説明

搬送用部材および搬送装置

【課題】比較的軽量で、加速度を受けても変形が少ない搬送部材を提供する。
【解決手段】対象物を搬送するための搬送用部材であって、前記対象物が載置される一方主面12Aを備える、セラミックスを主成分とする板状部12と、該板状部12の他方主面に接合された、前記板状部12と略同一のヤング率を有する肋材部14と、前記板状部12の前記他方主面12Bと前記肋材部14とを接合する接合層とを有しており、該接合層の厚さをT、前記接合層のヤング率をY1、前記板状部12および前記肋材部14のヤング率をY2としたとき、Y1≦Y2であり、下記式(1)で表すαが、0<α≦1.16を満たすことを特徴とする搬送用部材を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス材料からなる板状部を備える搬送部材、および搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば半導体デバイス製造工程や、液晶基板等のディスプレイ基板製造工程等に用いる露光装置等において、処理対象基板である半導体基板やディスプレイ基板を搬送するためのステージとして、例えば下記特許文献1に記載されているような、セラミックスからなる搬送ステージが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−10105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体デバイス製造やディスプレイ基板製造における高スループット化の要求に対応し、露光装置においても、処理対象基板の大型化と、ステージ駆動速度の高速化とが進行している。セラミックスからなる搬送ステージには、なるべく軽量であること、かつ、高速移動にともなって比較的強い加速度がかかった際の変形が少ないこと、等が要求されている。
【0005】
特許文献1に記載されているような、単に板状のセラミックス体では、軽量化の為に板厚を薄くした場合、剛性が低下してしまい、加速度がかかった際の変形が大きくなってしまうといった課題があった。
【0006】
また、板状のセラミックス体を作製する際、成形時や成形後の生加工時に板状体の裏面に肋材部を形成し、ステージの剛性を比較的高くしたステージも提案されているが、このように肋材部を形成した場合も、依然として変形が大きいという問題がある。本発明は、かかる課題を解決することを目的になされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、対象物を搬送するための搬送用部材であって、前記対象物が載置される一方主面を備える、セラミックスを主成分とする板状部と、該板状部の他方主面に接合された、前記板状部と略同一のヤング率を有する肋材部と、前記板状部の前記他方主面と前記肋材部とを接合する接合層とを有しており、該接合層の厚さをT、前記接合層のヤング率をY1、前記板状部および前記肋材部のヤング率をY2としたとき、Y1≦Y2であり、下記式(1)で表すαが、0<α≦1.16を満たすことを特徴とする搬送用部材を提供する。
【0008】
【数1】

【発明の効果】
【0009】

本発明の搬送部材は、比較的軽量で、加速度を受けても変形が少ない。また、本発明の搬送装置は、対象物を、比較的高速に、高い位置精度で搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)および(b)は、本発明の搬送用部材の一実施形態である搬送用部材について説明する概略斜視図である。
【図2】図1に示す搬送用部材の一部を拡大して示す概略断面図である。
【図3】図1に示す搬送部材を備えて構成された、本発明の搬送装置の一実施形態である搬送装置について説明する概略構成図である。
【図4】図1に示す搬送部材における板状部の変形の程度を示すグラフである。
【図5】図4に示す変形量の算出に用いた、シミュレーションモデルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1(a)および(b)は、本発明の搬送用部材の一実施形態である搬送用部材10について説明する概略斜視図である。図1(a)は、搬送用部材10を、後述する一方主面12Aの側から見た斜視図であり、図1(b)は、搬送用部材10を、後述する他方主面12Bの側から見た斜視図である。また、図2は、搬送用部材10の一部を拡大して示す概略断面図である。また、図3は、搬送部材10を備えて構成された、本発明の搬送装置の一実施形態である搬送装置70について説明する概略構成図である。
【0013】
搬送用部材10は、板状部12と、肋材部14(14a〜14i)と、板状部12と肋材部14とを接合する接合層16と、を備えて構成されている。本実施形態において、板状部12と肋材部14とは、いずれもSiCを主成分として構成されており、板状部12と肋材部14は、例えば300〜500GPaの範囲のヤング率を有する。
【0014】
搬送用部材10は、図3に示すような搬送装置70に装着されて用いられる。搬送装置70は、例えば半導体デバイスの製造装置や、液晶基板等のディスプレイ基板の製造装置等に備えられ、半導体ウエハ等の処理対象物の搬送・位置決めに用いられる。
【0015】
搬送装置70は、搬送部材10を移動させることで、搬送部材10の一方主面12Aに載置された対象物を搬送する装置である。X軸ガイド74とYスライド79とを連結しY軸ガイド81に沿ってY軸リニアモータ86にてX軸ガイド74がY軸方向の移動を行ない、X軸ガイド74に沿ってXスライド85がX軸方向の移動を行なう。
【0016】
搬送用部材10は、搬送装置70において、一方主面12Aを上側に向けて配置され、Y軸リニアモータ86やXスライド85によって、一方主面12Aに略平行に、X軸方向およびY軸方向に移動する。
【0017】
半導体デバイス製造やディスプレイ基板製造における高スループット化の要求に対応し、搬送装置70のような搬送・位置決め手段においても、処理対象物を搬送する搬送部材10のようなステージの大型化、および搬送部材10の移動速度の高速化が進行している。搬送部材10は、X軸方向に沿った辺の長さが約1000mm、Y軸方向に沿った辺の長さが約1000mmと、半導体ウエハ等の被処理対象物が載置される一方主面12Aの面積が、比較的大きくされている。搬送用部材10では、比較的大きな面積の一方主面12Aを備える一方、板状部12の厚さt0は約5mmと比較的小さくされ、板状部12Aは軽量化されている。搬送用部材10は比較的軽量であり、Y軸リニアモータ86やXスライド85によって、比較的高速に移動することができる。搬送装置70では、軽量な搬
送部材10を比較的高速に移動させることができる。搬送部材10を比較的高速に移動させる場合、搬送部材10の移動・停止にともない、搬送部材10には、一方主面12Aに平行な方向に比較的大きな加速度がかかる。
【0018】
板状部12の他方主面12Bには、肋材部14が接合層16を介して接合されている。搬送部材10では、4つの側板肋材部14a〜14dが、板状部12の他方主面12Bの周縁辺それぞれに配置されている。また、中央部分に柱状肋材部14eが配置されるとともに、側板肋材部14a〜14dと柱状部材14eとを繋ぐように、4つの梁状肋材部14f〜14iが設けられている。
【0019】
搬送部材10では、側板肋材部14a〜14dの幅t1が約5mm、梁状肋材部14f〜14iの幅t2が約3mm、柱状部材14eの一辺の幅t3が約20mm、となっている。各肋材部の高さhは、いずれも約55mmとなっている。搬送部材10では、これら肋材部14によって、板状部12の変形が抑制されている。例えば、板状部12に肋材部14を設けず、単純に厚さ約55mmの板状体で板状部12を構成した場合、板状部12は重くなり、搬送速度や搬送精度を高くすることができない場合もある。肋材部14を備える搬送部材10は、比較的軽量でありながら、一方主面12に平行な方向の加速度に対する変形は少なくされている。
【0020】
加速度に対する変形が小さい搬送部材を提供するためには、板状部に補強構造として肋部を形成することが良いことは知られている。板状のセラミックス体に補強構造として肋部を設ける場合、通常、成型や研作加工によって、板状部と一体に肋部を形成する。従来は、このように一体に形成された肋部の方が、板状部と肋材部とのヤング率が同一で、かつ接合部分においてヤング率の変動がないので剛性も高く、加速度がかかった場合の変形も比較的少ないと考えられていた。
【0021】
本願発明者は、種々のシミュレーションによって、従来と全く異なる発想の構造の搬送部材を提案するものである。具体的には、本願発明者は、種々のシミュレーションによって、接合層の厚さとヤング率に対する、板状部材の変形の大きさの関係を確認してている。本願発明者は、このシミュレーションにより、板状部と一体に肋部を形成する場合よりも変形の少ない搬送部材を、板状部と肋材部との接合によって形成できる条件を、全く新たに見出している。
【0022】
具体的には、本実施形態の搬送部材10では、接合層16の厚さをT、接合層16のヤング率をY1、板状部12および肋材部14のヤング率をY2としたとき、Y1≦Y2であり、下記式(1)で表すαが、0<α≦1.16を満たしている。この条件を満たしていることで、搬送部材10は、駆動にともなう熱による熱応力が小さく、かつ、この一方主面12Aに平行な方向に大きな加速度がかかった場合でも、板状部12の変形を比較的小さく抑制することが可能となっている。たとえば、下記式(1)を満たすことで、搬送用部材10と同等形状の搬送用部材を、成型や研作加工で作製した場合に比べて、板状部12の変形をより小さくすることが可能となる。
【0023】
【数2】

【0024】
搬送部材10では、板状部材12と肋材部14とが、いずれもSiCを主成分としたセラミックス部材であり、この板状部12と肋材部14のヤング率Y1はY1=440GPaとなっている。また、搬送部材10では、板状部12の他方主面12Bが、一辺100
0mmと比較的大きく、例えば側板肋材部14a〜14dの長さが約1000mm、梁状肋材部14f〜14iの長さが約500mmと比較的長くなっている。このため、側板肋材部14a〜14dの姿勢の微小なずれや、板状部12の他方主面12Bの表面の微小な荒れ等に起因し、側板肋材部14a〜14dの接合や、梁状肋材部14f〜14iの接合において、板状部材12と肋材部14(側板肋材部14a〜14dや、梁状肋材部14f〜14i)との間隔が、比較的大きくなり易い。すなわち、板状部の面積が大きくなると、接合層の厚さは比較的大きくなり易い。搬送部材10では、接合層Tの厚さは比較的大きく、例えば0.5mmとされている。
【0025】
かかる搬送部材10において、接合層16のヤング率T2は、上記式(1)を満たす範囲、例えば100〜200GPa程度の値とされている。通常、接合層16の厚さが大きい場合は、例えば、二酸化珪素(SiO)にホウ酸(B(OH))が混合された、いわゆるホウ珪酸ガラス成分の粉末を溶融して固化させただけの接合層が形成される。このようにホウ珪酸ガラス成分の粉末を溶融して固化させただけの場合、ヤング率は約60〜70GPaと、100GPa未満にとどまる場合が多い。搬送部材10では、例えば、ホウ珪酸ガラスなどのガラス成分に、フィラーとして、SiC等のセラミックス成分を含有させた接合層14を用いている。このような接合層は、SiC等のセラミックス成分の含有量や製造条件を変更することで、70GPa〜300GPaと広い範囲でヤング率の大きさを調整することができる。通常、接合層を介した接合で、肋部を有する構造体を構成した場合、特に大型になるほど接合層の厚さは大きくなり、ガラス成分の割合が大きくなる傾向になるが、本願発明者の上記シミュレーションにより、この接合層のヤング率を、通常のガラス接合における接合層以上のヤング率に制御することによって、搬送部材全体の変形を抑制できることがわかった。
【0026】
また、上記ヤング率がY1≦Y2を満たすことで、搬送部材の駆動にともなって発生する熱に起因した、搬送部材にかかる熱応力が抑制できる。まず、本願発明者は、図1に示す搬送部材の形状を再現する有限要素モデルを作成し、公知の有限要素解析ソフトであるANSYSを用い、搬送部材に発生する熱応力の大きさを計算した。このシミュレーションでは、雰囲気の温度を20度とし、図1における下端面に40℃に昇温したモータ駆動部が配置された状態を再現するシミュレーションを行った。より具体的には、モータ駆動部を模してSUS304(厚み5mm)板を再現するモデル(図示せず)を配置し、この状態での熱応力をシミュレーションによって求めた。
【0027】
まず、搬送部材モデルとして、接合層を備えない以外は、図1と同様の搬送部材をもつモデルを用い、このモデルの材質をSiCと仮定してヤング率を410GPaに設定した場合、このモデルに発生する熱応力は最大で290MPaであった。また、図1と同様の搬送部材をもつモデルを用い、このモデルの材質をSiCと仮定してヤング率を440GPaに設定した場合、このモデルに発生する熱応力は最大で308MPaであった。
【0028】
次に、図1に示す搬送部材10の、接合層16も正確に再現したモデルを作成し、このモデルにおける接合層のヤング率と厚さとを変更した各場合について、搬送部材に生じる熱応力の最大値を計算した。結果を下記表1に示す。表1に示すように、ヤング率がY1≦Y2を満たすことで、搬送部材の駆動にともなって発生する熱に起因した、搬送部材にかかる熱応力が抑制できることがわかる。
【0029】
【表1】

【0030】
図4は、本願発明者が実施したシミュレーションによって得られた、搬送部材10における板状部の変形の程度を示すグラフである。図4では、板状部12および肋材部14のヤング率Y1を440GPaに固定し、接合層16の厚さTとヤング率Y2の値を種々変更した場合における、上記式(1)に対する板状部12の変形量の程度を表している。なお、図5は、図4に示す変形量の算出に用いた、シミュレーションモデルを示す図である。このシミュレーションでは、図5に示すように、板状部12の一部を再現する部分モデル22、側板肋材部14aを再現する部分モデル24a、梁状肋材部14aを再現する部分モデル24c、が接合層16を再現する部分モデル26を介してそれぞれ接合されている。部分モデル24a、および部分モデル24cは、いずれもヤング率は440GPaに設定した。
【0031】
図4に示す値は、図5に示すシミュレーションモデルを用いて、板状部12の変形量を近似的に求めた値である。具体的には、図4に示す数値は、構造解析シミュレータであるANSYSを用い、有限要素法による解析を行って得られた値である。この有限要素法解析では、図5に示すモデルに、図中の矢印で示す方向の加速度(9806.6mm/sec)を与え、この場合に発生する板状部12の変形量を求めている。図4に示す値は、このようにして求められた値である。また、図4で示す破線は、図5に示すモデルにおいて、部分モデル26を設けず、板状部12や肋材部14を再現する部分モデルを直接当接させて接合したモデルを用い、上記シミュレーションを行った場合の変形量を示している。この直接当接させた状態でのシミュレーションでは、板状部12と肋材部14とのヤング率は、いずれも410GPaで計算している。例えばSiCのヤング率は、410GPa〜440GPaの範囲で、ある程度の調整が可能となっている。
【0032】
この状態で上記シミュレーションを実施した場合、板状部12を再現する部分モデル22の変形量は、219.3nmであった。接合層16の厚さが比較的大きい場合でも、上記式(1)に示すαが0<α≦1.16を満たしている場合は、接合層16を設けない従来の構造、すなわち成型や研作加工によって板状部に一体に肋部が設けられた構造に比べて、加速度にともなう板状部12の変形が小さくされている。板状部12の面積が比較的大きいことで、接合層16の厚さTが比較的大きくなる場合であっても、この式(1)で表したパラメータαの範囲を規定することで、加速にともなう変形を小さくすることができる。また、図4に示すグラフからも明らかであるように、上記αが例えばα≦1.0を満たす場合、板状部の変形量を比較的低いレベルに抑えておくことができる。
【0033】
図5に示すモデルは、搬送部材10の最低限の構成要素を再現したモデルである。図5に示すモデルによるシミュレーション結果は、搬送部材10の微小部位での変形の程度を表している。搬送部材が、図1に示すような形状でなく、肋材部の配置等が異なっている場合であっても、板状部の主面に平行な方向に加速度がかかる状態において、搬送部材に
おける最低限の各構成要素において、図4に示す変形が生じる。図5に示すモデルを用いた、図4に示すシミュレーション結果は、比較的複雑な構成の搬送部材10においても、パラメータαに対する変形量の関係を、よく表しているといえる。
【0034】
このような作用効果は、本願発明者が実施した、試行錯誤をともなう上記シミュレーション作業によって、初めて確認された事項である。
【0035】
次に、搬送部材10の製造方法について説明しておく。まず、板状部12と肋材部14との前駆体となる未焼成セラミックス成形体を種々の成形法を用いて成形する。特に大型の成形体を作製する場合には、静水圧プレス(コールドアイソスタティックプレス、以下CIPと記載。)成形装置により、セラミックス粉体(本実施形態では、主にSiC)を成形した後、切削加工等により所定形状とするのがより好ましい。ここで、成形体表面は切削加工等により、平面度を3次元測定器による測定値が50〜100μm、算術平均表面粗さRaを面粗さ測定器による測定値が1.0〜2.0μmとするのが好ましい。なお、上記面粗さ測定器で測定する際、成形体に損傷を及ぼさないためには触針の触針径は0.3mmとするのがより好ましい。
【0036】
次に、接合層の原料となるスラリーを作製する。このスラリーは、ガラス成分の粉体と、フィラーとなるセラミックス粉末(本実施形態ではSiC)とを溶媒に投入し、万能混合機により真空脱泡しながら撹拌、混合して作製する。そして、スラリーをセラミックス成形体の接合面に塗布し、セラミック成形体同士を接合面にて当接させた後、加圧・乾燥する。なお、スラリーの塗布は、接合する2つのセラミックス成形体の両方の接合面に塗布しても良いし、片方のセラミックス成形体の接合面に塗布してもよく、焼成による収縮率を考慮して塗布される。最後に、数十時間程度の脱脂工程を経た後、大気中または真空中にて焼成することで、搬送部材10を得ることができる。
【0037】
上記実施形態では、板状部12や肋材部14がSiCとされているが、板状部12や肋材部14はSiCに限定されない。例えば、Al、SiN、SiC、コージライト等を用いてもよい。加速度による変形を抑制するには、板状部12や肋材部14は、ヤング率が比較的高いことが好ましい。板状部12や肋材部14は、例えば、SiCを主成分とする部材や、BCを主成分とする部材、SiCとBCとの混合物を主成分とする部材、等であることが好ましい。ここで、SiCを主成分とするとは、SiCの含有割合が50質量%以上であることをいい、BCを主成分とするとは、BCの含有割合が50質量%以上であることをいう。また、SiCとBCとの混合物を主成分とするとは、SiCの含有割合とBCの含有割合との合計が、50質量%以上であることをいう。SiCとBCは、ヤング率が比較的大きい部材である。板状部12や肋材部14を、これらSiCやBCを主成分とする部材で構成することで、加速度に対する変形が比較的小さい搬送部材を得ることができる。
【0038】
なお、上記実施形態では、接合層14として、ガラス成分にフィラーとしてのセラミックスがに混合された接合層を設けている。接合層14を構成する材質に特に限定はなく、上記式(1)におけるαがα≦1.16を満たす範囲で、板状部材12や肋材部14同士を接合する接合材を用いればよい。例えば、上記式(1)を満たす範囲であれば、例えば公知の樹脂接着剤や、Ag−Cu−Tiなどのメタライズ材、金属ロウ材、また、バインダにセラミックス粉末が混合されたセラミックス接合材など、種々の接合材を用いることができる。
【0039】
上記実施形態では、一方主面12Aの大きさが、1000mm×1000mmと比較的大きな板状部12を用いた例を示している。本願は、板状部12Aの大きさや厚さ、肋材部14(14a〜14i)の大きさや厚さや配置など、特に限定されない。例えば、板状
部と肋材部とは、異なる材料で構成し、これら異なる材質の部材を接合層を介して接合してもよい。例えば、板状部をコージェライトで構成するとともに、肋材部をSiCで構成したり、板状部をSiCで構成するとともに、肋材部をコージェライトで構成してもよい。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良が可能である。
【符号の説明】
【0041】
10 搬送用部材
12 板状部12
12A 一方主面
14a〜14i 肋材部
16 接合層
70 搬送装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を搬送するための搬送用部材であって、
前記対象物が載置される一方主面を備える、セラミックスを主成分とする板状部と、
該板状部の他方主面に接合された、前記板状部と略同一のヤング率を有する肋材部と、
前記板状部の前記他方主面と前記肋材部とを接合する接合層とを有しており、
該接合層の厚さをT、前記接合層のヤング率をY1、前記板状部および前記肋材部のヤング率をY2としたとき、Y1≦Y2であり、下記式(1)で表すαが、0<α≦1.16を満たすことを特徴とする搬送用部材。
【数1】

【請求項2】
前記セラミックスは、SiCまたはBCのいずれか一方を50質量%以上含有することを特徴とする請求項1記載の搬送用部材。
【請求項3】
前記セラミックスは、SiCおよびBCを含有し、SiCとBCとの合計が50質量%以上であることを特徴とする請求項1記載の搬送用部材。
【請求項4】
前記接合層のヤング率Y1が100GPa以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の搬送用部材。
【請求項5】
前記接合層の厚さTが0.5mm以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の搬送用部材。
【請求項6】
前記接合層は、ガラス成分に炭化物セラミックスが含有されてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の搬送用部材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の搬送用部材と、
該搬送用部材を前記板状体の前記一方主面と平行な方向に沿って移動させる移動機構とを備えて構成された搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−12142(P2012−12142A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148550(P2010−148550)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】