面積を有する第1のゾーン(10)と、第2のゾーンへの入口(24)でもある第1のゾーンの出口(16)と第2のゾーンの出口(26)との間の少なくとも1つの場所において実質的により小さな断面積を有する第2のゾーンと、を備える。第2のゾーンの断面積は、第1のゾーン(10)内の流動性物質をこの流動性物質の泡立ち点圧力より高く加圧された状態に保持するために第1のゾーン(10)内の流動性物質からの揮発性成分の如何なる大きなフラッシングも防止し、それによってチャネルを形成するプレートの周囲壁(30)から第1のゾーン(10)内のポリマー溶液内への熱伝達効率を向上させるように(揮発性成分除去されるべき流動性物質の運用条件および特性の観点から)サイズ決めされる。また第2のゾーン(20)の限定された部分(またはすべての部分)の断面積は、第2のゾーン(20)の出口(26)から出る際に第2のゾーン(20)自身の内部における、好適には実質的に完全なフラッシングを、またはより好適には第2のゾーン(20)の直ぐ下流における流動性物質からの揮発性成分の実質的なフラッシングを引き起こすようにサイズ決めされる。
【0038】
加熱チャネルの第1のゾーンを画定するプレートは好適には、流動性物質の温度を最終的揮発性成分除去温度にまで高めるために流動性物質と接触する十分な表面積を有する。第1のゾーンにおける流動性物質への圧力は泡立ち点圧力より高く維持されるので、フラッシングは第1のゾーンから除去される。典型的には本発明の装置は、第1のゾーン内の本質的にすべての位置における流動性物質への圧力が加熱チャネルの第1のゾーン内の最高温度における流動性物質の泡立ち点圧力よりすくなくとも2パーセント、好適には少なくとも5パーセント、より好適には少なくとも10パーセント、最も好適には少なくとも15パーセント高くなるように、設計され運用される。
【0039】
各加熱チャネルの高さは典型的には、チャネルの全長に亘って実質的に均等である−加熱プレートのスタックの製造および組立てを容易にするために所望される通りである(図3および4に示されている通り)。この高さは、加熱要素から加熱チャネル内の流動性物質への効率的な熱伝達を最適化するために加熱チャネルとこの加熱チャネルに隣接する加熱要素(図2、3および4示されているような)のその他の寸法と共に選択される。典型的には加熱チャネルは、これの全長に亘って約0.05cmから約5cm(0.02〜2インチ)、好適には約0.07から約2.5cm(0.03〜1インチ)、より好適には約0.12から約1.3cm(0.05〜0.5インチ)の実質的に均等な高さを有する。
【0040】
加熱チャネル(12)の第1のゾーン(10)の形状および断面積は、運用条件または設計条件の下で第1のゾーンを通過する流動性物質が第1のゾーン内の本質的にすべての位置でこの流動性物質の泡立ち点圧力より高く維持されるという条件で大幅に変わり得る。したがって図1に示されているように第1のゾーン(10)の形状および断面積(および動水半径)は比較的短い遷移区間−例えば入口(14)において(15)、および出口(16)において(17)と示された遷移区間−を除いて第1のゾーンの入口(14)と第1のゾーンの出口(16)との間で実質的に均等であり得る。代替として加熱チャネルの第1のゾーンの形状および断面積は、発散性または収束性であり得る、あるいは各々の区間が発散性または収束性または実質的に均等である可能性がある複数の区間のある組合せであり得る。第1のゾーンの構成とは無関係に第1のゾーンの平均動水半径は、第2のゾーンの少なくとも一部分の動水半径より大きくあるべきである。
【0041】
第2のゾーン(20)は、第1のゾーン(10)の出口(16)から始まり、流動性物質を収集および分離容器(図1には示されていないが図5に容器(75)として示されている)内に放出するように適応した出口(26)で終わっている。第2のゾーン(20)は長さが変化するが、この長さは、加熱チャネル(12)の全長の典型的には0.2パーセントから40パーセント、好適には約0.5から約10パーセント、更に好適には約1パーセントから約5パーセントである。第2のゾーン(20)の断面積は、第1のゾーン(10)内の流動性物質に十分な背圧をかけることと、第2のゾーン(20)内または好適には第2のゾーン(20)の出口(26)の直ぐ下流のいずれかにおける流動性物質からの揮発性成分の迅速かつ劇的なフラッシングという結果をもたらすことと、の両方のために第1のゾーン(10)の断面積より小さい。第2のゾーンの最も狭い点で第2のゾーン(20)は典型的には、約0.01から約2平方センチメートル、好適には約0.02から約1平方センチメートル、更に好適には約0.1から約0.5平方センチメートルの断面積を有する。第1のゾーンの平均断面積対第2のゾーンの最も狭い部分の断面積の比は、典型的には約2:1から約200:1であり、好適には約5:1から約60:1であり、更に好適には約10:1から約30:1である。
【0042】
加熱チャネル(12)の第2のゾーン(20)の形状および断面積(および動水半径)は、運用条件または設計条件の下で(a)第1のゾーンを通過する流動性物質がこの流動性物質の泡立ち点圧力より高い圧力に維持され、(b)第2のゾーン内で誘発される圧力低下が流動性物質からの揮発性成分の十分なフラッシングという結果をもたらすという条件で、変わり得る。したがって図1に示されているように第2のゾーン(20)の形状および断面積は、入口(24)における短い遷移区間(25)を除いて第2のゾーンの入口(24)と第2のゾーンの出口(26)との間で実質的に均等であり得る。代替として第2のゾーンの形状および断面積は、第2のゾーン(20)内においてまたは好適には出口(26)において必要な圧力低下を誘発して揮発性成分をフラッシュさせるために、発散性または収束性、またはこれらのある組合せであり得る。
【0043】
加熱チャネル(12)の全長は、典型的には約5から約61cm(2から24インチ)、好適には15から31cm(6から12インチ)、より好適には20から26cm(8から10インチ)である。第1のゾーン(10)の長さは、典型的には2.5から51cm(1から20インチ)、好適には12から31cm(5から12インチ)、より好適には17から25cm(7から9.5インチ)である。周囲プレートから流動性物質内への熱伝達の効率を向上させるために第1ゾーンは加熱チャネルの大部分を構成すべきである。したがって第1のゾーンの長さ対加熱チャネルの全長の比は、典型的には0.5:1から0.998:1、好適には0.7:1から0.995:1、更に好適には0.90:1から0.99:1である。
【0044】
溶媒と、粘性のある溶融ポリマーに混入または溶解された揮発性成分を含む流動性物質からの未反応モノマーまたはコモノマーと、の揮発性成分除去のために設計された装置の一実施形態に関して、第1のゾーン(10)の平均動水半径は約0.06から約1.2センチメートル(0.024〜0.47インチ)であり、第2のゾーン(20)の最も限定された部分(またはすべて)の動水半径は約0.03から約1.1センチメートル(0.012〜0.43インチ)であり得る。加熱チャネルの高さは典型的には、約0.15から約2.5cm(0.06〜1インチ)、好適には約0.19から約1cm(0.07〜0.4インチ)、更に好適には約0.25から約0.64cm(0.1〜0.25インチ)であり得る。加熱チャネルの長さは約5から約61cm(2〜24インチ)であり、加熱チャネルの第1のゾーンの長さは約2.5から約51cm(1〜20インチ)、好適には約12から約28cm(5〜11インチ)、更に好適には約17から約23cm(7〜9インチ)であり得る。第2のゾーンは加熱チャネルの残り部分を構成する。その結果、加熱チャネルの第2のゾーンの長さは典型的には、約0.2から約16cm(0.1〜6インチ)、好適には約0.5から約7.6cm(0.2〜3インチ)、更に好適には約0.7から約2.6cm(0.3〜1インチ)であり得る。
【0045】
加熱チャネルの幅は第1および第2のゾーンにおいて異なる。第1のゾーンの幅は、約1.3から約30cm(0.5〜12インチ)、好適には約2.5から約20cm(1〜8インチ)、更に好適には約3.8から約10cm(1.5〜4インチ)であり得る。第2のゾーンの幅は、約0.12から約15cm(0.05〜6インチ)、好適には約0.2から約2.5cm(0.075〜1インチ)、更に好適には約0.25から約0.65cm(0.1〜0.25インチ)であり得る。
【0046】
本発明のある幾つかの実施形態では、(a)第1のゾーンの平均動水半径対(b)最も小さな断面積を有する第2のゾーンの部分の平均動水半径の比は、約1.05:1から約10:1、好適には約1.15:1から約8:1、更に好適には約1.3:1から約6:1である。
【0047】
好適な一実施形態では、加熱チャネルの長さは約20から約26cm(8〜10インチ)であり、加熱チャネルの高さは約0.12から約0.38cm(0.05〜0.15インチ)であり、第1のゾーンの長さは約17から約24cm(7〜9.5インチ)であり、第1のゾーンの幅は約3.8から約10cm(1.5〜4インチ)で実質的に均等であり、第1のゾーンの動水半径は約0.061から約0.184cm(0.024〜0.072インチ)で実質的に均等であり、第2のゾーンの長さは約0.63から約1.91cm(0.25〜0.75インチ)であり、第2のゾーンの幅は約0.25から約0.64cm(0.1〜0.25インチ)で実質的に均等であり、第2のゾーンは単一の出口と約0.04から0.12cm(0.016〜0.047インチ)の動水半径とを有し;(a)第1のゾーンの平均動水半径対(b)最も小さな断面積を有する第2のゾーンの部分の平均動水半径の比は、約1.05:1から約5:1である。
【0048】
本発明の加熱チャネルは典型的には、流動性物質が加熱チャネルの第1のゾーンを流れるときにこの流動性物質の圧力が低下するように設計または運用される。所定の加熱チャネル設計に関して、第1のゾーンに亘る圧力低下は流動性物質のスループットおよび粘性によって変化し、粘性の高い物質では粘性の低い物質より高い圧力低下を経験する。溶融ポリマーの揮発性成分除去に関して、第1のゾーンに亘るこの圧力低下は典型的には、約50から約2000psi、好適には約100から約1800psi、更に好適には約300から約1500psigであり得る。しかしながら第1のゾーン内の各位置における圧力は、揮発性成分のフラッシングを防止するために各位置における泡立ち点圧力より高い圧力に留まるべきである。典型的には、第1のゾーン内の本質的にすべての位置における圧力は、第1のゾーン内の流動性物質の最高温度における流動性物質の泡立ち点圧力より少なくとも5パーセント(好適には少なくとも10パーセント、更に好適には少なくとも15パーセント)高い。
【0049】
図2は、図1の加熱チャネル設計を組み入れた本発明の装置の一実施形態における有用なプレートの単純化された軸方向上面図を示す。プレート(40)は、ポンプ(図2には図示されていないが図5にポンプ(62)として示されている)からの揮発性成分除去されるべき流動性物質の供給を受けるための軸方向に位置合わせされたチャンバ(60)とプレート(40)の外側にあってプレートを取り囲む収集および分離容器(図2には図示されていないが図5には容器(75)として示されている)との間の流体連通を与える複数の加熱チャネル(12)を有する。プレート(40)は、プレート(40)内に配置され加熱チャネル間に間隔をあけて配置され加熱要素(50)からプレート(40)の壁30を介して加熱チャネル(12)に熱を伝達するように適応した複数の加熱要素(50)を有する。加熱要素(50)は、如何なるタイプの加熱要素例えば電気加熱要素または熱流体加熱要素であってもよい。好適には加熱要素(50)は、熱流体(例えば水蒸気、高温油、合成液体、または他の加熱された液体)が流される多数の熱交換チューブ(伝熱管)からなる。使用される加熱流体のタイプは、熱交換器の設計において周知のように、システムの温度および圧力要件に依存する。
【0050】
図3は、図2の3−3で示された区間に沿って取られた本発明の装置の一実施形態におけるプレート(40)のスタック(70)の周囲の一部分を示す側面部分断面図を示す。このスタックは、適当な形状のブロック(45)を有する交互層にスタックされた円板の形をしたプレートであって、各チャネル(12)の壁と床と天井とを画定するように整えられ、供給手段からの揮発性成分除去されるべき流動性物質を受けるための中央チャンバ(図3には図示されていないが図2、4および5に60として示されている)を画定するように固定された多数のプレートを備える。加熱要素(50)は、プレート(40)とブロック(45)とを貫通し、これらに熱を伝達するように適応しており、これらプレート(40)およびブロック(45)は立ち代ってこのような熱を加熱チャネル(12)の壁と床と天井とを介して流動性物質に伝達する。加熱要素(50)は、熱流体が通り抜ける導管またはパイプであり得る。プレート(40)およびブロック(45)は、加熱要素または他の固定手段例えばボルト(図示せず)によって互いに固定され得る。スタック(70)におけるプレート(40)およびブロック(45)の数は、2個ほどの少数から数1000プレートほどの多数、好適には約10から約1000プレート、更に好適には約100から約800プレートの範囲で変わり得る。スタック(70)内のプレート(40)および隣接ブロックの各々によって形成される加熱チャネル(12)の数は、1プレート当たり1個ほどの少数から数100個の加熱チャネル、好適には約2個から約100個の加熱チャネル、更に好適には約20個から約70個の加熱チャネルの範囲で変わり得る。所定のスタック(70)内の加熱チャネル(12)の総数は、2ほどの少数から100,000またはそれ以上、好適には約2,000から約60,000、更に好適には約10,000から約50,000の範囲内で大幅に変化し得る。
【0051】
図4は、中央チャンバ(60)からスタックの外側に流動性物質が通り抜けるための加熱チャネル(12)を共に画定する交互プレート(40)とブロック(45)とのスタック(70)を含む本発明のプレート加熱器の一実施形態の部分等角図である。そのほんの僅かが図4に示されている加熱要素(50)はスタック(70)のプレート(40)とブロック(45)とを貫通して延びている。
【0052】
図5は、前述のプレート加熱器スタック(70)を備える本発明の装置の一実施形態の斜めの断面図を部分的に示す部分的概略図である。加熱器は、シェルまたは容器(75)の内部に搭載され、この容器(75)に密閉的に取り付けられる。シェル(75)の内側およびプレート加熱器(70)の外側は、運用条件および/または設計条件において、流動性物質が加熱チャネル(12)を通り抜けた後にチャンバ(80)に入るときの温度で流動性物質の揮発性成分が蒸気である減圧された圧力(典型的には1psiaまたはそれ以下の真空)に保持またはこの圧力にまで排気される収集および揮発性物質分離チャンバ(80)を画定する。チャンバ(80)は、容器(75)の蒸気出口(84)を通して揮発性成分を除去するために蒸気排気システム(82)例えば真空ポンプ(図示せず)と動作連通している。蒸気排気システム(82)は典型的には、蒸気を冷却して凝縮させるためのコンデンサ(図示せず)と揮発性成分を分離してそれから再利用またはそうでなければ廃棄するための周知の他の装置とを含む。チャンバ(80)はまた、容器(75)の出口(88)に接続され、揮発性成分除去された液体または流動性固形物をチャンバ(80)から放出するように適応した放出手段(86)例えば歯車ポンプ(図示せず)と動作連通している。その2つだけが図5に示されている複数の加熱要素(50)はプレート(40)とブロック(45)とを貫通して延びており、熱を加熱源(54)例えば加熱炉(fired heater)またはボイラー(図示せず)からプレートとブロックとを通して加熱チャネル(12)内の流動性物質に伝達する。
【0053】
比較として図7は、その従来型加熱チャネル設計が出願人らによって本発明以前の最も有効な技術であると考えられている米国特許第5,453,158号に開示されているタイプの平板加熱器の単一加熱チャネル(512)を示す。加熱チャネル(512)は、3つのゾーン:すなわち第1のゾーンの出口(530)より入口(518)において幅広い第1の概ね収束するゾーン(510)と;このチャネルが限定的ゾーン(514)に亘って圧力低下を引き起こし、それによって第2の限定的ゾーンにおけるフラッシングを可能にしながら第1のゾーンにおける揮発性成分の実質的なフラッシングを可能にするために十分な最小幅を達成する第2の限定的ゾーン(514)と;出口(520)で終わる第3の概ね発散するゾーン(516)と;を有する。この加熱チャネル設計は、第2のゾーンから始まり、第3のゾーンに続く揮発性成分のフラッシングを可能にする。米国特許第5,453,158号は、第1のゾーン(510)の長さがチャネル(512)の全長の5から20パーセントであり、第2のゾーン(514)の長さがチャネル(512)の全長の1から40パーセントであり、第3のゾーン(516)の長さがチャネル(512)の全長の40から85パーセントであることを教えている。この加熱チャネル設計(例えば均等な0.10インチの高さ、9.0インチの全長、2.8インチ幅の入口と0.6インチの長さとを有する第1の収束ゾーン、4.8インチ長さと1.9インチ幅とを有する第2の限定ゾーン、および3.6インチ長さと4.2インチの出口幅とを有する第3の発散ゾーン)を使用する平板加熱器は、1チャネル当たり最大毎時約1.23kg(1チャネル当たり毎時2.7ポンド)の速度での溶融ポリマーの揮発性成分除去に使用されているが、1チャネル当たりの更に高いスループットでの有効な揮発性成分除去はできない。この制約は、単一の平板加熱器/揮発性成分除去装置トレーン(列)が使用される揮発性成分除去トレーンの最大サイズ(例えば年間約330,000メトリックトン)に実用的限定を賦課するか、または付随する更に高い資本コストを有する冗長的平板加熱器/揮発性成分除去装置トレーンの使用を必要とするか、いずれかのフラットプレート(平板)の極めて大きなスタックを必要とする(ある幾つかの場合には1プレート当たり60個の加熱スロットを有する724個のプレートと145インチのスタック全高とを必要とする)。これらの例と下記の比較例とに示されているように、本発明の加熱チャネル設計はこのように限定されることはない。
【0054】
図6A、6Bおよび6Cは複数の加熱チャネルのうちの少なくともある幾つかのチャネルの第2のゾーンが図1に示されている単一の出口(26)よりむしろ複数の出口を有する本発明の装置における有用な加熱チャネルの3つの代替実施形態を示す。
【0055】
図6Aは、周囲プレート(その1つのプレートの直接的隣接部分だけが(140)および(142)として示されている)の壁(130)と、チャネル(112)の床と天井とを画定する隣接ブロックまたは他のプレート(図示せず)と、によって画定される空間である本発明の単一の加熱チャネル(112)の形状を示す。加熱チャネル(112)自身は、2つのゾーン:すなわち第1のゾーンの入口(114)から出口(116)までの比較的大きな断面積を有する第1のゾーン(110)と、実質的により小さな断面積を有し、入口(124)と2つの出口(126)および(127)とを有する第2のゾーン(120)とからなる。
【0056】
図6Bは、周囲プレート(その1つのプレートの直接的隣接部分だけが(240)、(242)および(244)として示されている)の壁(230)と、チャネル(212)の床と天井とを画定する隣接ブロックまたは他のプレート(図示せず)と、によって画定される空間である本発明の単一の加熱チャネル(212)の形状を示す。加熱チャネル(212)自身は、2つのゾーン:すなわち第1のゾーンの入口(214)から出口(216)までの比較的大きな断面積を有する第1のゾーン(210)と、実質的により小さな断面積を有し、入口(224)と3つの出口(226)、(227)および(228)とを有する第2のゾーン(220)とからなる。
【0057】
図6Cは、周囲プレート(その1つのプレートの直接的隣接部分だけが(340)、(342)および(344)として示されている)の壁(330)と、チャネル(312)の床と天井とを画定する隣接ブロックまたは他のプレート(図示せず)と、によって画定される空間である本発明の単一の加熱チャネル(312)の形状を示す。加熱チャネル自身は、2つのゾーン:すなわち第1のゾーンの入口(314)から出口(316)までの比較的大きな断面積を有する第1のゾーン(310)と、実質的により小さな断面積を有し、入口(324)と3つのジグザク配置の出口(326)、(327)および(328)とを備える第2のゾーン(320)と、からなる。ジグザグ配置の出口(326)、(327)および(328)を有するこの実施形態では、加熱チャネルから流れ出る液体または流動性固形物の個々の流れ(例えば一実施形態における溶融ポリマーの一連の流れ)は、運用条件または設計条件の下で実質的に完全な揮発性成分除去が行われた後までこれらの流れ出る流れが互いに物理的に接触しないほど十分に放射方向に間隔をあけて配置される。出口のこのようなジグザグ配置は隣接出口から流れ出る液体または流動性固形物の混合を防止する助けとなり得ると考えられるが、この混合はそうでなければ流出するはずのこのような流動流れ間に揮発性成分を捕捉する可能性がある。本発明のプレート加熱器からの流出物のこのような直接的接触を防止するための他のアプローチは、種々の形状またはサイズのプレートのスタック、例えば上部プレートの加熱チャネル出口がプレート加熱器内の下部プレートよりプレート加熱器の軸から更に放射方向に間隔をあけている逆ピラミッド構造(図示せず)のプレートのスタックを使用することを含む。このような実施形態では流出する流れは、シャワーの噴水口からの水の流れに酷似して収集容器内に流れ下る。
【0058】
(方法(プロセス)の説明)
図5を参照すると本発明の方法の一実施形態の運用において、適当な温度の熱流体はスタックされたプレート(40)とブロック(45)とを加熱する加熱要素(50)を介して供給源(54)からポンプ供給される。ポンプ(62)からのポリマー溶液は、中央チャンバ(60)を満たし、加熱チャネル(12)に入り、加熱チャネル(12)を通って外側に流れ出てチャンバ(80)内に流れ込む。加熱チャネル(12)を離れる流動性物質の高い温度と泡立ち点圧力より低い圧力への減圧との結果として揮発性成分はフラッシュされるが、このフラッシュは加熱チャネル(12)の第2のゾーン(20)の内部で、好適には第2のゾーンの直ぐ下流で行われる。フラッシュされた蒸気は蒸気排出システム(80)によって蒸気出口(84)を通して除去される。揮発性成分除去された液体または流動性固形物は、重力流によってチャンバ(80)の底部に収集され、例えばバルブ、歯車ポンプまたは押出し装置(図示せず)であり得る収集システム(86)によって出口(88)を通して放出される。溶融ポリマー内の揮発性成分の濃度が極めて高い、溶融ポリマーからの溶媒と未反応モノマーおよびコモノマーとの除去のためのある幾つかの実施形態では、十分な揮発性成分除去は、溶融ポリマー内の揮発性成分の内容物を2つまたはそれ以上のステップで減らすために順次に動作する本発明の1つより多い装置の使用を必要とする可能性がある。
【0059】
図示の実施形態は各チャネル(12)が矩形断面を有することを示しているが、入口および出口のエッジが丸くされることも可能であることは理解される。例えばチャネルの入口、出口および/または内部における鋭いコーナーを避けるためにチャネルを形成するプレートまたはブロックのエッジは湾曲した(鋭いよりむしろ)遷移部分を有するように機械加工され得る。
【0060】
任意の特定の液体または流動性固形物に関する蒸発または熱分解温度は既に周知であるか、または当分野に精通する人々によって容易に決定され得るか、いずれかである。加熱チャネル内の流動性物質の温度は、上記の温度まで、または上記の温度より高く上げられるべきではない。本発明の揮発性成分除去装置が溶融ポリマーから揮発性成分(例えば溶媒、未反応モノマーおよび/またはコモノマー)を除去するために使用されるとき、芳香族ビニール・ポリマーを約350℃より高く加熱することまたはオレフィン系ポリマーを約290℃より高く加熱することは典型的には必要でない。
【実施例】
【0061】
下記の実施例は、本発明の装置および方法によって達成される驚くべき性能を示すために提供されている。これらの実施例は本発明の実施形態を例示するために提示されているが、説明されている特定の実施形態に本発明を限定するようには意図されていない。反対に示されない限りすべての部分および割合は重量による。すべての数値は近似値である。数値範囲が与えられるときには、記述された範囲外の実施形態もなお本発明の範囲内に入り得ることは理解されるべきである。各例において説明されている特定の詳細事項は本発明の必要な特徴と解釈されるべきではない。当分野に精通する人々は、公知の有限要素モデリング技法を使用して本発明の加熱チャネル内の任意の流動性物質の温度と圧力とをモデル化することができる。これらの実施例および比較例の溶融ポリマー、溶媒および未反応モノマーからなる流動性物質に適したモデリング技法は、C.G.DumasおよびR.S.Dixitによって彼らの論文「Finite Element Modeling of Polymer Flow and Heat Transfer in Processing Equipment」において説明されており、この論文は応用ポリマーサイエンスII.オートメーション、モデリングおよびシミュレーション、トロント、カナダにおけるコンピュータアプリケーションの国際シンポジュームにおいて発表され、1989年にACSシンポジュームシリーズNo.44,521−536において発行されている。この論文の開示内容は、参照によってここに組み込まれている。
【0062】
(実施例1および比較例A)
実施例1および比較例Aでは、85重量パーセントの溶融エチレンオクテン・コポリマー(0.5gm/10分のメルトインデックス(I2)を有する)と15重量パーセントの揮発性物質(アルカン溶媒と未反応エチレンおよび未反応オクテン・コポリマーとの組合せ)とからなる流動性物質が2つの別々の揮発性成分除去システムで処理される。
【0063】
実施例1に関しては本発明の揮発性成分除去装置の一実施形態が使用される。プレート加熱器スタックは、27個の組合せプレート・ブロック要素(加熱チャネルが組合せ要素から機械加工された)と1個のエンドブロック要素とを有し、また各このような組合せ要素は2つの加熱チャネルを有する。温度185℃の流動性物質(この温度で流動性物質は3.9バールゲージ(57psig)の泡立ち点圧力を有する)は図1に示されている構成による54個の加熱チャネルを有する平板加熱器内にポンプ供給される。これらの加熱チャネルの寸法は:0.25cm(0.1インチ)の均等な高さ、22.9cm(9インチ)の全長、21.6cm(8.5インチ)の第1のゾーンの長さ、第2のゾーンの入口への滑らかな収束のために機械加工された最後の1.9cm(0.75インチ)を除くすべてに関して約5cm(2インチ)の第1のゾーンの実質的に均等な幅、1.3cm(0.5インチ)の第2のゾーンの長さ、および0.38cm(0.15インチ)の第2のゾーンの実質的に均等な幅である。第1のゾーンの最後の1.9cm(0.75インチ)を除くすべての動水半径は約0.121cm(0.0476インチ)であり、第2のゾーンの動水半径は1.59:1という比のために約0.076cm(0.03インチ)である。流動性物質は、第1のゾーンの入口における88バールゲージ(1276psig)の圧力と第2のゾーンへの入口における26バールゲージ(380psig)の計算された圧力とを有する−これらの圧力は両者ともこれらの場所における流動性物質の泡立ち点圧力より高い。各チャネルを通る流量は約3.54kg/時(7.8ポンド/時)に維持される。加熱チャネル内で流動性物質は、間接的熱交換によって(プレートに埋め込まれた加熱チャネルからの)約265℃という加熱チャネルの第1のゾーン内のピーク温度にまで加熱される(この温度において流動性物質は第2のゾーンへの入口における26バールゲージ(380psig)の圧力より低い16.8バールゲージ(243psig)の泡立ち点圧力を有する)。収集および蒸気分離容器は約20ミリバール(0.29psia)の減圧された圧力に維持される。平板加熱器への入口から収集および蒸気分離容器までの圧力低下は約88バール(1276psi)である。揮発性物質は流動性物質からフラッシュし、分離されて回収され、そして揮発性成分除去されたポリマー製品が回収される。実施例1ではASTM D−4526によって測定されたような2000wppm未満の残留揮発性成分を有するポリマー製品を製造しながら1加熱チャネル当たり少なくとも3.54kg/時(1加熱チャネル当たり7.8ポンド/時)のスループットが達成され得る。
【0064】
実施例1との比較目的のために比較例Aは、同じ流動性物質と、平板加熱器が図7に示されているように米国特許第5,453,158号の3ゾーン構成による加熱チャネルを有することを除いて図1と実質的に同様である揮発性成分除去装置と、を使用する。プレート加熱器スタックは100個の組合せプレート・ブロック要素(加熱チャネルはこれらの組合せ要素から機械加工された)と1個のエンドブロック要素とを有し、各々のこのような組合せ要素は2個の加熱チャネルを有する。これらの加熱チャネルの寸法は:0.25cm(0.1インチ)の均等な高さ、22.9cm(9インチ)の全長、1.6cm(0.63インチ)の第1の収束ゾーンの長さ、11.6cm(4.6インチ)の第2の限定ゾーンの長さ、および9.7cm(3.8インチ)の第3の発散ゾーンの長さである。第1の収束ゾーンへの入口の幅は約7cm(2.8インチ)であり;第2の限定ゾーンの幅は5.3cm(2.1インチ)で本質的に均等であり;第3の発散ゾーンの幅は2ステップでこのゾーンの入口における5.3cm(2.1インチ)からこのゾーンの出口における10.8cm(4.2インチ)まで増加する。第1のゾーンの動水半径はこのゾーンの入口における約0.123cm(0.048インチ)からこのゾーンの出口における約0.121cm(0.047インチ)に収束する。第2の限定ゾーンの動水半径はこのゾーンの全長を通して約0.121cm(0.047インチ)で実質的に均等である。第3のゾーンの動水半径はこのゾーンの入口における約0.121cm(0.047インチ)からこのゾーンの出口における約0.124cm(0.049インチ)に発散する。米国特許第5,453,158号で教えられているように、流動性物質は、第1のゾーン(すなわち加熱チャネルの最初の1.6cm(0.625インチ))におけるフラッシングを避けるために第1のゾーンにおいて実質的に一定の圧力(この場合第1のゾーンの出口によって達成可能な200℃ピーク温度における約48バールゲージ(697psig))に維持されるべきである;しかしながら第2の限定ゾーン内では流動性物質は、第3のゾーンを通って約20ミリバール(0.29psia)の減圧された圧力に維持されている収集および蒸気分離容器のチャンバ内にまで続くフラッシングを開始する。トランペット状の加熱チャネル設計の制約内において加熱チャネルへの入口における流動性物質の圧力は約48バールゲージ(697psi)であり、この入口と収集容器との間の圧力低下は約48バール(697psi)である。1加熱チャネル当たり1.2kg/時(1加熱チャネル当たり2.7ポンド/時)は、ASTM D−4526によって測定されるような2000wppm未満の残留揮発性成分を有するポリマー製品を製造しながらこの加熱チャネルにおいて達成される最高の流量である。
【0065】
(実施例2および比較例B)
実施例2および比較例Bでは、87重量パーセントの溶融エチレンオクテン・コポリマー(1.0gm/10分のメルトインデックス(I2)を有する)と13重量パーセントの揮発性物質(アルカン溶媒と未反応エチレンおよびオクテン・モノマーとの組合せ)とからなる流動性物質が2つの別々の揮発性成分除去システムで処理される。
【0066】
実施例2に関しては本発明の揮発性成分除去装置の一実施形態が使用される。プレート加熱器スタックは282個のプレートと283個のブロックとを有し、各プレートは40個の加熱チャネルを有する。208℃の温度における流動性物質(この温度で流動性物質は6バールゲージ(88psig)の泡立ち点圧力を有する)は図1に示されている構成による11,280個の加熱チャネルを有する平板加熱器内にポンプ供給される。これらの加熱チャネルの寸法は:0.25cm(0.1インチ)の均等な高さ、22.9cm(9インチ)の全長、21.6cm(8.5インチ)の第1のゾーンの長さ、第2のゾーンの入口への滑らかな収束のために機械加工された最後の1.9cm(0.75インチ)を除くすべてに関して約5.1cm(2インチ)の第1のゾーンの実質的に均等な幅、1.3cm(0.5インチ)の第2のゾーンの長さ、および0.38cm(0.15インチ)の第2のゾーンの実質的に均等な幅である。第1のゾーンの最後の1.9cm(0.75インチ)を除くすべての動水半径は約0.121cm(0.0476インチ)であり、第2のゾーンの動水半径は1.59:1という比のために約0.076cm(0.03インチ)である。流動性物質は、第1のゾーンへの入口における127バールゲージ(1847psig)の圧力と第2のゾーンへの入口における33.5バールゲージ(486psig)の計算された圧力とを有する−これらの圧力は両者ともこれらの場所における流動性物質の泡立ち点圧力より高い。各チャネルを通る流量は約5kg/時(毎時11ポンド)に維持される。加熱チャネル内で流動性物質は、間接的熱交換(プレートに埋め込まれた加熱要素からの)によって約265℃という加熱チャネルの第1のゾーン内のピーク温度にまで加熱される(この温度において流動性物質は第2のゾーンへの入口における33.5バールゲージ(486psig)の圧力より低い16.8バールゲージ(243psig)の泡立ち点圧力を有する)。収集および蒸気分離容器のチャンバ内の圧力は約20ミリバール(0.29psia)の減圧された圧力に維持される。平板加熱器入口から収集および蒸気分離容器までの圧力低下は約127バール(1847psi)である。揮発性物質は流動性物質からフラッシュし、分離されて回収され、そして揮発性成分除去されたポリマー製品が回収される。実施例2ではASTM D−4526によって測定されたような2000wppm未満の残留揮発性成分を有するポリマー製品を製造しながら1加熱チャネル当たり少なくとも5kg/時(1加熱チャネル当たり毎時11ポンド)のスループットが達成され得る。
【0067】
実施例2との比較目的のために比較例Bは、同じ流動性物質と、平板加熱器の加熱チャネルが図7に示されているように米国特許第5,453,158号の3ゾーン構成による加熱チャネルを有することを除いて図2と実質的に同様である揮発性成分除去装置と、を使用する。プレート加熱器スタックは1068個のプレートと1069個のブロックとを有し、各プレートは40個の加熱チャネルを有する。これらの加熱チャネルの寸法は:約0.25cm(0.1インチ)の均等な高さ、22.9cm(9インチ)の全長、1.6cm(0.63インチ)の第1の収束ゾーンの長さ、11.6cm(4.6インチ)の第2の限定ゾーンの長さ、および9.7cm(3.8インチ)の第3の発散ゾーンの長さである。第1の収束ゾーンへの入口の幅は約7cm(2.8インチ)であり;第2の限定ゾーンの幅は5.3cm(2.1インチ)で本質的に均等であり;第3の発散ゾーンの幅は2ステップでこのゾーンの入口における5.3cm(2.1インチ)からこのゾーンの出口における10.8cm(4.2インチ)まで増加する。第1のゾーンの動水半径はこのゾーンの入口における約0.123cm(0.048インチ)からこのゾーンの出口における約0.121cm(0.047インチ)に収束する。第2の限定ゾーンの動水半径はこのゾーンの全長を通して約0.121cm(0.047インチ)で実質的に均等である。第3のゾーンの動水半径はこのゾーンの入口における約0.121cm(0.047インチ)からこのゾーンの出口における約0.124cm(0.049インチ)に発散する。米国特許第5,453,158号で教えられているように、流動性物質は、加熱チャネルの最初の1.6cm(0.63インチ)におけるフラッシングを避けるために第1のゾーンにおいて実質的に一定の圧力(この場合第1のゾーンの出口によって達成可能な208℃ピーク温度で約54.8バールゲージ(795psig))に維持されるべきである;しかしながら第2のゾーン内では流動性物質は、第3のゾーンを通って約20ミリバール(0.29psia)の減圧された圧力に維持されている収集および蒸気分離容器のチャンバ内にまで続くフラッシングを開始する。このトランペット状の加熱チャネル設計の制約内において加熱チャネルへの入口における流動性物質の圧力は約54.8バールゲージ(795psig)であり、この入口と収集容器との間の圧力低下は約54.8バール(795psi)である。1加熱チャネル当たり1.3kg/時(1加熱チャネル当たり毎時2.9ポンド)はASTM D−4526によって測定されたような2000wppm未満の残留揮発性成分を有するポリマー製品を製造しながらこの加熱チャネルにおいて達成される最高の流量である。
【0068】
これらの実施例は、流動性物質に関する同じレベルの揮発性成分除去を作り出しながら本発明の装置の2ゾーン・ボトル状加熱チャネル設計(図1に示されているような)が米国特許第5,453,158号の3ゾーン・トランペット状加熱チャネル設計によって達成可能な1チャネル当たりスループットより実質的に高い1チャネル当たりスループットを可能にすることを示している。ある幾つかの実施形態では本発明のボトル状加熱チャネル設計は、同じチャネル全長のトランペット状チャネル(米国特許第5,435,158号に説明されているような)のスループットの典型的には1.2倍から10倍、好適には1.5倍から7倍、更に好適には2倍から5倍である1チャネル当たりスループットを可能にする。この驚くべき結果は、遥かに高効率で低コストの揮発性成分除去装置の設計米国特許第5,435,158号設計のプレート数のごく一部しか必要としない揮発性成分除去装置の設計を可能にする。代替として同じ数のプレートによって、本発明の加熱チャネル構成を使用する平板加熱器は、数倍も多い流動性物質を処理でき、同じスタック高さで、より高い生産能力という結果をもたらす。
【0069】
(実施例3、4および比較例C)
下記の表および実施例は更にこの結果を強調している。
【表1】

【0070】
比較例Cに関しては、724層のプレートおよびブロックからなる極めて大きなスタック(368cm(145インチ)全スタック高さ)による平板加熱器を有し、そして米国特許第5,453,158号のトランペット状加熱チャネルを有する揮発性成分除去装置で達成可能な実用的最大生産速度(年間約370,000メトリックトン、KTA)の計算が行われている。実施例3および4に関しては、各場合で本発明のボトル状加熱チャネルを有する平板加熱器を使用して、より速い速度での同じポリマーの同等の揮発性成分除去を可能にする平板加熱器のサイズを決定するための同様の計算が行われている。実施例3に関する計算は、本発明の装置が比較例Cのスタックの高さの約50%であるスタック高さによって比較例Cの生産速度(370KTA)の約120%である生産速度(446KTA)を可能にするはずであることを示している。実施例4に関する計算は、本発明の装置が比較例Cのスタックの高さと同じであるスタック高さによって比較例Cの生産速度(370KTA)の250%である生産速度(925KTA)を可能にするはずであることを示している。
【0071】
本発明は限定された数の実施形態に関して説明されてきたが、一実施形態の特定の特徴は、本発明の他の実施形態に帰属させられるべきではない。如何なる単一の実施形態も本発明のすべての態様を代表していない。説明された実施形態の変形版および修正版は存在する。最後に、ここで開示された如何なる数も、その数を説明する際に用語「約(about)」または「近似的に(approximately)」が使用されているかどうかにかかわりなく近似値を意味すると解釈されるべきである。添付の請求項は、本発明の範囲内に入るようなすべての修正版と変形版とをカバーすることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性成分除去装置であって、
(a)加圧された流動性物質を供給するためのポンプであって、前記流動性物質は、少なくとも1つの溶融ポリマー、及び少なくとも1つの溶解または混入された揮発性成分を含み、前記流動性物質は、当該流動性物質の温度によって変化する泡立ち点圧力によって特徴付けられる、前記ポンプと、
(b)収集兼揮発性物質分離容器と、
(c)複数の加熱チャネルを画定する多数のプレートであって、各チャネルが実質的に均等な高さと2つのゾーンを有し、当該2つのゾーンは、
第1のゾーンであって、(1)平均動水半径と(2)前記ポンプからの前記流動性物質を受けるように適応した入口とを有する、前記第1のゾーンと、
各チャネルの残り部分を構成する第2のゾーンであって、当該第2のゾーンは、前記第1のゾーンからの前記流動性物質を受けるように適応し、前記収集兼揮発性物質分離容器内に前記流動性物質を放出するように適応した少なくとも1つの出口を有し、前記第2のゾーンの少なくとも一部分が、前記第1のゾーンの前記平均動水半径より小さい動水半径を有する、前記第2のゾーンと、を含み、
前記加熱チャネルの少なくともある幾つかのチャネルの設計または作動は、これらの加熱チャネルの前記第1のゾーン内で、本質的にすべての位置における前記流動性物質の圧力が前記流動性物質の前記泡立ち点圧力を超えるものである、前記プレートと、
(d)前記プレートの少なくともある幾つかを加熱することに適応した複数の加熱要素であって、前記流動性物質が前記加熱チャネル内を流れるときに前記流動性物質の温度を高めるようにする、前記加熱要素と、を備える揮発性成分除去装置。
【請求項2】
揮発性成分除去装置であって、
加圧された流動性物質を供給するための供給手段であって、前記流動性物質は、少なくとも1つの混入または溶解揮発性成分に加えて、少なくとも1つの液体または流動性固形物を含み、前記流動性物質は、当該流動性物質の温度によって変化する泡立ち点圧力によって特徴付けられる、前記供給手段と、
収集兼揮発性物質分離手段と、
複数の加熱チャネルを画定する多数のプレートであって、各加熱チャネルが2つのゾーンを有し、当該2つのゾーンは、
第1のゾーンであって、(1)平均動水半径と(2)前記供給手段からの前記流動性物質を受けるように適応した入口とを有する、前記第1のゾーンと、
各チャネルの残り部分を構成する第2のゾーンであって、当該第2のゾーンは、前記第1のゾーンからの前記流動性物質を受けるように適応し、前記流動性物質を前記収集兼揮発性物質分離手段内に放出するように適応した少なくとも1つの出口を有し、前記第2のゾーンの少なくとも一部分が、前記第1のゾーンの前記平均動水半径より小さな動水半径を有する、前記プレートとを備えており、
前記加熱チャネルの少なくともある幾つかのチャネルの設計または作動は、これらの加熱チャネルの前記第1のゾーン内で、本質的にすべての位置における前記流動性物質の圧力が前記流動性物質の泡立ち点圧力より高くなる、揮発性成分除去装置。
【請求項3】
前記流動性物質が前記加熱チャネル内を流れるときに前記流動性物質に熱を伝達してこの流動性物質の温度を高めるように前記プレートを加熱することに適応した複数の加熱要素を更に備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記加熱要素は、前記プレートに対して実質的に直角に、または前記プレートを介して、または前記プレートに隣接して搭載され、また前記加熱要素は、電気加熱要素、または熱流体加熱要素、またはこれらの幾つかの組合せから選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記加熱要素は、作動条件においてまたは設計条件において、(a)前記溶融ポリマーそれ自身が蒸発または分解する最低温度より低くて、(b)前記第1のゾーンの下流の1点において前記溶融ポリマーからの前記揮発性成分のフラッシングを引き起こすために必要な温度より低くない値にまでこの流動性物質の温度が上げられるように、前記流動性物質が各加熱チャネル内を流れるときに熱を前記流動性物質に伝達するために十分に前記プレートを加熱することに適応している、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記加熱チャネルの少なくともある幾つかは単一の出口を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記加熱チャネルの少なくともある幾つかは2つまたは3つの出口を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記加熱チャネルの少なくともある幾つかのチャネルの前記第2のゾーンの出口は、前記作動条件または前記設計条件の下で、隣接する出口から流れ出る液体または流動性固形物が実質的に完全な揮発性成分除去が行われた後まで互いに物理的に接触しないように十分に間隔をあけて配置される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記加熱チャネルの少なくともある幾つかに関してその第2のゾーンの動水半径は、前記作動条件または前記設計条件の下で、前記第1のゾーン内の前記流動性物質の圧力が前記第1のゾーン内の前記流動性物質の最高温度において前記流動性物質の泡立ち点圧力より少なくとも5パーセント高くなるようにサイズ決めされる、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記加熱チャネルの少なくともある幾つかのチャネルの全長は15cmから31cm(6〜12インチ)であり、これらの加熱チャネルの前記第1のゾーンの長さは14cmから29cm(5.5〜11.5インチ)である、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記加熱チャネルの少なくともある幾つかのチャネルの全長は20cmから26cm(8〜10インチ)であり、これらの加熱チャネルの前記第1のゾーンの長さは17cmから25cm(7〜9.5インチ)である、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記加熱チャネルの少なくともある幾つかは、約0.90:1から約0.99:1である前記第1のゾーンの長さ対前記加熱チャネルの全長の比を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
(i)前記第1のゾーンの前記平均動水半径に対する、(ii)最小の断面積を有する前記第2のゾーンの当該部分の前記動水半径の比が、約1.05:1から約10:1である、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記加熱チャネルの少なくともある幾つかのチャネルの前記第1のゾーンは、前記第1のゾーンの長さに沿って実質的に均等である動水半径を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記加熱チャネルの少なくともある幾つかチャネルの前記第1のゾーンは、この第1のゾーンの長さに沿って収束および/または発散する断面積を有する、またはこの第1のゾーンの長さに沿って収束すること、実質的に均等であること、および/または発散することのある組合せである断面積を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記装置の前記加熱チャネルおよび残り部分は、(i)各加熱チャネルの前記第1のゾーン内の本質的にすべての位置における前記流動性物質の圧力が前記第1のゾーン内の前記流動性物質の最高温度において前記流動性物質の泡立ち点圧力より少なくとも5パーセント高い、(ii)1加熱チャネル当たりの流動性物質のスループットが1.4kg/時より大きい、そして(iii)前記第2のゾーン内または第2のゾーンの下流で誘発される揮発性成分のフラッシングが2000wppm以下である揮発性成分の残留濃度を有する分離された液体または流動性固形物製品を作り出す、ように設計または作動される、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記加熱チャネルの少なくともある幾つかは、作動条件または設計条件の下で1加熱チャネル当たりの流動性物質のスループットが約2から約10kg/時であるようにサイズ決めされる、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記加熱チャネルの少なくともある幾つかは、作動条件または設計条件の下でこれらの加熱チャネルの前記第1のゾーンの前記入口と前記出口との間の圧力低下が少なくとも100psigであるようにサイズ決めされる、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
流動性物質の揮発性成分除去のための方法であって、前記流動性物質は、少なくとも1つの混入または溶解された揮発性成分に加えて、液体または流動性固形物を含み、前記方法は、揮発性成分除去条件下で動作しながら前記流動性物質を請求項2に記載の揮発性成分除去装置内を通過させるステップを含む、方法。
【請求項20】
前記方法は、前記揮発性成分を分離して、前記揮発性成分除去装置内に導入される前記流動性物質の揮発性成分の濃度より少なくとも90パーセント低い前記揮発性成分の残留濃度を有する製品を製造する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記揮発性成分除去装置内に導入される前記流動性物質の液体または流動性固形物成分は、溶融ポリマー、チーズ、チョコレート、糖蜜、他の流動性食品、ワックス、重油、タール、アスファルト、他の流動性建設材料、樹液、パルプ、紙、石鹸、バイオマス、接着剤、調合薬、他の粘性液体、またはこれらの任意の組合せ、からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記揮発性成分除去装置内に導入される前記流動性物質は、約0.3から約200gm/10分のメルトフローレート(I2)を有する少なくとも1つの溶融ポリマーと、未反応モノマー、溶媒および未反応コモノマー、およびこれらの組合せからなる群から選択された1つまたはそれ以上の揮発性成分と、を備える、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリマーは、(i)ホモポリマーおよび、1つまたはそれ以上の芳香族ビニール・モノマーと、このモノマーと他のポリマーとの混合物と、のコポリマー(グラフトコポリマーを含む)と、(ii)ホモポリマーおよび、1つまたはそれ以上のCからC10オレフィンと、このオレフィンと他のポリマーとの混合物と、のコポリマー(グラフトコポリマーを含む)と、からなる群から選択され、また前記実質的に揮発性成分除去された製品は2000wppm未満の前記揮発性成分の残留内容物を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
担持触媒または非担持触媒の存在時における少なくとも1つのモノマーおよび任意選択的に1つまたはそれ以上のコモノマーからのポリマーの製造方法であって、前記製造されるポリマーは溶媒内に溶解または懸濁しており、溶融状態のポリマーと溶媒と1つまたはそれ以上の未反応モノマーまたはコモノマーとからなる流動性物質は前記溶融ポリマーから前記溶媒と未反応モノマーまたはコモノマーとの大部分を除去するように処理され、この方法は、2000wppm未満の前記溶媒と前記未反応モノマーまたはコモノマーとの残留内容物を有する実質的に揮発性成分除去されたポリマー製品を製造するように、前記流動性物質を処理するために請求項1に記載の揮発性成分除去装置を使用することを含む、ポリマーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−519753(P2013−519753A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552897(P2012−552897)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2011/022954
【国際公開番号】WO2011/100129
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】