説明

搬送装置

【課題】被搬送物を設定された複数の特定角度に切り換えることができる搬送装置を提供する。
【解決手段】回転自在に支承された被搬送物支持具12を設定された複数の特定ロック角度でロックするロック手段27とロック解除用被操作具29が設けられた搬送用走行体1の停止位置には、ロック解除用被操作具29に対して作用するロック解除操作手段40と被搬送物支持具12の回転駆動手段41とが併設され、回転駆動手段41は、被搬送物支持具12の回転軸心と平行な方向に出退移動自在な可動台43上に軸支された駆動用回転体44を備え、この駆動用回転体44には、その偏心位置から突設された駆動ピン45とセンサー46が設けられ、被搬送物支持具12側には、駆動ピン45が嵌合可能な駆動ピン嵌合部23と、この駆動ピン嵌合部23に駆動ピン45が嵌合する以前の駆動用回転体44の回転によりセンサー46が検出できる被検出部24が設けられた構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送用走行体が支持する被搬送物を搬送途中に回転させて姿勢を変更することができるタイプの搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のようなタイプの搬送装置として、搬送用走行体に被搬送物支持具が回転軸心の周りに回転自在に支承されると共に、設定された複数の特定ロック角度で被搬送物支持具を回転不能にロックするロック手段が設けられ、このロック手段によるロックを解除するロック解除用被操作具が搬送用走行体側に設けられた搬送装置が、例えば特許文献1などによって知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−240462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1などによって知られている従来のこの種の搬送装置では、被搬送物支持具を所定角度だけ回転させる駆動手段として、搬送用走行体の走行経路脇に配設された固定ピンを使用するものであって、被搬送物支持具と連動する回転盤と前記固定ピンとの間の搬送用走行体の走行に伴う相対移動により、前記回転盤を介して被搬送物支持具を所定角度回転させるものであるから、被搬送物支持具の回転角度が例えば90度間隔などに決まってしまい、任意に設定した角度だけ回転させることができなかった。このような問題点を解決するために、所定位置で停止した搬送用走行体の被搬送物支持具を、走行経路脇に配設したモーター駆動の駆動手段により予め設定された角度だけ強制的に回転駆動させることが考えられるが、このような駆動手段を備えた実用的な搬送装置は、従来提案されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできる搬送装置を提案するものであって、請求項1に記載の本発明に係る搬送装置は、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、搬送用走行体(1,60)に被搬送物支持具(12)が回転軸心(17a)の周りに回転自在に支承されると共に、設定された複数の特定ロック角度で被搬送物支持具(12)を回転不能にロックするロック手段(27)が設けられ、このロック手段(27)によるロックを解除するロック解除用被操作具(29)が搬送用走行体(1,60)側に設けられた搬送装置において、搬送用走行体(1,60)の停止位置には、前記ロック解除用被操作具(29)に対してロック解除操作を行うロック解除操作手段(40,72)と被搬送物支持具(12)の回転駆動手段(41,73)とが併設され、回転駆動手段(41,73)は、定位置で停止した搬送用走行体(1,60)の被搬送物支持具(12)の回転軸心(17a)と平行な方向に出退移動自在な可動台(43)と、この可動台(43)上に前記回転軸心(17a)と略同心状の軸心の周りで回転自在に軸支された駆動用回転体(44)を備え、この駆動用回転体(44)には、その偏心位置から突設された駆動ピン(45,45A,45B)と、同じく偏心位置に支持されたセンサー(46)が設けられ、被搬送物支持具(12)側には、前記可動台(43)の進出移動により前記駆動ピン(45,45A,45B)が嵌合することのできる駆動ピン嵌合部(23,23A,23B)と、この駆動ピン嵌合部(23,23A,23B)に前記駆動ピン(45,45A,45B)が嵌合する以前の前記駆動用回転体(44)の回転により前記センサー(46)が検出できる被検出部(24)が設けられ、この被検出部(24)を前記センサー(46)が検出した状態での前記可動台(43)の進出移動により前記駆動ピン(45,45A,45B)が前記駆動ピン嵌合部(23,23A,23B)に嵌合する構成になっている。
【0006】
上記本発明を実施する場合、具体的には請求項2に記載のように、前記ロック解除操作手段(40)は、前記回転駆動手段(41)の可動台(43)に設けられたプッシャーピン(56)を備えた構造とし、前記駆動ピン嵌合部(23)に前記駆動ピン(45)が嵌合する位置までの前記可動台(43)の進出移動に伴って、当該可動台(43)と一体に進出移動する前記プッシャーピン(56)が前記ロック解除用被操作具(29)を押し操作し、前記ロック手段(27)がロック解除動作するように構成することができる。
【0007】
又、請求項3に記載のように、前記ロック解除操作手段(72)は、前記回転駆動手段(73)の可動台(43)上に当該可動台(43)の移動方向と直交する横方向に往復移動自在に設けられた横動台(81)と、この横動台(81)上に前記可動台(43)の移動方向と同一方向に往復移動自在に設けられた出退移動体(82)と、この出退移動体(82)に横向きに突設された係合ピン(83)を備えた構造とし、前記ロック解除用被操作具(29)には、前記横動台(81)の横動により前記係合ピン(83)が横向きに係脱自在な係合部(69)を設け、前記駆動ピン嵌合部(23A,23B)に前記駆動ピン(45A,45B)が嵌合する位置までの前記可動台(43)の進出移動に伴って、当該可動台(43)と一体に移動する前記係合ピン(83)が前記ロック解除用被操作具(29)の係合部(69)の真横位置に到達し、この後の前記横動台(81)の横動により前記係合ピン(83)が前記ロック解除用被操作具(29)の係合部(69)に係合し、更にこの後の前記出退移動体(82)の進出移動により前記ロック解除用被操作具(29)が押し操作されてロック手段(27)がロック解除され、当該出退移動体(82)の後退移動により前記ロック解除用被操作具(29)が引き操作されて前記ロック手段(27)がロック状態に強制復帰されるように構成することができる。
【0008】
又、請求項4に記載のように、被搬送物支持具(12)と一体に回転する回転盤(19)に前記駆動ピン嵌合部(23,23A,23B)と前記被検出部(24)を設け、前記ロック手段(27)は、前記回転盤(19)の回転軸心の周りで特定ロック角度おきに配設された複数の被係止部(22)と、これら複数の被係止部(22)に対して選択的に係合し得るように搬送用走行体(1,60)側に出退移動自在に支持されたロックピン(28)と、このロックピン(28)を前記被係止部(22)に係合するロック位置に付勢保持するバネ(32,71)とで構成することができる。この場合、前記ロック解除用被操作具(29)は、請求項5に記載のように、中間部が前記ロックピン(28)と連動連結されると共に遊端に被操作部(36)を備えた揺動レバー(29a)から構成するか又は、請求項6に記載のように、前端に被操作部(係合部69)を備えると共に後端部が連結部材(68)を介して前記ロックピン(28)と一体に連結されて、当該ロックピン(28)と平行に連動移動するスライドピン(29b)から前記ロック解除用被操作具(29)を構成することができる。
【0009】
又、請求項7に記載のように、前記駆動用回転体(44)には、その回転軸心と同心状に突設されたガイド軸(54)を設け、被搬送物支持具(12)側には、可動台(43)の進出移動により前記駆動ピン(45)が前記駆動ピン嵌合部(23)に嵌合する前に前記ガイド軸(54)が嵌合する中心嵌合部(26)を設け、前記駆動ピン嵌合部(23)に前記駆動ピン(45)が嵌合していないが前記中心嵌合部(26)に前記ガイド軸(54)が嵌合している状態での前記駆動用回転体(44)の回転により、前記センサー(46)が前記被検出部(24)を検出するように構成することができる。
【0010】
更に、請求項8に記載のように、前記駆動用回転体(44)には、その回転軸心の周囲複数箇所に前記駆動ピン(45A,45B)を突設し、被搬送物支持具(12)側の前記駆動ピン嵌合部(23A,23B)は、前記複数の駆動ピン(45A,45B)が同時に嵌合できるように複数配設しておくことができる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の本発明の搬送装置では、回転駆動手段の駆動用回転体の回転軸心と被搬送物支持具の回転軸心と同心状になる所定位置で搬送用走行体を停止させた状態において、回転駆動手段の可動台を所要量だけ被搬送物支持具側に進出移動させるか又は、前記可動台がホームポジションで待機している状態において駆動用回転体を回転させる。この可動台を進出移動させるか、させないかは、駆動用回転体に設けられたセンサーと被搬送物支持具側の被検出部とが互いに対向したときの両者間の距離によって決定され、両者間の距離が、被検出部をセンサーが検出できる検出可能距離範囲内であれば可動台(センサー)の進出移動は不要であるし、逆に両者間の距離が前記検出可能距離範囲を超えているときは、両者間の距離が前記検出可能距離範囲内になる位置まで可動台(センサー)を進出移動させる必要がある。
【0012】
而して、駆動用回転体の回転は、センサーが被検出部を検出した時点で停止させる。この結果、駆動用回転体側の駆動ピンと被搬送物支持具側の駆動ピン嵌合部とが互いに対向することになるので、係る状態で可動台を進出移動させることにより、駆動用回転体側の駆動ピンを被搬送物支持具側の駆動ピン嵌合部に嵌合させることができる。この後、ロック解除操作手段を作動させて搬送用走行体側のロック解除用被操作具を操作し、被搬送物支持具をロックしているロック手段をロック解除状態に切り換えた状態で、駆動用回転体を回転駆動することにより、駆動ピンと駆動ピン嵌合部とを介して被搬送物支持具を回転駆動させ、当該被搬送物支持具が回転駆動前の特定ロック角度から希望する特定ロック角度まで回転したときに駆動用回転体を停止させる。そして、ロック解除状態にあったロック手段を元のロック状態に復帰させて、被搬送物支持具を新たな特定ロック角度でロックした後、可動台を後退移動させて駆動ピンを駆動ピン嵌合部から離脱させることにより、一連の被搬送物支持具の姿勢切換え操作が完了する。
【0013】
上記のように請求項1に記載の本発明の構成によれば、あらかじめ設定された複数の特定ロック角度の内、何れのロック角度で被搬送物支持具がロックされていても、搬送用走行体の停止位置に併設された回転駆動手段の駆動用回転体の回転による被搬送物支持具のロック位置検索のための回転動作と、駆動ピンを被搬送物支持具側の駆動ピン嵌合部へ嵌合させるための当該駆動用回転体の進出動作と、駆動用回転体の所要角度の回転駆動動作とにより、当該被搬送物支持具を希望する特定ロック角度まで回転させ、支持する被搬送物の姿勢を切り換えることができる。
【0014】
尚、請求項2に記載の構成によれば、駆動ピン嵌合部に駆動ピンを嵌合させるための可動台の進出移動により、ロック解除操作手段のプッシャーピンでロック解除用被操作具を押し操作してロック手段をロック解除状態に切り換えることができるので、ロック解除操作手段専用の駆動用アクチュエーターが不要になり、構造や制御系を簡単にして安価に実施できる。
【0015】
前記ロック手段は、バネによる付勢力でロック状態に付勢保持される構成とし、ロック解除操作手段により、当該ロック手段のロック解除用被操作具を前記付勢力に抗してロック解除位置に切り換えるように構成すれば、ロック解除用被操作具に対する操作力を開放させるだけでロック手段を前記付勢力で自動的にロック状態に復帰させることができるが、この場合、被搬送物支持具が正確に特定ロック角度に在ることが条件になり、若し、被搬送物支持具の角度が少しでもずれていると、ロック手段が被搬送物支持具を確実にロックすることができないし、仮にロック手段のロック状態をセンサーなどで確認検出できるように構成しようとしても、ロック手段は搬送用走行体側に設けられているので、制御上、走行する搬送用走行体側からロック状態確認検出信号を地上側に取り込む必要があり、実施に要するコストが高くつくことになる。
【0016】
而るに、請求項3に記載の構成によれば、ロック解除操作手段の係合ピンとロック解除用被操作具の係合部とを係合させて、ロック解除用被操作具に対し、ロック手段をロック状態からロック解除状態へ切り換える押し操作だけでなく、ロック手段をロック解除状態からロック状態へ切り換える強制引き操作を行えるので、バネによる付勢力に頼る場合よりも確実にロック手段をロック解除状態からロック状態へ切り換えることができ、仮に被搬送物支持具の角度がずれていてロック手段をロック状態へ切り換えることができないときは、搬送用走行体側ではなく地上側のロック解除操作手段の出退移動体が所要時間内に元のホームポジションに戻らないことから、地上側で簡単に確認検出できる。従って、走行する搬送用走行体側からロック状態確認検出信号を地上側に取り込むように構成する場合と比較して、安全性を高めるための構成が容易且つ安価に実施できる。
【0017】
被搬送物支持具を複数の特定ロック角度でロックするロック手段は、請求項4に記載の構成によって簡単に実施することができる。又、請求項5に記載の構成によれば、ロック手段側のロック解除用被操作具の被操作部(ロック解除操作手段の操作対象である被操作部)をロックピンの位置から回転盤の外側へ離して配置させることが容易であると共に、梃子作用により比較的小さな操作力でも確実にロックピンを操作できる。又、請求項6に記載の構成によれば、ロック解除用被操作具の被操作部(スライドピンの前端)が直線的に運動するので、ロック解除操作手段による押し操作に際して両者間に相対的な滑りを伴わないので、摺接音や磨耗の心配が少ない。
【0018】
又、請求項7に記載の構成によれば、駆動用回転体を被搬送物支持具側に接近移動させてガイド軸を被搬送物支持具側の中心嵌合部に嵌合させて両者を芯出しすることができるので、この後の駆動用回転体の回転により被搬送物支持具側の被検出部をセンサーで検出させる作用、更なる駆動用回転体の前進移動により駆動ピンを被搬送物支持具側の駆動ピン嵌合部に嵌合させる作用、そしてこの後の駆動用回転体による被搬送物支持具の回転駆動作用の全てを円滑確実に行わせることができる。
【0019】
更に、請求項8に記載の構成によれば、駆動用回転体の周方向複数本の駆動ピンにより被搬送物支持具を回転駆動させることになるので、被搬送物支持具の回転駆動を強力確実に行わせ得ると共に、駆動用回転体や被搬送物支持具側に回転軸心周りの曲げ変形を生じさせる恐れを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第一実施例の搬送用走行体側の構成を説明する側面図である。
【図2】A図は図1の正面図、B図はその要部の拡大縦断正面図である。
【図3】本発明の第一実施例における搬送用走行体の停止位置に併設されたロック解除操作手段と被搬送物支持具の回転駆動手段を示す側面図である。
【図4】同上両手段の正面図である。
【図5】同上両手段の動作の第一段階を示す側面図である。
【図6】同上両手段の動作の第二段階を示す側面図である。
【図7】本発明の第二実施例を示す側面図(搬送用走行体側では正面図)である。
【図8】A図は第二実施例のロック解除操作手段と被搬送物支持具の回転駆動手段を示す正面図、B図は搬送用走行体側の構成を示す側面図である。
【図9】A図〜C図は同上ロック解除操作手段の各段階での動作状態を示す一部横断平面図である。
【図10】同上ロック解除操作手段と被搬送物支持具の回転駆動手段の動作の第一段階を示す要部の側面図である。
【図11】同上両手段の動作の第二段階を示す要部の側面図である。
【図12】同上ロック解除操作手段の動作の最終段階を示す要部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1及び図2に示すように、この実施例で使用される搬送用走行体1は、走行経路に沿って架設されたガイドレール2に前後一対のトロリー3,4を介して移動自在に支持され、前側のトロリー3の下側に設けられた被動用ドッグ5に、この搬送用走行体1の走行経路に沿って移動する駆動チエン6から適当間隔おきに上向きに突設されたプッシャー7が係合することにより、前進方向に推進駆動される。駆動チエン6は、ガイドレール6aにトロリー6bを介して移動自在に支持され、前記プッシャー7は、前記トロリー6bによって支持されたチエンリンクから突設されている。
【0022】
尚、従来周知のように、前記被動用ドッグ5は、駆動チエン6側のプッシャー7に対して係脱自在なもので、搬送用走行体1の停止位置に併設された出退自在なカムによりプッシャー7から切り離されることにより、搬送用走行体1を所定位置に停止させることができる。そして、前記カムを被動用ドッグ5から離脱移動させて被動用ドッグ5を元の作用姿勢に復帰させることにより、当該被動用ドッグ5を後続のプッシャー7と係合させて、停止していた搬送用走行体1を再び推進駆動させることができる。又、停止する搬送用走行体1に接近する後続の搬送用走行体1は、その被動用ドッグ5が先行停止搬送用走行体1の後側トロリー4に設けられている操作用カム8によりプッシャー7から切り離され、自動停止するので、先行停止搬送用走行体1に後続の搬送用走行体1を数珠つなぎの状態に自動停止させることができる。
【0023】
搬送用走行体1の前後一対のトロリー3,4で支持される本体9上には架台10が設けられ、この架台10から垂直に起立するように立設された支柱11の上端に被搬送物Wを支持する被搬送物支持具12が設けられている。本発明とは直接関係しないので詳細な説明は省くが、支柱11を備えた架台10は本体9に対して前後方向に傾動自在なもので、本体9に対する支柱11(架台10)の姿勢は、架台10の後端に軸支されたカム従動ローラー13と、搬送用走行体1の走行経路に沿って架設されて前記カム従動ローラー13と係合する姿勢保持用ガイドレール14とで、例えば搬送用走行体1の走行経路中の上り下りの勾配経路部においても、支柱11が対地的に鉛直姿勢を保つように構成されている。搬送用走行体1が水平走行経路部を走行する際も、前記姿勢保持用ガイドレール14により支柱11が対地的に鉛直姿勢を保つようにしても良いが、前記本体9に設けたロック手段15により当該本体9に対して架台10を、支柱11が対地的に鉛直姿勢となる状態でロックするように構成しても良い。
【0024】
被搬送物支持具12は、支柱11の上端に搬送用走行体1の走行方向に対して左右横向きに軸受け16により支承された回転軸17と、この回転軸17の両端に軸受け16を間にして左右振り分け状に取り付けられた被搬送物取付け座18及び回転盤19によって構成されている。尚、回転軸17は、回転盤19のある方が被搬送物取付け座18のある方よりも若干低くなるように傾斜している。回転盤19は、回転軸17の端部に同心状に固着された筒状ボス20と、この筒状ボス20に取り付けられた十字状板体から構成されたものであって、この十字状板体が正立姿勢にあるときに真上に向く中央上向きアーム部21aと左右両直角横向きのアーム部21b,21cの各先端部で回転軸17の軸心に対して同一距離の位置にそれぞれ被係止部22が設けられ、中央上向きアーム部21aの長さ方向の中間位置には駆動ピン嵌合部23が設けられ、更に中央上向きアーム部21aと正反対向きの中央下向きアーム部21dには、このアーム部19dから直角向きに突設され且つ回転軸17の周方向に沿った板面を有する板材から成る被検出部24が設けられている。回転盤19の周辺に90度間隔で設けられた3つの前記被係止部22は、各アーム部21a〜21cに回転軸17の軸心と平行に設けられた貫通孔により構成され、駆動ピン嵌合部23は、中央上向きアーム部21aに固着された筒状体25の、回転軸17の軸心17aと平行な貫通孔部により構成されている。更に、回転盤19の筒状ボス20の中央孔部によって、回転軸17の軸心17aと同心状の中心嵌合部26が構成されている。
【0025】
又、搬送用走行体1には、前記被搬送物支持具12に対するロック手段27が設けられている。このロック手段27は、回転盤19の周辺に90度間隔で設けられた3つの前記被係止部22に対して択一的に嵌合離脱自在なロックピン28と、このロックピン28と連動するロック解除用被操作具29とから構成されている。ロックピン28は、回転盤19を軸支する軸受け16から回転盤19と平行に上向きに固着突設された支持板30に固着された筒状体31内に、回転軸17の軸心17aと平行にスライド自在に支持されると共に、当該筒状体31内に内装された圧縮コイルバネ32により回転盤19の被係止部22に嵌合する突出位置に付勢保持されている。ロック解除用被操作具29は、下端が前記支持板30に支軸33で軸支されて回転軸17の軸心17aと平行な方向に揺動し得る上下縦向きの揺動レバー29aから構成されたもので、その中間部がロックピン28の後端部に、揺動レバー29a側の長孔34と、この長孔34に嵌合するロックピン28側のピン35とを介して連動連結され、回転盤19より上方に突出する遊端部(上端部)には、当該遊端部に固着された板材により構成された被操作部36が設けられている。
【0026】
上記構成の搬送用走行体1によれば、被搬送物支持具12を回転軸17の軸心17aの周りに回転させ、当該被搬送物支持具12と一体に回転する回転盤19の周辺に90度間隔で設けられた3つの被係止部22に対してロック手段27のロックピン28を択一的に嵌合させることにより、被搬送物支持具12の被搬送物取付け座18に取り付けられた被搬送物Wの姿勢を、回転盤19の中央上向きアーム部21aの被係止部22にロックピン28が嵌合するときの正立姿勢と、この正立姿勢を中心にして左右(搬送用走行体1の走行方向に関しては前後)何れかに90度回転した正回倒姿勢及び逆回倒姿勢の3姿勢に切り換えることができる。この3姿勢間で被搬送物Wの姿勢を切り換えるときは、ロック手段27のロック解除用被操作具29(揺動レバー29a)の遊端の被操作部36を押し操作してロックピン28を圧縮コイルバネ32の付勢力に抗して後退移動させ、当該ロックピン28を回転盤19側の被係止部22から離脱させて、回転盤19に対するロックを解除する。この状態で回転盤19を所定の方向に所定角度(90度又は180度)回転させて、一体に回転する被搬送物支持具12に取り付けられている被搬送物Wの姿勢を目的の姿勢に変更したならば、ロック解除用被操作具29(揺動レバー29a)の被操作部36に対する押し操作力を解除して、ロックピン28を圧縮コイルバネ32の付勢力で回転盤19側へ復帰移動させ、そのときロックピン28に対向している回転盤19側の被係止部22にロックピン28を嵌合させることにより、回転盤19を介して被搬送物支持具12を回転不能にロックすれば良い。
【0027】
上記のように被搬送物支持具12を介して被搬送物Wを所定の姿勢で保持している搬送用走行体1を駆動チエン6のプッシャー7で推進させることにより、当該被搬送物Wを搬送用走行体1の走行経路(ガイドレール2)に沿って搬送することになるが、この搬送用走行体1の走行経路中に設定された被搬送物姿勢切換え地点では、先に説明したような方法により搬送用走行体1が所定位置に自動停止される。そしてこの搬送用走行体1の停止位置(被搬送物姿勢切換え地点)には、図3及び図4に示すように、ロック解除操作手段40が組み込まれた回転駆動手段41が設置されている。
【0028】
回転駆動手段41は、上記停止位置で搬送用走行体1が停止したとき、当該搬送用走行体1上の回転盤19に隣接するように床面上に据付け架台42を介して設置されている。この回転駆動手段41は、搬送用走行体1の被搬送物支持具12(回転盤19)の回転軸心、即ち、回転軸17の軸心17aと平行な方向に出退移動自在な可動台43と、この可動台43上に回転軸17の軸心17aと略同心状の軸心の周りで回転自在に軸支された駆動用回転体44を備え、この駆動用回転体44には、その偏心位置から突設された駆動ピン45と、同じく偏心位置に支持されたセンサー46が設けられている。
【0029】
更に詳述すると、据付け架台42上には回転軸17の軸心17aと平行に傾斜する傾斜基台47が取り付けられ、この傾斜基台47上にスライドレール48とこれに嵌合するスライドブロック49を介して支持された前記可動台43は、傾斜基台47に内装されたシリンダーユニット50によって駆動され、出退移動する。この可動台43上には、当該可動台43上に搭載された減速機付きモーター51によって駆動される駆動軸52が、回転軸17の軸心17aと平行に軸受け53によって支承され、この駆動軸52の中間位置に固着された取付け座52aに前記駆動用回転体44が取り付けられ、この駆動用回転体44から突出する駆動軸52の先端部分が、尖端部を備えたガイド軸54を構成している。従ってこのガイド軸54は、前記停止位置で停止した搬送用走行体1側の被搬送物支持具12(回転盤19)の回転軸心、即ち、回転軸17の軸心17aと同心状態にある。駆動用回転体44は、駆動軸52から直径方向両側に延出する帯状板から成るもので、その一端側に前記駆動ピン45がガイド軸54と平行に同一方向に突設され、他端側には前記センサー46が、ガイド軸54に対して半径方向外向きに取付け板46aを介して取り付けられている。
【0030】
ロック解除操作手段40は、可動台43上に前記軸受け53を跨ぐように取り付けられた門形フレーム55の上端に基部が固定されて、前記ガイド軸54と平行且つ同一方向に延出する長尺の棒材から成るプッシャーピン56から構成されている。尚、前記据付け架台42には、定位置で停止した搬送用走行体1の支柱11を走行方向の前後両側から挟持してクランプするクランプ手段57が上下2段に取り付けられている。
【0031】
以下、使用方法及び作用について説明すると、搬送用走行体1が被搬送物Wの姿勢を切り換えるために設定された定位置で停止したならば、クランプ手段57を作動させて搬送用走行体1の支柱11を固定する。この状態で、図3に示すように後退限位置で待機している回転駆動手段41の可動台43をシリンダーユニット50により、搬送用走行体1側の回転盤19に向かって前進移動させる。この結果、駆動用回転体44の回転軸心位置から突出しているガイド軸54の尖端部が、図5に示すように、搬送用走行体1側の回転盤19の中心嵌合部26(回転盤19の筒状ボス20の中央孔部)に少し嵌合する。この第一段階において可動台43の前進移動を一旦停止させるが、このとき、図示のように駆動ピン45の先端は、駆動用回転体44と一体に回転しても、回転盤19側の駆動ピン嵌合部23を構成する筒状体25とは干渉しない、少し手前の位置にある。又、センサー46は、駆動用回転体44と一体に回転したとき、回転盤19側の被検出部24の先端付近を検出できる位置まで進んでいる。更に、ロック解除操作手段40のプッシャーピン56の先端は、搬送用走行体1側のロック手段27に併設のロック解除用被操作具29(揺動レバー29a)の被操作部36から少し離れた位置に達している。
【0032】
上記の第一段階の後、減速機付きモーター51により駆動用回転体44を回転駆動させると、当該駆動用回転体44と一体に回転するセンサー46が回転盤19側の被検出部24の先端付近に内側から対面して当該被検出部24を検出するので、この検出信号に基づいて駆動用回転体44の回転駆動を一旦停止させる。このときの駆動用回転体44の停止位相角から、現在の回転盤19(被搬送物支持具12)が、予め設定されている3つの特定角度の内、どの角度(姿勢)で停止しているかを判定することができる。この第二段階が終了した時点では、駆動用回転体44と一体に回転した駆動ピン45が回転盤19側の駆動ピン嵌合部23を構成する筒状体25と略同心状態で対向することになる。この第二段階における駆動用回転体44の回転により、回転盤19の中心嵌合部26(回転盤19の筒状ボス20の中央孔部)に尖端部が少し嵌合しているガイド軸54も一体に回転するが、回転盤19(被搬送物支持具12)は、ロック手段27のロックピン28が回転盤19側の3つの被係止部22の一つに嵌合することによりロックされているので、回転軸17の軸心17aの周りに不測に共回りすることはない。
【0033】
上記第二段階が終了すると、再びシリンダーユニット50を稼働させて、可動台43を第一段階終了時点での停止位置から前進限位置まで前進移動させる。この第三段階により、図6に示すように、駆動用回転体44側のガイド軸54は、被搬送物支持具12側の回転盤19の中心嵌合部26(回転盤19の筒状ボス20の中央孔部)により深く進入すると共に、駆動用回転体44側の駆動ピン45は、前記回転盤19の駆動ピン嵌合部23(筒状体25の貫通孔部)に嵌合する。又、可動台43と一体に前進移動するロック解除操作手段40のプッシャーピン56は、搬送用走行体1側のロック手段15に付属のロック解除用被操作具29(揺動レバー29a)の被操作部36を押し操作し、この揺動レバー29aと連動するロックピン28を圧縮コイルバネ32の付勢力に抗して後退移動させ、その先端が回転盤19側の被係止部22から後方に離脱し、回転盤19に対するロックが解除され、回転盤19(被搬送物支持具12)が回転できる状態になる。尚、センサー46は回転盤19に接近するだけであって、被検出部24を継続して検出する状態にある。
【0034】
上記第三段階が終了すれば、次に第四段階として、減速機付きモーター51を稼働させて駆動軸52を介し駆動用回転体44を所定の方向に所定角度だけ回転駆動する。このときの駆動用回転体44の回転方向と回転角度は、上記第二段階の終了時に判定された現在の回転盤19(被搬送物支持具12)の角度(姿勢)と次に切り換えるべき角度(姿勢)との角度差から求めることができる。而して、駆動用回転体44の回転により、回転盤19側の駆動ピン嵌合部23に嵌合している駆動ピン45が当該回転盤19を被搬送物支持具12と共に回転軸17の軸心17aの周りに所定の方向に所定角度だけ回転駆動することになり、当該被搬送物支持具12に支持されている被搬送物Wの姿勢が希望する姿勢に切り換えられる。
【0035】
上記第四段階の終了により被搬送物Wの姿勢が希望する姿勢に切り換えられたとき、搬送用走行体1側のロック手段15のロックピン28に対向する位置に、回転盤19側の3つの被係止部22の内、変更された角度(姿勢)に対応する1つの被係止部22が到達していることになる。従って最終第五段階として、シリンダーユニット50を逆向きに稼働させて、可動台43を図3に示すホームポジションである後退限位置まで後退移動させることにより、可動台43と一体に後退移動するロック解除操作手段40のプッシャーピン56は、搬送用走行体1側のロック手段15に付属のロック解除用被操作具29(揺動レバー29a)の被操作部36から離れ、この揺動レバー29aと連動するロックピン28が圧縮コイルバネ32の付勢力によって進出移動し、その先端が回転盤19側の被係止部22に嵌合して回転盤19をロックするので、回転盤19(被搬送物支持具12)が切り換え後の角度(姿勢)で固定される。同時に、可動台43と一体に後退移動する駆動用回転体44の駆動ピン45が回転盤19の駆動ピン嵌合部23(筒状体25の貫通孔部)から離脱し、続いて駆動用回転体44側のガイド軸54も、回転盤19の中心嵌合部26(回転盤19の筒状ボス20の中央孔部)により離脱する。
【0036】
以上でロック解除操作手段40及び回転駆動手段41を利用した、搬送用走行体1側の被搬送物支持具12(被搬送物W)の姿勢切換えが完了するので、後は、クランプ手段57を開放し、停止していた搬送用走行体1を駆動チエン6側のプッシャー7で再び推進駆動させれば良い。
【0037】
次に本発明の第二実施例について説明する。図7及び図8に示すように、この第二実施例で使用される搬送用走行体60と先の第一実施例における搬送用走行体1との相違点を説明すると、支柱11は搬送用走行体60の台車本体60aの上に垂直に固着突設され、この支柱11の上端に支承される左右横向きの回転軸17が水平であって、当該回転軸17の一端には被搬送物取付け枠61が取り付けられ、この被搬送物取付け枠61の回転軸17のある側とは反対側に、前記回転軸17と同心状にガイドローラー62が軸支されている。又、回転軸17を支承する軸受け16には上向きに上側支柱63が突設され、この上側支柱63の上端に垂直支軸によりガイドローラー64が軸支されている。従って、搬送用走行体60の走行経路中の必要な経路区間には、前記ガイドローラー62を支持案内する支持用ガイドレール65や、前記ガイドローラー64に嵌合する振れ止め用ガイドレール66を架設することができる。前記台車本体60aは、車輪60bを介してガイドレール60cに走行可能に支持され、第一実施例のトロリー3,4に連結されている。
【0038】
この第二実施例の搬送用走行体60では、前記回転軸17、被搬送物取付け枠61、及び回転軸17の被搬送物取付け枠61のある側とは反対側に固着された回転盤19から被搬送物支持具12が構成されていることになるが、回転盤19は、回転軸17と同心状の円形板から構成され、第一実施例の中心嵌合部26は設けられていない。又、駆動ピン嵌合部としては、回転軸17の軸心17aに対して点対称位置に2つの駆動ピン嵌合部23A,23Bが筒状体25によって設けられている。更にロック手段27のロックピン28が嵌合する被係止部22は、回転盤19の周縁から切込み形成されたもので、第一実施例の被係止部22より数多くの特定角度位置に配設されている。
【0039】
ロック手段27に併設されるロック解除用被操作具29は、図9及び図10に示すように、ロックピン28と平行にスライドするスライドピン29bにより構成されている。このスライドピン29bは、ロックピン28が取り付けられている支持板30に、ロックピン28を支持する筒状体31の真上位置で取り付けられた筒状体67にスライド自在に貫通支持され、このスライドピン29bの後端部とロックピン28の後端部とが上下方向の連結部材68により連結一体化されている。スライドピン29bの先端には、搬送用走行体60の走行方向と平行向きに貫通する貫通孔で構成された係合部69を備えたブロック材70が取り付けられ、このブロック材70と支持板30との間で筒状体67に遊嵌するように、このスライドピン29bとロックピン28とを前方に進出させてロックピン28を、その先端が回転盤19側の被係止部22に嵌合するロック位置に付勢保持する圧縮コイルバネ71が介装されている。従って、第一実施例のロックピン28をロック位置に付勢保持する圧縮コイルバネ32は使用されていない。尚、スライドピン29bは回転盤19の上側に位置し、その先端のブロック材70は、回転盤19よりも前方に突出している。
【0040】
被搬送物支持具12の姿勢切換えのために搬送用走行体60を停止させる停止位置には、第一実施例と同様に、ロック解除操作手段72と回転駆動手段73とが併設される。この実施例の回転駆動手段73における可動台43は、搬送用走行体60側の被搬送物支持具12(回転盤19)の回転軸心、即ち、回転軸17の軸心17aと平行な水平方向に出退移動自在に据付け架台42上に支持されるが、具体的には、可動台43は、据付け架台42上にスライドレール48とこれに嵌合するスライドブロック49を介して支持された基台部74と、この基台部74上の周辺四箇所に配置された水平方向フローティングユニット75を介して水平二次元平面上でのスライド自在に支持された中間台部76と、この中間台部76上の周辺四箇所に配置された垂直方向フローティングユニット77を介して垂直上下方向に昇降自在に支持された支持台部78から構成され、支持台部78上に、減速機付きモーター51、駆動軸52、軸受け53、及び駆動用回転体44が設けられている。従って、可動台43の支持台部78は、据付け架台42に対して単に回転軸17の軸心17aと平行な水平方向に出退移動自在であるだけでなく、水平方向フローティングユニット75によって許容される範囲内、及び垂直方向フローティングユニット77によって許容される範囲内で、X,Y,Zの三次元方向に遊動自在に支持されていることになる。
【0041】
据付け架台42に対して可動台43を往復移動させるシリンダーユニット50のピストンロッドは、可動台43の支持台部78の下側に、当該支持台部78の上記三次元方向の遊動を許容する連結手段を介して連結されている。又、水平方向フローティングユニット75は、空気圧の注入により、基台部74に対して中間台部76を水平方向の遊動後の現在位置でロックできる従来周知のものであり、垂直方向フローティングユニット77は、単に支持台部78を上下一対の圧縮コイルバネにより上下両側から挟持するものであって、上記のようなロック機構を備えていないので、中間台部76と支持台部78との間には、左右一対の垂直方向ロック手段79を介装し、この垂直方向ロック手段79に対する空気圧の注入により、中間台部76に対して支持台部78を垂直方向の遊動後の現在位置でロックできるように構成している。更に、図示省略しているが、水平方向フローティングユニット75のロックを解除すると共に垂直方向ロック手段79のロックを解除した状態で、シリンダーユニット50により可動台43をホームポジションである後退限位置まで後退移動させたとき、基台部74に対して中間台部76を初期位置に自動調心して位置決めする位置決め手段が併設されている。
【0042】
可動台43上の駆動用回転体44には、回転盤19側の直径方向一対の駆動ピン嵌合部23A,23Bに同時に嵌合可能な直径方向一対の駆動ピン45A,45Bと前記センサー46とが設けられている。勿論、ガイド軸54は設けられていない。
【0043】
ロック解除操作手段72は、可動台43の支持台部78上に固着された門形架台80上に設置されている。このロック解除操作手段72は、図9及び図10に示すように、当該可動台43の移動方向と直交する横方向(搬送用走行体60の走行方向)に往復移動自在に門形架台80上に設けられた横動台81と、この横動台81上に前記可動台43の移動方向と同一方向に往復移動自在に設けられた出退移動体82と、この出退移動体82に横向きに突設された係合ピン83を備えている。前記横動台81は、門形架台80上に据え付けられたガイド付きシリンダーユニット84の一対のガイドロッド84a,84bとピストンロッド84cによって支持されると共に水平横方向に往復駆動される。前記出退移動体82は、前記横動台81上にスライドガイド85とスライドレール86とを介して往復移動自在に支持されると共に、前端部上側には、この出退移動体82の移動方向と平行な垂直板87が固着突設され、この垂直板87の後端と横動台81との間に介装されたシリンダーユニット88により駆動される。前記係合ピン83は、出退移動体82上の垂直板87の先端部一側面から突設されている。
【0044】
この第二実施例の使用方法及び作用を説明すると、搬送用走行体60を停止位置で停止させたならば、図7に仮想線で示すように、クランプ手段57により支柱11をクランプする。このとき、被搬送物取付け枠61の遊端側のガイドローラー62が支持用ガイドレール65で支持されると共にクランプ手段89でクランプされて位置決めされ、ガイドローラー64が振れ止め用ガイドレール66に嵌合して振れ止めされるように構成することができる。回転駆動手段73の可動台43は後退限位置で待機しているが、このとき、ロック解除操作手段72の横動台81は、図9Aに示すように、出退移動体82を前進移動させても、係合ピン83が搬送用走行体60側のロック解除用被操作具29のスライドピン29bと干渉しない横方向進出限位置(ガイド付きシリンダーユニット84のピストンロッド84cの進出限位置)で待機すると共に、出退移動体82は後退限位置で待機している。
【0045】
係る状態からシリンダーユニット50により可動台43を進出移動させ、図10に示すように、駆動用回転体44の回転によりセンサー46が回転盤19側の被検出部24の先端を検出できる位置で、可動台43の進出移動を一旦停止させる。この第一段階終了時には、駆動用回転体44の駆動ピン45A,45Bは、駆動用回転体44が回転しても回転盤19側の駆動ピン嵌合部23A,23B(筒状体25)とは干渉しない位置であり、ロック解除操作手段72の係合ピン83は、搬送用走行体60側のロック手段27に併設されるロック解除用被操作具29(スライドピン29b)の先端の係合部69(ブロック材70)の位置まで達していない状態である。
【0046】
次に減速機付きモーター51により駆動用回転体44を回転させる第二段階が行なわれる。この第二段階は、駆動用回転体44と一体に回転するセンサー46が回転盤19側の被検出部24を検出したときに終了し、駆動用回転体44は、そのセンサー46が回転盤19側の被検出部24を検出する位置で停止する。このとき、駆動用回転体44が備える直径方向一対の駆動ピン45A,45Bが回転盤19側の直径方向一対の駆動ピン嵌合部23A,23Bと略同心状に対向するように構成されている。従って、第二段階終了後に、再びシリンダーユニット50により可動台43を、図11に示す前進限位置まで進出移動させて停止させる第三段階を実行することにより、可動台43と一体に前進移動する駆動用回転体44側の直径方向一対の駆動ピン45A,45Bが回転盤19側の直径方向一対の駆動ピン嵌合部23A,23Bに嵌合すると共に、ロック解除操作手段72の係合ピン83が、図9A,Bの仮想線、及び図11で示すように、搬送用走行体60側のロック解除用被操作具29(スライドピン29b)の先端の係合部69(ブロック材70の貫通孔)と略同心状の位置P1に到達する。
【0047】
上記第三段階の終了後に第四段階を実行する。即ち、ロック解除操作手段72の横動台81をガイド付きシリンダーユニット84のよって進出限位置から後退限位置まで横動させ、図9Bに示すように、係合ピン83を、搬送用走行体60側のロック解除用被操作具29(スライドピン29b)の先端の係合部69(ブロック材70の貫通孔)に横から嵌合させ、続いて、横動台81に対して出退移動体82をシリンダーユニット88により進出移動させて、係合ピン83を前記位置P1から図9C及び図12に示す位置P2まで前進移動させる。この結果、係合ピン83と被係合部69とを介して出退移動体82に連結された状態のロック解除用被操作具29(スライドピン29b)が圧縮コイルバネ71の付勢力に抗して押し操作され、当該スライドピン29bと連結部材68を介して一体化されているロックピン28が、図9C及び図12に示すように、回転盤19側の被係止部22から離脱する位置まで後退移動する。従って、ロック手段27のロックピン28による回転盤19のロックが解除され、被搬送物支持具12が回転軸17の軸心17aの周りに回転自在な状態になる。
【0048】
上記第四段階が終了したならば、回転駆動手段73の減速機付きモーター51を稼働させて駆動用回転体44を所定の方向に所定角度回転させ、直径方向一対の駆動ピン45A,45Bとこれらが嵌合する駆動ピン嵌合部23A,23Bを介して、回転盤19、回転軸17、及び被搬送物取付け枠61からなる被搬送物支持具12を回転軸17の軸心17aの周りに所定の方向に所定角度回転させ、被搬送物取付け枠61に取り付けられている被搬送物Wの現在特定角度(姿勢)を希望する特定角度の姿勢に切り換えることができる。この駆動用回転体44を所定の方向に所定角度だけ回転させる第五段階が終了したとき、第一実施例と同様に、回転盤19側の被係合部22の一つがロック手段27のロックピン28と略同心状に位置している。
【0049】
上記第五段階が終了すれば、次に第六段階として、横動台81に対して出退移動体82をシリンダーユニット88により後退移動させて、係合ピン83を前記位置P2からP1まで後退させると、この係合ピン83の後退移動に伴って、ロック解除用被操作具29(スライドピン29b)が圧縮コイルバネ71の付勢力によって前進移動し、このスライドピン29bと一体化されているロックピン28を元のロック位置まで復帰させて、そのとき対向している回転盤19側の一つの被係止部22に嵌合させ、回転盤19を回転不能にロックすることができる。このとき、何らかの原因で回転盤19側の被係止部22がロックピン28から横側方にずれていて、復帰移動するロックピン28の先端が回転盤19に当接し、それ以上の係合ピン83の後退移動ができなくなると、横動台81に対する出退移動体82の後退駆動完了までに割り当てられた設定時間が経過しても当該出退移動体82が後退限位置に戻らない異常事態の検出に基づき、非常停止をかけるなどの処置を講ずることができる。横動台81に対して出退移動体82が後退限位置まで後退すれば、続いてガイド付きシリンダーユニット84により横動台81を進出限位置まで進出移動させ、係合ピン83をロック解除用被操作具29(スライドピン29b)の係合部69から横側方に退出させる。
【0050】
上記第六段階の終了の後、可動台43をシリンダーユニット50によりホームポジションである後退限位置まで後退復帰させることにより、駆動用回転体44の駆動ピン45A,45Bを回転盤19側の駆動ピン嵌合部23A,23Bから退出させる。この最終第七段階の終了により、被搬送物支持具12(被搬送物取付け枠61)に取り付けられている被搬送物Wの姿勢の切換えが完了すると共に、ロック手段27により被搬送物支持具12(被搬送物取付け枠61)がその姿勢にロックされるので、クランプ手段57,89の開放の後、搬送用走行体60を走行開始させることができる。
【0051】
尚、上記第二実施例によれば、駆動ピン45A,45Bを前進移動させて回転盤19側の駆動ピン嵌合部23A,23Bに嵌合させるとき、当該駆動ピン45A,45Bを備えた駆動用回転体44が軸支されている可動台43の支持台部78がX,Y,Z三次元方向に自由度を有する支持機構により支持されているので、駆動ピン45A,45Bと駆動ピン嵌合部23A,23Bとの相対位置が多少ずれていても、駆動ピン45A,45Bの尖端が駆動ピン嵌合部23A,23Bの開口端エリア内に対向している限り、支持台部78のX,Y,Z三次元方向の遊動を伴って、前進移動する駆動ピン45A,45Bを回転盤19側の駆動ピン嵌合部23A,23Bに確実に嵌合させることができる。勿論、この両者の嵌合の後の駆動用回転体44の回転駆動に先立って、各水平方向フローティングユニット75のロックと、垂直方向ロック手段79による垂直方向フローティングユニット77のロックとを実施して、駆動用回転体44の回転軸心位置を不動状態にしなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の搬送装置は、自動車のドアなどの比較的大型の部品を、作業行程に応じてその姿勢を変える必要のある例えば塗装ラインにおいて搬送する手段として、有効に活用できるものである。
【符号の説明】
【0053】
1,60 搬送用走行体
5 被動用ドッグ
6 駆動チエン
11 支柱
12 被搬送物支持具
16 軸受け
17 回転軸
17a 回転軸心
18 被搬送物取付け座
19 回転盤
21a〜21d 回転盤の各アーム部
22 被係止部
23,23A,23B 駆動ピン嵌合部
24 被検出部
26 中心嵌合部
27 ロック手段
28 ロックピン
29 ロック解除用被操作具
29a 揺動レバー
29b スライドピン
32,71 圧縮コイルバネ
36 被操作部
40,72 ロック解除操作手段
41,73 回転駆動手段
42 据付け架台
43 可動台
44 駆動用回転体
45,45A,45B 駆動ピン
46 センサー
47 傾斜基台
50,88 シリンダーユニット
51 減速機付きモーター
52 駆動軸
53 軸受け
54 ガイド軸
56 プッシャーピン
57 クランプ手段
61 被搬送物取付け枠
68 連結部材
69 係合部
74 基台部(可動台)
75 水平方向フローティングユニット
76 中間台部(可動台)
77 垂直方向フローティングユニット
78 支持台部(可動台)
79 垂直方向ロック手段
81 横動台
82 出退移動体
83 係合ピン
84 ガイド付きシリンダーユニット
W 被搬送物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送用走行体に被搬送物支持具が回転軸心の周りに回転自在に支承されると共に、設定された複数の特定ロック角度で被搬送物支持具を回転不能にロックするロック手段が設けられ、このロック手段によるロックを解除するロック解除用被操作具が搬送用走行体側に設けられた搬送装置において、搬送用走行体の停止位置には、前記ロック解除用被操作具に対してロック解除操作を行うロック解除操作手段と被搬送物支持具の回転駆動手段とが併設され、回転駆動手段は、定位置で停止した搬送用走行体の被搬送物支持具の回転軸心と平行な方向に出退移動自在な可動台と、この可動台上に前記回転軸心と略同心状の軸心の周りで回転自在に軸支された駆動用回転体を備え、この駆動用回転体には、その偏心位置から突設された駆動ピンと、同じく偏心位置に支持されたセンサーが設けられ、被搬送物支持具側には、前記可動台の進出移動により前記駆動ピンが嵌合することのできる駆動ピン嵌合部と、この駆動ピン嵌合部に前記駆動ピンが嵌合する以前の前記駆動用回転体の回転により前記センサーが検出できる被検出部が設けられ、この被検出部を前記センサーが検出した状態での前記可動台の進出移動により前記駆動ピンが前記駆動ピン嵌合部に嵌合するように構成されている、搬送装置。
【請求項2】
前記ロック解除操作手段は、前記回転駆動手段の可動台に設けられたプッシャーピンを備え、前記駆動ピン嵌合部に前記駆動ピンが嵌合する位置までの前記可動台の進出移動に伴って、当該可動台と一体に進出移動する前記プッシャーピンが前記ロック解除用被操作具を押し操作し、前記ロック手段がロック解除動作するように構成されている、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記ロック解除操作手段は、前記回転駆動手段の可動台上に当該可動台の移動方向と直交する横方向に往復移動自在に設けられた横動台と、この横動台上に前記可動台の移動方向と同一方向に往復移動自在に設けられた出退移動体と、この出退移動体に横向きに突設された係合ピンを備え、前記ロック解除用被操作具には、前記横動台の横動により前記係合ピンが横向きに係脱自在な係合部が設けられ、前記駆動ピン嵌合部に前記駆動ピンが嵌合する位置までの前記可動台の進出移動に伴って、当該可動台と一体に移動する前記係合ピンが前記ロック解除用被操作具の係合部の真横位置に到達し、この後の前記横動台の横動により前記係合ピンが前記ロック解除用被操作具の係合部に係合し、更にこの後の前記出退移動体の進出移動により前記ロック解除用被操作具が押し操作されてロック手段がロック解除され、当該出退移動体の後退移動により前記ロック解除用被操作具が引き操作されて前記ロック手段がロック状態に強制復帰されるように構成されている、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項4】
被搬送物支持具と一体に回転する回転盤に前記駆動ピン嵌合部と前記被検出部が設けられ、前記ロック手段は、前記回転盤の回転軸心の周りで特定ロック角度おきに配設された複数の被係止部と、これら複数の被係止部に対して選択的に係合し得るように搬送用走行体側に出退移動自在に支持されたロックピンと、このロックピンを前記被係止部に係合するロック位置に付勢保持するバネとで構成されている、請求項1〜3の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記ロック解除用被操作具は、中間部が前記ロックピンと連動連結されると共に遊端に被操作部を備えた揺動レバーから構成されている、請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記ロック解除用被操作具は、前端に被操作部を備えると共に、後端部が連結部材を介して前記ロックピンと一体に連結されて、当該ロックピンと平行に連動移動するスライドピンから構成されている、請求項4に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記駆動用回転体には、その回転軸心と同心状に突設されたガイド軸が設けられ、被搬送物支持具側には、可動台の進出移動により前記駆動ピンが前記駆動ピン嵌合部に嵌合する前に前記ガイド軸が嵌合する中心嵌合部が設けられ、前記駆動ピンは前記駆動ピン嵌合部に嵌合していないが前記中心嵌合部に前記ガイド軸が嵌合している状態での前記駆動用回転体の回転により前記センサーが前記被検出部を検出するように構成されている、請求項1〜6の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記駆動用回転体には、その回転軸心の周囲複数箇所に前記駆動ピンが突設され、被搬送物支持具側の前記駆動ピン嵌合部は、前記複数の駆動ピンが同時に嵌合できるように複数配設されている、請求項1〜7の何れか1項に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−131944(P2011−131944A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290114(P2009−290114)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】