説明

搬送車システム

【課題】搬送車が落下した物品が小さい物品であっても、対応できる搬送車システムを提供することである。
【解決手段】物品6を搬送する複数の搬送車(10)を有する搬送車システム(1)において、前記搬送車(10)は、該搬送車(10)からの荷物の落下を検知する落下物検知センサー21を備え、前記落下物検知センサー21によって荷物の落下を検知したときには、前記搬送車(10)の後続の搬送車に該落下検知を通信する第一通信手段16を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物を搬送する複数の搬送車と該搬送車を走行制御する上位コントローラとを有する搬送車システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動倉庫において物品を搬送するための搬送車システムは公知である。
搬送車システムは、有軌道又は無軌道の走行ルート、この走行ルートに沿って走行する複数台の搬送車、この搬送車を管理するコントローラから構成されるシステムである。搬送車システムにおいて、それぞれの搬送車は、走行ルートに沿って配置されたステーション間で物品を搬送する。
【0003】
ここで、搬送車が搬送する物品を落下した場合は、後続走行する搬送車の破損・設備の損傷をまねき、搬送車システムの長時間の停止に至る深刻な事故の原因となる。
そこで、障害物センサーを備えた搬送車は、障害物(落下物)を検知した場合には、減速・停止制御を実施する。
例えば、特許文献1は、障害物との衝突防止の走行制御を行なう無人搬送車システムを開示している。この走行制御は、無人搬送車が障害物と残走行距離とを比較して、停止する又は低速走行する制御である。
【特許文献1】特開平11−202940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来及び特許文献1の搬送車システムが備える障害物センサーは、落下した物品が小さい物品であれば検知できない恐れがある。
そこで、解決しようとする課題は、落下した物品が小さい物品であっても、対応できる搬送車システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
すなわち、請求項1においては、荷物を搬送する複数の搬送車を有する搬送車システムにおいて、前記搬送車は、該搬送車からの荷物の落下を検知する落下検知手段を備え、前記落下検知手段によって荷物の落下を検知したときには、前記搬送車の後続の搬送車に該落下検知を通信する第一通信手段を備えるものである。
【0007】
請求項2においては、請求項1記載の搬送車システムにおいて、前記搬送車は、現在の走行位置を把握できる位置把握手段を備え、前記第一通信手段は、前記荷物落下検知手段によって荷物の落下を検知したときには、前記搬送車の後続の搬送車に、該落下検知及び落下位置を通信するものである。
【0008】
請求項3においては、請求項1又は2記載の搬送車システムにおいて、前記搬送車を走行制御する上位コントローラと、前記搬送車が前記落下検知手段又は前記位置把握手段によって荷物の落下又は落下位置を検知したときに、前記上位コントローラに該落下検知又は落下位置を通信し、かつ前記上位コントローラが前記搬送車以外の搬送車に対し該落下検知又は落下位置を通信する第二通信手段と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、搬送車は、落下検知手段によって、従来の障害物センサーが検出できない小さな物品の落下を検知できる。また、搬送する物品を落下したとき、落下の検知を、後続の搬送車に対して上位コントローラを介さず直ちに通信できる。このため、後続の搬送車を即座に緊急停止する等の措置を取ることができる。このようにして、搬送車システムの事故を防止することができる。
【0011】
請求項2においては、請求項1の効果に加え、搬送車は、搬送する物品を落下したとき、落下の検知及び落下位置を、後続の搬送車に対して上位コントローラを介さず直ちに通信できる。このため、後続の搬送車を落下位置近傍まで走行させ、その後停止する等の措置を取ることができる。このようにして、搬送車が搬送する物品を落下したときでも、搬送車システムの事故を防止し、かつ稼働率の低下を最小限とすることができる。
【0012】
請求項3においては、請求項1又は2の効果に加え、後続の搬送車に対して、第一通信手段が不通になったときであっても、上位コントローラに通信することで、落下の検知及び位置を全ての搬送車に通信できる。このため、全ての搬送車を停止する等の措置を直ちに取ることができる。このようにして、搬送車が搬送する物品を落下しかつ後続の搬送車に対して通信が遮られたときであっても、搬送車システムの事故を防止することができる。
さらに、後続の搬送車に対して通信が正常であっても、後続の搬送車を停止させた後に、全ての搬送車を停止させる等のシステム全体を通じた措置が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施例に係る無人搬送車システムの全体的な構成を示した構成図、図2は落下物検知手段を備える無人搬送車の構成を示す斜視図、図3は無人搬送車の無人搬送車コントローラの構成を示す構成図である。図4は統合コントローラと各無人搬送車との関係を示す構成図、図5は衝突回避制御の概要を示すフロー図、図6は第一衝突回避制御の流れを示すフロー図である。
図7は第二衝突回避制御の流れを示すフロー図である。
【0014】
まず、図1を用いて、無人搬送車システム1について簡単に説明する。
図1に示すように、無人搬送車システム1は、例えば半導体製造工場等のクリーンルームの無人工場内に適用される。このような無人工場内には、物品6(例えばウエハ、図2参照)の加工処理を行なうステーション3が各地点に配置されている。
また、無人工場内部において、有軌道又は無軌道の走行ルート2が設けられている。無人搬送車10は、ステーション3からパレット7(図2参照)の移載を受けて、他のステーション3まで走行ルート2に沿って走行して移載する。
【0015】
次に、図2及び図3を用いて、無人搬送車10について簡単に説明する。
図2及び図3に示すように、無人搬送車10は、パレット7を載置して各ステーション3間を移動する。パレット7には、物品6が収納されている。また、無人搬送車10は、各ステーション3においてパレット7ごとステーション3に移載するための移載装置13、無人工場内を走行可能な走行装置11を備えている。
移載装置13は、例えば車体フレームの物品収納空間の下部に一対のローラコンベア(図示略)が突設される構成とされている。この一対のローラコンベアがパレット7下面を転支して、無人搬送車10の進行方向(走行ルート2の走行方向)に対して物品を左右方向に横送りする。
このように、本実施例の無人搬送車10は、複数の物品6をパレット7に収納して搬送する一般的な搬送形態とする。物品6及びパレット7の形態については、特に限定しない。
【0016】
次に、図2を用いて、落下物検知センサー21について詳細に説明する。
図2に示すように、例えば、落下物検知センサー21は光電スイッチによるものを示している。光電スイッチは、投光器,受光器,増幅器で構成され,物体が光路を遮ったときに接点を開閉するスイッチである。投光器にはLED(発光ダイオード)等が用いられる。一方、受光器にはフォトトランジスタなどが用いられる。
光電スイッチは,投光器と受光器の配置によって透過型,反射型,ふく射型に分けられる。透過型は、投光器と受光器を対向させて配置したものである。一方、反射型は、投光器と受光器を同じケースの中に納め,物体からの反射光で作動するものである。他方、ふく射型は、受光器だけで構成した光電スイッチで,物体からのふく射光で作動するものである。
【0017】
例えば、図2の落下物検知センサー21は、荷枠22の物品開放側に反射型の光電スイッチを設ける構成を示している。本実施例では、荷枠22の物品開放面において対角線を形成するように上隅に2つの投光器23、下隅にそれぞれに対応する2つの受光器24を設けている。
このような構成とすることで、落下物検知センサー21は、物品6が投光器23と受光器24との間を通過すれば、物品6の落下を検知できる。すなわち、無人搬送車10は、載置している物品6が搬送中に落下したことを検知することができる。なお、本発明の落下物検知センサー21は、特に本実施例に限定されず、荷物の形態に応じたものとする。
【0018】
次に、位置検出センサー25(図4参照)について簡単に説明する。
通常、無人搬送車10は、走行ルート2内において、自分が現在どの位置を走行又は作業しているか認識できるようにされている。
例えば、車輪の回転を検出するロータリーエンコーダを備える無人搬送車の場合は、ロータリーエンコーダの値から走行距離を演算できるため、ロータリーエンコーダが位置検出センサー25となる。
また、走行ルート2に磁気スポットを設けたスポット誘導によって無人搬送車10が走行する無人搬送車システム1では、磁気センサーが位置検出センサー25となる。また、走行ルート2の適宜位置にマークを無人搬送車10がCCDセンサーによって識別する無人搬送車システム1では、CCDセンサーが位置検出センサー25となる。
無人搬送車10は、位置検出センサー25によって、後述する統合コントローラ5のRAMにおいて現在どの位置で走行又は作業しているのかを認識できる構成とされている。
【0019】
次に、図3を用いて、上位コントローラとしての統合コントローラ5について詳細に説明する。
図3に示すように、統合コントローラ5は、無人搬送車システム1において、各無人搬送車10・・・10の搬送を管理するコントローラである。以下では、説明がわかりやすいように、一の無人搬送車10に対し、先行する無人搬送車10aと後続する無人搬送車10bを定義する。つまり、図3では、10a、10、10bの順で進行方向(図中白抜き矢印)に向かっている。
統合コントローラ5は、各種演算処理や制御を行なうCPU、読み出し専用の記憶手段としてのROM、読み書き可能な記憶手段としてのRAM、各無人搬送車10と通信するための第二通信手段17から構成されている。ROMには、生産スケジュール等の最適化プログラム等が格納され、RAMには、搬送経路情報が書き込まれており、各無人搬送車10の走行位置や制御状態等の各種情報が一時的に記憶される。そして、CPUは、ROMに書き込まれている制御プログラム等にしたがって、RAMを作業領域として無人搬送車システム1の全体を管理している。
統合コントローラ5は、第二通信手段17によって、無人搬送車コントローラ15と赤外線通信又はモデム通信による無線通信、或いは通信線による有線通信で通信可能に構成されている。
【0020】
ここで、図4を用いて、無人搬送車コントローラ15について詳細に説明する。
図4に示すように、無人搬送車コントローラ15は、各無人搬送車10に設けられている。無人搬送車コントローラ15は、無人搬送車10の基本的な走行・停止制御を行なうコントローラである。無人搬送車コントローラ15は、落下物検知センサー21、位置検出センサー25、第二通信手段17、及び第一通信手段16と接続されている。落下物検知センサー21、位置検出センサー25及び第二通信手段17は、上述しているので説明は省略する。
本発明の特色である第一通信手段16は、一の無人搬送車10が後続する無人搬送車10bに対して、統合コントローラ5を介さずに、直に通信できる通信手段である。逆に言えば、一の無人搬送車10は、先行する無人搬送車10aより、第一通信手段16によって通信を受け取ることができる。第一通信手段16は、赤外線通信又はモデム間通信による無線通信手段としている(図3参照)。
ここで、第二通信手段17は、一の統合コントローラ5に対し多数の無人搬送車コントローラ15の通信手段であるため、サンプリング周期が短く設定することが困難である。すなわち、リアルタイム制御ができない。一方、第一通信手段16は、一の無人搬送車10と一の無人搬送車10bの通信手段であるため、サンプリング周期が短く設定することができる。すなわち、リアルタイム制御ができる。
【0021】
ここで、図5を用いて、本発明の特色である衝突回避制御について詳細に説明する。
図5に示すように、衝突回避制御は、一の無人搬送車10について、自車10が物品6を落下したときの衝突回避制御である後続車10bを保護するための第一衝突回避制御(S100)と、先行する無人搬送車10aが物品6を落下したときの自車10を保護するための第二衝突回避制御(S200)に分けられる。以下に、具体的な制御方法について説明する。なお、第一衝突回避制御(S100)及び第二衝突回避制御(S200)の順序は、特に限定しない。
【0022】
まず、図6を用いて、無人搬送車10による後続車10bを保護するための第一衝突回避制御(S100)について説明する。
図6に示すように、無人搬送車コントローラ15は、落下物検知センサー21によって物品6の落下を検出(S120)したならば、第一通信手段16によって後続する無人搬送車10bに、落下検知及び落下位置を通信する(S130)。特に自車10からの落下物がなければ、後述の第二衝突回避制御(S200)を行なう。
S130と同時に、無人搬送車コントローラ15は、第二通信手段17によって統合コントローラ5に、落下検知及び落下位置を通信する(S140)。最終的には、無人搬送車10は被害の拡大を防止するために停止する(S160)。
なお、S130とS140とでは、CPUでの処理上、S130を必ず優先して行なうものとする。
【0023】
次に、図7を用いて、無人搬送車10自体を保護するための第二衝突回避制御(S200)について説明する。
図7に示すように、無人搬送車コントローラ15は、先行する無人搬送車10aより第一通信手段16によって、落下検知及び落下位置を通信されたとき(S210)、或いは統合コントローラ5より、先行する無人搬送車10aの落下検知及び落下位置を通信されたとき(S220)は、無人搬送車10を落下位置近傍にて停止する(S240)。
特に落下検知がなければ、通常走行(S230)を行なう。
【0024】
このような構成とすることで、物品6の落下は、無人搬送車10・10間の通信手段である第一通信手段16を、統合コントローラ5と無人搬送車10との通信手段である第二通信手段17の二つによってそれぞれ通信される。また、このとき、第一通信手段16を優先させて通信するものとしている。
このようにして、以下の利点が得られる。
本実施例では、無人搬送車10は、落下物検知センサー21によって、従来の障害物センサーが検出できない小さな物品の落下を検知できる。また、搬送する物品6を落下したとき、落下の検知を、後続の無人搬送車10bに対して統合コントローラ5を介さず直ちに通信できる。このため、後続の無人搬送車10bを即座に緊急停止する等の措置を取ることができる。このようにして、無人搬送車システム1の事故を防止することができる。
【0025】
また、本実施例では、無人搬送車10が搬送する物品6を落下したとき、落下検知のみならず落下位置を、統合コントローラ5を介さず、直ちに後続の無人搬送車10bに通信できる。
このため、後続の無人搬送車10bは、落下位置近傍までまで走行させ、その後停止する措置もとるができる。すなわち、無人搬送車システム1の稼働率に対する影響を最小限にすることができる。
【0026】
さらに、なんらかの理由で後続の無人搬送車10bに対して通信が遮られる、或いは通信が故障する場合を想定する。例えば、無人搬送車10・10b間に障害物が存在する、曲がり角の走行時に一時的に通信が遮断される、或いは単に第一通信手段16に異常がある等が考えられる。
このような場合でも、第二通信手段17を用いることで、落下検知を全ての無人搬送車10に通信できる。
このため、全ての無人搬送車10を停止する等の措置を、第一通信手段16が異常のときでも取ることができる。
【0027】
さらに、第一通信手段16にて後続の無人搬送車10bを停止させた後であっても、第二通信手段17によって統合コントローラ5は落下検知を認識できる。
このため、システム全体を通して無人搬送車システム1の事故を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例に係る無人搬送車システムの全体的な構成を示した構成図。
【図2】落下物検知手段を備える無人搬送車の構成を示す斜視図。
【図3】無人搬送車の無人搬送車コントローラの構成を示す構成図。
【図4】統合コントローラと各無人搬送車との関係を示す構成図。
【図5】衝突回避制御の概要を示すフロー図。
【図6】第一衝突回避制御の流れを示すフロー図。
【図7】第二衝突回避制御の流れを示すフロー図。
【符号の説明】
【0029】
1 無人搬送車システム
2 走行ルート
3 ステーション
5 統合コントローラ
10 無人搬送車
15 無人搬送車コントローラ
16 第一通信手段
17 第二通信手段
21 落下物検知センサー
25 位置検出センサー
S100 第一衝突回避制御
S200 第二衝突回避制御


【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物を搬送する複数の搬送車を有する搬送車システムにおいて、
前記搬送車は、該搬送車からの荷物の落下を検知する落下検知手段を備え、
前記落下検知手段によって荷物の落下を検知したときには、前記搬送車の後続の搬送車に該落下検知を通信する第一通信手段を備える
ことを特徴とする搬送車システム。
【請求項2】
請求項1記載の搬送車システムにおいて、
前記搬送車は、現在の走行位置を把握できる位置把握手段を備え、
前記第一通信手段は、前記荷物落下検知手段によって荷物の落下を検知したときには、前記搬送車の後続の搬送車に、該落下検知及び落下位置を通信する
ことを特徴とする搬送車システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の搬送車システムにおいて、
前記搬送車を走行制御する上位コントローラと、
前記搬送車が前記落下検知手段又は前記位置把握手段によって荷物の落下又は落下位置を検知したときに、前記上位コントローラに該落下検知又は落下位置を通信し、かつ前記上位コントローラが前記搬送車以外の搬送車に対し該落下検知又は落下位置を通信する第二通信手段と、
を備えることを特徴とする搬送車システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−174364(P2008−174364A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10645(P2007−10645)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】