説明

損傷検知複合材料構造体

複合材料には、マトリックス材と、マトリックス材の少なくとも一部分に配置された第1の一方向配列カーボン・ナノチューブ浸出繊維と、が含まれる。製品には、この複合材料と、複合材料の周縁部に配置された電極ネットワークと、が含まれる。電極では電荷のやりとりを行う。このような製品は、検知回路と電極ネットワークに対する電流供給源と共にシステム内に含まれる。このようなシステムは、複合材料における、ひずみ、疲労、損傷又は亀裂などの状態を引き起こす荷重を製品にかけること、及び、その状態の位置を監視すること、を含む方法に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、繊維材料に関し、特に、複合材料中の繊維材料に関する。
【0002】
(関連出願の記載)
本願は、2009年10月19日出願の米国仮特許出願第61/253,021号に基づいて優先権を主張するものであり、参照により全内容が本明細書に組み込まれる。
【0003】
(連邦政府の資金提供による研究開発の記載)
適用なし。
【背景技術】
【0004】
構造用途に用いられる複合材料は、重大な故障の原因となり得る内部損傷の影響を受けやすい。複合材料中における(応力、衝撃又は疲労が大きいことを原因とする)亀裂の発生及び伝播は、特別な装置を用いなければ同定が困難である。このため、複合材料の健全性を確認することがシステムの運転にとって重要な様々な用途において、複合材料構造体の損傷を、その場で監視(monitor)する方法を開発できれば有益である。本発明はこの必要性を満たし、関連する利点をも提供するものである。
【発明の概要】
【0005】
ある態様において、本明細書に開示された実施形態は、a)マトリックス材、及びb)マトリックス材の少なくとも一部分に配置された第1の一方向配列カーボン・ナノチューブ(CNT)浸出繊維を含む複合材料に関する。
【0006】
ある態様において、本明細書に開示された実施形態は、a)複合材料であって(i)マトリックス材、及び(ii)マトリックス材の少なくとも一部分に配置された第1の一方向配列カーボン・ナノチューブ(CNT)浸出繊維を含むものと、b)電荷のやりとりを行うために複合材料の周縁部に配置された電極ネットワーク(network of electrodes)と、を含む製品(article)に関する。
【0007】
ある態様において、本明細書に開示された実施形態は、A)複合材料と電極ネットワークを含む製品であって、i)複合材料が、a)マトリックス材、及び、b)マトリックス材の少なくとも一部分に配置された第1の一方向配列カーボン・ナノチューブ(CNT)浸出繊維を含み、ii)電極ネットワークが、電荷のやりとりを行うために複合材料の周縁部に配置される製品と、B)複合材料の全域にわたる抵抗変化を検出するために電極ネットワークに接続された検知回路と、C)前記電極ネットワークに対する電流供給源と、を含むシステムに関する。
【0008】
ある態様において、本明細書に開示された実施形態は、1)システムを提供することであって、システムが、A)複合材料と電極ネットワークを含む製品であって、i)複合材料が、a)マトリックス材、及び、b)マトリックス材の少なくとも一部分に配置された第1の一方向配列カーボン・ナノチューブ(CNT)浸出製品を含み、ii)電極ネットワークが、電荷のやりとりを行うために複合材料の周縁部に配置される製品と、B)複合材料の全域にわたる抵抗変化を検出するために電極ネットワークに接続された検知回路と、C)前記電極ネットワークに対する電流供給源と、を含むシステムを提供することと、2)複合材料において、ひずみ、疲労、損傷及び亀裂から選択される状態を生じさせる荷重をかけることと、3)その状態の位置を監視することと、を含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】CNT浸出繊維を有する複合材料における信号パーコレーション経路(signal percolation pathways)を示し、(A)複合材料が圧力を受けていないときにおける複数の信号パーコレーション経路を示す図、(B)図1(A)の複合材料において、機械的変形のひずみに起因するパーコレーション経路の減少を示す図である。
【図2】(A)一方向性CNT浸出繊維の4重複合層を有する複合材料の「スキン(skin)」を例示する構造体を示し、中間の2つの層が、他の2つの層に対して90度の方向に配置されたCNT浸出繊維を有する図、(B)図2(A)に示される積層構造体を有する「スキン」の試作品を示し、CNT浸出繊維がガラス繊維であり、「スキン」に、複合材料構造体の全域にわたる抵抗変化の測定を可能にする複数の電極が備えられている図である。
【図3】図2(B)の試作品を示し、(A)側面図、(B)図2(B)又は図3(A)の試作品から、一方向に配列されたCNT浸出繊維の層断面の走査型電子顕微鏡写真を示し、複合材料中のCNT浸出繊維間の隙間が、エポキシのマトリックス材で充填され、CNT浸出繊維がガラス繊維である図、(C)2つの独立したCNT浸出ガラス繊維が近接する交点の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図4】矢印の方向に配列された繊維を有する一方向性CNT浸出繊維パネル(panel)を示す。パネルには、複数の送信電極1Aから6Aと、複数の受信電極1Bから6Bと、が備えられている。パネルにおいて、8分の1インチの穴としてモデル化(simulate)される損傷は、電極対5A及び5Bの付近に円として示されている。繊維の長さ方向で測定される抵抗において観察される増加は、パネルにマッピングされる(mapped)。電極対5A及び5B付近の損傷は、この電極対間における抵抗の顕著な増加により示される。
【図5A】相互に垂直に配向して結合される、2つの独立した一方向性パネル(piles)であって、パネル間に絶縁層を備えて結合されるものを示す。矢印は、繊維軸の方向を示す。
【図5B】図5Aの結合パネル上に配置される、送信電極1Aから12Aと、受信電極1Bから12Bと、のネットワークを示す。
【図6】図5A又は図5Bに示された構造体を備えて加工された3インチ四方のパネルの中心にドリルで直径64分の9インチの穴を開けた場合、測定される抵抗の増加百分率を示す。
【図7】図5A又は図5Bに示された構造体を備えて加工された3インチ四方のパネルの中心にドリルで直径4分の1インチの穴を開けた場合、測定される抵抗の増加百分率を示す。
【図8】図5A又は図5Bに示された構造体を備えて加工された3インチ四方のパネルの中心にドリルで直径64分の21インチの穴を開けた場合、測定される抵抗の増加百分率を示す。
【図9】図5A又は図5Bに示された構造体を備えて加工された3インチ四方のパネルにおいて、その中心にドリルで直径64分の21インチの穴を開けるとともに、図中の左上の隅から縦横夫々0.75インチ離れた位置にドリルで第2の穴を開けた場合、測定される抵抗の増加百分率を示す。
【図10A】絶縁層を備えていない、0度と90度の配向性を有する7.5インチ×1インチの試験ストリップ(test strip)パネルを示す。電極は、直径0.20インチの穴の周囲に形成された。電極環(electrode ring)における銀塗料の幅は、16分の1インチである。
【図10B】図5A又は図5Bの0度と90度の配向性を有する7.5インチ×1インチの試験ストリップパネルを示す。電極は、直径0.20インチの穴の周囲に形成された。電極環における銀塗料の幅は、8分の1インチである。
【図10C】図5A又は図5Bの0度と90度の配向性を有する7.5インチ×1インチの試験ストリップパネルを示す。電極は、直径0.20インチの穴の周囲に形成された。電極環における銀塗料の幅は、4分の1インチである。
【図10D】図10A〜図10Cの試験ストリップパネルにおける電極構成を表わしたものを示す。
【図11】図10A〜図10Cの試験ストリップパネルについて、電極の表面積に対する抵抗のグラフを示す。
【図12A】例えば、図5Aに示されるような3層パネルに対して垂直なピンの電極構成を示す。
【図12B】例えば、図5Aに示されるような3層パネルに対して平行なピンの電極構成を示す。
【図13】本発明の実施形態による損傷検出システムのブロック図を示す。
【図14】損傷検出システム及び損傷検出方法のための、コンピュータのグラフィカル・ユーザー・インターフェースを用いた入出力フローを示す。
【図15】弾道損傷(ballistic damage)を検出する用途のために連続プロセスでガラス繊維材料にCNTsを浸出させる方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願は、1つには、損傷検出用途のためにマトリックス材の少なくとも一部にCNT浸出繊維を含んで調整された自己検知(self-sensing)複合材料を開示する。当該複合材料は、構造体構成要素における複合材料の健全性を監視するためのあらゆる基本骨格として用いられる。これらの自己検知複合材料を用いる本発明の方法は、拡張性のある製造工程を利用しつつ、様々な原信号を用いることができ、これにより、高制御性かつ高感度の損傷検知システムを形成する。当該複合材料は、特定の用途に向けて調整され、そして、1)その場監視(使用前、使用中、又は使用後の材料における応力の監視など)を通して複合材料に対する種々の損傷を検出するため、及び、2)構造体の強化と構造健全性についての実時間評価とを提供することにより重大故障の可能性を低減するため、に用いられる。
【0011】
本発明の複合材料の一構成要素はCNT浸出繊維である。繊維担体上にCNTsを浸出させることにより、複合材料の全体に、あるいは、複合材料製品の戦略的な(strategic)部位にCNT要素を組み込むための従来の繊維強化複合材料の製造技術を用いて、大規模な複合材料構造体の製造が容易になる。CNTの密度及び分布は、遊離したCNTsと比較して、CNT浸出繊維で厳重に管理されるので、CNTsの量を実質的に低減することができる。さらに、繊維上にCNTsを有することにより、CNT繊維の組織階層に起因して相乗的な機械的強度の強化が可能になり、これにより、損傷の検知、及び、荷重支持応力(load bearing stresses)の再配分を支援することによる構造健全性に対する貢献、のいずれにおいても、二重の役割を果たせるようになる。また、繊維担体は、3次元的な製品の全体にわたって、あるいは、2次元的な「スキン」において、CNTsの戦略的な配置も容易にする。この戦略的な配置により、繊維の軸方向及び横方向における伝導性の制御が可能となる。
【0012】
複合材料の性質はCNTの、例えば、密度、長さ、配置及び配列の制御により調節され得る。複合材料は、特定の用途に向けて、又は、あらゆる種類の損傷を検出するために前述のように調整されるだけでなく、損傷の可能性を低減するためにも調整される。図1(A)及び(B)に示されるように、浸出CNTsは、複合材料の電気的性質に影響を与え、複合材料における連続的、不連続的又は断続的な応力の監視を可能にするパーコレーション経路を形成する働きをする。図1(A)に示されるように、本発明の例示的な複合材料は、静止状態において、適切に位置付けられた一対のセンサ(例えば、電極対など)により監視され得る測定可能な電気的性質(例えば、抵抗など)に関するパーコレーション経路を有する。複合材料にひずみが生じると、図1(B)に示されるように、CNTとCNTの接点の中には、切断されて機能するパーコレーション経路が殆どなくなるものもある。結果として、複合材料にこのひずみ荷重(strain load)が生じている間、抵抗は複合材料全域で増加するが、これは可逆的にも不可逆的にもなる。このような可逆性は本発明を用いて評価可能である。
【0013】
電気的性質を向上させるために調整されたCNTsを有するCNT浸出繊維を用いて製造される複合材料は、前述のように、損傷検知用途に用いられる。また、本発明の複合材料は、複合材料の強度を向上させるためにも用いられる。特定の用途において、CNT浸出繊維は、特定の位置で用いられ、これにより、複合材料の強度を向上させるとともに、重要な構造体構成要素での損傷検出のための手段を提供する。このような用途の1つには、ある複合材料構造体が別の複合材料構造体に結合される、複合材料の重ね継ぎ部がある(ある構造体は他の構造体に対して垂直又は平行となる)。構造体間の境界界面は、構造体の脆弱部と考えられるため、特に関心のあるところである。この位置でCNTを浸出させた構造体を用いることにより、層間せん断強度(ILSS)の向上とともに、損傷を検出する能力を与える。
【0014】
本発明の複合材料は、複合材料内における応力の検出方法に用いられ、この方法には、変調された電気信号(振幅及び周波数に加えて波形)を監視すること、並びに、検出分解能及び感度を向上させた状態で構造健全性を評価すること、が含まれる。ある実施形態では、振幅の測定値はひずみを測定するために用いられる。ある実施形態では、位相は、亀裂の伝播を監視するために用いられる。ある実施形態では、周波数は、亀裂の大きさを同定するために用いられる。本発明の複合材料、システム及び方法は、例えば、民間航空産業から、戦車及び他の軍用装甲車両の耐弾道装甲における損傷検出まで、様々な産業において使用可能である。
【0015】
本明細書において、用語「マトリックス材」とは、サイジング処理されたCNT浸出繊維材料をランダム配向などの特定の配向で組織化する機能を果たすバルク材をいう。マトリックス材に対してCNT浸出繊維材料の有する物理的又は化学的性質のある部分が付与されることにより、マトリックス材にとってCNT浸出繊維材料の存在は有益となる。マトリックス材には、例えば、エポキシ、ポリエステル、ビニルエステル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンケトン、ポリフタルアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン(polytheretherketone)、ポリイミド、ホルムアルデヒド、及び、ビスマレイミドが含まれる。本発明に有用なマトリックス材には、既知のマトリックス材(Mel M. Schwartz, Composite Materials Handbook (2d ed. 1992)参照)のいずれもが含まれる。より一般的には、マトリックス材には、熱硬化性及び熱可塑性のいずれの樹脂(高分子化合物)、金属、セラミック及びセメントが含まれる。
【0016】
本明細書において、用語「カーボン・ナノチューブ」(単数ではCNT、複数ではCNTs)とは、単層カーボン・ナノチューブ(SWNTs)、2層カーボン・ナノチューブ(DWNTs)、多層カーボン・ナノチューブ(MWNTs)などのフラーレン群からなる多数の円筒形状の炭素同素体のうちのすべてをいう。CNTsは、フラーレン様構造により閉塞されるか、又は開口端を有してもよい。CNTsには、他の物質を封入するものが含まれる。
【0017】
本明細書において、用語「浸出する」とは結合することを意味し、用語「浸出」とは、結合プロセスを意味する。このような結合には、直接共有結合、イオン結合、π−π相互作用又はファンデルワールス力の介在した物理吸着などが包含され得る。例えば、ある実施形態において、CNTsは繊維材料に直接結合される。結合は、例えば、CNTが、保護バリア・コーティング、又は、CNTsと繊維材料との間にはさまれて配置された遷移金属ナノ粒子を介して繊維材料へ浸出するなど、間接的であってもよい。本明細書に開示されたCNT浸出繊維において、カーボン・ナノチューブは、前述のように、直接的又は間接的に繊維材料に「浸出する」ことが可能である。CNTが繊維材料に「浸出する」具体的な態様は、「結合モチーフ(bonding motif)」と呼ばれる。CNT浸出繊維の実際の結合モチーフにかかわらず、本明細書に記載される浸出プロセスは、事前に合成されたCNTsを繊維に対して単に無規律に適用するよりも、強固な結合を提供する。この点において、触媒を含有する繊維基材上におけるCNTsの合成は、ファンデルワールス吸着のみよりも強い「浸出」を提供する。本明細書において後述されるプロセスにより製造されるCNT浸出繊維は、特に高密度に隣接するCNTs間の共用壁(shared-wall)モチーフを示す、高度に絡み合い(entangled)分岐したカーボン・ナノチューブのネットワークを提供する。ある実施形態では、成長は、例えば、選択的な成長形態を提供する電界の存在から影響を受ける。また、低密度での成長形態は分岐した共用壁モチーフから外れるが、繊維材料に対する強力な浸出をなお提供する。
【0018】
ある実施形態において、本発明は、マトリックス材と、マトリックス材の少なくとも一部分に配置された第1の一方向配列カーボン・ナノチューブ(CNT)浸出繊維と、を含む複合材料を提供する。複合材料構造体には、積層「スキン」状(laminate “skin”-like)構造体、多数積層(multi-laminate)あるいは重層(layered)構造体、非積層3次元一体型製品(solid non-layered 3-dimensional articles)、及び、これら複合材料構造体の組み合わせが含まれる。複合材料という用語は、複合材料が2以上の異なる材料を機械的に結びつけることにより形成されるという点において、当該技術分野で認識される意味を有している。得られる複合材料は、個々の構成要素(マトリックスとCNT浸出繊維)単独とは異なる、あるいは、2つの材料を結びつけることにより強化される特性を有している。先端複合材料は、樹脂と繊維の組み合わせ、多くの場合、炭素/グラファイト、ケブラー(登録商標)又は繊維ガラスに、例えば、エポキシなどのマトリックス材を伴ったものを用いる。繊維材料が高剛性をもたらす一方、周囲の樹脂マトリックスが構造体をまとめる。理論に拘束されるものではないが、バルク相又はマトリックス材は、広い表面積のあらゆる場所で荷重を受けて、一般的に、より大きな荷重を支える強化繊維へ荷重を伝える。本発明は、CNTsを浸出させた表面を有する繊維とともにマトリックス材を用いた先端複合材料を提供する。繊維材料に浸出させたCNTsの存在により、複合材料にもたらされる機械的強度特性が、繊維材料単体と比較して増加する。さらに、繊維強化層がマトリックス材の全体にわたって配列される態様により、図1(A)に図示されるように、パーコレーション経路が形成される。複合材料構造体が受ける、ひずみ、疲労、亀裂及びその他の損傷の評価を可能にするこの経路は、CNTのネットワークにより形成される。
【0019】
図1(A)を参照すると、例えば、高分子マトリックスなどのマトリックス材中にCNT浸出繊維を有する本発明の例示的な複合材料の横断面図が示されている。複合材料の両端に、送信電極と受信電極などの電極ネットワークを適用することにより、例えば、複合材料全体を通した抵抗測定を可能にする。図1(A)において、繊維軸は図面の紙面に対して垂直、すなわち、観察者に向けて出る。図示の構成において、電極は繊維軸に垂直に配置される。ある実施形態において、電極は、繊維軸に平行に配置されてもよいが、さらなる実施形態では、電極は、繊維軸に平行なものと、繊維軸に垂直なものとを組み合わせて配置されてもよい。正確な構成の有無にかかわらず、図1(B)に示される、複合材料へ加えられるひずみは、パーコレーション経路を喪失させ、結果として、同じ電流が実効性のあるパーコレーション経路が殆どない複合材料を横断しようとするときに抵抗を大きく増加させる。同じような方法で、複合材料が、例えば、圧縮荷重などの荷重(すなわち、CNTとCNTとの接点を増加させて実効性のあるパーコレーション経路の数を増大させる荷重)を受けてもよい場合には、抵抗を減少させることが可能である。
【0020】
図1(A)は、繊維軸の周囲における名目的に放射状のCNTsを表示しているが、CNTsが繊維軸と平行に位置するように、全体的なCNTの配向を変えることも可能である。このような実施形態の中には、CNT浸出繊維が電線(wire)として機能するものがあり、好ましくは電流の方向を略繊維軸方向に向けて、電流が繊維から繊維へ横方向に伝播する(jump)量をより小さくすることが可能である。
【0021】
一方向配列CNT浸出繊維は従来の複合材料製造技術を通じて実現可能である。例えば、ある実施形態において、巻き取り可能な量のCNT浸出繊維はフレーム(frame)の周囲で一方向に巻かれ、さらに、フレームが硬化性マトリックス材内に浸漬され、これにより、図2(A)に例示されるような実質的に2次元のプライ(ply)状構造体を形成する(図2(A)は、このようなプライ状構造体を続けて4つ積み重ねたものを示す)。個々のプライ単位では一方向配置の繊維材料を有する。図2(A)は正方形の構成を示すが、当業者であれば、個々の一方向配列を、円形、矩形、三角形、台形などの他の幾何学的形状上に形成し得ることは認識可能である。一方向配列はいかなる形状に対しても適合可能である。個々の一方向配列は、例えば、大型のパネルに形成され、又は、より大型のパネルからカットされて特殊な形状に形成され得る。連続CNT浸出プロセスの特質上、一方向配列CNT浸出繊維を有する複合材料の寸法は、特に限定されない。巻かれたパネル(wound panels)には、例えば、航空機の翼又は機体や、船体などの大規模な構造体を組み立てるのに有用な寸法に十分適応した大きさのものが含まれる。プライ型の構成は、図2(A)に示されるように、多層構造体内で積み重ねられる。図2(A)に示されるように、プライ間で、繊維方向(図2(A)の矢印により示される繊維方向)をずらすか、あるいは、同一方向となるように積み重ねてもよい。
【0022】
図2(A)は、0度−90度−90度−0度配向の繊維を備えた4つのプライの積層を示す。すなわち、最初のプライ間では、繊維が相互に直角に配置される。2番目のプライ間では、同一の方向に配向され、第3及び第4プライでは、再び、繊維が相対的に直角に配置される。このように、第1及び第4プライは、同一の方向に配列される。図2(B)は、この方法で製造され、送信電極及び受信電極を備えた実際の複合材料を示す。このように積層されたプライ構造体の場合、電極対は、2つのプライに関しては繊維軸に対して平行方向に配置され、他の2つのプライに関しては繊維軸に対して垂直方向に配置される。CNT浸出ガラス繊維複合材料の繊維軸に対して平行方向から観察した切断端面が図3(A)〜(C)に示される。図3(B)は、個々のガラス繊維のSEM画像を、ガラス繊維の表面に成長したCNTの束を備えた灰色の円形構造体として示している。間の隙間は複合材料のマトリックス材で占められている。図3(C)は、隣接する2つのガラス繊維間における界面の拡大図である。
【0023】
ある実施形態において、織物プライ構造体が本発明の複合材料に使用可能である。織物構造体に使用される繊維種は単一でもよく、あるいは、複数の異なる繊維種を織ることも可能である。例えば、織物構造体には、セラミック繊維とともに織られたガラス繊維の混合物が含まれ、それらのいずれか、または両方には、CNTsを浸出させてもよい。ある実施形態では、CNT浸出繊維は、CNTが浸出していない繊維とともに織られる。ある実施形態において、CNTが浸出していない繊維は電気絶縁繊維であってよい。例示的な実施形態には、限定するものではないが、CNTの浸出していないセラミック繊維とともに織られたCNT浸出ガラス繊維、CNTの浸出していないガラス繊維とともに織られたCNT浸出セラミック繊維、CNTの浸出していないセラミック繊維とともに織られたCNT浸出炭素繊維、及び、CNTの浸出していないガラス繊維とともに織られたCNT浸出炭素繊維が含まれる。ある実施形態において、織物構造体には、当該技術分野において既知の従来方法で織られた、1種、2種、3種、4種、又はそれより多い種類の繊維が含まれる。他の実施形態において、織物構造体には、第2のCNT浸出繊維が含まれる。このような実施形態において、2つの繊維のCNT密度は、同一でも相違していてもよい。
【0024】
本発明の複合材料は、本明細書で前述したプライ又は織物構造体を用いて、これにより、3次元多層複合材料構造体を形成可能である。繊維材料の一方向配列を提供するために、例えば、射出成形、圧縮成形、真空成形、引抜成形、押出成形、ハンドレイアップ(開放成形(open molding))、樹脂トランスファー成形、真空支援樹脂トランスファー成形などの他の方法が適用される。使用される方法に応じて、様々な構成の複合材料構造体を得ることができる。
【0025】
ある実施形態において、本発明の複合材料には、マトリックス材及びCNT浸出繊維材料が含まれる。本発明の複合材料は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、セラミック及びセメントから選択されるマトリックス材を有する。他のマトリックス材、例えば、金属マトリックス材を使用することもできるが、損傷検出用途における感度は他のマトリックス材に劣る。
【0026】
マトリックス材として有用な熱硬化性樹脂には、フタル酸/マレイン酸系ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノール類、シアン酸塩、ビスマレイミド、及びナディック・エンド・キャップド・ポリイミド(nadic end-capped polyimides)(例えば、PMR−15)が含まれる。熱可塑性樹脂には、ポリスルホン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレン酸化物、ポリ硫化物、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリレート、及び液晶ポリエステルが含まれる。
【0027】
マトリックス材として有用なセラミックには、炭素セラミック(例えば、リチウムアルミノケイ酸塩など)、酸化物(例えば、アルミナやムライトなど)、窒化物(例えば、窒化ケイ素など)、及び炭化物(例えば、炭化ケイ素)が含まれる。マトリックス材として有用なセメントには、炭化物ベースのセメント(炭化タングステン、炭化クロム及び炭化チタン)、耐火セメント(タングステントリア(tungsten-thoria)及び炭酸バリウム−ニッケル(barium-carbonate-nickel))、クロム−アルミニナ、ニッケル−マグネシア、及び鉄−炭化ジルコニウムが含まれる。前述のマトリックス材のいかなるものも、単独で、又は組み合わせて用いることができる。
【0028】
ある実施形態において、本発明に係る複合材料が利用する浸出CNTsは、多層CNTs、2層CNTs、単層CNTs及びこれらの混合物から選択される。特定の実施形態において、本発明に係る複合材料が用いる浸出CNTsは多層CNTsである。本発明に係る複合材料の電気的性質は、様々な種類、直径、長さ及び密度のCNTsを繊維上に適用することで変更可能である。電気伝導度又は特定の伝導性は、電流を伝導する材料の性能についての1つの尺度である。CNTのキラリティに関連する特定の構造的なパラメータ(例えば、捩じりの程度など)を有するCNTsは、伝導性が高く、したがって金属の性質を示す。CNTのキラリティに関して、広く認められている命名方式(M.S.Dresselhaus, et al. Science of Fullerenes and Carbon Nanotubes, Academic Press, San Diego, CA pp.756-760,(1996))が、当業者により形式化され承認されている。このように、例えば、CNTsは、2つの指数(n,m)で相互に識別される(ここで、nとmは、六方晶系のグラファイトが円筒の表面上で巻かれて端部同士を接合した場合にチューブとなるように、六方晶系のグラファイトの切断部及び巻き方を表す整数である)。2つの指数が同じである場合(m=n)、得られるチューブは、「アームチェア」(又はn−n)型であるといわれているが、これは、チューブがCNT軸に対して垂直に切断されたときに、六角形の辺のみが露出し、そのチューブ端部の周辺に沿ったパターンが、n回繰り返されるアームチェアのアームと座部に似ているからである。アームチェアCNTs、特にSWNTsは、金属的であり、非常に高い電気的及び熱的伝導性を有している。さらに、このようなSWNTsは非常に高い引張強度を有している。多層カーボン・ナノチューブにも伝導性がある。
【0029】
ある実施形態において、CNT浸出繊維材料のCNTsは、繊維表面上で直接成長して、繊維表面から外方へ放射状に延びて配列するCNTsの「フォレスト(forests)」を形成する。このように、本発明の複合材料は、繊維軸に対して略垂直に配列される浸出CNTsを有する。CNTsの全周被覆は、各繊維の全長に亘って得られる。ある実施形態では、CNTの成長プロセスを用いることにより、繊維の長さ方向でCNT密度に勾配をもたせることができる。このような勾配は、複合材料構造体内の電気伝導度に勾配をもたせるために用いられる。
【0030】
ある実施形態において、本発明の複合材料は、繊維軸に対して略平行方向に配列された浸出CNTsを有する。繊維軸に対して平行に配列させるための浸出CNTsの再配向(re-orienting)は、例えば、押出成形/引抜成形プロセスなどの機械的技術を用いて達成可能である。CNTの機械的な再配向とともに、又はこれに替えて、他の方法を用いることもできる。例示的なプロセスには、電界中における再配列や、特定の溶媒又は界面活性剤を用いる化学的方法が含まれる。このようにして、CNTsは、連続的な繊維表面に沿って繊維軸の方向に合わせて製造される。本明細書でさらに後述されるCNT浸出プロセスは、繊維担体上のCNTsの組織化を介して、複合材料内におけるCNTsの配向以上の制御をもたらす。また、CNT浸出繊維は、CNT含有複合材料を製造する当該技術分野で用いられている方法(特に、遊離CNTsの使用)と比較して、CNTの分散がより良好に制御される。さらに、CNT浸出繊維は、純CNT(CNT-only)の繊維、ヤーン及びロープなどの高CNT密度繊維よりもコスト的に有効である。
【0031】
ある実施形態において、本発明の複合材料は、複合材料の約0.01重量%から約30重量%までの範囲(0.01、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、11.0、12.0、13.0、14.0、15.0、16.0、17.0、18.0、19.0、20.0、25.0及び30.0に、これらの中間値及び端数を全て含む)で存在する浸出CNTを有する。CNT担持量の高い方では、CNTのパーコレーション経路が非常に多くなり、実効的な経路の変化率が小さくなるので、複合材料の損傷検出における感度は低下する。CNT担持量の低い方では、実効的なパーコレーション経路が最初から殆どなく、パーコレーション経路の切断により、例えば、観察される抵抗変化に与える影響が実質的に大きくなるので、感度は上昇する。しかし、目的とする感度に応じて、複合材料の約0.01重量%から約30重量%までの全範囲にわたって、損傷検知を行うことができる。特定の実施形態において、複合材料中のCNTの範囲は、約0.01重量%から約1.0重量%の間の範囲(0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.00などの各重量%値と、これらの中間値を含む)である。複合材料中におけるこの範囲のCNT担持量は、高レベルの感度が要求される場合に用いられる。
【0032】
CNTとCNTとを架橋できる長さのCNTsを用いることにより、複合材料に伝導性を付与するパーコレーション経路(図1(A)又は(B)参照)を形成する。繊維間隔は、通常、1つの繊維直径(5〜50ミクロン)と同等以上であるので、この長さ未満のCNTsでは効果的な電気的経路は減少する。これより長いCNTsは、伝導性とともに、損傷検知の機能、感度及び分解能を向上させる絡み合い(entanglement)を形成する。浸出CNTsの長さは、約1ミクロンから約500ミクロンまでの範囲(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500の各ミクロン値、及びこれらの全中間値を含む)で様々である。また、CNTsの長さは、例えば、約0.5ミクロンなど約1ミクロン未満であってもよい。さらに、CNTsの長さは、500ミクロンより大きくてもよい(例えば、510、520、550、600、700の各ミクロン値及びこれらの全中間値を含む)。ある実施形態において、本発明の複合材料は、長さが約100ナノメートルから約5ミクロンの範囲の浸出CNTsを有する。
【0033】
本発明の複合材料には、ガラス繊維、アラミド繊維、綿花などの他の有機繊維、セラミック繊維、及びこれらの混合物から選択された繊維に基づくCNT浸出繊維が含まれる。CNT浸出繊維材料には、フィラメント、繊維ヤーン(yarn)、繊維トウ(tow)、テープ(tape)、編組繊維(fiber-braid)、織物、不織繊維マット、繊維プライ及び3次元織物構造体が含まれる。CNT浸出プロセスは、国際公開公報第2008/085634号、及び係属中の米国特許出願第11/619,327号に記載されており、これらは参照により全体が本明細書に組み込まれる。簡単に言えば、複合材料の生成に用いられる繊維はCNT開始触媒の粒子層で処理されるが、この層は、インライン(in line)で連続的にCNTsを成長させるために用いられるCVDをベースにしたプロセスにさらされる。得られるCNT浸出繊維では、様々な性質を得られるように、繊維表面上におけるCNTsが特定の種類に調整されている。このプロセスは、繊維材料の巻き取り可能量の増加に影響を受けやすい。例えば、連続的なインライン・プロセスでは、約1ポンドの繊維スプール(spool)から約50ポンドの繊維スプールの範囲の巻き取り可能長さで、CNT浸出繊維が得られる。
【0034】
ある実施形態において、本発明の複合材料には、連続繊維である繊維構造体を有する第1の一方向配列CNT浸出繊維が含まれる。大規模な連続長さのCNT浸出繊維のプロセスに合致するように、このような連続繊維は、CNT浸出のあらゆる後処理を行った後で複合材料の製造に容易に適用される。このようなCNT浸出の後処理には、限定するものではないが、CNTsの再配向、CNTsの官能化(functionalization)及びCNTsのコーティングが含まれる。官能化には、例えば、CNTsのフッ素化、酸腐食、及び、腐食プロセスにより現れるあらゆる官能性を利用する化学現象と組み合わせた酸腐食が含まれる。例示的な化学現象には、露出したケトン、アルデヒド、及びカルボン酸の官能基による化学現象が含まれる。従って、腐食後の化学現象には、例えば、エステル結合形成、アミド結合形成、シッフ塩基形成、還元的アミノ化などが含まれる。このような官能化は、例えば、CNT浸出繊維とマトリックス材との間の界面を強化するために用いられる。また、コーティングも、CNT浸出繊維とマトリックス材との間の界面を強化するために用いられる。ある実施形態において、このようなコーティングには、例えば、Kentera system(Zyvex Performance Materials, Columbus, Ohio)が含まれる。
【0035】
別の実施形態において、本発明の複合材料は、繊維材料が複数の不連続繊維を含む第1の一方向配列CNT浸出繊維を用いる。このような実施形態において、連続的なCNT浸出製造工程は、CNT浸出連続繊維を生成するために用いられる。CNT浸出連続繊維は、引き続き、例えば、チョッパーガン(chopper gun)を通過して、これにより、より短い繊維片を形成する。ある実施形態において、得られたCNT浸出不連続繊維は、例えば、引抜成形による配向など、当該技術分野において当業者に明らかな技術により、マトリックス材内で配列される。
【0036】
ある実施形態において、本発明の複合材料には、複合材料の表面に配置される第1の一方向配列CNT浸出繊維が含まれる。このような実施形態の中には、複合材料が、製品に組み込まれ、その製品の表面にのみ、又はその近傍にのみ配置される第1の一方向配列CNT浸出繊維を備えた連続的なマトリックス材を含むものがある。他の実施形態において、CNT浸出繊維は、製品の表面に重ねられ結合されるスキンとして予め製造されてもよい。このような実施形態において、複合材料のマトリックス材は、大量生産されたものと同じ成分でも異なる成分でもよい。また更なる実施形態において、スキンは前述のように適用され、引き続き、積層型の構造で製品に結合されてもよい。ある実施形態において、多数のスキン状構造体を積み重ねることにより、当該技術分野において既知の従来技術を用いて互いに結合される多重積層スキンを形成する。
【0037】
前述の構成のいずれに関しても、結合には、例えば、バルク製品(bulk article)が複合材料と同一のマトリックス材から加工される場合、あるいは、バルク製品が同様の温度で溶融する異種材料である場合に、連続的なマトリックスを形成するために、本発明に係る複合材料のマトリックス材をその製品上で溶融させることが含まれる。また、結合は、接着剤を使用して得られてもよい。ある実施形態において、接着剤は、例えば、接触型接着剤(contact adhesive)、熱溶融型接着剤(hot melt adhesive)、溶剤型接着剤(solvent-based adhesive)、及びマルチパート反応型接着剤(multi-part reactive adhesive)などのあらゆる種類であってもよいが、用いられる接着剤は、電気的に絶縁性を有する。例示的な接着剤には、限定するものではないが、シアノアクリレート、エポキシ、ニトロセルロース、ゴム接着剤(例えば、ポリクロロプレン)、熱可塑性物質、及びポリビニルアセテートが含まれる。
【0038】
ある実施形態において、本発明の複合材料には、第2の一方向配列CNT浸出繊維が更に含まれる。図2(A)は、4つの一方向配列CNT浸出繊維を含む多層プライ構造体を例示する。当業者であれば、一方向性配列が、あらゆる相対配向を備えて、このようにいくつも積み重ねられることを理解できる。第2の一方向配列CNT浸出繊維は、第1の一方向配列CNT浸出繊維に対して、約0度から約90度の角度で配置される。このように、第1及び第2の一方向配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85及び90度と、これらの全中間値及び端数を含む相対配向角度で配置される。
【0039】
ある実施形態において、本発明に係る複合材料には、第1の一方向配列CNT浸出繊維、第2の一方向配列CNT浸出繊維、第3の一方向配列CNT浸出繊維、第4の一方向配列CNT浸出繊維及び第5の一方向配列CNT浸出繊維など(6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、50、60に、これらの中間数を含む数の一方向配列CNT浸出繊維)が含まれる。いくつもの一方向配列を集めて、あらゆる形状又は寸法を有する製品にすることができる。例えば、積み重ねられた円形配列を用いて円筒状の物体にすることや、積み重ねられた矩形配列を用いて3次元矩形物体にすることなどができる。
【0040】
ある実施形態において、第1及び第2の一方向配列CNT浸出繊維を有する本発明に係る複合材料には、図5Aに示されるように、第1の一方向配列CNT浸出繊維と第2の一方向配列CNT浸出繊維との間に配置された絶縁層が更に含まれる。同様に、多重の絶縁層は、複数の一方向配列CNT浸出繊維を有する多数積層構造体において、各一方向配列CNT浸出繊維間に存在してもよい。理論に拘束されるものではないが、絶縁層は、繊維方向に垂直な横方向電流を最小化することにより、複合材料構造体における面内応力の検出増強に有益である。
【0041】
ある実施形態において、本発明は、1)マトリックス材、及び、マトリックス材の少なくとも一部に配置されたカーボン・ナノチューブ(CNT)浸出繊維の第1の一方向配列と、を有する本発明の複合材料構造体と、2)複合材料の全域にわたる抵抗変化と関係する情報を受けるために、複合材料の周縁部に配置された電極ネットワークと、を含む製品を提供する。電極ネットワークにより、複合材料の全域にわたる抵抗変化を測定することで、複合材料におけるひずみ、疲労、損傷及び亀裂の位置をマッピングすることができる。電極ネットワークを備えた本発明の複合材料を含む例示的な製品は、図2(B)、図3(A)、図4、図5B、図6〜図9、図10A〜図10C並びに図12A及び図12Bに示されている。特定の実施形態では、本発明の製品は、硬化したマトリックス材においてCNT浸出繊維の一方向配列を備えたプライ状構造体を含んで構成され、これによりパネルを提供する。このようなパネルは、大規模な製品に適用されるスキン構造体としての機能を果たす。また、多数積層製品が個々のプライを積み重ねて製造される。
【0042】
ある実施形態において、本発明の製品は、複合材料の周縁部に配置された送信電極及び受信電極のネットワークを用いる。ある実施形態において、電極ネットワークは、複合材料におけるひずみ、疲労、損傷及び亀裂の位置を測定しマッピングするために用いられる検知回路に関与する。
【0043】
ある実施形態において、電極ネットワークは、例えば、図4に示されたように、繊維軸に平行に配向される。ある実施形態では、電極ネットワークは、図2(B)に例示されるように、繊維軸に平行なものと繊維軸に垂直なものとのいずれもが存在する。図2(B)について、具体的には、複数の電極が製品の全周縁部に配置され、複数の一方向配列CNT浸出繊維が90度の相対配向で用いられている場合に、1つの電極対は、第1の一方向配列に関する繊維軸に対して平行に、かつ、第2の一方向配列に対して垂直に配置される。ある実施形態において、周縁部に沿う電極は、製造上の許容限界に至るまで、いかなる大きさ、かつ、いかなる数であってもよい。図5B及び図6〜図9は、90度の相対配向で配置された2つの一方向配列CNT浸出繊維をその一方向配列間に配置された絶縁層とともに備えた図5Aに図示の重層構造体を有する本発明の製品において、6×6の電極対ネットワークを例示している。従って、多数積層製品において、これらの電極対は、空間的にアドレス指定可能(addressable)である。これにより、本発明の製品を、複合材料製品上の応力の位置測定を可能にする状況(context)で用いることができるようになる。この応力は、例えば、電極ネットワークで測定された複合材料の電気的性質の変化により決定されてもよい。図6〜図9は、穴としてモデル化された損傷が複合材料製品に開けられた場合に、対となる各電極について測定された抵抗変化を示す。
【0044】
ある実施形態において、本発明の製品は、限定するものではないが、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、セラミック及びセメントなど、複合材料を生成するために用いられるあらゆるマトリックス材を使用できる。また、他のマトリックス材として、損傷検出用途において感度をより向上させる弱伝導性を備えたものを用いてもよい。本発明の製品は、CNT浸出繊維において、多層CNTs、2層CNTs及び単層CNTs、並びにこれらの混合物から選択されるCNTsを用いることができる。特定の実施形態において、本発明の製品は、多層CNTsである浸出CNTsを用いる。多層CNTsは、良導性を示すと同時に、製品の強度を強化する。これは、製品が連続的な応力を受ける用途に特に有用である。本発明の製品は、繊維軸に略平行に、あるいは、繊維軸に略垂直に配列された浸出CNTsを有することがある。複雑な製品において、複合材料構造体は、破損する可能性が高く、CNT浸出繊維の存在により与えられる強度の強化特性から利益を受け得る戦略的な位置に一方向配列CNT浸出繊維を含むように設計される。
【0045】
本発明の製品は、前述のように用いられる個々の一方向配列に関して、複合材料の約0.01重量%から約1重量%の範囲で存在する浸出CNTsを有する。当然ではあるが、例えば、絶縁層や電極材料などの、製品の他の構成要素を考慮に入れた場合、製品自体では、CNT総担持量がこれに応じて低くなる。
【0046】
ある実施形態において、本発明の製品は、単一の一方向配列を有する個々の複合材料に用いられるように、長さが約100ナノメートルから約5ミクロンに及ぶ浸出CNTsを有する。製品に用いられる絶縁層がない場合には、横方向電流の伝達を低減するために、長さの短いCNTsを用いるのが好都合である。本発明の製品に組み込まれる浸出CNTsは、長さが約1ミクロンから約500ミクロンの範囲(約1ミクロン、2ミクロン、3ミクロン、4ミクロン、5ミクロン、6ミクロン、7ミクロン、8ミクロン、9ミクロン、10ミクロン、15ミクロン、20ミクロン、25ミクロン、30ミクロン、35ミクロン、40ミクロン、45ミクロン、50ミクロン、60ミクロン、70ミクロン、80ミクロン、90ミクロン、100ミクロン、150ミクロン、200ミクロン、250ミクロン、300ミクロン、350ミクロン、400ミクロン、450ミクロン、500ミクロン、及びこれらの全中間値など)で様々である。CNTsの長さは、約1ミクロン未満(例えば、約0.5ミクロンなど)であってもよい。また、CNTsは、500ミクロンより大きくてもよい(例えば、510ミクロン、520ミクロン、550ミクロン、600ミクロン、700ミクロン、及びこれらの全中間値など)。ある実施形態において、本発明の製品には、長さが約100ナノメートルから約5ミクロンに及ぶ浸出CNTsを有する複合材料が含まれる。
【0047】
本発明の製品には、単一の一方向配列を有する構成複合材料と同一のCNT浸出繊維が組み込まれてもよく、限定するものではないが、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、及びこれらの混合物が含まれる。本発明の製品には、他の有機繊維(例えば、綿花など)から選択された繊維に基づくものなど、あらゆる種類のCNT浸出繊維を有する複合材料が含まれる。CNT浸出繊維材料には、フィラメント、繊維ヤーン、繊維トウ、テープ、編組繊維、織物、不織繊維マット、繊維プライ及び3次元織物構造体が含まれる。
【0048】
本発明の複合材料と同様に、本発明の製品は、連続繊維、及び複数の不連続繊維を含む第1の一方向配列CNT浸出繊維を有する。後者の場合には、不連続繊維は、相対的なCNTの配向性を制御するために配向される。
【0049】
本発明の製品は、製品の表面に配列される第1の一方向配列CNT浸出繊維を有してもよい。これとは別に、本発明の製品には、製品の全体にわたって、1以上の一方向配列CNT浸出繊維(第2の一方向配列CNT浸出繊維や、第3、第4、第5及び第6の配列など、最大で製品全体を包含するのに十分な量まで含む)を含んでもよい。
【0050】
本明細書で前述した複合材料と同様に、本発明の製品は、第1の一方向配列CNT浸出繊維に対して約0度から約90度の角度(中間のあらゆる相対角度及びその端数を含む)で配置される第2の一方向配列CNT浸出繊維を有することがある。製品には、一方向配列をいくつも組み込んでよい。本発明の製品は、複合材料に関して本明細書で前述されたように、第1の一方向配列CNT浸出繊維と第2の一方向配列CNT浸出繊維との間に配置される絶縁層を更に含む。本発明の製品に組み込まれた各一方向配列CNT浸出繊維の相対配向は、複合材料の製造中に制御され、製品周囲の精密な電極パターンを可能にする。
【0051】
ある実施形態において、本発明の製品には、図10A〜図10Dに示されるように、電極が銀塗料で加工される送信電極及び受信電極のネットワークを含む電極ネットワークが含まれる。当業者であれば、銀塗装された電極が単に例示であり、電極材料には、電極の製造に用いられる当該技術分野において既知のあらゆる金属(例えば、銅、リチウム、鉄、コバルト、モリブデン、ニッケル、銀、ランタン、マンガン、チタン、アルミニウム、白金、ジルコニウム、イットリウム、スカンジウム、ストロンチウム及びバナジウムと、これらの塩と、これらの混合物(例えば、合金など)と、を含む)が含まれることを認識するであろう。
【0052】
電極はいかなるサイズであってもよいが、小さい電極対の数を増やしていくと、感度の向上に有益である。図10A〜図10Cは、パネルの長さ方向の周囲に巻き付けられた一方向配列CNT浸出ガラス繊維を備えて構成された試験ストリップの複合材料パネルを示す。この例示的なパネルは、硬化性エポキシ樹脂で構成された。試験パネルの両端には、同一サイズの穴が開けられ、穴の周囲の塗装幅は、図10Aから図10B、図10Cへと進むにつれて増加した。この電極幅は図10Dに図示されている。
【0053】
図11に示されているように、2つの電極間で観察される抵抗と電極サイズとの間には関連性がある。電極サイズが減少すると、パネルの全域にわたる測定抵抗は、パーコレーション経路が少なくなるために、一定電流では増加する。理論に拘束されるものではないが、小さな電極は、大きな電極と比較すると、電流を供給する実効的なパーコレーション経路数が少なくなる。損傷検出との関連では、僅かなパーコレーション経路のみが切断された場合、小さな電極では、喪失経路の影響はどれも大きいので、大きな抵抗変化が認められる。極端な比較をすると、全パネルにわたる連続的な電極では、パーコレーション経路の初期数が極めて多く、僅かなパーコレーション経路のみの喪失による影響で観察される抵抗変化は小さくなる。しかし、極めて小さい電極対、又は極めて大きい電極対の両極端でも、容易に損傷検出を行うことが可能であり、製造容易性と感度との間の調和を達成することができる。
【0054】
他の実施形態において、送信電極及び受信電極のネットワーク状の電極ネットワークには、図12A及び図12Bに示されるように、埋め込まれた銅ピン電極が含まれる。図12Aに示されるように、電極ピンは、3層構造体(第1の一方向配列−絶縁層−第2の一方向配列)内において、製品面に垂直に配向されたピンを備えて組み立てられる。また、電極ピンは、図12Bに示されるように、製品面内に、かつ、一方向配列内の繊維軸と同方向に配向されてもよい。図12Bは、2つの一方向配列を示し、それぞれが各繊維方向に平行に配置される電極ピンを有している。2つの一方向配列は90度の相対配向で配置され、絶縁材は、2つの配列間に配置される。また、ある実施形態において、電極は、限定するものではないが、リソグラフィー、印刷などの当該技術分野において既知である他の技術により加工されてもよい。電極は、埋込金属電極や、スパッタリング、蒸着、プラズマ又は他のあらゆる気相粒子の析出技術により複合材料表面に適用される金属膜で構成され得る。また、CNT浸出繊維自体の自由端を結合することにより、一体化電極を形成してもよい。
【0055】
ある実施形態において、本発明は、1)本明細書において前述したような製品と、2)1以上のセンサに対する電流供給源と、3)抵抗データを受けるために備えられたコンピュータ(コンピュータには損傷検出アルゴリズムを有するソフトウェアが備えられる)と、4)製品の複合材料構造体におけるひずみ、疲労、損傷及び亀裂の位置を表示するグラフィカル・ユーザー・インターフェースと、を含むシステムを提供する。
【0056】
ある実施形態において、本発明は、マトリックス材、及び、マトリックス材の少なくとも一部に配置された第1の一方向配列カーボン・ナノチューブ(CNT)浸出繊維、を有する複合材料を組み込んだ製品と、複合材料の全域にわたる抵抗変化を検出するために複合材料に接続された検知回路と、を含むシステムを提供する。
【0057】
ここで図13を参照すると、検知回路1320と使用可能に連結される(operably-linked)複合材料/製品1310を有する本発明のシステム1300が示されている。そして、検知回路1320は、複合材料/製品1310内の損傷又は応力の位置を表示するために用いられるグラフィカル・インターフェース(例えば、モニターなど)を任意に含むコンピュータ1330に連結される。ある実施形態において、検知回路1320は、コンピュータ1330を不要にする固有の表示部を有する。システム1300は、任意的に、複合材料/製品1310と検知回路1320との間の媒介として機能する電極ネットワーク1340を更に含むことができる。システム1300は、複合材料/製品1310に対して、そして使用時には電極ネットワーク1340に対して電流を供給する供給源を組み込むことができる。別の実施形態では、電流はシステムに対して受動的に供給される。本発明のシステムは、検知回路を使用して、これにより、複合材料におけるひずみ、疲労、損傷又は亀裂の位置を測定及びマッピングする。
【0058】
本発明のシステムには、検知回路から抵抗データを受けるために備えられたコンピュータが含まれ、また、コンピュータには、損傷検出アルゴリズムを有するソフトウェアが備えられる。このアルゴリズムには、複合材料におけるひずみ、疲労、損傷及び亀裂の位置を表示するグラフィカル・ユーザー・インターフェースの表示用コードが含まれる。
【0059】
本発明のシステムは、損傷検知が有用なあらゆる環境に取り入れられる。例えば、航空機の一部として導入され、これにより、翼又は機体に対する応力/損傷を監視するほか、船体若しくは戦車車体の一部として導入されてもよい。本発明のシステムは、電流供給源として、交流電源又は直流電源を用いることができる。例えば、抵抗などの電気的性質の測定値は、監視され、損傷検知アルゴリズムのソフトウェアを備えたコンピュータの支援により、グラフィカル・インターフェースでユーザーに出力される。これにより、損傷の連続的又は断続的な監視が可能となる。
【0060】
図13に示されるように、システムには、通常、検知データを収集する監視ステーションが含まれる。検知データは、損傷検知アルゴリズムを備えたコンピュータに送信される。このアルゴリズムは、データの収集と同時に、多重測定の処理を行うことが可能である。ある実施形態において、アルゴリズムは、製品が静止状態にあることを認識するように、かつ、この静止状態を応力のゼロ基準測定点として用いるように訓練される(trained)。ある実施形態では、アルゴリズムは、応力による製品内における永久的な変化に適合させ、そして、製品に更に印加される力を測定するためにゼロ点を再調整するように訓練される。用いられるアルゴリズムは、検出機能を最適化するためのモデルデータを利用する。最終的に、アルゴリズムの適用により検出されるあらゆる損傷も、グラフィカル・インターフェースを介してエンドユーザーへ伝えられる。グラフィカル・インターフェースは、製品上における最新の応力位置など、製品の構造健全性に関する情報を提供できる。
【0061】
ある実施形態において、本発明は、本発明に係る前述のシステムを提供すること、製品/複合材料において、ひずみ、疲労、損傷及び亀裂から選択される状態を生じさせる荷重を製品にかけること、グラフィカル・インターフェースを介してその状態の位置を監視すること、を含む方法を提供する。
【0062】
ある実施形態において、方法には、変調された電気信号(振幅及び周波数に加えて波形)を監視して、CNT浸出繊維材料を有する複合材料における損傷の検出分解能及び感度を向上させることが含まれる。振幅はひずみを測定するために用いられ、位相は亀裂の伝播を監視するために用いられ、周波数は亀裂の大きさを同定するために用いられる。
【0063】
このように、ある実施形態において、並列RLC回路が掃引する(sweeping)周波数のうち帯域阻止周波数(bandstop frequency)は、次式のように、亀裂の大きさに関連し得る帯域阻止の計算電気容量を決定するために用いられる。
【数1】

【0064】
複合材料における損傷検出は、関心領域(area of interest)の周縁部に沿って配置される少なくとも1組の、1連の、又は数々の電極であって、複合材料におけるCNT浸出繊維材料と有効に接触するものを介して、初期抵抗値を測定することにより達成可能である。電気抵抗率を得るために用いられる手段にかかわらず、抵抗率は連続的に測定され、初期値と比較される。抵抗率の変化は、ひずみの増加、亀裂開始、亀裂伝播又はより深刻な損傷が存在することと関係し、これは、CNTネットワークにおいてパーコレーション経路が切断された結果である。ある実施形態では、構造体を通して送られる電気信号を用いることにより監視が可能になり、これにより損傷を検出する。
【0065】
抵抗率は、本発明の実施形態に従って、連続的に測定され初期値と比較される。抵抗率の変化は、ひずみの増加、亀裂開始、亀裂伝播又はより深刻な損傷が存在することと関係し、これは、CNTネットワークにおいてパーコレーション経路が切断された結果である。この技術は複合材料の健全性を同定するが、抵抗率の測定だけでは、損傷の特性を完全に、あるいは十分に明らかにするのに、データ、感度又は分解能が不足することがある。このため、ある実施形態では、構造体を通って減衰した電気信号を利用することも損傷を検出するための手段として用いられる。振動又は超音波を金属構造体に用いて、構造体内の含有物に基づく欠陥又は疲労を検出するのと同様に、電気信号(既知の振幅及び周波数からなるサイン波)を、電極を介してCNT浸出複合材料構造体に送り、これにより損傷を検出する。
【0066】
ある実施形態において、生成された波は受信波と比較される。配列に沿う1つの電極は送信器(transmitter)として用いられる一方、他の全ての電極は受信電極として用いられる。送信電極は信号を発信し、この信号は各受信電極の位置で受信され処理される。減衰信号は、ヘルツからギガヘルツ領域の信号周波数で掃引される。1つの電極により完全な掃引が終了するとすぐに、配列中の後続の電極が送信器としての役割を引き受け、他の全ての電極は受信電極となる。この処理は、全体の検出精度、分解能及び感度を向上させるために、送信位置を変更しつつ繰り返される。このような信号スキャンは、現在の電子制御方法を用いて秒未満で起こる。収集された信号は、レーダー(radar)に用いられる類似の回路を利用して、送信された原信号と比較される。各電極は、局所電極(local electrode)の特定のデュプレクサ(duplexer)を介して、送信/受信モード間で切り替えられる。受信した信号は、信号混合器を用いて、原信号(局部発振器により生成される)と比較される。異なる周波数で観察される位相及び振幅の変化は、機械的なひずみ、亀裂開始若しくは亀裂伝播、又は、監視システムにより捕捉され処理され得る他の損傷形態により生じる。このシステムでは、損傷の種類及び程度を、高分解能及び高感度で同定することができる。波の振幅は、抵抗率と同様の情報、具体的には、応力下における材料のひずみ量を提供する。位相変化は、構造体を通る経路に沿って遭遇するあらゆる障害物又は亀裂の形状に直接的に関係している(亀裂の大きさ及び形状に関する情報を提供する)。様々な周波数により、様々な信号の「倍率(magnifications)」が提供される。様々な周波数の信号により、これらで与えられる波長内の長さスケール(length scale)に関する特性をより容易に認識できる。微小亀裂に注目する場合、メガヘルツ領域の信号を対象にすることにより、ミクロンの長さスケールにおいて最も高い分解能を提供することができる。信号からの情報を組み合わせることにより、複合材料構造体の健全性についての、高分解能、高感度、かつ高精度なイメージ又はマッピング(電極配列によっては2次元又は3次元で)を提供することが可能である。
【0067】
本発明の方法は、好適には、3つの異なる特性、すなわち波の振幅、位相及び周波数を含む源信号(source signal)を用いて損傷の検出を判断する。源信号の波の振幅又は位相において、源信号が複合材料を通過するときのあらゆる変動も、複合材料内の損傷の大きさ、形状及び位置に直接関係する。また、源信号の感度は、源信号の周波数の変化により変動する。
【0068】
最終的に、本願は、複合材料における損傷検知に関連する用途を目的としているが、当業者であれば、CNT浸出繊維が、複合材料に対して、例えば、引張強度、ヤング率、層間せん断強度(ILSS)、せん断弾性係数、硬度(toughness)、圧縮強度、圧縮係数、密度、EM波吸収率/反射率、音響透過率、電気伝導度及び熱伝導度など、更なる性質をいくつも与え得ることを認識するであろう。
【0069】
引張強度には、3つの異なる測定値、すなわち、1)材料のひずみが弾性変形から塑性変形(その結果、材料の不可逆的な変形が生じる)に変化する応力を評価する降伏強度、2)引張強度、圧縮荷重又はせん断荷重を受けたとき、材料が耐え得る最大応力を評価する終局強度、及び3)破断点における応力−ひずみ線図上での応力の座標を評価する破壊強度、が含まれる。多層カーボン・ナノチューブは、特に、63GPaの引張強度を達成しており、今までに測定された材料の中で最も高い引張強度を有する。さらに、理論計算によれば、CNTsでは約300GPaの引張強度も可能であることが示されている。したがって、CNT浸出繊維材料は、元になる繊維材料と比較して大幅に上回る終局強度を有することが見込まれる。前述のように、引張強度の増大は、用いられるCNTsの的確な性質に加え、繊維材料におけるCNTsの密度及び分布によって決まる。CNT浸出繊維材料では、例えば、引張特性において2〜3倍増加することが示されている。例示的なCNT浸出繊維材料は、機能化されていない元となる繊維材料の3倍ものせん断強度と、2.5倍もの圧縮強度を有する。ヤング率は等方性弾性材料の剛性の1つの尺度である。それは、フックの法則が有効な応力範囲において、1軸ひずみに対する1軸応力の比率として定義される。これは、実験的に、材料サンプルについて行われる引張試験中に形成される応力−ひずみ線図の傾きから決定される。
【0070】
本発明に係る複合材料を準備するために、繊維材料にカーボン・ナノチューブを浸出させる。すなわち、カーボン・ナノチューブは繊維材料上に直接合成される。これは、ある実施形態において、繊維上に最初にナノチューブ形成触媒を配置することで達成される。この触媒配置前に、いくつかの準備プロセスを行ってもよい。
【0071】
ある実施形態において、繊維材料をプラズマで任意に処理して、触媒を受け入れる表面を下処理できる。例えば、プラズマで処理されたガラス繊維材料により、CNT形成触媒が配置される粗面化されたガラス繊維表面がもたらされる。また、ある実施形態において、プラズマは、繊維表面を「浄化」する機能をも果たす。このように繊維表面を「粗面化(roughing)」するためのプラズマ・プロセスは、触媒の配置を容易にする。粗度は、通常、ナノメートル程度である。プラズマ処理プロセスにおいて、深さ及び直径がナノメートル単位のクレーター(crater)又はくぼみが形成される。このような表面改質は、限定するものではないが、アルゴン、ヘリウム、酸素、アンモニア、窒素及び水素など、種々異なる1以上のガスのプラズマを用いて可能となる。
【0072】
ある実施形態において、使用される繊維材料が付随するサイジング物質を有する場合、このようなサイジング剤を、触媒の配置前に任意除去してもよい。任意的には、サイジング剤を触媒配置後に除去することもできる。ある実施形態において、サイジング剤の除去は、CNTの合成中、又は予熱工程におけるCNT合成の直前に行われる。また更なる実施形態において、サイジング剤の中には、CNT合成プロセスの全体にわたって残存するものがある。
【0073】
CNT形成触媒の配置の前、又はこれと同時の工程として、もう1つが、繊維材料に対するバリア・コーティングの適用である。バリア・コーティングは、繊細な繊維材料(例えば、炭素繊維、有機繊維、金属繊維など)の健全性を保護するために設けられる材料である。このようなコーティングには、例えば、アルコキシシラン、アルモキサン、アルミナナノ粒子、スピンオンガラス(spin on glass)及びガラスナノ粒子が含まれる。一実施形態において、CNT形成触媒は、未硬化のバリア・コーティング材に加えられて、その後、共に繊維材料に適用されてもよい。他の実施形態において、バリア・コーティング材は、CNT形成触媒の配置前に繊維材料に加えられる。このような実施形態において、バリア・コーティングは、触媒の配置前に部分的に硬化してもよい。バリア・コーティング材は、後続のCVD成長のための炭素原料にCNT形成触媒をさらすのに十分薄い厚さである。ある実施形態では、その厚さは、CNT形成触媒の有効径未満か、それとほぼ等しい。CNT形成触媒及びバリア・コーティングが適切に配置された時点で、バリア・コーティングを十分に硬化させることができる。ある実施形態では、バリア・コーティングは、触媒部位に対するCNT形成試薬のアクセスが可能である限り、CNT形成触媒の有効径よりも大きくてよい。このようなバリア・コーティングは、CNT触媒に対する炭素原料のアクセスを可能にするために、十分多孔質であるとよい。
【0074】
理論に拘束されるものではないが、バリア・コーティングは、繊維材料とCNTsの中間層として機能し、また、ガラス繊維材料に対するCNTsの機械的な浸出も支援する。このような機械的な浸出は、繊維材料がCNTsを組織化するための基盤としてさらに機能する強固なシステムを提供し、そして、バリア・コーティングを備えた機械的な浸出の利点は、本明細書で前述した間接型の結合と同様である。また、バリア・コーティングを含むことの利点は、水分にさらされることに起因した化学的損傷、又は、CNT成長を促進するために用いられる温度で繊維材料を加熱することに起因したあらゆる熱的損傷から、繊維材料を直接保護するという点にある。
【0075】
後述するように、触媒は、遷移金属ナノ粒子を含むCNT形成触媒含有の液体溶液として準備される。合成されたナノチューブの直径は、前述のように、金属粒子の大きさに関係する。
【0076】
カーボン・ナノチューブの合成は、高温で生じる化学蒸着(CVD)プロセスに基づいている。具体的な温度は触媒の選択に依存するが、通常は、約500℃〜1000℃の範囲である。したがって、CNTの合成には、カーボン・ナノチューブの合成を支援するために、前記範囲の温度まで繊維材料を加熱することが含まれる。
【0077】
そして、触媒を含んだ繊維材料上でCVDにより促進されるナノチューブ成長が行われる。CVDプロセスは、例えば、炭素含有原料ガス(アセチレン、エチレン又はエタノールなど)により進められる。CNT合成プロセスでは、主要なキャリアガスとして、通常、不活性ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム)が用いられる。炭素原料は、混合物全体の約0%から約15%の範囲で供給される。CVD成長のための略不活性環境は、成長チャンバーから水分及び酸素を除去して準備される。
【0078】
CNT合成プロセスにおいて、CNTsは、CNT形成遷移金属ナノ粒子触媒の部位で成長する。強プラズマ励起電界の存在を任意に用いて、ナノチューブの成長に影響を与えることができる。すなわち、成長は、電界方向に従う傾向がある。プラズマ・スプレーの配置及び電界を適切に調節することにより、垂直配列の(すなわち、ガラス繊維材料に対して垂直な)CNTsを合成できる。一定の条件下では、プラズマがない場合であっても、密集したナノチューブは、成長方向を略垂直に維持して、結果として、カーペット(carpet)又はフォレスト(forest)に似た高密度配列のCNTsになる。
【0079】
繊維材料上に触媒を配置する工程は、溶液のスプレー若しくは浸漬コーティングにより、又は、例えば、プラズマ・プロセスを介した気相蒸着により可能である。このように、ある実施形態では、溶媒に触媒を含んだ溶液を形成した後、その溶液で繊維材料をスプレー若しくは浸漬コーティングすることにより、又はスプレー及び浸漬コーティングの組み合わせにより、触媒が適用される。単独であるいは組み合わせて用いられるいずれか一方の手法は、1回、2回、3回、4回、あるいは何回でも使用され、それによってCNT形成触媒で十分均一にコーティングされた繊維材料を提供する。例えば、浸漬コーティングが使用される場合、繊維材料は、第1の浸漬槽において、第1の滞留時間、第1の浸漬槽内に置かれる。第2の浸漬槽を使用する場合、繊維材料は、第2の滞留時間、第2の浸漬槽内に置かれる。例えば、繊維材料は、浸漬の形態及びラインスピードに応じて約3秒〜約90秒の間、CNT形成触媒の溶液にさらされる。スプレー又は浸漬コーティングを用いることにより、繊維材料は、触媒の表面密度が約5%未満から約80%もの表面被覆率で処理される(ここで、CNT形成触媒ナノ粒子はほぼ単分子層となる)。ある実施形態では、繊維材料上におけるCNT形成触媒のコーティングについてのプロセスは、単分子層だけを生成する。例えば、積み重ねたCNT形成触媒上におけるCNT成長は、CNTが繊維材料へ浸出する度合いを損なうことがある。他の実施形態では、蒸着技術、電解析出技術、及び当業者に知られている他のプロセス(例えば、遷移金属触媒を、有機金属、金属塩又は気相輸送を促進する他の組成物として、プラズマ原料ガスへ添加することなど)を用いて、遷移金属触媒を繊維材料上に配置する。
【0080】
CNT浸出繊維を製造するためのプロセスは連続的に設計されるため、巻き取り可能な繊維材料は、一連の槽で浸漬コーティングを施すことが可能である(この場合、浸漬コーティング槽は空間的に分離されている)。例えば、炉から新たに形成されたガラス繊維など、発生期の繊維が新たに生成されている連続プロセスにおいて、CNT形成触媒の浸漬又はスプレーは、新たに形成された繊維材料を十分に冷却した後の第1段階となり得る。ある実施形態では、新たに形成された繊維材料の冷却は、CNT触媒粒子を分散させた冷却水の噴流で実施される。
【0081】
ある実施形態では、連続プロセスにおいて、繊維を生成してこれにCNTsを結合させる場合に、サイジング剤の適用に代えてCNT形成触媒の適用が行われる。他の実施形態では、CNT形成触媒は、他のサイジング剤の存在下で新たに形成された繊維に適用される。このようなCNT形成触媒及び他のサイジング剤の同時適用は、繊維材料と表面接触するCNT形成触媒を供給してCNTの浸出を確実にすることができる。またさらなる実施形態において、繊維材料が、例えば、焼きなまし温度近傍又はそれ未満の十分に軟化した状態にある間、CNT形成触媒をスプレー又は浸漬コーティングにより発生期の繊維に適用し、これにより、CNT形成触媒が繊維の表面に僅かに埋め込まれる。高温のガラス繊維材料上にCNT形成触媒を配置する場合、CNT形成触媒の融点を超えないように配慮して、ナノ粒子が溶融し、CNTの特性(例えば、CNTの直径など)が制御不能とならないようにする必要がある。
【0082】
使用されるCNT触媒溶液は、遷移金属ナノ粒子であるが、これはdブロックの遷移金属であればいかなるものでもよい。加えて、ナノ粒子には、元素形態又は塩形態のdブロック金属からなる合金や非合金の混合物、及びそれらの混合物が含まれる。このような塩形態には、限定するものではないが、酸化物、炭化物、窒化物、酢酸塩、硝酸塩などが含まれる。限定されない例示的な遷移金属NPsには、Ni、Fe、Co、Mo、Cu、Pt、Au、Ag、及びそれらの塩と、その混合物が含まれる。ある実施形態において、このようなCNT形成触媒は、CNT形成触媒を直接繊維材料に適用あるいは浸出させることにより、繊維上に配置される。多くのナノ粒子遷移金属触媒が、例えば、Ferrotec Corporation(Beford, NH)などの様々なサプライヤーから市販されており容易に入手できる。
【0083】
繊維材料にCNT形成触媒を適用するために用いられる触媒溶液は、CNT形成触媒が全域にわたって均一に分散可能ないかなる共通溶媒であってもよい。このような溶媒には、限定するものではないが、水、アセトン、ヘキサン、イソプロピルアルコール、トルエン、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン(THF)、シクロヘキサン、又はCNT形成触媒ナノ粒子の適切な分散系を形成するために極性が制御された他のいかなる溶媒も含まれる。CNT形成触媒の濃度は、触媒対溶媒で、およそ1:1から1:10000の範囲内である。
【0084】
ある実施形態において、繊維材料にCNT形成触媒を適用した後、繊維材料は軟化温度まで任意に加熱される。これは、繊維材料の表面にCNT形成触媒を埋め込むのに役立ち、そして、種結晶成長(seeded growth)を促して、先端が成長するCNTの先で触媒が浮揚(float)する先端成長を阻止することが可能である。実施形態の中には、繊維材料上に触媒を配置した後、繊維材料が約500℃から1000℃までの温度で加熱されるものがある。CNTの成長に用いるこのような温度への加熱は、繊維上の既存のサイジング剤を除去する役割を果たして、繊維上におけるCNT形成触媒の直接配置を可能にする。また、ある実施形態では、CNT形成触媒は、加熱前に、サイジング剤コーティングの表面にセットされてもよい。加熱工程は、繊維表面に配置された触媒を残しつつ、サイジング剤を除去するために用いられる。これらの温度での加熱は、CNT成長のための炭素原料の導入前に、又はそれと略同時に行われる。
【0085】
ある実施形態において、CNT浸出プロセスには、繊維材料からサイジング剤を除去し、サイジング剤除去後にCNT形成触媒を繊維材料に適用し、繊維材料を少なくとも500℃まで加熱し、そして、繊維材料上にカーボン・ナノチューブを合成することが含まれる。ある実施形態において、CNT浸出プロセスの工程には、繊維材料からサイジング剤を除去すること、繊維に対してCNT形成触媒を適用すること、CNT合成温度まで繊維を加熱すること、そして、触媒を含有する繊維材料上へ炭素プラズマをスプレーすること、が含まれる。したがって、工業用のガラス繊維材料が使用される場合、CNT浸出繊維を構成するためのプロセスには、繊維材料上に触媒を配置する前に、繊維材料からサイジング剤を除去する個別の工程が含まれる。工業用サイジング剤の存否にもよるが、サイジング剤が除去されない場合には、CNT形成触媒は繊維材料と表面接触していなくてもよく、これにより、CNTの溶融を抑制できる。ある実施形態において、CNTの合成条件下でサイジング剤を確実に除去する場合には、サイジング剤の除去は、触媒配置後であって炭素原料の供給直前又は供給中に行われる。
【0086】
カーボン・ナノチューブの合成工程には、限定するものではないが、マイクロキャビティ(micro-cavity)、熱又はプラズマ助長CVD法、レーザー・アブレーション、アーク放電、高圧一酸化炭素法(HiPCO)など、カーボン・ナノチューブを形成するための多数の手法が含まれる。特に、CVD中に、サイジングされた繊維材料が、これにCNT形成触媒を配置した状態で直接用いられる。ある実施形態において、従来のいかなるサイジング剤もCNT合成中に除去可能である。他の実施形態では、残りのサイジング剤は除去されないが、サイジング剤を介した炭素原料の拡散のため、繊維材料へのCNT合成及び浸出を妨害することはない。ある実施形態において、アセチレンガスはイオン化されて、CNT合成のための低温炭素プラズマジェットを形成する。プラズマは触媒を有する繊維材料に向けられる。このように、ある実施形態では、繊維材料上におけるCNTsの合成には、(a)炭素プラズマを形成すること、及び(b)繊維材料上に配置された触媒に炭素プラズマを向けること、が含まれる。成長したCNTsの直径は、CNT形成触媒の大きさにより決定される。ある実施形態において、サイジングされた繊維基材は約550℃〜約800℃に加熱され、CNTの合成を容易にする。CNTsの成長を開始するために、プロセスガス(例えば、アルゴン、ヘリウム又は窒素)及び炭素含有ガス(例えば、アセチレン、エチレン、エタノール又はメタン)の2つのガスが反応器(reactor)に流される。CNTsは、CNT形成触媒の部位で成長する。
【0087】
ある実施形態において、CVD成長はプラズマで助長される。プラズマは、成長プロセス中に電界を与えることにより生成される。この条件下で成長したCNTsは電界の方向に従う。したがって、反応器の配置(geometry)を調節することにより、垂直配向のカーボン・ナノチューブが、円筒状の繊維の周囲から放射状に成長する。ある実施形態では、繊維の周囲に放射状に成長させるために、プラズマは必要とされない。明確な面を有する繊維材料(例えば、テープ、マット、織物、パイルなど)に対して、触媒は一面又は両面に配置され、それに対応して、CNTsもまた一面又は両面で成長する。
【0088】
前述のように、CNT合成は、巻き取り可能な繊維材料を機能化する連続プロセスを提供するのに十分な速度で行われる。以下に例示されるように、このような連続的な合成は、多くの装置構成により容易になる。
【0089】
ある実施形態において、CNT浸出繊維材料は、「オール・プラズマ(all plasma)」プロセスで形成される。このような実施形態では、繊維材料は、多くのプラズマ介在工程を通って、最終的なCNT浸出製品を形成する。第1のプラズマ・プロセスには、繊維表面の改質工程が含まれる。これは、繊維材料の表面を「粗面化(roughing)」して、前述のように、触媒を配置することを容易にするためのプラズマ・プロセスである。前述のように、表面改質は、限定するものではないが、アルゴン、ヘリウム、酸素、アンモニア、水素及び窒素などの種々異なる1以上のガスからなるプラズマを用いて実現できる。
【0090】
表面改質後、繊維材料は触媒の適用へと進む。これは、繊維上にCNT形成触媒を配置するためのプラズマ・プロセスである。CNT形成触媒は、前述のように、通常、遷移金属である。遷移金属触媒は、磁性流体、有機金属、金属塩、又は気相輸送を促進する他の組成物の形態で、前駆体としてプラズマ原料ガスに添加される。触媒は、真空及び不活性雰囲気のいずれも必要とはせず、周囲環境の室温で適用可能である。ある実施形態では、繊維材料は触媒の適用前に冷却される。
【0091】
オール・プラズマ・プロセスを継続すると、カーボン・ナノチューブの合成がCNT成長反応器で生じる。これは、プラズマ助長化学蒸着を用いて実現されるが、ここでは、炭素プラズマが、触媒を含む繊維にスプレーされる。カーボン・ナノチューブの成長は高温(触媒にもよるが、通常は約500℃〜1000℃の範囲)で発生するので、触媒を含む繊維は炭素プラズマにさらされる前に加熱される。浸出処理のために、繊維材料は、それが軟化するまで任意に加熱されてもよい。加熱後、繊維材料は炭素プラズマを受けられる状態になっている。炭素プラズマは、例えば、炭素を含むガス(例えば、アセチレン、エチレン、エタノールなど)を、ガスのイオン化が可能な電界中に通すことにより生成される。この低温炭素プラズマは、スプレーノズルにより繊維材料に向けられる。繊維材料は、プラズマを受けるために、例えば、スプレーノズルから約1センチメートル以内など、スプレーノズルにごく近接している。ある実施形態では、加熱器は、繊維材料の上側のプラズマ・スプレーに配設され、これにより繊維材料を高温に維持する。
【0092】
連続的なカーボン・ナノチューブ合成の別の構成には、カーボン・ナノチューブを繊維材料上に直接合成・成長させるための専用の矩形反応器が含まれる。その反応器は、カーボン・ナノチューブを有する繊維を生成するための連続的なインライン・プロセス用に設計され得る。ある実施形態において、CNTsは、化学蒸着(「CVD」)プロセスにより、大気圧かつ約550℃から約800℃の範囲の高温で、マルチゾーン反応器(multi-zone reactor)内で成長する。合成が大気圧で生じるということは、繊維上にCNTを合成するための連続プロセスラインに反応器を組み込むことを容易にする一因である。このようなゾーン反応器を用いた連続的なインライン処理に合致する別の利点は、CNTの成長が数秒単位で発生するということであり、当該技術分野で標準的な他の手法及び装置構成における数分単位(又はもっと長い)とは対照的である。
【0093】
様々な実施形態によるCNT合成反応器には、以下の特徴が含まれる。
【0094】
(矩形に構成された合成反応器)
当該技術分野で既知の標準的なCNT合成反応器は横断面が円形である。これには、例えば、歴史的理由(研究所では円筒状の反応器がよく用いられる)及び利便性(流体力学は円筒状の反応器にモデル化すると容易になり、また、加熱器システムは円管チューブ(石英など)に容易に対応する)、並びに製造の容易性などの多くの理由がある。本願発明は、従来の円筒形状と一線を画して、矩形横断面を有するCNT合成反応器を提供する。脱却した理由は以下の通りである。1.反応器により処理される多くの繊維材料は、例えば、形状が薄いテープやシート状、あるいは、開繊したトウ若しくはロービング(roving)など相対的に平面的であるので、円形横断面では反応器の体積を効率的に使用していない。この非効率性は、円筒状のCNT合成反応器にとって、例えば、以下のa)ないしc)に挙げるような、いくつかの欠点となる。a)十分なシステムパージの維持;反応器の体積が増大すれば、同レベルのガスパージを維持するためにガス流量の増大が必要になる。これは、開放環境におけるCNTsの大量生産には非効率なシステムとなる。b)炭素原料ガス流量の増大;前記a)のように、不活性ガス流を相対的に増大させると、炭素原料ガス流量を増大させる必要がある。例示的な12Kのガラス繊維ロービングが、矩形横断面を有する合成反応器の全体積に対して2000分の1の体積であることを考慮されたい。同等の円筒状の成長反応器(すなわち、矩形横断面の反応器と同じ平坦化されたガラス繊維材料を収容できるだけの幅を有する円筒状の反応器)では、ガラス繊維材料の体積は、チャンバー体積の17,500分の1である。CVDなどのガス蒸着プロセス(gas deposition processes)は、通常、圧力及び温度だけで制御されるが、体積は蒸着の効率に顕著な影響を与え得る。矩形反応器の場合、それでもなお過剰な体積が存在する。この過剰体積は無用の反応を促進してしまうが、円筒状反応器は、その体積が約8倍もある。このため、競合する反応が発生する機会が増加することにより、所望の反応が有効に生じるには、円筒状反応器チャンバーでは遅くなってしまう。このようなCNT成長の減速は連続プロセスの進行にとって問題となる。矩形反応器の構成の利点の1つは、矩形チャンバーの高さを低くすることで反応器の体積が低減され、これにより体積比が改善され反応がより効率的になるという点である。本願発明のある実施形態において、矩形合成反応器の全体積は、合成反応器を通過中の繊維材料の全体積に対して僅か約3000倍にしかすぎない。更なる実施形態の中には、矩形合成反応器の全体積が、合成反応器を通過中の繊維材料の全体積に対して僅か約4000倍にしかすぎないものもある。また更なる実施形態の中には、矩形合成反応器の全体積が、合成反応器を通過中の繊維材料の全体積に対して約10,000倍未満のものがある。加えて、円筒状反応器を使用した場合、矩形横断面を有する反応器と比較すると、同じ流量比を提供するためには、より大量の炭素原料が必要である点に注目されたい。当然のことながら、他の実施形態の中には、矩形ではないが、円形横断面を有する反応器に対して比較的矩形に類似し、反応器の体積を同様に低減する多角形状で表される横断面を有する合成反応器もある。c)問題のある温度分布;相対的に小径の反応器を用いた場合、チャンバー中心からその壁面までの温度勾配はごく僅かである。しかし、例えば、工業規模の生産に用いられるなど、サイズの増大に伴い、温度勾配は増加する。このような温度勾配により、繊維材料基材の全域で製品品質がばらつく結果となる(すなわち、製品品質が半径位置に応じて変化する)。この問題は、矩形横断面を有する反応器を用いた場合に殆ど回避される。特に、平面的な基材が用いられる場合、基材のサイズが大きくなったときに、反応器の高さを一定に維持することができる。反応器の頂部と底部間の温度勾配は基本的にごく僅かであり、結果的に、生じる熱的な問題や製品品質のばらつきは回避される。2.ガス導入:当該技術分野では、通常、管状炉が使用されているので、一般的なCNT合成反応器は、ガスを一端に導入し、それを反応器に通して他端から引き出している。本明細書に開示された実施形態の中には、ガスが、反応器の両側面又は反応器の頂面及び底面のいずれかを通して対称的に、反応器の中心又は対象とする成長ゾーン内に導入されるものがある。これにより、流入する原料ガスがシステムの最も高温の部分(CNT成長が最も活発な場所)に連続的に補充されるので、全体的なCNT成長速度が向上する。このような一定のガス補充は、矩形のCNT反応器により示される成長速度の向上にとって重要な側面である。
【0095】
(ゾーン分け)
比較的低温のパージゾーンを提供するチャンバーが矩形合成反応器の両端に従属する。仮に高温ガスが外部環境(すなわち、反応器の外部)と接触(mix)したら、繊維材料の分解は増加することが確認されている。低温パージゾーンは、内部システムと外部環境間の緩衝となる。当該技術分野で既知の標準的なCNT合成反応器の構成では、通常、基材を慎重に(かつ緩やかに)冷却することが求められる。本願の矩形CNT成長反応器の出口における低温パージゾーンは、連続的なインライン処理に必要とされるような短時間の冷却を実現する。
【0096】
(非接触、ホットウォール型、金属製反応器)
ある実施形態において、金属製、特にステンレス鋼のホットウォール型(hot-walled)反応器が使用される。このことは、金属、特にステンレス鋼は炭素を析出(すなわち、すす及び副生成物の形成)しやすいため、常識に反するようにも考えられる。したがって、大部分のCNT反応器の構造には、炭素の析出が少なく、また、石英が洗浄しやすく、試料の観察が容易であることから、石英反応器が使用されている。しかしながら、ステンレス鋼上にすす及び炭素析出物が増加することにより、より着実、高速、効率的かつ安定的なCNT成長がもたらされることが観察されている。理論に拘束されるものではないが、大気圧運転(atmospheric operation)と連動して、反応器内で起こるCVDプロセスでは拡散が制限されることが示されている。すなわち、触媒に「過度に供給される(overfed)」、つまり、過量の炭素が(反応器が不完全真空下で運転している場合よりも)その相対的に高い分圧により反応器システム内で得られる。結果として、開放システム(特に清浄なもの)では、過量の炭素が触媒粒子に付着してCNTsの合成能力を低下させる。ある実施形態において、金属反応器壁にすすが析出して反応器に「汚れが付いて(dirty)」いる場合に、矩形反応器を意図的に運転する。炭素が反応器壁上に析出して単分子層を形成すると、炭素は、それ自体を覆って析出しやすくなる。得られる炭素の中には、この機構により「回収される(withdrawn)」ものがあるので、ラジカルの形で残っている炭素原料が、触媒を被毒させない速度で触媒と反応する。既存のシステムが「清浄に」運転しても、連続プロセスのために開放状態であれば、成長速度が低下してCNTsの生産量は著しく低下する。
【0097】
CNT合成を、前述のように「汚れが付いて」いる状態で実施するのは概して有益であるが、それでも、装置のある部位(例えば、ガスマニフォールド及びガス入口)は、すすが閉塞状態を引き起こした場合、CNTの成長プロセスに悪影響を与える。この問題に対処するために、CNT成長反応チャンバーの当該部位を、例えば、シリカ、アルミナ又はMgOなどのすす抑制コーティングで保護してもよい。実際には、装置のこれらの部位は、すす抑制コーティングで浸漬コーティングが施される。INVAR(商標名)は、高温におけるコーティングの接着性を確実なものにする同様のCTE(熱膨張係数)を有し、重要なゾーンにおけるすすの著しい堆積を抑制するので、例えば、INVARなどの金属がこれらのコーティングに用いられる。
【0098】
(触媒還元及びCNT合成の組み合わせ)
本明細書に開示されたCNT合成反応器において、触媒還元及びCNT成長のいずれもが反応器内で生じる。還元工程は、個別の工程として実施されると、連続プロセスに用いるものとして十分タイムリーに行えなくなるため、このことは重要である。当該技術分野において既知の標準的なプロセスにおいて、還元工程の実施には、通常1〜12時間かかる。本願発明によれば、両工程は1つの反応器内で生じるが、これは、少なくとも1つには、炭素原料ガスを導入するのが、円筒状反応器を用いる当該技術分野では標準的となっている反応器の端部ではなく、中心部であることによる。還元プロセスは、繊維が加熱ゾーンに入ったときに行われる;この時点に至るまでに、ガスには、触媒と反応して(水素ラジカルの相互作用により)酸化還元を引き起こす前に反応器壁と反応して冷える時間があるということである。還元が起こるのは、この移行領域である。システム内で最も高温の等温ゾーンでCNTの成長は起こり、反応器の中心近傍におけるガス入口の近位で最速の成長速度が生じる。
【0099】
ある実施形態において、トウ又はロービングなど(例えば、ガラスロービング)の緩くまとまった(loosely affiliated)繊維材料(例えば、炭素トウ)が使用される場合、連続プロセスには、トウ又はロービングのストランド(strand)又はフィラメントを広げる工程が含まれる。したがって、トウ又はロービングは、巻き取られていないときに、例えば、真空ベースの開繊システム(vacuum-based fiber spreading system)を用いて開繊される(spread)。例えば、サイジングされて比較的堅いガラス繊維ロービングを使用する場合、ロービングを「軟化」して開繊しやすくするために、更に加熱することができる。個々のフィラメントを含んで構成される開繊繊維(spread fiber)は、フィラメントの全表面積をさらせるよう十分分離して開繊され、これにより、後続の処理工程でトウがより効率的に反応できるようにする。例えば、開繊トウ又は開繊ロービングは、前述のようにプラズマシステムで構成される表面処理工程を経る。その後、粗面化された開繊繊維はCNT形成触媒の浸漬槽を通過する。その結果、表面で放射状に分布した触媒粒子を有するガラスロービングの繊維となる。触媒を含んだロービングの繊維は、その後、前述のように、例えば、矩形チャンバーなどの適切なCNT成長チャンバーに入るが、ここでは、大気圧CVD又はPE−CVDプロセスを通る流れを用いて、毎秒数ミクロンの速度でCNTsを合成する。ロービングの繊維は、こうして放射状に配列されたCNTsを備えて、CNT成長反応器を出る。
【0100】
当然のことながら、本願発明の様々な実施形態の働きに実質的に影響を与えない変更も、本明細書で提供された本願発明の定義内に含まれる。したがって、以下の実施例は、本願発明を例示するものであって限定するものではない。
【実施例1】
【0101】
本実施例は、連続プロセスにおいてガラス繊維材料にCNTsを浸出させる方法、及び、弾道損傷を検知する用途でガラス繊維材料を用いる方法を示す。この場合、損傷検出の分解能を向上するために、長さの短いCNTsの配列が好ましい。
【0102】
図15は、本発明の例示的な実施形態によるCNT浸出繊維を製造するためのシステム1500を表している。システム1500には、ガラス繊維材料の繰り出し及び張力調整システム102、CNT浸出システム112、及び繊維巻き取り機124が、図に示すように、相互に関連して含まれる。
【0103】
繰り出し及び張力調整システム102には、繰り出しボビン104及びテンショナー106が含まれる。繰り出しボビンは、繊維スプールを保持し、ガラス繊維材料101を毎分9フィートのラインスピードでプロセスに供給する。繊維張力は、テンショナー106を介して1〜5ポンド以内に維持される。繰り出し及び張力調整ステーション(station)102は繊維産業においてごく普通に用いられており、当業者であれば、その構造や利用法を熟知しているものである。
【0104】
張力をかけた繊維105はCNT浸出システム112に送られる。ステーション112には、触媒適用システム114及びCNT浸出ステーションに基づく微小共振器CVD125が含まれる。
【0105】
この例示的な実施例において、触媒溶液は、例えば、張力をかけた繊維130を浸漬槽135に通すことにより、浸漬プロセスを介して適用される。この実施例において、体積比で1の磁性流体であるナノ粒子溶液と100のヘキサンからなる触媒溶液が用いられる。ILSS向上を目的とするCNT浸出繊維のためのプロセスのラインスピードでは、繊維は浸漬槽に10秒間滞留する。触媒は、真空及び不活性雰囲気のいずれも必要とせず、周囲環境における室温で適用可能である。
【0106】
その後、触媒を含んだガラス繊維107は、成長前の低温不活性ガスパージゾーン、CNT成長ゾーン、及び成長後のガスパージゾーンから成るCNT浸出ステーション125へ進められる。室温の窒素ガスが、前述のようにCNT成長ゾーンから流出するガスを冷却するために、成長前のパージゾーンに導入される。流出するガスは、繊維の酸化を防止するために、急速な窒素パージにより250℃以下まで冷却される。繊維はCNT成長ゾーンに入り、そこでは、97.7%の不活性ガス(窒素)質量流と2.3%の炭素含有原料ガス(アセチレン)質量流の混合物が、ガスマニホールドを介して中心に導かれ、高温で加熱される。この実施例において、システムの長さは3フィートであり、CNT成長ゾーンにおける温度は750℃である。触媒を含んだ繊維は、この実施例において、CNT成長環境に20秒間さらされ、その結果、4vol%以下で長さ5ミクロンのCNTsがガラス繊維表面に浸出する。最終的に、CNT浸出ガラス繊維は、繊維表面及びCNTsの酸化を防止するために、繊維とともに流出ガスを250℃に冷却する成長後パージゾーンを通過する。
【0107】
CNT浸出繊維109は、これをスプールに巻き付けて保管する繊維巻き取り機824に集められる。
【0108】
処理されたCNT浸出繊維109は、その後、フィラメント・ワインダー(filament winder)(図示省略)を用いて平板の周囲に一方向に巻き付けられる。各一方向繊維の束は、隣接する各束が接触するように巻き付けられる。一方向繊維は、6インチ四方の平板に4層に巻き付けられる。
【0109】
7インチ四方の平板上において巻き付けられた繊維には、巻き付けられた材料を袋に入れて真空下に置く真空樹脂含浸法(VARTM)を用いて、熱硬化性樹脂EPON828を注入する。樹脂は、真空を利用してその構造体を通って移動する。得られた構造体は、樹脂製造業者の規定に基づいて、加熱されたプレス機内で硬化される。
【0110】
硬化した複合材料のスキンは、6.5インチ×6インチのパネルに切断される。そのパネルは、繊維方向に平行な12の等間隔電極位置(図4に示されるものと同様)をさらすためにマスク(mask)され、これらの位置が樹脂の多い表面層を除去するために研磨され、スパッター蒸着を用いて金電極接点が蒸着される。
【0111】
追加の一方向パネルが、段落119〜128に記載されたものと同様に準備される。これらのパネルを結合することにより、図5に示される構成の多層ガラス複合材料の弾道パネル、すなわち、0度の繊維方向層−絶縁層−90度の繊維方向層の弾道パネルにする。典型的な2液性エポキシ接着剤を用いることにより、複合材料構造体の各層を結合する。
【0112】
せん断パンチ(shear punch)を用いることにより、最終的な複合材料構造体に対する弾道損傷をモデル化する。1A−Bから12A−Bでラベル表示された各電極対について、10ヘルツかつ振幅0.5ボルトの入力信号を与えることにより、初期抵抗の測定値を取得する。弾道範囲(ballistic round)をモデル化するために用いられる直径2分の1インチの大きさのせん断パンチにより、弾道パネルをINSTRON(登録商標)の圧縮試験機を用いて貫通する。モデル化された損傷の配置に応じて、いくつかの電極対において抵抗変化が認められる。パネルの中心における穴の場合、両検出層(0度及び90度)についての電極対6A−B及び7A−B(図8に同様に図示される)に関して、3%以下の抵抗変化が観察される。観察される抵抗変化量は、被った弾道損傷の種類及び程度を表す情報を提供し、また、影響を受けた電極対は、損傷の位置についての情報を提供する。
【実施例2】
【0113】
本実施例は、連続プロセスにおいてガラス繊維材料にCNTsを浸出させる方法、及び、衝撃損傷を検知する用途でガラス繊維材料を用いる方法を示す。この場合、損傷検出の分解能を向上するために、長さの短いCNTsの配列が好ましい。
【0114】
図14は、本発明の例示的な実施形態によるCNT浸出繊維を製造するためのシステム1500を表している。システム1500には、ガラス繊維材料の繰り出し及び張力調整システム102、CNT浸出システム112、及び繊維巻き取り機124が、図に示すように、相互に関連して含まれる。
【0115】
繰り出し及び張力調整システム102には、繰り出しボビン104及びテンショナー106が含まれる。繰り出しボビンは、繊維スプールを保持し、ガラス繊維材料101を毎分12フィートのラインスピードでプロセスに供給する。繊維張力は、テンショナー106を介して1〜5ポンド以内に維持される。繰り出し及び張力調整ステーション(station)102は繊維産業においてごく普通に用いられており、当業者であれば、その構造や利用法を熟知しているものである。
【0116】
張力をかけた繊維105はCNT浸出システム112に送られる。ステーション112には、触媒適用システム114及びCNT浸出ステーションに基づく微小共振器CVD125が含まれる。
【0117】
この例示的な実施例において、触媒溶液は、例えば、張力をかけた繊維130を浸漬槽135に通すことにより、浸漬プロセスを介して適用される。この実施例において、体積比で1の磁性流体であるナノ粒子溶液と100のヘキサンからなる触媒溶液が用いられる。ILSS向上を目的とするCNT浸出繊維のためのプロセスのラインスピードでは、繊維は浸漬槽に7.5秒間滞留する。触媒は、真空及び不活性雰囲気のいずれも必要とせず、周囲環境における室温で適用可能である。
【0118】
その後、触媒を含んだガラス繊維107は、成長前の低温不活性ガスパージゾーン、CNT成長ゾーン、及び成長後のガスパージゾーンから成るCNT浸出ステーション125へ進められる。室温の窒素ガスが、前述のようにCNT成長ゾーンから流出するガスを冷却するために、成長前のパージゾーンに導入される。流出するガスは、繊維の酸化を防止するために、急速な窒素パージにより250℃以下まで冷却される。繊維はCNT成長ゾーンに入り、そこでは、97.7%の不活性ガス(窒素)質量流と2.3%の炭素含有原料ガス(アセチレン)質量流の混合物が、ガスマニホールドを介して中心に導かれ、高温で加熱される。この実施例において、システムの長さは3フィートであり、CNT成長ゾーンにおける温度は750℃である。触媒を含んだ繊維は、この実施例において、CNT成長環境に15秒間さらされ、その結果、3.5vol%以下で長さ3ミクロンのCNTsがガラス繊維表面に浸出する。最終的に、CNT浸出ガラス繊維は、繊維表面及びCNTsの酸化を防止するために、繊維とともに流出ガスを250℃に冷却する成長後パージゾーンを通過する。
【0119】
CNT浸出繊維109は、これをスプールに巻き付けて保管する繊維巻き取り機824に集められる。
【0120】
処理されたCNT浸出繊維109は、その後、フィラメント・ワインダー(図示省略)を用いて、額縁板(picture frame plate)(中央が切り抜かれた穴を有する平板)の周囲に90度の方向で巻き付けられる。各一方向繊維の束は、隣接する各束が接触するように巻き付けられる。別の層は、90度の層の上に0度の方向で巻き付けられる。額縁の中心の材料は、図2(A)に図示される構成からなる3.25インチ四方の繊維積層を形成するように切り取られる。
【0121】
積層された繊維構造体には、3.25インチ四方の積層された繊維構造体を袋に入れて真空下に置く真空樹脂含浸法(VARTM)を用いて、熱硬化性樹脂EPON828を注入する。樹脂は、真空を利用してその構造体を通って移動する。得られた注入済材料は、樹脂製造業者の規定に基づいて、加熱されたプレス機内で硬化される。
【0122】
硬化した複合材料の平板は、3インチ四方のパネルに切断される。周縁部に沿って構造体にドリルで直径8分の1インチの穴を続けて開け、その結果、平板の各辺に沿う等間隔の3つの穴となる。各穴の内側は、伝導性の銀塗料でコーティングされ、そして、電極電線が、適切なサイズのハードウェア(hardware)で均等にトルクを与えられて取り付けられ、これにより、図2(B)で図示されるものと同様のパネルを形成する。
【0123】
落下試験の備品を用いることにより、最終的な複合材料構造体に対する衝撃損傷をモデル化する。電極1が中央上部のものであり、電極番号が時計方向に電極8まで増加する場合に、各電極対の全てで、初期抵抗及び信号位相の測定値を取得する。各電極は送信器としての役割を果たし、その間、その他の各電極は信号を取得する。この役割は、全ての電極が送信器として用いられるまで、各電極に時計方向に受け継がれる。1キロヘルツかつ振幅1.0ボルトの入力信号を与えることにより、得られたデータ配列は、複合材料構造体の初期損傷状態についての情報を提供する。落下試験の備品を用いる場合、高さ125センチメートルからパネルの表面に3700グラムのボール状重りを落下して、衝撃損傷をモデル化する。落下試験が終了するとすぐに、前述のようなサンプリング・シーケンスで、もう1つの抵抗及び信号位相を取得する。この場合において、0.19%の抵抗変化が、対向して離隔するいくつかの電極対間で観察されると同時に、0.1〜0.15°の位相ずれ(phase shift)が、複合材料構造体の内部における亀裂の形成を表す。観察される抵抗変化量は、被った衝撃損傷の程度を表す情報を提供し、また、位相ずれは、複合材料構造体内で進展する内部亀裂の形状についての情報を提供する。
【0124】
当然のことながら、前述の実施形態は単に本願発明の具体例にすぎず、当業者であれば、本願発明の範囲から逸脱することなく、前述の実施形態の多くの変形例を考え出すことができる。例えば、本明細書において、数々の具体的詳細が、本願発明の例示的な実施形態の説明及び理解を完全にするために記載されている。しかしながら、当業者であれば、本願発明の1以上の詳細がなくても、又は他のプロセス、材料、構成要素などで、本願発明を実施でき得ることを認識するであろう。
【0125】
また、例示的な実施形態の態様を分かり難くすることを避けるため、場合によっては、周知の構造、材料、又は工程を詳細に図示又は説明しない。当然のことながら、図面に図示された様々な実施形態は例示であり、必ずしも一定の縮尺で描かれたものではない。本明細書全体にわたって「1つの実施形態」又は「一実施形態」又は「ある実施形態」に言及しているのは、特定の機能、構造、材料、又は(複数の)実施形態と関連して記載した特徴が、本願発明の少なくとも1つの実施形態には含まれるが、必ずしも全ての実施形態に含まれるものではない、ことを意味する。したがって、本明細書の全体にわたって様々な箇所で現れる表現「1つの実施形態において」、「一実施形態において」又は「ある実施形態において」は、必ずしも全て同じ実施形態について言及しているものものとは限らない。さらに、特定の機能、構造、材料、又は特徴を、1以上の実施形態で適切な方法により組み合わせることができる。このため、このように変形したものは、以下の特許請求の範囲及びその同等物の範囲内に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)マトリックス材と、
b)前記マトリックス材の少なくとも一部分に配置された第1の一方向配列カーボン・ナノチューブ(CNT)浸出繊維と、
を含んで構成された複合材料。
【請求項2】
前記マトリックス材は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、セラミック及びセメントから選択される請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維に浸出するCNTsは、多層CNTs、2層CNTs、単層CNTs及びこれらの混合物から選択される請求項1に記載の複合材料。
【請求項4】
前記CNTsは、多層CNTsである請求項3に記載の複合材料。
【請求項5】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維に浸出するCNTsは、繊維軸に略平行に配列される請求項1に記載の複合材料。
【請求項6】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維に浸出するCNTsは、繊維軸に略垂直に配列される請求項1に記載の複合材料。
【請求項7】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維に浸出するCNTsは、前記複合材料の約0.01重量%から約1重量%の範囲で存在する請求項1に記載の複合材料。
【請求項8】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維に浸出するCNTsの長さが、約100ナノメートルから約5ミクロンに及ぶ請求項1に記載の複合材料。
【請求項9】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維の繊維は、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維及びこれらの混合物から選択される請求項1に記載の複合材料。
【請求項10】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維が連続繊維を含んで構成された請求項1に記載の複合材料。
【請求項11】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維が複数の不連続繊維を含んで構成された請求項1に記載の複合材料。
【請求項12】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維が前記複合材料の表面に配置された請求項1に記載の複合材料。
【請求項13】
第2の一方向配列CNT浸出繊維を更に含んで構成された請求項1に記載の複合材料。
【請求項14】
前記第2の一方向配列CNT浸出繊維が、前記第1の一方向配列CNT浸出繊維に対して、約0度から約90度の角度で配置された請求項13に記載の複合材料。
【請求項15】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維と前記第2の一方向配列CNT浸出繊維との間に配置される絶縁層を更に含んで構成された請求項13に記載の複合材料。
【請求項16】
a)複合材料であって、
i)マトリックス材、及び
ii)前記マトリックス材の少なくとも一部分に配置された第1の一方向配列カーボン・ナノチューブ(CNT)浸出繊維、
を含んで構成された複合材料と、
b)電荷のやりとりを行うために前記複合材料の周縁部に配置された電極ネットワークと、
を含んで構成された製品。
【請求項17】
前記複合材料の全域にわたる抵抗変化を検出するために前記電極ネットワークに接続された検知回路を更に含んで構成された請求項16に記載の製品。
【請求項18】
前記検知回路は、前記複合材料における、ひずみ、疲労、損傷及び亀裂の少なくとも1つの位置を測定し、かつ、マッピングすることが可能である請求項17に記載の製品。
【請求項19】
前記マトリックス材は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、セラミック及びセメントから選択される請求項16に記載の製品。
【請求項20】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維に浸出するCNTsは、多層CNTs、2層CNTs、単層CNTs及びこれらの混合物から選択される請求項16に記載の製品。
【請求項21】
前記CNTsは多層CNTsである請求項20に記載の製品。
【請求項22】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維に浸出するCNTsは、繊維軸に略平行に配列される請求項16に記載の製品。
【請求項23】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維に浸出するCNTsは、繊維軸に略垂直に配列される請求項16に記載の製品。
【請求項24】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維に浸出するCNTsは、前記複合材料の約0.01重量%から約1重量%の範囲で存在する請求項16に記載の製品。
【請求項25】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維に浸出するCNTsの長さは、約100ナノメートルから約5ミクロンに及ぶ請求項16に記載の製品。
【請求項26】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維の繊維は、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維及びこれらの混合物から選択される請求項16に記載の製品。
【請求項27】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維が連続繊維を含んで構成された請求項16に記載の製品。
【請求項28】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維が複数の不連続繊維を含んで構成された請求項16に記載の製品。
【請求項29】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維が前記複合材料の表面に配置された請求項16に記載の製品。
【請求項30】
第2の一方向配列CNT浸出繊維を更に含んで構成された請求項16に記載の製品。
【請求項31】
前記第2の一方向配列CNT浸出繊維が、前記第1の一方向配列CNT浸出繊維に対して、約0度から約90度の角度で配置された請求項30に記載の製品。
【請求項32】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維と前記第2の一方向配列CNT浸出繊維との間に配置される絶縁層を更に含んで構成された請求項30に記載の製品。
【請求項33】
前記電極ネットワークが、銀塗料で加工される送信及び受信の電極ネットワークを含んで構成された請求項16に記載の製品。
【請求項34】
前記電極ネットワークが、埋め込まれた銅ピンを含んで構成される送信及び受信の電極ネットワークを含んで構成された請求項16に記載の製品。
【請求項35】
A)複合材料を含んで構成された製品であって、前記複合材料が、
a)マトリックス材、及び
b)前記マトリックス材の少なくとも一部分に配置された第1の一方向配列カーボン・ナノチューブ(CNT)浸出繊維、
を含んで構成された製品と、
B)前記複合材料の全域にわたる抵抗変化を検出するために前記複合材料に接続された検知回路と、
を含んで構成されたシステム。
【請求項36】
前記複合材料を前記検知回路に接続する電極ネットワークを更に含んで構成された請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記電極ネットワークに対する電流供給源を更に含んで構成された請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記検知回路は、前記複合材料における、ひずみ、疲労、損傷及び亀裂の少なくとも1つの位置を測定し、かつ、マッピングすることが可能である請求項35に記載のシステム。
【請求項39】
前記検知回路から抵抗データを受けるために備えられたコンピュータを更に含んで構成され、前記コンピュータが損傷検知アルゴリズムを有するソフトウェアを備えた請求項35に記載のシステム。
【請求項40】
前記複合材料における、ひずみ、疲労、損傷及び亀裂の位置を表示するグラフィカル・ユーザー・インターフェースを更に含んで構成された請求項39に記載のシステム。
【請求項41】
前記マトリックス材は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、セラミック及びセメントから選択される請求項35に記載のシステム。
【請求項42】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維に浸出したCNTsは、多層CNTs、2層CNTs、単層CNTs及びこれらの混合物から選択される請求項35に記載のシステム。
【請求項43】
前記CNTsは多層CNTsである請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維に浸出したCNTsは、繊維軸に略平行に配列される請求項35に記載のシステム。
【請求項45】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維に浸出したCNTsは、繊維軸に略垂直に配列される請求項35に記載のシステム。
【請求項46】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維に浸出したCNTsは、前記複合材料の約0.01重量%から約1重量%の範囲で存在する請求項35に記載のシステム。
【請求項47】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維に浸出するCNTsの長さが、約100ナノメートルから約5ミクロンに及ぶ請求項35に記載のシステム。
【請求項48】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維は、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維及びこれらの混合物から選択される請求項35に記載のシステム。
【請求項49】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維が連続繊維を含んで構成された請求項35に記載のシステム。
【請求項50】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維が複数の不連続繊維を含んで構成された請求項35に記載のシステム。
【請求項51】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維が前記複合材料の表面に配置された請求項35に記載のシステム。
【請求項52】
第2の一方向配列CNT浸出繊維を更に含んで構成された請求項35に記載のシステム。
【請求項53】
前記第2の一方向配列CNT浸出繊維が、前記第1の一方向配列CNT浸出繊維に対して、約0度から約90度の角度で配置された請求項52に記載のシステム。
【請求項54】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維と前記第2の一方向配列CNT浸出繊維との間に配置される絶縁層を更に含んで構成された請求項52に記載のシステム。
【請求項55】
前記送信及び受信の電極ネットワークが銀塗料で加工される電極を含んで構成された請求項35に記載のシステム。
【請求項56】
前記送信及び受信の電極ネットワークが埋め込まれた銅ピン電極を含んで構成された請求項35に記載のシステム。
【請求項57】
1)システムを提供することであって、前記システムが、
A)製品であって、これに含まれる複合材料が、
a)マトリックス材、及び
b)前記マトリックス材の少なくとも一部分に配置された第1の一方向配列カーボン・ナノチューブ(CNT)浸出繊維、
を含んで構成される製品と、
B)前記複合材料の全域にわたる抵抗変化を検出するために前記複合材料に接続された検知回路と、
を含んで構成されるシステムを提供することと、
2)前記検知回路が前記複合材料における傷又は欠陥に関連する抵抗変化を検出することができるように、前記複合材料に電流を供給することと、
を含んで構成された方法。
【請求項58】
前記検知回路の出力に基づいて、前記複合材料における前記欠陥又は異常の位置を決定するための手段を更に含んで構成された請求項57に記載された方法。
【請求項59】
前記欠陥又は異常は、前記複合材料における、ひずみ、疲労、損傷及び亀裂の少なくとも1つから選択される請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記システムは、前記検知回路から抵抗データを受けるために備えられたコンピュータを更に含んで構成され、前記コンピュータが損傷検知アルゴリズムを有するソフトウェアを備えた請求項57に記載の方法。
【請求項61】
前記複合材料における、ひずみ、疲労、損傷及び亀裂の位置を表示するグラフィカル・ユーザー・インターフェースを更に含んで構成された請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記マトリックス材は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、セラミック及びセメントから選択される請求項57に記載の方法。
【請求項63】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維に浸出したCNTsは、多層CNTs、2層CNTs、単層CNTs及びこれらの混合物から選択される請求項57に記載の方法。
【請求項64】
前記CNTsは多層CNTsである請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維に浸出したCNTsは、繊維軸に略平行に配列される請求項57に記載の方法。
【請求項66】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維に浸出したCNTsは、繊維軸に略垂直に配列される請求項57に記載の方法。
【請求項67】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維に浸出したCNTsは、前記複合材料の約0.01重量%から約1重量%の範囲で存在する請求項57に記載の方法。
【請求項68】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維に浸出するCNTsの長さが、約100ナノメートルから約5ミクロンに及ぶ請求項57に記載の方法。
【請求項69】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維は、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維及びこれらの混合物から選択される請求項57に記載の方法。
【請求項70】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維が連続繊維を含んで構成された請求項57に記載の方法。
【請求項71】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維が複数の不連続繊維を含んで構成された請求項57に記載の方法。
【請求項72】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維が前記複合材料の表面に配置された請求項57に記載の方法。
【請求項73】
第2の一方向配列CNT浸出繊維を更に含んで構成された請求項57に記載の方法。
【請求項74】
前記第2の一方向配列CNT浸出繊維は、前記第1の一方向配列CNT浸出繊維に対して、約0度から約90度の角度で配置された請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記第1の一方向配列CNT浸出繊維と前記第2の一方向配列CNT浸出繊維との間に配置される絶縁層を更に含んで構成された請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記システムが送信及び受信の電極ネットワークを更に含んで構成された請求項57に記載の方法。
【請求項77】
前記送信及び受信の電極ネットワークが銀塗料で加工される電極を含んで構成された請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記送信及び受信の電極ネットワークが、埋め込まれた銅ピン電極を含んで構成された請求項76に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2013−508722(P2013−508722A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535248(P2012−535248)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/052551
【国際公開番号】WO2011/049801
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(511201392)アプライド ナノストラクチャード ソリューションズ リミテッド ライアビリティー カンパニー (31)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED NANOSTRUCTURED SOLUTIONS, LLC
【Fターム(参考)】