説明

携帯電話機

【課題】 視覚障害者にとっての使いやすさを向上させた携帯電話機を提供する。
【解決手段】 携帯電話機1は表示部ケース2と操作部ケース3をヒンジ部4で連結した構造であり、操作部ケース3はテンキーや各種の機能キーを配置したキー入力部7を備える。キー入力部7の周辺は交換パネルとして構成される。交換パネルには晴眼者用交換パネル30と視覚障害者用交換パネル40がある。キー入力部7に設けられたパネル識別部9が、装着された交換パネルが視覚障害者用交換パネル40であることを識別したときは、制御部50は制御モードを視覚障害者用制御モードに切り換える。視覚障害者用制御モードでは表示部5における表示が省略され、またキー操作時に音声案内が伴う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視覚障害者の使用の便宜を図った携帯電話機に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機を視覚障害者にも使用可能なものにする試みはこれまでにもなされている。その一例を特許文献1に見ることができる。特許文献1に記載された携帯電話機では、操作部に点字文字、記号シートを巻き付けてシート両端を粘着性テープで固着することにより、視力障害者用の仕様に変更することができるようになっている。特許文献2、3には、携帯電話機を収納するキャリングケースに、携帯電話機のボタンに対応する点字を形成したものが記載されている。
【特許文献1】特許第3145939号(第2頁−第3頁、図1−図2)
【特許文献2】特開平10−155531号公報(第2頁−第3頁、図1−図5)
【特許文献3】特開平10−190797号公報(第3頁−第4頁、図1−図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載された携帯電話機は、キーに突起状の点字や記号が付加されることによって視覚障害者もキーを識別し操作できるものであるが、それ以外の点は通常の晴眼者仕様のものと変わらない。特許文献2、3に記載されたものも、携帯電話機のキーの位置をキャリングケースに形成された点字や記号で知ることはできるが、携帯電話機の仕様自体は晴眼者用そのままであり、視覚障害者が使用するということに格別の配慮がなされているとは言い難い。
【0004】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、視覚障害者にとっての使いやすさを向上させた携帯電話機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記目的を達成するために本発明の携帯電話機は、ケースのキー入力部周辺を交換パネルとして構成し、この交換パネルの種類を識別するパネル識別部を設けるとともに、制御部は、装着された交換パネルが視覚障害者用のものであることを前記パネル識別部が識別したときには、制御モードを視覚障害者用制御モードに切り換えることを特徴としている。
【0006】
この構成によると、携帯電話機を視覚障害者仕様にするときは、交換パネルをもって外見上の変化を与えるだけでなく、制御モードまで視覚障害者用制御モードに切り換えるから、視覚障害者にとって不要な機能は表に出さず、視覚障害者の必要とする機能のみを顕在化させるようにして、視覚障害者の使いやすい携帯電話機とすることができる。
【0007】
(2)また本発明は、上記構成の携帯電話機において、前記視覚障害者用制御モードが、表示部における表示省略を伴うことを特徴としている。
【0008】
この構成によると、視覚障害者の見ることができない表示は行わないようにして、表示部の消費電力を減らし、電池の消耗を軽減することができる。
【0009】
(3)また本発明は、上記構成の携帯電話機において、前記視覚障害者用制御モードが、キー操作時の音声案内を伴うことを特徴としている。
【0010】
この構成によると、キー操作が正しいかどうかを耳で確かめつつ操作を進めることができるから、視覚障害者であっても誤操作の確率が低くなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、交換パネルで外見を視覚障害者仕様とするに留まらず、制御モードまで視覚障害者用制御モードに切り換えるから、携帯電話機を視覚障害者にとって真に使いやすいものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図1−図7に基づき説明する。図1は携帯電話機の正面図、図2は晴眼者用交換パネルを装着した状態の携帯電話機の正面図、図3は晴眼者用交換パネルの正面図、図4は視覚障害者用交換パネルを装着した状態の携帯電話機の正面図、図5は視覚障害者用交換パネルの正面図、図6は視覚障害者用交換パネルの裏面図、図7はブロック構成図である。
【0013】
携帯電話機1のケースはクラムシェルタイプ、すなわち二つ折り形状であって、表示部ケース2と操作部ケース3をヒンジ部4で連結した構造を備える。表示部ケース2には液晶表示パネル等からなる表示部5と、内蔵スピーカの音を出す貫通孔6が設けられている。操作部ケース3にはテンキーや各種の機能キーを配置したキー入力部7と、内蔵マイクロフォンに音声を届かせる貫通孔8が設けられている。
【0014】
キー入力部7の構成は次の通りである。図において上部中央には十字キー10が配置され、その周囲にマナーモードキー11、ドライブモードキー12、メールキー13、インターネット接続キー14の計4個の機能キーが配置されている。その下の段にはONキー15、クリアキー16、OFFキー17の計3個の機能キーが横一列に並ぶ形で配置されている。その下にはテンキー18と、「*」「#」の記号を付した2個の機能キー19、20が配置されている。
【0015】
キー入力部7の周辺は交換パネルとして構成される。図1に示したのは交換パネルを装着する前の状態であって、これに交換パネルを装着すると図2又は図4のようになる。
【0016】
図2に示すのは晴眼者用交換パネル30を装着した状態である。晴眼者用交換パネル30にはテンキー18やその他の機能キーを露出させる、各キーに見合った形状の貫通孔31と、貫通孔8に重なる貫通孔32と、ねじ止め用の貫通孔33が形成されている。貫通孔33は計4箇所にあり、それに対応するネジ穴が操作部ケース3に形成されている。貫通孔33にセルフタッピングねじ35を通してネジ穴にねじ込むことにより、晴眼者用交換パネル30は操作部ケース3にしっかりと固定される。晴眼者用交換パネル30は装飾以上の機能を持たない。
【0017】
図4に示すのは視覚障害者用交換パネル40を装着した状態である。視覚障害者用交換パネル40にあっては、各種機能キーやテンキー18に対応する箇所は貫通孔ではなく、可撓性のフィルムからなる押圧操作部41となっている。押圧操作部41を探り当てて押すと、その下のキーが間接的に押されるものである。
【0018】
押圧操作部41の表面には、その下のキーの機能をシンボライズした記号が突起としてエンボス成形されている。記号の形状は次の通りである。十字キー10用の記号は四方に向かう矢印を浮き立たせたものである。マナーモードキー11用の記号はスピーカを模した形状に×印を組み合わせたものである。ドライブモードキー12用の記号は自動車を模した形状からなる。メールキー13用の記号は封筒を模した形状からなる。インターネット接続キー14用の記号は雲を模した形状からなる。ONキー15用の記号は押し込まれた押釦を模した形状からなる。クリアキー16用の記号は水平な直線からなる。OFFキー17用の記号は飛び出した押釦を模した形状からなる。
【0019】
テンキー18用の記号はかな文字(あ、か、さ・・・)を表す点字である。数字や英字を表す点字は文字を構成する点の数が多く、指先で識別可能とするためには所定以上の大きさである必要があり、携帯電話機1のキーの面積内には納めきれないので、ここでは使用しない。また、電話式のテンキー配列はITU(国際電気通信連合)により定められており、「5」のキーにはそれが「5」のキーであることを示すインデックスポイント(411)も添えられているので視覚障害者は数字キーを容易に知ることができるものとして、数字の点字を入れていない。「*」「#」の機能キー19、20用の記号は「*」「#」を拡大した形状からなる。
【0020】
視覚障害者用交換パネル40の装着は、晴眼者用交換パネル30と同様、ねじ止め用の貫通孔43にセルフタッピングねじ35を通してネジ穴にねじ込むことにより行われる。
また視覚障害者用交換パネル40には晴眼者用交換パネル30と同じく貫通孔8に重なる貫通孔42が形成されている。
【0021】
操作部ケース3には、装着された交換パネルが晴眼者用交換パネル30なのか視覚障害者用交換パネル40なのかを識別するパネル識別部9が設けられている(図1参照)。パネル識別部9はキー入力部7に配置された1対の電気接点からなる。そして視覚障害者用交換パネル40の裏面にのみ、この1対の電気接点を短絡する短絡部44が形成されている。短絡部44は矩形の金属フィルムを視覚障害者用交換パネル40の裏面に貼り付けて構成される。
【0022】
携帯電話機1のブロック構成が図7に示されている。携帯電話機1の制御の中心となるのは制御部50であり、これに表示部5、キー入力部7、及びパネル識別部9の既出構成要素と、送受信部51、貫通孔8を通じて集音するマイクロフォン52、貫通孔6を通じて音を出すスピーカ53、及び制御部50の動作に必要な情報を記憶するメモリ54が接続されている。
【0023】
晴眼者用交換パネル30を装着したときは、携帯電話機1は通常通りの動作を行う。晴眼者用交換パネル30に代えて視覚障害者用交換パネル40を装着すると、短絡部44がパネル識別部9の電気接点を短絡し、これにより視覚障害者用交換パネル40が装着されたことが識別される。すると制御部50は制御モードを視覚障害者用制御モードに切り換える。視覚障害者用制御モードでは、表示部5の表示が省略される。表示省略は、画面を全面的に消すものとしてもよいが、晴眼者である付き添い人の便宜のため、極く一部の表示、例えば電池残量や電波強度の表示であるとか、マナーモードの表示、着信表示くらいを残すこととしてもよい。このように表示を省略することにより、表示部5の消費電力を減らし、電池の消耗を軽減することができる。
【0024】
視覚障害者用制御モードでは、キー操作に音声案内が伴う。すなわちキーが押されたとき、制御部50はそのキー用に設定された音声データ(合成音声又は電子音)をメモリ54から読み出し、スピーカ53を鳴動させる。これにより、キー操作が正しいかどうかを耳で確かめつつ操作を進めることができるから、視覚障害者であっても誤操作の確率が低くなる。また、省略された表示文字を音声案内する。例えば、着信時に山田太郎という文字の表示が省略されたときは、「山田太郎さんから着信があります。」という音声を発生する。
【0025】
上記表示省略とキー操作の音声案内は、両方とも必須という訳ではなく、一方のみの実施でも構わない。
【0026】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、携帯電話機を視覚障害者にも使用できるようにする際に広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】携帯電話機の正面図
【図2】晴眼者用交換パネルを装着した状態の携帯電話機の正面図
【図3】晴眼者用交換パネルの正面図
【図4】視覚障害者用交換パネルを装着した状態の携帯電話機の正面図
【図5】視覚障害者用交換パネルの正面図
【図6】視覚障害者用交換パネルの裏面図
【図7】ブロック構成図
【符号の説明】
【0029】
1 携帯電話機
2 表示部ケース
3 操作部ケース
5 表示部
7 キー入力部
9 パネル識別部
30 晴眼者用交換パネル
40 視覚障害者用交換パネル
50 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースのキー入力部周辺を交換パネルとして構成し、この交換パネルの種類を識別するパネル識別部を設けるとともに、制御部は、装着された交換パネルが視覚障害者用のものであることを前記パネル識別部が識別したときには、制御モードを視覚障害者用制御モードに切り換えることを特徴とする携帯電話機。
【請求項2】
前記視覚障害者用制御モードが、表示部における表示省略を伴うことを特徴とする請求項1に記載の携帯電話機。
【請求項3】
前記視覚障害者用制御モードが、キー操作時の音声案内を伴うことを特徴とする請求項1に記載の携帯電話機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−19930(P2007−19930A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−199939(P2005−199939)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】