説明

搬送システム、及び搬送システムの制御方法

【課題】搬送システムにおいて、簡単な構成で、確実に搬送車同士が衝突してしまうことを防止する。
【解決手段】搬送システムは、合流箇所を有する軌道(100)と、軌道を夫々走行する複数の搬送車(210、220)と、搬送車の走行方向を基準として、軌道のうち少なくとも合流箇所の手前にある二つの軌道部分の各々の左側の縁に設けられた左部及び右側の縁に設けられた右部を有し、二つの軌道部分の一方における左部及び他方における右部間並びに一方における右部及び他方における左部間で、信号を伝達可能な伝達手段(310、320)とを備える。搬送車は、信号を右部及び左部の一方を介して送信する送信手段(410、420)、並びに信号を右部及び左部の他方を介して受信する第1受信手段(510、520)及び信号を右部及び左部の一方を介して受信する第2受信手段(610、620)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体装置製造用の各種基板等を搬送する搬送車等を備えた搬送システム、及び搬送システムの制御方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の搬送システムとして、複数の搬送車が軌道上を走行することによって、被搬送物を搬送するというものがある。軌道は、例えば分岐点や合流点を有しており、搬送車が複数に分岐された軌道上を走行することによって、様々な位置へと被搬送物を搬送することが可能とされる。
【0003】
このような搬送システムにおいては、合流点において搬送車同士が互いに衝突しないように、衝突防止システムが備えられたものがある。例えば特許文献1及び特許文献2では、合流点付近に通信線を設け、搬送車同士が通信を行うことで互いを認識し、衝突を防止するというが技術が開示されている。
【0004】
また、上述した通信に不具合等が発生することを想定して、通信が適切に行われていない場合には、搬送車の走行を停止させるという技術も提案されている。例えば特許文献3では、通信に用いられる信号とは別にベース信号を出力しておくことで、通信の不具合を検出するという技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−301626号公報
【特許文献2】特開2005−115590号公報
【特許文献3】特開2004−46373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献3に示すような技術においては、通信の不具合を検出するためのベース信号を出力する装置等を別途設けねばならず、それによってシステムの複雑化やコストの増大を招いてしまうという技術的問題点がある。
【0007】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、より簡単な構成で、確実に搬送車同士が衝突してしまうことを防止可能な搬送システム、及び搬送システムの制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の搬送システムは上記課題を解決するために、合流箇所を有する軌道と、該軌道を夫々走行する複数の搬送車と、前記搬送車の走行方向を基準として、前記軌道のうち少なくとも前記合流箇所の手前にある二つの軌道部分の各々の左側の縁に設けられた左部及び右側の縁に設けられた右部を有し、前記二つの軌道部分の一方における前記左部及び他方における前記右部間並びに前記一方における前記右部及び前記他方における前記左部間で、信号を伝達可能な伝達手段とを備え、前記搬送車は、前記合流箇所での衝突防止用に、前記信号を前記右部及び前記左部の一方を介して送信する送信手段、並びに前記信号を前記右部及び前記左部の他方を介して受信する第1受信手段を備え、前記伝達手段を介しての伝達動作確認用に、前記送信手段により送信された信号を前記右部及び前記左部の一方を介して受信する第2受信手段を備える。
【0009】
本発明に係る搬送システムによれば、その動作時に、複数の搬送車が搬送を行うために軌道を走行する。軌道は合流箇所を有しており、合流箇所の手前にある二つの軌道部分の各々の左側の縁には左部、右側の縁には右部が設けられている。二つの軌道部分の一方における左部及び他方における右部間、並びに一方における右部及び他方における左部間では、伝達手段によって信号を伝達可能とされている。
【0010】
ここで本発明では特に、搬送を行う搬送車には、信号を右部及び左部の一方を介して送信する送信手段、信号を右部及び左部の他方を介して受信する第1受信手段に加えて、送信手段により送信された信号を右部及び左部の一方を介して受信する第2受信手段が備えられている。即ち、複数の搬送車の夫々に、送信手段、第1受信手段、及び第2受信手段が備えられている。
【0011】
信号の送受信の際には、先ず二つの軌道部分のうち一方の軌道部分を走行している搬送車(以下、適宜「第1搬送車」と称する)における送信手段から、右部及び左部の一方を介して信号が送信される。送信された信号は、伝達手段によって伝達され、二つの軌道部分のうち他方の軌道部分を走行している搬送車(以下、適宜「第2搬送車」と称する)における第1受信手段によって受信される。この際、第1受信手段は、右部及び左部の他方を介して信号を受信する。即ち、第1搬送車から右部を介して送信された信号は、第2搬送車に左部を介して受信され、第1搬送車から左部を介して送信された信号は、第2搬送車に右部を介して受信される。
【0012】
第2搬送車は、上述したように第1搬送車が送信した信号を受信することで、一方の軌道部分を第1搬送車が走行していると認識する。よって、合流箇所において第1搬送車と第2搬送車とが互いに衝突してしまうことを防止することが可能である。
【0013】
本発明では更に、第1搬送車から右部及び左部の一方を介して送信された信号は、伝達手段によって伝達され、第1搬送車の第2受信手段に右部及び左部の一方を介して受信される。即ち、第1搬送車の右部を介して送信された信号は、第1搬送車の右部を介して受信され、第1搬送車の左部を介して送信された信号は、第1搬送車の左部を介して受信される。
【0014】
この際、信号の伝達が正常に行われていれば、第2受信手段により信号が受信される。信号の伝達が正常に行われていなければ、第2受信手段により信号は受信されない。即ち、第1搬送車は、自らが送信した信号を受信することで、信号の伝達が正常に行われているか否かを知ることができる。
【0015】
仮に、伝達手段の断線や送信手段の故障等によって、信号の伝達が正常に行われていないとすると、第1搬送車から送信された信号は、第2搬送車に受信されない。よって、合流箇所における衝突を防止することができなくなるというおそれがある。
【0016】
しかるに本発明では特に、上述したように、第2受信手段によって信号が受信されているか否かによって、信号の伝達が正常に行われているか否かを検出することができる。よって、信号の伝達が正常に行われていない場合に、速やかに対策を講じることが可能となり、伝達手段の合流箇所における衝突をより確実に防止することができる。この際特に、搬送車の各々に第2受信手段を設けるだけでよく、例えば軌道上に新たな部材等を設けなくともよい。即ち、搬送システム全体の複雑化やコストの増大を防止することが可能である。
【0017】
以上説明したように、本発明に係る搬送システムによれば、複数の搬送車が夫々、送信手段、第1受信手段、及び第2受信手段を備えることで、簡単な構成で、より確実に合流箇所における搬送車同士の衝突を防止することができる。
【0018】
本発明の搬送システムの一態様では、前記搬送車の前記合流箇所への進入を検出する検出手段と、前記進入が検出されると、前記信号を送信するように、前記送信手段を制御する送信制御手段と、前記第1受信手段が前記信号を受信すると、停止するように、前記受信した第1受信手段を備える前記搬送車を制御する走行制御手段と、前記進入が検出されており、且つ前記第2受信手段が前記信号を受信しないと、前記伝達動作に異常があると判定する判定手段とを更に備える。
【0019】
この態様によれば、検出手段によって、搬送車の合流箇所への進入が検出される。尚、このような検出は、搬送車が合流箇所へ進入する前に又は直前若しくは直後に行われる。
【0020】
搬送車の合流箇所への進入が検出されると、送信制御手段が第1搬送車における送信手段を制御して、信号を送信させる。そして、送信された信号を第2搬送車の第1受信手段が受信した場合には、走行制御手段が第2搬送車の走行を停止させる。よって、第1搬送車及び第2搬送車が、合流地点において互いに衝突してしまうことを確実に防止できる。
【0021】
また、搬送車の合流箇所への進入が検出されており、且つ第1搬送車の第2受信手段が信号を受信していない場合は、判定手段において伝達動作に異常があると判定される。即ち、上述したような、伝達手段や送信手段の故障等によって、信号の伝達が正常に行われていない状態であると判定される。このような判定が行われることで、伝達動作の異常をより容易に且つ確実に知ることが可能となる。よって、信号の伝達が正常に行われていない場合に、速やかに対策を講じることが可能となり、伝達手段の合流箇所における衝突をより確実に防止することができる。
【0022】
以上説明したように、本態様に係る搬送システムによれば、より確実に合流箇所における搬送車同士の衝突を防止することができる。
【0023】
本発明の搬送システムの他の態様では、前記伝達手段は、ループ状に敷設された導線であり、前記信号は、前記導線における誘導現象によって伝達される。
【0024】
この態様によれば、伝達手段は、ループ状に敷設された導線で構成されている。ループ状の導線は、例えば軌道の合流箇所において、一方の軌道部分から他方の軌道部分にかけて敷設される。尚、ループ状の導線は、1つの合流箇所に複数敷設されていてもよい。
【0025】
搬送車における送信手段から送信された信号は、導線における誘導現象によって伝達される。ここで、例えば導線が断線したとすると、導線のループが途切れるため、信号は伝達されなくなる。よって、上述したように、第2受信手段が信号を受信しているか否かにより、確実に導線の断線を検出することが可能となる。従って、信号を正常に伝達するために、速やかに対策を講じることが可能である。
【0026】
本発明の搬送システムの他の態様では、前記検出手段は、前記合流箇所の入口に設けられた送信開始マーク及び前記搬送車に設けられており前記送信開始マークを読取る読取り手段を有しており、該読取り手段が前記送信マークを読取った際に、前記進入を検出する。
【0027】
この態様によれば、軌道における合流箇所の入口には、送信開始マークが設けられている。尚、「合流箇所の入口」とは、搬送車が合流箇所に進入した際に、後述する読取り手段によって読取り可能となるような位置である。
【0028】
搬送車には、上述した送信マークを読取る読取り手段が設けられている。そして、読取り手段が送信マークを読取った際に、搬送車が合流箇所に進入したことを検出する。よって、搬送車が合流箇所に進入したことを、より確実に検出することが可能となる。従って、上述した送信制御手段及び走行制御手段を的確に動作させることができ、より確実に合流箇所における搬送車同士の衝突を防止することが可能である。
【0029】
本発明の搬送システムの他の態様では、前記走行制御手段は、前記伝達動作に異常があると判定された場合に、停止するように、前記搬送車を制御する。
【0030】
この態様によれば、伝達動作に異常があると判定された場合には、搬送車が走行制御手段によって停止するように制御される。即ち、第1搬送車の送信手段から信号を送信するように制御しているにもかかわらず、第2受信手段において信号が受信されない場合は、信号が他方の搬送車の第1受信手段によって信号が受信されていなくとも、搬送車は停止するように制御される。尚、ここで停止するように制御される搬送車は、搬送システムにおける全ての搬送車であってもよいし、合流箇所に進入している搬送車のみ或いは合流箇所付近を走行している搬送車のみであってもよい。
【0031】
伝達動作に異常があると判定された場合には、上述したような搬送車同士の衝突を防止するという効果が得られていないというおそれがある。これに対し、本態様では特に、伝達動作に異常があると判定された場合には、搬送車は停止するように制御される。従って、より確実に合流箇所における搬送車同士の衝突を防止することが可能である。
【0032】
本発明の搬送システムの制御方法は上記課題を解決するために、合流箇所を有する軌道と、該軌道を夫々走行する複数の搬送車と、前記搬送車の走行方向を基準として、前記軌道のうち少なくとも前記合流箇所の手前にある二つの軌道部分の各々の左側の縁に設けられた左部及び右側の縁に設けられた右部を有し、前記二つの軌道部分の一方における前記左部及び他方における前記右部間並びに前記一方における前記右部及び前記他方における前記左部間で、信号を伝達可能な伝達手段とを備え、前記搬送車は、前記信号を前記右部及び前記左部の一方を介して送信する送信手段、並びに前記信号を前記右部及び前記左部の他方を介して受信する第1受信手段を備え、前記送信手段により送信された信号を前記右部及び前記左部の一方を介して受信する第2受信手段を備える搬送システムにおいて、前記合流箇所での衝突防止及び前記伝達手段を介しての伝達動作確認を行う制御方法であって、前記搬送車の前記合流箇所への進入を検出する検出工程と、前記進入が検出されると、前記信号を送信するように、前記送信手段を制御する送信制御工程と、前記第1受信手段が前記信号を受信すると、停止するように、前記受信した第1受信手段を備える前記搬送車を制御する走行制御工程と、前記進入が検出されており、且つ前記第2受信手段が前記信号を受信しないと、前記伝達動作に異常があると判定する判定工程とを備える。
【0033】
本発明に係る搬送システムの制御方法によれば、上述した本発明の搬送システムの場合と同様に、より確実に合流箇所における搬送車同士の衝突を防止することが可能である。
【0034】
尚、本発明の搬送システムの制御方法においても、上述した本発明の搬送システムにおける各種態様と同様の各種態様を採ることが可能である。
【0035】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。尚、ここでは、懸垂式の搬送車(OHT:Overhead Hoist Transfer)を備える搬送システムを例にとり説明する。
【0037】
先ず、実施形態に係る搬送システムの構成について図1及び図2を参照して説明する。ここに図1は、実施形態に係る搬送システムの構成を示す上面図であり、図2は、受信部、送信部及び送信確認部の具体的構成を示す概略図である。
【0038】
図1において、本実施形態に係る搬送システムは、軌道100と、本発明の「搬送車」の一例である第1搬送車210及び第2搬送車220と、本発明の「伝達手段」の一例である第1誘導線310及び第2誘導線と、本発明の「送信手段」の一例である第1送信部410及び第2送信部420と、本発明の「第1受信手段」の一例である第1受信部510及び第2受信部520と、本発明の「第2受信手段」の一例である第1送信確認部610及び第2送信確認部620と、本名発明の「送信開始マーク」の一例である第1開始マーク710及び第2開始マーク720と、第1停止マーク810及び第2停止マーク820と、送信停止マーク900と、コントローラ1000とを備えて構成されている。
【0039】
軌道100は、例えば天井に敷設されており、アルミニウムやステンレス等の金属から構成される。また、第1軌道部分110及び第2軌道部分120を有しており、合流箇所において、二つの軌道部分が一つに合流している。尚、ここでは一つの合流箇所のみを示しているが、このような合流箇所が軌道100における複数箇所に設けられていてもよい。また本実施形態では、二つの軌道部分が合流する場合について説明するが、例えば3つ以上の軌道部分が合流するような合流箇所を有する場合であっても、後述する本発明の効果を得ることが可能である。
【0040】
第1搬送車210及び第2搬送車220は、夫々軌道100に吊下げられる形で取り付けられており、軌道100に沿って走行することで、半導体基板等の被搬送物を搬送する。尚、典型的には、より多く(例えば数十台、或いは数百台)の搬送車が軌道100上に備えられるが、以下では説明の便宜上、第1搬送車210及び第2搬送車220の2台の搬送車を用いて説明する。
【0041】
第1誘導線310及び第2誘導線320は、ループ状の導電線であり、第1軌道部分110及び第2軌道部分120が合流する合流箇所に敷設されている。第1誘導線310は、図に示すように、第1軌道部分110における、搬送車の進行方向を基準として左側(以下適宜、単に「左側」と称する)の側方から、第2軌道部分120における、搬送車の進行方向を基準として右側(以下適宜、単に「右側」と称する)の側方にかけて敷設されている。第2誘導線320は、第1軌道部分110における右側の側方から、第2軌道部分における左側の側方にかけて敷設されている。第1誘導線310及び第2誘導線320は、第1軌道部分110を走行する搬送車(即ち、第1搬送車210)及び第2軌道部分120を走行する搬送車(即ち、第2搬送車220)間で、信号を伝達することが可能である。
【0042】
第1送信部410及び第2送信部420は、例えばコイルであり、夫々第1搬送車210及び第2搬送車220の左側の縁に設けられている。第1送信部410及び第2送信部420は、上述した第1誘導線310及び第2誘導線320に対して誘導電流を誘起することで、信号を送信する。
【0043】
第1受信部510及び第2受信部520は、例えばコイルであり、夫々第1搬送車210及び第2搬送車220の右側の縁(即ち、上述した第1送信部410及び第2送信部420とは反対側の縁)に設けられている。第1受信部510及び第2受信部520は、第1誘導線310及び第2誘導線320を流れる電流を検知することで、信号を受信する。
【0044】
第1送信確認部610及び第2送信確認部620は、例えばコイルであり、夫々第1搬送車210及び第2搬送車220の左側の縁(即ち、上述した第1送信部410及び第2送信部420と同じ側の縁)に設けられている。第1送信確認部610及び第2送信確認部620は、第1誘導線310及び第2誘導線320を流れる電流を検知することで、信号を受信する。
【0045】
以下に、第1搬送車210を例にとり、上述した送信部、受信部及び送信確認部の具体的構成について説明する。
【0046】
図2において、第1送信部410及び第1送信確認部610は、ループ状の第1誘導線310の内部にコイルが配置された形で設けられている。第1受信部510は、ループ状の第2誘導線320の内部にコイルが配置された形で設けられている。即ち、第1受信部510は、第2搬送車220における第2送信部420が送信した信号を受信する。第1送信確認部610は、第1送信部410が送信した信号を受信する。尚、第1送信部410、第1受信部510及び第1送信確認部610は夫々、後述するコントローラ1000に電気的に接続されている。
【0047】
図1に戻り、第1開始マーク710及び第2開始マーク720は、例えば複数の搬送車の各々に設けられた、本発明の「読取り手段」の一例である読取り部(図示せず)によって読取り可能なマークである。第1開始マーク710及び第2開始マーク720は、搬送車が軌道100における合流箇所に達した際(例えば、上述した送信部、受信部及び送信確認部が、誘導線による信号の送受信を行うことが可能となった際)に、該搬送車に設けられた読取り部によって読取られる位置に設けられる。
【0048】
第1停止マーク810及び第2停止マーク820は、上述した第1開始マーク710及び第2開始マーク720と同様に、読取り部によって読取り可能なマークである。第1停止マーク810及び第2停止マーク820は、例えば図に示すように、合流箇所における合流点の直前に設けられる。
【0049】
送信停止マーク900も、上述した第1開始マーク710及び第2開始マーク720と同様に、読取り部によって読取り可能なマークである。送信停止マーク900は、図に示すように、合流箇所を通過した搬送車によって読取られるような位置に設けられる。
【0050】
コントローラ1000は、本発明の「送信制御手段」の一例である送信制御部1100と、本発明の「走行制御手段」の一例である走行制御部1200と、本発明の「判定手段」の一例である判定部1300とを有しており、例えばメモリや演算回路等を含んで構成されている。コントローラ1000は、搬送システムにおける各部と電気的に接続されており、システム全体の制御を行う。
【0051】
次に、実施形態に係る搬送システムの動作について、図1に加えて、図3から図5を参照して説明する。ここでは、信号が正常に伝達されている場合と、正常に伝達されていない場合に分けて説明する。尚、信号が正常に伝達されない場合とは、例えば送信部の故障により信号が送信されない場合や、誘導線の断線により信号が伝達されない場合等である。
【0052】
以下では、軌道100における第1軌道部分110から第1搬送車210が合流箇所に達し、その直後に第2軌道部分120から第2搬送車220が合流箇所に達する場合を例にとり説明する。
【0053】
<ケース1>
先ず、信号が正常に伝達されている場合について、図1、図3及び図4を参照して説明する。ここに図3は、ケース1における搬送システムの動作を示すフローチャートであり、図4は、ケース1における搬送車の動作を示す上面図である。
【0054】
図3において、実施形態に係る搬送システムの動作時に、コントローラ1000は、第1開始マーク710が読み取られるか否かにより、搬送車が合流箇所へ進入したか否かを常時モニタリングしている(ステップS10)。第1搬送車210が合流箇所に達すると(即ち、図1に示すような位置に達すると)、第1搬送車210に設けられた読取り部によって、第1開始マーク710が読取られる。これにより、第1搬送車210が合流箇所に進入したことが検出されると(ステップS10:YES)、送信制御部1100は、第1送信部410による信号の送信を開始させる(ステップS11)。送信された信号は、第1誘導線310によって伝達される。
【0055】
ここで、図1に示すように、第2軌道部分120を第2搬送車220が走行していたとすると、伝達された信号は、第2搬送車220における第2受信部520によって受信される(ステップS12:YES)。第2受信部520が信号を受信すると、コントローラ1000は合流箇所において、搬送車同士が衝突するおそれがあることを認識する。尚、伝達された信号は、第1送信確認部610によっても受信される。
【0056】
上述したような場合(ステップS12:YES)、走行制御部1200は、第2搬送車220の走行を停止させるように制御する。制御された第2搬送車220は、第2停止マーク820を読取る位置まで走行した後に停止する(ステップS13)。尚、走行を制御される搬送車は第2搬送車220でなくともよく、第1搬送車210の走行を停止させるように制御しても、後述する効果を得ることが可能である。また、走行停止の制御を受けてから停止するまでは、通常走行から徐行に切り替える(即ち、走行速度を減少させる)ようにしてもよい。
【0057】
また、走行を制御された第2搬送車220は、第2停止マーク820の位置まで走行する際に、第2開始マーク720を読取ることになるが、この場合には、第2送信手段420から信号を送信するようにしなくともよい。
【0058】
図4において、第1搬送車210は、第2搬送車220が走行を停止している間に合流箇所を通過する。そして、送信停止マーク900が読取り部によって読取られると、信号の送信を停止する(ステップS14)。
【0059】
他方、走行を停止した第2搬送車220は、信号を受信している間は停止し続け、信号が受信されなくなると(即ち、第1搬送車が合流箇所を通過して、信号が送信されなくなると)、走行を再開する(S15)。
【0060】
他方、第2軌道部分120を第2搬送車220が走行していない場合には、伝達された信号は、第2搬送車220における第2受信部520によって受信されないので(ステップS12:NO)、第1搬送車210が合流箇所を通過するに際して、搬送車を停止させる制御を特に行うことはない。
【0061】
上述したように、信号が正常に伝達されている場合には、一方の軌道部分を走行する搬送車(即ち、第1搬送車210)からの信号を、他方の軌道部分を走行する搬送車(即ち、第2搬送車220)が受信し、いずれかの搬送車が走行を制御されることで、搬送車が互いに衝突してしまうことを防止することができる。
【0062】
<ケース2>
次に、信号が正常に伝達されていない場合について、図1に加え、図5を参照して説明する。ここに図5は、ケース2における搬送システムの動作を示すフローチャートである。
【0063】
図5において、実施形態に係る搬送システムの動作時に、コントローラ1000は、第1開始マーク710が読み取られるか否かにより、搬送車が合流箇所へ進入したか否かを常時モニタリングしている(ステップS20)。第1搬送車210が合流箇所に達すると(ステップS20:YES)、上述したケース1の場合と同様に、第1搬送車210における第1送信部410は、信号の送信を開始するように制御される(ステップS21)。
【0064】
ここで特に、信号が正常に伝達されない場合には、第2搬送車が軌道部分120を走行している場合であっても、第2受信部520において信号が受信されない(ステップS22:YES)。このため、上述したケース1とは異なり、コントローラ1000は、搬送車が合流箇所において衝突する可能性があることを認識することができない。
【0065】
上述したような場合(ステップS22:YES)において、信号が正常に伝達されない状態であれば、本実施形態に係る搬送システムでは、第1送信確認部610においても信号が受信されない(ステップS23:YES)。このように、第1送信部410から信号を送信するように制御しているにもかかわらず、第1送信確認部610において信号が受信されない場合には、判定部1300が、信号が正常に伝達されていないと判定する。これにより、第1搬送車210は第1搬送車210自身で、信号が正常に伝達されていないことを検出することができる。よって、例えば第1搬送車210と第2搬送車220とが、コントローラ1000等を介して信号の送受信に関する情報を共有していなくとも、信号が正常に伝達されていないことを検出することができる。
【0066】
続いて、走行制御部1200は、搬送システムにおける全ての搬送車の走行を停止するように制御する(ステップS24)。これにより、例えば正常に動作していない送信部又は誘導線に対して、速やかに対応策をとることが可能となる。尚、搬送システムの動作を止めずに信号を正常に伝達できるようにすることが可能であれば、全ての搬送車の走行を停止せずともよく、例えば所定の搬送車(例えば、合流箇所付近を走行している搬送車)のみを停止するようにしてもよい。
【0067】
他方、第2受信部520において信号が受信されれば(ステップS22:NO)、ケース1で説明したような動作が行われる。また、第1送信確認部610において信号が受信されれば(ステップS23:NO)、信号が正常に伝達されており、合流箇所に第2搬送車220が進入していないと判定する。即ち、第1搬送車210が合流箇所を通過するに際して、搬送車を停止させる制御を特に行うことはない。
【0068】
上述したように、本実施形態に係る搬送システムによれば、ケース1において説明したように、信号が正常に伝達されている場合に加え、ケース2のように信号が正常に伝達されていない場合であっても、確実に搬送車同士の衝突を防止することができる。
【0069】
尚、上述したケース1及びケース2では、第1搬送車210が先に合流箇所に進入する場合を説明したが、第2搬送車220が先に進入する場合には、第2搬送車220における第2送信部420から信号が送信され、上述したような動作が行われる。また、搬送車の走行制御等については、例えば軌道部分に優先順位をつけて、第1軌道部分110を走行する搬送車が後に合流箇所に進入した場合であっても、先に合流箇所を通過させるように制御してもよい。
【0070】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う搬送システム及び搬送システムの制御方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】実施形態に係る搬送システムの構成を示す上面図である。
【図2】受信部、送信部及び送信確認部の具体的構成を示す概略図である。
【図3】ケース1における搬送システムの動作を示すフローチャートである。
【図4】ケース1における搬送車の動作を示す上面図である。
【図5】ケース2における搬送システムの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0072】
100…軌道部、110…第1軌道部分、120…第2軌道部分、210…第1搬送車、220…第2搬送車、310…第1誘導線、320…第2誘導線、410…第1送信部、420…第2送信部、510…第1受信部、520…第2受信部、610…第1送信確認部、620…第2送信確認部、710…第1開始マーク、720…第2開始マーク、810…第1停止マーク、820…第2停止マーク、900…送信停止マーク、1000…コントローラ、1100…送信制御部、1200…走行制御部、1300…判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合流箇所を有する軌道と、
該軌道を夫々走行する複数の搬送車と、
前記搬送車の走行方向を基準として、前記軌道のうち少なくとも前記合流箇所の手前にある二つの軌道部分の各々の左側の縁に設けられた左部及び右側の縁に設けられた右部を有し、前記二つの軌道部分の一方における前記左部及び他方における前記右部間並びに前記一方における前記右部及び前記他方における前記左部間で、信号を伝達可能な伝達手段と
を備え、
前記搬送車は、前記合流箇所での衝突防止用に、前記信号を前記右部及び前記左部の一方を介して送信する送信手段、並びに前記信号を前記右部及び前記左部の他方を介して受信する第1受信手段を備え、前記伝達手段を介しての伝達動作確認用に、前記送信手段により送信された信号を前記右部及び前記左部の一方を介して受信する第2受信手段を備える
ことを特徴とする搬送システム。
【請求項2】
前記搬送車の前記合流箇所への進入を検出する検出手段と、
前記進入が検出されると、前記信号を送信するように、前記送信手段を制御する送信制御手段と、
前記第1受信手段が前記信号を受信すると、停止するように、前記受信した第1受信手段を備える前記搬送車を制御する走行制御手段と、
前記進入が検出されており、且つ前記第2受信手段が前記信号を受信しないと、前記伝達動作に異常があると判定する判定手段と
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記伝達手段は、ループ状に敷設された導線であり、
前記信号は、前記導線における誘導現象によって伝達される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送システム。
【請求項4】
前記検出手段は、前記合流箇所の入口に設けられた送信開始マーク及び前記搬送車に設けられており前記送信開始マークを読取る読取り手段を有しており、該読取り手段が前記送信マークを読取った際に、前記進入を検出することを特徴とする請求項2又は3に記載の搬送システム。
【請求項5】
前記走行制御手段は、前記伝達動作に異常があると判定された場合に、停止するように、前記搬送車を制御することを特徴とする2から4のいずれか一項に記載の搬送システム。
【請求項6】
合流箇所を有する軌道と、該軌道を夫々走行する複数の搬送車と、前記搬送車の走行方向を基準として、前記軌道のうち少なくとも前記合流箇所の手前にある二つの軌道部分の各々の左側の縁に設けられた左部及び右側の縁に設けられた右部を有し、前記二つの軌道部分の一方における前記左部及び他方における前記右部間並びに前記一方における前記右部及び前記他方における前記左部間で、信号を伝達可能な伝達手段とを備え、前記搬送車は、前記信号を前記右部及び前記左部の一方を介して送信する送信手段、並びに前記信号を前記右部及び前記左部の他方を介して受信する第1受信手段を備え、前記送信手段により送信された信号を前記右部及び前記左部の一方を介して受信する第2受信手段を備える搬送システムにおいて、前記合流箇所での衝突防止及び前記伝達手段を介しての伝達動作確認を行う制御方法であって、
前記搬送車の前記合流箇所への進入を検出する検出工程と、
前記進入が検出されると、前記信号を送信するように、前記送信手段を制御する送信制御工程と、
前記第1受信手段が前記信号を受信すると、停止するように、前記受信した第1受信手段を備える前記搬送車を制御する走行制御工程と、
前記進入が検出されており、且つ前記第2受信手段が前記信号を受信しないと、前記伝達動作に異常があると判定する判定工程と
を備えることを特徴とする搬送システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−53937(P2009−53937A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220169(P2007−220169)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(302059274)アシスト テクノロジーズ ジャパン株式会社 (146)
【Fターム(参考)】