説明

揮発性有機物回収装置

【課題】 本発明の課題は、分離膜を用いて揮発性有機物と清浄ガスとに分離し、分離した揮発性有機物を冷却して回収する装置で、ランニングコストを低減すること、大気放出される揮発性有機物をなくすことを解決課題とする。
【解決手段】
揮発性有機物Vを含有したガスGを揮発性有機物Vと清浄ガスCとに分離する分離装置2と、この分離装置2で分離した揮発性有機物Vを吸着する吸着装置3と、この吸着装置4で吸着した揮発性有機物Vを液化して回収する液化装置4と、吸着装置3での揮発性有機物Vの吸着状況に応じて分離装置2及び液化装置4を制御する制御部18とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機物を含有したガスを、揮発性有機物と清浄ガスとを分離して、揮発性有機物を回収する揮発性有機物回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場などから排出される排ガスや、ガソリンスタンドなどから排出されるガソリンベーパーを回収して大気への放出を防止する装置として、これまで多くの提案がなされている。このうち、装置を安全に使用できること(発火の危険がないこと)、連続で処理が可能であること、大かがりな設備が不要で操作や維持管理が容易なこと等を考慮して、溶剤を含有した排ガスを分離膜で溶剤と清浄ガスとに分離し、分離膜に捕捉された溶剤を冷却装置で凝縮して回収する、いわゆる分離膜法を用いた揮発性有機物回収装置が提案されている。
【0003】
こうした分離膜法によるガス分離では、分離した揮発性有機物を随時液化して回収するため、冷却装置を常に運転させておく必要があった。冷却装置は、回収する溶剤に応じてその冷却温度が異なるとはいえ、−20℃〜−40℃程度の冷却能力を要するので、ガス分離処理をしている間、こうした冷却装置を常に作動させておくことでランニングコストが高くなるという問題があった。また、分離膜法によるガス分離では、処理する排ガスの揮発性有機物濃度が変化した場合、分離しきれない揮発性有機物がそのまま大気に放出されてしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2001−70737号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、分離膜を用いて揮発性有機物と清浄ガスとに分離し、分離した揮発性有機物を冷却して回収する装置で、ランニングコストを低減すること、大気放出される揮発性有機物をなくすことを解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するため、揮発性有機物を含有したガスを揮発性有機物と清浄ガスとに分離する分離手段と、この分離手段で分離した揮発性有機物を吸着する吸着手段と、この吸着手段で吸着した揮発性有機物を液化して回収する液化手段と、吸着手段での揮発性有機物の吸着状況に応じて分離手段及び液化手段を制御する制御手段とを備えたものである。
【0006】
吸着手段は、揮発性有機物を吸着する吸着剤と、この吸着剤の重量を検出する重量測定手段と、吸着剤から揮発性有機物を脱着する加熱手段とを備え、制御手段は、吸着剤重量が所定値に達すると、吸着剤の吸着量が飽和したと判断して前記加熱手段を作動して吸着剤の脱着を行い、前記液化手段を駆動して揮発性有機物を冷却回収することを特徴としている。
【0007】
分離手段は、揮発性有機物を分離するガス分離モジュールと、このガス分離モジュールへのガスの流入を調整する調整手段とを備え、制御手段は、重量測定手段で検出される吸着剤重量の単位時間当たりの変化値が所定値に達すると、ガス中の揮発性有機物濃度が高いと判断して前記調整手段により前記ガス分離モジュールに流入されるガスの量を制御することを特徴としている。
【0008】
ここで、吸着手段を複数設け、分離手段からの揮発性有機物の導入を選択的に切り替える切替手段を備えてもよい。吸着剤は活性炭、ガス分離モジュールはケーシングにシリコーンゴム中空糸膜を内装したものが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、分離手段で分離した揮発性有機物を即座に冷却して回収する従来の構成に比べ、冷却装置を常時運転する必要がなくなり、ランニングコストを低減することが可能になる。また、吸着剤の重量及び単位時間当たりの重量変化を計測することで、活性炭の飽和状態や処理ガスの揮発性有機物濃度を察知し、すぐさま吸着剤の再生や処理ガス量の調整を行うことができ、大気へ揮発性有機物を排出する危険性を低減することが可能になる。更に、吸着手段を複数設けて、分離手段からの揮発性有機物の導入を選択的に切り替えることで、装置を連続的に使用することが可能になる。
【実施例1】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の実施例1について説明する。
図1は実施例1の構成図であり、図中、1は揮発性有機物回収装置で、揮発性有機物を含有した排ガスを揮発性有機物と清浄ガスとに分離する分離装置2と、分離装置2で分離した揮発性有機物を吸着する吸着装置3と、吸着装置3で吸着した揮発性有機物を液化して回収する液化装置4とを備えている。
【0011】
分離装置2は、細長中空管状のケーシング5に中空糸膜6を内装したガス分離モジュール7と、ガス分離モジュール7内に排ガスGを圧送する圧送ポンプ8と、ガス分離モジュール7から排出される清浄ガスCの排出量を調整する流量調整弁9と、ガス分離モジュール7の中空糸膜6を通じて揮発性有機物Vを抽出する真空ポンプ10を備えている。
【0012】
ガス分離モジュール7は、長手方向の一端に揮発性有機物を含有した排ガスGの導入口5a、他端に清浄ガスCの排出口5b、外周面に揮発性有機物Vの排出口5cが開口されており、ガス導入口5aに圧送ポンプ8、清浄ガス排出口5bに流量調整弁9、揮発性有機物排出口5cに真空ポンプ10が接続されている。中空糸膜6は、特に揮発性有機物に対する透過性及び分離性に優れ、しかも薄膜加工しやすいシリコーンゴムを素材とし、ガス分離モジュール7内の長手方向に沿って層状に充填されている。
【0013】
吸着装置3は、ハウジング11に活性炭からなる吸着剤12を充填して構成され、吸着剤12での揮発性有機物Vの吸着量が飽和状態になったことを検出する重量計測装置13と、吸着剤12を加熱再生する加熱装置14を備えている。ハウジング11は、ガス分離モジュール7の揮発性有機物排出口5cと連通する導入口11a、液化装置4と接続される排出口11bが開口されている。吸着剤12は、活性炭の他、シリカゲル・ゼオライト等、使用用途・使用条件に適宜選択される。
【0014】
液化装置4は、吸着装置3の加熱装置14によって加熱再生された揮発性有機物Vを冷却する冷却装置15と、冷却した揮発性有機物Vを回収する回収タンク16を備えている。冷却装置15は、吸着装置3の揮発性有機物排出口10bと連通する導入口15aと、回収タンク16に接続される排出口15bを備え、内部に冷媒を通流させる冷媒管路17が配設されている。
【0015】
18は制御部で、前記分離装置2の圧送ポンプ8・流量調整体9・真空ポンプ10、吸着装置3の重量計測装置13・加熱装置14、液化装置4の冷却装置15と接続されている。制御部18の制御は、重量計測装置13で検出される吸着剤12の重量に基づいて実行される。すなわち、吸着剤12の重量により吸着剤12の飽和状態を認識し、加熱装置14及び冷却装置15を制御したり、単位時間当たりの吸着剤12の重量変化により排ガスG中の揮発性有機物Vの含有量(濃度)もしくは分離装置2の分離処理限界を推定し、圧送ポンプ8や流量調整体9を制御している。
【0016】
続いて、以上のように構成する実施例1の動作について説明する。図2は各部の動作タイミングを示すタイミングチャート図である。
排気ガス源に連通した圧送ポンプ8を駆動し、揮発性有機物Vを含有した排ガスGを導入口5aからガス分離モジュール7に導入する。ガス分離モジュール7に導入された排ガスGは、真空ポンプ10によって真空引きされてガス分離モジュール7内の中空糸膜6により揮発性有機物Vと清浄ガスCとに分離され、揮発性有機物Vが排出口5cから抽出されるとともに、揮発性有機物Vが除去された清浄ガスCが排出口5bから外気に排出される。ここで、ガス分離モジュール7の分離能力は、中空糸膜6に対する内外圧力差と流量の2つのパラメータに影響される。このため、圧送ポンプ8及び真空ポンプ10によるガス分離モジュール7への加圧と流量調整弁9による流量調整を中空糸膜6の能力に応じて設定し、最適な圧力と流量を保持していく。
【0017】
ガス分離モジュール7で分離された揮発性有機物Vは、吸着装置3に導入されて吸着剤12に吸着される。吸着剤12は、図2に示すように、揮発性有機物Vを吸着して重量が増加し、所定の重量Xt(吸着剤自重Xの30%増程度)に達すると吸着量が飽和する。吸着剤12が飽和すると、圧送ポンプ8及び真空ポンプ10を停止して排ガスGの吸引を中断し、吸着剤12の再生が行われる。吸着剤12の再生は、加熱装置14により吸着剤12を加熱して揮発性有機物Vを脱着した後、冷却装置15の管路表面に揮発性有機物Vを接触させて冷却することで行われる。脱着後の揮発性有機物Vは、回収タンク16に回収され、再利用もしくは廃棄処理されることになる。
【0018】
また、吸着剤12の重量を計測している間、吸着剤12の単位時間当たりの重量変化も同時に計測していく。吸着剤12の重量変化が所定値ΔXを上回る場合、ガス分離モジュール7に導入される排ガスG中の揮発性有機物濃度が高い、もしくはガス分離モジュール7に導入される排ガスGの流量が多い等が原因で、ガス分離モジュール7で分離しきれない揮発性有機物Vが排出口5bから大気に放出される可能が高くなるため、圧送ポンプ8を調整してガス分離モジュール7に導入される排ガスGの量を制限したり、流量調整弁9の開度を調整して排出口5bから排出される清浄ガスCの量を制限するようしている。
【0019】
図3は制御部18における処理動作を示すフローチャート図である。
制御部18では、圧送ポンプ8及び真空ポンプ10を駆動した後(1)、重量計測装置13で吸着剤12の重量を継続的に計測していく(2)。吸着剤12の重量が所定の重量Xtに達したことを検出すると(3)、吸着剤12が飽和したと判断して圧送ポンプ8及び真空ポンプ10を停止し(4)、加熱装置14及び冷却装置15を駆動して(5)吸着剤12を再生する。その後、重量計測装置13で吸着剤12の重量が自重付近まで回復すると(6)、処理(1)に戻って排ガス処理を再開する。
【0020】
また、処理(2)の重量計測により、吸着剤12の重量変化が所定値ΔXを上回ったことを検出すると(7)揮発性有機物Vの濃度が高い、もしくは排ガスGの流量が多いと判断して圧送ポンプ8及び/又は流量調整弁9の開度を調整して(8)、排出口5bから排出される清浄ガスCの量を制限するものである。
【0021】
本実施例1は、以上のように構成され、中空糸膜による分離と活性炭による吸着を併用した点に特徴を有する。この構成により、中空糸膜で分離した揮発性有機物を即座に冷却して回収する構成に比べ、冷却装置を常時運転する必要がなくなり、ランニングコストを低減することが可能になる。また、活性炭の重量及び単位時間当たりの重量変化を計測することで、活性炭の飽和状態や処理ガスの揮発性有機物濃度を察知し、すぐさま活性炭の再生や処理ガス量の調整を行うことができ、大気へ揮発性有機物を排出する危険性を低減することが可能になる。
【実施例2】
【0022】
図4は実施例2の構成図であり、上記実施例1と同様の装置について同一の符号を付けている。実施例2は、連続的な排ガス処理を実現するため、吸着装置を複数台(ここでは2台)併設し、吸着剤の再生タイミングで使用する吸着装置を切り替えるようにしたものである。
【0023】
図4において、吸着装置3A,3Bが併設され、真空ポンプ10の下流から管路19A,19Bを分岐して、それぞれに開閉弁20A,20Bを取り付けて吸着装置3A,3Bに連通させている。また、吸着装置3A,3Bの各排出口は液化装置4に接続されており、各吸着装置3A,3Bにおける吸着剤の再生で発生する揮発性有機物Vを冷却して回収するようになっている。
【0024】
こうした構成における動作を図5のタイミングチャート図を用いて説明する。
まず、開閉弁20Aを開放して吸着装置3Aに、ガス分離モジュール7で分離した揮発性有機物Vを導入する。吸着装置3Aにおける吸着剤12Aの重量が所定値Xtに達すると、吸着量が飽和したと判断して開閉弁20Aを閉じ、加熱装置14A及び冷却装置15を駆動して吸着剤12Aの再生と揮発性有機物Vの回収が行われる。
【0025】
開閉弁20Aが閉じると、変わって開閉弁20Bを開放して吸着装置3Bにガス分離モジュール7で分離した揮発性有機物Vを導入する。その後は、同様に吸着剤12Bが飽和したと判断したら開閉弁20Bを閉じ、加熱装置14B及び冷却装置15を駆動して吸着剤12Bの再生と揮発性有機物Vの回収が行われる。このように、吸着装置3A,3Bを交互に機能させることで、連続的に排ガス処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1の構成図である。
【図2】実施例1における各部の動作タイミングを示すタイミングチャート図である。
【図3】制御部18における処理動作を示すフローチャート図である。
【図4】実施例2の構成図である。
【図5】実施例2における各部の動作タイミングを示すタイミングチャート図である。
【符号の説明】
【0027】
1 揮発性有機物回収装置
2 分離装置
3 吸着装置
4 液化装置
5 ケーシング
5a 導入口
5b 清浄ガス排出口
5c 揮発性有機物排出口
6 中空糸膜
7 ガス分離モジュール
8 圧送ポンプ
9 流量調整弁
10 真空ポンプ
11 ハウジング
11a 導入口
11b 排出口
12 吸着剤
13 重量計測装置
14 加熱装置
15 冷却装置
16 回収タンク
17 冷媒管路
18 制御部
3A 第1吸着装置
3B 第2吸着装置
19A 分岐管路
19B 分岐管路
20A 開閉弁
20B 開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機物を含有したガスを揮発性有機物と清浄ガスとに分離する分離手段と、該分離手段で分離した揮発性有機物を吸着する吸着手段と、該吸着手段で吸着した揮発性有機物を液化して回収する液化手段と、前記吸着手段での揮発性有機物の吸着状況に応じて前記分離手段及び液化手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする揮発性有機物回収装置。
【請求項2】
前記吸着手段は、揮発性有機物を吸着する吸着剤と、該吸着剤の重量を検出する重量測定手段と、吸着剤から揮発性有機物を脱着する加熱手段とを備え、
前記制御手段は、前記重量測定手段で検出される吸着剤重量が所定値に達すると吸着剤の吸着量が飽和したと判断して前記加熱手段を作動して吸着剤の脱着を行い、前記液化手段を駆動して揮発性有機物を冷却回収することを特徴とする上記請求項1記載の揮発性有機物回収装置。
【請求項3】
前記分離手段は、揮発性有機物を分離するガス分離モジュールと、該ガス分離モジュールへのガスの流入を調整する調整手段とを備え、
前記制御手段は、前記重量測定手段で検出される吸着剤重量の単位時間当たりの変化値が所定値に達するとガス中の揮発性有機物濃度が高いと判断して前記調整手段により前記ガス分離モジュールに流入されるガスの量を制御することを特徴とする上記請求項2記載の揮発性有機物回収装置。
【請求項4】
前記吸着手段を複数設け、前記分離手段からの揮発性有機物の導入を選択的に切り替える切替手段を備えたことを特徴とする上記請求項1乃至3記載の揮発性有機物回収装置。
【請求項5】
前記吸着剤は、活性炭からなることを特徴とする上記請求項1乃至4記載の揮発性有機物回収装置。
【請求項6】
前記ガス分離モジュールは、ケーシングにシリコーンゴム中空糸膜を内装してなることを特徴とする上記請求項1乃至4記載の揮発性有機物回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−160559(P2009−160559A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2701(P2008−2701)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000103138)エムケー精工株式会社 (174)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【Fターム(参考)】