説明

搬送システム及びその制御方法

【課題】搬送能力を向上させ、ロットのリードタイム短縮及び装置の稼動率向上を実現する。
【解決手段】搬送システムは、半導体ウェハを格納するFOUP4を搬送させる搬送レール1と、FOUP4を移載し搬送レール1を走行するOHT台車2と、FOUP4を一時的に保管する懸垂式一時保管棚3とを備える。前の工程を行う装置8で処理終了のFOUP4を、次の処理を行う装置8のロードポート8cが空いているとき、OHT台車2は回収したFOUP4を次の処理を行う8装置に搬送する。OHT台車2のFOUP4のロードポート8cへの移載を行う際、懸垂式一時保管棚3の棚ユニットが退避して処理を円滑に行う。また、装置8のロードポート8cが空いていないときには、OHT台車2は懸垂式一時保管棚3にFOUP4を移載しておき、ロードポート8cが空くのを待って、棚ユニットによりFOUP4をロードポート8cに移載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造及び液晶製造ラインにおける製品の搬送制御に係り、特に、処理を終了したロットの回収と、次の処理をするロットの投入を最短時間で行うように、一時保管棚及び搬送台車を用いて搬送させるための、搬送システム及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンルーム内の工程内乃至工程間の環状軌道に沿って配置され、半導体ウェハの各種表面処理(薄膜形成,フォトリソグラフィー,洗浄,エッチング,検査等)を行う一連の処理ステーションで必要な処理を行うため、懸垂式搬送台車であるOHT(Overhead Hoist Transport)台車を用いて、前記半導体ウェハを収納した収納容器(以下、FOUP:Front Opening Unified Podという)を搬送することが多い。
【0003】
従来、1台にて1個のFOUPの昇降・搬送を担う汎用のOHT台車を用いて、工程内乃至工程間の搬送レールに沿って配置され、FOUP内に収納される基板に必要な処理を行う処理ステーションのFOUP用搬入・搬出ポートに移載され、当該処理ステーションにて処理済の基板を収納したFOUPと、OHT台車に把持され、当該処理ステーションにて処理を受けようとする基板を収納したFOUPとを交換可能とする方法並びにその方法を実施するための装置と搬送制御方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
以下、特許文献1に示されている搬送制御方法について説明する。この従来の搬送制御方法に関し、OHT台車における物品の授受方法は、次の第1〜第4工程によって実現する。
【0005】
第1工程:OHT台車の把持部に把持されている所定の処理ステーションへの搬入用物品を降下させ、この搬入用物品を、進退自在なスライド板であって、進退方向に沿って2個の物品の載置面を有する懸垂式一時保管棚(以下、OHB:Over Head Bufferという)における一方の載置面に移載する。
【0006】
第2工程:OHT台車の把持部において、前記所定の処理ステーションの物品搬入・搬出ポートに移載されている搬出用物品を把持、上昇させ、この搬出用物品を前記OHBにおける他方の載置面に移載する。
【0007】
第3工程:前記OHBの一方の載置面に移載されている搬入用物品を、OHT台車の把持部にて把持、降下させ、前記所定の処理ステーションの物品搬入・搬出ポートに移載する。
【0008】
第4工程:前記OHBの他方の載置面に移載されている搬出用物品をOHT台車の把持部にて把持、上昇させる。
【0009】
この特許文献1の第1の実施例には、工程内環状軌道及び当該工程内環状軌道と連係する工程間環状軌道に沿って所定の方向に走行制御を受けるOHT台車に把持され、所定の処理ステーションにおける処理を受けようとしている物品と、前記所定の処理ステーションにおける物品搬出・搬入ポート上に移載され、所定の処理ステーションにおける処理を既に完了した物品との交換を、懸垂式一時保管棚におけるスライド板の進退機能を併用させることが記載されている。
【0010】
特許文献1の第2の実施例におけるOHT台車における物品の授受方法として、第1の実施例におけるOHT台車の物品の授受方法において、物品が半導体基板を挿脱自在に収納するFOUPであり、処理ステーションがOHT台車の環状軌道に沿う適所に配置されていることが記載されている。
【0011】
特許文献1の第3の実施例におけるOHT台車における物品の授受装置は、OHT台車の走行路に沿う所定の箇所に設置される処理ステーションの物品搬入・搬出ポートに移載される搬出用物品と、この搬出用物品に対向する上方に位置し、OHT台車の物品把持部に把持されている搬入用物品との交換を行うためのOHBを有し、該OHBは、進退制御を受け、進退方向に沿って1個ずつ物品を移載する2個の物品載置面を有するスライド板を備え、該スライド板の各物品載置面はスライド板の進退制御により、搬入または搬出用物品の保管・取り出しを行う場合においてのみ、何れか一方の物品載置面がOHT台車の昇降機構の物品把持部に対向するように動作し、それ以外の場合にはOHT台車の昇降動作を許容するように駆動制御されることが記載されている。
【0012】
特許文献1の第4の実施例におけるOHT台車における物品の授受装置は、第3の実施例によるOHT台車における物品の授受装置において、物品が半導体基板を挿脱自在に収納するFOUPであり、処理ステーションがOHT台車の環状軌道に沿う適所に配置されていることが記載されている。
【特許文献1】特開2007−96145公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に示すOHT台車と懸垂式一時保管棚の構成及び制御方法では、装置で処理済のFOUPと次に処理をするFOUPの交換を1台のOHT台車で行うことにより、FOUPの入替え時間を短縮する一定の効果があるが、装置からのFOUPの回収動作と装置へのFOUPの投入動作は、OHT台車が行わなければならないため、積荷のないOHT台車が当該装置の近傍を走行していない場合は、OHT台車が到着するまでのロス時間が発生する場合がある。
【0014】
また、搬送システム全体の搬送能力についても、OHT台車のみの能力しか得られないため、近年の露光装置に代表される高スループットの装置が設置されている工程内ベイでの要求搬送量に対しては、搬送能力不足となる。
【0015】
また、特許文献1における懸垂式棚の構成では、搬送レールに設置するため、装置のロードポート上に設置すると、OHT台車による装置へのFOUPの移載が行えないため、搬送レールの下に装置のロードポートが設置されていない箇所にしか設置できないという設置場所に制限があるという課題も発生する。
【0016】
本発明は、前記従来技術の課題を解決するためになされたものであり、前後に移動可能な棚ユニットを有し、装置のロードポートに移載及び回収することができる懸垂式一時保管棚と懸垂式の搬送台車を融合することにより、搬送能力を向上し、ロットのリードタイム短縮と装置の稼動低下の抑止を実現するための搬送システム及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載した搬送システムは、ロードポートを備えた半導体ウェハを処理する処理装置と、複数の半導体ウェハからなるロットを格納する収納容器を自動搬送させるための搬送レールと、収納容器を保管する自動保管庫と、収納容器を移載し搬送レール上を走行する複数の搬送台車と、搬送レールの搬送台車が走行する方向に沿って設置し、収納容器を一時的に保管する懸垂式一時保管棚と、収納容器の保管及び移動を制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
この構成により、装置近傍に設置された懸垂式一時保管棚に、次の処理をする収納容器(FOUP)を一時保管することにより、装置への収納容器の投入搬送時間を短縮することが可能になる。
【0019】
また、請求項2に記載した発明は、請求項1の搬送システムにおいて、懸垂式一時保管棚は、収納容器を搬送台車が走行する方向に沿って移動可能な棚ユニットと、収納容器を処理装置のロードポートに移載及びロードポートから回収する移載機構を備えたことを特徴とする。
【0020】
この構成により、懸垂式一時保管棚の棚ユニットが移動することにより、搬送台車から処理装置への収納容器の移載時に退避できるため、ロードポート上に懸垂式一時保管棚を設置することができ、また、移載機構が直接処理装置へ収納容器の移載できるため、搬送台車の処理に加え、懸垂式一時保管棚による搬送能力も加味されることから、搬送システム全体の能力を向上することができる。
【0021】
また、請求項3に記載した発明は、請求項1,2の搬送システムにおいて、懸垂式一時保管棚の最小幅は、収納容器の幅より大きく、該収納容器を搬送台車から処理装置のロードポートへの移載及び回収の動作が円滑に行える構成としたことを特徴とする。
【0022】
この構成により、懸垂式一時保管棚と干渉することなく、搬送台車から処理装置に収納容器を移載することができる。
【0023】
また、請求項4に記載した発明は、請求項1,2の搬送システムにおいて、懸垂式一時保管棚の移載機構は、収納容器の取手部を把持して、ワイヤにより巻き取る収納容器把持部を備えたことを特徴とする。
【0024】
この構成により、懸垂式一時保管棚の移載した収納容器を、処理装置のロードポートへの移載及び回収ができる。
【0025】
また、請求項5に記載した発明は、請求項1,2の搬送システムにおいて、懸垂式一時保管棚は、収納容器の保管時には閉じ、収納容器を処理装置のロードポートへの移載及び回収時には開く底板部を備えたことを特徴とする。
【0026】
この構成により、処理装置のロードポートの上部位置に懸垂式一時保管棚を設置することができ、設置場所の制限がなくなるとともに設置台数を増やすこともできる。
【0027】
また、請求項6に記載した発明は、請求項2の搬送システムにおいて、懸垂式一時保管棚は、棚ユニットの移動及び移載機構を動作させるため給電線からの電力供給は給電ブラシを介して行うことを特徴とする。
【0028】
この構成により、懸垂式一時保管棚にバッテリ等の電源を搭載する必要がなく、小型化が図れるとともに、バッテリ交換等のメンテナンスを行う必要がなくなる。
【0029】
また、請求項7に記載した発明は、請求項2の搬送システムにおいて、懸垂式一時保管棚は、複数設置された中から任意の台数毎にグループ分けがなされ、グループ内でのみ懸垂式一時保管棚の棚ユニットが搬送台車の走行方向に沿って移動可能なことを特徴とする。
【0030】
この構成により、棚ユニット同士の衝突防止制御は同じグループ内でのみ行えば良く、制御の単純化を図ることができる。
【0031】
また、請求項8に記載した搬送システムの制御方法は、ロードポートを備えた半導体ウェハを処理する処理装置と、複数の半導体ウェハからなるロットを格納する収納容器を自動搬送させるための搬送レールと、収納容器を保管する自動保管庫と、収納容器を移載し搬送レール上を走行する複数の搬送台車と、搬送レールの搬送台車が走行する方向に沿って設置し、収納容器を一時的に保管する懸垂式一時保管棚と、収納容器の保管及び移動を制御する制御装置と、を備えた搬送システムの制御方法であって、懸垂式一時保管棚の制御を行う一時保管棚制御工程と、搬送台車の制御行う搬送台車制御工程と、自動保管庫の制御を行う自動保管庫制御工程と、搬送システム全般を制御し、一時保管棚制御工程及び搬送台車制御工程への搬送指示や自動保管庫制御工程から在庫情報を収集し、在庫管理を行う搬送制御工程と、複数の仕掛かりロットの処理順番を決定する製品引当て工程と、処理装置の制御を行う装置処理制御工程と、半導体ウェハ製造の生産進捗全体を制御し、搬送制御工程に搬送指示を出力するとともに、装置処理制御工程に処理開始指示を出力する生産進捗管理工程と、を備えたことを特徴とする。
【0032】
この方法により、搬送台車と懸垂式一時保管棚を融合した搬送システムの制御を行うことが可能となる。
【0033】
また、請求項9に記載した発明は、請求項8の制御方法において、処理装置のロードポート上に収納容器が移載され空いていないとき、搬送台車は搬送している収納容器を懸垂式一時保管棚に移載して、ロードポート上から収納容器が回収され空いたときには、懸垂式一時保管棚により移載された収納容器をロードポート上に移載することを特徴とする。
【0034】
この方法により、次の処理をする収納容器を処理装置の近傍に一時保管することで、処理装置への収納容器の投入、搬送台車の搬送時間を短縮することができる。
【0035】
また、請求項10に記載した発明は、請求項8の制御方法において、処理装置での処理が終了したときには、収納容器を移載してない懸垂式一時保管棚または搬送台車により、処理装置のロードポート上の収納容器を回収することを特徴とする。
【0036】
この方法により、処理終了した収納容器の回収を懸垂式一時保管棚もしくは搬送台車のどちらかで行うことで、搬送システムの処理能力を向上することができる。
【0037】
また、請求項11に記載した発明は、請求項10の制御方法において、搬送台車または懸垂式一時保管棚による収納容器の回収において、処理が終了した処理装置に最も早く到着できる搬送台車を、搬送制御工程により予測し、この予測結果から搬送台車または懸垂式一時保管棚を選択して収納容器をロードポートから回収することを特徴とする。
【0038】
この方法により、処理終了した収納容器の回収及び搬送時間を短縮することができる。
【0039】
また、請求項12に記載した発明は、請求項8の制御方法において、処理装置のロードポート上に収納容器がなく空いているときには、搬送台車は搬送する収納容器を、懸垂式一時保管棚に移載することなくロードポート上に直接移載することを特徴とする。
【0040】
この方法により、懸垂式一時保管棚を経由することなく、収納容器の処理回数を削減できるとともに、投入処理の時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、製造ラインにおける製品の搬送制御に係り、処理終了したロット(FOUP)の回収と次に処理をするロットの投入を最短時間で行うことができるようになるので、搬送能力を向上して、生産装置の稼動低下を抑止するとともに、ロットのリードタイムを短縮することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、図面を参照して本発明における実施の形態を詳細に説明する。
【0043】
図1は本発明の実施形態における搬送システムの平面図を示す図である。また、以下の各図において、図示した構成部材に対応し同等の機能を有するものには同一の符号を付してこれを示し、その説明は繰り返さない。
【0044】
図1に示す搬送システムにおいて、1は各工程間に複数の半導体ウェハ等のロットを搬送させるための搬送台車(OHT台車)が走行する搬送レール、2は搬送レールを走行するOHT台車、3は懸垂式一時保管棚、4は複数の半導体ウェハを収納するためのFOUP(収納容器)、8は半導体ウェハの加工及び検査の処理を行う装置、8cは装置8の前面に設置されて、OHT台車2もしくは懸垂式一時保管棚3より搬送されたFOUP4が移載されるロードポート、16はFOUP4を保管,格納する自動保管庫である。
【0045】
装置8で半導体ウェハの処理をするために、OHT台車2より搬送または懸垂式一時保管棚3より搬送,格納されたFOUP4はロードポート8cに移載される。さらに、ロードポート8cに移載されたFOUP4内の半導体ウェハは、装置8内に移動し、加工または検査される。その後、加工または検査が終了した半導体ウェハはFOUP4に格納され、全ての半導体ウェハの処理が終了すれば、FOUP4はOHT台車2もしくは懸垂式一時保管棚3により回収される。
【0046】
また、図2は本実施形態における搬送システムの正面図であり、図3は懸垂式一時保管棚の正面図、図4は懸垂式一時保管棚の右側側面図である。図2〜図4において、2aはOHT台車2によるFOUP4の移載時に使用され、FOUP4の投入移載時には伸び、回収移載には巻き取られるベルト、2bはOHT台車2のFOUP4を把持するための把持部である。
【0047】
また、3aは懸垂式一時保管棚3のフレーム、3bは懸垂式一時保管棚3の移載したFOUP4を移動する棚ユニットであり、該棚ユニット3bには、移載機構としてワイヤ3bs、ワイヤ巻取り部3bt、ワイヤ巻取り用モータ3bu、把持部3bv、及び給電ブラシ3bw、走行用モータ3bx、走行用車輪3by、底板3bzで構成される。
【0048】
3cは給電線であり、給電ブラシ3bwを介し、棚ユニット3bのワイヤ巻取り用モータ3bu及び走行用モータ3bxの動力用の電源供給を行う。4aはFOUP4の取手、5はクリーンルームの天井、6は搬送レール1を設置するための天井吊り金具である。
【0049】
7は懸垂式一時保管棚3のグループの境界を示す仮想線で、複数台の懸垂式一時保管棚3で1つのグループが構成される。また、8は半導体ウェハの加工または検査を行う装置であり、その装置8a用の懸垂式一時保管棚3のグループを7a、装置8b用の懸垂式一時保管棚3のグループを7bとする。
【0050】
以上のような構成においてなされる基本的なFOUP4の搬送制御について説明する。前の工程を行う装置8での処理が終了したFOUP4は、次の工程を行う装置8のロードポート8cが空いている場合には、OHT台車2が次の処理を行う装置8のロードポート8cに搬送し、投入移載される。もし、該当する装置8のロードポート8cが空いていない場合には、OHT台車2が懸垂式一時保管棚3(棚ユニット3b)にFOUP4を搬送して、移載する。
【0051】
さらに、装置8での処理が終了した場合には、FOUP4を保管していない懸垂式一時保管棚3(棚ユニット3b)、もしくはFOUP4を搬送していないOHT台車2の中で最も早く到着できるOHT台車2のいずれかにより、処理終了したFOUP4の回収動作を行う。
【0052】
また、ロードポート8cにFOUP4が移載されて空いておらず、棚ユニット3bにもFOUP4が搬送移載されているときには、処理が終了したFOUP4が回収され、装置8のロードポート8cが空いた場合に、棚ユニット3bに置かれたFOUP4のロードポート8cへの移載が行われる。この動作は、まず懸垂式一時保管棚3の棚ユニット3bが当該ロードポート8c上に移動し、底板3bzが開き、FOUP4の取手4aを把持部3bvで把持された状態で、ワイヤ3bsが伸び、FOUP4をロードポート8cに投入移載することが行われる。
【0053】
さらに、図3,図4を参照しながら懸垂式一時保管棚3の動作について、詳細に説明する。なお、図3の懸垂式一時保管棚3の正面図にはFOUP4の前面を、図4の懸垂式一時保管棚3の右側面図にはFOUP4の右側面を示している。
【0054】
懸垂式一時保管棚3の棚ユニット3bには、走行用モータ3bx及び走行用車輪3byが備えられており、給電線3cから給電ブラシ3bwを介し電力が供給され、走行用モータ3bxが回転し、走行用車輪3byがフレーム3aの溝部を走行するように回転し、棚ユニット3bが搬送レール1と同方向に移動する。また、FOUP4は取手4aを把持部3bvに引っ掛けられた状態で懸垂式一時保管棚3の棚ユニット3bに保管されており、ロードポート8cへのFOUP4の移載時には、前述と同様に、給電線3cから給電ブラシ3bwを介した電力により、底板3bzが開き、ワイヤ巻取り用モータ3buと連結したワイヤ巻取り部3btが回転し、ワイヤ3bsが伸び、把持部3bvで把持されたFOUP4が降下し、ロードポート8cへ投入移載される。
【0055】
また、装置8においてFOUP4の処理が終了して、懸垂式一時保管棚3によりFOUP4を回収する場合、棚ユニット3bが当該装置8のロードポート8c上に移動し、底板3bzが開き、ワイヤ巻取り用モータ3buと連結したワイヤ巻取り部3btが回転し、ワイヤ3bsが伸び、把持部3bvでFOUP4の取手4aを引っ掛ける。次にワイヤ巻取り用モータ3buと連結したワイヤ巻取り部3btが逆回転し、ワイヤ3bsを巻き上げ、FOUP4を上昇させ、棚ユニット3bに格納した後、底板3bzを閉じる。
【0056】
さらに、OHT台車2によりFOUP4の回収が行われるが、前述した装置8のロードポート8cが空いていない場合の逆の動作によって、懸垂式一時保管棚3(棚ユニット3b)に回収移載されたFOUP4をOHT台車2が回収される。これにより、当該装置8において処理を行うためにOHT台車2が搬送してきたFOUP4を直接ロードポート8cに移載することもでき、この処理後に、棚ユニット3bに回収移載されたFOUP4をOHT台車2によって回収搬送することも可能である。
【0057】
図5は各制御工程を有する搬送システム制御装置を示す構成図であり、9は生産進捗全体を管理する生産進捗管理部、10は搬送システム全般を制御する搬送制御部で配下に懸垂式一時保管棚3の制御を行う一時保管棚制御部13、OHT台車2の制御を行う搬送台車制御部14及び自動保管庫16の制御を行う自動保管庫制御部15が配置される。また、11は次に処理をする製品の順番を決定する製品引当て部、12は装置8の制御を行う装置処理制御部である。
【0058】
この搬送システム制御装置の搬送制御部10においては、処理が終了した装置8までの所要搬送時間を予測し、最も早く到着するOHT台車2もしくは懸垂式一時保管棚3を引き当てて、搬送台車制御部14もしくは一時保管棚制御部13に対し、搬送指示を出す。
【0059】
図6は本実施形態の搬送システム及びその制御方法において、前の工程の装置での処理が終了してから、次の工程の装置に搬送されるまでのFOUPの搬送処理を示したフローチャートである。以下に、図1〜図6を参照しながら、搬送処理の動作を説明する。
【0060】
装置処理制御部12において、次に処理を行う装置8のロードポート8cの空き状況を把握し、生産進捗管理部9にその結果を通知する(S1)。
【0061】
生産進捗管理部9において、次の処理を行う装置8のロードポート8cの空き状態を搬送制御部10に通知する(S2)。
【0062】
次の処理を行う装置8のロードポート8cに空きがあるか否か(FOUP4の有無)を判断する(S3)。
【0063】
ロードポート8cに空きがある場合(処理S3のYes)、搬送制御部10において、処理終了した前の工程の装置8(ロードポート8cまたは棚ユニット3b)からFOUP4を回収し、次の処理を行う装置8のロードポート8cに搬送する指示を搬送台車制御部14に出力する処理を行う(S4)。
【0064】
搬送台車制御部14において、処理終了した前の工程の装置8からFOUP4を回収し、次の処理を行う装置8のロードポート8cに搬送する指示をOHT台車2に出力する処理を行う(S5)。
【0065】
処理終了したFOUP4を搬送するOHT台車2と次の処理を行う装置8の近傍に設置された懸垂式一時保管棚3との間で、例えば赤外線通信を行い、衝突防止制御処理を行う(S6)。
【0066】
OHT台車2と懸垂式一時保管棚3の棚ユニット3bが干渉する場合、棚ユニット3bの退避を行う(S7)。図4に示すように、FOUP4の幅Wfよりも懸垂式一時保管棚3の幅Wsが大きく形成され、棚ユニット3bを退避することにより、OHT台車2からロードポート8cにFOUP4の移載を円滑に行えるように構成されている。
【0067】
OHT台車2がFOUP4を装置8のロードポート8cに移載する処理を行い処理が終了する(S8)。
【0068】
一方、ロードポート8c上にFOUP4が移載され空きがない場合(処理S3のNo)、搬送制御部10において、処理終了した前の工程の装置8からFOUP4を回収し、次の処理を行う装置8の近傍に設置された懸垂式一時保管棚3(棚ユニット3b)に移載するため搬送する指示を搬送台車制御部14に出力する処理を行う(S9)。
【0069】
搬送台車制御部14において、処理終了した前の工程の装置8からFOUP4を回収し、次の処理を行う装置8の近傍に設置された懸垂式一時保管棚3に搬送する指示をOHT台車2に出力する処理を行う(S10)。
【0070】
処理終了したFOUP4を搬送するOHT台車2が、次の処理を行う装置8の近傍に設置された懸垂式一時保管棚3にFOUP4を搬送(棚ユニット3bに移載)する処理を行う(S11)。
【0071】
装置8のロードポート8cから先に移載されていたFOUP4が回収されると、懸垂式一時保管棚3に移載していたFOUP4を棚ユニット3bにより、装置8のロードポート8cに移載する処理を行い処理が終了する(S12)。
【0072】
以上の処理S1〜S12の処理により、前の工程の装置8で処理終了したFOUP4は、次の工程で処理する装置8のロードポート8cが空いている場合は、OHT台車2が回収したFOUP4を直接、次の工程で処理する装置8のロードポート8cに搬送し移載でき、また、ロードポート8cが空いていない場合は、棚ユニット3bにFOUP4を移載し、その後ロードポート8cが空くのを待って、棚ユニット3bによりFOUP4をロードポート8cに移載できるため、ロットのリードタイムを短縮するとともに、装置8の稼動低下を最小に抑えることができる。
【0073】
また、図7は本実施形態の搬送システム及びその制御方法において、現在の工程を行っている装置8での処理が終了したFOUP4が回収搬送されるまでの処理を示したフローチャートである。図6と同様に、図1〜図5、図7を参照しながら、搬送処理の動作を説明する。
【0074】
装置処理制御部12において、装置8でFOUP4の処理が終了したことを生産進捗管理部9に通知する処理を行う(S21)。
【0075】
生産進捗管理部9において、処理終了したFOUP4を回収して、次の工程を行う装置8に搬送する指示を搬送制御部10に出力する処理を行う(S22)。
【0076】
搬送制御部10において、処理終了したFOUP4を回収するため当該装置8に到着するOHT台車2の最短の到着予測時間、もしくは懸垂式一時保管棚3(棚ユニット3bでの回収可否)の情報を、搬送台車制御部14及び一時保管棚制御部13に問い合わせる処理を行う(S23)。
【0077】
搬送台車制御部14及び一時保管棚制御部13において、OHT台車2もしくは懸垂式一時保管棚3(棚ユニット3b)が過去の実績値から予測し、最短で処理できる時間を搬送制御部10に通知する処理を行う(S24)。
【0078】
搬送制御部10において、装置8のロードポート8cから処理終了したFOUP4を回収し、次の工程を行う搬送先(装置8)に搬送する指示を最短で処理できる搬送台車制御部14または一時保管棚制御部13に対し指示を出力する処理を行う(S25)。
【0079】
搬送台車制御部14または一時保管棚制御部13の指示により、最短で到着できるOHT台車2または懸垂式一時保管棚3(棚ユニット3b)により、処理終了したFOUP4を回収する処理を行って処理が終了する(S26)。
【0080】
以上の処理S21〜S26の処理により、装置8において処理終了したFOUP4を最短時間で回収し搬送することができ、また、懸垂式一時保管棚3(棚ユニット3b)によりFOUP4を一時回収することで、装置8のロードポート8cに次の処理を行うFOUP4の投入移載ができ、ロットのリードタイムを短縮するとともに、装置8の稼動低下を最小に抑えることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明に係る搬送システム及びその制御方法は、半導体や液晶の製造ラインにおける懸垂式一時保管棚を含み、OHT台車と懸垂式一時保管棚を融合することにより、搬送能力を向上できるとともに、処理終了したFOUPの回収と次の処理をするFOUPの投入を最短で行うことができ、生産装置の稼動の低下を抑止し、ロットのリードタイムを短縮させる構成及び方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施形態における搬送システムを示す平面図
【図2】本実施形態における搬送システムを示す正面図
【図3】本実施形態における懸垂式一時保管棚を示す正面図
【図4】本実施形態における懸垂式一時保管棚を示す右側側面図
【図5】本実施形態における搬送システム制御装置を示す構成図
【図6】本実施形態における処理の終了したFOUPが次処理を行う装置に搬送される処理を示すフローチャート
【図7】本実施形態における処理の終了したFOUP4の回収搬送される処理を示すフローチャート
【符号の説明】
【0083】
1 搬送レール
2 OHT台車
2a ベルト
2b,3bv 把持部
3 懸垂式一時保管棚
3a フレーム
3b 棚ユニット
3bs ワイヤ
3bt ワイヤ巻取り部
3bu ワイヤ巻取り用モータ
3bw 給電ブラシ
3bx 走行用モータ
3by 走行用車輪
3bz 底板
3c 給電線
4 FOUP
4a 取手
5 天井
6 天井吊り金具
7a,7b 保管棚グループ
8,8a,8b 装置
8c ロードポート
9 生産進捗管理部
10 搬送制御部
11 製品引当て部
12 装置処理制御部
13 一時保管棚制御部
14 搬送台車制御部
15 自動保管庫制御部
16 自動保管庫

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロードポートを備えた半導体ウェハを処理する処理装置と、
複数の半導体ウェハからなるロットを格納する収納容器を自動搬送させるための搬送レールと、
前記収納容器を保管する自動保管庫と、
前記収納容器を移載し前記搬送レール上を走行する複数の搬送台車と、
前記搬送レールの前記搬送台車が走行する方向に沿って設置し、前記収納容器を一時的に保管する懸垂式一時保管棚と、
前記収納容器の保管及び移動を制御する制御装置と、
を備えたことを特徴とする搬送システム。
【請求項2】
前記懸垂式一時保管棚は、前記収納容器を前記搬送台車が走行する方向に沿って移動可能な棚ユニットと、前記収納容器を前記処理装置のロードポートに移載及びロードポートから回収する移載機構を備えたことを特徴とする請求項1記載の搬送システム。
【請求項3】
前記懸垂式一時保管棚の最小幅は、前記収納容器の幅より大きく、該収納容器を前記搬送台車から前記処理装置のロードポートへの移載及び回収の動作が円滑に行える構成としたことを特徴とする請求項1または2記載の搬送システム。
【請求項4】
前記懸垂式一時保管棚の移載機構は、前記収納容器の取手部を把持して、ワイヤにより巻き取る収納容器把持部を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の搬送システム。
【請求項5】
前記懸垂式一時保管棚は、前記収納容器の保管時には閉じ、前記収納容器を前記処理装置のロードポートへの移載及び回収時には開く底板部を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の搬送システム。
【請求項6】
前記懸垂式一時保管棚は、前記棚ユニットの移動及び前記移載機構を動作させるため給電線からの電力供給は給電ブラシを介して行うことを特徴とする請求項2記載の搬送システム。
【請求項7】
前記懸垂式一時保管棚は、複数設置された中から任意の台数毎にグループ分けがなされ、前記グループ内でのみ前記懸垂式一時保管棚の棚ユニットが前記搬送台車の走行方向に沿って移動可能なことを特徴とする請求項2記載の搬送システム。
【請求項8】
ロードポートを備えた半導体ウェハを処理する処理装置と、複数の半導体ウェハからなるロットを格納する収納容器を自動搬送させるための搬送レールと、前記収納容器を保管する自動保管庫と、前記収納容器を移載し前記搬送レール上を走行する複数の搬送台車と、前記搬送レールの前記搬送台車が走行する方向に沿って設置し、前記収納容器を一時的に保管する懸垂式一時保管棚と、前記収納容器の保管及び移動を制御する制御装置と、を備えた搬送システムの制御方法であって、
前記懸垂式一時保管棚の制御を行う一時保管棚制御工程と、前記搬送台車の制御行う搬送台車制御工程と、前記自動保管庫の制御を行う自動保管庫制御工程と、前記搬送システム全般を制御し、前記一時保管棚制御工程及び前記搬送台車制御工程への搬送指示や前記自動保管庫制御工程から在庫情報を収集し、在庫管理を行う搬送制御工程と、複数の仕掛かりロットの処理順番を決定する製品引当て工程と、前記処理装置の制御を行う装置処理制御工程と、半導体ウェハ製造の生産進捗全体を制御し、前記搬送制御工程に搬送指示を出力するとともに、前記装置処理制御工程に処理開始指示を出力する生産進捗管理工程と、を備えたことを特徴とする搬送システムの制御方法。
【請求項9】
前記処理装置のロードポート上に前記収納容器が移載され空いていないとき、前記搬送台車は搬送している収納容器を前記懸垂式一時保管棚に移載して、前記ロードポート上から前記収納容器が回収され空いたときには、前記懸垂式一時保管棚により前記移載された収納容器を前記ロードポート上に移載することを特徴とする請求項8記載の搬送システムの制御方法。
【請求項10】
前記処理装置での処理が終了したときには、前記収納容器を移載してない前記懸垂式一時保管棚または前記搬送台車により、前記処理装置のロードポート上の前記収納容器を回収することを特徴とする請求項8記載の搬送システムの制御方法。
【請求項11】
前記搬送台車または前記懸垂式一時保管棚による前記収納容器の回収において、処理が終了した処理装置に最も早く到着できる前記搬送台車を、前記搬送制御工程により予測し、該予測結果から前記搬送台車または前記懸垂式一時保管棚を選択して前記収納容器をロードポートから回収することを特徴とする請求項10記載の搬送システムの制御方法。
【請求項12】
前記処理装置のロードポート上に収納容器がなく空いているときには、前記搬送台車は搬送する収納容器を、前記懸垂式一時保管棚に移載することなく前記ロードポート上に直接移載することを特徴とする請求項8記載の搬送システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−126301(P2010−126301A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302593(P2008−302593)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】