搬送装置および搬送装置の作製方法
【課題】本発明は、水晶素子、セラミック素子、半導体素子等の電子部品に対して、たとえば、蒸着またはスパッタ等の処理を行う際にこれらを搬送する搬送装置および搬送装置の作製方法に関するものである。
【解決手段】本発明に使用する3層部材は、エッチング不可能な部材の両側からエッチング可能な部材によって挟まれている。また、前記3層部材には、一方の側に多数の被搬送部材を収納する収納部が形成されている。前記3層部材の上に載置される上部板は、前記収納部の開口とほぼ同じ大きさのテーパー状開口部を備えている。前記被搬送部材を収納する収納部は、垂直な側壁からなり、搬送中に被搬送部材がガタツクことがない。また、テーパー状開口部を備えた上部板は、前記被搬送部材を前記収納部に収納する際にガイドとなり、収納が容易になる。
【解決手段】本発明に使用する3層部材は、エッチング不可能な部材の両側からエッチング可能な部材によって挟まれている。また、前記3層部材には、一方の側に多数の被搬送部材を収納する収納部が形成されている。前記3層部材の上に載置される上部板は、前記収納部の開口とほぼ同じ大きさのテーパー状開口部を備えている。前記被搬送部材を収納する収納部は、垂直な側壁からなり、搬送中に被搬送部材がガタツクことがない。また、テーパー状開口部を備えた上部板は、前記被搬送部材を前記収納部に収納する際にガイドとなり、収納が容易になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶素子、セラミック素子、半導体素子等の電子部品に対して、たとえば、蒸着またはスパッタ等の処理を行う際にこれらを搬送する搬送装置および搬送装置の作製方法に関するものである。本発明は、特に、50μm未満の薄さの電子部品を処理する際に搬送する搬送装置および搬送装置の作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9(イ)および(ロ)は従来のマスキング装置を説明するための概念図である。図9(イ)において、下部マスク板41は、多数の下部開口411を備えている。また、スペーサ板42は、たとえば、水晶素子44のような薄い電子部品を収納する収納部421を備えている。
【0003】
さらに、上部マスク板43は、前記下部開口411と図面により決められた位置に上部開口431を備えている。図9に示す前記下部マスク板41、スペーサ板42、および上部マスク板43は、たとえば、ステンレス(SUS430)製の薄板からなるが、実際の厚さに必ずしも比例して描かれていない。
【0004】
前記下部マスク板41の上に載置されたスペーサ板42の収納部421には、前記水晶素子44が収納された後、上部マスク板43によって覆われる。前記のような状態で、前記下部開口411と上部開口431は、前記水晶素子44の両面に電極を蒸着またはスパッタ等を行うための膜付け口となっている。
【0005】
図9(イ)に示すマスキング装置4は、前記下部マスク板41、スペーサ板42、および上部マスク板43の位置関係が一致するように図示されていない複数の孔とピンとによって、ずれないようにしている。しかし、各々別に製造される前記3枚のステンレス薄板は、ワーキングパターン(フィルムパターン)ピッチが安定しないため、開口部のピッチが伸縮することがある。
【0006】
図9(ロ)に示す例は、3枚のステンレス薄板の位置がずれており、下部開口411と上部開口431を介して水晶素子44の両端面に電極等が膜付けされても、その電子部品の電気的特性が所望のものにならない場合がある。
【0007】
そこで、前記3枚のステンレス薄板を重ね合わせる代わりに、下部マスク板41は、予めスペーサ板42と位置合わせした後に、スポット溶接または熱圧着等によって一体にする。前記一体になった下部マスク板41とスペーサ板42には、水晶素子44を挿入した後、上部マスク板43が位置合わせを行って載置される。
【0008】
前記例は、下部マスク板41とスペーサ板42を精度よく位置合わせを行っているため、3枚のステンレス薄板を重ね合わせて行うより特性の良い電子部品を得ることができた。すなわち、3枚の別体構成の場合、各々に自由度があり、それを自由度3とすると、スポット溶接または熱圧着によって一体化された構成品は、自由度が2になるため、自由度が一つ減ることになり、その分、精度が良くなる。
【0009】
さらに、下部マスク板41とスペーサ板42を位置合わせを行う必要がない方法が考えられた。図10(イ)ないし(ヘ)は下部マスク板とスペーサ板が一体となった従来のマスキング装置を説明するための概念図である。図10(イ)において、下部マスク板51は、スペーサが一体になっている。
【0010】
すなわち、下部マスク板51は、下部にエッチングにより、下部開口511が設けられた後、さらに、エッチングにより、収納部53が作製される。ステンレス薄板のエッチングは、所望の深さを得ようとすると、収納部53の周囲がほぼ垂直にならず緩い傾斜面531を持つようになる。上部マスク板52は、図9(イ)および(ロ)に示す上部マスク板43と同じである。
【0011】
図10(イ)に示す例は、水晶素子54が収納部53の中央に正しく収まっても、図9(ロ)に示すものと同様に図10(ロ)に示すように、上部マスク板52の位置ずれがある。図10(ハ)に示す例は、水晶素子54が収納部53内において、遊びができるため、下部マスク板51と上部マスク板52の位置合わせが正しいにもかかわらず、電極が所望と異なる位置に膜付けされてしまう。
【0012】
図10(ニ)に示す例は、エッチング深さ55がオーバーエッチングとなり、上部マスク板52と水晶素子54の表面に遊びができ、電極等の膜付け部にぼけた部分56ができる。また、図10(ホ)に示す例は、収納部53の深さが浅すぎた場合である。前記収納部53が浅すぎた場合は、水晶素子54に上部マスク板52が強く当たり過ぎて、薄い水晶素子54が割れてしまう可能性がある。
【0013】
図10(ヘ)に示す収納部53の側面および下部マスク板51の下部開口511は、ハーフエッチングによりだれている様子が判る。図10(ヘ)の場合、薄い水晶素子54は、前記収納部53において、接触面が少なく、不安定に収められ、膜付けが正しく作製されないおそれがある。
【0014】
また、前記下部開口511を介して作製された膜は、ハーフエッチングによるだれを伴う前記下部開口511により、蒸着ぼけ等の発生の原因になっている。さらに、前記下部開口511のだれは、図と反対側になる場合もある。
【0015】
図11は水晶素子の例を説明するための図である。図11において、水晶素子61は、円形であり、上部に電極62と下部に電極62′が蒸着またはスパッタ等によって膜付けされている。
【0016】
図12は本出願人が発明した従来のマスキング装置を説明するための断面図である。図13(イ)ないし(ホ)は本出願人が発明した従来のマスキング装置を説明するための上面図である。図12において、下部マスク板73、スペーサ板74、上部マスク板75は、図9および図10における下部マスク板41、51(スペーサ部も含む)、スペーサ板42、上部マスク板43、52にそれぞれ対応している。
【0017】
前記マスキング装置7は、磁性材からなる補助板71、非磁性材からなるマグネット保持板72、非磁性材からなる下部マスク板73、磁性材からなるスペーサ板74、磁性材からなる上部マスク板75がそれぞれの位置合わせ孔77にピン76を挿入することによって、それぞれの位置合わせができる。
【0018】
前記磁性材からなる補助板71は、水晶素子61に電極を蒸着またはスパッタする際の逃げ孔711が多数形成されている。前記非磁性材からなるマグネット保持板72は、変形を防ぐために厚さが厚く、前記補助板71と同じ位置に逃げ孔721が形成されている。また、前記マグネット保持板72は、マグネット78を保持するマグネット保持孔722が複数設けられている。
【0019】
非磁性材からなる下部マスク板73は、水晶素子61の裏面に電極等の膜を付けるための膜付け孔731と、前記マグネット78の磁力線を透過するマグネット78の数と位置が同じ透磁孔732が形成されている。磁性材からなるスペーサ74は、水晶素子61を収納する多数の収納部741を備えている。磁性材からなる上部マスク板75は、水晶素子61の表面に電極を蒸着またはスパッタ等を行うための膜付け孔751が設けられている。
【0020】
前記構成のマスキング装置7において、磁性材からなる補助板71の上には、マグネット保持板72が載置される。前記マグネット保持板72のマグネット保持孔722には、マグネット78が挿入される。前記マグネット保持板72の上には、下部マスク板73が載置された後、スペーサ板74が載置される。
【0021】
前記スペーサ板74に設けられた収納部741には、水晶素子61が挿入される。その後、スペーサ板74の上には、上部マスク板75が載置される。前記各板の位置合わせをする際に、位置合わせ孔77とピン76を利用する。また、マグネット78と透磁孔732とによって、各板が強固に固定される。
【0022】
位置決めされたマスキング装置7の使用により、各水晶素子61の両面には、図11に示すような電極62、62′が蒸着またはスパッタ等によって形成される。前記蒸着またはスパッタ等による膜は、逃げ孔711、721と、膜付け孔731および751によって水晶素子61の裏面および表面に形成される。
【0023】
前記マスキング装置7は、複数のマグネット78および同じ位置と数の透磁孔732をバランス良く配置して設けたので、各板が全表面に密着させることができ、位置ずれのない均一な電極が形成される。
【0024】
前記マスキング装置7は、その収納部に被マスキング部材を収納して、膜付けや洗浄のための処理を行う場所に運ばれる搬送装置として使用されることもしばしばあった。
【0025】
前記従来例は、たとえば、特開平4−13858号公報に記載されている。
【特許文献1】特開平4−13858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
図9に示された従来例は、下部マスク板41とスペーサ板42をスポット溶接または熱圧着等によって一体化することにより、ピッチの伸縮による位置ズレを防ぐとともに、蒸着治具使用時の作業性を向上させることができる。しかし、水晶素子44の発振周波数が高くなるに従い、厚さが薄くなるため、下部マスク板41とスペーサ板42は、スポット溶接を行う際に、両者の間に隙間ができ、この間に水晶素子44が入り易くなるという問題が発生した。
【0027】
また、スポット溶接は、溶接箇所が点となるため、溶接されている箇所と溶接されていない箇所で歪みが発生する。また、前記下部マスク板41とスペーサ板42は、熱圧着で接合した場合、前記両者の間に前記水晶素子44が入ることはないが、治具として使用する度に洗浄する際の洗浄液が入り込み、蒸発に多くの時間を要したり、あるいは残された前記洗浄液による汚れが発生するという問題があった。
【0028】
さらに、熱圧着を行う際の問題は、1000度Cに近い温度で処理されるため、マスク板やスペーサ板の歪みやズレが発生する可能性があり、水晶素子44が薄くなればなるほど、前記問題が大きく影響する。
【0029】
水晶素子44は、厚さが薄くなると、薄いスペーサ板42の収納部421に収納する際の扱いによる不良品が発生するという問題が出てきた。また、下部マスク板41、スペーサ板42、上部マスク板43の位置合わせは、開孔部にピンを挿入することによって行われているが、前記開孔部へピンを挿入する際のことを考慮して、開孔部の直径の方をわずかに大きくしている。
【0030】
しかし、前記水晶素子44の厚さは、発振周波数が高くなるにしたがい、数十μmとなり、前記開孔部とピンとの誤差も限界にきている。また、前記のように薄くなったスペーサ板42は、作製する際に、へこみや曲がりが発生し易く歩留りが低下する。
【0031】
図10に示す下部マスク板51とスペーサ板を一体にして、エッチングにより収納部53を形成する方法は、エッチング厚さのコントロールや、前記収納部53内で、水晶素子54の移動等の問題があり、充分な位置合わせができなかった。
【0032】
以上のような課題を解決するために、本発明は、エッチングをストップできるバリア層を有する3層部材を用いることにより、水晶素子が収納部の内部で移動することがなく、適正な位置に所定の膜厚を得ることができるマスキング装置およびマスキング装置の作製方法を提供することを目的とする。
【0033】
従来、被搬送部材または被洗浄部材は、搬送装置に設けられた収納部内に収納されて、搬送または搬送しながら洗浄がされていた。しかし、前記収納部をエッチングによって作製する際に、前記収納部の側壁がだれるために、前記被搬送部材または被洗浄部材が安定して収納できなかったり、あるいは収納部内で位置がずれてしまい、次の工程において、精度の高い加工ができないという問題があった。
【0034】
以上のような課題を解決するために、本発明は、エッチングをストップできるバリア層を有する3層部材を用いることにより、水晶素子を収納する収納部の側壁を垂直にして、内部における移動がなく、搬送または洗浄に都合が良い搬送装置および搬送装置の作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0035】
(第1発明)
第1発明の搬送装置は、エッチング不可能な部材の両側からエッチング可能な部材によって挟まれているとともに、一方に多数形成された被搬送部材を収納する収納部を備えた3層部材と、前記3層部材の上に載置されるとともに、前記収納部の開口とほぼ同じ大きさのテーパー状開口部を備えた上部板と、から構成されていることを特徴とする。
【0036】
(第2発明)
第2発明の搬送装置は、エッチング不可能な部材の両側からエッチング可能な部材によって挟まれているとともに、一方に多数形成された被搬送部材を収納する収納部と、前記収納部の反対側でそれぞれに対応した位置に設けられた開口部とを備えた3層部材と、前記3層部材の上に載置されるとともに、前記収納部の開口とほぼ同じ大きさのテーパー状開口部を備えた上部板と、から構成されていることを特徴とする。
【0037】
(第3発明)
第3発明の被洗浄部材用搬送装置は、エッチング不可能な部材の両側からエッチング可能な部材によって挟まれているとともに、一方に多数形成された被洗浄部材を収納する収納部を備えた3層部材と、前記3層部材の上に載置されるとともに、前記収納部の開口より大きさの小さい開口部を備えた上部押さえ板と、
から構成されていることを特徴とする。
【0038】
(第4発明)
第4発明の被洗浄部材用搬送装置は、エッチング不可能な部材の両側からエッチング可能な部材によって挟まれているとともに、一方に多数形成された被洗浄部材を収納する収納部と、前記収納部の下部側でそれぞれに対応した位置に設けられた前記収納部より小さい開口部とを備えた3層部材と、前記3層部材の上に載置されるとともに、前記収納部の開口より大きさの小さい開口部を備えた上部押さえ板と、から構成されていることを特徴とする。
【0039】
(第5発明)
第5発明の搬送装置において、3層部材は、エッチング可能なステンレス製の薄板と、前記薄板によって挟まれたエッチング不可能なチタンからなるバリア層とで構成されていることを特徴とする。
【0040】
(第6発明)
第6発明の搬送装置において、被マスキング部材を収納する収納部は、前記3層部材の表面から前記バリア層に向かってほぼ垂直にエッチングされていることを特徴とする。
【0041】
(第7発明)
第7発明の搬送装置の作製方法は、エッチング不可能な部材の両側からエッチング可能な部材によって挟まれている3層部材の一方から多数の被搬送部材を収納する収納部をエッチングによって形成する第1工程と、前記3層部材の上に載置される上部板に、前記収納部の開口とほぼ同じ大きさのテーパー状開口部をエッチングにより形成する第2工程と、を少なくとも有することを特徴とする。
【0042】
(第8発明)
第8発明の搬送装置の作製方法は、エッチング不可能な部材の両側からエッチング可能な部材によって挟まれている3層部材に対して、被搬送部材の下方の側に多数の開口部を形成する第1工程と、前記開口部に対応した位置に、前記開口部より大きい被搬送部材を収納する収納部をエッチングによって形成する第2工程と、前記3層部材の上に載置される上部板に開口部をエッチングにより形成する第3工程と、を少なくとも有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、バリア層を有する3層部材を用いることで、電子部品を収納する収納部の側壁をほぼ垂直にエッチングができるようになったため、前記収納部内の電子部品が移動することなく、また、下部マスク板と上部マスク板の位置合わせが容易で、かつ正確になった。
【0044】
本発明によれば、電子部品の厚さに見合ったスペーサ部となる3層部材を選択することで、電子部品を収納するスペーサ部の厚さ管理が正確で容易になった。
【0045】
本発明によれば、バリア層を有する3層部材を重ねて使用することで、一方のマスク板の板厚を薄く、他方のマスク板を厚くして強度をもたせたり、あるいはトータルの厚さにより、強度をもたせることができる。
【0046】
本発明によれば、下部マスク板とスペーサ板とをスポット溶接あるいは熱圧着する場合と比較して、納期を短縮することができるだけでなく、価格を安価にすることができる。また、本発明によれば、スポット溶接によってできる隙間に電子部品が入るという不都合がなくなった。また、本発明によれば、熱圧着の際に生じる隙間に洗浄液が入りこみ、乾燥に時間を要したり、残された前記洗浄液により汚れが発生するという問題を無くすことができた。
【0047】
本発明によれば、電子部品の厚さが薄くなった場合、それに伴いスペーサ部の厚さも薄くなるが、バリア層を有する3層部材を使用することで、全体の厚みを確保できるため、歩留りが向上する。
【0048】
本発明によれば、バリア層を有する3層部材を用いることで、電子部品を収納する収納部の側壁をほぼ垂直にエッチングができるようになったため、前記収納部内の電子部品のガタツキがなく、搬送あるいは洗浄中における前記電子部品の損傷を無くすことができた。
【0049】
本発明によれば、3層部材の上部にテーパー状の開口を有する上部板を設けたため、被搬送部材または被洗浄部材の出し入れが容易になった。
【0050】
本発明によれば、3層部材の下部に前記収納部の開口より小さい開口を設けたため、前記被搬送部材または被洗浄部材を下から自動機が押し上げることができ、前記各部材の出し入れが容易になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
(第1発明)
第1発明は、被搬送部材を収納部に収納した状態で、搬送する搬送装置である。第1発明に使用する3層部材は、エッチング不可能な部材の両側からエッチング可能な部材によって挟まれており、前記エッチング不可能な部材がエッチングを停止させるバリア層を形成している。また、前記3層部材には、一方の側に多数の被搬送部材を収納する収納部が形成されている。
【0052】
前記3層部材の上に載置される上部板は、前記収納部の開口とほぼ同じ大きさのテーパー状開口部を備えている。前記被搬送部材を収納する収納部は、垂直な側壁からなり、搬送中に被搬送部材がガタツクことがない。また、テーパー状開口部を備えた上部板は、前記被搬送部材を前記収納部に収納する際にガイドとなり、収納が容易になる。
【0053】
(第2発明)
第2発明は、被搬送部材の両面に開口部を備えている点で、第1発明と異なっている。すなわち、第2発明に使用される3層部材は、第1発明と同様に、エッチング不可能な部材の両側からエッチング可能な部材によって挟まれており、前記エッチング不可能な部材がバリア層となっている。
【0054】
前記3層部材は、一方に多数形成された被搬送部材を収納する収納部と、前記収納部の反対側で、前記収納部に対応したそれぞれの位置に、被搬送部材の取り出しに都合のよい前記被搬送部材より小さい開口部を有する。また、3層部材の上部には、前記収納部に対応した位置に、前記収納部の開口とほぼ同じ大きさのテーパー状開口部を備えた上部板が載置されている。
【0055】
前記テーパー状開口部は、前記被搬送部材を前記収納部に収納する際のガイドになる。また、前記3層部材の下部に設けられた開口部は、搬送装置から前記被搬送部材を自動機等により取り出す際に利用される。
【0056】
(第3発明)
第3発明は、被洗浄部材を洗浄しながら搬送する装置である。3層部材は、エッチング不可能な部材の両側からエッチング可能な部材によって挟まれているとともに、一方に多数形成された被洗浄部材を収納する収納部が形成されている。前記収納部は、エッチングによって形成されるため、側壁が垂直になり、洗浄中または搬送中に被洗浄部材がガタツクことがない。
【0057】
前記収納部と被洗浄部材は、周囲が必ずしも全部接触している必要がなく、数箇所で接触させておくことができる。前記収納部が形成された前記3層部材の上には、前記収納部の開口より大きさの小さい開口部を備えた上部押さえ板が載置されている。前記上部押さえ板は、複数箇所で、前記3層部材とマグネットによって固定されており、前記開口部の精度は厳密である必要がない。
【0058】
(第4発明)
第4発明は、3層部材の両面に被洗浄部材を収納する収納部より小さい開口部を備えている点で、第3発明と異なっている。前記3層部材は、一方に多数形成された被洗浄部材を収納する収納部と、前記収納部の下部側で、前記収納部に対応したそれぞれの位置に、前記被洗浄部材を取り出す際、または洗浄液の排出等に用いる開口部が設けられている。また、上部開口部は、収納部に収納された被洗浄部材を押さえることにより、洗浄液あるいは振動によっても、被洗浄部材を安定に収納部に収納することができる。
【0059】
(第5発明)
第5発明の3層部材は、エッチング可能なステンレス製の薄板と、前記薄板によって挟まれたエッチング不可能なチタンからなるバリア層とで構成されている。前記3層部材におけるバリア層は、エッチングによって収納部を形成する際に、エッチングができなくなるため、前記収納部の側壁の形状がほぼ垂直にできる。前記垂直な側壁を備えた収納部は、内部に収納された被搬送部材または被洗浄部材が安定して保持でき、これらに傷を付けずに搬送できる。
【0060】
(第6発明)
第6発明の被搬送部材または被洗浄部材を収納する収納部は、3層部材の表面または裏面から前記バリア層に向かってほぼ垂直にエッチングされている。前記3層部材に形成された収納部は、エッチングによって形成する際に、エッチングを前記収納部の側壁がほぼ垂直になった時点で停止するようにすることができるため、前記収納部の形状が被搬送部材または被洗浄部材とほぼ同じにすることができる。
【0061】
(第7発明)
第7発明は、被搬送部材を搬送する搬送装置の作製方法である。第1工程において、エッチング不可能な部材の両側からエッチング可能な部材によって挟まれている3層部材は、その一方から多数の被搬送部材を収納する収納部がエッチングによって形成される。第2工程において、前記3層部材の上に載置される上部板には、前記収納部の開口とほぼ同じ大きさのテーパー状開口部が形成される。第3工程において、前記3層部材の下面には、必要に応じて、前記被搬送部材を前記収納部から排出する際に都合のよい開口を作製することができる。
【0062】
(第8発明)
第8発明は、被洗浄部材を搬送しながら洗浄する搬送装置の作製方法である点で、第7発明と異なっている。第1工程において、エッチング不可能な部材の両側からエッチング可能な部材によって挟まれている3層部材に対して、被搬送部材の下方の側に多数の開口部を形成する。
【0063】
第3工程において、前記開口部に対応した位置に、前記開口部より大きい被搬送部材を収納する収納部をエッチングによって形成する。第3工程において、前記3層部材の上に載置される上部板には、エッチングによって開口部が形成される。前記第7発明および第8発明は、特に工程順序に関係がない。
【0064】
(参考例1)
図1は本発明の第一参考例に使用する3層部材を説明するための概念図である。図1において、3層部材1は、エッチングが不可能であるチタン層(バリア層)12の下部に、エッチングが可能なステンレス(SUS430)製薄板からなる下部金属11′、および上部に同じステンレス(SUS430)製薄板からなる上部金属13′が形成されている。なお、以下、本参考例における図は、概念図であるため、3層部材の厚さ関係が正確に描かれていない。
【0065】
図2は本発明の第一参考例で、3層部材を使用したマスキング装置を説明するための図である。図2において、下部マスク板(下部金属)11および上部マスク板14には、被マスキング部材4に電極等の膜を蒸着またはスパッタ等により付ける際に必要な下部開口111および上部開口141が設けられる。また、マスキング装置2は、前記3層部材1と上部マスク板14から構成されている。
【0066】
前記3層部材1は、下部マスク板11に被マスキング部材4、たとえば、水晶素子の電極となる膜を付けるための下部開口111が、たとえば、エッチングによって形成され、チタン層12を介して反対側に収納部131が形成されている。前記収納部131は、上部金属13をエッチング処理することにより、前記収納部131の側面が表面からほぼ垂直になるように作製される。
【0067】
すなわち、エッチングは、エッチングが不可能であるチタンがバリア層12となるために、ほぼ方形からなる収納部131を形成することができる。前記ステンレス製薄板のエッチング液は、たとえば、塩化第2鉄等が用いられる。
【0068】
前記収納部131が作製された後、前記チタン層12は、たとえば、フッ酸系薬液等によって除去される。上部マスク板14は、前記下部マスク板11とスペーサ板13から構成される3層部材1の収納部131に被マスキング部材4を収納した後、3層部材1上に載置される。前記下部開口111および上部開口141から露出された被マスキング部材4の表面には、電極等の膜が蒸着またはスパッタ等によって形成される。
【0069】
以上のように、本発明の第一参考例は、下部マスク板11とスペーサ板13が予め一体に形成された3層部材1を使用しているため、前記3層部材1と上部マスク板14との位置合わせだけであるため、高い精度のマスキング装置を得ることができる。
【0070】
また、本発明の第一参考例は、エッチングが不可能なバリア層12を有する3層部材1を使用しているため、前記下部開口111、および被マスキング部材4を収納する収納部131の側壁が表面からほぼ垂直に形成できるため、収納部131の内部で被マスキング部材4が移動することがなく、正確な膜付けが良好にできる。
【0071】
(参考例2)
図3は本発明の第二参考例に使用する3層部材を説明するための概念図である。図3において、3層部材1′は、スペーサ板13″が第一参考例より厚くなっている。すなわち、第二参考例は、被マスキング部材4′の厚さに応じてスペーサ板13″が所望の厚さのものを選択することにより、収納部131の内部で被マスキング部材4′が左右方向に移動したり、上下方向のガタが生じたり、あるいは上方から圧迫されることがないので、品質の高い膜を形成するマスキング用の治具となる。
【0072】
(参考例3)
図4は本発明の第三参考例で、3層部材を重ねて使用する場合を説明するための概念図である。図4において、符号は、図1ないし図3と同じにし、異なる部材に対しては「′」または「″」が付けられている。図4に示された3層部材Aと3層部材Bとは、一方を構造上裏返しにして重ねられている。
【0073】
3層部材Aおよび3層部材Bは、図1ないし図3と同様にエッチング処理により被マスキング部材4を収納する収納部131、131′および下部開口111、111′の側壁が表面からほぼ垂直に形成できるため、収納部131、131′の内部で被マスキング部材4が移動することがなく、正確な膜付けが良好にできる。
【0074】
第三参考例は、3層部材を重ねて使用しているため、収納部131と収納部131′および下部開口111、111′の大きさが一致して、位置合わせが容易であるだけでなく、被マスキング部材4が薄くなっても、マスキング装置全体の強度を保つことができる。また、必要に応じて、前記3層部材Aと3層部材Bのうちの一方の厚さを変えることもできる。
【0075】
(参考例4)
図5は本発明の第四参考例で、3層部材を重ねて使用し、一方を上部マスク板としている場合を説明するための概念図である。図5において、3層部材Aと3層部材Cとは、互いに同じ方向に重ねられている。3層部材Aは、第一参考例と同じであり、3層部材Cは、上部マスク板として、膜付けのための下部開口131″が設けられている。第四参考例は、3層部材Aによって被マスキング部材4に対する精度を得て、3層部材Cによって、強度をもたせるように構成されている。
【0076】
(参考例5)
図6(イ)および(ロ)は本発明の第五参考例で、被マスキング部材収納部を有する3層部材と上部マスク板となる3層部材とを重ねて使用した場合を説明するための概念図である。図6において、3層部材Dは、被マスキング部材4の厚さに比べて、収納部131の厚さが厚く構成されている。
【0077】
また、上部マスク板である3層部材Eは、バリア層32を利用して、膜付け用の開口311と凸部312が、エッチングにより成形されている。前記3層部材Dの上に前記3層部材Eが重ねられる。その際に、前記3層部材Eに設けられた凸部312により被マスキング部材4を押さえつける。前記被マスキング部材4と前記凸部312の合計の厚さは、前記収納部131の厚さに一致するようにする。
【0078】
図6(ロ)に示すように、3層部材Dの上に3層部材Eを重ねると、前記3層部材Eの凸部312により、被マスキング部材4を押圧できるため、前記被マスキング部材4は、収納部131の大きさと一致していなくとも、移動ができずに膜を所定の位置に付けることができる。
【実施例1】
【0079】
図7は本発明の第一実施例に使用する搬送装置を説明するための概念図である。図7において、3層部材81は、下部に下部開口82と、上部に被搬送部材84を収納する収納部83が形成されている。前記下部開口82および収納部83の形成方法は、マスキング装置と同様にエッチング等によって達成できる。
【0080】
前記収納部83の上部には、被搬送部材84を収納し易いように、テーパー状開口部851を備えた上部板85が取り付けられている。前記上部板85の3層部材81への取り付けは、マグネット、ネジ止めあるいは圧着等、その他周知または公知の手段によって達成できる。搬送装置80は、前記多数の収納部83が形成された3層部材81と上部板85とから構成され、その収納部83に被搬送部材84を入れて搬送する。
【0081】
前記上部板85に設けられたテーパー状開口部851は、エッチング等により作製できる。図7におけるテーパーは、直線になっているが、ハーフエッチング等によりなだらかな傾斜とすることができる。前記のような形状のテーパー状開口部851は、被搬送部材84を出し入れする際に作業を容易にする。
【0082】
また、3層部材81に形成された下部開口82は、前記収納部83の大きさより小さく形成されており、前記被搬送部材84を取り出す際に自動機の押し上げ部を上昇させるのを容易にする。さらに、前記下部開口82は、必要に応じて形成できるものであり、たとえ無くても搬送装置として十分に機能する。
【実施例2】
【0083】
図8は本発明の第二実施例に使用する洗浄装置を説明するための概念図である。図8において、3層部材81′は、下部に下部開口82と、上部に洗浄部材84′を収納する収納部83が形成されている。前記下部開口82および収納部83の形成方法は、マスキング装置と同様にエッチング等によって達成できる。前記下部開口82は、前記収納部83の大きさより小さく形成されている。
【0084】
前記収納部83の上部には、被洗浄部材84の脱落等を防止する、前記収納部83より大きさの小さい上部開口87を備えた上部押さえ板88が着脱自在に取り付けられている。前記上部押さえ板88の3層部材81への取り付けは、ネジ止め等によって達成できる。洗浄装置80′は、前記多数の収納部83が形成されている3層部材81と上部押さえ板88とから構成されている。
【0085】
3層部材81に形成された下部開口82は、前記被洗浄部材84′を取り出す際に自動機の押し上げ部を上昇させたり、洗浄液を排出するのを容易にする。さらに、前記下部開口82は、必要に応じて形成できるものであり、たとえ無くても洗浄装置として十分に機能する。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではない。そして、本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。前記実施例は、3層部材として、ステンレス薄板とチタン層からなるもので説明したが、エッチングが不可能な部材の両面をエッチング可能な部材で形成したものであれば、特に部材およびエッチング液の組み合わせが限定されるものではない。
【0087】
また、実施例は、被マスキング部材として、水晶素子について述べたが、特に、50μm未満の薄さのものに膜を形成するための部材であることはいうまでもない。前記膜を形成する開口は、上下いずれか一方であっても良い。さらに、上部マスク板として、バリア層を有する3層部材を用いることも可能である。前記膜の例として円形のもので説明したが、長方形等もあり、特に、形状に限定されるものではない。
【0088】
前記実施例は、マグネットによって、スペーサ板や上部マスク板を押さえていないが、背景技術で説明したようにマグネットによって前記板を押さえるようにすることも可能である。すなわち、本発明のマスキング装置は、非マグネット式およびマグネット式を併用することができる。前記スペーサ板や上部マスク板等の固定は、ネジ留めあるいはマグネットの他、公知または周知の固着手段を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の第一参考例に使用する3層部材を説明するための概念図である。
【図2】本発明の第一参考例で、3層部材を使用したマスキング装置を説明するための図である。
【図3】本発明の第二参考例に使用する3層部材を説明するための概念図である。
【図4】本発明の第三参考例で、3層部材を重ねて使用する場合を説明するための概念図である。
【図5】本発明の第四参考例で、3層部材を重ねて使用し、一方を上部マスク板としている場合を説明するための概念図である。
【図6】(イ)および(ロ)は本発明の第五参考例で、被マスキング部材収納部を有する3層部材と上部マスク板となる3層部材とを重ねて使用した場合を説明するための概念図である。
【図7】本発明の第一実施例に使用する搬送装置を説明するための概念図である。(実施例1)
【図8】本発明の第二実施例に使用する洗浄装置を説明するための概念図である。(実施例2)
【図9】(イ)および(ロ)は従来のマスキング装置を説明するための概念図である。
【図10】(イ)ないし(ヘ)は下部マスク板とスペーサ板が一体となった従来のマスキング装置を説明するための概念図である。
【図11】水晶素子の例を説明するための図である。
【図12】本出願人が発明した従来のマスキング装置を説明するための断面図である。
【図13】(イ)ないし(ホ)は本出願人が発明した従来のマスキング装置を説明するための上面図である。
【符号の説明】
【0090】
1、1′・・・3層部材
2・・・マスキング装置
4、4′・・・被マスキング部材
11、11′・・・下部マスク板(下部金属)
111・・・下部開口
12・・・チタン層(バリア層)
13、13′、13″・・・スペーサ板(上部金属)
131・・・収納部
14・・・上部マスク板
141・・・上部開口
80・・・搬送装置
80′・・・洗浄装置
81・・・3層部材
82・・・下部開口
83・・・収納部
84・・・被搬送部材
84′・・・被洗浄部材
85・・・上部板
851・・・テーパー状開口部
87・・・上部開口
88・・・上部押さえ板
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶素子、セラミック素子、半導体素子等の電子部品に対して、たとえば、蒸着またはスパッタ等の処理を行う際にこれらを搬送する搬送装置および搬送装置の作製方法に関するものである。本発明は、特に、50μm未満の薄さの電子部品を処理する際に搬送する搬送装置および搬送装置の作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9(イ)および(ロ)は従来のマスキング装置を説明するための概念図である。図9(イ)において、下部マスク板41は、多数の下部開口411を備えている。また、スペーサ板42は、たとえば、水晶素子44のような薄い電子部品を収納する収納部421を備えている。
【0003】
さらに、上部マスク板43は、前記下部開口411と図面により決められた位置に上部開口431を備えている。図9に示す前記下部マスク板41、スペーサ板42、および上部マスク板43は、たとえば、ステンレス(SUS430)製の薄板からなるが、実際の厚さに必ずしも比例して描かれていない。
【0004】
前記下部マスク板41の上に載置されたスペーサ板42の収納部421には、前記水晶素子44が収納された後、上部マスク板43によって覆われる。前記のような状態で、前記下部開口411と上部開口431は、前記水晶素子44の両面に電極を蒸着またはスパッタ等を行うための膜付け口となっている。
【0005】
図9(イ)に示すマスキング装置4は、前記下部マスク板41、スペーサ板42、および上部マスク板43の位置関係が一致するように図示されていない複数の孔とピンとによって、ずれないようにしている。しかし、各々別に製造される前記3枚のステンレス薄板は、ワーキングパターン(フィルムパターン)ピッチが安定しないため、開口部のピッチが伸縮することがある。
【0006】
図9(ロ)に示す例は、3枚のステンレス薄板の位置がずれており、下部開口411と上部開口431を介して水晶素子44の両端面に電極等が膜付けされても、その電子部品の電気的特性が所望のものにならない場合がある。
【0007】
そこで、前記3枚のステンレス薄板を重ね合わせる代わりに、下部マスク板41は、予めスペーサ板42と位置合わせした後に、スポット溶接または熱圧着等によって一体にする。前記一体になった下部マスク板41とスペーサ板42には、水晶素子44を挿入した後、上部マスク板43が位置合わせを行って載置される。
【0008】
前記例は、下部マスク板41とスペーサ板42を精度よく位置合わせを行っているため、3枚のステンレス薄板を重ね合わせて行うより特性の良い電子部品を得ることができた。すなわち、3枚の別体構成の場合、各々に自由度があり、それを自由度3とすると、スポット溶接または熱圧着によって一体化された構成品は、自由度が2になるため、自由度が一つ減ることになり、その分、精度が良くなる。
【0009】
さらに、下部マスク板41とスペーサ板42を位置合わせを行う必要がない方法が考えられた。図10(イ)ないし(ヘ)は下部マスク板とスペーサ板が一体となった従来のマスキング装置を説明するための概念図である。図10(イ)において、下部マスク板51は、スペーサが一体になっている。
【0010】
すなわち、下部マスク板51は、下部にエッチングにより、下部開口511が設けられた後、さらに、エッチングにより、収納部53が作製される。ステンレス薄板のエッチングは、所望の深さを得ようとすると、収納部53の周囲がほぼ垂直にならず緩い傾斜面531を持つようになる。上部マスク板52は、図9(イ)および(ロ)に示す上部マスク板43と同じである。
【0011】
図10(イ)に示す例は、水晶素子54が収納部53の中央に正しく収まっても、図9(ロ)に示すものと同様に図10(ロ)に示すように、上部マスク板52の位置ずれがある。図10(ハ)に示す例は、水晶素子54が収納部53内において、遊びができるため、下部マスク板51と上部マスク板52の位置合わせが正しいにもかかわらず、電極が所望と異なる位置に膜付けされてしまう。
【0012】
図10(ニ)に示す例は、エッチング深さ55がオーバーエッチングとなり、上部マスク板52と水晶素子54の表面に遊びができ、電極等の膜付け部にぼけた部分56ができる。また、図10(ホ)に示す例は、収納部53の深さが浅すぎた場合である。前記収納部53が浅すぎた場合は、水晶素子54に上部マスク板52が強く当たり過ぎて、薄い水晶素子54が割れてしまう可能性がある。
【0013】
図10(ヘ)に示す収納部53の側面および下部マスク板51の下部開口511は、ハーフエッチングによりだれている様子が判る。図10(ヘ)の場合、薄い水晶素子54は、前記収納部53において、接触面が少なく、不安定に収められ、膜付けが正しく作製されないおそれがある。
【0014】
また、前記下部開口511を介して作製された膜は、ハーフエッチングによるだれを伴う前記下部開口511により、蒸着ぼけ等の発生の原因になっている。さらに、前記下部開口511のだれは、図と反対側になる場合もある。
【0015】
図11は水晶素子の例を説明するための図である。図11において、水晶素子61は、円形であり、上部に電極62と下部に電極62′が蒸着またはスパッタ等によって膜付けされている。
【0016】
図12は本出願人が発明した従来のマスキング装置を説明するための断面図である。図13(イ)ないし(ホ)は本出願人が発明した従来のマスキング装置を説明するための上面図である。図12において、下部マスク板73、スペーサ板74、上部マスク板75は、図9および図10における下部マスク板41、51(スペーサ部も含む)、スペーサ板42、上部マスク板43、52にそれぞれ対応している。
【0017】
前記マスキング装置7は、磁性材からなる補助板71、非磁性材からなるマグネット保持板72、非磁性材からなる下部マスク板73、磁性材からなるスペーサ板74、磁性材からなる上部マスク板75がそれぞれの位置合わせ孔77にピン76を挿入することによって、それぞれの位置合わせができる。
【0018】
前記磁性材からなる補助板71は、水晶素子61に電極を蒸着またはスパッタする際の逃げ孔711が多数形成されている。前記非磁性材からなるマグネット保持板72は、変形を防ぐために厚さが厚く、前記補助板71と同じ位置に逃げ孔721が形成されている。また、前記マグネット保持板72は、マグネット78を保持するマグネット保持孔722が複数設けられている。
【0019】
非磁性材からなる下部マスク板73は、水晶素子61の裏面に電極等の膜を付けるための膜付け孔731と、前記マグネット78の磁力線を透過するマグネット78の数と位置が同じ透磁孔732が形成されている。磁性材からなるスペーサ74は、水晶素子61を収納する多数の収納部741を備えている。磁性材からなる上部マスク板75は、水晶素子61の表面に電極を蒸着またはスパッタ等を行うための膜付け孔751が設けられている。
【0020】
前記構成のマスキング装置7において、磁性材からなる補助板71の上には、マグネット保持板72が載置される。前記マグネット保持板72のマグネット保持孔722には、マグネット78が挿入される。前記マグネット保持板72の上には、下部マスク板73が載置された後、スペーサ板74が載置される。
【0021】
前記スペーサ板74に設けられた収納部741には、水晶素子61が挿入される。その後、スペーサ板74の上には、上部マスク板75が載置される。前記各板の位置合わせをする際に、位置合わせ孔77とピン76を利用する。また、マグネット78と透磁孔732とによって、各板が強固に固定される。
【0022】
位置決めされたマスキング装置7の使用により、各水晶素子61の両面には、図11に示すような電極62、62′が蒸着またはスパッタ等によって形成される。前記蒸着またはスパッタ等による膜は、逃げ孔711、721と、膜付け孔731および751によって水晶素子61の裏面および表面に形成される。
【0023】
前記マスキング装置7は、複数のマグネット78および同じ位置と数の透磁孔732をバランス良く配置して設けたので、各板が全表面に密着させることができ、位置ずれのない均一な電極が形成される。
【0024】
前記マスキング装置7は、その収納部に被マスキング部材を収納して、膜付けや洗浄のための処理を行う場所に運ばれる搬送装置として使用されることもしばしばあった。
【0025】
前記従来例は、たとえば、特開平4−13858号公報に記載されている。
【特許文献1】特開平4−13858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
図9に示された従来例は、下部マスク板41とスペーサ板42をスポット溶接または熱圧着等によって一体化することにより、ピッチの伸縮による位置ズレを防ぐとともに、蒸着治具使用時の作業性を向上させることができる。しかし、水晶素子44の発振周波数が高くなるに従い、厚さが薄くなるため、下部マスク板41とスペーサ板42は、スポット溶接を行う際に、両者の間に隙間ができ、この間に水晶素子44が入り易くなるという問題が発生した。
【0027】
また、スポット溶接は、溶接箇所が点となるため、溶接されている箇所と溶接されていない箇所で歪みが発生する。また、前記下部マスク板41とスペーサ板42は、熱圧着で接合した場合、前記両者の間に前記水晶素子44が入ることはないが、治具として使用する度に洗浄する際の洗浄液が入り込み、蒸発に多くの時間を要したり、あるいは残された前記洗浄液による汚れが発生するという問題があった。
【0028】
さらに、熱圧着を行う際の問題は、1000度Cに近い温度で処理されるため、マスク板やスペーサ板の歪みやズレが発生する可能性があり、水晶素子44が薄くなればなるほど、前記問題が大きく影響する。
【0029】
水晶素子44は、厚さが薄くなると、薄いスペーサ板42の収納部421に収納する際の扱いによる不良品が発生するという問題が出てきた。また、下部マスク板41、スペーサ板42、上部マスク板43の位置合わせは、開孔部にピンを挿入することによって行われているが、前記開孔部へピンを挿入する際のことを考慮して、開孔部の直径の方をわずかに大きくしている。
【0030】
しかし、前記水晶素子44の厚さは、発振周波数が高くなるにしたがい、数十μmとなり、前記開孔部とピンとの誤差も限界にきている。また、前記のように薄くなったスペーサ板42は、作製する際に、へこみや曲がりが発生し易く歩留りが低下する。
【0031】
図10に示す下部マスク板51とスペーサ板を一体にして、エッチングにより収納部53を形成する方法は、エッチング厚さのコントロールや、前記収納部53内で、水晶素子54の移動等の問題があり、充分な位置合わせができなかった。
【0032】
以上のような課題を解決するために、本発明は、エッチングをストップできるバリア層を有する3層部材を用いることにより、水晶素子が収納部の内部で移動することがなく、適正な位置に所定の膜厚を得ることができるマスキング装置およびマスキング装置の作製方法を提供することを目的とする。
【0033】
従来、被搬送部材または被洗浄部材は、搬送装置に設けられた収納部内に収納されて、搬送または搬送しながら洗浄がされていた。しかし、前記収納部をエッチングによって作製する際に、前記収納部の側壁がだれるために、前記被搬送部材または被洗浄部材が安定して収納できなかったり、あるいは収納部内で位置がずれてしまい、次の工程において、精度の高い加工ができないという問題があった。
【0034】
以上のような課題を解決するために、本発明は、エッチングをストップできるバリア層を有する3層部材を用いることにより、水晶素子を収納する収納部の側壁を垂直にして、内部における移動がなく、搬送または洗浄に都合が良い搬送装置および搬送装置の作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0035】
(第1発明)
第1発明の搬送装置は、エッチング不可能な部材の両側からエッチング可能な部材によって挟まれているとともに、一方に多数形成された被搬送部材を収納する収納部を備えた3層部材と、前記3層部材の上に載置されるとともに、前記収納部の開口とほぼ同じ大きさのテーパー状開口部を備えた上部板と、から構成されていることを特徴とする。
【0036】
(第2発明)
第2発明の搬送装置は、エッチング不可能な部材の両側からエッチング可能な部材によって挟まれているとともに、一方に多数形成された被搬送部材を収納する収納部と、前記収納部の反対側でそれぞれに対応した位置に設けられた開口部とを備えた3層部材と、前記3層部材の上に載置されるとともに、前記収納部の開口とほぼ同じ大きさのテーパー状開口部を備えた上部板と、から構成されていることを特徴とする。
【0037】
(第3発明)
第3発明の被洗浄部材用搬送装置は、エッチング不可能な部材の両側からエッチング可能な部材によって挟まれているとともに、一方に多数形成された被洗浄部材を収納する収納部を備えた3層部材と、前記3層部材の上に載置されるとともに、前記収納部の開口より大きさの小さい開口部を備えた上部押さえ板と、
から構成されていることを特徴とする。
【0038】
(第4発明)
第4発明の被洗浄部材用搬送装置は、エッチング不可能な部材の両側からエッチング可能な部材によって挟まれているとともに、一方に多数形成された被洗浄部材を収納する収納部と、前記収納部の下部側でそれぞれに対応した位置に設けられた前記収納部より小さい開口部とを備えた3層部材と、前記3層部材の上に載置されるとともに、前記収納部の開口より大きさの小さい開口部を備えた上部押さえ板と、から構成されていることを特徴とする。
【0039】
(第5発明)
第5発明の搬送装置において、3層部材は、エッチング可能なステンレス製の薄板と、前記薄板によって挟まれたエッチング不可能なチタンからなるバリア層とで構成されていることを特徴とする。
【0040】
(第6発明)
第6発明の搬送装置において、被マスキング部材を収納する収納部は、前記3層部材の表面から前記バリア層に向かってほぼ垂直にエッチングされていることを特徴とする。
【0041】
(第7発明)
第7発明の搬送装置の作製方法は、エッチング不可能な部材の両側からエッチング可能な部材によって挟まれている3層部材の一方から多数の被搬送部材を収納する収納部をエッチングによって形成する第1工程と、前記3層部材の上に載置される上部板に、前記収納部の開口とほぼ同じ大きさのテーパー状開口部をエッチングにより形成する第2工程と、を少なくとも有することを特徴とする。
【0042】
(第8発明)
第8発明の搬送装置の作製方法は、エッチング不可能な部材の両側からエッチング可能な部材によって挟まれている3層部材に対して、被搬送部材の下方の側に多数の開口部を形成する第1工程と、前記開口部に対応した位置に、前記開口部より大きい被搬送部材を収納する収納部をエッチングによって形成する第2工程と、前記3層部材の上に載置される上部板に開口部をエッチングにより形成する第3工程と、を少なくとも有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、バリア層を有する3層部材を用いることで、電子部品を収納する収納部の側壁をほぼ垂直にエッチングができるようになったため、前記収納部内の電子部品が移動することなく、また、下部マスク板と上部マスク板の位置合わせが容易で、かつ正確になった。
【0044】
本発明によれば、電子部品の厚さに見合ったスペーサ部となる3層部材を選択することで、電子部品を収納するスペーサ部の厚さ管理が正確で容易になった。
【0045】
本発明によれば、バリア層を有する3層部材を重ねて使用することで、一方のマスク板の板厚を薄く、他方のマスク板を厚くして強度をもたせたり、あるいはトータルの厚さにより、強度をもたせることができる。
【0046】
本発明によれば、下部マスク板とスペーサ板とをスポット溶接あるいは熱圧着する場合と比較して、納期を短縮することができるだけでなく、価格を安価にすることができる。また、本発明によれば、スポット溶接によってできる隙間に電子部品が入るという不都合がなくなった。また、本発明によれば、熱圧着の際に生じる隙間に洗浄液が入りこみ、乾燥に時間を要したり、残された前記洗浄液により汚れが発生するという問題を無くすことができた。
【0047】
本発明によれば、電子部品の厚さが薄くなった場合、それに伴いスペーサ部の厚さも薄くなるが、バリア層を有する3層部材を使用することで、全体の厚みを確保できるため、歩留りが向上する。
【0048】
本発明によれば、バリア層を有する3層部材を用いることで、電子部品を収納する収納部の側壁をほぼ垂直にエッチングができるようになったため、前記収納部内の電子部品のガタツキがなく、搬送あるいは洗浄中における前記電子部品の損傷を無くすことができた。
【0049】
本発明によれば、3層部材の上部にテーパー状の開口を有する上部板を設けたため、被搬送部材または被洗浄部材の出し入れが容易になった。
【0050】
本発明によれば、3層部材の下部に前記収納部の開口より小さい開口を設けたため、前記被搬送部材または被洗浄部材を下から自動機が押し上げることができ、前記各部材の出し入れが容易になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
(第1発明)
第1発明は、被搬送部材を収納部に収納した状態で、搬送する搬送装置である。第1発明に使用する3層部材は、エッチング不可能な部材の両側からエッチング可能な部材によって挟まれており、前記エッチング不可能な部材がエッチングを停止させるバリア層を形成している。また、前記3層部材には、一方の側に多数の被搬送部材を収納する収納部が形成されている。
【0052】
前記3層部材の上に載置される上部板は、前記収納部の開口とほぼ同じ大きさのテーパー状開口部を備えている。前記被搬送部材を収納する収納部は、垂直な側壁からなり、搬送中に被搬送部材がガタツクことがない。また、テーパー状開口部を備えた上部板は、前記被搬送部材を前記収納部に収納する際にガイドとなり、収納が容易になる。
【0053】
(第2発明)
第2発明は、被搬送部材の両面に開口部を備えている点で、第1発明と異なっている。すなわち、第2発明に使用される3層部材は、第1発明と同様に、エッチング不可能な部材の両側からエッチング可能な部材によって挟まれており、前記エッチング不可能な部材がバリア層となっている。
【0054】
前記3層部材は、一方に多数形成された被搬送部材を収納する収納部と、前記収納部の反対側で、前記収納部に対応したそれぞれの位置に、被搬送部材の取り出しに都合のよい前記被搬送部材より小さい開口部を有する。また、3層部材の上部には、前記収納部に対応した位置に、前記収納部の開口とほぼ同じ大きさのテーパー状開口部を備えた上部板が載置されている。
【0055】
前記テーパー状開口部は、前記被搬送部材を前記収納部に収納する際のガイドになる。また、前記3層部材の下部に設けられた開口部は、搬送装置から前記被搬送部材を自動機等により取り出す際に利用される。
【0056】
(第3発明)
第3発明は、被洗浄部材を洗浄しながら搬送する装置である。3層部材は、エッチング不可能な部材の両側からエッチング可能な部材によって挟まれているとともに、一方に多数形成された被洗浄部材を収納する収納部が形成されている。前記収納部は、エッチングによって形成されるため、側壁が垂直になり、洗浄中または搬送中に被洗浄部材がガタツクことがない。
【0057】
前記収納部と被洗浄部材は、周囲が必ずしも全部接触している必要がなく、数箇所で接触させておくことができる。前記収納部が形成された前記3層部材の上には、前記収納部の開口より大きさの小さい開口部を備えた上部押さえ板が載置されている。前記上部押さえ板は、複数箇所で、前記3層部材とマグネットによって固定されており、前記開口部の精度は厳密である必要がない。
【0058】
(第4発明)
第4発明は、3層部材の両面に被洗浄部材を収納する収納部より小さい開口部を備えている点で、第3発明と異なっている。前記3層部材は、一方に多数形成された被洗浄部材を収納する収納部と、前記収納部の下部側で、前記収納部に対応したそれぞれの位置に、前記被洗浄部材を取り出す際、または洗浄液の排出等に用いる開口部が設けられている。また、上部開口部は、収納部に収納された被洗浄部材を押さえることにより、洗浄液あるいは振動によっても、被洗浄部材を安定に収納部に収納することができる。
【0059】
(第5発明)
第5発明の3層部材は、エッチング可能なステンレス製の薄板と、前記薄板によって挟まれたエッチング不可能なチタンからなるバリア層とで構成されている。前記3層部材におけるバリア層は、エッチングによって収納部を形成する際に、エッチングができなくなるため、前記収納部の側壁の形状がほぼ垂直にできる。前記垂直な側壁を備えた収納部は、内部に収納された被搬送部材または被洗浄部材が安定して保持でき、これらに傷を付けずに搬送できる。
【0060】
(第6発明)
第6発明の被搬送部材または被洗浄部材を収納する収納部は、3層部材の表面または裏面から前記バリア層に向かってほぼ垂直にエッチングされている。前記3層部材に形成された収納部は、エッチングによって形成する際に、エッチングを前記収納部の側壁がほぼ垂直になった時点で停止するようにすることができるため、前記収納部の形状が被搬送部材または被洗浄部材とほぼ同じにすることができる。
【0061】
(第7発明)
第7発明は、被搬送部材を搬送する搬送装置の作製方法である。第1工程において、エッチング不可能な部材の両側からエッチング可能な部材によって挟まれている3層部材は、その一方から多数の被搬送部材を収納する収納部がエッチングによって形成される。第2工程において、前記3層部材の上に載置される上部板には、前記収納部の開口とほぼ同じ大きさのテーパー状開口部が形成される。第3工程において、前記3層部材の下面には、必要に応じて、前記被搬送部材を前記収納部から排出する際に都合のよい開口を作製することができる。
【0062】
(第8発明)
第8発明は、被洗浄部材を搬送しながら洗浄する搬送装置の作製方法である点で、第7発明と異なっている。第1工程において、エッチング不可能な部材の両側からエッチング可能な部材によって挟まれている3層部材に対して、被搬送部材の下方の側に多数の開口部を形成する。
【0063】
第3工程において、前記開口部に対応した位置に、前記開口部より大きい被搬送部材を収納する収納部をエッチングによって形成する。第3工程において、前記3層部材の上に載置される上部板には、エッチングによって開口部が形成される。前記第7発明および第8発明は、特に工程順序に関係がない。
【0064】
(参考例1)
図1は本発明の第一参考例に使用する3層部材を説明するための概念図である。図1において、3層部材1は、エッチングが不可能であるチタン層(バリア層)12の下部に、エッチングが可能なステンレス(SUS430)製薄板からなる下部金属11′、および上部に同じステンレス(SUS430)製薄板からなる上部金属13′が形成されている。なお、以下、本参考例における図は、概念図であるため、3層部材の厚さ関係が正確に描かれていない。
【0065】
図2は本発明の第一参考例で、3層部材を使用したマスキング装置を説明するための図である。図2において、下部マスク板(下部金属)11および上部マスク板14には、被マスキング部材4に電極等の膜を蒸着またはスパッタ等により付ける際に必要な下部開口111および上部開口141が設けられる。また、マスキング装置2は、前記3層部材1と上部マスク板14から構成されている。
【0066】
前記3層部材1は、下部マスク板11に被マスキング部材4、たとえば、水晶素子の電極となる膜を付けるための下部開口111が、たとえば、エッチングによって形成され、チタン層12を介して反対側に収納部131が形成されている。前記収納部131は、上部金属13をエッチング処理することにより、前記収納部131の側面が表面からほぼ垂直になるように作製される。
【0067】
すなわち、エッチングは、エッチングが不可能であるチタンがバリア層12となるために、ほぼ方形からなる収納部131を形成することができる。前記ステンレス製薄板のエッチング液は、たとえば、塩化第2鉄等が用いられる。
【0068】
前記収納部131が作製された後、前記チタン層12は、たとえば、フッ酸系薬液等によって除去される。上部マスク板14は、前記下部マスク板11とスペーサ板13から構成される3層部材1の収納部131に被マスキング部材4を収納した後、3層部材1上に載置される。前記下部開口111および上部開口141から露出された被マスキング部材4の表面には、電極等の膜が蒸着またはスパッタ等によって形成される。
【0069】
以上のように、本発明の第一参考例は、下部マスク板11とスペーサ板13が予め一体に形成された3層部材1を使用しているため、前記3層部材1と上部マスク板14との位置合わせだけであるため、高い精度のマスキング装置を得ることができる。
【0070】
また、本発明の第一参考例は、エッチングが不可能なバリア層12を有する3層部材1を使用しているため、前記下部開口111、および被マスキング部材4を収納する収納部131の側壁が表面からほぼ垂直に形成できるため、収納部131の内部で被マスキング部材4が移動することがなく、正確な膜付けが良好にできる。
【0071】
(参考例2)
図3は本発明の第二参考例に使用する3層部材を説明するための概念図である。図3において、3層部材1′は、スペーサ板13″が第一参考例より厚くなっている。すなわち、第二参考例は、被マスキング部材4′の厚さに応じてスペーサ板13″が所望の厚さのものを選択することにより、収納部131の内部で被マスキング部材4′が左右方向に移動したり、上下方向のガタが生じたり、あるいは上方から圧迫されることがないので、品質の高い膜を形成するマスキング用の治具となる。
【0072】
(参考例3)
図4は本発明の第三参考例で、3層部材を重ねて使用する場合を説明するための概念図である。図4において、符号は、図1ないし図3と同じにし、異なる部材に対しては「′」または「″」が付けられている。図4に示された3層部材Aと3層部材Bとは、一方を構造上裏返しにして重ねられている。
【0073】
3層部材Aおよび3層部材Bは、図1ないし図3と同様にエッチング処理により被マスキング部材4を収納する収納部131、131′および下部開口111、111′の側壁が表面からほぼ垂直に形成できるため、収納部131、131′の内部で被マスキング部材4が移動することがなく、正確な膜付けが良好にできる。
【0074】
第三参考例は、3層部材を重ねて使用しているため、収納部131と収納部131′および下部開口111、111′の大きさが一致して、位置合わせが容易であるだけでなく、被マスキング部材4が薄くなっても、マスキング装置全体の強度を保つことができる。また、必要に応じて、前記3層部材Aと3層部材Bのうちの一方の厚さを変えることもできる。
【0075】
(参考例4)
図5は本発明の第四参考例で、3層部材を重ねて使用し、一方を上部マスク板としている場合を説明するための概念図である。図5において、3層部材Aと3層部材Cとは、互いに同じ方向に重ねられている。3層部材Aは、第一参考例と同じであり、3層部材Cは、上部マスク板として、膜付けのための下部開口131″が設けられている。第四参考例は、3層部材Aによって被マスキング部材4に対する精度を得て、3層部材Cによって、強度をもたせるように構成されている。
【0076】
(参考例5)
図6(イ)および(ロ)は本発明の第五参考例で、被マスキング部材収納部を有する3層部材と上部マスク板となる3層部材とを重ねて使用した場合を説明するための概念図である。図6において、3層部材Dは、被マスキング部材4の厚さに比べて、収納部131の厚さが厚く構成されている。
【0077】
また、上部マスク板である3層部材Eは、バリア層32を利用して、膜付け用の開口311と凸部312が、エッチングにより成形されている。前記3層部材Dの上に前記3層部材Eが重ねられる。その際に、前記3層部材Eに設けられた凸部312により被マスキング部材4を押さえつける。前記被マスキング部材4と前記凸部312の合計の厚さは、前記収納部131の厚さに一致するようにする。
【0078】
図6(ロ)に示すように、3層部材Dの上に3層部材Eを重ねると、前記3層部材Eの凸部312により、被マスキング部材4を押圧できるため、前記被マスキング部材4は、収納部131の大きさと一致していなくとも、移動ができずに膜を所定の位置に付けることができる。
【実施例1】
【0079】
図7は本発明の第一実施例に使用する搬送装置を説明するための概念図である。図7において、3層部材81は、下部に下部開口82と、上部に被搬送部材84を収納する収納部83が形成されている。前記下部開口82および収納部83の形成方法は、マスキング装置と同様にエッチング等によって達成できる。
【0080】
前記収納部83の上部には、被搬送部材84を収納し易いように、テーパー状開口部851を備えた上部板85が取り付けられている。前記上部板85の3層部材81への取り付けは、マグネット、ネジ止めあるいは圧着等、その他周知または公知の手段によって達成できる。搬送装置80は、前記多数の収納部83が形成された3層部材81と上部板85とから構成され、その収納部83に被搬送部材84を入れて搬送する。
【0081】
前記上部板85に設けられたテーパー状開口部851は、エッチング等により作製できる。図7におけるテーパーは、直線になっているが、ハーフエッチング等によりなだらかな傾斜とすることができる。前記のような形状のテーパー状開口部851は、被搬送部材84を出し入れする際に作業を容易にする。
【0082】
また、3層部材81に形成された下部開口82は、前記収納部83の大きさより小さく形成されており、前記被搬送部材84を取り出す際に自動機の押し上げ部を上昇させるのを容易にする。さらに、前記下部開口82は、必要に応じて形成できるものであり、たとえ無くても搬送装置として十分に機能する。
【実施例2】
【0083】
図8は本発明の第二実施例に使用する洗浄装置を説明するための概念図である。図8において、3層部材81′は、下部に下部開口82と、上部に洗浄部材84′を収納する収納部83が形成されている。前記下部開口82および収納部83の形成方法は、マスキング装置と同様にエッチング等によって達成できる。前記下部開口82は、前記収納部83の大きさより小さく形成されている。
【0084】
前記収納部83の上部には、被洗浄部材84の脱落等を防止する、前記収納部83より大きさの小さい上部開口87を備えた上部押さえ板88が着脱自在に取り付けられている。前記上部押さえ板88の3層部材81への取り付けは、ネジ止め等によって達成できる。洗浄装置80′は、前記多数の収納部83が形成されている3層部材81と上部押さえ板88とから構成されている。
【0085】
3層部材81に形成された下部開口82は、前記被洗浄部材84′を取り出す際に自動機の押し上げ部を上昇させたり、洗浄液を排出するのを容易にする。さらに、前記下部開口82は、必要に応じて形成できるものであり、たとえ無くても洗浄装置として十分に機能する。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではない。そして、本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。前記実施例は、3層部材として、ステンレス薄板とチタン層からなるもので説明したが、エッチングが不可能な部材の両面をエッチング可能な部材で形成したものであれば、特に部材およびエッチング液の組み合わせが限定されるものではない。
【0087】
また、実施例は、被マスキング部材として、水晶素子について述べたが、特に、50μm未満の薄さのものに膜を形成するための部材であることはいうまでもない。前記膜を形成する開口は、上下いずれか一方であっても良い。さらに、上部マスク板として、バリア層を有する3層部材を用いることも可能である。前記膜の例として円形のもので説明したが、長方形等もあり、特に、形状に限定されるものではない。
【0088】
前記実施例は、マグネットによって、スペーサ板や上部マスク板を押さえていないが、背景技術で説明したようにマグネットによって前記板を押さえるようにすることも可能である。すなわち、本発明のマスキング装置は、非マグネット式およびマグネット式を併用することができる。前記スペーサ板や上部マスク板等の固定は、ネジ留めあるいはマグネットの他、公知または周知の固着手段を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の第一参考例に使用する3層部材を説明するための概念図である。
【図2】本発明の第一参考例で、3層部材を使用したマスキング装置を説明するための図である。
【図3】本発明の第二参考例に使用する3層部材を説明するための概念図である。
【図4】本発明の第三参考例で、3層部材を重ねて使用する場合を説明するための概念図である。
【図5】本発明の第四参考例で、3層部材を重ねて使用し、一方を上部マスク板としている場合を説明するための概念図である。
【図6】(イ)および(ロ)は本発明の第五参考例で、被マスキング部材収納部を有する3層部材と上部マスク板となる3層部材とを重ねて使用した場合を説明するための概念図である。
【図7】本発明の第一実施例に使用する搬送装置を説明するための概念図である。(実施例1)
【図8】本発明の第二実施例に使用する洗浄装置を説明するための概念図である。(実施例2)
【図9】(イ)および(ロ)は従来のマスキング装置を説明するための概念図である。
【図10】(イ)ないし(ヘ)は下部マスク板とスペーサ板が一体となった従来のマスキング装置を説明するための概念図である。
【図11】水晶素子の例を説明するための図である。
【図12】本出願人が発明した従来のマスキング装置を説明するための断面図である。
【図13】(イ)ないし(ホ)は本出願人が発明した従来のマスキング装置を説明するための上面図である。
【符号の説明】
【0090】
1、1′・・・3層部材
2・・・マスキング装置
4、4′・・・被マスキング部材
11、11′・・・下部マスク板(下部金属)
111・・・下部開口
12・・・チタン層(バリア層)
13、13′、13″・・・スペーサ板(上部金属)
131・・・収納部
14・・・上部マスク板
141・・・上部開口
80・・・搬送装置
80′・・・洗浄装置
81・・・3層部材
82・・・下部開口
83・・・収納部
84・・・被搬送部材
84′・・・被洗浄部材
85・・・上部板
851・・・テーパー状開口部
87・・・上部開口
88・・・上部押さえ板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング不可能なバリア層の両側からエッチング可能な部材によって挟まれているとともに、一方に多数形成された被搬送部材を収納する収納部を備えた3層部材と、
前記3層部材の上に載置されるとともに、前記収納部の開口とほぼ同じ大きさのテーパー状開口部を備えた上部板と、
から構成されていることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
エッチング不可能なバリア層の両側からエッチング可能な部材によって挟まれているとともに、一方に多数形成された被搬送部材を収納する収納部と、前記収納部の反対側でそれぞれに対応した位置に設けられた開口部とを備えた3層部材と、
前記3層部材の上に載置されるとともに、前記収納部の開口とほぼ同じ大きさのテーパー状開口部を備えた上部板と、
から構成されていることを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
エッチング不可能なバリア層の両側からエッチング可能な部材によって挟まれているとともに、一方に多数形成された被洗浄部材を収納する収納部を備えた3層部材と、
前記3層部材の上に載置されるとともに、前記収納部の開口より大きさの小さい開口部を備えた上部押さえ板と、
から構成されていることを特徴とする被洗浄部材用搬送装置。
【請求項4】
エッチング不可能なバリア層の両側からエッチング可能な部材によって挟まれているとともに、一方に多数形成された被洗浄部材を収納する収納部と、前記収納部の下部側でそれぞれに対応した位置に設けられた前記収納部より小さい開口部とを備えた3層部材と、
前記3層部材の上に載置されるとともに、前記収納部の開口より大きさの小さい開口部を備えた上部押さえ板と、
から構成されていることを特徴とする被洗浄部材用搬送装置。
【請求項5】
前記3層部材は、エッチング可能なステンレス製の薄板と、前記薄板によって挟まれたエッチング不可能なチタンからなるバリア層とで構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載された搬送装置。
【請求項6】
前記被マスキング部材を収納する収納部は、前記3層部材の表面から前記バリア層に向かってほぼ垂直にエッチングされていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載された搬送装置。
【請求項7】
エッチング不可能なバリア層の両側からエッチング可能な部材によって挟まれている3層部材の一方から多数の被搬送部材を収納する収納部をエッチングによって形成する第1工程と、
前記3層部材の上に載置される上部板に、前記収納部の開口とほぼ同じ大きさのテーパー状開口部をエッチングにより形成する第2工程と、
を少なくとも有することを特徴とする搬送装置の作製方法。
【請求項8】
エッチング不可能なバリア層の両側からエッチング可能な部材によって挟まれている3層部材に対して、被搬送部材の下方の側に多数の開口部を形成する第1工程と、
前記開口部に対応した位置に、前記開口部より大きい被搬送部材を収納する収納部をエッチングによって形成する第2工程と、
前記3層部材の上に載置される上部板に開口部をエッチングにより形成する第3工程と、
を少なくとも有することを特徴とする搬送装置の作製方法。
【請求項1】
エッチング不可能なバリア層の両側からエッチング可能な部材によって挟まれているとともに、一方に多数形成された被搬送部材を収納する収納部を備えた3層部材と、
前記3層部材の上に載置されるとともに、前記収納部の開口とほぼ同じ大きさのテーパー状開口部を備えた上部板と、
から構成されていることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
エッチング不可能なバリア層の両側からエッチング可能な部材によって挟まれているとともに、一方に多数形成された被搬送部材を収納する収納部と、前記収納部の反対側でそれぞれに対応した位置に設けられた開口部とを備えた3層部材と、
前記3層部材の上に載置されるとともに、前記収納部の開口とほぼ同じ大きさのテーパー状開口部を備えた上部板と、
から構成されていることを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
エッチング不可能なバリア層の両側からエッチング可能な部材によって挟まれているとともに、一方に多数形成された被洗浄部材を収納する収納部を備えた3層部材と、
前記3層部材の上に載置されるとともに、前記収納部の開口より大きさの小さい開口部を備えた上部押さえ板と、
から構成されていることを特徴とする被洗浄部材用搬送装置。
【請求項4】
エッチング不可能なバリア層の両側からエッチング可能な部材によって挟まれているとともに、一方に多数形成された被洗浄部材を収納する収納部と、前記収納部の下部側でそれぞれに対応した位置に設けられた前記収納部より小さい開口部とを備えた3層部材と、
前記3層部材の上に載置されるとともに、前記収納部の開口より大きさの小さい開口部を備えた上部押さえ板と、
から構成されていることを特徴とする被洗浄部材用搬送装置。
【請求項5】
前記3層部材は、エッチング可能なステンレス製の薄板と、前記薄板によって挟まれたエッチング不可能なチタンからなるバリア層とで構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載された搬送装置。
【請求項6】
前記被マスキング部材を収納する収納部は、前記3層部材の表面から前記バリア層に向かってほぼ垂直にエッチングされていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載された搬送装置。
【請求項7】
エッチング不可能なバリア層の両側からエッチング可能な部材によって挟まれている3層部材の一方から多数の被搬送部材を収納する収納部をエッチングによって形成する第1工程と、
前記3層部材の上に載置される上部板に、前記収納部の開口とほぼ同じ大きさのテーパー状開口部をエッチングにより形成する第2工程と、
を少なくとも有することを特徴とする搬送装置の作製方法。
【請求項8】
エッチング不可能なバリア層の両側からエッチング可能な部材によって挟まれている3層部材に対して、被搬送部材の下方の側に多数の開口部を形成する第1工程と、
前記開口部に対応した位置に、前記開口部より大きい被搬送部材を収納する収納部をエッチングによって形成する第2工程と、
前記3層部材の上に載置される上部板に開口部をエッチングにより形成する第3工程と、
を少なくとも有することを特徴とする搬送装置の作製方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−13502(P2009−13502A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207970(P2008−207970)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【分割の表示】特願2003−323984(P2003−323984)の分割
【原出願日】平成15年9月17日(2003.9.17)
【出願人】(591097964)光村印刷株式会社 (14)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【分割の表示】特願2003−323984(P2003−323984)の分割
【原出願日】平成15年9月17日(2003.9.17)
【出願人】(591097964)光村印刷株式会社 (14)
【Fターム(参考)】
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