摩擦板及び摩擦板を備えた湿式多板クラッチ
【課題】空転時の摩擦係数が小さく、係合時の摩擦特性のバラツキがなく品質が安定していると共に、係合時のショックが少なく、耐熱性があって、かつ空転時の引き摺りトルクを従来に比べて大幅に低減した摩擦板及び摩擦板を備えた湿式多板クラッチを提供する。
【解決手段】ほぼ環状のコアプレートに環状の摩擦材を貼着して形成された摩擦面を有する摩擦板であって、摩擦面には、摩擦板の内周縁に開口する開口部と内外周縁間で終端する端部とを有する第１の油溝と、摩擦板の外周縁に開口する開口部と内外周縁間で終端する端部とを有する第２の油溝とが設けられていることを特徴としている。
【解決手段】ほぼ環状のコアプレートに環状の摩擦材を貼着して形成された摩擦面を有する摩擦板であって、摩擦面には、摩擦板の内周縁に開口する開口部と内外周縁間で終端する端部とを有する第１の油溝と、摩擦板の外周縁に開口する開口部と内外周縁間で終端する端部とを有する第２の油溝とが設けられていることを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、車両の自動変速機（ＡＴ）のクラッチやブレーキなどに用いられる摩擦板及び摩擦板を備えた湿式多板クラッチに関する。より詳細には、摩擦板の摩擦面に形成する油路の改良に関する。
【背景技術】
【０００２】
一般に、湿式多板クラッチは、クラッチもしくはブレーキのドラムとハブ間に摩擦板（フリクションプレート）と、セパレータプレートとが交互に配置されており、クラッチピストンの押圧と解除によりクラッチの係合と解除が行われる。
【０００３】
また近年、自動車の低燃費の要求は、ますます増大しており、自動変速機においてもクラッチの非係合時における動力損失を軽減させるため、摩擦板とセパレータプレート間の引き摺りトルクの低減が一層求められている。
【０００４】
一般に、自動変速機（ＡＴ）に用いられる湿式多板クラッチには、動力損失を軽減させるため、摩擦板の内周側から外周へと潤滑油が抜けやすいような構造とし、引きずりトルクの低減をしていることが多い。このような引き摺りトルク低減の手法としては、例えば、特許文献１や特許文献２に開示のものが知られている。特許文献１及び２に開示のクラッチでは、非係合時の摩擦板とセパレータプレートの離間のために内周側で端面の閉じた油溝と、係合時における摩擦面への潤滑油の供給による、焼付き防止の為の油供給用の内外径方向に貫通した油通路が摩擦板に設けられている。
【０００５】
しかし、近年、燃費向上と同時に、動力性能向上をねらいとしての変速応答性向上のため、摩擦板とセパレータプレートの間のクリアランスは従来に比較して、小さくなっており、空転時において、介在する油膜による引き摺りトルクも大きくなる傾向にあった。
【０００６】
内径側から外径側に貫通する油通路に供給される油は、回転により摩擦材に引き込まれ、引き込まれた油は、フリクションプレートとセパレータプレートの間に入ると、なかなか排出されず、特に、フリクションプレートとセパレータプレート間のクリアランスの小さな、回転数の小さな領域では顕著であり、摩擦材と相手セパレータプレート間の粘性による引き摺りトルクは大きなものとなる。
【０００７】
内外径から貫通した油溝が設けられた油溝からの油は、摩擦面への油の供給と、油排出のためのものであるが、これらの油溝の形状や、油溝の両側コーナーのダレなどにより、油溝から摩擦面への油の流れは大きく影響され、空転トルクや、係合時の摩擦特性に影響し、品質のバラツキの原因となる。
【０００８】
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては次のものがある。
【特許文献１】特開平１１−１４１５７０公報
【特許文献２】特開平２００５−７６７５９公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００９】
従来の摩擦板では、摩擦面における油の排出が十分にされないことにより、引き摺りトルクを更に低減させるという要求に満足できなかった。特に低域の回転時においては、摩擦板とセパレータプレートとの間に介在する油の排出が十分でなく、引き摺りトルクが小さくすることができなかった。
【００１０】
しかしながら、近年の自動変速機に課せられた小型軽量化の要求に応えるため、摩擦板一枚あたりの摩擦容量を大きくすることが望まれている。そのため、摩擦板に形成する溝数の増加や溝の大きさなど厳しく制限されつつある。
【００１１】
従って、本発明の目的は、空転時の摩擦係数が小さく、係合時の摩擦特性のバラツキがなく品質が安定していると共に、係合時のショックが少なく、耐熱性があって、かつ空転時の引き摺りトルクを従来に比べて大幅に低減した摩擦板及び摩擦板を備えた湿式多板クラッチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【００１２】
上記目的を達成するため、本発明の摩擦板は、
ほぼ環状のコアプレートに環状の摩擦材を貼着して形成された摩擦面を有する摩擦板であって、
摩擦面には、摩擦板の内周縁に開口する開口部と内外周縁間で終端する端部とを有する第１の油溝と、摩擦板の外周縁に開口する開口部と内外周縁間で終端する端部とを有する第２の油溝とが設けられていることを特徴としている。
【００１３】
また、本発明の摩擦板は、
ほぼ環状のコアプレートに複数の摩擦材セグメントを隙間なく貼着して形成された摩擦面を有する摩擦板であって、
前記摩擦面には、前記摩擦板の内周縁に開口する開口部と内外周縁間で終端する端部とを有する第１の油溝と、前記摩擦板の外周縁に開口する開口部と内外周縁間で終端する端部とを有する第２の油溝とが設けられ、前記摩擦材セグメントが前記第１の油溝と前記第２の油溝とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【００１４】
本発明によれば、以下のような効果が得られる。
【００１５】
内径部に開口して端部が閉じている第１の油溝と、内径部に開口して端部が閉じている第２の油溝で構成されているため、第２の油溝は、空転時において摩擦板から相手面であるセパレータプレートを引き離すことができ、係合時におけるクッション性が向上する。また、係合及び解放時に生ずる摩擦熱を冷却する油の供給を促進するので、摩擦板に発生する熱を有効に冷却できる。特に、係合初期における、クラッチの急激な食い付きを防止するクッションの機能としても作用する。
【００１６】
また、外径側のみに開口する第２の油溝は、もっぱら摩擦面の油排出の役割のみを持たせることにより、空転時のドラグ低下及び係合時の摩擦特性が改善され、バラツキの少ない安定したものとなる。特に低回転時においては、引き摺りトルク低減の効果は大きい。このため、供給油量や回転数などの使用条件に合せ、それぞれの油溝の組合わせでの設計が可能で、品質の安定した多板クラッチを作ることができる。また、引き込まれた油がスムースに排除されるため、係合時に生ずる摩擦熱も、オイルと一緒にスムースに排除され摩擦材の耐熱性が向上する。
【００１７】
供給油量、使用される回転条件により種々の設計が可能である。同じく、内径側に開口している油溝は、内径部の溝幅を大きくすると、摩擦材の引き離し効果がより大きくなる。尚、第１及び第２の油溝とも半径方向に対し傾斜角度をもって形成すると、摩擦面の引き離し効果及び油排出性はより向上する。
【実施例】
【００１８】
以下、添付図面を参照して本発明を詳細に説明する。尚、図面において同一部分は同一符号にて示してある。
【００１９】
図１は、本発明の摩擦板を備えた湿式多板クラッチ１０の軸方向部分断面図である。
【００２０】
湿式多板クラッチ１０は、軸方向の一端部で開放したほぼ円筒形のドラム、すなわちクラッチケース１と、クラッチケース１の内周に配置され、同軸上で相対回転するハブ４と、クラッチケース１の内周に設けられたスプライン８に軸方向で移動自在に配置された環状のセパレータプレート２と、ハブ４の外周に設けられたスプライン５にセパレータプレート２と軸方向で交互に配置され、摩擦材が貼着された環状の摩擦板３とからなっている。セパレータプレート２と摩擦板３とはそれぞれ複数個設けられている。
【００２１】
湿式多板クラッチ１０は、セパレータプレート２と摩擦板３とを押圧し締結させるピストン６と、セパレータプレート２及び摩擦板３を軸方向の一端で固定状態に保持するため、クラッチケース１の内周に設けられたバッキングプレート７とそれを保持する止め輪１７とを備えている。
【００２２】
図１に示すように、ピストン６は、クラッチケース１の閉口端内で軸方向摺動自在に配置されている。ピストン６の外周面とクラッチケース１の内面との間にはＯリング９が介装されている。また、ピストン６の内周面とクラッチケース１の円筒部（不図示）の外周面との間にもシール部材（不図示）が介装されている。従って、クラッチケース１の閉口端の内面とピストン６との間に油密状態の油圧室１１が画成される。
【００２３】
ハブ４に軸方向摺動自在に保持された摩擦板３は、その両面に所定の摩擦係数を有する摩擦材１２が固定されている。しかしながら、摩擦材１２は、摩擦板３及びセパレータプレート２の片面のみに設けることもできる。また、ハブ４には径方向に貫通した潤滑油供給口１３が設けられ、湿式多板クラッチ１０の内径側から外径側へと潤滑油を供給している。
【００２４】
以上のように構成された湿式多板クラッチ１０は、次のようにクラッチの締結及び解放をする。図１の状態は、クラッチ解放状態を示しておりセパレータプレート２と摩擦板３とはそれぞれ離れている。解放状態では、不図示のリターンスプリングの付勢力により、ピストン６はクラッチケース１の閉口端側に当接している。
【００２５】
この状態でクラッチを締結するには、ピストン６とクラッチケース１との間に画成された油圧室１１に油圧を供給する。油圧の上昇に伴い、リターンスプリング（不図示）の付勢力に抗して、ピストン６は、図１において軸方向右に移動し、セパレータプレート２と摩擦板３とを密着させる。これによりクラッチが締結される。
【００２６】
締結後、クラッチを再度解放するには、油圧室１１の油圧を解除する。油圧が解除されると、ピストン６はリターンスプリング（不図示）の付勢力により、クラッチケース１の閉口端に当接する位置まで移動する。すなわち、クラッチが解放される。
【００２７】
（第１実施例）
図２は、本発明の第１実施例を示す摩擦板３の部分正面図である。摩擦板３は、ほぼ環状のコアプレート２０に環状の摩擦材２１を接着剤などで貼着し形成された摩擦面２５を備えている。コアプレート２０は、ハブ４のスプライン５に係合するスプライン２０ａを内周に備えている。
【００２８】
図示のように、環状の摩擦材２１は、摩擦板３の内周縁２６に開口する開口部２４ａと内外周縁間で終端する端部２４ｂとを有する第１の油溝２４と、摩擦板３の外周縁２７に開口する開口部２３ａと内外周縁間で終端する端部２３ｂとを有する第２の油溝２３とが設けられている。第１の油溝２４と第２の油溝２３とはほぼ等配に周方向で交互に設けられている。
【００２９】
摩擦面２５には、外周縁２７に開口する第２の油溝が設けられている。従って、摩擦係合面を潤滑する潤滑油は、摩擦面２５に引き込まれた潤滑油は、第２の油溝２３によりスムースに外径側に排出され、空転時において、引き摺りトルクの低減が可能となる。
【００３０】
第１の油溝２４と第２の油溝２３は、いずれも開口部から端部までほぼ同じ周方向幅で形成されている。
【００３１】
（第２実施例）
図３は、本発明の第２実施例を示す摩擦板３の部分正面図である。基本的な構成は第１実施例と同じである。従って、異なる部分のみを説明する。第３実施例以下についても同様である。
【００３２】
第２実施例では、摩擦板３の内周縁２６に開口する開口部３０ａと内外周縁間で終端する端部３０ｂとを有する第１の油溝３０と、外周縁２７に開口する開口部３３ａと内外周縁間で終端する端部３３ｂとを有する第２の油溝３３とが、それぞれテーパ形状を備えている。
【００３３】
図示のように、第１の油溝３０は、開口部３０ａの周方向の両端から端部３０ｂに延在するテーパ部３０ｃを備えている。従って、第１の油溝３０は、端部３０ｂから開口部３０ａに向かって周方向の幅が広くなるテーパ状の形状となっている。
【００３４】
また、第２の油溝３３も、開口部３３ａの周方向の両端から端部３３ｂに延在するテーパ部３３ｃを備えている。従って、第２の油溝３３は、端部３３ｂから開口部３３ａに向かって周方向の幅が広くなるテーパ状の形状となっている。
【００３５】
第１実施例と同様に、第１の油溝３０と第２の油溝３３とはほぼ等配に周方向で交互に設けられている。
【００３６】
（第３実施例）
図４は、本発明の第３実施例を示す摩擦板３の部分正面図である。基本的な構成は第２実施例と同じである。従って、異なる部分のみを説明する。
【００３７】
第３実施例は、第２実施例の変形例であり、第１の油溝の構成が異なっている。第１の油溝３４は、全体として矩形の形状を備え、摩擦板３の内周縁２６に開口する開口部３４ａと内外周縁間で終端する端部３４ｂとを備え、開口部３４ａと端部３４ｂとはその周方向の幅がほぼ同じである。また、第１実施例と同様に、第１の油溝３４と第２の油溝３３とはほぼ等配に周方向で交互に設けられている。
【００３８】
（第４実施例）
図５は、本発明の第４実施例を示す摩擦板３の部分正面図である。本実施例は、第２実施例において、第２の油溝の構成を変更したもので、第３実施例と逆の構成となっている。但し、第２の油溝３５は第３実施例の第１の油溝３４より小さい矩形を有する形状となっている。
【００３９】
第２の油溝３５は、全体として矩形の形状を備え、摩擦板３の外周縁２７に開口する開口部３５ａと内外周縁間で終端する端部３５ｂとを備え、開口部３５ａと端部３５ｂとはその周方向の幅がほぼ同じである。また、上述の各実施例と同様に、第１の油溝３０と第２の油溝３５とはほぼ等配に周方向で交互に設けられている。
【００４０】
（第５実施例）
図６は、本発明の第５実施例を示す摩擦板３の部分正面図である。基本的な構成は第１実施例と同じである。従って、異なる部分のみを説明する。
【００４１】
第５実施例では、第１及び第２の油溝が、周方向に対して所定の角度で傾いて形成されている。摩擦材２１は、摩擦板３の内周縁２６に開口する開口部３６ａと内外周縁間で終端する端部３６ｂとを有する第１の油溝３６と、摩擦板３の外周縁２７に開口する開口部３７ａと内外周縁間で終端する端部３７ｂとを有する第２の油溝３７とが設けられている。第１の油溝３６と第２の油溝３７とはほぼ等配に周方向で交互に設けられている。
【００４２】
図６から分かるように、第１の油溝３８と第２の油溝３９は、それぞれ周方向に所定の角度で傾斜して設けられている。第１の油溝３８と第２の油溝３９との傾斜角は同じであるが、異なるように形成してもよい。図６では、第１の油溝３６及び第２の油溝３７とは、それぞれ周方向の幅が開口部から端部までほぼ同一であるが、異なるようにすることもできる。
【００４３】
図７は、本発明の各実施例に適用可能な油溝の変形例を示す摩擦板の部分斜視図である。摩擦材セグメント５４には、摩擦板３の内周縁２６に開口する開口部５６ａと内外周縁間で終端する端部５６ｂとを有する第１の油溝５６と、摩擦板３の外周縁２７に開口する開口部５５ａと内外周縁間で終端する端部５５ｂとを有する第２の油溝５５とが設けられている。第１の油溝５６は一つ設けられ、周方向で第１の油溝５６を挟むように２つの第２の油溝５５が設けられている。
【００４４】
ここで、第１の油溝５６は、開口部５６ａから端部５６ｂに向かってコアプレート２０の表面から離れる方向に傾斜したテーパ形状を有する。すなわち、軸方向の深さは端部５６ｂで最も浅くなっている。また、端部５６ｂでは、周方向の幅が最も狭くなっている。
【００４５】
また、同様に、第２の油溝５５は、開口部５５ａから端部５５ｂに向かってコアプレート２０の表面から離れる方向に傾斜したテーパ形状を有する。すなわち、軸方向の深さは端部５５ｂで最も浅くなっている。
【００４６】
上述の各実施例では、単一の環状の摩擦材をコアプレートに固定して摩擦板を形成しているが、複数の摩擦材セグメントを隙間なく環状に並べ、コアプレートに固定し摩擦板を形成することもできる。
【００４７】
第１及び第２の油溝は、摩擦材に切欠を設けて形成することもできるが、プレスにより成形することもできる。
【００４８】
摩擦材２１や摩擦材セグメントは、コアプレート２０に接着剤を塗布して貼着するが、裏面に接着剤を塗布したシール状の摩擦材セグメント２１や摩擦材をコアプレート２０に載置し、押圧加熱することで貼着することもできる。
【００４９】
また、上述の各実施例では、内周縁２６から延在する第１の油溝の先端部と外周縁２７から延在する第２の油溝の先端部とは、径方向の中央から相手側に更に延在している。しかしながら、延在長さは任意であり、各実施例に示すものより長くすることもできるし、短くすることもできることは言うまでもないであろう。
【図面の簡単な説明】
【００５０】
【図１】図１は、本発明の摩擦板を備えた湿式多板クラッチ１０の軸方向部分断面図である。
【図２】本発明の第１実施例を示す摩擦板の部分正面図である。
【図３】本発明の第２実施例を示す摩擦板の部分正面図である。
【図４】本発明の第３実施例を示す摩擦板の部分正面図である。
【図５】本発明の第４実施例を示す摩擦板の部分正面図である。
【図６】本発明の第５実施例を示す摩擦板の部分正面図である。
【図７】本発明の各実施例に適用可能な油溝の変形例を示す摩擦板の部分斜視図である。
【符号の説明】
【００５１】
１ ドラム
２ セパレータプレート
３ 摩擦板
４ ハブ
５ スプライン
６ ピストン
８ スプライン
１０ 湿式多板クラッチ
２４、３０、３４、３６、５６ 第１の油溝
２３、３３、３５、３７、５５ 第２の油溝
２５ 摩擦面
２６ 内周縁
２７ 外周縁
【技術分野】
【０００１】
本発明は、車両の自動変速機（ＡＴ）のクラッチやブレーキなどに用いられる摩擦板及び摩擦板を備えた湿式多板クラッチに関する。より詳細には、摩擦板の摩擦面に形成する油路の改良に関する。
【背景技術】
【０００２】
一般に、湿式多板クラッチは、クラッチもしくはブレーキのドラムとハブ間に摩擦板（フリクションプレート）と、セパレータプレートとが交互に配置されており、クラッチピストンの押圧と解除によりクラッチの係合と解除が行われる。
【０００３】
また近年、自動車の低燃費の要求は、ますます増大しており、自動変速機においてもクラッチの非係合時における動力損失を軽減させるため、摩擦板とセパレータプレート間の引き摺りトルクの低減が一層求められている。
【０００４】
一般に、自動変速機（ＡＴ）に用いられる湿式多板クラッチには、動力損失を軽減させるため、摩擦板の内周側から外周へと潤滑油が抜けやすいような構造とし、引きずりトルクの低減をしていることが多い。このような引き摺りトルク低減の手法としては、例えば、特許文献１や特許文献２に開示のものが知られている。特許文献１及び２に開示のクラッチでは、非係合時の摩擦板とセパレータプレートの離間のために内周側で端面の閉じた油溝と、係合時における摩擦面への潤滑油の供給による、焼付き防止の為の油供給用の内外径方向に貫通した油通路が摩擦板に設けられている。
【０００５】
しかし、近年、燃費向上と同時に、動力性能向上をねらいとしての変速応答性向上のため、摩擦板とセパレータプレートの間のクリアランスは従来に比較して、小さくなっており、空転時において、介在する油膜による引き摺りトルクも大きくなる傾向にあった。
【０００６】
内径側から外径側に貫通する油通路に供給される油は、回転により摩擦材に引き込まれ、引き込まれた油は、フリクションプレートとセパレータプレートの間に入ると、なかなか排出されず、特に、フリクションプレートとセパレータプレート間のクリアランスの小さな、回転数の小さな領域では顕著であり、摩擦材と相手セパレータプレート間の粘性による引き摺りトルクは大きなものとなる。
【０００７】
内外径から貫通した油溝が設けられた油溝からの油は、摩擦面への油の供給と、油排出のためのものであるが、これらの油溝の形状や、油溝の両側コーナーのダレなどにより、油溝から摩擦面への油の流れは大きく影響され、空転トルクや、係合時の摩擦特性に影響し、品質のバラツキの原因となる。
【０００８】
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては次のものがある。
【特許文献１】特開平１１−１４１５７０公報
【特許文献２】特開平２００５−７６７５９公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００９】
従来の摩擦板では、摩擦面における油の排出が十分にされないことにより、引き摺りトルクを更に低減させるという要求に満足できなかった。特に低域の回転時においては、摩擦板とセパレータプレートとの間に介在する油の排出が十分でなく、引き摺りトルクが小さくすることができなかった。
【００１０】
しかしながら、近年の自動変速機に課せられた小型軽量化の要求に応えるため、摩擦板一枚あたりの摩擦容量を大きくすることが望まれている。そのため、摩擦板に形成する溝数の増加や溝の大きさなど厳しく制限されつつある。
【００１１】
従って、本発明の目的は、空転時の摩擦係数が小さく、係合時の摩擦特性のバラツキがなく品質が安定していると共に、係合時のショックが少なく、耐熱性があって、かつ空転時の引き摺りトルクを従来に比べて大幅に低減した摩擦板及び摩擦板を備えた湿式多板クラッチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【００１２】
上記目的を達成するため、本発明の摩擦板は、
ほぼ環状のコアプレートに環状の摩擦材を貼着して形成された摩擦面を有する摩擦板であって、
摩擦面には、摩擦板の内周縁に開口する開口部と内外周縁間で終端する端部とを有する第１の油溝と、摩擦板の外周縁に開口する開口部と内外周縁間で終端する端部とを有する第２の油溝とが設けられていることを特徴としている。
【００１３】
また、本発明の摩擦板は、
ほぼ環状のコアプレートに複数の摩擦材セグメントを隙間なく貼着して形成された摩擦面を有する摩擦板であって、
前記摩擦面には、前記摩擦板の内周縁に開口する開口部と内外周縁間で終端する端部とを有する第１の油溝と、前記摩擦板の外周縁に開口する開口部と内外周縁間で終端する端部とを有する第２の油溝とが設けられ、前記摩擦材セグメントが前記第１の油溝と前記第２の油溝とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【００１４】
本発明によれば、以下のような効果が得られる。
【００１５】
内径部に開口して端部が閉じている第１の油溝と、内径部に開口して端部が閉じている第２の油溝で構成されているため、第２の油溝は、空転時において摩擦板から相手面であるセパレータプレートを引き離すことができ、係合時におけるクッション性が向上する。また、係合及び解放時に生ずる摩擦熱を冷却する油の供給を促進するので、摩擦板に発生する熱を有効に冷却できる。特に、係合初期における、クラッチの急激な食い付きを防止するクッションの機能としても作用する。
【００１６】
また、外径側のみに開口する第２の油溝は、もっぱら摩擦面の油排出の役割のみを持たせることにより、空転時のドラグ低下及び係合時の摩擦特性が改善され、バラツキの少ない安定したものとなる。特に低回転時においては、引き摺りトルク低減の効果は大きい。このため、供給油量や回転数などの使用条件に合せ、それぞれの油溝の組合わせでの設計が可能で、品質の安定した多板クラッチを作ることができる。また、引き込まれた油がスムースに排除されるため、係合時に生ずる摩擦熱も、オイルと一緒にスムースに排除され摩擦材の耐熱性が向上する。
【００１７】
供給油量、使用される回転条件により種々の設計が可能である。同じく、内径側に開口している油溝は、内径部の溝幅を大きくすると、摩擦材の引き離し効果がより大きくなる。尚、第１及び第２の油溝とも半径方向に対し傾斜角度をもって形成すると、摩擦面の引き離し効果及び油排出性はより向上する。
【実施例】
【００１８】
以下、添付図面を参照して本発明を詳細に説明する。尚、図面において同一部分は同一符号にて示してある。
【００１９】
図１は、本発明の摩擦板を備えた湿式多板クラッチ１０の軸方向部分断面図である。
【００２０】
湿式多板クラッチ１０は、軸方向の一端部で開放したほぼ円筒形のドラム、すなわちクラッチケース１と、クラッチケース１の内周に配置され、同軸上で相対回転するハブ４と、クラッチケース１の内周に設けられたスプライン８に軸方向で移動自在に配置された環状のセパレータプレート２と、ハブ４の外周に設けられたスプライン５にセパレータプレート２と軸方向で交互に配置され、摩擦材が貼着された環状の摩擦板３とからなっている。セパレータプレート２と摩擦板３とはそれぞれ複数個設けられている。
【００２１】
湿式多板クラッチ１０は、セパレータプレート２と摩擦板３とを押圧し締結させるピストン６と、セパレータプレート２及び摩擦板３を軸方向の一端で固定状態に保持するため、クラッチケース１の内周に設けられたバッキングプレート７とそれを保持する止め輪１７とを備えている。
【００２２】
図１に示すように、ピストン６は、クラッチケース１の閉口端内で軸方向摺動自在に配置されている。ピストン６の外周面とクラッチケース１の内面との間にはＯリング９が介装されている。また、ピストン６の内周面とクラッチケース１の円筒部（不図示）の外周面との間にもシール部材（不図示）が介装されている。従って、クラッチケース１の閉口端の内面とピストン６との間に油密状態の油圧室１１が画成される。
【００２３】
ハブ４に軸方向摺動自在に保持された摩擦板３は、その両面に所定の摩擦係数を有する摩擦材１２が固定されている。しかしながら、摩擦材１２は、摩擦板３及びセパレータプレート２の片面のみに設けることもできる。また、ハブ４には径方向に貫通した潤滑油供給口１３が設けられ、湿式多板クラッチ１０の内径側から外径側へと潤滑油を供給している。
【００２４】
以上のように構成された湿式多板クラッチ１０は、次のようにクラッチの締結及び解放をする。図１の状態は、クラッチ解放状態を示しておりセパレータプレート２と摩擦板３とはそれぞれ離れている。解放状態では、不図示のリターンスプリングの付勢力により、ピストン６はクラッチケース１の閉口端側に当接している。
【００２５】
この状態でクラッチを締結するには、ピストン６とクラッチケース１との間に画成された油圧室１１に油圧を供給する。油圧の上昇に伴い、リターンスプリング（不図示）の付勢力に抗して、ピストン６は、図１において軸方向右に移動し、セパレータプレート２と摩擦板３とを密着させる。これによりクラッチが締結される。
【００２６】
締結後、クラッチを再度解放するには、油圧室１１の油圧を解除する。油圧が解除されると、ピストン６はリターンスプリング（不図示）の付勢力により、クラッチケース１の閉口端に当接する位置まで移動する。すなわち、クラッチが解放される。
【００２７】
（第１実施例）
図２は、本発明の第１実施例を示す摩擦板３の部分正面図である。摩擦板３は、ほぼ環状のコアプレート２０に環状の摩擦材２１を接着剤などで貼着し形成された摩擦面２５を備えている。コアプレート２０は、ハブ４のスプライン５に係合するスプライン２０ａを内周に備えている。
【００２８】
図示のように、環状の摩擦材２１は、摩擦板３の内周縁２６に開口する開口部２４ａと内外周縁間で終端する端部２４ｂとを有する第１の油溝２４と、摩擦板３の外周縁２７に開口する開口部２３ａと内外周縁間で終端する端部２３ｂとを有する第２の油溝２３とが設けられている。第１の油溝２４と第２の油溝２３とはほぼ等配に周方向で交互に設けられている。
【００２９】
摩擦面２５には、外周縁２７に開口する第２の油溝が設けられている。従って、摩擦係合面を潤滑する潤滑油は、摩擦面２５に引き込まれた潤滑油は、第２の油溝２３によりスムースに外径側に排出され、空転時において、引き摺りトルクの低減が可能となる。
【００３０】
第１の油溝２４と第２の油溝２３は、いずれも開口部から端部までほぼ同じ周方向幅で形成されている。
【００３１】
（第２実施例）
図３は、本発明の第２実施例を示す摩擦板３の部分正面図である。基本的な構成は第１実施例と同じである。従って、異なる部分のみを説明する。第３実施例以下についても同様である。
【００３２】
第２実施例では、摩擦板３の内周縁２６に開口する開口部３０ａと内外周縁間で終端する端部３０ｂとを有する第１の油溝３０と、外周縁２７に開口する開口部３３ａと内外周縁間で終端する端部３３ｂとを有する第２の油溝３３とが、それぞれテーパ形状を備えている。
【００３３】
図示のように、第１の油溝３０は、開口部３０ａの周方向の両端から端部３０ｂに延在するテーパ部３０ｃを備えている。従って、第１の油溝３０は、端部３０ｂから開口部３０ａに向かって周方向の幅が広くなるテーパ状の形状となっている。
【００３４】
また、第２の油溝３３も、開口部３３ａの周方向の両端から端部３３ｂに延在するテーパ部３３ｃを備えている。従って、第２の油溝３３は、端部３３ｂから開口部３３ａに向かって周方向の幅が広くなるテーパ状の形状となっている。
【００３５】
第１実施例と同様に、第１の油溝３０と第２の油溝３３とはほぼ等配に周方向で交互に設けられている。
【００３６】
（第３実施例）
図４は、本発明の第３実施例を示す摩擦板３の部分正面図である。基本的な構成は第２実施例と同じである。従って、異なる部分のみを説明する。
【００３７】
第３実施例は、第２実施例の変形例であり、第１の油溝の構成が異なっている。第１の油溝３４は、全体として矩形の形状を備え、摩擦板３の内周縁２６に開口する開口部３４ａと内外周縁間で終端する端部３４ｂとを備え、開口部３４ａと端部３４ｂとはその周方向の幅がほぼ同じである。また、第１実施例と同様に、第１の油溝３４と第２の油溝３３とはほぼ等配に周方向で交互に設けられている。
【００３８】
（第４実施例）
図５は、本発明の第４実施例を示す摩擦板３の部分正面図である。本実施例は、第２実施例において、第２の油溝の構成を変更したもので、第３実施例と逆の構成となっている。但し、第２の油溝３５は第３実施例の第１の油溝３４より小さい矩形を有する形状となっている。
【００３９】
第２の油溝３５は、全体として矩形の形状を備え、摩擦板３の外周縁２７に開口する開口部３５ａと内外周縁間で終端する端部３５ｂとを備え、開口部３５ａと端部３５ｂとはその周方向の幅がほぼ同じである。また、上述の各実施例と同様に、第１の油溝３０と第２の油溝３５とはほぼ等配に周方向で交互に設けられている。
【００４０】
（第５実施例）
図６は、本発明の第５実施例を示す摩擦板３の部分正面図である。基本的な構成は第１実施例と同じである。従って、異なる部分のみを説明する。
【００４１】
第５実施例では、第１及び第２の油溝が、周方向に対して所定の角度で傾いて形成されている。摩擦材２１は、摩擦板３の内周縁２６に開口する開口部３６ａと内外周縁間で終端する端部３６ｂとを有する第１の油溝３６と、摩擦板３の外周縁２７に開口する開口部３７ａと内外周縁間で終端する端部３７ｂとを有する第２の油溝３７とが設けられている。第１の油溝３６と第２の油溝３７とはほぼ等配に周方向で交互に設けられている。
【００４２】
図６から分かるように、第１の油溝３８と第２の油溝３９は、それぞれ周方向に所定の角度で傾斜して設けられている。第１の油溝３８と第２の油溝３９との傾斜角は同じであるが、異なるように形成してもよい。図６では、第１の油溝３６及び第２の油溝３７とは、それぞれ周方向の幅が開口部から端部までほぼ同一であるが、異なるようにすることもできる。
【００４３】
図７は、本発明の各実施例に適用可能な油溝の変形例を示す摩擦板の部分斜視図である。摩擦材セグメント５４には、摩擦板３の内周縁２６に開口する開口部５６ａと内外周縁間で終端する端部５６ｂとを有する第１の油溝５６と、摩擦板３の外周縁２７に開口する開口部５５ａと内外周縁間で終端する端部５５ｂとを有する第２の油溝５５とが設けられている。第１の油溝５６は一つ設けられ、周方向で第１の油溝５６を挟むように２つの第２の油溝５５が設けられている。
【００４４】
ここで、第１の油溝５６は、開口部５６ａから端部５６ｂに向かってコアプレート２０の表面から離れる方向に傾斜したテーパ形状を有する。すなわち、軸方向の深さは端部５６ｂで最も浅くなっている。また、端部５６ｂでは、周方向の幅が最も狭くなっている。
【００４５】
また、同様に、第２の油溝５５は、開口部５５ａから端部５５ｂに向かってコアプレート２０の表面から離れる方向に傾斜したテーパ形状を有する。すなわち、軸方向の深さは端部５５ｂで最も浅くなっている。
【００４６】
上述の各実施例では、単一の環状の摩擦材をコアプレートに固定して摩擦板を形成しているが、複数の摩擦材セグメントを隙間なく環状に並べ、コアプレートに固定し摩擦板を形成することもできる。
【００４７】
第１及び第２の油溝は、摩擦材に切欠を設けて形成することもできるが、プレスにより成形することもできる。
【００４８】
摩擦材２１や摩擦材セグメントは、コアプレート２０に接着剤を塗布して貼着するが、裏面に接着剤を塗布したシール状の摩擦材セグメント２１や摩擦材をコアプレート２０に載置し、押圧加熱することで貼着することもできる。
【００４９】
また、上述の各実施例では、内周縁２６から延在する第１の油溝の先端部と外周縁２７から延在する第２の油溝の先端部とは、径方向の中央から相手側に更に延在している。しかしながら、延在長さは任意であり、各実施例に示すものより長くすることもできるし、短くすることもできることは言うまでもないであろう。
【図面の簡単な説明】
【００５０】
【図１】図１は、本発明の摩擦板を備えた湿式多板クラッチ１０の軸方向部分断面図である。
【図２】本発明の第１実施例を示す摩擦板の部分正面図である。
【図３】本発明の第２実施例を示す摩擦板の部分正面図である。
【図４】本発明の第３実施例を示す摩擦板の部分正面図である。
【図５】本発明の第４実施例を示す摩擦板の部分正面図である。
【図６】本発明の第５実施例を示す摩擦板の部分正面図である。
【図７】本発明の各実施例に適用可能な油溝の変形例を示す摩擦板の部分斜視図である。
【符号の説明】
【００５１】
１ ドラム
２ セパレータプレート
３ 摩擦板
４ ハブ
５ スプライン
６ ピストン
８ スプライン
１０ 湿式多板クラッチ
２４、３０、３４、３６、５６ 第１の油溝
２３、３３、３５、３７、５５ 第２の油溝
２５ 摩擦面
２６ 内周縁
２７ 外周縁
【特許請求の範囲】
【請求項１】
ほぼ環状のコアプレートに環状の摩擦材を貼着して形成された摩擦面を有する摩擦板であって、
前記摩擦面には、前記摩擦板の内周縁に開口する開口部と内外周縁間で終端する端部とを有する第１の油溝と、前記摩擦板の外周縁に開口する開口部と内外周縁間で終端する端部とを有する第２の油溝とが設けられていることを特徴とする摩擦板。
【請求項２】
ほぼ環状のコアプレートに複数の摩擦材セグメントを隙間なく貼着して形成された摩擦面を有する摩擦板であって、
前記摩擦面には、前記摩擦板の内周縁に開口する開口部と内外周縁間で終端する端部とを有する第１の油溝と、前記摩擦板の外周縁に開口する開口部と内外周縁間で終端する端部とを有する第２の油溝とが設けられ、前記摩擦材セグメントが前記第１の油溝と前記第２の油溝とを備えていることを特徴とする摩擦板。
【請求項３】
前記第１の油溝は、前記開口部から前記端部へ向かって幅が狭くなっていることを特徴とする請求項１または２に記載の摩擦板。
【請求項４】
前記第２の油溝は、前記開口部から前記端部へ向かって幅が狭くなっていることを特徴とする請求項１または２に記載の摩擦板。
【請求項５】
前記第１の油溝及び前記第２の油溝は、前記開口部から前記端部へ向って幅が狭くなっていることを特徴とする請求項１または２に記載の摩擦板。
【請求項６】
前記第１の油溝と前記第２の油溝の少なくとも一方は、周方向に傾斜していることを特徴とする請求項１−５のいずれか１項に記載の摩擦板。
【請求項７】
前記第１の油溝は、前記端部から前記開口部に向かって軸方向の深さが大きくなっていることを特徴とする請求項１−６のいずれか１項に記載の摩擦板。
【請求項８】
前記第２の油溝は、前記端部から前記開口部に向かって軸方向の深さが大きくなっていることを特徴とする請求項１−７のいずれか１項に記載の摩擦板。
【請求項９】
前記第１の油溝及び第２の油溝は、前記端部から前記開口部に向かって軸方向の深さが大きくなっていることを特徴とする請求項１−８のいずれか１項に記載の摩擦板。
【請求項１０】
前記第１の油溝の径方向長さは、前記第２の油溝の径方向長さとほぼ同じであることを特徴とする請求項１−１０のいずれか１項に記載の摩擦板。
【請求項１１】
前記第１の油溝の径方向長さは、前記第２の油溝の径方向長さと異なることを特徴とする請求項１−１０のいずれか１項に記載の摩擦板。
【請求項１２】
請求項１−１２のいずれか１項に記載の摩擦板と、前記摩擦板と軸方向で交互に配置されたセパレータプレートとを備えた湿式多板クラッチ。
【請求項１】
ほぼ環状のコアプレートに環状の摩擦材を貼着して形成された摩擦面を有する摩擦板であって、
前記摩擦面には、前記摩擦板の内周縁に開口する開口部と内外周縁間で終端する端部とを有する第１の油溝と、前記摩擦板の外周縁に開口する開口部と内外周縁間で終端する端部とを有する第２の油溝とが設けられていることを特徴とする摩擦板。
【請求項２】
ほぼ環状のコアプレートに複数の摩擦材セグメントを隙間なく貼着して形成された摩擦面を有する摩擦板であって、
前記摩擦面には、前記摩擦板の内周縁に開口する開口部と内外周縁間で終端する端部とを有する第１の油溝と、前記摩擦板の外周縁に開口する開口部と内外周縁間で終端する端部とを有する第２の油溝とが設けられ、前記摩擦材セグメントが前記第１の油溝と前記第２の油溝とを備えていることを特徴とする摩擦板。
【請求項３】
前記第１の油溝は、前記開口部から前記端部へ向かって幅が狭くなっていることを特徴とする請求項１または２に記載の摩擦板。
【請求項４】
前記第２の油溝は、前記開口部から前記端部へ向かって幅が狭くなっていることを特徴とする請求項１または２に記載の摩擦板。
【請求項５】
前記第１の油溝及び前記第２の油溝は、前記開口部から前記端部へ向って幅が狭くなっていることを特徴とする請求項１または２に記載の摩擦板。
【請求項６】
前記第１の油溝と前記第２の油溝の少なくとも一方は、周方向に傾斜していることを特徴とする請求項１−５のいずれか１項に記載の摩擦板。
【請求項７】
前記第１の油溝は、前記端部から前記開口部に向かって軸方向の深さが大きくなっていることを特徴とする請求項１−６のいずれか１項に記載の摩擦板。
【請求項８】
前記第２の油溝は、前記端部から前記開口部に向かって軸方向の深さが大きくなっていることを特徴とする請求項１−７のいずれか１項に記載の摩擦板。
【請求項９】
前記第１の油溝及び第２の油溝は、前記端部から前記開口部に向かって軸方向の深さが大きくなっていることを特徴とする請求項１−８のいずれか１項に記載の摩擦板。
【請求項１０】
前記第１の油溝の径方向長さは、前記第２の油溝の径方向長さとほぼ同じであることを特徴とする請求項１−１０のいずれか１項に記載の摩擦板。
【請求項１１】
前記第１の油溝の径方向長さは、前記第２の油溝の径方向長さと異なることを特徴とする請求項１−１０のいずれか１項に記載の摩擦板。
【請求項１２】
請求項１−１２のいずれか１項に記載の摩擦板と、前記摩擦板と軸方向で交互に配置されたセパレータプレートとを備えた湿式多板クラッチ。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【公開番号】特開２００７−１７０４９４（Ｐ２００７−１７０４９４Ａ）
【公開日】平成１９年７月５日（２００７．７．５）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００５−３６６８７１（Ｐ２００５−３６６８７１）
【出願日】平成１７年１２月２０日（２００５．１２．２０）
【出願人】（０００１０２７８４）ＮＳＫワーナー株式会社 (149)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１９年７月５日（２００７．７．５）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年１２月２０日（２００５．１２．２０）
【出願人】（０００１０２７８４）ＮＳＫワーナー株式会社 (149)
【Ｆターム（参考）】
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