説明

搬送システム

【課題】 台車の台数や、走行ルートにおける分岐部、交差部が増加しても、各台車の制御を容易に行うことができる搬送システムを提供すること。
【解決手段】 移送装置1によるワークの移送と台車2によるワークの搬送とを組み合わせて行い、前記台車2が、所定の走行経路を走行すると共にワークの受け渡しを行うステーション3で停止し、ステーション3に停止した台車2と前記移送装置1との間でワークが受け渡しされる搬送システムであって、前記台車2の走行経路に関する情報を記憶し、前記走行経路の分岐部近傍に配置される分岐部用記憶体11と、前記台車2に設けられ、前記分岐部用記憶体11に記憶された情報を読み取る読み取り手段8とを備え、台車2が前記分岐部に接近する際に前記台車2に設けられた読み取り手段8が前記分岐部近傍に設けられた分岐部用記憶体11から台車2の走行経路に関する情報を読み取り、台車2はその情報に基づいて分岐部から延びる複数の分岐路の一つに進入するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車用エンジン等のワークを搬送対象とし、定位置に設置される移送装置(例えばコンベア)による移送と台車による搬送とを組み合わせて行う搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばエンジン等のワークは、工場内に点在配置されている各種の加工装置間にわたって搬送されることがあり、その搬送に適した構成を有する搬送システムが従来より提案されている。そのような搬送システムとして、図4に示すように構成されたものがある。
【0003】
すなわち、図4に示す搬送システムでは、定位置に設置される移送装置(例えばベルトコンベア)51によるワークの移送と、台車52による搬送とを組み合わせて行う。すなわち、前記台車52は所定の走行経路を走行すると共に、移送装置51の端部近傍にあるワークの受け渡しを行うステーション53で停止するように構成されている。
【0004】
また、移送装置51と台車52との間でワークの受け渡しをさせるには、移送装置51の作動と台車52の作動とを連携させる必要があるため、移送装置51側に設けられた通信ユニット54と台車52に設けられたコントローラ55とが相互に情報データの授受を行うように構成されている。
【0005】
そして、前記搬送システムでは、ワークを台車52に渡すように構成された前記移送装置51のあるステーション53に、ワークを載せていない状態の台車52が到着すると、移送装置51側の通信ユニット54から所定の信号が台車側コントローラ55へと送信され、これにより、移送装置51と台車52とが連携作動して移送装置51から台車52にワークが移載される。
【0006】
また、ワークを台車52から受け取るように構成された移送装置51のあるステーション53に、ワークを載せた状態の台車52が到着すると、移送装置51側の通信ユニット54から所定の信号が台車側コントローラ55へと送信され、これにより、移送装置51と台車52とが連携作動して台車52から移送装置51にワークが移載される。
【0007】
さらに、台車52が移送装置51との間でワークの受け渡しを行うためにステーション53に停止しているときに、移送装置51側の通信ユニット54からコントローラ55に走行ルートを指示するための信号が送信され、これにより、ワークの移載後、台車52はコントローラ55に登録されている複数の走行ルートデータから選択された任意の走行ルートに従って走行を開始することとなる。
【0008】
なお、図4において、56は台車52の走行ルートに沿って敷設された誘導線、57は台車52を前記誘導線56に沿って走行させるために台車52に設けられたセンサ、58は台車52をステーション53に停止させるために用いられる近接スイッチである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記従来の搬送システムでは、台車52の台数が増えたり、走行ルートに分岐部や交差部が増えたりすると、台車52の制御が非常に複雑になり、対応が困難になるという問題があった。すなわち、前記搬送システムでは、例えば、交差部に台車52が進入する際に、先にその交差部に進入している他の台車52に衝突する等の事故を確実に避けるため、各台車52について的確な制御を行う必要がある。従って、台車52の台数や交差部等が増えるとそれだけ各台車52の制御に高い緻密性が要求されることとなり、ひいては搬送システムの構築にかかる時間や労力が飛躍的に増大するという問題があった。
【0010】
本発明は上述の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、台車の台数や、走行ルートにおける分岐部、交差部が増加しても、各台車の制御を容易に行うことができる搬送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る搬送システムは、移送装置によるワークの移送と台車によるワークの搬送とを組み合わせて行い、前記台車が、所定の走行経路を走行すると共にワークの受け渡しを行うステーションで停止し、ステーションに停止した台車と前記移送装置との間でワークが受け渡しされる搬送システムであって、前記台車の走行経路に関する情報を記憶し、前記走行経路の分岐部近傍に配置される分岐部用記憶体と、前記台車に設けられ、前記分岐部用記憶体に記憶された情報を読み取る読み取り手段とを備え、台車が前記分岐部に接近する際に前記台車に設けられた読み取り手段が前記分岐部近傍に設けられた分岐部用記憶体から台車の走行経路に関する情報を読み取り、台車はその情報に基づいて分岐部から延びる複数の分岐路の一つに進入するように構成されていることを特徴としている(請求項1)。
【0012】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る搬送システムは、移送装置によるワークの移送と台車によるワークの搬送とを組み合わせて行い、前記台車が、所定の走行経路を走行すると共にワークの受け渡しを行うステーションで停止し、ステーションに停止した台車と前記移送装置との間でワークが受け渡しされる搬送システムであって、前記走行経路の交差部近傍に配置される交差部用記憶体と、前記台車に設けられ、前記交差部用記憶体に記憶された情報の読み取りおよび前記交差部用記憶体への情報の書き込みを行う情報授受装置とを備え、台車が前記交差部に接近する際に前記台車に設けられた情報授受装置が前記交差部近傍に設けられた交差部用記憶体から他の台車の前記交差部への進入の有無に関する情報を読み取り、前記交差部への他の台車の進入が有るとの情報を読み取った場合には前記台車は交差部の手前で停止し、前記交差部への他の台車の進入が無いとの情報を読み取った場合には前記台車は交差部へ進入すると共に、進入したことを前記情報授受装置が前記交差部用記憶体に書き込み、この書き込みが台車の交差部の通過後に消去されるように構成されていることを特徴としている(請求項2)。
【0013】
さらに、上記目的を達成するために、本発明に係る搬送システムは、移送装置によるワークの移送と台車によるワークの搬送とを組み合わせて行い、前記台車が、所定の走行経路を走行すると共にワークの受け渡しを行うステーションで停止し、ステーションに停止した台車と前記移送装置との間でワークが受け渡しされる搬送システムであって、前記台車の走行経路に関する情報を記憶し、前記走行経路の分岐部近傍に配置される分岐部用記憶体と、前記台車に設けられ、前記分岐部用記憶体に記憶された情報を読み取る読み取り手段とを備え、台車が前記分岐部に接近する際に前記台車に設けられた読み取り手段が前記分岐部近傍に設けられた分岐部用記憶体から台車の走行経路に関する情報を読み取り、台車はその情報に基づいて分岐部から延びる複数の分岐路の一つに進入するように構成されており、また、前記走行経路の交差部近傍に配置される交差部用記憶体と、前記台車に設けられ、前記交差部用記憶体に記憶された情報の読み取りおよび前記交差部用記憶体への情報の書き込みを行う情報授受装置とを備え、台車が前記交差部に接近する際に前記台車に設けられた情報授受装置が前記交差部近傍に設けられた交差部用記憶体から他の台車の前記交差部への進入の有無に関する情報を読み取り、前記交差部への他の台車の進入が有るとの情報を読み取った場合には前記台車は交差部の手前で停止し、前記交差部への他の台車の進入が無いとの情報を読み取った場合には前記台車は交差部へ進入すると共に、進入したことを前記情報授受装置が前記交差部用記憶体に書き込み、この書き込みが台車の交差部の通過後に消去されるように構成されていることを特徴としている(請求項3)。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜3に係る発明では、台車の台数や、走行ルートにおける分岐部、交差部が増加しても、各台車の制御を容易に行うことができる搬送システムが得られる。
【0015】
すなわち、請求項1に係る発明では、台車は、後段に複数の分岐路が延びる分岐部に接近した際に、分岐部近傍に設けられた分岐部用記憶体から台車の走行経路に関する情報を読み取り、その情報に基づいて進入するべき分岐路に確実に進入する搬送システムが得られる。そして、この搬送システムは、シンプルな構成であるため低コストで容易に構築することができ、台車の数が増えても上記の効果が損なわれることがない。
【0016】
また、請求項2に係る発明では、台車は、複数の分岐路が交差する交差部に接近した際に、前記交差部近傍に設けられた交差部用記憶体から他の台車の前記交差部への進入の有無に関する情報を読み取り、その情報に基づいて交差部に進入するか否かを決定するので、交差部での台車どうしの衝突を確実に防止することができる搬送システムが得られる。そして、この搬送システムは、シンプルな構成であるため低コストで容易に構築することができ、台車の数が増えても上記の効果が損なわれることがない。
【0017】
そして、請求項3に係る発明では、請求項1および2に係る発明の両方の効果を奏する搬送システムが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態に係る搬送システムの構成を概略的に示す説明図である。この図に示すように、前記搬送システムは、移送装置1によるワーク(例えば、自動車用エンジン、図示していない)の移送と台車2によるワークの搬送とを組み合わせて行い、前記台車2が、所定の走行経路を走行すると共にワークの受け渡しを行うステーション3で停止し、ステーション3に停止した台車2と前記移送装置1との間でワークが受け渡しされる。
【0019】
ここで、前記台車2は自動走行台車であり、下部に複数(例えば四つ)の車輪(図示していない)を備え、そのうち少なくとも一つの車輪を駆動回転させることにより、床面に設けた誘導マーク(誘導線)4に沿って所定の走行経路を駆動走行可能に構成されている。
【0020】
なお、台車2を誘導マーク4に沿って走行させるに際しては、種々の構成を採用可能であるが、その一例としては、高い光反射性を有する光反射式帯状体を誘導マーク4として床面に設けると共に、この誘導マーク4を検出するための光照射部および反射式光電管よりなる検出手段(センサ)5を台車2に設ける構成が挙げられる。この場合、前記検出手段5による検出結果を台車2の操舵(車輪の向き)の制御に用いることにより、台車2に所定走行経路を走行させることができる。
【0021】
また、台車2を前記ステーション3で停止させるに際しても、種々の構成を採用可能であるが、その一例としては、床面上における誘導マーク4近傍の適宜の位置に減速・停止用マークプレート(図示していない)を設けると共に、この減速・停止用マークプレートを検出するための近接(光電)スイッチ(図示していない)を台車2に設ける構成が挙げられる。この場合、前記近接スイッチによる減速・停止用マークプレートの検出を台車2の走行の減速・停止制御に用いることにより、台車2をステーション3に停止させることができる。
【0022】
さらに、ステーション3に停止した台車2と前記移送装置1との間でワークの受け渡しを行わせるに際しても、種々の構成を採用可能であり、例えば、移送装置1および台車2にベルトコンベア等のワーク移載装置(図示していない)を設けてもよいし、移送装置1および台車2とは別に、ワークを吊り上げて移動させることができるアーム等を有するワーク移載装置を設けてもよい。
【0023】
また、この実施の形態では、ステーション3が四つ設けられており、そのうちの図1において右下に示すステーション3は、台車2にワークを渡す移送装置1が設けられたステーション(以下、出発ステーション3Aという)である。また、図1において右上に示すステーション3は、台車2からワークを受け取る移送装置1が設けられたステーション(以下、第一到着ステーション3Bという)、図1において左上に示すステーション3は、前記第一到着ステーション3Bと同様に、台車2からワークを受け取る移送装置1が設けられたステーション(以下、第二到着ステーション3Cという)である。さらに、図1において左下に示すステーション3は、自動走行のために台車2に備えられたバッテリー(図示していない)を充電する充電装置6が設けられたステーション(以下、充電ステーション3Dという)である。
【0024】
そして、前記台車2は、出発ステーション3Aで移送装置1からワークを受け取った後、誘導マーク4に沿って走行し、到着ステーション3Bまたは3Cで移送装置1にワークを渡した後、再び誘導マーク4に沿って走行して出発ステーション3Aに戻るという工程を繰り返す。また、台車2は、前記工程の繰り返しの合間に、充電ステーション3Dで搭載したバッテリーの充電を受けるように構成されている。
【0025】
また、この実施の形態では、台車2の走行経路に沿って敷設される前記誘導マーク4は、環状のメインライン4aと、このメインライン4aの三箇所に設けられたバイパスライン4b、4c,4dとで構成され、バイパスライン4b,4c,4dに前記ステーション3B,3C,3Dがそれぞれ配置されている。これは、この実施の形態では、環状のメインライン4aに沿って図1中において反時計まわりに走行する台車2が、前記第一到着ステーション3B、第二到着ステーション3Cまたは充電ステーション3Dに停止せずに通過することがあるためである。これに対して、各台車2は、メインライン4aを周回するごとに、出発ステーション3Aに停止してワークを受け取る必要があり、換言すれば、台車2が出発ステーション3Aを通過することができるように出発ステーション3Aをバイパスライン中に設けるメリットはないことから、出発ステーション3Aはメインライン4a中に配置されている。
【0026】
ここで、前記ステーション3A,3B,3Cにおいて移送装置1と台車2との間でワークの受け渡しをさせるには、移送装置1の作動と台車2の作動とを連携させる必要があり、また、前記ステーション3Dにおいて充電装置6に台車2のバッテリーの充電を行わせるには、台車2の作動と充電装置6の作動とを連携させる必要がある。従って、移送装置1側コントローラ(図示していない)と台車2側コントローラ(図示していない)とが相互に情報データの授受を行うように構成し、また、台車2側コントローラと充電装置6側コントローラ(図示していない)とが相互に情報データの授受を行うように構成する必要がある。
【0027】
そこで、この実施の形態の搬送システムでは、前記移送装置1、台車2および充電装置6の作動を、RFID(Radio Frequency Identification)用タグ(非接触ICタグ)と、このRFID用タグとの間で情報データの授受を行えるタグ・リーダー/ライター(RFID用アンテナ)を用いて制御・管理する。なお、前記タグ・リーダー/ライターは、RFID用タグに記憶された情報を読み取る読み取り手段とRFID用タグに所定の情報を書き込む書き込み手段とを兼用し、かつ、一定の時間間隔で出す電波により前記読み取りおよび書き込みを半径約3mの範囲で無線(非接触)で行うことができるように構成されている。
【0028】
上記制御・管理を行うための構成について具体的に述べると、台車2には、前記RFID用タグからなる台車用記憶体7と、前記タグ・リーダー/ライターからなる情報授受装置8とが設けられている。一方、前記ステーション3A〜3Dには、前記RFID用タグからなるステーション用記憶体9A〜9Dと、前記タグ・リーダー/ライターからなる情報授受装置10A〜10Dとが設けられている。
【0029】
また、前記台車2の走行経路(誘導マーク4)がメインライン4aと各バイパスライン4b,4c,4dとに分かれる分岐部近傍(各バイパスライン4b,4c,4dの上流部近傍)には、前記RFID用タグからなる分岐部用記憶体11が配置されている。さらに、前記メインライン4aと各バイパスライン4b,4c,4dとが交差(合流)する交差部近傍には、前記RFID用タグからなる交差部用記憶体として設けられた交差部進入用記憶体12および交差部通過用記憶体13が上流側からこの順に配置されている。
【0030】
次に、上記の構成からなる搬送システムの作動について説明する。まず、誘導マーク4のメインライン4aに沿って図1中反時計まわりに走行する台車2は、出発ステーション3Aに停止すると、台車2側コントローラと移送装置1側コントローラとが、前記台車用記憶体7、情報授受装置8、ステーション用記憶体9Aおよび情報授受装置10Aを介して情報の伝達を相互に行う。これにより、移送装置1および台車2の作動が前記移載装置の作動を含めて連携し、移送装置1から台車2へとワークの受け渡しが行われる。なお、上記両コントローラはインターロック機構を備え、相互に行う情報の授受に際して、移送装置1、台車2の所定の作動が完了するまで次の作動を促す情報(信号)を出力しないように構成されている。
【0031】
また、このとき、台車2の台車用記憶体7の自車情報データに関する書き換え(書き込み)が行われる。すなわち、前記台車用記憶体7には、自車情報データとして、例えば、台車の識別情報、行き先となるステーション3を示す情報、現在の走行データ(前進中または停止中、高速走行中または低速走行中、交差点を通過中等を示す情報)、優先度(例えば、高レベル・中レベル・低レベルの3段階のいずれか)、ワークの積載の有無、ワークに関する情報(ワークの種類や固有番号等の識別情報)、走行量(例えば走行回数、走行距離または走行時間等で示される)などが記憶(登録)されている。そして、出発ステーション3Aでは、移送装置1から台車2へとワークが受け渡されるのに伴って、台車用記憶体7中のワークの積載の有無についての情報が「無し」を示す状態から「有り」を示す状態へと書き換えられると共に、台車2の行き先となるステーション3(例えば第一到着ステーション3Bまたは第二到着ステーション3C)を示す情報と、ワークに関する情報とが台車用記憶体7に書き込まれる。さらに、このとき、台車用記憶体7中の走行回数のカウントが一つ加えられる。
【0032】
そして、台車用記憶体7中のワークの積載の有無についての情報が「無し」を示す状態から「有り」を示す状態へと書き換えられ、台車2側コントローラがワークの受け取りの完了を認識すると、出発ステーション3Aに停止していた台車2は走行を開始し、誘導マーク4のメインライン4aに沿って反時計まわりに移動する。その後、メインライン4aとバイパスライン4bとに分岐する分岐部に台車2が接近する際に、台車2の情報授受装置8が前記分岐部近傍に設けられた分岐部用記憶体11内の情報データ(台車2の走行経路に関する情報)を自動的に読み取ってシーケンサに一旦全て格納し、台車用記憶体7に登録されている行き先を照会して、前記情報データから自車への指示に該当する情報を検索・抽出して走行プログラムに転送し、その走行プログラムに基づいて台車2は分岐部から延びる複数の分岐路の一つに進入(走行)する。この場合、台車2は、第一到着ステーション3Bを避けてメインライン4aをそのまま走行するか、あるいは、バイパスライン4bに進入して第一到着ステーション3Bに停止することになる。
【0033】
すなわち、前記分岐部用記憶体11には、全ての台車2の行き先に応じた走行データが記憶されている。図2は、前記搬送システムの分岐部の構成を概略的に示す説明図であり、この図の左下部に示すように、前記走行データの具体的な内容としては、台車2の行き先に応じて、幅のある誘導マーク4の左右あるいは中央のいずれに沿った状態で走行するのか、走行速度は高速、低速のいずれとするのか、進行方向は前進または後退のいずれとするのか、等の指示が挙げられる。なお、上記のように分岐部用記憶体11に記憶される走行データの内容は、分岐部用記憶体11が設けられる位置に応じて適宜に設定・変更される。因みに、図2の右下部には、台車2の台車用記憶体7に記憶される自車情報データの一例を示している。また、図2において、符号Cで示すサークルは、台車2の情報授受装置8の交信(情報授受)可能範囲を示している。
【0034】
そして、台車2の行き先に第一到着ステーション3Bが含まれる場合、台車2は誘導マーク4の右沿いに走行し、バイパスライン4bに進入して第一到着ステーション3Bに停止する。この停止後、台車2側コントローラと移送装置1側コントローラとが、前記台車用記憶体7、情報授受装置8、ステーション用記憶体9Bおよび情報授受装置10Bを介して情報の伝達を相互に行う。これにより、移送装置1および台車2の作動が前記移載装置の作動を含めて連携し、台車2から移送装置1へとワークの受け渡しが行われる。
【0035】
また、このとき、台車2の台車用記憶体7の自車情報データに関する書き換え(書き込み)が行われる。なお、第一到着ステーション3Bでは、台車2から移送装置1へとワークが受け渡されるのに伴って、台車用記憶体7中のワークの積載の有無についての情報が「有り」を示す状態から「無し」を示す状態へと書き換えられると共に、台車用記憶体7に行き先となるステーション3(例えば出発ステーション3A)を示す情報が書き込まれ、さらに、ステーション用記憶体9Bに、台車2から移送装置1に渡されたワークに関する情報が書き込まれる。なお、ステーション用記憶体9Bに書き込まれたワークに関する情報は、例えば、第一到着ステーション3Bにある移送装置1のワークの移送先にワークと共に引き継がれる。
【0036】
そして、台車用記憶体7中のワークの積載の有無についての情報が「有り」を示す状態から「無し」を示す状態へと書き換えられ、台車2側コントローラがワークの受け渡しが完了したことを認識すると、第一到着ステーション3Bに停止していた台車2は走行を開始し、バイパスライン4bの下流端とメインライン4aとの交差部へと向かう。
【0037】
一方、台車2の行き先に第一到着ステーション3Bが含まれていない場合には、台車2は誘導マーク4の左沿いに走行し、バイパスライン4b側へと向かわずにメインライン4aに沿ってそのまま走行する。なお、この場合にも、メインライン4aとバイパスライン4bの下流端との交差部へ向かうこととなる。
【0038】
そして、メインライン4aとバイパスライン4bの下流端との交差部に台車2が接近する際に、台車2の情報授受装置8が前記交差部近傍に設けられた交差部進入用記憶体12から、他の台車2の前記交差部への進入の有無に関する情報を読み取り、前記交差部への他の台車2の進入が有るとの情報を読み取った場合には前記台車2は交差部の手前で減速後停止し、前記交差部への他の台車2の進入が無いとの情報を読み取った場合には前記台車2は交差部へ進入すると共に、進入したことを前記情報授受装置8が前記交差部進入用記憶体12に書き込み、この書き込みが台車2の交差部の通過後に消去されるように構成されている。
【0039】
すなわち、台車2が前記交差部に接近する際に、他の台車2が交差部に進入中であるというフラグが立っていない場合には、台車2は交差部進入用記憶体12に自車の識別情報(番号等)を書き込むと共に、前記交差部へと進入する。なお、前記書き込みにより、前記台車2が交差部に進入中であるというフラグが立つ。そして、前記台車2はそのまま走行して交差部を通過するのであり、その通過後に前記交差部進入用記憶体12の下流側にある交差部通過用記憶体13を前記台車2の情報授受装置8が認識すると、情報授受装置8は前記交差部進入用記憶体12への自車の識別情報の書き込みを消去すると共に、台車2の走行は継続される。なお、前記消去により、前記フラグが消える(倒れる)。
【0040】
反対に、台車2が前記交差部に接近する際に、他の台車2が交差部に進入中であるというフラグが立っている場合には、前記台車2は減速後停止し、前記フラグが消えるまで待機する。そして、フラグが消えた後の台車2の作動は、上述のフラグが立っていない場合の作動と同様である。
【0041】
すなわち、図3は、前記搬送システムの交差部の構成を概略的に示す説明図であり、この図に示すように、交差部に複数(図示例では2台)の台車2が進入する場合、前記交差部に設けられた交差部進入用記憶体12に情報授受装置8が自車の識別情報を先に書き込んだほうの台車が交差部に進入し、他の台車2は、交差部に進入した台車2が交差部を通過するまで待機することとなる。因みに、図3の右部には、交差部に接近した2台の台車2の台車用記憶体7に記憶されている自車情報データの一例をそれぞれ示している。
【0042】
ここで、前記交差部に複数の台車2が進入した場合であって、それら複数の台車2の台車用記憶体7に記憶(登録)された優先度に違いがある場合には、優先度の高い方の台車2が優先して交差部進入用記憶体12に自車の識別情報を書き込み、交差部に進入するように構成されていてもよい。この場合、例えば、前記優先度の高い台車2の交差部への進入を優先度の低い台車2の交差部への進入を優先させるフラグが立つように、前記交差部進入用記憶体12等を構成してもよいし、上記のようなフラグを立たせるための優先度用の記憶体(図示していない)を交差部近傍に別途設けてもよい。
【0043】
上記のように、メインライン4aにおいてバイパスライン4bが接続された部分またはバイパスライン4bを通過した台車2は、誘導マーク4に沿って走行し、メインライン4aとバイパスライン4cとに分岐する分岐部へと向かう。そして、この分岐部に台車2が接近する際に、台車2の情報授受装置8が前記分岐部近傍に設けられた分岐部用記憶体11内の情報データ(台車2の走行経路に関する情報)を自動的に読み取ってシーケンサに一旦全て格納し、台車用記憶体7に登録されている行き先を照会して、前記情報データから自車への指示に該当する情報を検索・抽出して走行プログラムに転送し、その走行プログラムに基づいて台車2は分岐部から延びる複数の分岐路の一つに進入(走行)する。この場合、台車2は、第二到着ステーション3Cを避けてメインライン4aをそのまま走行するか、あるいは、バイパスライン4cに進入して第二到着ステーション3Cに停止することになる。すなわち、メインライン4aとバイパスライン4cとに分岐する分岐部に接近した際の台車2の作動は、図2を用いて説明したメインライン4aとバイパスライン4bとに分岐する分岐部に接近した際の台車2の作動と同様である。
【0044】
ここで、台車2の行き先に第二到着ステーション3Cが含まれる場合、台車2は誘導マーク4の右沿いに走行し、バイパスライン4cに進入して第二到着ステーション3Cに停止する。この停止後、台車2側コントローラと移送装置1側コントローラとが、前記台車用記憶体7、情報授受装置8、ステーション用記憶体9Cおよび情報授受装置10Cを介して情報の伝達を相互に行う。これにより、移送装置1および台車2の作動が前記移載装置の作動を含めて連携し、台車2から移送装置1へとワークの受け渡しが行われる。
【0045】
また、このとき、台車2の台車用記憶体7の自車情報データに関する書き換え(書き込み)が行われる。なお、第二到着ステーション3Cでは、台車2から移送装置1へとワークが受け渡されるのに伴って、台車用記憶体7中のワークの積載の有無についての情報が「有り」を示す状態から「無し」を示す状態へと書き換えられると共に、台車用記憶体7に行き先となるステーション3(例えば出発ステーション3A)を示す情報が書き込まれ、さらに、ステーション用記憶体9Cに、台車2から移送装置1に渡されたワークに関する情報が書き込まれる。なお、ステーション用記憶体9Cに書き込まれたワークに関する情報は、例えば、第二到着ステーション3Cにある移送装置1のワークの移送先にワークと共に引き継がれる。
【0046】
そして、台車用記憶体7中のワークの積載の有無についての情報が「有り」を示す状態から「無し」を示す状態へと書き換えられ、台車2側コントローラがワークの受け渡しが完了したことを認識すると、第二到着ステーション3Cに停止していた台車2は走行を開始し、バイパスライン4cの下流端とメインライン4aとの交差部へと向かう。
【0047】
一方、台車2の行き先に第二到着ステーション3Cが含まれていない場合には、台車2は誘導マーク4の左沿いに走行し、バイパスライン4c側へと向かわずにメインライン4aに沿ってそのまま走行する。なお、この場合にも、メインライン4aとバイパスライン4cの下流端との交差部へ向かうこととなる。
【0048】
なお、メインライン4aとバイパスライン4cの下流端との交差部に台車2が接近した後の作動については、図3を用いて説明したメインライン4aとバイパスライン4bの下流端との交差部に台車2が接近した後の作動と同様であるので、その説明は省略する。
【0049】
上記のように、メインライン4aにおいてバイパスライン4cが接続された部分またはバイパスライン4cを通過した台車2は、誘導マーク4に沿って走行し、メインライン4aとバイパスライン4dとに分岐する分岐部へと向かう。そして、この分岐部に台車2が接近する際に、台車2の情報授受装置8が前記分岐部近傍に設けられた分岐部用記憶体11内の情報データ(台車2の走行経路に関する情報)を自動的に読み取ってシーケンサに一旦全て格納し、台車用記憶体7に登録されている行き先を照会して、前記情報データから自車への指示に該当する情報を検索・抽出して走行プログラムに転送し、その走行プログラムに基づいて台車2は分岐部から延びる複数の分岐路の一つに進入(走行)する。この場合、台車2は、充電ステーション3Dを避けてメインライン4aをそのまま走行するか、あるいは、バイパスライン4dに進入して充電ステーション3Dに停止することになる。すなわち、メインライン4aとバイパスライン4dとに分岐する分岐部に接近した際の台車2の作動は、図2を用いて説明したメインライン4aとバイパスライン4bとに分岐する分岐部に接近した際の台車2の作動と同様である。
【0050】
ここで、台車2の行き先に充電ステーション3Dが含まれる場合、台車2は誘導マーク4の右沿いに走行し、バイパスライン4dに進入して充電ステーション3Dに停止する。この停止後、台車2側コントローラと移送装置1側コントローラとが、前記台車用記憶体7、情報授受装置8、ステーション用記憶体9Dおよび情報授受装置10Dを介して情報の伝達を相互に行う。これにより、充電装置6および台車2の作動が連携し、台車2のバッテリーの充電が行われる。
【0051】
また、このとき、台車2の台車用記憶体7の自車情報データに関する書き換え(書き込み)が行われる。具体的には、台車用記憶体7中の走行回数がリセットされ0に戻る。すなわち、台車2が出発ステーション3Aに停止するごとに、台車用記憶体7中の走行回数が1ずつ増え、その走行回数が所定値に達すると、台車2の行き先に充電ステーション3Dが指定される。そして、充電ステーション3Dにおける充電後、前記走行回数がリセットされることにより、台車2は再び所定の回数だけ誘導マーク4に沿った走行を行うことになる。この所定の回数は、台車2のバッテリーの容量等に応じて決定すればよい。
【0052】
そして、台車用記憶体7中の走行回数がリセットされ、台車2側コントローラが充電が完了したことを認識すると、充電ステーション3Dに停止していた台車2は走行を開始し、バイパスライン4dの下流端とメインライン4aとの交差部へと向かう。
【0053】
一方、台車2の行き先に充電ステーション3Dが含まれていない場合には、台車2は誘導マーク4の左沿いに走行し、バイパスライン4d側へと向かわずにメインライン4aに沿ってそのまま走行する。なお、この場合にも、メインライン4aとバイパスライン4dの下流端との交差部へ向かうこととなる。
【0054】
なお、メインライン4aとバイパスライン4dの下流端との交差部近傍に台車2が接近した後の作動については、図3を用いて説明したメインライン4aとバイパスライン4bの下流端との交差部近傍に台車2が接近した後の作動と同様であるので、その説明は省略する。
【0055】
その後、台車2は出発ステーション3Aに戻り、上記作動を繰り返すこととなる。
【0056】
なお、本発明は上記実施の形態に限られず、種々に変形して実施することができる。例えば、前記分岐部はいずれも一本のメインライン4aから二本の分岐路が延びるように構成されたものであったが、三本の分岐路が延びるように構成されていてもよい。この場合、台車2を誘導マーク4aの右沿い、左沿い、中央沿いに走行させることにより、台車2を任意の分岐路に進入させることができる。また、二本または三本の分岐路が延びる分岐部を組み合わせてもよい。さらに、四本以上の分岐路が延びる分岐部を設けてもよい。
【0057】
また、上記実施の形態では、充電ステーション3Dにおいて台車2のバッテリーを充電した際に、台車2の台車用記憶体7に記憶された走行回数をリセットしているが、リセットせずそのまま走行回数のカウントを続けると共に、充電ステーション3Dにおいてバッテリーの充電を行う基準とする走行回数の値を、例えば20回、40回、60回…等と複数設定してもよい。
【0058】
また、前記台車2は上記の無軌道式の台車に限られず、ガイドレールに沿って走行する軌道式の台車であってもよい。この場合、台車2に前記検出手段(センサ)5は不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施の形態に係る搬送システムの構成を概略的に示す説明図である。
【図2】前記搬送システムの分岐部の構成を概略的に示す説明図である。
【図3】前記搬送システムの交差部の構成を概略的に示す説明図である。
【図4】従来の搬送システムの構成を概略的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0060】
1 移送装置
2 台車
3 ステーション
8 読み取り手段(情報授受装置)
11 分岐部用記憶体
12 交差部進入用記憶体
13 交差部通過用記憶体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移送装置によるワークの移送と台車によるワークの搬送とを組み合わせて行い、前記台車が、所定の走行経路を走行すると共にワークの受け渡しを行うステーションで停止し、ステーションに停止した台車と前記移送装置との間でワークが受け渡しされる搬送システムであって、前記台車の走行経路に関する情報を記憶し、前記走行経路の分岐部近傍に配置される分岐部用記憶体と、前記台車に設けられ、前記分岐部用記憶体に記憶された情報を読み取る読み取り手段とを備え、台車が前記分岐部に接近する際に前記台車に設けられた読み取り手段が前記分岐部近傍に設けられた分岐部用記憶体から台車の走行経路に関する情報を読み取り、台車はその情報に基づいて分岐部から延びる複数の分岐路の一つに進入するように構成されていることを特徴とする搬送システム。
【請求項2】
移送装置によるワークの移送と台車によるワークの搬送とを組み合わせて行い、前記台車が、所定の走行経路を走行すると共にワークの受け渡しを行うステーションで停止し、ステーションに停止した台車と前記移送装置との間でワークが受け渡しされる搬送システムであって、前記走行経路の交差部近傍に配置される交差部用記憶体と、前記台車に設けられ、前記交差部用記憶体に記憶された情報の読み取りおよび前記交差部用記憶体への情報の書き込みを行う情報授受装置とを備え、台車が前記交差部に接近する際に前記台車に設けられた情報授受装置が前記交差部近傍に設けられた交差部用記憶体から他の台車の前記交差部への進入の有無に関する情報を読み取り、前記交差部への他の台車の進入が有るとの情報を読み取った場合には前記台車は交差部の手前で停止し、前記交差部への他の台車の進入が無いとの情報を読み取った場合には前記台車は交差部へ進入すると共に、進入したことを前記情報授受装置が前記交差部用記憶体に書き込み、この書き込みが台車の交差部の通過後に消去されるように構成されていることを特徴とする搬送システム。
【請求項3】
移送装置によるワークの移送と台車によるワークの搬送とを組み合わせて行い、前記台車が、所定の走行経路を走行すると共にワークの受け渡しを行うステーションで停止し、ステーションに停止した台車と前記移送装置との間でワークが受け渡しされる搬送システムであって、前記台車の走行経路に関する情報を記憶し、前記走行経路の分岐部近傍に配置される分岐部用記憶体と、前記台車に設けられ、前記分岐部用記憶体に記憶された情報を読み取る読み取り手段とを備え、台車が前記分岐部に接近する際に前記台車に設けられた読み取り手段が前記分岐部近傍に設けられた分岐部用記憶体から台車の走行経路に関する情報を読み取り、台車はその情報に基づいて分岐部から延びる複数の分岐路の一つに進入するように構成されており、また、前記走行経路の交差部近傍に配置される交差部用記憶体と、前記台車に設けられ、前記交差部用記憶体に記憶された情報の読み取りおよび前記交差部用記憶体への情報の書き込みを行う情報授受装置とを備え、台車が前記交差部に接近する際に前記台車に設けられた情報授受装置が前記交差部近傍に設けられた交差部用記憶体から他の台車の前記交差部への進入の有無に関する情報を読み取り、前記交差部への他の台車の進入が有るとの情報を読み取った場合には前記台車は交差部の手前で停止し、前記交差部への他の台車の進入が無いとの情報を読み取った場合には前記台車は交差部へ進入すると共に、進入したことを前記情報授受装置が前記交差部用記憶体に書き込み、この書き込みが台車の交差部の通過後に消去されるように構成されていることを特徴とする搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−66044(P2007−66044A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−252004(P2005−252004)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000191353)新明工業株式会社 (75)
【Fターム(参考)】