説明

携帯機

【課題】電子キーシステムに用いられる携帯機において、回路素子の改造防止をより容易に行うことを可能にする。
【解決手段】保護カバー60は、板状の平面部61と当該平面部61の外縁付近に設けられた複数の係合用突起部62とを備えて構成される。係合用突起部62は、頂部が爪形状をしている係合爪62aと、その係合爪62aの基部から頂部までの外側面を覆うように、その係合爪62aから離隔してその係合爪62aよりも平面部61の外縁側に配置される保護板62bとからなり、係合爪62a及び保護板62bが、平面部61のうち回路基板70に対向する面から回路基板70側に突出するように設けられている。そして、バッテリホルダ80は、保護カバー60の係合爪62aに対向する場所に、係合爪62aの頂部が平面部61の外縁側から係合する溝部85aを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子キーシステムに用いられる携帯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機械的な鍵を使用せずに車両のドアの施錠・開錠、エンジンやハイブリッドシステムの始動等を行う電子キーシステムに用いられる携帯機が知られている。このような携帯機では、特許文献1に開示されているように、アンテナ素子を備えた回路基板が上部カバーと下部カバーとにより構成されるケース体の内部に配置されるようになっている。
【0003】
また、このような携帯機において、ユーザが回路素子に触れることで不用意に回路素子が破壊される場合や、ユーザによって故意に回路が改造されることを防止する構成が必要となる。これに対して、特許文献1には、樹脂製の内部カバーと電池ホルダーとの間に回路基板を挟んだ状態で内部カバーと電池ホルダーとを熱かしめにより一体化して容易に開けることができないようにすることで、上記要件を満たすようにすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−215739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の携帯機のように、回路基板の上部の部材と下部の部材とを熱かしめによって一体化することで、回路素子を保護する構造体を形成する場合には、携帯機の組み立て時の加工工数が増えて、手間が増加するという問題点があった。詳しくは、回路基板の上部の部材と下部の部材とを嵌めこみによって一体化する場合に比べ、嵌めこみの後に熱かしめを行う分だけ加工工数が増えるため、手間が増加する。
【0006】
また、特殊ネジを用いて回路基板の上部の部材と下部の部材とを一体化することも考えられるが、この場合にも特殊ネジを締める分だけ加工工数が増えるため、手間が増加する。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、電子キーシステムに用いられる携帯機において、回路素子の改造防止をより容易に行うことを可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の携帯機においては、第1板状部材は、板状の平面部と当該平面部の外縁付近に設けられた複数の係合用突起部とを備えて構成され、係合用突起部は、頂部が爪形状をしている爪形状突起部と、その爪形状突起部の基部から頂部までの外側面を覆うように、その爪形状突起部から離隔してその爪形状突起部よりも前記平面部の外縁側に配置される壁状突起部とからなり、爪形状突起部及び壁状突起部が、平面部において回路基板に対向する側の面から回路基板側に突出するように設けられている。また、第2板状部材は、第1板状部材とともに回路基板に重ねられた際に第1板状部材の爪形状突起部に対向する場所に、爪形状突起部の頂部が平面部の外縁側から係合する係合受け部を有している。そして、第1板状部材の爪形状突起部が第2板状部材の係合受け部に係合され、回路基板が第1板状部材と第2板状部材とに挟み込まれた状態とされている。
【0009】
これによれば、爪形状突起部の基部から頂部までを近接する平面部の外縁の外形に沿って覆うように、その爪形状突起部よりも当該外縁側に空間をもって壁状突起部が配置されるので、第1板状部材の爪形状突起部が第2板状部材の係合受け部に平面部の外縁側から係合された状態では、当該外縁側において爪形状突起部の基部から頂部までが壁状突起部に覆い隠されることになる。平面部の外縁側において爪形状突起部の基部から頂部までが壁状突起部に覆い隠されると、工具等によって爪形状突起部の頂部に力を加えることが困難になる。よって、工具等によって爪形状突起部の頂部を平面部の外縁側に反らせて、第1板状部材と第2板状部材との係合状態を解くことが困難になる。従って、第1板状部材と第2板状部材とに挟み込まれた回路基板の回路素子の改造防止が可能となる。
【0010】
また、請求項1の構成によれば、第1板状部材の爪形状突起部と第2板状部材の係合受け部とを係合させるだけで、上述したように回路素子の改造防止が可能になるので、熱かしめや特殊ネジによる固定などによって回路素子の改造防止を行う必要がない。よって、熱かしめや特殊ネジによる固定などの分の加工工数を抑えることができ、手間を減らすことができる。その結果、電子キーシステムに用いられる携帯機において、回路素子の改造防止をより容易に行うことが可能になる。
【0011】
請求項2の構成においては、第2板状部材は、係合受け部を有しているとともに、爪形状突起部が係合受け部に係合する場合に当該爪形状突起部の爪形状をしている頂部が少なくとも納まる穴部を有することになる。これによれば、外縁側において爪形状突起部の頂部までが壁状突起部に覆い隠される上に、爪形状突起部の頂部が穴部に埋まるので、工具等によって爪形状突起部の頂部に力を加えることが非常に困難になる。よって、工具等によって爪形状突起部の頂部を平面部の外縁側に反らせて、第1板状部材と第2板状部材との係合状態を解くことがさらに困難になる。従って、回路素子の改造をさらに困難にすることができる。
【0012】
請求項2のようにする場合には、請求項3のように、壁状突起部を、回路基板が第1板状部材と第2板状部材とに挟み込まれた状態となったときに、当該壁状突起部の内側に位置する爪形状突起部の両側面が、回路基板及び第2板状部材の少なくともいずれかにより覆われるように設ける態様とすることが好ましい。これによれば、第1板状部材と第2板状部材とが係合状態にある場合には、爪形状突起部が壁状突起部によって外縁側において覆われたり、穴部によって下部において覆われたりするだけでなく、回路基板や第2板状部材によって両側面においても覆われることになる。従って、請求項3の構成によれば、爪形状突起部を外部から目視しにくくなるので、外部からはどのような構造によって第1板状部材と第2板状部材とが係合しているのかを知ることが困難になる。また、どのような構造によって第1板状部材と第2板状部材とが係合しているのかを知ることが困難になることによって、第1板状部材と第2板状部材との係合状態を解くことがさらに困難になる。その結果、回路素子の改造を非常に困難にすることができる。
【0013】
請求項4の携帯機においては、第1板状部材は、板状の平面部と当該平面部の外縁付近に設けられた複数の爪形状突起部とを備えて構成され、爪形状突起部は、頂部が爪形状をしているとともに平面部において回路基板に対向する側の面から回路基板側に突出するように設けられている。また、第2板状部材は、第1板状部材とともに回路基板に重ねられた際に第1板状部材の爪形状突起部に対向する場所に、爪形状突起部の頂部が平面部の外縁側から係合する係合受け部を有しているとともに、当該爪形状突起部が係合受け部に係合する場合に当該爪形状突起部の爪形状をしている頂部が少なくとも納まる穴部を有している。そして、第1板状部材の爪形状の突起部が第2板状部材の係合受け部に係合され、回路基板が第1板状部材と第2板状部材とに挟み込まれた状態とされている
これによれば、爪形状突起部が係合受け部に係合する場合に当該爪形状突起部の爪形状をしている頂部が少なくとも納まる穴部を第2板状部材が有しているので、第1板状部材の爪形状突起部が第2板状部材の係合受け部に平面部の外縁側から係合された状態では、爪形状突起部の頂部が穴部に埋まることになる。爪形状突起部の頂部が穴部に埋まると、工具等によって爪形状突起部の頂部に力を加えることが困難になる。よって、工具等によって爪形状突起部の頂部を平面部の外縁側に反らせて、第1板状部材と第2板状部材との係合状態を解くことが困難になる。従って、第1板状部材と第2板状部材とに挟み込まれた回路基板の回路素子の改造防止が可能となる。
【0014】
また、請求項4の構成によれば、第1板状部材の爪形状突起部と第2板状部材の係合受け部とを係合させるだけで、上述したように回路素子の改造防止が可能になるので、熱かしめや特殊ネジによる固定などによって回路素子の改造防止を行う必要がない。よって、熱かしめや特殊ネジによる固定などの分の加工工数を抑えることができ、手間を減らすことができる。その結果、電子キーシステムに用いられる携帯機において、回路素子の改造防止をより容易に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】スマートキー1の分解斜視図の一例である。
【図2】係合用突起部62を説明するための外観斜視図である。
【図3】(a)〜(c)は、保護カバー60、回路基板70、バッテリホルダ80の組み付けの様子を示した斜視図である。
【図4】(a)〜(c)は、係合用突起部62の係合爪62aとスナップフィット爪部85の溝部85aとの係合を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。本実施形態では、電子キーシステムとしてスマートキーシステム(登録商標)を例に挙げ、スマートキーシステムの携帯機として使用されるスマートキーに本発明を適用した場合について説明する。
【0017】
なお、スマートキーシステムとは、例えば、車両に搭載され、ユーザがスマートキーを
所持していれば、メカニカルキーを使用することなく、ドアのロック・アンロック、エン
ジンやハイブリッドシステムのスタート等の操作ができるシステムである。
【0018】
図1は、本実施形態のスマートキー1の分解斜視図の一例である。スマートキー1は、携帯機本体と、この携帯機本体の内部に収容されたエマージェンシーキー3とを備えた構成になっている。携帯機本体は、電子キーとして機能するものであり、上側ケース10、下側ケース20、リリースフック30等により構成されている。この携帯機本体の外形は上側ケース10、下側ケース20、リリースフック30にて構成され、この携帯機本体にエマージェンシーキー3を挿し込むことにより、スマートキー1が構成される。
【0019】
上側ケース10及び下側ケース20は、薄型の長方体を2つに分割したような形状であって、それぞれが容器になっており、容器の各角部が丸められた形状とされている。そして、長方体の長辺に対応する一側面にリリースフック30が配置され、当該一側面に沿って各ケース10、20の内部にエマージェンシーキー3が配置されることで、長方体のスマートキー1が構成されている。なお、上側ケース10及び下側ケース20が請求項の携帯機本体の外形を構成するケースに相当する。
【0020】
具体的には、図1に示されるように、携帯機本体の外形を構成する上側ケース10と下側ケースとにより形成される内部空間内に、上側ケース10から下側ケース20側に、ノブ部材40、防水カバー50、保護カバー60、回路基板70、バッテリホルダ80、クッションシート90、電池95の順に配置されている。なお、図1中、回路基板70に形成されている回路素子は省略している。
【0021】
ノブ部材40は、車両におけるドアのロック・アンロックを行うための押しボタン式のノブ41を有している。各ノブ41は、上側ケース10に設けられた開口部11からそれぞれ上側ケース10の表面に露出し、ユーザに操作されるようになっている。
【0022】
防水カバー50は、上側ケース10とともにノブ部材40を挟み込んで上側ケース10と一体化されることで、上側ケース10の開口部11から入り込む水や異物を下側ケース20側に進入させない機能を有する。このような防水カバー50として、吸湿しにくく弾力性を有するゴム等の素材が採用される。従って、防水カバー50はノブ41が押されると共に弾性変形し、ユーザがノブ41から指を離すと元の形状に戻るようになっている。
【0023】
保護カバー60は、回路基板70の一面側、すなわち上部面を覆い隠す板状のものである。このような保護カバー60として、例えばポリカーボネート等の樹脂が採用される。なお、保護カバー60が請求項の第1板状部材に相当する。
【0024】
回路基板70は、外部と無線通信を行う通信回路を備えており、この回路基板70の上部面にプッシュ式のスイッチ71、回路基板70の他面側、すなわち下部面にアンテナ素子72を備えている。各スイッチ71は、回路基板70の上部面のうち、防水カバー50を介してノブ部材40の各ノブ41に対向した場所に配置されている。そして、各スイッチ71は、各ノブ41が操作されて防水カバー50が弾性変形するにともなって押されるようになっている。また、アンテナ素子72は外部に電波を送信するものである。なお、アンテナ素子72等の回路素子が請求項の素子に相当する。
【0025】
通信回路は、ユーザがスマートキー1を所持した状態で車両に近づき、スマートキーシステムのセンシングエリアに入ると、車両側からのID要求信号を受信し、それに対応して自動的にIDコード信号を出力する。これにより、車両側でID認証が行われ、それが一致するとドアのロック・アンロック信号待ち状態に移行し、その状態にてロック・アンロック信号を得ることにより、ロック・アンロックを実行する。
【0026】
バッテリホルダ80は、板状をなしており、回路基板70の下部面を覆い隠すととともに、電池95を保持するものである。このようなバッテリホルダ80として、例えばポリカーボネート等の樹脂が採用される。本実施形態では、バッテリホルダ80は回路基板70とほぼ同じ平面サイズになっている。なお、バッテリホルダ80が請求項の第2板状部材に相当する。
【0027】
クッションシート90は、回路基板70の下部面に実装されたアンテナ素子72と下側ケース20との間に配置され、比較的重量の大きなアンテナ素子72への衝撃を緩和するものである。
【0028】
下側ケース20には、バッテリホルダ80の支持および位置決めの機能を有する突起部21が設けられている。また、下側ケース20および上側ケース10には、エマージェンシーキー3の格納スペースや、リリースフック30が配置されるスペース等が設けられている。なお、突起部21は上側ケース10にも設けられていてもよい。また、下側ケース20にはオーナメント100が取り付けられる。
【0029】
リリースフック30は、携帯機本体側に押されることでエマージェンシーキー3が携帯機本体から取り出されるようにするための機械式のボタンである。また、エマージェンシーキー3は、ヘッド部3aおよびキー部3bを有した構成となっている。ヘッド部3aは、携帯機本体から露出する部分であり、このヘッド部3aをユーザが摘むことでエマージェンシーキー3の携帯機本体からの取り外しが行われる。そして、キー部3bは、上側ケース10および下側ケース20が組み付けられることで構成された収納スペースに収納される。以上が、本実施形態に係るスマートキー1の全体構成である。
【0030】
次に、保護カバー60、回路基板70、バッテリホルダ80の組み付け構造について説明する。まず、これら保護カバー60、回路基板70、バッテリホルダ80の各構造について説明する。
【0031】
図1に示されるように、保護カバー60は板状の平面部61と係合用突起部62とスナップフィット爪部63によって構成されている。平面部61には各スイッチ71に対向する場所に窓部64がそれぞれ設けられている。したがって、保護カバー60の平面部61が回路基板70の上部面に重ね合わされると、各スイッチ71が各窓部64に挿入され、各スイッチ71が保護カバー60から突出した状態となる。すなわち、平面部61は、スイッチ71の高さの値よりも小さい厚さになっている。
【0032】
また、係合用突起部62は平面部61の外縁付近に複数設けられている。各係合用突起部62は保護カバー60とバッテリホルダ80とを一体化するに際し用いられる部位である。さらに、各係合用突起部62は、平面部61のうち回路基板70に対向する面の反対側の面よりも回路基板70側に突出するように平面部61の側面に設けられている。
【0033】
ここで、図2を用いて係合用突起部62の詳細についての説明を行う。図2は、係合用突起部62を説明するための外観斜視図である。図2に示すように係合用突起部62は、係合爪62aと保護板62bとから構成されており、回路基板70に対向する面から回路基板70側に突出するように設けられている。
【0034】
係合爪62aは、図2に示すように頂部が爪形状(フック状)をしており、この爪形状の突起は、平面部61の外縁側から内側に向けた方向に出っ張っているものとする。言い換えると、係合爪62aの軸状の本体からその軸に交差する方向に突き出す突起部が設けられている。また、係合爪62aは無負荷状態における係合爪62a本体の軸心に対して交差する方向に撓むように弾性を有しているとともに、図2に示すように係合爪62aの挿入方向の頂点から爪形状の突起の頂点にかけて傾斜が設けられているものとする。以下では係合爪62aのこの傾斜を先端の傾斜部分と呼ぶ。なお、係合爪62aが請求項の爪形状突起部に相当する。
【0035】
保護板62bは、図2に示すように係合爪62aの少なくとも基部から頂部までを、平面部61のその係合爪62aが近接する外縁の外形に沿って覆うように、その係合爪62aよりも外縁側に離隔して(空間をもって)配置される。つまり、保護板62bは、係合爪62aの高さ方向については、少なくとも基部から頂部までを覆い、係合爪62aの幅方向については、少なくとも幅方向全体を覆うように設けられている。なお、保護板62bが請求項の壁状突起部に相当する。
【0036】
例えば保護板62bとしては、平面部61の角以外の外縁部に配置される係合用突起部62においては、図2に示すような平板状のものを用いる構成とすればよい。また、平面部61の角に配置される係合用突起部62においては、その角の形状に沿って係合爪62aを「く」の字状に囲って覆う屏風状のものを用いる構成とすればよい。本実施形態では例えば4本の係合用突起部62が保護カバー60に設けられている。
【0037】
本実施形態では、保護カバー60の平面部61が矩形状の場合を例に挙げて説明を行ったが、保護カバー60の平面部61が例えば楕円状の場合のように外縁が直線でなく曲線になっている場合には、保護板62bもその曲線に沿った形状とすればよい。
【0038】
また、スナップフィット爪部63は、周知のフック式のスナップフィットに用いられるフックと同様のものである。ここで、フック式のスナップフィットとは、一方のパーツに設けられたフックを、フックが設けられた箇所やフック自体の弾性を利用して受け側の他方のパーツに引っ掛けて機械的に保持する固定方式を示している。スナップフィット爪部63は、平面部61の外縁付近に複数設けられており、係合用突起部62と同様に、平面部61のうち回路基板70に対向する面の反対側の面よりも回路基板70側に突出するように設けられている。各スナップフィット爪部63は保護カバー60とバッテリホルダ80とを一体化するに際し用いてもよいし、保護カバー60と回路基板70とを一体化するに際し用いてもよい。本実施形態では、例えば2本のスナップフィット爪部63が保護カバー60に設けられており、保護カバー60と回路基板70とを一体化するに際し用いる場合を例に挙げて説明を行う。
【0039】
なお、各係合用突起部62及び各スナップフィット爪部63は、保護カバー60の平面部61を回路基板70の上部面に重ね合わされたときに回路基板70上の回路配線等の邪魔にならないように、平面部61の外縁付近に設ける構成とすればよく、平面部61の側面に配置される構成としても構わない。
【0040】
回路基板70においては、当該回路基板70の外縁部のうち保護カバー60に備えられた係合用突起部62及びスナップフィット爪部63、並びにバッテリホルダ80に備えられたスナップフィット爪部85に対向する場所であって、回路配線等に影響しない場所に切り欠き部73がそれぞれ設けられている。これにより、保護カバー60の各係合用突起部62や各スナップフィット爪部63が各切り欠き部73に挿入されることで、保護カバー60の平面部61が回路基板70の上部面に重ね合わされるようになっているとともに、バッテリホルダ80の各スナップフィット爪部85が各切り欠き部73に挿入されることで、バッテリホルダ80の上部面が回路基板70の下部面に重ね合わされるようになっている。ここで、係合用突起部62は、保護板62bが保護板62bの厚さ方向において回路基板70の切り欠き部73から少なくとも全体がはみ出ないように設けられているものとする。
【0041】
バッテリホルダ80は板状をなしており、当該板のうち回路基板70の下部面と対向する一面側(上部面とする)に凹部81を有している。回路基板70においては、下部面に設置された回路素子や実装部品が回路基板70の表面から露出した状態になっている。このため、凹部81は、バッテリホルダ80が回路基板70と重ね合わされた際、回路基板70の下部面に設けられた回路素子等を収納するための空間を形成する部分となる。
【0042】
また、バッテリホルダ80の他面側(下部面とする)には電池95を配置する格納部82と、回路基板70のアンテナ素子72への衝撃を緩和するクッションシート90を配置させる窓部83とが設けられている。
【0043】
他にも、バッテリホルダ80の外縁部には、保護カバー60の各係合用突起部62及び各スナップフィット爪部63に対向する場所に、各係合用突起部62及び各スナップフィット爪部63を収納する複数の穴部84が設けられている(図4(a)参照)。穴部84は、貫通しておらず、凹形状をしているものとする。また、係合用突起部62に対向する穴部84から見て、バッテリホルダ80の板状の面の外縁側に対する内側方向に隣接した位置にスナップフィット爪部85が設けられているものとする(図4(a)参照)。
【0044】
スナップフィット爪部85は、保護カバー60とバッテリホルダ80とが組みつけられる場合に、保護カバー60の係合用突起部62の係合爪62aの爪形状の突起が存在する方向側に位置するように設けられている。スナップフィット爪部85は、周知のフック式のスナップフィットに用いられるフックと同様のものであって、回路基板70側に突出するように設けられている。スナップフィット爪部85はバッテリホルダ80と回路基板70とを一体化するに際し用いる。さらに、スナップフィット爪部85には、保護カバー60とバッテリホルダ80とが組みつけられる場合に保護カバー60の係合用突起部62の係合爪62aの爪形状の突起と対向する位置に、係合用の溝部85aが設けられている(図4(a)参照)。なお、この溝部85aが請求項の係合受け部に相当する。
【0045】
続いて、図3(a)〜図3(c)を用いて、保護カバー60、回路基板70、バッテリホルダ80の組み付けについて詳細な説明を行う。図3(a)〜図3(c)は、保護カバー60、回路基板70、バッテリホルダ80の組み付けの様子を示した斜視図である。
【0046】
まず、回路基板70が保護カバー60とバッテリホルダ80との間に配置される(図3(a)参照)。そして、バッテリホルダ80のスナップフィット爪部85が回路基板70の各切り欠き部73に挿入されるとともに、スナップフィット爪部85の爪が切り欠き部73に引っ掛かって、回路基板70がバッテリホルダ80に機械的に保持される(図3(b)参照)。
【0047】
この後、保護カバー60の係合用突起部62及びスナップフィット爪部63が回路基板70の各切り欠き部73に挿入される。これにより、スナップフィット爪部63の爪が切り欠き部73に引っ掛かって、回路基板70が保護カバー60に機械的に保持される。また、係合用突起部62の係合爪62aがバッテリホルダ80のスナップフィット爪部85の溝部85aに係合し、保護カバー60とバッテリホルダ80とが一体化される(図3(c)参照)。これにより、回路基板70が保護カバー60とバッテリホルダ80とに挟み込まれた状態となり、保護カバー60、回路基板70、そしてバッテリホルダ80が一体化されたパッケージが製造される。
【0048】
ここで、図4(a)〜図4(c)を用いて、係合用突起部62の係合爪62aとスナップフィット爪部85の溝部85aとの係合についての詳細な説明を行う。図4(a)〜図4(c)は、係合用突起部62の係合爪62aとスナップフィット爪部85の溝部85aとの係合を説明するための模式図である。
【0049】
係合用突起部62の係合爪62aをスナップフィット爪部85の溝部85aに係合させる場合には、まず係合爪62aの先端の傾斜部分をスナップフィット爪部85の頂部に接触するまで近づけることになる(図4(a)参照)。頂部に接触した後は、係合爪62aが弾性を有しているため、傾斜部分がスナップフィト部85の頂部をすべりながら保護板62b側に反っていく。
【0050】
その後、係合爪62aの爪形状の突起がスナップフィット爪部85の溝部85aに達したときに、係合爪62aの弾発力によって係合爪62aの爪形状の突起がこの溝部85aに係合する(図4(b)参照)。つまり、係合爪62aが溝部85aに弾発的に係合する。
【0051】
そして、さらに係合爪62aをバッテリホルダ80側に押し込んでいくと、係合爪62aがバッテリホルダ80の穴部84に収納される(図4(c)参照)。この状態において、係合爪62aは、保護板62bと穴部84とに覆われることによって、外部からは目視できないようになる。
【0052】
係合爪62aと溝部85aとの係合状態では、係合爪62aの爪形状の突起が溝部85aの係合面と係合することで保護カバー60がバッテリホルダ80から離隔する方向への移動が阻止される。また、係合爪62aの本体は、前述したような弾性を有することにより、その本体の無負荷状態における軸心に交差する方向に撓むことができるようになっている。しかしながら、係合爪62aから離隔して配置される保護板62bによって、係合爪62aを撓ませることのできる範囲は、係合爪62aが保護板62bに接触するまでの範囲に制限されているものとする。
【0053】
ここでは、バッテリホルダ80のスナップフィット爪部85に係合爪62aの係合受け部として溝部85が設けられている場合を例に挙げて説明を行ったが、必ずしもこれに限らない。例えば、スナップフィット爪部85とは別のバッテリホルダ80上の箇所に、係合爪62aの係合受け部を設ける構成としてもよい。この場合にも、バッテリホルダ80上に設けられた係合受け部に対して係合爪62aが弾発的に平面部61の外縁側から係合するものとする。
【0054】
保護カバー60、回路基板70、バッテリホルダ80の一体化後、回路基板70は保護カバー60とバッテリホルダ80とに挟まれるとともに、切り欠き部73に各係合用突起部62や各スナップフィット爪部63や各スナップフィット爪部85が挿入されることで回路基板70の動きが制限されている。また、保護カバー60の各窓部64に回路基板70の各スイッチ71が配置され、バッテリホルダ80の凹部81に回路基板70のアンテナ素子72や回路素子等が収納されている。このため、回路基板70が当該回路基板70の面方向に移動することで保護カバー60及びバッテリホルダ80から外れてしまう等の問題は起きない。
【0055】
以上説明したように、本実施形態では、係合爪62aの頂部までを近接する平面部61の外縁の外形に沿って覆うように、その係合爪62aよりも当該外縁側に空間をもって保護板62bが配置されるので、保護カバー60、回路基板70、バッテリホルダ80が一体化された状態では、当該外縁側において係合爪62aの少なくとも頂部までが保護板62bに覆い隠されることになる。平面部61の外縁側において係合爪62aの少なくとも頂部までが保護板62bに覆い隠されると、マイナスドライバー等の工具等によって係合爪62aの頂部に力を加えることが困難になる。よって、工具等によって係合爪62aの頂部を平面部61の外縁側に反らせて、弾発的に係合した係合爪62aとスナップフィット爪部85の溝部85aとの係合状態を解くことが困難になる。
【0056】
また、本実施形態では、係合爪62aの頂部がバッテリホルダ80の貫通していない穴部84に収納されて埋まるので、工具等によって係合爪62aの頂部に力を加えることが非常に困難になる。よって、この点からも、工具等によって係合爪62aの頂部を平面部61の外縁側に反らせて、弾発的に係合した係合爪62aとスナップフィット爪部85の溝部85aとの係合状態を解くことが困難になる。
【0057】
さらに、本実施形態では、保護カバー60、回路基板70、バッテリホルダ80の一体化後、係合爪62aが外部から目視できなくなるので、外部からはどのような構造によって保護カバー60、回路基板70、バッテリホルダ80の一体化が行われているのかを知ることが困難になる。これによって、係合爪62aとスナップフィット爪部85の溝部85aとの係合状態を解くことがさらに困難になる。さらに、係合爪62aが外部から目視できない状態においては、工具等によって爪形状突起部の頂部に力を加えることもできない。その結果、回路素子の改造を非常に困難にすることができる。
【0058】
また、本実施形態の構成によれば、保護カバー60の係合爪62aとバッテリホルダ80のスナップフィット爪部85の溝部85aとを係合させるだけで、上述したように回路素子の改造防止が可能になるので、熱かしめや特殊ネジによる固定などによって回路素子の改造防止を行う必要がない。よって、熱かしめや特殊ネジによる固定などの分の加工工数を抑えることができ、手間を減らすことができる。その結果、電子キーシステムに用いられる携帯機において、回路素子の改造防止をより容易に行うことが可能になる。
【0059】
他にも、熱かしめを行ったり、特殊ネジを締めたりする装置が必要とならない分だけ費用的なコストを抑えることができる。また、保護カバー60とバッテリホルダ80との係合の時間以外に熱かしめや特殊ネジを締めたりする時間がかからないので時間的なコストも抑えることができる。
【0060】
本実施形態では、保護カバー60にスナップフィット爪部63を設ける構成を示したが、必ずしもこれに限らない、例えばスナップフィット爪部63を設けない構成としてもよい。
【0061】
本実施形態では、スマートキーシステムの携帯機として使用されるスマートキーに本発明を適用した場合を例に挙げて説明を行ったが、必ずしもこれに限らない。本発明は、無線通信を用いたコード照合の結果に応じて車両の制御を行う他の電子キーシステムの携帯機に適用することも可能である。例えば、メカニカルキーを使用することなくドアのロック・アンロックを可能にするキーレスエントリーシステムの携帯機として使用されるキーレス送信機に本発明を適用する構成としてもよい。
【0062】
本実施形態では、保護カバー60側に係合用突起部62を設け、バッテリホルダ80側に係合爪62aの係合受け部と穴部84とを設ける構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、バッテリホルダ80側に係合用突起部62を設け、保護カバー60側に係合爪62aの係合受け部と穴部84とを設ける構成としてもよい。この場合には、バッテリホルダ80が請求項の第1板状部材に相当することになり、保護カバー60が請求項の第2板状部材に相当することになる。
【0063】
本実施形態では、バッテリホルダ80の穴部84として、貫通していないものを用いる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、マイナスドライバー等の工具で係合爪62aの頂部に触れることができない程度の直径や深さであれば、穴部84として貫通孔を利用してもよい。
【0064】
本実施形態では、保護板62bを設けるとともに、バッテリホルダ80の穴部84も設ける構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、どちらか一方のみを設ける構成としてもよい。
【0065】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1 スマートキー(携帯機)、10 上側ケース(携帯機本体の外形を構成するケース)、20 下側ケース(携帯機本体の外形を構成するケース)、60 保護カバー(第1板状部材)、61 平面部、62係合用突起部、62a 係合爪(爪形状突起部)、62b 保護板(壁状突起部)、63 スナップフィット爪部、70 回路基板、72 アンテナ素子(素子)、73 切り欠き部、80 バッテリホルダ(第2板状部材)、84 穴部、85 スナップフィット爪部、85a 溝(係合受け部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信を用いたコード照合の結果に応じて車両の制御を行う電子キーシステムに用いられるとともに、
携帯機本体の外形を構成するケース内に、外部と無線通信を行うための素子が実装された回路基板と、当該回路基板の一面側に重ねられる第1板状部材と、当該回路基板の他面側に重ねられる第2板状部材とが収納された携帯機であって、
第1板状部材は、
板状の平面部と当該平面部の外縁付近に設けられた複数の係合用突起部とを備えて構成され、
前記係合用突起部は、頂部が爪形状をしている爪形状突起部と、その爪形状突起部の基部から頂部までの外側面を覆うように、その爪形状突起部から離隔してその爪形状突起部よりも前記平面部の外縁側に配置される壁状突起部とからなり、
それら爪形状突起部及び壁状突起部が、前記平面部において回路基板に対向する側の面から回路基板側に突出するように設けられており、
第2板状部材は、
第1板状部材とともに回路基板に重ねられた際に第1板状部材の爪形状突起部に対向する場所に、爪形状突起部の頂部が前記平面部の外縁側から係合する係合受け部を有しており、
第1板状部材の爪形状突起部が第2板状部材の係合受け部に係合され、回路基板が第1板状部材と第2板状部材とに挟み込まれた状態とされていることを特徴とする携帯機。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2板状部材は、前記係合受け部を有しているとともに、前記爪形状突起部が係合受け部に係合する場合に当該爪形状突起部の爪形状をしている頂部が少なくとも納まる穴部を有していることを特徴とする携帯機。
【請求項3】
請求項2において、
前記壁状突起部は、前記回路基板が前記第1板状部材と前記第2板状部材とに挟み込まれた状態となったときに、当該壁状突起部の内側に位置する前記爪形状突起部の両側面が、前記回路基板及び前記第2板状部材の少なくともいずれかにより覆われるように設けられていることを特徴とする携帯機。
【請求項4】
無線通信を用いたコード照合の結果に応じて車両の制御を行う電子キーシステムに用いられるとともに、
携帯機本体の外形を構成するケース内に、外部と無線通信を行うための素子が実装された回路基板と、当該回路基板の一面側に重ねられる第1板状部材と、当該回路基板の他面側に重ねられる第2板状部材とが収納された携帯機であって、
第1板状部材は、
板状の平面部と当該平面部の外縁付近に設けられた複数の爪形状突起部とを備えて構成され、
前記爪形状突起部は、頂部が爪形状をしているとともに、前記平面部において回路基板に対向する側の面から回路基板側に突出するように設けられており、
第2板状部材は、
第1板状部材とともに回路基板に重ねられた際に第1板状部材の爪形状突起部に対向する場所に、爪形状突起部の頂部が前記平面部の外縁側から係合する係合受け部を有しているとともに、当該爪形状突起部が係合受け部に係合する場合に当該爪形状突起部の爪形状をしている頂部が少なくとも納まる穴部を有しており、
第1板状部材の爪形状の突起部が第2板状部材の係合受け部に係合され、回路基板が第1板状部材と第2板状部材とに挟み込まれた状態とされていることを特徴とする携帯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−19224(P2013−19224A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155035(P2011−155035)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】