説明

携帯機器および撮像装置

【課題】携帯機器の光学系の一部を筐体の縁部近傍に配置する。
【解決手段】筐体の中心に対して周縁方向に寄せられて配置された第1光学系と、筐体に対して収納状態と伸展状態をとるグリップ部とを備え、グリップ部の収納状態に対する伸展状態の方向は、筐体の中心に対する第1光学系の方向の成分を含む。上記携帯機器は、第1光学系に入射する光束から取得される第1撮影画像、および、第2光学系に入射する光束から取得される第2撮影画像の少なくとも一方の画像取得開始を指示する操作部材を備え、操作部材は、グリップ部に配置されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機器および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに離間した光学系を携帯機器に装備する場合がある。このような携帯機器では、光学系の少なくとも一部が筐体の周縁部近傍に配置される(特許文献1参照)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]特開2005−277606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
携帯機器において光学系の一部を筐体周縁部近傍に配置した場合、当該携帯機器を保持する手の指先等が光学系の光路上に侵入する指掛かりが生じ易くなる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、上記課題を解決すべく、本発明の第一態様として、筐体の中心に対して周縁方向に寄せられて配置された第1光学系と、筐体に対して収納状態と伸展状態をとるグリップ部とを備え、グリップ部の収納状態に対する伸展状態の方向は、筐体の中心に対する第1光学系の方向の成分を含む携帯機器が提供される。
【0005】
また、本発明の第二態様として、筐体の中心に対して左右にそれぞれ寄せられて配置された第1光学系および第2光学系と、第1光学系に入射する光束から取得される第1撮影画像、および、第2光学系に入射する光束から取得される第2撮影画像を処理する画像処理部と、筐体に対して収納状態と伸展状態をとるグリップ部とを備え、グリップ部の収納状態に対する伸展状態の方向は、筐体の中心に対する第1光学系の方向の成分を含む撮像装置が提供される。
【0006】
上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これら特徴群のサブコンビネーションも発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】デジタルカメラ100を斜め前方から見下ろした斜視図である。
【図2】デジタルカメラ100を斜め前方から見下ろした斜視図である。
【図3】デジタルカメラ100を斜め後方から見下ろした斜視図である。
【図4】デジタルカメラ100を斜め前方から見下ろした斜視図である。
【図5】デジタルカメラ100の内部構造を示す図である。
【図6】デジタルカメラ100を斜め後方から見下ろした斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、デジタルカメラ100を斜め前方から見下ろした斜視図である。同図は、携帯機器として携帯する場合のデジタルカメラ100の状態を示す。
【0010】
なお、上記前方とは、デジタルカメラ100に対して被写体側をいう。また、以下の説明において記載する上、下、左および右は、各図において描かれた状態における図上の位置関係を示す。よって、上、下、左および右の意味するところは、他の図あるいは他の形態において常に同じ方向になるとは限らない。
【0011】
デジタルカメラ100は、略直方体の筐体110と、筐体110の表面に配されたグリップ部130および前面カバー140を含むカバー部材とを備える。グリップ部130は、筐体110の図中左側の前面および上面を覆う。前面カバー140は、筐体110の前面に配される。
【0012】
グリップ部130は、筐体110と連続した表面を有する。ただし、筐体110およびグリップ部130の間には、合わせ目111が形成される。合わせ目111は、筐体110の上面に連続する。更に、合わせ目111は、図中には見えない、背面および底面にも連続して、デジタルカメラ100の周囲を一周する。また、グリップ部130の上面にはレリーズボタン122および押しボタン124が、グリップ部130の前面には指掛け部132が、それぞれ配される。
【0013】
レリーズボタン122は、押し下げ量に応じた2段階の機能を有する。即ち、レリーズボタン122の押し下げ量が少ない半押状態になったときには、デジタルカメラ100の自動合焦機構が起動して撮像光学系が合焦動作する。また、レリーズボタン122の押し下げ量が大きい全押状態になると、デジタルカメラ100に対して画像取得の開始が指示される。
【0014】
上記のように、レリーズボタン122は、合焦開始および画像取得開始の各タイミングをデジタルカメラ100に指示する場合にユーザが押し下げる。よって、レリーズボタン122は、他の押しボタン124よりも大きな寸法を有する。また、レリーズボタン122は、他の押しボタン124よりも押し易い位置に配される。押しボタン124には、例えば、電源スイッチ、再生モードへの切替等が割り当てられる。
【0015】
指掛け部132は、筐体110およびグリップ部130の前面に対して、更に前方に隆起する。指掛け部132は、デジタルカメラ100を保持する場合に指掛かりとして機能して、筐体110の保持を確実にする。指掛け部132を指掛かりとしてデジタルカメラ100を把持した場合に、デジタルカメラ100を把持する手の人指し指により、レリーズボタン122および押しボタン124を操作できる。
【0016】
なお、レリーズボタン122の半押状態に対しては、自動合焦機構の起動の他、自動露出機構の起動等も割り当てられる場合がある。また、自動合焦機構により得られた合焦状態、自動露出機構により得られた露出条件等を保持する目的で、ユーザが半押状態を維持する場合がある。更に、レリーズボタン122の半押し状態に割り当てられた機能の一部または全部を取り消す機能を有する場合もある。
【0017】
また、デジタルカメラ100における押しボタン124の数に制限はなく、例示した場合よりも多い場合も少ない場合もあり得る。また、押しボタン124の機能にも制限はなく、デジタルカメラ100の有する機能に応じて、動画撮影等の開始および終了、プロジェクタ等の付加機能のオン/オフ等が割り当てられる場合がある。
【0018】
図2は、デジタルカメラ100を斜め前方から見下ろした斜視図である。同図は、前面カバー140が退避状態へ移動して、前玉152が遮蔽されていない状態のデジタルカメラ100を示す。図1と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0019】
前面カバー140は、それ自体の背後に配された一対のガイドレール142により筐体110の前面に係合する。これにより、前面カバー140は、筐体110の前面に沿って、図中上下に移動できる。
【0020】
図2に示した状態では、前面カバー140は、図中の矢印Aで示すように筐体110の前面に沿って下方に移動している。また、前面カバー140が移動したことにより、筐体110の前面上部には、前玉152と、フラッシュ162および補助光源164を含む照明部とが現れている。
【0021】
ただし、前面カバー140は、スライドして前玉152、フラッシュ162および補助光源164を露出させた状態においても、筐体110の前面から外に延出することはない。よって、前面カバー140のスライドにより、筐体110の実用上の寸法が大きくなることはない。
【0022】
前玉152は、筐体110に内蔵された第1の光学系の一部をなす。なお、図示の例では、当該光学系は、筐体110の内部で光軸を下方に屈曲した屈曲光学系を成す。この屈曲光学系において、前玉152と反対側の端部には、筐体110の底面と平行な撮像素子が配され、前玉152から入射した被写体光束に応じた画像を撮像できる。
【0023】
フラッシュ162は、ユーザによりデジタルカメラ100に強制発光モードが設定された場合、デジタルカメラ100に自動発光モードが設定されており、自動露出機構が発光を指示した場合等に、画像取得開始のタイミングに合わせて発光して被写体を照明する。補助光源164は、被写体からの光量が足りない場合に被写体に向かって補助光を照射して、自動合焦機構の動作を補助する。
【0024】
なお、グリップ部130を含む筐体110の中心に対して、前玉152は右側に寄せて配される。よって、掌がグリップ部130の側面に対向するようにユーザの右手をグリップ部130に添えて、同右手の中指、薬指および小指の少なくとも一部を指掛け部132に掛け、同右手の親指をグリップ部130の背面に回すことによりグリップ部130全体を把持して、デジタルカメラ100を確実に保持できる。
【0025】
また、指掛け部132と前玉152とは、筐体110の前面において互いに離れた位置に配されている。よって、指掛け部132に指を掛けてグリップ部130を把持した場合であっても、前玉152に指が掛かることはない。
【0026】
更に、図1に示した状態から図2に示した状態への前面カバー140の移動に、デジタルカメラ100の電源投入を連動させてもよい。即ち、前玉152、フラッシュ162および補助光源164が前面カバー140により覆われている場合はデジタルカメラ100の電源を遮断して、前面カバー140が移動して前玉152、フラッシュ162および補助光源164が露出した場合はデジタルカメラ100の電源を投入するようにしてもよい。これにより、デジタルカメラ100に対するユーザの操作手順を減らすことができると共に、電源スイッチに割り当てる部品を削減できる。
【0027】
図3は、デジタルカメラ100を斜め後方から見下ろした斜視図である。同図は、図1または図2に示した状態のデジタルカメラ100を、背面側から見た様子を示す。図1および図2と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0028】
合わせ目111は、筐体110の上面から背面にも連続する。筐体110の背面において、合わせ目111に対して左側には液晶表示部170が配される。液晶表示部170は、筐体110の背面に固定され、デジタルカメラ100の動作について各種の設定する場合にメニュー等を表示する。
【0029】
また、液晶表示部は170に、例えば、「レンチキュラーシート」と呼ばれるシートを重ねてもよい。このシートにより、液晶表示部170に表示させる画像は、閲覧者の右眼には右目用画像として、左眼には左目用画像として視認させることができる。このとき、閲覧者が視認する左目用画像と右目用画像とが同時に(または少ない時間間隔で)撮像された画像であり、かつ、左目用画像と右目用画像とが所定の視差を有する画像である場合には、上述の表示により、液晶表示部170に表示させた画像を立体的に視認させることができる。本実施形態では、このように表示させた画像を立体視画像と称する。
【0030】
また、被写体画像を表示するファインダとしても機能する。更に、手動または自動で設定された撮影条件、撮影画像の再生画像、記録媒体の残量、電池の残量等も表示する。更に、液晶表示部170の表面に重畳させて接触操作可能なパネル(例えば感圧パネル)を備えて、操作部の一部とする場合もある。
【0031】
筐体110の背面においては、合わせ目111の右側がグリップ部130をなす。グリップ部130の背面には、更に複数の押しボタン124と十字キー126とが配される。また、グリップ部130の側面には、ストラップホール134が配される。
【0032】
このような配置により、指掛け部132を指掛かりとしてデジタルカメラ100を把持した手の親指で、背面の押しボタン124および十字キー126を操作できる。また、ストラップホール134に結合したストラップに手首を通した状態で、指掛け部132を含むグリップ部130を保持できる。
【0033】
よって、図2に示したように前玉152、フラッシュ162および補助光源164を露出させた状態であれば、レリーズボタン122等を操作して画像を撮影できる。また、図1に示したように前玉152等が前面カバー140により覆われた状態でも、押しボタン124および十字キー126等を操作して、液晶表示部170に画像を表示させることができる。
【0034】
なお、デジタルカメラ100は、図示したものの他に、ダイヤル、レバー等の他の操作部材、パイロットランプ、警告ブザー、スピーカ等の他の表示部材、マイクロフォンのような他の入力部材を、筐体110およびグリップ部130の表面に配する場合がある。また、デジタルカメラ100には、USB、HDMI等のコネクタ、電力供給端子等を設ける場合もある。更に、デジタルカメラ100には、記録媒体を挿抜するソケットと、それを封止するハッチとが設けられる場合もある。
【0035】
図4は、デジタルカメラ100を斜め前方から見下ろした斜視図である。同図は、図2に示した状態から、更に、図中に矢印Bで示すように、グリップ部130が左側に引き出された状態を示す。図1から図3までと共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0036】
図示のように、グリップ部130は、筐体110に対して側方に引き出すことができる。即ち、グリップ部130は、その内部に配されたガイドレール131により筐体110の前面に係合する。これにより、グリップ部130は、筐体110の幅方向の一方(図中左側)に、筐体110に対して移動できる。
【0037】
グリップ部130が引き出された場合、グリップ部130は、依然として筐体110の側端部と、前面、上面、背面および下面の一部とを覆う。しかしながら、グリップ部130が引き出された分だけ、筐体110の前面側隠れ面113および上面側隠れ面116等が露出する。
【0038】
これにより、筐体110の前面に配されたもうひとつの前玉154が、外部に向かって露出する。即ち、前玉154は、筐体110の中心に対して図中左側に寄せて配されて、第2の光学系の一部をなす。図1から図3までに示したように、グリップ部130が収納状態にある場合、前玉154はグリップ部130の前面に覆われる。しかしながら、前玉154が寄せて配置されるデジタルカメラ100の左側と同じ左側にグリップ部130が引き出されて伸展状態になった場合、前玉154は外部に向かって露出する。
【0039】
また、引き出されたグリップ部130において、指掛け部132は、前玉154よりも更に左側に位置する。よって、指掛け部132を把持することにより、前玉154を遮ることなく、デジタルカメラ100を保持できる。
【0040】
ここで、レリーズボタン122および押しボタン124は、グリップ部130の上面に配されている。よって、レリーズボタン122および押しボタン124は、引き出されて移動したグリップ部130と共に筐体110に対して図中左方に移動する。従って、グリップ部130が引き出された場合も、レリーズボタン122および押しボタン124と指掛け部132との相対位置は変わらない。
【0041】
これにより、グリップ部130を引き出して伸展状態にした場合も、グリップ部130を収納している場合と同様に、指掛け部132を指掛かりとしてデジタルカメラ100を把持しつつ、同じ手の人指し指によりレリーズボタン122および押しボタン124を容易に操作できる。よって、ユーザは、レリーズボタン122を全押しすることにより、画像取得開始をデジタルカメラ100に意図したタイミングで指示できる。
【0042】
更に、グリップ部130の前面には、一部に切欠き136が形成される。これにより、グリップ部130を引き出して伸展状態にした場合は、切欠き136が形成されていない部分に比較すると、引き出し方向についてより左側に前玉154が現れる。
【0043】
上記のような作用に鑑みて、筐体110から引き出されたグリップ部130の位置は、グリップ部130が引き出された後に現れる前玉154の配置が筐体110の中央に対して寄せられたと同じ方向成分を含むことが好ましい。しかしながら、グリップ部130を引き出し終わるまでの移動経路は、どのような成分を含んでいても差し支えない。即ち、図示のように、引き出されるグリップ部130は直線的に移動してもよい。また、グリップ部130の移動は、伸展状態に至る過程で回転、揺動等の成分を含んでもよい。
【0044】
なお、筐体110の前面において、グリップ部130が収納状態にある場合に切欠き136が位置していた領域には、切欠き136の形状と相補的な形状の段差115が配される。段差115に包囲された領域は、前面側隠れ面113から隆起して筐体110の前面と連続した面をなす。これにより、グリップ部130が収納状態になった場合、グリップ部130および筐体110は滑らかに連続した面をなす。
【0045】
また、上面側隠れ面116には、グリップ部130の内面から離間した逃げ117が配される。逃げ117は、グリップ部130の下で筐体110の左側端部まで延在する。これにより、グリップ部130の上面に配されたレリーズボタン122および押しボタン124の内部構造物が、グリップ部130の内側で筐体110と干渉することなく、グリップ部130を引き出すことができる。
【0046】
また更に、グリップ部130を引き出した状態においても、切欠き136を除く全周において、グリップ部130および筐体110が重なっている。よって、グリップ部130および筐体110の結合部の長さを十分にとって、当該結合部の剛性を高くすることができる。
【0047】
図5は、デジタルカメラ100の内部構造を示す模式図である。同図は、図4に示した状態のデジタルカメラ100において、筐体110の内部に配された部材の状態を、デジタルカメラ100の前面側から見た様子を示す。図1から図4までと共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0048】
デジタルカメラ100の筐体110は、電池112、主基板114、一対の光学系151、153、フラッシュ162および補助光源164を内蔵する。一対の光学系151、153は、筐体110の両側端に沿って配される。これにより、光学系151、153の各々の前玉152、154は、筐体110の右上および左上の隅部に、筐体110の中心線Cに対して対称に配される。
【0049】
光学系151、153は、それぞれの前玉152、154から入射した被写体光束を撮像素子(例えば2つのCMOSセンサ)上に結像させて、被写体像を電気信号に変換し、デジタル化処理された上で記録できる。
【0050】
グリップ部130の上面に配されたレリーズボタン122は、一対の光学系151、153の少なくとも一方を介した画像の取得開始のタイミングを指示できる。このとき、不図示の制御部は、少なくとも一方の撮像素子からの電気信号に対応するデジタル化処理後の撮影画像データを記録媒体に記録させる。また、レリーズボタン122は、一回の操作で一対の光学系151、153の両方に同じタイミングで画像の取得開始を指示できる。このとき、不図示の制御部は、それぞれの撮像素子からの電気信号に対応するデジタル化処理後の一対の2つの撮影画像データを関連付けて記録媒体に記録させる。
【0051】
このような操作により一対の光学系151、153で取得された一対の画像データは、例えば、相互に所定の視差を有する右目用画像および左目用画像となる。よって、これら一対の画像を組み合わせることにより立体視画像を表示できる。具体的には、不図示の制御部は、記録媒体に記録された所定の視差を有する左目用画像と右目用画像とを合成し立体視画像を生成し、この合成後の立体視画像を液晶表示部170に表示するよう制御する。また、不図示の制御部は、この立体視画像を記録媒体に記録させてもよい。なお、例えば、この立体視画像は、不図示の制御部により右目用画像の列成分と左目用画像の列成分とが交互に配置されるように合成された画像である。
【0052】
なお、一方の前玉154がグリップ部130により覆われている場合、光学系153の前玉154には被写体光束が入射しない。よって、光学系153を介して被写体像を撮像することができない。そこで、グリップ部130が収納状態にあって前玉154を覆っている場合は、レリーズボタン122の半押および全押による操作の反映を、一方の光学系153に対して無効にしてもよい。
【0053】
一対の光学系151、153の間には、フラッシュ162および補助光源164が配される。また、光学系151、153の間であって、フラッシュ162および補助光源164の下方には、電池112が収容される。更に、電池112、フラッシュ162および補助光源164の後方には、主基板114が紙面に平行に配される。このようなレイアウトにより、前玉152、154の間隔を筐体110の幅に対して広くすることができる。
【0054】
ここで、フラッシュ162および補助光源164は、一対の前玉152、154の中央に配される。また、図中に符号Dで示すように、一対の光学系151、153は、筐体110の中心線Cに対して対称に配される。このようなレイアウトにより、フラッシュ162および補助光源164は、光学系151、153の双方に対して、対称な条件で閃光および補助光を作用させることができる。
【0055】
収納状態のグリップ部130に覆われる前玉154は、図中に矢印Vで示すように、筐体110の中心線Cに対して図中左側に寄せて配置される。よって、前玉154を含む光学系153の位置も、図中に矢印Vで示すように、中心線Cに対して図中左側に位置する。なお、上記の光学系153の位置は、正面図における光学系153の幾何学的中心であってもよいし、実機における光学系153の重心の位置であってもよい。
【0056】
上記のような光学系153の位置に対して、伸展されたグリップ部130の伸展状態の位置も、図中の矢印Bで示すように、その収納状態の位置に対して図中左側になる。このように、グリップ部130の収納状態に対する伸展状態の方向に、筐体110の中心線Cに対する光学系153の方向の成分を含ませることにより、伸展状態のグリップ部130を光学系153よりも外縁側に位置させて、指掛け部132を把持しやすくできる。
【0057】
なお、グリップ部130の収納状態と伸展状態との位置関係は、中心線Cに対する光学系153の位置関係と同じ成分を含んでいればよいのであって、両者は同一に限られるわけではない。即ち、光学系153が中心線Cの左方に位置している場合に、収納状態と伸展状態との位置関係は、左方への水平成分を含んでいれば、更に、筐体110に対して下方、上方、前方または後方に延びる成分を含んでもよい。
【0058】
また、光学系151、153は、筐体110の内部に隠れていて、外部に現れる前玉152、154とは異なる形状を有する。しかしながら、光学系151、153は、前玉152、154と不可分な構造なので、前玉152、154の配置と光学系151、153の配置とは同じ傾向を有する。よって、指掛け部132の移動方向に、光学系151、153の配置方向の成分を含ませることにより、伸展状態において前玉154への指掛かりを生じることなく指掛け部132を保持しやすくできる。
【0059】
更に、上記の例では、グリップ部130が筐体110の表面に沿って側方に移動した。しかしながら、グリップ部130の、収納状態から伸展状態への移動、および、伸展状態から収納状態への移動は、直線的な並進には限られない。即ち、グリップ部130の移動経路は屈曲していてもよい。また、グリップ部130の移動は回転運動等を含んでいてもよい。
【0060】
例えば、一対の光学系151、153を備えるデジタルカメラ100の一例として、立体視画像を撮像する立体撮像装置がある。立体撮像装置では、一対の前玉152、154の間には、人が視差を感じることできる程度の間隔をおくことが求められる。一方、携帯機器としてのデジタルカメラ100は、筐体110を小型化することが求められる。このため、前玉152、154は、筐体110の周縁部近傍に配することを余儀なくされる。
【0061】
その結果、前玉152、154を筐体110の周縁部近傍に配した場合、筐体110を側方から把持する手の指が前玉152、154に掛かりやすくなる。しかしながら、デジタルカメラ100では、筐体110の周縁部に配された一方の前玉154よりも、指掛け部132を含むグリップ部130を更に側方に引き出すことができる。
【0062】
このように、デジタルカメラ100は、収納状態と比較した場合に、筐体110の外側まで延出するグリップ部130を備える。延出して延伸状態に位置するグリップ部130は、前玉154を含む光学系153を遮ることなく、指を掛けて把持できる指掛け部132を有する。これにより、筐体110の周縁部に配置された前玉154に指を掛けることなく、デジタルカメラ100を確実に保持できる。
【0063】
図6は、デジタルカメラ100を斜め後方から見下ろした斜視図である。同図は、図4に示した状態のデジタルカメラ100を、背面側から見下ろした様子を示す。他の図と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0064】
図示の状態では、グリップ部130は、筐体110に対して図中で右側に引き出されている。また、グリップ部130の表面に配されたレリーズボタン122、押しボタン124、十字キー126等の操作部も、グリップ部130と共に右側に移動している。
【0065】
これにより、レリーズボタン122、押しボタン124、十字キー126等の位置と、デジタルカメラ100の側端部との位置関係は変わらない。よって、グリップ部130を引き出した状態でも、図3に示した状態のデジタルカメラ100と同様の操作性が維持される。
【0066】
更に、グリップ部130が引き出された状態では、デジタルカメラ100の背面においても、筐体110の背面側隠れ面119が露出する。背面側隠れ面119には、複数の隠れ面ボタン128が配される。
【0067】
隠れ面ボタン128には、グリップ部130が引き出されて前玉154が露出した場合に限って使用される変更操作機能を割り当ててもよい。即ち、例えば、上述の所定の視差を大小を調整するための補正や、上述の右目用画像の列成分と左目用画像の列成分とを交互に配置する際の列数の補正等のように、立体視画像における独特のパラメータを変更する操作を隠れ面ボタン128割り当ててもよい。
【0068】
なお、上述の補正は、隠れ面ボタン128の操作に応じて不図示の制御部により実行され、補正後の立体視画像は不図示の制御部により液晶表示部170に表示、または、記録媒体に記録させる。また、立体画像撮像に関連付けて、立体画像を再生する場合のパラメータを変更する操作を隠れ面ボタン128割り当ててもよい。これにより、一方の光学系153がグリップ部130により覆われている場合に、覆われた光学系153に作用する操作をすることが未然に防止される。
【0069】
更に、隠れ面ボタン128を操作するには、グリップ部130を伸展状態にする操作が伴う。よって、保存したファイルの削除、記録媒体の初期化等、誤操作の及ぼす影響が大きな操作を隠れ面ボタン128割り当ててもよい。
【0070】
デジタルカメラ100は、グリップ部130および前面カバー140を閉じた収納状態とすることにより、前玉152、154並びにフラッシュ162および補助光源164を覆い隠すことができる。よって、携帯する場合に、前玉152、154並びにフラッシュ162および補助光源164に塵芥等が付着することを防止できる。
【0071】
また、デジタルカメラ100は、立体視画像を撮影し得る一対の光学系151、153を備えながら、グリップ部130が収納状態の場合は、平面画像の撮像装置に近い外形寸法を有する。更に、筐体110の中心に対して、前玉152が一方の側部に、指掛け部132が他方の側部に寄った配置を有する。よって、前玉152へ入射する被写体光束を指等で遮ることなく、デジタルカメラ100を確実に保持して撮影ができる。
【0072】
また更に、デジタルカメラ100は、グリップ部130を引き出して伸展状態にした場合に、指掛け部132が筐体110の外側まで伸展する。これにより、前玉154に入射する被写体光束を遮ることなくグリップ部130を把持して、デジタルカメラ100を確実に保持できる。
【0073】
また更に、レリーズボタン122および押しボタン124をグリップ部130に配置した場合、レリーズボタン122および押しボタン124は、グリップ部130と共に筐体110に対して移動する。よって、グリップ部130の位置にかかわらず、グリップ部130を把持する手の人指し指によりレリーズボタン122および押しボタン124を操作できる。
【0074】
また、上記のようなグリップ部130を備えるので、立体視画像を撮影する一対の光学系151、153を、筐体110の幅いっぱいに離間して配置できる。よって、視差による立体感を感じ取りやすい立体視画像を撮影できる。
【0075】
更に、グリップ部130の前面に切欠き136を設けることにより、グリップ部130を伸展状態に移動させた場合に、筐体110の周縁部いっぱいに配された光学系153の前玉154を露出させることができる。また、伸展状態であっても、筐体110およびグリップ部130の重なりを多く残すことができるので、筐体110およびグリップ部130の結合部の剛性を高くできる。
【0076】
また更に、グリップ部130が収納状態にある場合にグリップ部130により覆われる光学系153に結果が反映される操作を隠れ面ボタン128に割り当てることにより、用いることができない状態にある光学系153を対象とした隠れ面ボタン128の操作を禁止できる。また、グリップ部130が伸展状態になって光学系153を用いることができる状態になると、操作結果が光学系153に反映される隠れ面ボタン128も操作できる状態になる。このように、デジタルカメラ100では、操作の対象になる部材と、操作の結果が反映される部材とが揃って現れあるいは隠されるので、誤操作を未然に防止できる。
【0077】
なお、上記の例では、グリップ部130に切欠き136を設けることにより、グリップ部130を伸展状態にした場合も、グリップ部130と筐体110との重なりが広く残るようにした。しかしながら、グリップ部130および筐体110を係合させるガイドレール131の構造を工夫することにより、切欠き136を省いて、グリップ部130の形状を簡潔にすることもできる。
【0078】
また、上記の例では、光学系151、153の各々が撮像素子を備えるように説明したが、一対の光学系151、153が単一の撮像素子を共用してもよい。この場合、一対の光学系151、153の結像した被写体像を、僅かな時間差をおいて個別に電気信号に変換して記録することにより、それぞれの光学系151、153に対応した画像を記録できる。
【0079】
更に、上記の例では、単一の光学系を使用する場合に、前面カバー140を開いて、前玉152を含む光学系151を使用することを説明した。しかしながら、前面カバー140を閉じたままグリップ部130を側方にスライドさせて伸展状態として前玉154を露出させ、光学系153を用いて画像を記録してもよい。この場合、フラッシュ162は前面カバー140に覆われた状態なので、光学系153を単独で用いた場合は自動的に発光禁止モードとなる。
【0080】
また更に、グリップ部130および前面カバー140に、電源スイッチの機能を割り当ててもよい。即ち、グリップ部130および前面カバー140が共に閉じた場合は、デジタルカメラ100の電源を遮断する機能を設けてもよい。また、グリップ部130および前面カバー140のいずれかが開かれた場合は、開かれた側の光学系151、153を用いた撮像ができるように電源を投入する機能を設定してもよい。更に、グリップ部130および前面カバー140が両方開かれた場合に、デジタルカメラ100の動作を立体画像撮像モードに切り替える機能を設けてもよい。
【0081】
また更に、一対の光学系151、153の仕様は互いに異なっていてもよい。例えば、光学系151、153に含まれる撮像素子の特性を異なるものとすることにより、撮像条件に応じて使用する光学系を選択できるようにしてもよい。また、単独で使用することが多いと考えられる一方の光学系をより高性能なものとし、他方の光学系を簡素なものにすることにより、デジタルカメラ100全体の性能を底上げすると共に、製品コストを抑制できる。
【0082】
以上、デジタルカメラ100を例に挙げて説明したが、上記携帯機器の特徴は、小型化が求められる携帯機器において、何らかの理由により、入出力部を筐体の周縁部に配置しなければならない事情がある場合に広く適用できる。また、撮像装置と映写機、望遠鏡と測距装置等の複合携帯機器にも適用できる。
【0083】
本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0084】
100 デジタルカメラ、110 筐体、111 合わせ目、112 電池、113 前面側隠れ面、114 主基板、115 段差、116 上面側隠れ面、117 逃げ、119 背面側隠れ面、122 レリーズボタン、124 押しボタン、126 十字キー、128 隠れ面ボタン、130 グリップ部、131、142 ガイドレール、132 指掛け部、134 ストラップホール、136 切欠き、140 前面カバー、151、153 光学系、152、154 前玉、162 フラッシュ、164 補助光源、170 液晶表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の中心に対して周縁方向に寄せられて配置された第1光学系と、
前記筐体に対して収納状態と伸展状態をとるグリップ部と
を備え、
前記グリップ部の前記収納状態に対する前記伸展状態の方向は、前記筐体の前記中心に対する前記第1光学系の方向の成分を含む携帯機器。
【請求項2】
前記グリップ部は、前記収納状態において前記第1光学系に入射する光束を遮蔽し、前記伸展状態において前記第1光学系に入射する光束を遮蔽しない請求項1に記載の携帯機器。
【請求項3】
前記筐体の中心に対して、前記第1光学系とは反対の周縁方向に寄せられて配置された第2光学系を備える請求項1または2に記載の携帯機器。
【請求項4】
前記第2光学系に入射する光束を遮蔽する遮蔽状態と、遮蔽しない退避状態をとるカバー部材を備え、
前記カバー部材は、前記遮蔽状態および前記退避状態において、前記筐体の周縁部から延出しない請求項3に記載の携帯機器。
【請求項5】
前記第1光学系に入射する光束から取得される第1撮影画像、および、前記第2光学系に入射する光束から取得される第2撮影画像の少なくとも一方の画像取得開始を指示する操作部材を備え、
前記操作部材は、前記グリップ部に配置される請求項3または4に記載の携帯機器。
【請求項6】
3次元画像の生成に関するパラメータを変更する変更操作部材を備え、
前記変更操作部材は、前記グリップ部が前記収納状態のときは前記グリップ部に覆われ、前記グリップ部が前記伸展状態のときは外部に露出される請求項3から5のいずれか1項に記載の携帯機器。
【請求項7】
前記第1光学系と前記第2光学系の間に配置される被写体照明用の照明部を備える請求項3から6のいずれか1項に記載の携帯機器。
【請求項8】
筐体の中心に対して左右にそれぞれ寄せられて配置された第1光学系および第2光学系と、
前記第1光学系に入射する光束から取得される第1撮影画像、および、前記第2光学系に入射する光束から取得される第2撮影画像を処理する画像処理部と、
前記筐体に対して収納状態と伸展状態をとるグリップ部と
を備え、
前記グリップ部の前記収納状態に対する前記伸展状態の方向は、前記筐体の前記中心に対する前記第1光学系の方向の成分を含む撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−32651(P2012−32651A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172935(P2010−172935)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】