説明

携帯通信システム、方法、プログラム及び携帯通信端末

【課題】地震等の災害時において、携帯通信網の一部地域が機能停止し、災害地域内の携帯通信端末が通信圏外になり、使用不可能となった場合に通信圏外から通信圏内への災害情報を発信する。
【解決手段】通信ネットワーク400に接続される無線基地局200を有する携帯通信システムに、無線基地局に対して通信圏外にあり、近距離通信により連結を拡大し情報が共有化される複数の携帯通信端末500と、通信ネットワークに接続され、複数の携帯通信端末の少なくとも1つから通信圏内の携帯通信端末に近距離通信より情報が送信された場合に通信圏内の携帯通信端末から無線基地局を介して送信された情報を保持し、通信圏内の携帯通信端末からの要求に対して情報を送信する情報サーバ300とからなることを特徴とする携帯通信システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信ネットワークに接続される無線基地局を有する携帯通信システムに関する。特に、本発明は、災害地域内の携帯通信端末が通信圏外からの災害情報の発信を可能にする携帯通信システム、方法、プログラム及び携帯通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震等により通信インフラが遮断された場合、近所の友人、知人の安否状況確認、遠くの親戚へ状況を伝えることは不可能である。
近年携帯端末装置が普及したが、地震等の災害時において、携帯通信網の一部地域が機能停止し、災害地域内の携帯通信端末が通信圏外になり、使用不可能となる。
このような問題に関連して以下の従来技術がある。
【0003】
従来、緊急通報装置の携帯電話が圏外であっても、緊急情報を確実にセンターに知らせるため、車載携帯電話の圏外において事故が発生した場合は、緊急通報データをトランシーバユニットで他車に送信する。車載携帯電話の圏外において他車の緊急通報データをトランシーバユニットで受信した場合は、他車の緊急通報データをトランシーバユニットで他車に送信し、車載携帯電話の圏内において他車の緊急通報データをトランシーバユニットで受信した場合は、車載携帯電話で他車の緊急通報データを緊急通報センターに通報し、車載の携帯電話の通話可能圏外であっても、緊急情報を確実に緊急通報センターに知らせることができるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、車中のトランシーバで得た情報を圏外から圏内に移動したとき、携帯電話で情報の送信を行うが、地震等の災害時に車の移動ができない場合には携帯電話は圏外のままであり、情報を圏外から圏内に送信することができない。
また、従来、基地局のサービスエリア圏内、圏外に関わらず、近距離で携帯電話装置間の直接通信を可能とするため、基地局からの信号を受信する第1の受信回路と、トランシーバモード時に他の携帯電話装置からの信号を受信する第2の受信回路と、基地局への信号を発信する第1の発信回路と、基地局として他の携帯電話装置に信号を発信する第2の発信回路と、他の携帯電話装置が基地局として発信していることを検知する判定回路を備え、既存の基地局を介在させた携帯電話モードと、基地局を介在させず任意の携帯電話装置間で通信を行うトランシーバモードとを持つものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、上記特許文献2では、携帯電話装置に対して近距離通信を可能とするが、地震等の災害時において、携帯通信網の一部地域が機能停止し、災害地域内の携帯通信端末が通信圏外になり、使用不可能となった場合に通信圏外から通信圏内への災害情報を発信するものではない。
また、従来、ユーザからの通信要求が発生してから、はじめて中継依頼先を探索し、中継依頼先に対して中継を要求し、接続を確立しているため、通信要求が発生してから、通信を確立するまでに長時間を要するため、移動端末は、他の端末に対し自端末の通信の中継を要求する機能を有する移動端末であって、基地局との通信状態を監視する機能を有する監視手段と、他の端末に対し通信の中継を要求する機能を有する通信中継要求手段と、を有し、かつ、前記監視手段により得られた通信状態に基づき自端末がいずれの基地局の通信エリア内にもないと判断すると、他の端末を探索する機能を有する探索手段により他の端末の探索を開始するものもある(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
しかしながら、上記特許文献3では、移動端末が他の端末に対し自端末の通信の中継を行わせるものであるが、前述のように、地震等の災害時において、携帯通信網の一部地域が機能停止し、災害地域内の携帯通信端末が通信圏外になり、使用不可能となった場合に通信圏外から通信圏内への災害情報を発信するものではない。
【0007】
【特許文献1】特開2001−093069号公報
【特許文献2】特開2002−125269号公報
【特許文献3】特開2006−279187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は上記問題点に鑑みて、地震等の災害時において、携帯通信網の一部地域が機能停止し、災害地域内の携帯通信端末が通信圏外になり、使用不可能となった場合に通信圏外から通信圏内への災害情報を発信することを可能にする携帯通信システム、方法、プログラム及び携帯端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前記問題点を解決するために、通信ネットワークに接続される無線基地局を有する携帯通信システムにおいて、前記無線基地局に対して通信圏外にあり、近距離通信により連結を拡大し情報が共有化される複数の携帯通信端末と、前記通信ネットワークに接続され、前記複数の携帯通信端末の少なくとも1つから通信圏内の携帯通信端末に近距離通信より前記情報が送信された場合に通信圏内の携帯通信端末から無線基地局を介して送信された前記情報を保持し、通信圏内の携帯通信端末からの要求に対して前記情報を送信する情報サーバとを備えることを特徴とする携帯通信システムを提供する。
【0010】
さらに、災害地域の通信圏外から災害のない地域の通信圏内まで近距離通信により携帯通信端末の連結を拡大する。
さらに、災害地域の通信圏外の復旧により通信圏内となった携帯通信端末から前記無線基地局を介して前記情報サーバに災害情報が送信。
さらに、前記複数の携帯通信端末が複数の自立ネットワークを形成し、前記自立ネットワーク同士は少なくとも1つの携帯通信端末を共有し、自立ネットワークが連結して拡大する。
【0011】
さらに、本発明は、通信ネットワークに接続される無線基地局を有する携帯通信方法において、前記無線基地局に対して通信圏外にある複数の携帯通信端末を近距離通信により連結し、拡大し情報を共有化する工程と、前記複数の携帯通信端末の少なくとも1つから通信圏内の携帯通信端末に近距離通信より前記情報が送信された場合に通信圏内の携帯通信端末から無線基地局を介して送信された前記情報を前記通信ネットワーク上に保持し、通信圏内の携帯通信端末からの要求に対して前記情報を送信する工程とを備えることを特徴とする携帯通信方法を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、通信ネットワークに接続される無線基地局を有する携帯通信プログラムにおいて、前記無線基地局に対して通信圏外にある複数の携帯通信端末を近距離通信により連結し、拡大し情報を共有化する手順と、前記複数の携帯通信端末の少なくとも1つから通信圏内の携帯通信端末に近距離通信より前記情報が送信された場合に通信圏内の携帯通信端末から無線基地局を介して送信された前記情報を前記通信ネットワーク上に保持し、通信圏内の携帯通信端末からの要求に対して前記情報を送信する手順とを備えることを特徴とする携帯通信方法を提供する。
【0013】
さらに、無線基地局を介して通信ネットワークに接続される携帯通信端末において、前記無線基地局と無線信号を送受信する第1無線通信部と、他の携帯通信端末と近距離通信を行う第2無線通信部と、災害時に通信圏外にある場合災害情報を保持する災害情報保持部と、災害時に通信圏外にある場合前記第2無線通信部を用いて近距離通信により他の携帯通信端末を探索し、探索された前記他の携帯通信端末に対して前記災害情報保持部に保持されている災害情報を送信し、通信圏内にある場合に前記第2無線通信部を用いて近距離通信により災害情報を受信した場合には前記第1無線通信部を用いて前記無線基地局に前記災害情報を送信する災害時制御部とを備えることを特徴とする携帯通信システムを提供する。
【0014】
さらに、前記災害時制御部は、災害時に通信圏外にある場合前記第2無線通信部を用いて近距離通信により他の携帯通信端末より災害情報を受信した場合には災害情報を前記災害情報保持部に保持し、災害情報を送信した前記他の携帯通信端末以外の別の携帯通信端末に前記第2無線通信部を用いて近距離通信により送信する。
さらに、前記災害時制御部は、災害情報を送信した場合には送信先の携帯通信端末に対して受信した旨の通知を送信するように要求し、通知の受信がない場合には、前記第2無線通信部を用いて近距離通信により他の携帯通信端末を再探索する。
【0015】
さらに、前記災害時制御部は前記通知の受信があった場合にはスピーカから報知音を発生させ、表示部に前記通知の受信があった旨を表示させる。
さらに、前記災害情報保持部は操作部により入力された災害情報、カメラにより撮像された画像の災害情報を保持する。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、無線基地局に対して通信圏外にある複数の携帯通信端末を近距離通信により連結し、拡大し情報を共有化し、複数の携帯通信端末の少なくとも1つから通信圏内の携帯通信端末に近距離通信より情報が送信された場合に通信圏内の携帯通信端末から無線基地局を介して送信された情報を通信ネットワーク上に保持し、通信圏内の携帯通信端末からの要求に対して情報を送信するようにしたので、無線基地局の通信圏外にある複数の携帯通信端末の各々は災害情報を共有し、通信インフラが一部地域で災害により機能停止しても、災害地域内に存在する携帯通信端末が災害情報を送信できない場合であっても、携帯通信端末同士が直接通信(情報送受信)を行い、各携帯通信端末が通信を所望する情報の共有化を図る。
【0017】
そして、情報共有化した携帯通信端末が災害地域外の通信圏内にある携帯通信端末に接続されるので、通信インフラが機能停止しても、通信圏外となっている携帯通信端末の情報を含めて一括して送信することが可能になり、災害地域内の携帯通信端末の所望する情報発信を行うことができる。
さらに、情報共有化した携帯通信端末の1つでも通信圏内に復帰した場合は、通信インフラの完全な復旧を待つことなく、通信圏外となっている携帯通信端末の情報を含めて一括して送信することが可能になり、災害地域内の携帯通信端末の所望する情報発信を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る携帯通信システムの概略構成を示す全体図である。本図に示すように、携帯通信システム100は複数の携帯通信端末500と、各携帯通信端末500と無線を介して接続される複数の無線基地局200と、各無線基地局200と通信ネットワーク400を介して接続される情報サーバ300とから構成され、例えば、地震等の災害時において、携帯通信システム100のネットワークの一部地域が機能停止し、災害地域内の携帯通信端末500が通信圏外になった場合であっても、携帯通信端末500同士が直接通信を行うことにより、通信を行った携帯通信端末500間で情報を共有するようにプログラム制御で動作する。
【0019】
無線基地局200は、所定の通信エリア内(通信圏内)の携帯通信端末500と無線により情報の送受信を行う機能を有する。
すなわち、携帯通信端末500が無線基地局200の通信圏内にある場合、携帯通信端末500と無線基地局200とは、相互に接続され情報の送受信を行うが、携帯通信端末500が無線基地局200の通信圏外にある場合(災害等によって無線基地局200の機能がダウンした場合も含む)、携帯通信端末500と無線基地局200とは、相互に無線通信を行うことができない。
【0020】
一例として、災害時の災害地域では、通信圏外の複数の携帯通信端末500A、500B、500C、500D、500E、500Fに対して複数の自立型ネットワーク600A、600Bが形成される。
情報サーバ300は、携帯通信端末500から送信された情報を格納し、また情報受信要求のあった携帯通信端末500に対して当該情報を送信する機能を備えている。特に、情報サーバ300には災害情報保存部300Aが設けられ、災害情報保存部300Aは携帯通信端末500から送信された災害情報を格納し、また災害情報受信要求のあった携帯通信端末500に対して当該情報を送信する
【0021】
なお、情報サーバ300はWebサーバ以外のメールサーバ等により構成されてもよい。
図2は図1における携帯通信端末500の概略構成を示すブロック図である。本図に示す携帯通信端末500はプログラム制御により動作し、無線基地局200を介して通信ネットワーク400との接続が可能な携帯電話機、PDA(携帯端末装置)、PHS(簡易型携帯電話機)等を含む情報処理装置である。以下、携帯通信端末500が携帯電話機である場合を例に、詳細に説明を行う。
【0022】
携帯通信端末500には第1無線通信部501が設けられており、第1無線通信部501はアンテナを介して無線基地局200との間で無線信号を送受信する機能を有している。
さらに、携帯通信端末500には第2無線通信部502が設けられており、第2無線通信部502は図示しないアンテナを介して近距離無線規格であるブルートウース(Bluetooth)、無線LAN(ローカルエリアネットワーク)、又はその他の通信方法により他の携帯通信端末500と直接無線信号を送受信する機能を有している。
【0023】
さらに、携帯通信端末500には表示部503が設けられており、表示部503は文字、画像、記号当の各種情報の表示出力を行う機能を有している。
さらに、携帯通信端末500には操作部504が設けられており、操作部504は各種情報操作入力、文字入力を行う機能を有しており、例えば、テンキー、スクロール/決定キー等を含む。
【0024】
さらに、携帯通信端末500には音声処理部505が設けられており、音声処理部505はマイクロフォン506及び受話スピーカ507を介する音声信号の処理を行う機能を有している。
さらに、携帯通信端末500にはカメラ508が設けられており、カメラ508は、画像情報を取得する機能を有している。
【0025】
さらに、携帯通信端末500にはスピーカ509が設けられており、スピーカ509は、報知用として楽音・報知音等を出力する機能を有している。
さらに、携帯通信端末500にはメモリ510が設けられており、メモリ510は電話帳情報、送受信メール情報、発着呼情報、画像情報、楽音情報、コンテンツ、アプリケーションプログラム情報、携帯電話端末の各種設定等を格納する記憶領域を有する。さらに、メモリ510には災害情報保存部510Aが設けられ、災害情報保存部510Aは、携帯通信端末500の所有者のカメラ508で撮像された画像を含む災害情報、他の携帯通信端末500から第2無線通信部502の近距離通信により受信した災害情報を保存する。
【0026】
さらに、携帯通信端末500には制御部511が設けられ、制御部511は第1無線通信部501を介する通信機能(電話機能、メール機能、Web機能)、第2無線通信部502を介する通信機能(Bluetooth、無線LAN等)、カメラ508の機能、その他の携帯通信端末500の各部の制御を行う機能を有している。
さらに、制御部511には災害時制御部511Aが設けられ、災害時制御部511Aは災害で通信圏外になった際に災害を受けていない地域に対して災害情報の発信制御を行い、これにより救援、救助をできるだけ早く求めることを可能にする。
【0027】
図3は図1における制御部511の災害時制御部511Aの概略構成を示すブロック図である。本図に示すように、災害時制御部511Aには相手探索部1001及び災害情報送受信部1002が設けられる。
相手探索部1001は災害時の通信圏外の場合に第2無線通信部502を用いて近距離通信が可能な送信相手である他の携帯通信端末500を探索する。
【0028】
災害情報送受信部1002は相手探索部1001により探索された送信相手に対して、メモリ510の災害情報保存部510Aに保存されている災害情報を送信し、さらに、他の携帯通信端末500から第2無線通信部502を用いて近距離通信により災害情報を受信した場合には受信した災害情報をメモリ510の災害情報保存部510Aに保存し、災害情報の送信元以外の送信相手である携帯通信端末500に対して受信した災害情報を送信する。
【0029】
図4は図1における携帯通信システムの一連の動作を説明するフローチャートである。本図に示すように、ステップS701において、災害発生で携帯通信端末500が通信圏外になったか否かを判断する。すなわち、携帯通信端末500の制御部511の災害時制御部511Aでは、操作部504から通信圏外時に災害時操作入力があると、災害発生時の通信圏外と判断する。
【0030】
ステップS702において、メモリ510の災害情報保存部510Aに災害情報が保存される。災害時制御部511Aでは、操作部504の操作により、入力された災害情報、特に、カメラ508で撮像された画像情報を災害情報として災害情報保存部510Aに保存させる。
ステップS703において、災害時制御部511Aの相手探索部1001では、第2無線通信部502を用いて近距離通信により呼び出し信号を送信させ、近距離通信が可能な相手の携帯通信端末500を探索する。
【0031】
ステップS704において、相手探索部1001では、送信相手があるか否かを判断し、送信相手がいない場合にはステップS703に戻り送信相手の探索を行う。
ステップS705において、送信相手がある場合には、災害時制御部511Aの災害情報送受信部1002では、第2無線通信部502を用いて近距離通信により災害情報保存部510Aに保存されている災害情報を送信相手に送信させ、送信相手にさらに他の送信相手である他の携帯通信端末500に災害情報の送信を要求する。
【0032】
ステップS706において、送信相手から一定時間内に他の送信相手である携帯通信端末500に災害情報を送信した旨の通知を受信したか否かを判断する。一定時間内に通知を受信しない場合にはステップS703に戻り、別の送信相手の探索を行う。
ステップS707において、通知を受信した場合には、通知があった旨を、スピーカ509を用いて、報知し、さらに、表示部503に表示してユーザに知らせる。
【0033】
ステップS708において、災害情報送受信部1002では他の携帯通信端末500から第2無線通信部502を用いて近距離通信により災害情報を受信したか否かを判断する。受信していない場合に処理を終了する。
ステップS709において、災害情報送受信部1002では受信した場合には受信した災害情報を災害情報保存部510Aに保存させる。
【0034】
ステップS710において、相手探索部1001では、第2無線通信部502を用いて近距離通信により呼び出し信号を送信し、災害情報の送信元以外の送信相手である携帯通信端末500の探索を行う。
ステップS711において、相手探索部1001では、災害情報の送信元以外の送信相手の携帯通信端末500があるか否かを判断し、送信相手がいない場合にはステップS710に戻り災害情報の送信元以外の送信相手の携帯通信端末500について再探索を行う。
【0035】
ステップS712において、災害情報の送信元以外の送信相手の携帯通信端末500がある場合には、災害時制御部511Aの災害情報送受信部1002では、第2無線通信部502を用いて近距離通信により災害情報保存部510Aに保存されている災害情報を、災害情報の送信元外の送信相手の携帯通信端末500に送信させる。
ステップS713において、災害情報の送信元以外の送信相手から一定時間内に別の送信相手である携帯通信端末500に災害情報を送信した旨の通知を受信したか否かを判断する。一定時間内に通知を受信しない場合にはステップS710に戻り、災害情報の送信元以外の送信相手の再探索を行う。
【0036】
ステップS714において、災害情報の送信元以外の送信相手から一定時間内に通知を受信した場合には通知があった旨をスピーカ509により報知し、表示部503に表示する。
ステップS715において、災害情報送受信部1002では、第2無線通信部502を用いて近距離通信により災害情報の送信元に送信した旨の通知を送信し、処理を終了する。
【0037】
ステップS716において、通信圏内にある携帯通信端末500の災害情報送受信部1002では、第2無線通信部502を用いて近距離通信により災害情報を受信したか否かを判断する。受信していない場合には処理を終了する。
ステップS717において、災害情報を受信した場合には、通信圏内にある携帯通信端末500は第1無線通信部501を用いて無線基地局200、通信ネットワーク400を介して情報サーバ300に災害情報を送信する。
【0038】
ステップS718において、通信圏内にある携帯通信端末500の災害情報送受信部1002から送信元の通信圏外にある携帯通信端末500に第2無線通信部502を用いて近距離通信により災害情報を送信した旨の通知を送信する。
ステップS719において、情報サーバ300では、受信した災害情報を災害情報保存部300Aに保存し、通信圏内にあって災害情報の送信要求がある携帯通信端末500に保存した災害情報を送信し、処理を終了する。
【0039】
図5は図1における自立型ネットワークの確立を説明する図である。本図に示すように、災害時の災害領域では、通信圏外の複数の携帯通信端末500A、500B、500C、500Dが自立型ネットワーク600Aを形成し、複数の携帯通信端末500A、500B、500C、500Dは第2無線通信部502を用いて近距離通信により相互に災害情報の送受信を行う。
【0040】
さらに、災害時の災害領域では、通信圏外の複数の携帯通信端末500D、500E、500F、500Gが自立型ネットワーク600Bを形成し、複数の携帯通信端末500D、500E、500F、500Gは第2無線通信部502を用いて近距離通信により相互に災害情報の送受信を行う。
自立型ネットワーク600A及び600Bは携帯通信端末500Dを共有し連結する。したがって、自立型ネットワーク600Aから自立型ネットワーク600Bに災害情報が伝達される。
【0041】
さらに、災害時の災害領域では、通信圏外の複数の携帯通信端末500G、500H、500I、500Jが自立型ネットワーク600Cを形成し、複数の携帯通信端末500G、500H、500I、500Jは第2無線通信部502を用いて近距離通信により相互に災害情報の送受信を行う。
自立型ネットワーク600B及び600Cは携帯通信端末500Gを共有し連結する。したがって、自立型ネットワーク600Bから自立型ネットワーク600Cに災害情報が伝達される。
【0042】
さらに、災害時の災害領域では、通信圏外の複数の携帯通信端末500J、500K、500L、500Mが自立型ネットワーク600Dを形成し、複数の携帯通信端末500J、500K、500L、500Mは第2無線通信部502を用いて近距離通信により相互に災害情報の送受信を行う。
自立型ネットワーク600C及び600Dは携帯通信端末500Jを共有し連結する。したがって、自立型ネットワーク600Cから自立型ネットワーク600Dに災害情報が伝達される。
【0043】
このようにして、自立型ネットワーク600A−600F…が連結して拡大し、災害を受けていない地域にまで拡大し、通信圏内の携帯通信端末500に第2無線通信部502を用いて近距離通信により災害情報が伝達される。
災害情報が伝達された通信圏内の携帯通信端末500により、無線基地局200、通信ネットワーク400を介して情報サーバ300に災害情報が送信される。
【0044】
また、複数の自立型ネットワーク600に属する一部の携帯通信端末500が無線基地局200と間で通信圏内に復帰した場合には、携帯通信端末500の制御部511の災害時制御部511Aは、メモリ510の災害情報保存部510Aに保存されている災害情報を、第1無線通信部501を用いて、無線基地局200、通信ネットワーク400を介して、情報サーバ300の災害情報保存部300Aに送信する。
【0045】
したがって、本発明によれば、無線基地局200の通信圏外にある複数の携帯通信端末500の各々は災害情報を共有し、通信インフラが一部地域で災害により機能停止しても、災害地域内に存在する携帯通信端末500が災害情報を送信できない場合であっても、携帯通信端末500同士が直接通信(情報送受信)を行い、各携帯通信端末500が通信を所望する情報の共有化を図る。
【0046】
そして、情報共有化した携帯通信端末500が災害地域外の通信圏内にある携帯通信端末500に接続されるので、通信インフラが機能停止しても、通信圏外となっている携帯通信端末500の情報を含めて一括して送信することが可能になり、災害地域内の携帯通信端末500の所望する情報発信を行うことができる。
さらに、情報共有化した携帯通信端末500の1つでも通信圏内に復帰した場合は、通信インフラの完全な復旧を待つことなく、通信圏外となっている携帯通信端末500の情報を含めて一括して送信することが可能になり、災害地域内の携帯通信端末500の所望する情報発信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る携帯通信システムの概略構成を示す全体図である。
【図2】図1における携帯通信端末500の概略構成を示すブロック図である。
【図3】図1における制御部511の災害時制御部511Aの概略構成を示すブロック図である。
【図4】図1における携帯通信システムの一連の動作を説明するフローチャートである。
【図5】図1における自立型ネットワーク600の確立を説明する図である。
【符号の説明】
【0048】
100…携帯通信システム
200…無線基地局
300…情報サーバ
300A…災害情報保存部
400…通信ネットワーク
500、500A−500M…携帯通信端末
501…第1無線通信部
502…第2無線通信部
503…表示部
504…操作部
505…音声処理部
506…マイクロフォン
507…受話スピーカ
508…カメラ
509…スピーカ
510…メモリ
510A…災害情報保存部
511…制御部
511A…災害時制御部
600A−600F…自立型ネットワーク
1001…相手探索部
1002…災害情報送受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークに接続される無線基地局を有する携帯通信システムにおいて、
前記無線基地局に対して通信圏外にあり、近距離通信により連結を拡大し情報が共有化される複数の携帯通信端末と、
前記通信ネットワークに接続され、前記複数の携帯通信端末の少なくとも1つから通信圏内の携帯通信端末に近距離通信より前記情報が送信された場合に通信圏内の携帯通信端末から無線基地局を介して送信された前記情報を保持し、通信圏内の携帯通信端末からの要求に対して前記情報を送信する情報サーバとを備えることを特徴とする携帯通信システム。
【請求項2】
災害地域の通信圏外から災害のない地域の通信圏内まで近距離通信により携帯通信端末の連結を拡大することを特徴とする、請求項1に記載の携帯通信システム。
【請求項3】
災害地域の通信圏外の復旧により通信圏内となった携帯通信端末から前記無線基地局を介して前記情報サーバに災害情報が送信されることを特徴とする、請求項1に記載の携帯通信システム。
【請求項4】
前記複数の携帯通信端末が複数の自立ネットワークを形成し、前記自立ネットワーク同士は少なくとも1つの携帯通信端末を共有し、自立ネットワークが連結して拡大することを特徴とする、請求項1に記載の携帯通信システム。
【請求項5】
通信ネットワークに接続される無線基地局を有する携帯通信方法において、
前記無線基地局に対して通信圏外にある複数の携帯通信端末を近距離通信により連結し、拡大し情報を共有化する工程と、
前記複数の携帯通信端末の少なくとも1つから通信圏内の携帯通信端末に近距離通信より前記情報が送信された場合に通信圏内の携帯通信端末から無線基地局を介して送信された前記情報を前記通信ネットワーク上に保持し、通信圏内の携帯通信端末からの要求に対して前記情報を送信する工程とを備えることを特徴とする携帯通信方法。
【請求項6】
通信ネットワークに接続される無線基地局を有する携帯通信プログラムにおいて、
前記無線基地局に対して通信圏外にある複数の携帯通信端末を近距離通信により連結し、拡大し情報を共有化する手順と、
前記複数の携帯通信端末の少なくとも1つから通信圏内の携帯通信端末に近距離通信より前記情報が送信された場合に通信圏内の携帯通信端末から無線基地局を介して送信された前記情報を前記通信ネットワーク上に保持し、通信圏内の携帯通信端末からの要求に対して前記情報を送信する手順とを備えることを特徴とする携帯通信方法。
【請求項7】
無線基地局を介して通信ネットワークに接続される携帯通信端末において、
前記無線基地局と無線信号を送受信する第1無線通信部と、
他の携帯通信端末と近距離通信を行う第2無線通信部と、
災害時に通信圏外にある場合災害情報を保持する災害情報保持部と、
災害時に通信圏外にある場合前記第2無線通信部を用いて近距離通信により他の携帯通信端末を探索し、探索された前記他の携帯通信端末に対して前記災害情報保持部に保持されている災害情報を送信し、通信圏内にある場合に前記第2無線通信部を用いて近距離通信により災害情報を受信した場合には前記第1無線通信部を用いて前記無線基地局に前記災害情報を送信する災害時制御部とを備えることを特徴とする携帯通信システム。
【請求項8】
前記災害時制御部は、災害時に通信圏外にある場合前記第2無線通信部を用いて近距離通信により他の携帯通信端末より災害情報を受信した場合には災害情報を前記災害情報保持部に保持し、災害情報を送信した前記他の携帯通信端末以外の別の携帯通信端末に前記第2無線通信部を用いて近距離通信により送信することを特徴とする、請求項1に記載の携帯通信システム。
【請求項9】
前記災害時制御部は、災害情報を送信した場合には送信先の携帯通信端末に対して受信した旨の通知を送信するように要求し、通知の受信がない場合には、前記第2無線通信部を用いて近距離通信により他の携帯通信端末を再探索することを特徴とする、請求項7又は請求項8に記載の携帯通信端末。
【請求項10】
前記災害時制御部は前記通知の受信があった場合にはスピーカから報知音を発生させ、表示部に前記通知の受信があった旨を表示させることを特徴とする、請求項9に記載の携帯通信システム。
【請求項11】
前記災害情報保持部は操作部により入力された災害情報、カメラにより撮像された画像の災害情報を保持することを特徴とする、請求項1に記載の携帯通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−124448(P2009−124448A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296058(P2007−296058)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】